本発明の目的は、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールからコニフェリルアルコールを安全に工業的規模で製造する方法を提供することにある。
上記目的は、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、塩基性物質及び水やアルコールなどの溶媒を含む溶液を加熱することによりコニフェリルアルコールを得る工程を含む、新規なコニフェリルアルコールの製造方法により解決される。
1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、中性緩衝剤又は塩基性物質、及び溶媒を含む溶液を、中性又は塩基性条件下で加熱することによりコニフェリルアルコールを得る工程
を含む、コニフェリルアルコールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1に記載の方法は、還元剤として用いているLiAlH
4が発火の危険性がある物質であることから、安全性に欠け、工業的規模で実施するには不適な方法である。
【0006】
そこで、本発明は、非特許文献1に記載の方法と比較して、安全に工業的規模でコニフェリルアルコールを製造する方法を提供することを、発明が解決しようとする課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、リグニン分解物から誘導される1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを中性又は塩基性条件下で加熱したところ、コニフェリルアルコールを得ることに成功した。しかも、反応系で使用する物質は、非特許文献1に記載の方法で用いられているLiAlH
4のような発火性物質などでなくともよく、例えば、中性緩衝剤、水酸化ナトリウムやトリエチルアミンなどの広範囲な無機塩基性物質又は有機塩基性物質であればよいことを見出した。本発明は、このような成功例や知見に基づき、完成された発明である。
【0008】
したがって本発明によれば、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを、中性または塩基性条件下で加熱することによりコニフェリルアルコールを得る工程を含む、コニフェリルアルコールの製造方法が提供される。
【0009】
本発明の別の側面によれば、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、中性緩衝剤又は塩基性物質、及び溶媒を含む溶液を、中性又は塩基性条件下で加熱することによりコニフェリルアルコールを得る工程を含む、コニフェリルアルコールの製造方法が提供される。
【0010】
好ましくは、本発明の製造方法において、前記塩基性条件が、有機性塩基性物質又は前記溶媒に難溶性の塩基性物質により達成される。
【0011】
好ましくは、本発明の製造方法において、前記溶媒が、極性溶媒である。
【0012】
好ましくは、本発明の製造方法において、前記溶媒が、水又はアルコール類である。
【0013】
好ましくは、本発明の製造方法において、前記溶媒が、第2級アルコール類又は第3級アルコール類である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、リグニン分解物から誘導される1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールから、安全かつ工業的規模でコニフェリルアルコールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について詳細に説明する。
本発明のコニフェリルアルコールの製造方法は、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、を中性または塩基性条件下で加熱することによりコニフェリルアルコールを得る工程を含む。さらに詳しくは、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを中性緩衝剤又は塩基性物質及び溶媒を含む溶液を加熱することによりコニフェリルアルコールを得る工程を含む。
【0016】
本発明の製造方法では、原料として、これまでに知られている下記式(II)に示す1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを用いる。
【化1】
(II)
【0017】
1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの取得方法は特に限定されないが、例えば、Von K.Kratzl:Holzforschung(1980),34,191−196に記載されているとおりに、4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンゾイル酢酸エステルからリチウムアルミニウムハイドライドを用いた還元反応を含む数工程で合成する方法によって製造し取得できる。また、別の例としては、下記に示すように、本発明者らによって発明された、下記式(I)に示す3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを出発原料とする、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの製造方法によって製造し取得することができる。
【化2】
(I)
【0018】
すなわち、水及び水酸化ナトリウム水溶液の混合液に、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを加えて、10〜45℃で撹拌することにより、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノン含有溶液を得る。得られた3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノン含有溶液を撹拌しながら、水素化ホウ素ナトリウムを少量ずつ数分〜数時間かけて10〜45℃下で加える。水素化ホウ素ナトリウムを添加した溶液を数時間、10〜45℃で撹拌して反応させる。3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの消失を確認した後、反応後の溶液に、塩酸水溶液を徐々に滴下して、pHを3.0〜10.0に調整し、次いで水に対して非相溶性である有機溶媒を加えて1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを抽出分離する。また、該有機溶媒を使用して水層を再抽出する。これを1〜数回繰返す。得られた抽出液(有機層)を合わせ、弱塩基を含む水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄する。洗浄後の抽出液から、該有機溶媒を減圧下又は低温下に留去し、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを得る。
【0019】
本発明の製造方法では、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを中性又は塩基性条件下で加熱することにより、コニフェリルアルコールの生成反応を進行させる。酸性条件下では、副反応が生じ、コニフェリルアルコールを効率的に得られない。したがって、反応系は、無添加の系、中性緩衝剤又は塩基性物質の添加系を使用する。好ましくは、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、中性緩衝剤又は塩基性物質、及び溶媒を含む溶液を反応に供する。
【0020】
ここで用いる中性緩衝剤としては、通常水性の溶液中でpHを6〜7に保つために使用できるものであれば特に限定されず、例えば、リン酸塩系緩衝剤、ホウ酸塩系緩衝剤などの既知の中性緩衝剤が挙げられる。
【0021】
塩基性物質としては、水性の溶液が塩基性(アルカリ)になることに寄与する物質であれば特に限定されないが、例えば、NaOH、KOH、Na
2CO
3、K
2CO
3、(NH
4)
2CO
3、NaHCO
3、KHCO
3、(NH
4)HCO
3、Ca(OH)
2、LiOH、Li
2CO
3、ホウ酸二ナトリウム、ホウ酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウムなどの無機性塩基性物質;酢酸ソーダ、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ジメチルアニリンなどの有機性塩基性物質などが挙げられる。また、強塩基性又は弱塩基性のイオン交換樹脂を用いてもよい。
【0022】
中性緩衝剤及び塩基性物質の添加量は、中性緩衝剤や塩基性物質の種類、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンや水の使用量などによって適宜変更でき、特に限定されないが、例えば、使用する1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの0.001倍モル〜20倍モル程度の量である。
【0023】
具体的には、塩基性物質として、NaOH、KOH、Na
2CO
3、K
2CO
3、(NH
4)
2CO
3などの無機性塩基性物質を用いる場合は、その使用量は1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの0.05倍モル〜2倍モル程度の量が好ましい。
【0024】
酢酸ソーダ、酢酸カリウム、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機性塩基性物質を用いる場合は、その使用量は1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの0.1倍モル〜10倍モル程度の量とすることが好ましい。
【0025】
塩基性イオン交換樹脂を用いる場合は、その使用量は1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの0.1〜5倍等量に相当する樹脂量であることが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法において、コニフェリルアルコールを得る反応は溶媒を使用することができる。反応に用いる溶媒は1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを溶解又は分散化できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;THF、ジオキサン、グライム、ジグライムなどのエーテル類といった極性溶媒やこれらの混合溶媒が好ましく、水及びアルコール類がより好ましい。ただし、比較的極性の低い溶媒であっても、極性溶媒、例えば、水やアルコール類を併用したりすることにより使用できる。上記した塩基性物質のうち、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの液体状の有機性塩基性物質を溶媒として兼用することができる。
【0027】
溶媒の使用量は溶媒の種類や1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの使用量に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、原料である1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールに対して、0.5〜200重量倍程度の量であり、好ましくは1〜100重量倍程度の量である。
【0028】
本発明の製造方法で用いる塩基性物質と溶媒との組合せによっては反応速度を高めることができる。例えば、無機性塩基性物質と水との組合せでは、比較的塩基性の強い条件であることから、反応速度が高くなる傾向にある。しかし、多量体化などの副反応速度も高くなる可能性がある。
【0029】
副反応生成速度の増大を避けるためには、有機性塩基性物質や溶媒に対して難溶性の塩基性物質を用いることが好ましい。溶媒に難溶性の塩基性物質としては、例えば、アルコール類溶媒に対しては、Na
2CO
3、K
2CO
3、NaHCO
3、KHCO
3などであり、アルコール類溶媒中ではこれらは微量しか溶解しない。このような塩基性物質と溶媒との組合せ系を選ぶと副反応が抑えられる可能性がある。この場合の塩基性物質の使用量は、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールに対して0.01倍モル〜1倍モル程度の量とすることが好ましい。
【0030】
アルコール類を溶媒として用いた場合、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの1位のヒドロキシ基がアルコキシ置換された副生成物を生成する傾向にある。ただし、この副生成物は徐々にコニフェリルアルコールに変換する。この副生成物の生成を避けるために、第2級又は第3級のアルコール類を用いることが好ましい。いかなる推論にも拘泥されるわけではないが、第2級又は第3級のアルコール類を溶媒として用いる場合、アルコキシ置換体の安定性が悪いことに依拠して、順次コニフェリルアルコールへ変換される可能性がある。
【0031】
第2級アルコール類又は第3級アルコール類としては特に限定されないが、例えば、イソプロピルアルコール、イソブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノールなどが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法では、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、必要に応じて溶媒、中性緩衝剤又は塩基性物質を含む溶液を加熱して、コニフェリルアルコールの生成反応を実施する。
【0033】
反応を円滑に進めるためには撹拌しながら加熱することが好ましい。反応温度は使用する溶媒の種類によって適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、40℃〜200℃、好ましくは50℃〜120℃であり、常圧下又は加圧下のいずれの条件でも実施可能である。反応の進行をHPLC等で確認しながら適切な反応時間を決めるのが良いが、例えば、数分〜数百時間、好ましくは1時間〜200時間、より好ましくは2時間〜100時間程度である。
【0034】
前記したように、本発明者らによって発明された、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを水素化ホウ素ナトリウムで還元して得られる1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの反応液は塩基性であり、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを単離することなく本発明の反応に使用することも可能である。
【0035】
コニフェリルアルコールは、例えば、後述する実施例1に記載の条件のHPLC測定により、リテンションタイム7.3分のピークとして同定でき、絶対検量線法や内部標準法などの通常知られている定量方法を用いれば定量することが可能である。また、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールは、例えば、同じ条件のHPLCにより、リテンションタイム4.3分のピークとして同定できる。
【0036】
反応液から目的物であるコニフェリルアルコールを分離及び/又は回収する方法は特に限定されず、例えば、溶媒や揮発性の塩基性物質を蒸留などによって除去することによって、目的物を分離することができる。塩基性物が揮発性でない場合には、中和相当量の酸を加えて溶媒を留去することが好ましい。この際に用いる酸としては通常中和の際に用いられることが知られている酸性物質であれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などの一般的な酸性物質が使用可能である。また、溶媒を留去する前に水を加えて、水より低沸点の溶媒を留去することによって、溶媒を水に置き換えてもよい。
【0037】
水の含量が多い系で目的物の生成反応や分離回収を進行させると、目的とするコニフェリルアルコールは、水に対する溶解度が低いことから、オイル状に分離する可能性がある。このオイル状物を有機溶媒で抽出し、溶媒を留去することによって、コニフェリルアルコールの粗製物を得ることができる。この抽出操作を行うことにより、中性緩衝剤、塩基性物質、酸性物質などを水層に除去することができる。
【0038】
コニフェリルアルコールの抽出に用いる有機溶媒としてはコニフェリルアルコールが溶解し得る有機溶媒であれば特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロフォルムなどのハロゲン化炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;エーテル類;トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0039】
コニフェリルアルコールの抽出溶媒の使用量は特に限定されず、例えば、使用した1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールの3〜100重量倍程度の量である。抽出回数は特に限定されないが、例えば、1〜複数回、好ましくは2〜4回である。
【0040】
本発明の製造方法によって得られるコニフェリルアルコールは、中性緩衝剤又は塩基性物質及び溶媒の組合せ、溶液のpH、加熱温度などの条件に基づいて90%程度以上の純度を有するものとして得ることが可能である。このようなコニフェリルアルコールは、用途や目的によってはそのまま用いることができるが、再結晶、再沈殿、カラム処理などの通常知られている有機化合物の精製手段を用いて精製することができる。
【0041】
本発明の製造方法によって得られるコニフェリルアルコールは、医薬品、香料、食品材料などの原料として使用することができる。
【0042】
本発明の製造方法では、本発明の目的を達成し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
【0043】
本発明の製造方法の具体的態様は、例えば、以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
[具体的態様1]
1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、アルコール類溶媒又は水及びアルコール類からなる混合溶媒、並びに有機性塩基性物質又は該溶媒に難溶性の塩基性物質を含む溶液を、撹拌しつつ、50℃〜120℃で2〜200時間加熱反応させる。反応終了後、反応液に水を加え、次いで減圧下で揮発性物質を留去する。残留物に酸性物質を加えて、残留物のpHを弱酸性〜酸性にし、コニフェリルアルコールに対して可溶性である有機溶媒によって残留物からコニフェリルアルコールを抽出する。得られたコニフェリルアルコール抽出物をカラム精製すれば、高純度のコニフェリルアルコールが得られる。
【0044】
[具体的態様2]
1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール、水、及び無機性塩基性物質を含む溶液を、撹拌しつつ、50℃〜120℃で2〜200時間加熱反応させる。反応終了後、酸性物質を加えて、反応液のpHを弱酸性〜酸性にする。この酸性反応液にコニフェリルアルコールに対して可溶性である有機溶媒を加えて、コニフェリルアルコールを抽出する。得られたコニフェリルアルコール抽出物をカラム精製すれば、高純度のコニフェリルアルコールが得られる。
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0046】
[実施例1.トリエチルアミンを用いたコニフェリルアルコールの製造方法]
10ml容量の試験管に、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール 164mg、イソプロピルアルコール 2g及びトリエチルアミン 0.4gを加えた。この試験管を85℃〜90℃で撹拌しつつ48時間加熱反応させた。反応終了後、試験管の内容物を50ml容量の丸底フラスコに移し、水 20gを加えた。この丸底フラスコを減圧下で45℃の水浴上に置き、内容物の全重量が7gとなるまで揮発性物質を留去した。その後、10%W/W塩酸水溶液 60mgを加えて、内容物のpHを約5としたところ、やや黄色の液色が無色となり、やがて白濁した。白濁した内容物全体を分液ロートに移し、酢酸エチル 2mlを用いて2回抽出した。次いで酢酸エチル層を濃縮したところ、粘稠な液状の目的物が得られた。収量は118mgであった。この粗製状態のコニフェリルアルコールの収率は79%であり、以下の条件に従うHPLC純度は90%であった。
【0047】
HPLC条件:
装置:ウォーターズ2795、2998
カラム:X−bridgeC18,3.5μ,径4.6mmx100mm,(30℃)
キャリヤー:(A)2mM−NH
4OAc aq.(0.05%V/V Formic acid)、(B)MeOH
グラジエント:MeOH5%V/V(1min),MeOH5%V/V→95%V/V(1−15min),95%V/V(15−18min)
検出器:UV270nm
【0048】
[実施例2.コニフェリルアルコールの精製方法(1)]
粗製状態のコニフェリルアルコールをカラム処理により精製した。実施例1で得られた粘稠な液状の目的物の全量を、酢酸エチル 2ml及びトルエン 1mlの混合溶媒に溶解してコニフェリルアルコール含有溶液を得た。これより先に、シリカゲル(ワコーゲルC−200)を充填した径21mm、長さ100mmのガラスカラムにトルエンを充填した。このカラムに、前記コニフェリルアルコール含有溶液を供給した。その後、酢酸エチル/トルエン=2/3(容量)の混合溶媒を、流速約2ml/minでカラムに展開し、10mlずつのフラクションを10本分採取した。薄層クロマトグラフでコニフェリルアルコールを含むことを確認したフラクションから、減圧下に溶媒を留去した。針状晶として目的物 83mgを得た。この目的物について赤外線吸収スペクトルを測定したところ、和光純薬製のコニフェリルアルコール標準品と完全に一致し、得られた目的物がコニフェリルアルコールであることを確認した。得られた針状晶のキャピラリー法による融点は72−74℃であった。HPLC純度は、97%であり、精製収率は、78%であった。
【0049】
[実施例3.K
2CO
3を用いたコニフェリルアルコールの製造方法]
10ml容量の試験管に、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール 57mg、イソプロピルアルコール 2g及びK
2CO
3 7.4mgを加え、撹拌しつつ85℃で3時間反応させた。反応終了後、試験管の内容物を50ml容量の丸底フラスコに移し、水 5gを加えた。この丸底フラスコに10%W/W塩酸水溶液 40mgを加え、全体の重量が4gとなるまで揮発性物質を留去した。残留物の全体を分液ロートに移し、酢酸エチル 2mlで2回抽出した。抽出後の酢酸エチル層を濃縮したところ、目的物として粘稠な液状の粗製状態のコニフェリルアルコールが得られた。収量は42mgであった。目的物の収率は81%であり、HPLCの純度は73%であった。
【0050】
得られた目的物を実施例2に記載の方法に従ってシリカゲルカラム処理を行ったところ、14mgのコニフェリルアルコールを得た。精製収率は46%であり、HPLCによる純度は93%であった。
【0051】
[実施例4.ピリジンを用いたコニフェリルアルコールの製造方法]
10ml容量の試験管に、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール 101mg、イソプロピルアルコール 4g、水 22mg及びピリジン 40mgを加え、85℃〜90℃で撹拌しつつ80時間加熱反応させた。反応終了後、試験管の内容物を50ml容量の丸底フラスコに移し、水 10gを加え、全体の重量が6.5gとなるまで減圧下に揮発性物質を留去した後、10%W/W塩酸水溶液 20mgを加えた。丸底フラスコに残った残留物の全体を分液ロートに移し、酢酸エチル 2mlで3回抽出した。抽出後の酢酸エチル層を濃縮したところ、目的物として粘稠な液状の粗製状態のコニフェリルアルコールが得られた。収量は72mgであった。目的物の収率は78%であり、HPLCの純度は81%であった。
【0052】
得られた目的物を実施例2に記載の方法に従ってシリカゲルカラム処理を行ったところ、40mgのコニフェリルアルコールを得た。精製収率は69%であり、HPLCによる純度は95%であった。
【0053】
[実施例5.水酸化ナトリウムを用いたコニフェリルアルコールの製造方法]
10ml容量の試験管に、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオール 56mg、水 2g及び1N−NaOH水溶液 35mgを加え、70℃〜75℃で撹拌しつつ22時間加熱反応させた。反応終了後、この試験管に10%W/W塩酸水溶液 10mgを加えた。試験管の内容物全体を分液ロートに移し、酢酸エチル 1mlで4回抽出した。抽出後に得られた酢酸エチル層を濃縮したところ、目的物として粘稠な液状の粗製状態のコニフェリルアルコールが得られた。収量は50mgであった。粗製状態のコニフェリルアルコールの見かけ収率は98%であり、HPLCの純度は47%であった。不純物を構成する主なものは、多量体と出発物質の1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールであった。
【0054】
得られた目的物を実施例2に記載の方法に従ってシリカゲルカラム処理を行ったところ、10mgのコニフェリルアルコールを得た。精製収率は43%であり、HPLCによる純度は93%であった。