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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-15145(P2015-15145A)
(43)【公開日】2015年1月22日
(54)【発明の名称】X線発生装置及びX線検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/16 20060101AFI20141219BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20141219BHJP
【FI】
   H01J35/16
   H01J35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-140894(P2013-140894)
(22)【出願日】2013年7月4日
(71)【出願人】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツ産機システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】森谷 淳一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直也
(57)【要約】
【課題】漏洩X線を遮蔽しながら、発生した熱を効率よく絶縁油に放熱でき、製造時におけるガラス管の割れを防止し、しかも、メンテナンスを容易とすることができるX線発生装置及びX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線発生装置10において、真空密閉されたガラス管13の管内部に陰極11と陽極12が対向配置され管軸14に交差する方向にX線を放出するX線照射フランジ15が設けられるX線管8と、遮蔽材20と絶縁材21が積層される底板19と、X線照射フランジが取り付けられX線照射窓18となる部位が底面7a上に有して内方に絶縁油9が満たされる容器7と、底板19に着脱自在に固定されて絶縁油9に浸され管軸14の両側が開放されるとともに少なくともX線管内における陰極11から陽極12までをガラス管13の外側で間隙24を有して包囲し内側から絶縁材26、遮蔽材25及び支持材27が積層されてなる遮蔽体40と、を設けた。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空密閉されたガラス管(13)の管内部に陰極(11)と陽極(12)が対向配置され管軸(14)に交差する方向にX線を放出するX線照射フランジ(15)が設けられるX線管(8)と、
遮蔽材(20)と絶縁材(21)が積層される底板(19)と、前記X線照射フランジが取り付けられX線照射窓(18)となる部位が底面(7a)上に有して内方に絶縁油(9)が満たされる容器(7)と、
前記底板に着脱自在に固定されて前記絶縁油に浸され前記管軸の両側が開放されるとともに少なくともX線管内における前記陰極から前記陽極までを前記ガラス管の外側で間隙(24)を有して包囲し内側から絶縁材(26)、遮蔽材(25)及び支持材(27)が積層されてなる遮蔽体(40,50,60,70)と、
を具備することを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線発生装置(210,310)であって、
前記遮蔽体(60,70)は、陰極側が前記管軸に沿って前記陰極より外側へ延出して形成され、陽極側が前記管軸に沿って短く前記陽極を露出させて形成されていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項3】
請求項2記載のX線発生装置(310)であって、
前記遮蔽体(70)は、前記ガラス管から導出される陽極放熱部(16)の両側を挟む一対の遮蔽側板部(30)を有し、前記一対の遮蔽側板部の上方が切欠部(31)となって開放されていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載のX線発生装置(10,110,210,310)を組み込んだことを特徴とするX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置及びそれを用いたX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線発生装置は、例えば、食料品や工業製品などの被検査物に対して、X線を照射して、X線の透過量から被検査物中の異物等を検出するX線検査装置に用いられる(特許文献1等参照)。従来、この種のX線発生装置は、X線管から漏れ出るX線を遮蔽するために、このX線管を絶縁油を満たした容器に収容状態とし、この容器に鉛板などの遮蔽材を貼り付けるなどして設けていた。このため、鉛板などの量が多くなり、装置全体として重たくなる問題があった。そこで、X線管に遮蔽材を直接巻き付けることにより、容器の遮蔽材の使用量が少なくなるX線管装置の構造が特許文献2に開示されている。
【0003】
このX線管装置は、フィラメントを有する陰極、陰極に所定距離離間して対向配置されその対向面に所定角度を持って設けられたターゲットを有する陽極、これら陰極及び陽極を真空密封するガラス円筒管からなるX線管を備える。X線管の外部には、ガラス円筒管を囲んで設けられ、充填材を介して固着された絶縁体層と、絶縁体層を囲んで設けられたX線遮蔽層とが備えられる。X線管のX線照射部前面となる絶縁体層及びX線遮蔽層の位置には、微小孔が設けられる。このX線管装置の構造によれば、X線管の外側に密着して微小孔を設けるため、小型のX線管装置を提供することができ、遮蔽材の使用量も減らして軽量化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−318062号公報
【特許文献2】特開2008−300118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のX線管装置は、X線管の外周面に鉛板を貼り、放電を防ぐための樹脂等の絶縁材を鉛との間に介在させている。このため、X線管より発生する熱がこもってしまい、熱を絶縁油に効率よく伝えることができない欠点を有している。
【0006】
また、従来のX線管装置は、鉛板を直接X線管に固定することになるが、鉛は素材として柔らかいことから、製造時にガラス管に対して圧力をかけながら成形を行なうもので、すなわちガラス管に外力が加わる。このため、ガラス管が破損する虞、すなわちX線管を損壊してしまう虞があった。
【0007】
さらに、X線管装置が連続使用されるX線検査装置では、耐用時間が短くなり、X線管の交換頻度が高くなる。従来のX線管装置を備えるX線検査装置は、鉛板ごとX線管を交換することとなり、メンテナンスコストが高くなる。また、巻かれた鉛板、絶縁材からX線管を取り出し分解することとなれば、メンテナンス作業が煩雑となる欠点を有する。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、X線管からの漏洩X線を遮蔽しながら、X線管から発生する熱を効率よく絶縁油に放熱でき、組付製造時におけるX線管の損壊を防ぎ、しかも、交換などのメンテナンスを容易とすることができるX線発生装置及びX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線発生装置10,110,210,310は、真空密閉されたガラス管13の管内部に陰極11と陽極12が対向配置され管軸14に交差する方向にX線を放出するX線照射フランジ15が設けられるX線管8と、
遮蔽材20と絶縁材21が積層される底板19と、前記X線照射フランジが取り付けられX線照射窓18となる部位が底面7a上に有して内方に絶縁油9が満たされる容器7と、
前記底板19に着脱自在に固定されて前記絶縁油9に浸され前記管軸14の両側が開放されるとともに少なくともX線管内における前記陰極11から前記陽極12までを前記ガラス管13の外側で間隙24を有して包囲し内側から絶縁材26、遮蔽材25及び支持材27が積層されてなる遮蔽体40,50,60,70と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
このX線発生装置10,110,210,310では、X線管8が、X線照射フランジ15によって容器7の底面7aに支持固定される。容器7底面7a上の底板19には、間隙24を有してX線管8を覆うように、遮蔽体40,50,60,70が取り付けられる。これにより、X線管8は、底板19の遮蔽材20と、遮蔽体40,50,60,70の遮蔽材25とに覆われ、X線の漏洩が抑制される。X線管8と遮蔽体40,50,60,70との間隙24には、絶縁油9が入り込むので、熱がこもらず、冷却能力を保ったまま遮蔽が可能となる。絶縁油9は、容器内を対流することで放熱効果が促進される。
また、このX線発生装置10,110,210,310では、遮蔽体40,50,60,70が底板19に直接支持され、X線管8のガラス管13に遮蔽材25の荷重負荷がかからないので、X線管8を破損させることがない。さらに、容器7から絶縁油9を抜き、遮蔽体40,50,60,70を底板19から取り外すことで、容易にX線管8の交換が可能となる。
【0011】
本発明の請求項2記載のX線発生装置210は、請求項1記載のX線発生装置10であって、
前記遮蔽体60は、陰極側が前記管軸14に沿って前記陰極11より外側へ延出して形成され、陽極側が前記管軸14に沿って短く前記陽極12を露出させて形成されていることを特徴とする。
【0012】
このX線発生装置210では、放熱が比較的少なく、X線が多い陰極側は、陰極11よりも延出し管軸14に沿って長く形成された遮蔽体60によって余裕をもって覆われ、漏洩X線の遮蔽効果が一層高められる。放熱が多く、X線が比較的少ない陽極側は、遮蔽体60が管軸14に沿って短く陽極12を露出させて形成され、例えばこの陽極12の陽極発熱部16を覆わず、ガラス管陽極側終端29までが覆われ、この陽極部分での発熱が効率よく絶縁油9に伝達される。
【0013】
本発明の請求項3記載のX線発生装置310は、請求項2記載のX線発生装置210であって、
前記遮蔽体70は、前記ガラス管13から導出される陽極放熱部16の両側を挟む一対の遮蔽側板部30を有し、前記一対の遮蔽側板部30の上方が切欠部31となって開放されていることを特徴とする。
【0014】
このX線発生装置310では、陽極放熱部16からの漏洩X線が、陽極放熱部16を挟む両側の遮蔽側板部30によって遮蔽される。X線管8は、管の部位によって熱の出る量が異なり、陽極側において一番熱が出る。陽極放熱部16に接触して高温となった絶縁油9は、低密度となって浮力が生じ、切欠部31を通過して上昇する。これにより、陽極側では、絶縁油9に対流を生じさせ、より効果的な冷却作用が得られる。
【0015】
本発明の請求項4記載のX線検査装置100は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載のX線発生装置10,110,210,310を組み込んだことを特徴とする。
【0016】
このX線検査装置100では、X線発生装置10,110,210,310のX線管8に交換が生じた場合、X線発生装置10,110,210,310における容器7の底板19に取り付けられている遮蔽体40,50,60,70が取り外される。これにより、容器7の底で表出するX線管8を容易に交換できる。絶縁材、遮蔽材をガラス管に巻いた従来のX線管を全て交換する場合に比べ、X線管のみの交換となり、交換費用が安価となる。また、絶縁材、遮蔽材をガラス管に巻いた従来のX線管からX線管を取り出して交換する場合に比べ、交換作業が容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る請求項1記載のX線発生装置によれば、X線管に対して間隙を有して配置される遮蔽体によって、漏洩X線を遮蔽しながら、発生した熱を効率よく絶縁油に放熱でき、X線管自体に鉛などの遮蔽材を巻き付け固定することが無く、製造時におけるガラス管の割れを起こすことがない。また、X線管と遮蔽体とは別体構成であり、着脱などの作業を含むメンテナンスを容易とすることができる。さらに、X線管と容器の側壁間において、遮蔽体を構成する絶縁材と遮蔽材とが介設されていることで、X線管自体に巻き付け固定する従来の遮蔽材と絶縁材の量に比して大きく構成でき、X線の遮蔽が行なえることから、容器側に構成させる遮蔽材の使用量を減らすことが可能となり、X線発生装置として軽量化を図ることが可能となるとともに、製造コストを削減することができる。
【0018】
本発明に係る請求項2記載のX線発生装置によれば、遮蔽体を、陰極側が管軸に沿って陰極より外側へ延出して形成したので、X線管からの漏洩X線をより確実に遮蔽できるとともに、陽極側が管軸に沿って短く陽極を露出させて形成したので、X線管の陽極側からの熱を効率よく放熱できる。
【0019】
本発明に係る請求項3記載のX線発生装置によれば、一対の遮蔽側板部によってX線管からのX線に対して高いX線遮蔽効果を得ながら、切欠部によって陽極放熱部の近傍に上向きの自然対流を生じさせ、陽極放熱部からの熱を効率よく絶縁油に放熱できる。
【0020】
本発明に係る請求項4記載のX線検査装置によれば、X線管と遮蔽体とを別体構成としたことで、X線管交換のメンテナンスを容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るX線発生装置を備えたX線検査装置の斜視図である。
図2図1に示したX線発生装置の管軸に沿う方向の側断面図である。
図3図1に示したX線発生装置の管軸直交方向の断面図である。
図4】遮蔽体が蒲鉾形の変形例に係るX線発生装置の断面図である。
図5】陰極を長く覆う遮蔽体を備えた変形例に係るX線発生装置の断面図である。
図6】陽極側に切欠部の形成された遮蔽体を有する変形例に係るX線発生装置の斜視図である。
図7図6に示したX線発生装置の管軸に沿う方向の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係るX線発生装置を備えたX線検査装置の斜視図、図2図1に示したX線発生装置の管軸に沿う方向の側断面図、図3図1に示したX線発生装置の管軸直交方向の断面図、図4は遮蔽体が蒲鉾形の変形例に係るX線発生装置の断面図、図5は陰極を長く覆う遮蔽体を備えた変形例に係るX線発生装置の断面図、図6は陽極側に切欠部の形成された遮蔽体を有する変形例に係るX線発生装置の斜視図、図7図6に示したX線発生装置の管軸に沿う方向の側断面図である。
本実施形態に係るX線発生装置10は、例えばX線検査装置100に好適に用いられる。X線検査装置100は、装置本体1の内部に、生肉、魚、加工食品、医薬等の被検査物を搬送するコンベア2と、搬送される被検査物を搬送路途中において異物を検出する異物検出部3と、を有している。
【0023】
コンベア2は、不図示の駆動モータにより駆動され、搬入口4から搬入された被検査物を搬出口5へ搬出するようになっている。異物検出部3は、コンベア2の上方に設けられるX線発生装置10とコンベア2の内側に設けられるX線検出器6と、で構成されている。
【0024】
X線発生装置10は、容器7の内部に設けられている円筒状のX線管8を絶縁油9(図2参照)に浸した構成となっている。X線発生装置10は、高電圧発生装置(図示せず)でX線管8に、10kV〜500kV程度の電圧を印加する。これにより、X線管8の陰極11からの電子ビームを陽極12のターゲットに照射させてX線を生成する。X線管8は、その長手方向が被検査物の搬送方向に直交するように設けられている。生成されたX線は、下方のX線検出器6に向けて、長手方向に沿った不図示のスリットを介して、略円錐状のX線を略三角形状のスクリーン状にして照射する。
【0025】
X線発生装置10は、X線管8と、容器7と、遮蔽体40と、を主要な構成としている。X線管8は、真空密閉されたガラス管13の管内部に、陰極11と陽極12が対向配置される。X線管8は、管軸14に交差する方向にX線を放出するX線照射フランジ15が設けられる。陽極12は、ガラス管13の外方へ陽極放熱部16が導出される。陰極11は、ガラス管13の外方へリード線17が導出される。X線管8は、電子を高電圧で加速し、金属の陽極12(対陰極)に衝突させてX線を発生させる。X線を取り出すX線照射窓18は、一般的には、ベリリウムが用いられる。対陰極(ターゲット)には、タングステン、ロジウム、モリブデン、クロムなどが用いられる。
【0026】
X線検出器6は、フォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとからなる複数のX線検出素子が用いられる。これらのX線検出素子が被検査物の搬送方向と直交する方向に並んでラインセンサ(X線センサ)が形成され、X線検査装置100は、X線発生装置10から搬送面上(コンベア2上)を搬送される被検査物にX線を照射して、透過X線を受けたX線検出器6から得られるX線透過量に基づいてこの被検査物を検査する。
【0027】
容器7の底面7a上には、底板19を有する。底板19は、遮蔽材20と絶縁材21が積層される。また、底面7aにX線照射フランジ15が取り付けられる。このX線照射フランジ15の取り付けられる部位がX線照射窓18となる。容器7には、絶縁油9が満たされる。なお、図では省略しているが、容器7の側板も底板19と同様の遮蔽材と絶縁材が積層される。
【0028】
容器7底面7a上の底板19には、遮蔽体40が、例えば植設ボルト22とナット23等によって脱着自在に取り付けられる。遮蔽体40は、絶縁油9に浸され、管軸14の両側が開放される。この遮蔽体40は、少なくともX線管8内における陰極11から陽極12までを、ガラス管13の外側で間隙24を有して包囲する。遮蔽体40は、内側から絶縁材26、遮蔽材25及び支持材27が積層されてなる。絶縁材26としては、耐絶縁油性の樹脂やセラミックスが用いられる。遮蔽材25としては、原子番号が26以上の元素が用いられる。例えば、モリブデン、タングステン、ビスマス、バリウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、金、白金、鉛、鉄等、或はこれら混合物が用いられる。支持材27としては、耐絶縁油性の金属、例えばステンレス鋼が用いられる。
【0029】
遮蔽体40は、下面が開放した略方形箱状に構成され、例えば図3に示すように、下縁に鍔部28を有する略ハット形として形成できる。この他、図4に示すように、遮蔽体50は、蒲鉾形として形成してもよい。蒲鉾形の遮蔽体50によれば、遮蔽材25,絶縁材26の使用量を少なくして、X線発生装置110として小型化、軽量化を可能にすることができる。
【0030】
また、図5に示すように、遮蔽体60は、陰極側が管軸14に沿って陰極11より外側へ延出して形成され、陽極側12が短く、ガラス管13の外方に導出される陽極放熱部16を覆わずに、例えば、ガラス管陽極側終端29と一致して形成されることとしてもよい。
【0031】
さらに、図6図7に示すように、遮蔽体70は、上記図5に示される遮蔽体60と同様に陰極側が管軸14に沿って陰極11より外側へ延出して形成されるとともに、ガラス管13から導出される陽極放熱部16の両側を挟む一対の遮蔽側板部30を有し、一対の遮蔽側板部30の上方が切欠部31となって開放されていてもよい。すなわち、遮蔽体70は、X線管8の側方位置では陰極11側と陽極12側と双方に管軸14に沿って外側へそれぞれ延出して形成されてX線管8よりも長尺な一対の遮蔽側板部30となって覆っている。またこの遮蔽体70は、X線管8の上方においては、陰極11側では管軸14に沿って延出し一対の遮蔽側板部30とともに覆い、陽極12側では短く覆わずに、例えばガラス管陽極側終端29と一致して切欠部31が形成され上方が開放されていて、この切欠部31によってX線管8の陽極側が上方よりあらわになる。
【0032】
次に、上記構成を有するX線発生装置10の作用を説明する。
X線発生装置10では、高電圧発生装置でX線管8に、10kV〜500kVの電圧を印加する。具体的には、陰極のフィラメントに電流を流し、熱することで熱電子を放出させ、陽極と陰極の電位差で加速した熱電子が陽極のターゲットに衝突する。この衝突のエネルギーでX線が発生する。このX線を、X線照射フランジ15のX線照射窓18から照射X線33(図7参照)として外部に照射する。
【0033】
X線発生装置10では、X線管8が、X線照射フランジ15によって容器7の底面7aに支持固定される。底面7a上の底板19には、間隙24を有してX線管8を覆うように、遮蔽体40が取り付けられる。これにより、X線管8は、底板19の遮蔽材20と、遮蔽体40の遮蔽材25とに覆われ、X線の漏洩が抑制される。
【0034】
遮蔽体40は、例えばハット形、蒲鉾形で形成されるので、製造が容易となる。
遮蔽体40は、内側となるX線管8側から絶縁材26、遮蔽材25、支持材27が積層されてなる。遮蔽材25は、例えば鉛からなる。軟らかい鉛からなる遮蔽材25は、ステンレス鋼等からなる剛性の高い支持材27によって貼着等によって支持される。支持材27に支持された遮蔽材25の内側には、X線管8からの放電を防止する絶縁材26が貼られる。絶縁油9が貯められた容器7は、上部に空気層34を有する。
【0035】
遮蔽体40は、X線管8との間隙24に、絶縁油9が介在するので、絶縁材26の厚さを薄く設定することが可能となっている。
【0036】
なお、従来の絶縁材、遮蔽材をX線管に巻いていた構造では、ガラス管に荷重負荷がかかる。X線管は、中央のX線照射フランジを支点として容器に支持固定されることになるので、管軸に沿う方向に長く遮蔽材が巻かれると、バランスが崩れ易くなって、破損の要因となる。これに対し、本構成によれば、X線管8と別体構成である遮蔽体40が底板19に直接支持され、ガラス管13に遮蔽材25の荷重負荷がかからないので、X線管8を破損させることがない。
【0037】
また、従来構造では、ガラス管と遮蔽材との間に、樹脂等の絶縁材が挟入されていたため、熱が逃げにくく、X線管に熱がこもっていた。これに対し、本構成では、X線管8と遮蔽体40との間隙24に、絶縁油9が入り込むので、熱がこもらず、冷却能力を保ったまま遮蔽が可能となる。つまり、絶縁油9は、絶縁のため以外に、放熱用の冷媒としても作用する。絶縁油9は、容器内を対流することで放熱効果が促進される。
【0038】
また、本構成では、底板19に遮蔽体40が支持固定され、X線管8に直接遮蔽材が巻かれない。これにより、製造時に無理な力がX線管8に作用せず、ガラス管13に壊れが生じない。さらに、絶縁材26や遮蔽材25がガラス管13に接しないので、使用時・使用停止時の熱膨張・熱収縮による応力もガラス管13に作用しなくなり、X線管8の寿命を長くすることができる。
【0039】
さらに、本構成では、容器7から絶縁油9を抜き、遮蔽体40を底板19から取り外すことで、容易にX線管8の交換が可能となる。X線発生装置10は、例えばX線検査装置100に使用された場合、連続してX線を放出して使うことが多い。従って、X線管8の寿命等による取り替え頻度が高くなる。このような状況下であっても、本構成によれば、X線管8と遮蔽体40が離間した別体となっているので、X線管8の交換が容易であり、且つ安価に可能となる。
【0040】
また、変形例に係る図5に示すX線発生装置210では、放熱が比較的少なく、X線が多い陰極側は、陰極11よりも延出した遮蔽体60によって余裕をもって覆われ、漏洩X線の遮蔽効果が一層高められる。放熱が多く、X線が比較的少ない陽極側は、ガラス管陽極側終端29までが遮蔽体60に覆われ、陽極放熱部16が露出しており、熱が効率よく絶縁油9に伝達され、また、絶縁油9の対流も起こりやすい。その結果、漏洩X線をより確実に遮蔽できるとともに、陽極側からの熱を効率よく放熱できる。
【0041】
また、変形例に係る図6図7に示すX線発生装置310では、陽極放熱部16からの漏洩X線が、陽極放熱部16を挟む両側の遮蔽側板部30によって遮蔽される。X線管8は、管の部位によって熱の出る量が異なり、陽極12側が一番熱が出る。陽極放熱部16に接触して高温となった絶縁油9は、低密度となって浮力が生じ、切欠部31を通過して上昇する。これにより、陽極12側では、絶縁油9に対流を生じさせ、より効果的な冷却作用が得られる。また、陰極11側では、遮蔽体70を管軸14に沿って延出させ側方と上方とで覆う形状とした。その結果、高いX線遮蔽効果を得ながら、陽極放熱部16の近傍に自然対流を生じさせ、陽極放熱部16からの熱を効率よく絶縁油9に放熱できる。
【0042】
そして、X線発生装置10(110,210,310)を用いたX線検査装置100では、X線発生装置10(110,210,310)のX線管8に交換が生じた場合、X線発生装置10(110,210,310)における容器7の底板19に取り付けられている遮蔽体40(50,60,70)が取り外される。これにより、容器7の底で表出するX線管8を容易に交換できる。絶縁材、遮蔽材をガラス管に巻いた従来のX線管を全て交換する場合に比べ、X線管8のみの交換となり、交換費用が安価となる。また、絶縁材、遮蔽材をガラス管に巻いた従来のX線管からX線管を取り出して交換する場合に比べ、交換作業が容易となる。
【0043】
従って、本実施形態に係るX線発生装置10(110,210,310)によれば、漏洩X線を遮蔽しながら、発生した熱を効率よく絶縁油9に放熱でき、製造時におけるガラス管13の割れを防止し、しかも、メンテナンスを容易とすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るX線検査装置100によれば、X線管8交換等のメンテナンスを容易とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
7…容器
7a…底面
8…X線管
9…絶縁油
10,110,210,310…X線発生装置
11…陰極
12…陽極
13…ガラス管
14…管軸
15…X線照射フランジ
16…陽極放熱部
18…X線照射窓
19…底板
20…遮蔽材
21…絶縁材
24…間隙
25…遮蔽材
26…絶縁材
27…支持材
29…ガラス管陽極側終端
30…遮蔽側板部
31…切欠部
40,50,60,70…遮蔽体
100…X線検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7