【課題】難燃性のポリオレフィン系樹脂組成物を押出し成形する際に、ダイス口に難燃剤が付着、堆積するのを防止することが可能であり、生産性に優れ、成形品の耐熱性、難燃性が良好である電線保護材用組成物、電線保護材及びワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂と、難燃性付与剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含み、前記三酸化アンチモン以外の金属酸化物を含有しないポリプロピレン系樹脂組成物から構成され、前記臭素系難燃剤として融点が110℃以上であるものを用いて電線保護材用組成物とし、該組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形して電線保護材を得た。更に複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲を前記電線保護材で被覆してワイヤーハーネスを構成した。
ポリプロピレン系樹脂と、難燃性付与剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含み、前記三酸化アンチモン以外の金属酸化物を含有しないポリプロピレン系樹脂組成物から構成され、
前記臭素系難燃剤の融点が110℃以上であることを特徴とする電線保護材用組成物。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物をチューブ状に押出し成形して、難燃性コルゲートチューブを成形する場合、ダイス口に難燃剤の析出物が発生して、堆積、付着するという問題が発生するという問題があった。この析出物は、目ヤニと呼ばれ、成形品に付着して外観不良となったり、更には成形品の耐熱性等の物性低下を招いてしまう。また目ヤニが発生した場合、ダイス口から取り除く作業が必要となり、生産性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、難燃性のポリオレフィン系樹脂組成物を押出し成形する際に、ダイス口に難燃剤が付着、堆積するのを防止することが可能であり、生産性に優れ、成形品の耐熱性、難燃性が良好である電線保護材用組成物、電線保護材及びワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る電線保護材用組成物は、
ポリプロピレン系樹脂と、難燃性付与剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含み、前記三酸化アンチモン以外の金属酸化物を含有しないポリプロピレン系樹脂組成物から構成され、
前記臭素系難燃剤の融点が110℃以上であることをことを要旨とするものである。
【0009】
上記電線保護材用組成物は、更に銅害防止剤が配合されていることが好ましい。
【0010】
上記電線保護材用組成物は、更にフェノール系酸化防止剤が配合されていることが好ましい。
【0011】
上記電線保護材用組成物は、更にリン系熱安定剤が配合されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る電線保護材は、上記の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなることを要旨とするものである。
【0013】
本発明に係るワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電線保護材用組成物は、ポリプロピレン系樹脂と、難燃性付与剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含み、前記三酸化アンチモン以外の金属酸化物を含有しないポリプロピレン系樹脂組成物から構成され、前記臭素系難燃剤の融点が110℃以上であることにより、難燃性のポリオレフィン系樹脂組成物を押出し成形する際に、難燃剤が溶融、揮発しにくくなるために、ダイス口に難燃剤成分が発生するのを抑制して、難燃剤の付着、堆積を防止することが可能である。更に、成形の際にダイス口に付着した難燃剤成分を取り除く作業等が不要となって、量産成形性が良好であるといった効果が得られる。
【0015】
また本発明電線保護材は、上記電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなるものであるから、難燃剤の付着による外観不良の虞が無い。また電線保護材は、臭素系難燃剤の融点が110℃以上であるから、成形品が加熱された際に生成する分解生成物によってポリプロピレン系樹脂が劣化して、耐熱性が低下するのを防止することができる。また本発明の電線保護材は、難燃剤の付着による目ヤニの発生を抑制することが可能であるから、量産成形性が良好であるという効果が得られる。
【0016】
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されている構成を採用したことにより、目ヤニを抑制して量産成形性が良好で、外観及び耐熱性、難燃性等に優れたワイヤーハーネスが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の電線保護材用組成物は、難燃剤が添加された自動車用コルゲートチューブの成形に用いられる電線保護材用組成物の例である。電線保護材用組成物は、例えば、下記の(A)〜(E)成分から構成することができる。
【0018】
樹脂成分として(A)ポリプロピレン系樹脂が用いられ、添加剤成分として(B−1)臭素系難燃剤、(B−2)三酸化アンチモン等の(B)難燃性付与剤、(C)銅害防止剤、(D)フェノール系酸化防止剤、(E)リン系熱安定剤等が用いられる。
【0019】
本発明の電線保護材用組成物は、三酸化アンチモン以外の金属酸化物を含まない。従来、この種の難燃性組成物には、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを金属酸化物と併用する場合がある。上記金属酸化物は、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫等である。しかし、これらの金属酸化物を添加すると、目ヤニ発生を引き起しやすいということが判った。金属酸化物は組成物中で相対的に比重が大きいため、ダイス口で外側に押し出され、堆積、付着するものと考えられる。そこで、本発明は、上記金属酸化物を含有しない組成物とすることで、ダイス口の周囲に、これら金属酸化物等の難燃剤が堆積、付着するのを抑制可能である。
【0020】
また、この種の難燃性組成物には、上記金属酸化物以外に、難燃剤として水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填剤が添加される場合がある。本発明電線保護材用組成物は、上記金属酸化物を添加しない理由と同様の理由から、これらの無機充填剤を含有しないことが好ましい。
【0021】
以下、電線保護材用組成物の各成分について説明する。上記(A)ポリプロピレン系樹脂は、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンのいずれでも良い。またポリプロピレンは、その分子構造は、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンのいずれでも良い。
【0022】
電線保護材用組成物は、樹脂成分として、上記ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を添加してもよい。具体的には、樹脂および添加剤の混練のしやすさを考慮して、添加することができる。具体的には、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン‐プロピレンゴム、各種エラストマー等が挙げられる。
【0023】
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、メタロセン超低密度ポリエチレンなどを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、併用しても良い。
【0024】
(B)難燃剤は、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを併用する。臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの配合比率は、通常、質量比で、臭素系難燃剤:三酸化アンチモン=1:4〜4:1の範囲が、添加効率の点から好ましい。
【0025】
難燃剤の配合量は、ポリプロピレン100質量部に対し、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの合計量で、1.5〜15質量部の範囲内であることが好ましい。難燃性付与剤の配合量が、1.5質量部未満では難燃性が不十分となる虞があり、15質量部を超えると耐熱老化性が低下する虞がある。
【0026】
(B‐1)臭素系難燃剤は、融点が110℃以上のものであれば特に限定されず、用いることができる。融点が110℃以上の臭素系難燃剤は、例えば、エチレンビス(ペンタブロモジフェニル)(融点350℃)、エチレンビステトラブロモフタルイミド(融点456℃)、TBBA−ビス(2,3‐ジブロモプロピルエーテル)(融点117℃)、ヘキサブロモベンゼン(融点315℃)、ペンタブロモトルエン(融点288℃)、ヘキサブロモシクロドデカン(融点180℃)、デカブロモジフェニルエーテル(融点300℃)、デカブロモジフェニルエタン(融点345℃)、テトラブロモビスフェノールA(融点181℃)、テトラブロモビスフェノールAビスアリルエーテル(融点115℃)、テトラブロモビスフェノールAビスエトキシレート(融点115℃)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン(融点380℃)、テトラブロモ無水フタル酸(融点280℃)等が挙げられる。
【0027】
(B‐2)三酸化アンチモンは、例えば、鉱物として産出される三酸化アンチモンを粉砕処理して微粒化したものを用いることができる。三酸化アンチモンを臭素系難燃剤と併用することで、臭素系難燃剤の使用量を減らすことができる。
【0028】
(C)銅害防止剤の添加は、電線保護材が金属と接触した際にポリプロピレン系樹脂が劣化するのを防止して、電線保護材の耐熱老化特性の向上に寄与する。銅害防止愛は金属不活性化剤が用いられる。金属不活性化剤としては、例えば、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2’,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジド、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド等が挙げられる。
。
【0029】
(C)銅害防止剤の配合量は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.1〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。銅害防止剤の配合量が0.1質量部未満では金属と接触した際のポリプロピレン系樹脂劣化防止効果が十分に得られない虞があり、3質量部を超えると押出し成型の際にダイス口に銅害防止剤が析出して目ヤニとなる虞がある。
【0030】
(D)フェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ジフェノール系、トリフェノール系、及びポリフェノール系等を用いることができる。中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0031】
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピノキ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもいずれでも良い。
【0032】
(D)フェノール系酸化防止剤の配合量は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.1〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。酸化防止剤の配合量が0.1質量部未満では酸化劣化によりポリプロピレン系樹脂が劣化する虞があり、3質量部を超えると押出し成型の際にダイス口に酸化防止剤が析出して目ヤニとなる虞がある。
【0033】
(E)リン系熱安定剤は、加工熱安定剤であり、上記フェノール系酸化防止剤と併用される。上記リン系熱安定剤としては、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0034】
(E)リン系熱安定剤の配合量は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.1〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。リン系熱安定剤の配合量が、0.1質量部未満では酸化劣化によりポリプロピレン系樹脂が劣化する虞があり、3質量部を超えると押出し成型の際にダイス口に酸化防止剤が析出して目ヤニとなる虞がある。
【0035】
上記フェノール系酸化防止剤とリン系熱安定剤の配合割合は、フェノール系酸化防止剤:リン系熱安定剤=1:5〜5:1の範囲内が好ましい。配合割合は、樹脂の種類や加工条件等に応じて、適宜選択することができる。
【0036】
電線保護材用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外の成分を含有していてもよい。これらの成分として、具体的には、着色剤、帯電防止剤、滑剤、核剤等の添加剤が挙げられる。上記添加剤は、この種のポリプロピレン系樹脂組成物に添加される公知の材料が使用できる。
【0037】
本発明の電線保護材用組成物を調製するには、上記の各成分を公知の混合方法で混合すればよい。混合の際の配合順序、混合方法などは特に限定されない。具体的な混合方法としては、例えば、タンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、押出機(単軸、二軸)、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練機を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0038】
本発明の電線保護材は、上記電線保護材用組成物を用いて成形することで製造可能である。例えばコルゲートチューブは、上記電線保護材用組成物を、180〜250℃程度で溶融させて、成形ノズルのダイス口からチューブ状に連続的に押出して押出し成形を行う。上記電線保護材用組成物を用いることで、組成物が押し出される際に、ダイス口周囲に難燃剤成分が堆積してコルゲートに付着するのを抑制することができる。
【0039】
本発明の電線保護材は、上記の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなるものである。電線保護材の形状は、特に限定されず、電線、或いは電線束を保護可能な形状であればよい。電線保護材の形状としては、電線束の外周を覆い、内部の電線束を外部環境等から保護する役割を有するように形成されている。
【0040】
具体的な電線保護材の形状としてコルゲートチューブが挙げられる。コルゲートチューブの製造は、例えばポリオレフィン系樹脂組成物をチューブ状の管状製品として押し出した後、金型により蛇腹状のコルゲートチューブに成形することができる。
【0041】
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されているものである。
【0042】
ワイヤーハーネスに用いられる電線束は、絶縁電線のみがひとまとまりに束ねられた単独電線束、あるいは、絶縁電線と他の絶縁電線とが混在状態でひとまとまりに束ねられた混在電線束等を用いることができる。単独電線束及び混在電線束に含まれる電線本数は、特に限定されるものではない。
【0043】
上記形態の電線保護材用組成物を用いた電線保護材及びワイヤーハーネスは、長期耐熱性、難燃性が要求される、自動車用電線保護材及び自動車用ワイヤーハーネスとして好適に利用することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。尚、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0045】
[供試材料及び製造元等]
実施例及び比較例において使用した供試材料を製造元、商品名等と共に示す。
【0046】
(A)ポリプロピレン
・ブロックPP、プライムポリマー社製、商品名「J356HP」
【0047】
(B)難燃性付与剤
(B‐1)臭素系難燃剤
・臭素系難燃剤1、エチレンビス(ペンタブロモジフェニル)、アルベマール社製、商品名「SAYTEX8010」、融点350℃
・臭素系難燃剤2、エチレンビステトラブロモフタルイミド、アルベマール社製、商品名「SAYTEX BT‐93」、融点456℃
・臭素系難燃剤3、TBBA‐ビス(2,3‐ジブロモプロピルエーテル)、東ソー社製、商品名「フレームカット 121K」、融点117℃
・臭素系難燃剤4、ビス[3,5‐ジブロモプロポキシフェニル)]スルフォン、丸菱油化工業社製、商品名「ノンネンPR2」、融点40‐60℃
(B‐2)三酸化アンチモン、日本精鉱社製、商品名「PATOX‐CF」
(C)銅害防止剤(金属不活性化剤)
・2‐ヒドロキシ‐N‐1H‐1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルベンズアミド、ADEKA社製、商品名「アデカスタブCDA−1」、融点315‐325℃
(D)フェノール系酸化防止剤:BASF社製、商品名「IRGANOX1010」
(E)リン系熱安定剤:BASF社製、商品名「IRGAFOS168」
【0048】
以下、実施例、比較例の評価試験方法について説明する。表1に示す実施例、比較例の各成分を、二軸混練機を用いて、混練温度220℃にて混合した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して実施例、比較例に係る各組成物のペレットを得た。次いで得られた各ペレットを用い、ダンベル試験片及びコルゲートチューブを成形して、(1)難燃剤の堆積付着の有無、(2)長期耐熱性、(3)難燃性の評価試験を行った。試験片の作成方法と、評価試験方法は下記の通りである。
【0049】
[ダンベル試験片作成方法]
上記ダンベル試験片は、ペレットを220℃で加熱圧縮して得られた140mm×140mm×1mmのシートからJIS3号ダンベル型で打ち抜いて作成した。
【0050】
[コルゲートチューブ成形方法]
上記コルゲートチューブは、樹脂温度220℃、ブロー押出成形で、内径10mmのコルゲートチューブを200mmの長さに成形した。
【0051】
(1)難燃剤の堆積、付着の有無の試験方法
電線保護材用組成物を横型コルゲーターで押出成形した時に難燃剤が堆積して付着したかどうかを観察した。難燃剤の付着が見られた場合を有とし、付着が見られなかった場合を無として評価した。
【0052】
(2)長期耐熱性の試験方法
成形したコルゲートチューブの内部に、電線、編組線を通し、コルゲートチューブの両端をEPDMゴムで密封し、150℃‐150時間加熱処理を行った後、コルゲートチューブの割れの有無を観察した。割れが無かった場合を良好(○)とし、割れがあった場合を不良(×)とした。
【0053】
(3)難燃性の試験方法
厚さ1mmのJIS3号ダンベル試験片を用いて、JIS K 7201に準拠して、酸素指数(oxygen index:OI)を測定した。試験片に点火してから4秒以内に消炎する最大酸素濃度を測定して酸素指数とした。OIが22以上であれば、難燃性を満足できると判断した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、実施例1〜3は、融点が110℃以上の臭素系難燃剤を用いたものであり、三酸化アンチモン以外の金属酸化物を含有しないものであるから、難燃剤の堆積、付着がなく、長期耐熱性が良好であり、難燃性も十分、満足するものであった。これに対し、比較例1は融点が40‐60℃の臭素系難燃剤を用いたものであり、難燃性を有するものであるが、難燃剤の堆積、付着が有り、長期耐熱性も不良であった。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。