(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-151703(P2015-151703A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】土間コンクリートの施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20150728BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-24308(P2014-24308)
(22)【出願日】2014年2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】野口 恭司
(72)【発明者】
【氏名】織田 直毅
(72)【発明者】
【氏名】松崎 真豊
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA00
(57)【要約】
【課題】施工費用を安く抑え、かつひび割れ発生の抑制又は防止を可能にする。
【解決手段】開口12aを有する部材12を鉄板2の上に配置する。このとき、開口12aを有する部分12Aが該鉄板2から離れた位置に配置されるようにしておく。そして、該鉄板2の上に生コンクリートを打設すると、該打設された生コンクリートは前記開口12aを通り抜けながら隅々まで行き渡って前記部材12を埋設することとなる。その結果、コンクリートのひび割れは該部材12によって抑制される。また、該部材12は簡単な構造であるため、施工費用を安く抑えることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に生コンクリートを打設してなる、土間コンクリートの施工方法において、
地盤上に鉄板を敷設する工程と、
生コンクリートの通過を許容する複数の開口が形成される部分(以下、“開口形成部分”とする)と、該開口形成部分の少なくとも一部を前記鉄板から離間した位置に保持する部分(以下、“保持部分”とする)とを、前記鉄板上に配置する工程と、
生コンクリートが前記複数の開口を通過して前記開口形成部分の少なくとも一部を埋設するように該生コンクリートを前記鉄板の上に打設する工程と、
を備えたことを特徴とする土間コンクリートの施工方法。
【請求項2】
前記開口形成部分は、メッシュ状の部材であり、
前記保持部分は、該開口形成部分と前記鉄板との間に介装された部分である、
ことを特徴とする請求項1に記載の土間コンクリートの施工方法。
【請求項3】
前記開口形成部分は、面方向に張力が作用していない状態(以下、“第1の状態”とする)では複数の切り込みが入れられたシート状の部材であり、面方向に張力が作用した状態(以下、“第2の状態”とする)では該複数の切り込みが広げられて前記開口を形成する部材であり、
前記開口形成部分は、前記第1の状態で搬送されると共に前記第2の状態で前記鉄板の上に配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の土間コンクリートの施工方法。
【請求項4】
前記保持部分は、前記シート状の部材に切り込みを入れて前記開口形成部分と共に形成され、前記第2の状態においては前記鉄板の側に向けて突出する突起である、
ことを特徴とする請求項3に記載の土間コンクリートの施工方法。
【請求項5】
前記シート状の部材は、打設される生コンクリートに抗して前記第2の状態を保持できる程度の剛性を有する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の土間コンクリートの施工方法。
【請求項6】
前記保持部分は、前記開口形成部分に一体的に形成された部分である、
ことを特徴とする請求項2に記載の土間コンクリートの施工方法。
【請求項7】
前記開口形成部分及び前記保持部分は、交互に連続するように配置されて波板を形成し、
前記開口形成部分は、該波板の山部に配置されて前記鉄板から離間した位置に配置され、
前記保持部分は、該波板の谷部に配置されて前記開口形成部分を前記鉄板から離間した位置に保持する、
ことを特徴とする請求項6に記載の土間コンクリートの施工方法。
【請求項8】
前記保持部分は、前記鉄板に形成された突出部である、
ことを特徴とする請求項2に記載の土間コンクリートの施工方法。
【請求項9】
前記開口形成部分は、その長辺の縁部に複数の凹部又は切欠部が形成された複数の板状の部材(以下、“板状部材”とする)と、該複数の板状部材に交差すると共に前記凹部又は切欠部に係止されるように配置されて前記板状部材と共に前記開口を区画してなる長尺部材と、からなり、
前記保持部分は、前記板状部材の少なくとも一部を前記鉄板から離間した位置に保持するように配置された、
ことを特徴とする請求項1に記載の土間コンクリートの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に生コンクリートを打設してなる、土間コンクリートの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、倉庫や工場などの建築物においては、地盤上に生コンクリートを打設して床(土間コンクリート)が構築されており、その施工方法については種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような土間コンクリートにおいてはひび割れ発生の抑制や防止が望まれているが、その一つの方法として、土間コンクリート内に鉄筋(トラス筋)を埋設する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−196346号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JFE建材株式会社、床商品カタログ抜粋[PDF]、Rデッキ、[平成25年12月20日検索]、インターネット<http://www.j-ecc.gr.jp/inform/stacks/catalog_r.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トラス筋を土間コンクリートに埋設する場合には、トラス筋の分だけ土間コンクリートの施工費用が高くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる、土間コンクリートの施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
図1乃至
図4に例示するものであって、地盤(
図3及び
図4(a) の符号G参照)に生コンクリート(不図示)を打設してなる、土間コンクリートの施工方法において、
地盤(G)上に鉄板(2)を敷設する工程(S1)と、
生コンクリートの通過を許容する複数の開口(11b,12a,13a)が形成される部分(
図2(b) の符号11B,
図3の符号12A,及び
図4(a) (b) の符号13参照)。以下、“開口形成部分”とする)と、該開口形成部分(11B,12A,13)の少なくとも一部を前記鉄板(2)から離間した位置に保持する部分(
図3の符号12B及び
図4(a) の符号131b参照。以下、“保持部分”とする)とを、前記鉄板(2)上に配置する工程(S2,S3)と、
生コンクリートが前記複数の開口(11b,12a,13a)を通過して前記開口形成部分(11B,12A,13)の少なくとも一部を埋設するように該生コンクリートを前記鉄板(2)の上に打設する工程(S4)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、
図2(b) 及び
図3に例示するように、前記開口形成部分(11B,12A)が、メッシュ状の部材であり、
前記保持部分は、該開口形成部分(11B,12A)と前記鉄板(2)との間に介装された部分であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記開口形成部分(11B)が、
図2(a) に例示するように、面方向に張力が作用していない状態(以下、“第1の状態”とする)では複数の切り込み(11a)が入れられたシート状の部材(11A)であり、
図2(b) に例示するように、面方向に張力が作用した状態(以下、“第2の状態”とする)では該複数の切り込み(11a)が広げられて前記開口(11b)を形成する部材であり、
前記開口形成部分(11B)は、前記第1の状態で搬送されると共に前記第2の状態で前記鉄板(2)の上に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記保持部分が、前記シート状の部材に切り込みを入れて前記開口形成部分(11B)と共に形成され、前記第2の状態においては前記鉄板(2)の側に向けて突出する突起(不図示)であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に係る発明において、前記シート状の部材が、打設される生コンクリートに抗して前記第2の状態を保持できる程度の剛性を有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記保持部分(12B,131b)が、前記開口形成部分(12A,13)に一体的に形成された部分であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において、
図3に例示するように、前記開口形成部分(12A)及び前記保持部分(12B)が、交互に連続するように配置されて波板を形成し、
前記開口形成部分(12A)は、該波板の山部に配置されて前記鉄板(2)から離間した位置に配置され、
前記保持部分(12B)は、該波板の谷部に配置されて前記開口形成部分(12A)を前記鉄板(2)から離間した位置に保持することを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記保持部分が、前記鉄板(2)に形成された突出部(不図示)であることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項1に係る発明において、
図4(a) に例示するように、前記開口形成部分(13)が、その長辺の縁部に複数の凹部又は切欠部(131a)が形成された複数の板状の部材(符号131参照。以下、“板状部材”とする)と、該複数の板状部材(131)に交差すると共に前記凹部又は切欠部(131a)に係止されるように配置されて前記板状部材(131)と共に前記開口(
図3(b) の符号13a参照)を区画してなる長尺部材(132)と、からなり、
前記保持部分(131b)は、前記板状部材(131)の少なくとも一部を前記鉄板(2)から離間した位置に保持するように配置されたことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1,2,6〜9に係る発明によれば、前記開口形成部分によってコンクリートのひび割れを防止又は抑制することができる。また、該開口形成部分は簡単な構造であって製造コストを安く抑えることができるので、その分、土間コンクリートの施工費用も安く抑えることができる。
【0018】
請求項3〜5に係る発明によれば、前記開口形成部分を薄くてかさばらない状態で運搬することができ、運搬効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係る土間コンクリートの施工方法の一例を示すフローチャート図である。
【
図2】
図2(a) (b) は、開口形成部分の形状の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、開口形成部分の形状の他の例を示す斜視図である。
【
図4】
図4(a) は、開口形成部分の形状のさらに他の例を示す分解斜視図であり、同図(b) は、その平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1乃至
図4に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に係る土間コンクリートの施工方法は、地盤に生コンクリートを打設する方法であって、
図1に例示するように、
・ 地盤(
図3及び
図4(a) の符号G参照)上に鉄板(
図3及び
図4(a) の符号2参照)を敷設する工程(鉄板敷設工程)S1と、
・
図2(b) 及び
図3に例示するようなメッシュ状の部材11B,12Aや
図4(a) (b) に例示するような部材13(以下、総称して“開口形成部分”とする)を前記鉄板2上に配置する工程(開口形成部分配置工程)S3と、
・ 不図示の生コンクリートを該鉄板2の上に打設する工程(コンクリート打設工程)S4と、
を備えている。
【0022】
ここで、前記開口形成部分11B,12A,13は、生コンクリートの通過を許容する大きさの開口11b,12a,13aを複数有していて、生コンクリートを打設する際に該生コンクリートが該複数の開口11b,12a,13aを通過しつつ該開口形成部分11B,12A,13の全部(又は少なくとも一部)を埋設するようになっている。なお、この開口形成部分11B,12A,13は、樹脂(例えば、アラミド樹脂)や金属(例えば、鉄鋼)で形成すれば良く、3000N/mm
2以上の引張弾性率を有する材料で形成してコンクリートのひび割れの伝播を抑制できるようにすると良い。
【0023】
また、本発明に係る土間コンクリートの施工方法においては、前記開口形成部分11B,12A,13と前記鉄板2との間に空間を確保するためのもの(以下、“保持部分”とする)を前記鉄板2上に配置する工程(保持部分配置工程)S2を、生コンクリートを打設する前に実施するようになっており、前記開口形成部分11B,12A,13の全部又は少なくとも一部が前記鉄板2から離間した位置に保持されるようになっている。この保持部分は、前記開口形成部分11B,12A,13と前記鉄板2との間に介装された部分であれば良く、種々の態様のものを挙げることができる。例えば、
・ 前記開口形成部分11B,12A,13と前記鉄板2との間に介装される部材(該開口形成部分11B,12A,13や該鉄板2とは別の部材であって、スペーサの機能を有するもの)や、
・ 前記開口形成部分11B,12A,13から前記鉄板2の側に突出する部分であって該開口形成部分11B,12A,13に一体的に形成される部分(
図3の符号12B、及び
図4(a) の符号131b参照)や、
・ 前記開口形成部分11B,12A,13の側に突出するように前記鉄板2に形成された突出部(不図示)
などを挙げることができるが、もちろんこれらに限られるものではなく、前記開口形成部分11B,12A,13を前記鉄板2から離間した位置に保持できるものであれば他の構造や形状であっても良い。
【0024】
本発明によれば、前記開口形成部分は簡単な構造であって製造コストを安く抑えることができるので、その分、土間コンクリートの施工費用も安く抑えることができる。
【0025】
ところで、
図2(a) 及び(b) に例示するように、前記開口形成部分を、
・ 面方向に張力が作用していない状態(以下、“第1の状態”とする)では複数の切り込み11aが入れられたシート状の部材であり(
図2(a) 参照)、
・ 面方向に張力が作用した状態(以下、“第2の状態”とする)では該複数の切り込み11aが広げられて前記開口11bを形成する部材(
図2(b) 参照)
にすると良い。そして、土間コンクリートを打設する現場までトラック等で運搬する間は該開口形成部分を第1の状態で搬送し、前記鉄板2の上に配置する際に張力を掛けて第2の状態にすると良い。そのようにした場合には、前記開口形成部分を薄くてかさばらない状態で運搬することができ、運搬効率を上げることができる。
【0026】
また、前記保持部分は、前記シート状の部材11Aに切り込みを入れて前記開口形成部分と一体的に形成し、前記第2の状態においては該保持部分の切欠部分は前記鉄板2の側に向けて突出する突起(不図示)を形成するようにすると良い。そのようにした場合には、前記シート状の部材11Aに張力を掛けただけで、前記開口形成部分と前記保持部分の両方が形作られることとなり、作業性を向上させることができる。
【0027】
このシート状の部材は樹脂や金属で形成すると良いが、
・ 人力(作業者の力)だけで変形する程度の材質であって、
・ 打設される生コンクリートの勢いによっては前記開口が閉じない程度の剛性(つまり、打設される生コンクリートに抗して前記第2の状態を保持できる程度の剛性)
を有していると良い。なお、そのような剛性を有しない材料を使用する場合には、シート状の部材が前記第2の状態を維持するように生コンクリートを打設している間は張力を加えておくと良い。
【0028】
一方、
図3に例示するように、前記開口形成部分12A及び前記保持部分12Bを交互に連続するように配置して波板を形成し、前記開口形成部分12Aは、該波板の山部に配置されて前記鉄板2から離間した位置に配置され、前記保持部分12Bは、該波板の谷部に配置されて前記開口形成部分を前記鉄板2から離間した位置に保持するようにすると良い。この場合、
図3に示す構造のものは、前記開口形成部分12Aだけでなく前記保持部分12Bにも開口12aが形成されているので、生コンクリート打設時に該生コンクリートを隅々まで行き渡らせることができる。また、
図3に示す構造のものは、メッシュの板を波板に成形するだけで作製でき、簡単に製造することができる。
【0029】
また一方、前記開口形成部分は、
図4(a) (b) に例示するように、
・ その長辺の縁部に複数の凹部又は切欠部131aが形成された複数の板状の部材(以下、“板状部材”とする)131と、
・ 該複数の板状部材131に交差すると共に前記凹部又は切欠部131aに係止されるように配置されて前記板状部材131と共に前記開口13aを区画してなる長尺部材132と、
によって構成しても良い。ここで、前記長尺部材132は、板状の部材であっても良いし、棒状の部材(例えば、鉄筋)であっても良い。この長尺部材132にリブ又は節(前記凹部又は切欠部131aの開口寸法よりも大きなリブ又は節)を設けておいて、前記板状部材131が該リブ又は節によって位置決め(前記長尺部材132の長手方向についての位置決め)されるようにしておくと良い。また、前記板状部材131や前記長尺部材132には貫通孔(不図示)を穿設しておいて、生コンクリートが該貫通孔を通過できるようにしても良い。さらに、前記凹部や切欠部131aは、前記長尺部材132を係止できる形状であればどのような形状であっても良いが、組み立てを容易にするには開口寸法を大きくしておいて長尺部材132を係止し易いようにしておくと良い。またさらに、前記保持部分131bは、前記板状部材131の少なくとも一部を前記鉄板2から離間した位置に保持するように構成しておくと良い。また、前記板状部材131と前記長尺部材132とは組み立てない状態で現場(土間コンクリートを敷設する現場)まで搬送し、該現場にて組み立てるようにすると良い。
【0030】
ところで、上述した開口形成部分の表面には“リブ”とか“節”とか呼ばれる突起を複数(多数)設けておいても良い。そのようにした場合には、コンクリートが硬化した後で該開口形成部分とコンクリートとの付着性が良くなり、ひび割れを効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0031】
2 鉄板
11b 開口
11B 開口形成部分
12a 開口
12A 開口形成部分
12B 保持部分
13 開口形成部分
13a 開口
131 板状部材
131b 保持部分
132 長尺部材
G 地盤