【解決手段】瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造1は、瓦棒葺き屋根100の表面全体を覆う防水部材2と、瓦棒部101の少なくとも長手方向一部分を跨ぐように、防水部材2と瓦棒葺き屋根100の表面との間、または、防水部材2の表面に配置される雪止め支持部材5と、瓦棒葺き屋根100の屋根材を貫通して、屋根材を支える屋根基部106に雪止め支持部材5を固定する第1固定部材6と、防水部材2の上方で、且つ、雪止め支持部材5の瓦棒部101を覆う部分の上方に配置される雪止めバー7と、雪止め支持部材5に雪止めバー7を固定する第2固定部材8とを備える。
前記雪止め支持部材と瓦棒葺き屋根の表面との間に、前記第1固定部材を取り囲むように配置された第1シール部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
瓦棒葺き屋根を防水部材で覆いつつ、雪止め金具を設置したい場合がある。しかしながら、心木を有する瓦棒葺き屋根を防水部材で覆った後で、従来の雪止め金具を設置する場合、ゴムまたは樹脂製の防水キャップに釘を貫通させなければならないため、釘が打ちにくい。また、防水キャップ体は設置しやすいように瓦棒部よりも若干大きめに型付けされているため、防水キャップに釘を打つと防水キャップが変形し、防水シートとの接合部に隙間ができるため、防水性を確保することができなかった。このような理由から実施が不可能であった。また、吊子を有する瓦棒葺き屋根を防水部材で覆った後で、従来の雪止め金具を設置する場合、防水キャップ体は厚みがあり平坦状であるため、瓦棒部を防水部材で覆うと雪止め金具を突起に引っ掛けることができず、両側から締め付けるだけでは雪止め金具を強固に固定することができなくなる。そのため、積雪荷重によって雪止め金具が防水キャップ体に対してずれるという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、瓦棒部の形状や内部構造に関わらず、瓦棒葺き屋根の表面全体を防水部材で覆いつつ、雪止めを強固に瓦棒葺き屋根に固定することができる瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造とその施工法を提供することを目的とする。
【0010】
第1の発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造は、屋根の傾斜に沿って延びる複数の瓦棒部を有する瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造であって、瓦棒葺き屋根の表面全体を覆う防水部材と、瓦棒部の少なくとも長手方向一部分を跨ぐように、前記防水部材と瓦棒葺き屋根の表面との間、または、防水部材の表面に配置される雪止め支持部材と、瓦棒葺き屋根の屋根材を貫通して、屋根材を支える屋根基部に前記雪止め支持部材を固定する第1固定部材と、前記防水部材の上方で、且つ、前記雪止め支持部材の瓦棒部を覆う部分の上方に配置され、水平に延びる雪止めバーと、前記雪止め支持部材に前記雪止めバーを固定する第2固定部材とを備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、瓦棒葺き屋根の表面全体を覆う防水部材の上方または下方に配置された雪止め支持部材が屋根基部に固定されており、この雪止め支持部材に雪止めバーが固定されている。そのため、瓦棒葺き屋根の表面全体を防水部材で覆いつつ、雪止め支持部材と雪止めバーを屋根に固定することができる。
また、雪止め支持部材は、瓦棒葺き屋根の屋根材を貫通する第1固定部材によって、屋根材を支える屋根基部に固定されるため、瓦棒部の形状や内部構造に関わらず、雪止め支持部材を瓦棒葺き屋根に強固に固定することができる。
【0012】
第2の発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造は、第1の発明において、前記雪止め支持部材と瓦棒葺き屋根の表面との間に、前記第1固定部材を取り囲むように配置された第1シール部材を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、雪止め支持部材と瓦棒葺き屋根の表面との間に配置された第1シール部材によって、屋根材に形成された第1固定部材を挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。
【0014】
第3の発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造は、第1または第2の発明において、前記第1固定部材が、前記雪止め支持部材を貫通しており、前記雪止め支持部材の表面に、前記第1固定部材を覆うように配置された第2シール部材を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、第1固定部材を覆う第2シール部材によって、雪止め支持部材に形成された第1固定部材を挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。したがって、屋根材に水が侵入するのを防止できる。
【0016】
第4の発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記雪止め支持部材が、前記防水部材と瓦棒葺き屋根の表面との間に配置されており、前記第2固定部材が、前記防水部材を貫通しており、前記雪止めバーと前記防水部材との間、および、前記防水部材と前記雪止め支持部材との間の少なくとも一方に、前記第2固定部材を取り囲むように配置された第3シール部材を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によると、雪止めバーと防水部材との間、または、防水部材と雪止め支持部材との間に配置された第3シール部材によって、防水部材と雪止め支持部材との間に外部から水が侵入するのを防止できる。したがって、屋根材に水が侵入するのを防止できる。
【0018】
第5の発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造は、第1〜第4の発明のいずれかにおいて、前記第2固定部材が、前記雪止め支持部材から上方に突出するように前記雪止め支持部材に固定され、少なくとも前記雪止めバーを貫通するボルトと、前記ボルトの前記雪止めバーから露出した部分に締結されるナットとを有することを特徴とする。
【0019】
この構成によると、雪止め支持部材に固定されて雪止めバーを貫通するボルトにナットを締結することで、雪止め支持部材と雪止めバーとを固定することができるため、雪止めバーの設置と取り外しが容易である。
【0020】
第6の発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造は、第5の発明において、前記雪止め支持部材が、前記防水部材と瓦棒葺き屋根の表面との間に配置されており、前記ナットと前記雪止めバーとの間に、前記ボルトを取り囲むように配置された第4シール部材を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によると、ナットと雪止めバーとの間に配置される第4シール部材によって、雪止めバーに形成されたボルトを挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。それにより、防水部材に形成されたボルトを挿通する孔に水が侵入するのを防止でき、その結果、屋根材に水が侵入するのを防止できる。
【0022】
第7の発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造は、第1〜第6の発明のいずれかにおいて、前記防水部材が、瓦棒部を覆うように瓦棒部の長手方向全域にわたって配置される防水キャップ体と、瓦棒葺き屋根の表面における瓦棒部以外の部分を覆うと共に、前記キャップ部に接合される防水シートとを有することを特徴とする。
【0023】
この構成によると、防水部材が、瓦棒部を覆う防水キャップと、瓦棒葺き屋根の表面における瓦棒部以外の部分を覆う防水シートとからなるため、瓦棒葺き屋根の表面形状に沿って防水部材を容易に設置することができる。
【0024】
また、本発明に係る瓦棒葺き屋根の雪止め工法を伴った防水工法は、屋根の傾斜に沿って延びる複数の瓦棒部を有する瓦棒葺き屋根の雪止め工法を伴った防水工法であって、瓦棒部の少なくとも長手方向一部分を跨ぐように雪止め支持部材を配置した後、瓦棒葺き屋根の屋根材を貫通する第1固定部材によって、屋根材を支える屋根基部に前記雪止め支持部材を固定する雪止め支持部材設置工程と、前記雪止め支持部材設置工程の前または後に、瓦棒葺き屋根の表面全体を防水部材で覆う防水部材設置工程と、前記防水部材設置工程と前記防水部材設置工程の後に、前記雪止め支持部材の瓦棒部を覆う部分の上方に雪止めバーを配置して、第2固定部材によって、前記雪止め支持部材に前記雪止めバーを固定する雪止めバー設置工程とを有することを特徴とする。この構成によると、第1の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造1(以下、雪止め有り防水構造1という)を示している。まず、雪止め有り防水構造1が適用される瓦棒葺き屋根100の構造について説明する。
【0027】
瓦棒葺き屋根100は、屋根の傾斜に沿って延びる複数の瓦棒部101が平行に配列された構造を有する。瓦棒葺き屋根100は、屋根下地板(野地板)105の上に、複数の屋根板(溝板)102、複数のキャップ103、および複数の通し吊子104を備えている。屋根下地板105の下方には、水平方向に延びる複数の垂木(屋根基部)106が屋根の傾斜方向に配列されている。この垂木106によって屋根材(屋根板102、キャップ103、通し吊子104、屋根下地板105)は支えられている。なお、以下の説明において垂木106の延在方向と平行な方向を屋根幅方向という。
【0028】
図2に示すように、屋根板102は、金属板で構成されており、その両端部に垂直に折り曲げられた立ち上がり部102aを有する。複数の屋根板102は、屋根幅方向に所定の間隔を空けて配列されている。通し吊子104は、隣接する2枚の屋根板102の間に配置されている。通し吊子104の屋根の傾斜方向の長さは、屋根板102の長さと同じである。通し吊子104は、断面略U字状の金属板で構成されている。通し吊子104と屋根下地板105とを貫通して垂木106に打ち込まれたビス(図示省略)などによって、通し吊子104は垂木106に固定されている。
【0029】
キャップ103は、金属板からなり、通し吊子104とその両側の立ち上がり部102aにかぶせられている。キャップ103の端部と通し吊子104の端部と屋根板102の立ち上がり部102aの上端部は、折り曲げ構造によって互いに係止されている。具体的には、キャップ103の端部を、通し吊子104の端部と立ち上がり部102aの上端部を挟むように折り曲げた後、通し吊子104の端部と立ち上がり部102aの上端部とキャップ103の端部とをまとめて折り曲げた構成となっている。そのため、瓦棒部101の両側壁の上端部は外側に突出している。瓦棒部101は、キャップ103とその両側の立ち上がり部102aで構成されている。
【0030】
図3に示すように、雪止め有り防水構造1は、防水部材2、複数の雪止め支持部材5、ビス(第1固定部材)6、雪止めバー7、複数の固定部材8(第2固定部材)、複数のシール部材11〜16、複数の平座金17、および複数のばね座金18を備えている。
【0031】
図5に示すように、雪止め支持部材5は、瓦棒部101の長手方向一部分を跨ぐように配置される。より詳細には、雪止め支持部材5は、上方から見て、瓦棒部101と、1本の垂木106とが交差する位置に配置される。
図1に示すように、本実施形態の雪止め支持部材5は、屋根幅方向の所定長さの範囲内の複数の瓦棒部101に対して1つおきに配置されているが、2つおきに配置してもよく、また全ての瓦棒部101に配置してもよい。
【0032】
雪止め支持部材5は、断面ハット形状に形成された金属板で構成されている。雪止め支持部材5の鍔部5aは、シール部材(第1シール部材)11を介して屋根板102の上面に配置される。シール部材11は、矩形状のシートであって、その大きさは雪止め支持部材5の鍔部5aよりも若干大きい。シール部材11は、非加硫ゴムからなり、自己粘着性によって屋根板102に貼り付けられている。接着剤を併用してより強固に固定してもよい。
【0033】
雪止め支持部材5の鍔部5aには孔が形成されている。この孔に上方から挿通されて、シール部材11および屋根下地板105を貫通して垂木106に打ち込まれるビス6によって、雪止め支持部材5は垂木106に固定されている。ビス6は、先端がドリル状になっており、鋼材に下穴を開けずに貫通でき、かつ鋼材側にネジ山が形成されるのでネジ締め固定できる。なお、屋根裏に入ることが可能であれば、ビス6の代わりにボルトとナットを用いて固定してもよい。
【0034】
雪止め支持部材5の鍔部5aの上面には、シール部材(第2シール部材)12が配置される。シール部材12は、シール部材11とほぼ同じものが用いられる。シール部材12は、ビス6の頭部を覆っている。シール部材12は、雪止め支持部材5の鍔部5aに自己粘着性によって貼り付けられている。また、シール部材12の鍔部5aからはみ出した部分は、自己粘着性によってシール部材11に貼り付けられている。接着剤を併用してより強固に固定してもよい。
【0035】
また、雪止め支持部材5の天面部5b(凹状部の底板部分)には、ボルト9が貫通しており、このボルト9の下端は溶接により雪止め支持部材5の天面部5bに固定されている。つまり、ボルト9は、雪止め支持部材5から上方に突出するように、雪止め支持部材5に固定されている。このボルト9と後述するナット10によって、固定部材(第2固定部材)8が構成される。
【0036】
雪止め支持部材5の天面部5bの上面には、シール部材(第3シール部材)13が配置されており、このシール部材13にはボルト9が貫通している。シール部材13は、矩形状のシートであって、その大きさは雪止め支持部材5の天面部5bの大きさとほぼ同じである。シール部材13は、加硫ゴムシートに非加硫ゴムシートを貼り合わせた構造であって、非加硫ゴムシートの自己粘着性によって、雪止め支持部材5の天面部5bに貼り付けられている。接着剤を併用してより強固に固定してもよい。非加硫ゴムシートだけでは変形しやすいが、加硫ゴムシートと重ねることで形状を保持できるので、ボルト9に貫通させて貼る作業が行いやすくなる。各シール部材13の厚みは、複数のシール部材13の上面の高さが揃うように、設置箇所に応じて設定されている。
【0037】
防水部材2は、雪止め支持部材5およびシール部材12、13を覆いつつ、瓦棒葺き屋根100の表面全体を覆っている。また、防水部材2の表面は、外観性、耐候性、遮熱性等の向上のため塗装されている。防水部材2は、複数の防水キャップ体3と複数の防水シート4で構成されている。
【0038】
防水キャップ体3は、瓦棒部101ごとに設けられており、瓦棒部101をその長手方向全域にわたって覆っている。
図3および
図4に示すように、雪止め支持部材5が設置された瓦棒部101においては、防水キャップ体3は、雪止め支持部材5と瓦棒部101とを覆う。防水キャップ体3の雪止め支持部材5を覆う部分には、ボルト9が貫通している。なお、
図4は、
図1のB−B線に沿った切断面のみを表示した切断部端面図である。
【0039】
防水キャップ体3は、弾性変形可能な材質で形成され、断面ハット形状に型付けされている。防水キャップ体3の凹状部は、雪止め支持部材5の凹状部より若干大きい。また、防水キャップ体3の鍔部3aの屋根幅方向長さは、シール部材12の屋根幅方向長さとほぼ同じである。防水キャップ体3の鍔部3aは、接着剤によってシール部材12に貼り付けられている。
【0040】
防水キャップ体3は、強制的に変形させても元の形へ回復し易く、且つ、硬質で耐候性に優れ腐食されにくい材質で形成されている。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、ポリビニルクロライド、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、SBS、SEBS、SIS等の樹脂や、あるいはそれらの樹脂とEPT、EPDM、IIR、CR等のゴムのブレンド系物が挙げられる。特に、形状の回復性が望まれるために、加熱すれば元の状態に戻りやすい素材の使用も可能である。
【0041】
防水シート4は、瓦棒葺き屋根100の表面における瓦棒部101以外の部分を覆っている。防水シート4の端部は、防水キャップ体3の鍔部3aの上面に貼り付けられている。また、防水シート4の端部以外の部分は、屋根板102の上面に貼り付けられている。防水シート4は、防水シート4自体に粘着層を設けて貼り付けても、接着剤によって貼り付けてもよい。
【0042】
防水シート4は、ゴムまたは樹脂で形成されており弾性変形可能であって、防水キャップ体3よりも柔軟性が高い。防水シート4を構成するゴムとしては例えばEPDM、IIRあるいはこれらのブレンド物が挙げられ、樹脂としては例えばポリビニルクロライド、ポリエチレン等が挙げられる。
【0043】
また、防水キャップ体3の天面部3bの上面には、シール部材(第3シール部材)14が配置されており、このシール部材14にはボルト9が貫通している。シール部材14は、矩形状のシートであって、その大きさは、防水キャップ体3の天面部3bの大きさとほぼ同じである。シール部材14は、シール部材13と同様に加硫ゴムシートに非加硫ゴムシートを貼り合わせた構造であって、非加硫ゴムシートの自己粘着性によって防水キャップ体3に貼り付けられている。接着剤を併用してより強固に固定してもよい。また、シール部材14の表面には、防水部材2の表面と同様の塗装が施されている。
【0044】
雪止めバー7は、屋根に積もった雪が屋根から雪が落下するのを防止するためのものである。雪止めバー7は、防水キャップ体3の雪止め支持部材5を覆う部分の上面にシール部材14を介して配置されており、屋根幅方向(水平方向)に沿って延びている。雪止めバー7の屋根幅方向の長さは、屋根の幅と同じであっても、それより短くてもよい。
【0045】
雪止めバー7は、台座部7aと立ち上がり部7bとからなる断面L字状の金属板で構成されている。雪止めバー7の台座部7aは、シール部材14の上面に配置される。立ち上がり部7bは、台座部7aの上側の端部から上方に延びており、屋根の積雪を支える。
【0046】
台座部7aには、ボルト9が貫通している。また、台座部7aとシール部材14との間には、シール部材(第3シール部材)15が配置される。シール部材15は、ボルト9の周囲に塗布されたペースト状の非加硫ゴムで構成されている。台座部7aから露出するボルト9の先端部にナット10が締結されることで、雪止めバー7は雪止め支持部材5に固定されている。ナット10と雪止めバー7との間には、フェルト製のシール部材(第4シール部材)16と、平座金17と、ばね座金18とが配置されている。
【0047】
次に、雪止め有り防水構造1の施工手順について説明する。
【0048】
(雪止め支持部材設置工程)
まず、垂木106の位置を確認して、複数の雪止め支持部材5を設置する位置を決める。そして、屋根板102の上に、シール部材11と雪止め支持部材5とを配置して、雪止め支持部材5をビス6によって垂木106に固定する。その後、雪止め支持部材5の鍔部5aの上面にシール部材12を配置する。また、雪止め支持部材5の天面部5bの上面にシール部材13を配置する。
【0049】
(防水部材設置工程)
その後、各瓦棒部101に防水キャップ体3をかぶせてから、瓦棒葺き屋根100の表面の瓦棒部101以外の部分を防水シート4で覆って、防水シート4と防水キャップ体3とを接着剤により接合する。次に、防水キャップ体3の天面部3bの上面にシール部材14を配置してから、防水部材2およびシール部材14の表面を塗装する。
【0050】
(雪止めバー設置工程)
次に、複数のシール部材14から露出している複数のボルト9の位置に合わせて、雪止めバー7の台座部7aにボルト9を挿通するための複数の孔を開ける。その後、シール部材14の上面のボルト9の周囲に、シール部材15を形成するためのシーリング材を塗布する。そして、雪止めバー7の台座部7aに設けた孔にボルト9を挿通して、複数のシール部材14の上に雪止めバー7を配置する。その後、シール部材16、平座金17、ばね座金18、ナット10を順にボルト9に装着し、ナット10を締めつけて雪止めバー7を複数の雪止め支持部材5に固定する。
【0051】
なお、本実施形態の雪止め有り防水構造101は、瓦棒葺き屋根100の新設時に同時に施工してもよく、既存の瓦棒葺き屋根100に施工してもよい。
【0052】
本実施形態の雪止め有り防水構造1では、瓦棒葺き屋根100の表面全体を覆う防水部材2の上方または下方に配置された雪止め支持部材5が垂木(屋根基部)106に固定されており、この雪止め支持部材5に雪止めバー7が固定されている。そのため、瓦棒葺き屋根100の表面全体を防水部材2で覆いつつ、雪止めバー7と雪止め支持部材5を屋根に固定することができる。
また、雪止め支持部材5は、瓦棒葺き屋根100の屋根材を貫通するビス6によって屋根材を支える垂木106に固定されるため、瓦棒部101の形状や内部構造に関わらず、雪止め支持部材5を瓦棒葺き屋根100に強固に固定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、雪止め支持部材5の鍔部5aと屋根板102の上面との間に、ビス6を取り囲むようにシール部材11が配置されているため、屋根材(屋根板102、屋根下地板105)に形成されたビス6を挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。
【0054】
また、本実施形態では、雪止め支持部材5の鍔部5aの上面に、ビス6を覆うようにシール部材12が配置されているため、雪止め支持部材5の鍔部5aに形成されたビス6を挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。したがって、屋根材に水が侵入するのをより確実に防止できる。
【0055】
また、本実施形態では、防水部材2と雪止め支持部材5との間に、ボルト9を取り囲むようにシール部材13が配置されており、雪止めバー7と防水部材2との間に、ボルト9を取り囲むようにシール部材14、15が配置されている。これにより、防水部材2と雪止め支持部材5との間に外部から水が侵入するのを防止できる。したがって、屋根材に水が侵入するのをより確実に防止できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、ナット10と雪止めバー7との間に、ボルト9を取り囲むようにシール部材16が配置されているため、雪止めバー7に形成されたボルト9を挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。それにより、防水部材2に形成されたボルト9を挿通する孔に水が侵入するのを防止でき、その結果、屋根材に水が侵入するのをより確実に防止できる。
【0057】
また、本実施形態では、雪止め支持部材5に固定されて雪止めバー7を貫通するボルト9にナット10を締結することで、雪止め支持部材5と雪止めバー7とを固定することができるため、雪止めバー7の設置と取り外しが容易である。
【0058】
また、本実施形態では、防水部材2が、瓦棒部101を覆う防水キャップ体3と、瓦棒葺き屋根100の表面における瓦棒部101以外の部分を覆う防水シート4とからなるため、瓦棒葺き屋根100の表面形状に沿って防水部材2を容易に設置することができる。
【0059】
また、本実施形態では、雪止め支持部材5が防水部材2で覆われるため、屋根の美観が良好であると共に、雪止め支持部材5が錆びにくく、傷つきにくい。
【0060】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態の瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造201(以下、雪止め有り防水構造201という)は、第1実施形態と同様の瓦棒葺き屋根100に適用される。
【0061】
上記第1実施形態の雪止め有り防水構造1では、瓦棒部101と防水部材2との間に雪止め支持部材5が配置されていたのに対して、本実施形態の雪止め有り防水構造201では、防水部材2の表面に雪止め支持部材205が配置される。本実施形態の雪止め有り防水構造201は、複数の雪止め支持部材205、複数のビス(第1固定部材)6、防水部材2、雪止めバー7、複数の固定部材(第2固定部材)8、および複数のシール部材211、212を有する。
【0062】
防水部材2は、第1実施形態と同様に、複数の防水キャップ体3と複数の防水シート4とを有し、瓦棒葺き屋根100の表面全体を被覆する。防水部材2の表面は、第1実施形態と同様に塗装されている。防水キャップ体3の鍔部3aは、屋根板102の上面に貼り付けられている。防水シート4の端部は、第1実施形態と同様に、防水キャップ体3の鍔部3aの上面に貼り付けられており、防水シート4の端部以外の部分は、屋根板102の上面に貼り付けられている。
【0063】
防水キャップ体3の鍔部3aと防水シート4の重なる部分には、雪止め支持部材5を垂木106に固定するための複数のビス6が貫通している。また、防水シート4の上面には、ビス6が貫通した状態で、シール部材(第1シール部材)211が配置されている。シール部材211は、矩形状のシートであって、その大きさは雪止め支持部材205の鍔部205aよりも若干大きい。シール部材211は、第1実施形態のシール部材11、12と同様に、非加硫ゴムからなり、自己粘着性によって防水シート4に貼り付けられている。接着剤を併用してより強固に固定してもよい。
【0064】
雪止め支持部材205は、防水キャップ体3の上方に、瓦棒部101の長手方向一部分を跨ぐように配置される。複数の雪止め支持部材205は、第1実施形態と同様に、1本の垂木106に沿って配置される。雪止め支持部材205は、断面ハット形状に形成された金属板で構成されている。雪止め支持部材205の凹状部は、防水キャップ体3の凹状部より若干大きい。
【0065】
雪止め支持部材205の鍔部205aは、シール部材211を介して、防水部材2の上面に配置される。雪止め支持部材205の鍔部205aには孔が形成されている。この孔に上方から挿通されて、シール部材211、防水部材2および屋根下地板105を貫通して垂木106に打ち込まれるビス6によって、雪止め支持部材205は垂木106に固定されている。雪止め支持部材205の天面部205bには、上記第1実施形態の雪止め支持部材5と同様にボルト9が溶接されている。
【0066】
また、雪止め支持部材205の鍔部205aの上面には、シール部材(第2シール部材)212が配置される。シール部材212の大きさは、シール部材211とほぼ同じである。シール部材212は、ビス6の頭部を覆っている。シール部材212は、第1実施形態のシール部材13、14と同様に、加硫ゴムシートに非加硫ゴムシートを貼り合わせた構造であって、非加硫ゴムシートの自己粘着性によって、雪止め支持部材205の鍔部205aに接着剤によって貼り付けられている。接着剤を併用してより強固に固定してもよい。また、シール部材212の鍔部205aからはみ出した部分は、シール部材211に貼り付けられている。
【0067】
雪止めバー7は、雪止め支持部材205の天面部205bの上面に配置される。雪止めバー7の台座部7aには、雪止め支持部材205の天面部205bから上方に突出するボルト9が貫通している。このボルト9にナット10が締結されることで、雪止めバー7は雪止め支持部材205に固定されている。ナット10と雪止めバー7との間には、平座金17とばね座金18とが配置されている。
【0068】
次に、雪止め有り防水構造201の施工手順について説明する。
【0069】
(防水部材設置工程)
各瓦棒部101に防水キャップ体3をかぶせてから、瓦棒葺き屋根100の表面の瓦棒部101以外の部分を防水シート4で覆って、防水シート4と防水キャップ体3とを接着剤により接合する。その後、防水部材2の表面を塗装する。
【0070】
(雪止め支持部材設置工程)
垂木106の位置を確認して、複数の雪止め支持部材205を設置する位置を決める。そして、防水部材2の上に、シール部材211と雪止め支持部材205とを配置して、雪止め支持部材205をビス6によって垂木106に固定する。その後、雪止め支持部材205の鍔部205aの上にシール部材212を配置する。
【0071】
(雪止めバー設置工程)
次に、複数の雪止め支持部材205の天面部205bから突出している複数のボルト9の位置に合わせて、雪止めバー7の台座部7aにボルト9を挿通するための複数の孔を開ける。そして、この孔にボルト9を挿通して、雪止め支持部材205の天面部205bの上面に雪止めバー7を配置する。その後、平座金17、ばね座金18、ナット10をボルト9に装着し、ナット10を締めつけて雪止めバー7を複数の雪止め支持部材205に固定する。
【0072】
なお、本実施形態の雪止め有り防水構造201は、瓦棒葺き屋根100の新設時に同時に施工してもよく、既存の瓦棒葺き屋根100に施工してもよい。また、防水工程を終了してから一定期間あけて、雪止め支持部材設置工程と雪止めバー設置工程を行ってもよい。
【0073】
本実施形態の雪止め有り防水構造201では、上記第1実施形態と同様に、瓦棒部101の形状や内部構造に関わらず、瓦棒葺き屋根100の表面全体を防水部材2で覆いつつ、雪止めバー7と雪止め支持部材205を屋根に強固に固定することができる。
【0074】
また、本実施形態では、雪止め支持部材205の鍔部205aと防水部材2との間に、ビス6を取り囲むようにシール部材211が配置されているため、屋根材(屋根板102、屋根下地板105)に形成されたビス6を挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。
【0075】
また、本実施形態では、雪止め支持部材205の鍔部205aの上面に、ビス6を覆うようにシール部材212が配置されているため、雪止め支持部材205の鍔部205aに形成されたビス6を挿通する孔に水が侵入するのを防止できる。したがって、屋根材に水が侵入するのをより確実に防止できる。
【0076】
また、本実施形態では、雪止め支持部材205は防水部材2の上方に配置される。そのため、瓦棒葺き屋根の既設の防水構造に対して、後から雪止め支持部材205と雪止めバー7だけを設定することができる。
【0077】
また、第1実施形態の雪止め有り防水構造1では、雪止め支持部材5の凹状部の形状は、瓦棒部101の大きさと、防水キャップ体3の凹状部の大きさによって制約を受けることになる。一方、本実施形態の雪止め有り防水構造201では、雪止め支持部材205は、防水キャップ体3の上方に配置されるので、雪止め支持部材205の凹状部の形状は、防水キャップ体3の凹状部の大きさによってのみ制約を受けることとなる。したがって、雪止め支持部材205の形状の自由度が高い。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の第1および第2実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0079】
上記第1および第2実施形態では、雪止め支持部材5、205は、垂木106に打ち込まれたビス6で垂木106に固定されているが、雪止め支持部材5、205を垂木106に固定する固定部材(第1固定部材)の構成はビス6に限定されるものではない。
【0080】
上記第1および第2実施形態では、防水部材2は、防水キャップ体3と防水シート4で構成されているが、防水部材2は、防水性を有し屋根表面全体を覆うことが可能であれば、上記以外の構成であってもよい。
【0081】
シール部材11〜16、211、212、平座金17、およびばね座金18は、それぞれ、設けなくてもよい。
【0082】
第2実施形態の変更例として、防水キャップ体3の鍔部3aと屋根板102の上面との間に、ビス6を取り囲むようにシール部材(第1シール部材)を配置してもよい。
【0083】
上記第1および第2実施形態では、雪止めバー7は屋根の1面に1本だけ設けられているが、2本以上設けられていてもよい。例えば、瓦棒部101同士の間隔よりも短い幅の複数の雪止めバーを、1本の垂木の上方に一直線状に配置してもよい。また、瓦棒部101同士の間隔よりも短い幅の複数の雪止めバーを、2本の垂木の上方に交互に配置してもよい。
【0084】
上記実施形態の瓦棒葺き屋根100は、瓦棒部101の内側に通し吊子104が配置された構成となっているが、本発明が適用される瓦棒葺き屋根の構成は、上記に限定されるものではない。通し吊子104の代わりに、通し吊子104と断面形状が同じであって通し吊子104よりも短い複数の部分吊子が、間隔を空けて配置されていてもよい。部分吊子は、垂木の上方に配置されてビスなどで垂木に固定される。また、通し吊子104の代わりに、木製の角柱からなる心木が瓦棒部101の内側に配置されていてもよい。この場合、キャップ103と屋根板102の立ち上がり部102aと心木とを互いに係止する構造は、心木を備えた従来の瓦棒葺き屋根と同様であり、具体的な説明は省略する。
【0085】
上記実施形態の垂木106は、C型鋼であるが、H型鋼などC型鋼以外の鋼材であってもよく、木製の角材であってもよい。なお、
図3ではビス6は垂木106を貫通しているが、垂木が木製の角材の場合にはビス6は垂木を貫通していなくてよい。
【0086】
上記実施形態では、複数の垂木106は、瓦棒部101と直交する方向に沿って配置されているが、例えば
図7に示すように、複数の垂木306aが、瓦棒部101と交差する方向(
図7では瓦棒部101に対して45度の方向)に沿って配置され、別の複数の垂木306bが、垂木306aと直交するように配置されていてもよい。つまり、複数の垂木306a、306bが格子状に配置されていてもよい。なお、
図7では、防水部材2を省略して表示している。この場合、瓦棒部101は、上方から見て垂木306aと垂木306bが交差する箇所を通るように配置される。そのため、雪止め支持部材5は、垂木306aと垂木306bが交差する箇所の上方に配置される。
【実施例】
【0087】
次に、本発明の効果を実証するために行った試験について説明する。
図8(a)は、本発明の瓦棒葺き屋根の雪止め構造を伴った防水構造の試験装置の概略構造を示している。この試験装置では、垂木に相当するC型鋼31を、その長手方向が水平方向となるように加圧装置(図示省略)に固定した。このC型鋼31に上記第1実施形態の雪止め支持部材5をビス6で固定した。また、雪止め支持部材5のボルト9が突出する箇所に防水キャップ体33と雪止めバー37を配置して、ボルト9にナット10を締結して雪止めバー37を雪止め支持部材5に固定した。なお、防水キャップ体33と雪止めバー37は、上記第1実施形態の防水キャップ体3と雪止めバー7をそれぞれ短くカットしたものである。
【0088】
試験は、雪止めバー37の上面を加圧板60で押圧し、その荷重を徐々に大きくしていき、ビス6が破損したときの荷重を測定した。その結果は、6.7kNであった。
【0089】
また、本発明の比較対象として、従来の瓦棒葺き屋根の防水構造に従来の雪止め金具72を設置した場合の試験装置でも試験を行った。
図8(b)は、この試験装置の概略構成を示している。この試験装置では、内部に通し吊子が配置された瓦棒部に相当する部材71を、その長手方向が上下方向となるように加圧装置(図示省略)に固定した。この瓦棒部相当部材71に防水キャップ体33をかぶせて、その上から実公昭64−4978と同様の雪止め金具72を取り付けた。雪止め金具72は、瓦棒部の両側面の上端部の突起を把持して、ボルト72bとナットによって締め付けられる把持部72aを有する。また、雪止め金具72の雪止め板72cの大きさは、雪止めバー37の大きさと同じとした。
【0090】
試験は、雪止め板72cの上面を加圧板60で押圧し、その荷重を徐々に大きくしていき、雪止め金具72がずれたときの荷重を測定した。その結果は、1.5kNであった。このとき、雪止め板72cの先端(
図8(b)中の右端)が下向きに傾くように、雪止め金具72の把持部72aが防水キャップ体33に対してずれた。
【0091】
また、別の比較対象として、瓦棒部に相当する部材71に直接、従来の雪止め金具72を設置した場合についても試験を行った。試験装置の構成は、防水キャップ体33の有無以外は、
図8(b)と同様である。試験は、上述の試験と同様に、雪止め金具72がずれるまで、雪止め板72cに加える荷重を徐々に大きくしていった。雪止め金具72がずれたときの荷重は5.1kNであって、雪止め板72cの先端が下向きに傾くように、雪止め金具72は瓦棒部相当部材71に対してずれた。
【0092】
以上の試験結果から、本発明の雪止め構造を伴った防水構造では、従来の雪止め金具を設置した場合よりも、雪止めを屋根に強固に固定できることがわかる。