【課題】通信装置における車両に係る所定のプログラムの起動、又は車載装置との無線通信LAN機能の有効化を、ユーザが車両に乗り込もうとするタイミングに合わせて自動的に実行し、ユーザの操作を簡易化することができる車載通信システム、通信装置及び通信制御方法を提供する。
【解決手段】所定の距離内に存在する機器との無線通信手段と、該無線通信手段の無線通信機能の有効/無効を切り替える切替手段とを備える通信装置、及び車両に搭載される車載装置を含み、前記通信装置が前記無線通信手段により前記車載装置と通信を行なう車載通信システムにおいて、前記通信装置は、前記車両のドアが開錠されることを検知する検知手段を備え、前記切替手段は、前記検知手段が開錠を検知した場合に、前記無線通信手段の無線通信機能を有効化する。
所定の距離内に存在する機器との無線通信手段と、該無線通信手段の無線通信機能の有効/無効を切り替える切替手段とを備える通信装置、及び車両に搭載される車載装置を含み、前記通信装置が前記無線通信手段により前記車載装置と通信を行なう車載通信システムにおいて、
前記通信装置は、
前記車両のドアが開錠されることを検知する検知手段を備え、
前記切替手段は、前記検知手段が開錠を検知した場合に、前記無線通信手段の無線通信機能を有効化するようにしてある
ことを特徴とする車載通信システム。
所定の距離内に存在する機器との無線通信手段と、該無線通信手段の無線通信機能の有効/無効を切り替える切替手段とを備える通信装置が、車両に搭載される車載装置と前記無線通信手段により通信を開始する通信制御方法において、
前記通信装置は、
前記車両のドアが開錠されることを検知し、
開錠を検知した場合、前記切替手段により前記無線通信手段の無線通信機能を有効化させる
ことを特徴とする通信制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの概要を示す模式図である。車載通信システムは、ユーザDが所持する通信装置1及び電子キー3と、車両Vに搭載されている車載無線通信装置2、中継装置4、及びキーECU(Electronic Controller Unit)50とを含む。
【0021】
通信装置1は、いわゆるスマートフォンと呼ばれる携帯型の通信端末装置であり、WiFi等の無線LAN通信機能を有している。通信装置1は他に、タブレット型端末装置、又は携帯型ゲーム機等の無線通信端末装置であってもよい。
【0022】
車載無線通信装置2は、通信装置1と対応する無線LAN通信機能を有しており、無線LAN通信機能が有効化されている通信装置1と通信が可能である。また車載無線通信装置2は、CAN(Controller Area Network )等のプロトコルに基づき中継装置4を介して車内ネットワーク内のキーECU50等の他の装置と通信が可能である。
【0023】
電子キー3は、車両Vの運転席のドアVD、及び他の席のドアのドアロックRを開錠/施錠するための信号を無線通信により送受信する機能を持つキーである。なお電子キー3が信号の送受信に用いる周波数帯域は、通信装置1及び車載無線通信装置2間の無線LAN通信とは異なるようにしてある。
【0024】
中継装置4は、車載無線通信装置2と車内ネットワーク内のキーECU50とに接続され、両装置間の通信を中継する装置である。中継装置4は、CPU及び複数の通信規格に応じたトランシーバを各備え、複数の異なる通信線間の通信を、各通信線の通信規格に応じて中継する装置である。
【0025】
キーECU50は、車両に搭載される複数のECUの内の1つであって、電子キー3との間で信号を送受信し、ドアロックRの施錠/開錠を制御するECUである。キーECU50は、中継装置4に接続され、中継装置4を介して車載無線通信装置2及び他のECUと通信が可能である。なお、キーECU50は、ドアロックRの施錠/開錠のみならず、エアーコンデショナー等の制御を含むボディ系の制御を統合的に行なうECUであってもよい。
【0026】
このように構成される車載通信システムにおいて、車載装置2は、通信装置1と無線LAN通信を行なうことにより、通信装置1で起動される各種アプリケーションプログラム(以下、アプリという)により得られる情報を車載無線通信装置2で取得したり、通信装置1の基地局との通信機能を利用してインターネット等の通信網から情報を取得したりするなど、連携によって各種の機能を発揮する。このような機能を享受する場合、通信装置1における無線LAN通信機能が無効化されている場合、有効化及び所定のアプリの起動が必要である。実施の形態1における車載通信システムでは、ユーザDが電子キー3によってドアVDのドアロックRを開錠させることをトリガに、通信装置1にて自動的に無線LAN通信機能が有効化されるか、又は所定のアプリが起動される。
【0027】
以下、ドアVDのドアロックRの開錠をトリガとした無線LAN通信機能の有効化又は所定のアプリの起動を実現するための各装置の詳細な内部構成を説明する。
図2は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【0028】
通信装置1は、制御部10、一時記憶部11、記憶部12、操作部13、基地局通信部14、無線通信部15、及び受信部16を備える。
【0029】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit )を用いる。制御部10は、記憶部12に記憶されてある各アプリ用のプログラムを含む複数のプログラムを各実行し、各プログラムに基づいて各構成部を制御し、種々の機能を発揮させる。
【0030】
一時記憶部11は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAMを用いる。一時記憶部11は、制御部10の処理によって生成される各種情報を記憶する。
【0031】
記憶部12は、フラッシュメモリ等の記憶装置を用いる。記憶部12は、制御部10が処理時に参照する情報を記憶する。記憶部12は、制御部10が読み出す基本となるOS(Operating System)プログラム、及び各アプリ用のコンピュータプログラムのほか、制御部10が無線通信部15による無線LAN通信機能の有効/無効を切り替えるための制御プログラム1P、車載無線通信装置2と連携するためのアプリプログラム1Aを記憶している。
【0032】
操作部13は、タッチパネル内蔵ディスプレイを用いる。操作部13は、制御部10の制御に基づき、操作に係るアイコン等のオブジェクトをディスプレイに表示すると共に、ユーザの手指、又はペン等のディスプレイへの接触を検知して制御部10へ通知する。
【0033】
基地局通信部14は、基地局と接続して通信を実現するための通信モジュールである。基地局通信部14により、移動通信網を介した音声通話が可能となると共に、インターネット等の公衆通信網を介したデータ通信が可能である。
【0034】
無線通信部15は、無線LANアンテナ及びWiFiチップを含むWiFiモジュールを用いる。無線通信部15は、無線信号が到達する範囲内に存在する車載無線通信装置2との間で無線通信を実現する。無線通信部15の無線通信機能は、有効/無効を切り替えることが可能であり、有効化されている間、通信対象の機器を探索する処理を定期的に行なう。有効/無効の切替は、制御部10からの指示に基づき行われる。なお、無線通信部15による通信規格は、WiFi対応の無線LANには限らず、他の無線LANでもよいことは勿論、車載無線通信装置2と対応するBluetooth (登録商標)、赤外線、若しくは光通信等の無線通信を用いる構成としてもよい。
【0035】
受信部16は、無線信号を受信するアンテナ及び変調器等を含むモジュールを用いる。受信部16が受信する信号に用いられる周波数帯域は、後述の電子キー3の受信部31及びキーECU50の送信部54が用いる周波数帯域に対応する。受信部16は、後述するようにキーECU50が認証信号を受信し、受信した認証信号を復調し、信号から抽出される情報を制御部10へ通知する。
【0036】
車載無線通信装置2は、制御部20、車内通信部21、及び無線通信部22を備える。
【0037】
制御部20は、CPU及びRAMを用いる。制御部20は、マスクROM(Read Only Memory)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを内蔵する。制御部20は、予め記憶されてある制御プログラムをRAMに読み出して実行することによって各構成部を制御し、種々の機能を発揮させる。なおRAMには、CPUにより生成される情報が一時的に記憶される。
【0038】
車内通信部21は、CAN又はLIN(Local Interconnect Network)等の規格に基づき中継装置4との通信を実現する。車内通信部21は、制御部20から与えられた情報を中継装置4へ送信すると共に、中継装置4から受信した情報を制御部20へ与える。
【0039】
無線通信部22は、無線LANアンテナ及びWiFiチップを含むWiFiモジュールを用いる。無線通信部22は、通信装置1における無線通信部15の通信規格がWiFi以外である場合には、対応する通信規格用のハードウェアを用いればよい。無線通信部22は、無線信号が到達する範囲内に存在する通信装置1との間で無線通信を実現する。無線通信部22の無線通信機能は、車載無線通信装置2が起動している間は、有効である。
【0040】
電子キー3は、送信部30及び受信部31を備える。
【0041】
送信部30は、無線信号を送信するアンテナ及び変調器を含むモジュールを用いる。送信部30が信号を送信するために用いる周波数帯域は、通信装置1及び車載無線通信装置2間の無線LAN通信に用いられる無線通信用の周波数帯域、並びに、受信部31が用いるキーECU50から電子キー3への通信に用いられる周波数とは異なる。例えば、送信部30は、LFよりも高周波側の周波数(UHF(Ultra High Frequency)等)を用いる。
【0042】
受信部31は、無線信号を送信するアンテナ及び復調器を含むモジュールを用いる。受信部31が信号を受信するために用いる周波数帯域は、通信装置1及び車載無線通信装置2間の無線LAN通信に用いられる周波数帯域とは異なる。例えば、受信部31は、LF(Low Frequency )を用いる。
【0043】
キーECU50は、車内ネットワークを構成する複数のECU5の内の1つであって、ドアVDのドアロックRの開錠/施錠の切替制御を行なう制御装置である。キーECU50は、制御部51、車内通信部52、受信部53及び送信部54を備える。
【0044】
制御部51は、マイクロコンピュータを用いる。制御部51は、ドアロックRと接続されており、予め内蔵メモリに記憶してある制御プログラムに基づき、車内ネットワークを介して受信する情報に基づいてドアロックRの開錠/施錠の切替制御を行なう。
【0045】
車内通信部52は、CAN又はLIN等の規格に基づき他のECU5又は中継装置4との通信を実現する。車内通信部52は、制御部51から与えられた情報を通信線へ送信すると共に、ECU5又は中継装置4から受信した情報を制御部51へ与える。
【0046】
送信部54は、電子キー3の受信部31と対応するアンテナ及び変調器を含むモジュールを用いる。送信部54が用いる周波数帯域は、例えばLFである。
【0047】
受信部53は、電子キー3の送信部30と対応するアンテナ及び復調器を含むモジュールを用いる。受信部53が用いる周波数帯域は、LFよりも高周波側である。
【0048】
このように構成される車載通信システムにおいて、通信装置1は受信部16にて、キーECU50から送信される認証信号を受信することをトリガに、無線LAN通信機能を有効化させる。
図3は、実施の形態1における車載通信システムにて通信装置1の無線LAN通信機能を有効化させる処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3では、電子キー3、キーECU50、及び通信装置1夫々における処理手順を並記し、各装置間での処理の対応関係を示している。
【0049】
電子キー3では、開錠用のボタン(図示せず)がユーザDにより押下された場合、送信部30が開錠信号を送信する(ステップS31)。開錠信号がキーECU50に到達した場合、キーECU50の受信部53にて受信され、これに応じてキー位置を検出するための検出信号がキーECU50の送信部54から送信される。電子キー3は、検出信号を受信部31から受信し(ステップS32)、検出信号に対する応答信号を送信部30から送信する(ステップS33)。応答信号は、車両Vと一意に対応する電子キー3からの信号であるか否かを示す情報を含んでいる。
【0050】
キーECU50では、電子キー3から送信される開錠信号を受信部53にて受信し(ステップS51)、制御部51が電子キー3の位置を検出するための検出信号を送信部54から送信する(ステップS52)。車両Vの位置から所定の範囲内に電子キー3が存在する場合、上述のように検出信号に応じた応答信号が電子キー3から送信されるから、キーECU50では、受信部53にて応答信号を受信する(ステップS53)。キーECU50では、制御部51が受信部53にて受信した応答信号に基づき、応答信号の送信元が正当な電子キー3であるか否かを検証し、認証できたか否かを判断する(ステップS54)。制御部51は、認証できた場合(S54:YES)、認証信号を送信部54から送信し(ステップS55)、ドアロックRを開錠し(ステップS56)、処理を終了する。制御部51は、認証できなかった場合(S54:NO)、そのまま処理を終了する。
【0051】
通信装置1では、制御部10が制御プログラム1Pに基づき、無線通信部15による無線LAN通信機能が無効化されている場合、以下に示す処理を定期的に実行する。
【0052】
制御部10は、制御プログラム1Pに基づき、受信部16にて認証信号を受信したか否かを判断する(ステップS1)。
【0053】
制御部10は、認証信号を受信したと判断した場合(S1:YES)、車載無線通信装置2との連携用のアプリプログラム1Aを読み出して起動する(ステップS2)。
【0054】
次に制御部10は、アプリプログラム1Aの起動が初回であるか否かを判断する(ステップS3)。制御部10は、起動が初回であると判断した場合(S3:YES)、操作部13に、無線LAN通信機能の自動有効化、及び車載無線通信装置2との接続についてユーザの認証を受けるための画面を表示させ(ステップS4)、認証されたか否かを判断する(ステップS5)。制御部10は、認証されたと判断した場合(S5:YES)、制御部10は、起動したアプリプログラム1Aに基づき、無線通信部15による無線LAN通信機能を有効化する(ステップS6)。制御部10は、無線通信部15により車載無線通信装置2との間でペアリングを確立させる処理を行ない(ステップS7)、一定期間内にペアリングが確立されたか否かを判断する(ステップS8)。制御部10は、ペアリングが確立されたと判断した場合(S8:YES)、処理を終了する。以後、制御部10は、アプリプログラム1Aによる連携処理を実行する。
【0055】
制御部10は、ステップS1にて、認証信号を受信しないと判断した場合(S1:NO)、処理をそのまま終了する。
【0056】
制御部10は、ステップS3にて、起動が初回でないと判断した場合(S3:NO)、ステップS4,5をスキップし、処理をステップS6へ進める。
【0057】
制御部10は、ステップS5にて、許諾の操作がされないと判断した場合(S5:NO)、無線LAN通信機能の自動有効化、及び車載無線通信装置2との接続について認証がされなかったため、そのまま処理を終了する。
【0058】
制御部10は、ステップS8にて、一定期間内にペアリングが確立されないと判断した場合(S8:NO)、無線通信部15による無線LAN通信機能を無効化し(ステップS9)、処理を終了する。
【0059】
制御部10は、アプリプログラム1Aが終了する際に、無線通信部15による無線LAN通信機能を自動的に無効化してもよい。また、制御部10は、アプリプログラム1Aの実行の有無に関わらず、ペアリングが解消されている場合、これを検知して無線LAN通信機能を無効化するようにしてもよいし、ペアリングが確立されていても、通信が所定の期間以上行なわれていない場合には、自動的に無効化するようにしてもよい。
【0060】
なお、
図3に示した処理手順におけるステップS2及びS3の順序は問わず、また、同時並行的に実行するようにしてもよいことは勿論である。上述した例では、無線通信部15による無線LAN通信機能を有効化の処理を、アプリプログラム1A経由で行なったためアプリプログラム1Aの起動(S2)が先に実行されている。
【0061】
このような処理により、通信装置1が、キーECU50からドアロックRの開錠時に送信される認証信号を受信することにより、ドアVDの開錠を検知し、開錠の検知をトリガに無線LAN通信機能を自動的に有効化させることが可能となる。これにより、ユーザDが乗車する際に通信装置1と車載無線通信装置2との間のペアリングが自動的に確立され、ユーザDは無線LAN通信機能を有効化させる操作をせずともよい。
【0062】
なお、上述の処理は、ユーザDが開錠ボタンを押下してドアロックRを開錠させるための電子キー3を用いる構成のみに限られず、電子キー3に開錠ボタンが設けられていない構成にも適用できる。具体的には、電子キー3は定期的に信号を送信しており、電子キー3が車両Vから所定の範囲内に接近してキーECU50にてこれを受信できた場合にドアロックRが開錠し、電子キー3が所定の範囲外へ離隔してキーECU50にてこれを受信できなくなった場合にドアロックRが施錠される構成である。この場合も、電子キー3とキーECU50との間の信号のやりとりの結果、キーECU50にて電子キー3の認証がされた場合(S54:YES)、同様にしてキーECU50から認証信号が送信され(S55)、通信装置1にて認証信号を受信し、以後の処理が実行される。
【0063】
また、電子キー3に人体通信機能を設け、車両Vの車両ドアVDのドアノブ外側に人体通信送信機を設けるようにしてもよい。変形例では、電子キー3で開錠ボタンが押下されることに代替して、電子キー3の人体通信部にてドアノブの送信機から所定の信号を受信できたことを契機に、電子キー3から開錠信号が送信される(S31)。以後の各装置の処理は、上述の説明と同様である。
【0064】
(実施の形態2)
実施の形態2では、通信装置1が電子キー3の一体に備える構成とする。
図4は、実施の形態2における車載通信システムの構成を示すブロック図である。なお、実施の形態2では、電子キー3が車載通信システムに含まれないこと、及び、通信装置1の内部構成の詳細が実施の形態1と異なる。その他のハードウェア構成は、実施の形態1と同様であるから、共通する構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0065】
実施の形態2における車載通信システムは、ユーザDが所持する通信装置1と、車両Vに搭載されている車載無線通信装置2、中継装置4、及びキーECU50とを含む。
【0066】
通信装置1は、制御部10、一時記憶部11、記憶部12、操作部13、基地局通信部14、無線通信部15、受信部16及び送信部17を備える。
【0067】
実施の形態2において通信装置1の記憶部12には、電子キーを一体に備える通信装置1における無線LAN通信機能の有効/無効を切り替えるための制御プログラム2Pが記憶されている。
【0068】
送信部17は、無線信号を送信するアンテナ及び変調器を含むモジュールを用いる。送信部17が信号を送信するために用いる周波数帯域は、通信装置1及び車載無線通信装置2間の無線LAN通信に用いられる無線通信用の周波数帯域、並びに、受信部16が用いるキーECU50から通信装置1への通信に用いられる周波数とは異なる。例えば、送信部17は、LFよりも高周波側の周波数を用いる。
【0069】
このように構成される実施の形態2の車載通信システムにおける無線LAN通信機能の有効化の処理手順を説明する。
図5は、実施の形態2における通信装置1の制御部10による処理手順の一例を示すフローチャートである。通信装置1の制御部10は、制御プログラム2PがユーザDの操作により起動され、無線通信部15による無線LAN通信機能が無効化されている場合、以下に示す処理を実行する。なお、
図5のフローチャートに示す処理手順の内、実施の形態1の
図3のフローチャートにて説明した処理手順と共通する手順については、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0070】
制御部10は、制御プログラム2Pに基づき、操作部13にて、車両VのドアロックRの開錠/施錠の操作を受け付ける画面を表示し(ステップS21)、表示画面において、開錠操作がされたか否かを判断する(ステップS22)。
【0071】
制御部10は、ステップS22にて開錠操作がされない場合(S22:NO)、処理をステップS22へ戻し、開錠操作がされるまで待機する。
【0072】
制御部10は、ステップS22にて開錠操作がされたと判断した場合(S22:YES)、送信部17から開錠信号を送信する(ステップS23)。開錠信号がキーECU50に到達した場合、キーECU50の受信部53にて受信され、これに応じてキー位置を検出するための検出信号がキーECU50の送信部54から送信される。制御部10は、検出信号を受信部16から受信し(ステップS24)、検出信号に対する応答信号を送信部17から送信する(ステップS25)。応答信号は、車両Vと一意に対応する電子キー3からの信号であるか否かを示す情報を含んでいる。制御部10は、受信部16にて認証信号を受信したか否かを判断し(ステップS26)、認証信号を受信した場合(S26:YES)、車載無線通信装置2との連携用のアプリプログラム1Aを読み出して起動し(S2)、ステップS3〜S9の処理を実行する。
【0073】
制御部10は、ステップS26にて認証信号を受信しなかったと判断した場合(S26:NO)、処理をそのまま終了する。
【0074】
実施の形態2においても、制御部10は、アプリプログラム1Aが終了する際に、無線通信部15による無線LAN通信機能を自動的に無効化する。制御部10は、アプリプログラム1Aの実行の有無に関わらず、ペアリングが解消されている場合、これを検知して無線LAN通信機能を無効化するようにしてもよいし、ペアリングが確立されていても、通信が所定の期間以上行なわれていない場合には、自動的に無効化するようにしてもよい。
【0075】
実施の形態2の車載通信システムでは、通信装置1に車両Vの電子キーが一体化される構成により、ユーザDは電子キー3を所持する必要がない。通信装置1にて、ユーザDは開錠/施錠の操作を行なう必要があるが、開錠をトリガに自動的に無線LAN通信機能の有効化及び連携用のアプリプログラム1Aが起動されるから、無線LAN通信機能の有効化の操作を行なう必要がない。また、電子キーを認証するための情報を有する通信装置1のみの無線LAN通信機能を有効化するから、車載無線通信装置2の通信対象を特定することができる。
【0076】
(実施の形態3)
実施の形態1及び2では、通信装置1に電子キー3と同様の受信部16を少なくとも備える構成とした。実施の形態3では、通信装置1が受信部16を備えない構成としても同様に、ドアロックRの開錠をトリガに、無線LAN通信機能を自動的に有効化する。実施の形態3における車載通信システムのハードウェア構成は、通信装置1の内部構成、ナビECU55及びサーバ装置7が更に含まれることを除いて実施の形態1と同様である。したがって、以下の説明では、実施の形態1と共通する構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
図6は、実施の形態3における車載通信システムの概要を示す模式図である。実施の形態3における車載通信システムは、ユーザDが所持する通信装置1及び電子キー3と、車両Vに搭載されている車載無線通信装置2、中継装置4、キーECU50、及びナビECU55と、車両Vの販売会社等が管理するサーバ装置7とを含む。
【0078】
ナビECU55は、ナビゲーションシステムを実現するための既存のECUである。ナビECU55は、車内ネットワークの中継装置4に接続されていると共に、基地局APと通信が可能である。ナビECU55は、移動通信網及びインターネット等の公衆通信網を含むネットワークNを介してサーバ装置7と通信が可能である。
【0079】
サーバ装置7は、上述したように車両Vの販売会社等が管理し、ナビECU55の通信機能により、登録されている車両に対し、車両の位置に基づく周辺の渋滞情報及び店舗情報の提示等のサービスを提供するための通信装置である。
【0080】
実施の形態3では、
図6に示したように構成される車載通信システムにおいて、ナビECU55の通信機能を利用し、車両VにおけるドアロックRの開錠/施錠の情報をサーバ装置7経由で通信装置1へ通知する。
【0081】
図7は、実施の形態3における車載通信システムの構成を示すブロック図である。通信装置1は、制御部10、一時記憶部11、記憶部12、操作部13、基地局通信部14、及び無線通信部15を備える。実施の形態3において通信装置1の記憶部12には、車両VのドアロックRの開錠をサーバ装置7経由で検知して無線LAN通信機能の有効/無効を切り替えるための制御プログラム3Pが記憶されている。
【0082】
ナビECU55は、車内ネットワークを構成する複数のECU5の内の1つであって、運転者から視認可能に設置され、GPS(Global Positioning System )受信機能を有し、車両Vの現在位置を地図情報と共に表示する装置である。ナビECU55は、制御部56、車内通信部57、操作部58及び基地局通信部59を備える。なおナビECU55は、図示しないGPSアンテナ等も備えている。
【0083】
制御部56は、マイクロコンピュータを用いる。予め内蔵メモリに記憶してある制御プログラムに基づき、GPSを利用してナビゲーション機能を発揮する。
【0084】
車内通信部57は、CAN又はLIN等の規格に基づき他のECU5、キーECU50又は中継装置4との通信を実現する。車内通信部57は、制御部56から与えられた情報を通信線へ送信すると共に、ECU5又は中継装置4から受信した情報を制御部56へ与える。
【0085】
操作部58は、タッチパネル内蔵ディスプレイを用いる。操作部58は、制御部56の制御に基づき、地図画像、現在位置アイコン、及び操作に係るアイコン等のオブジェクトをディスプレイに表示すると共に、ユーザの手指のディスプレイへの接触を検知して制御部56へ通知する。
【0086】
基地局通信部59は、基地局と接続して通信を実現するための通信モジュールである。基地局通信部59により、制御部56は、基地局APを介してネットワークNを介してサーバ装置7と通信が可能である。
【0087】
サーバ装置7は、サーバコンピュータを用いる。サーバ装置7は、制御部70、通信部71及び記憶部72を備える。
【0088】
制御部70は、CPUを用いる。制御部70は、通信部71及び記憶部72を制御し、サーバコンピュータを、登録されている車両に対して、車両の位置に基づく周辺の渋滞情報及び店舗情報の提示等のサービスを提供する装置として機能させる。
【0089】
通信部71は、ネットワークNに接続しており、ネットワークNを介した他装置との通信を実現する通信モジュールである。
【0090】
記憶部72は、ハードディスク等の記憶装置を用いる。記憶部72には、販売会社で登録されている車両の車両識別情報等が記憶される。また、記憶部72には、記憶されている車両識別情報に対応付けて、各車両の所有者が所有する通信装置1を識別する通信装置識別情報が記憶されている。通信装置識別情報は、例えば電話番号、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)、IMEI(International Mobile Equipment Identity )、又はMEID(Mobile Equipment Identifier )等の識別番号、又は通信装置1のシリアル番号等、対象を一意に特定する固有の情報である。更に、各車両識別情報に対応付けて、各車両の現在位置を含む車両状況の情報が記憶されてもよい。
【0091】
このように構成される車載通信システムにおいて、キーECU50は、ドアロックRを開錠するに際し、開錠を示す開錠情報を中継装置4、ナビECU55、及びサーバ装置7経由で、登録されている通信装置1へ通知する。通信装置1にて、開錠情報の通知を受け、これをトリガに無線LAN通信機能を有効化させる。
図8は、実施の形態3における車載通信システムにて通信装置1の無線LAN通信機能を有効化させる処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図8では、キーECU50及び通信装置1における処理手順を並記し、各装置間での処理の対応関係を示している。また、以下に示す処理手順の内、実施の形態1の
図3のフローチャートにて説明した処理手順と共通する手順については、同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0092】
ユーザDが電子キー3を操作し、開錠用のボタンを押下すると、以下の処理が実行される。電子キー3における処理手順は省略する。
【0093】
キーECU50において、制御部51は、電子キー3から送信される開錠信号を受信部54にて受信し(S51)、検出信号を送信し(S52)、電子キー3から送信される応答信号を受信し(S53)、応答信号の送信元を検証し、認証できたか否かを判断する(S54)。制御部51は、ステップS54で認証できた場合(S54:YES)、開錠することを通信装置1へ通知すべく、開錠情報を車内通信部52により送信する(ステップS505)。制御部51はドアロックRを開錠し(S56)、処理を終了する。制御部51は、ステップS54で認証できなかった場合(S54:NO)、そのまま処理を終了する。
【0094】
キーECU50が車内通信部52から送信した開錠情報は、中継装置4で受信され、中継装置4によってナビECU55へ送信される。開錠情報は、ナビECU55の車内通信部57にて受信され、基地局通信部59から基地局APを介してサーバ装置7へ送信される。このとき開錠情報は、車両識別情報と共に送信される。開錠情報は、サーバ装置7で通信部71により受信され、共に送信された車両識別情報に対応付けられて記憶部72に記憶されてもよい。開錠情報は、共に送信された車両識別情報に対応付けて記憶部72に記憶されてある通信装置識別情報に基づき、通信装置1へ通信部71から送信される。
【0095】
通信装置1では、制御部10が制御プログラム3Pに基づき、無線通信部14による無線LAN通信機能が無効化されている場合、以下に示す処理を定期的に実行する。
【0096】
制御部10は、基地局通信部14により、開錠の通知を受信したか否かを判断する(ステップS41)。制御部10は、開錠の通知を受信したと判断した場合(S41:YES)、車載無線通信装置2との連携用のアプリプログラム1Aを読み出して起動し(S2)、ステップS3〜S9の処理を実行する。
【0097】
制御部10は、開錠の通知を受信しないと判断した場合(S41:NO)、処理をそのまま終了する。
【0098】
実施の形態3においても、制御部10は、アプリプログラム1Aが終了する際に、無線通信部15による無線LAN通信機能を自動的に無効化する。制御部10は、アプリプログラム1Aの実行の有無に関わらず、ペアリングが解消されている場合、これを検知して無線LAN通信機能を無効化するようにしてもよいし、ペアリングが確立されていても、通信が所定の期間以上行なわれていない場合には、自動的に無効化するようにしてもよい。
【0099】
実施の形態3では、通信装置1に受信部16が必要ないので、制御プログラム3Pを既存のスマートフォンにて実行させ、キーECU50に、開錠を通知させる機能を追加することにより、既存のハードウェア構成で本発明を実現することができる。また、実施の形態3における車載通信システムでは、予めサーバ装置7にて登録された通信装置識別情報に基づいて、通信装置1に開錠通知がなされる。これにより、オーナーとして登録されてあるユーザDの通信装置1のみで無線LAN通信機能を有効化する。つまり、車載無線通信装置2は、予め識別情報が記憶されている通信装置1を選択して通信を行なう。したがって、車載通信システムの安全性を向上させることができる。
【0100】
実施の形態1から3において、制御部10による処理を実現する制御プログラム1P,2P,3Pは、従来からスマートフォン等で用いられているWiFi制御プログラムに組み込まれるようにしてもよいし、無線通信部15の有効化をアプリプログラム1Aによって行なう場合には、アプリを監視、制御するアプリ制御プログラムに組み込まれるようにしてもよい。
【0101】
なお、上述のように開示された本実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。