特開2015-151837(P2015-151837A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-151837地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-151837(P2015-151837A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20150728BHJP
   F24J 3/08 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   E02D5/28
   F24J3/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-29393(P2014-29393)
(22)【出願日】2014年2月19日
(11)【特許番号】特許第5584839号(P5584839)
(45)【特許公報発行日】2014年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】593040999
【氏名又は名称】上山 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】上山 博明
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA33
2D041BA42
2D041CA02
2D041CB04
2D041CB06
(57)【要約】
【課題】 螺旋杭としての機能を損なうことなく、効率よく地中熱を採熱することのできる地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭を提供する。
【解決手段】 地中に埋設されてその内部に熱交換液または地下水を流通させる熱交換用中空管2であって、前記熱交換用中空管2を同一半径で同一ピッチの螺旋状に形成するとともにその先端を先鋭状に形成してなる。また、前記熱交換用中空管2の内部には、前記熱交換用中空管2に沿って先端近傍まで螺旋状に形成された内装管3が設けられており、当該内装管3の先端近傍には前記熱交換用中空管2の内部と流通可能な流通口31が形成されていてもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されてその内部に熱交換液または地下水を流通させる熱交換用中空管であって、前記熱交換用中空管を同一半径で同一ピッチの螺旋状に形成するとともにその先端を先鋭状に形成してなる地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項2】
前記熱交換用中空管の内部には、前記熱交換用中空管に沿って先端近傍まで螺旋状に形成された内装管が設けられており、当該内装管の先端近傍には前記熱交換用中空管の内部と流通可能な流通口が形成されている、請求項1に記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項3】
前記内装管が軟質性材料により前記熱交換用中空管の内径より小径の外径を備える管に形成されている、請求項2に記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項4】
前記熱交換用中空管の基端側には、前記熱交換用中空管に連通しているとともに前記内装管が挿入される口金部と、前記内装管を挿入保持させつつ前記口金部に螺合する有孔蓋と、この有孔蓋を前記口金部に螺合させた際の押圧により縮径して前記内装管との水密を保持する漏水防止ゴムリングとを有する、請求項2または請求項3のいずれかに記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項5】
前記熱交換用中空管が2本密着して並設されているとともに、各々の先端には互いの内部同士の流通を可能にする流通口が形成されている、請求項1に記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項6】
前記熱交換用中空管の先端近傍に地下水を流入または流出させる複数のストレーナが設けられている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウス等の構造物を支持する基礎杭であって地中熱の採熱機能を備えた地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物は、地盤沈下や暴風などによる倒壊から守るため、地中に埋設された基礎杭によって支持されている。
【0003】
一方、基礎杭が埋設される地中の温度は、年間を通して一定である。そのため、冬期には、気温より高い温度に保たれ、夏期には気温より低い温度に保たれており、この地中熱エネルギーは、化石燃料などと異なり、無限に存在するため枯渇することがない。
【0004】
そこで、従来、地中に埋設される基礎杭を構造物を支持する基礎杭としてのみならず、地中熱を採熱する採熱器としても利用しようとする提案がなされている。
【0005】
例えば、特開2013−124441号公報では、端部に環状の金属製端板を有する中空の既製コンクリート杭であって、杭体内にU字状に設けられた交換パイプを有するとともに、杭体内周に杭軸方向に沿って延びるコンクリートよりも熱伝導性に優れた熱伝導体を設け、その端部を前記端板に接合したことを特徴とする地中熱利用のための既製コンクリート杭が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に記載の既製コンクリート杭によれば、熱伝導体によって前記交換パイプへの熱の移動が促進されるため、地盤との熱交換効率を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−124441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、旧来工法のコンクリート基礎は、上部構造物の重圧に対応するために、基礎幅を広くするか基礎深度を深くする必要がある。しかし、基礎幅を広げるには、広い敷地面積を要するという問題がある。また、基礎深度を深くするには、深い穴を切削する必要がある。よって、いずれの方法をとっても、技術的、経済的に限界がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された発明においては、熱交換パイプと地中とは直接的に接していないため、熱伝導体による伝熱性能では熱交換効率に限界があるという問題がある。そのため、十分な熱交換を行うにも、基礎深度を深くしなければならない。
【0009】
さらに、コンクリート基礎は、地中に埋設されると、容易には取り出すことができないという問題があり、ビニールハウスなどの簡易的な構造物の基礎としては不向きである。
【0010】
これらの問題に対し、コンクリート杭に替わり、螺旋状に形成された螺旋杭が用いられることがある。螺旋杭は、回転力と圧縮力との作用により地中にねじ込むことにより設置されるものであり、杭の太さや螺旋径の大きさ、ねじ込む深度により、容易に構造物の重圧に対応することができるものである。つまり、螺旋杭は、敷地面積を削減することなく、容易に基礎深度を深くすることができるという利点を有する。
【0011】
しかしながら、従来の螺旋杭は、地中熱を採熱できるような機能は有していない。特に、螺旋杭の太さは、地中へのねじ込み易さを考慮して、あまり太くすることができない。そのため、従来のコンクリート杭のように、杭体内にU字状の熱交換パイプを設置するような空間を十分にとることができないという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、螺旋杭としての機能を損なうことなく、効率よく地中熱を採熱することのできる地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭は、地中に埋設されてその内部に熱交換液または地下水を流通させる熱交換用中空管であって、前記熱交換用中空管を同一半径で同一ピッチの螺旋状に形成するとともにその先端を先鋭状に形成してなる。
【0014】
また、本発明の一態様として、前記熱交換用中空管の内部には、前記熱交換用中空管に沿って先端近傍まで螺旋状に形成された内装管が設けられており、当該内装管の先端近傍には前記熱交換用中空管の内部と流通可能な流通口が形成されていてもよい。
【0015】
さらに、本発明の一態様として、前記内装管が軟質性材料により前記熱交換用中空管の内径より小径の外径を備える管に形成されていてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様として、前記熱交換用中空管の基端側には、前記熱交換用中空管に連通しているとともに前記内装管が挿入される口金部と、前記内装管を挿入保持させつつ前記口金部に螺合する有孔蓋と、この有孔蓋を前記口金部に螺合させた際の押圧により縮径して前記内装管との水密を保持する漏水防止ゴムリングとを有していてもよい。
【0017】
さらに、本発明の一態様として、前記熱交換用中空管が2本密着して並設されているとともに、各々の先端には互いの内部同士の流通を可能にする流通口が形成されていてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様として、前記熱交換用中空管の先端近傍に地下水を流入または流出させる複数のストレーナが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、螺旋杭としての機能を損なうことなく、効率よく地中熱を採熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭およびこれを用いた暖房システムの第一実施形態を示す図である。
図2】本第一実施形態における熱交換用中空管の内部を示す一部断面図である。
図3】本第一実施形態における熱交換用中空管の基端部に設けられた、口金部、有孔蓋および漏水防止ゴムリングを示す断面図である。
図4】本第一実施形態における口金部、有孔蓋および漏水防止ゴムリングを示す分解図である。
図5】本第一実施形態における熱交換液の循環を示す図である。
図6】本第一実施形態における熱交換用中空管先端の熱交換液の流れおよび地中熱のイメージを示す断面図である。
図7】本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭およびこれを用いた暖房システムの第二実施形態および熱交換液の流れを示す図である。
図8】本第二実施形態における熱交換用中空管先端の熱交換液の流れおよび地中熱のイメージを示す断面図である。
図9】本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭およびこれを用いた暖房システムの第三実施形態および地下水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭の第一実施形態について図面を用いて説明する。
【0022】
図1から図3に示すように、本第一実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aは、螺旋状に形成された熱交換用中空管2と、この熱交換用中空管2の内部に設けられた内装管3とを有する。また、本第一実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aは、図1に示すように、熱交換液を循環させる熱交換液循環装置4に接続されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0023】
熱交換用中空管2は、地中に埋設される中空管であり、その内部に熱交換液または地下水が流通できるようになっている。つまり、熱交換用中空管2は、地中から採熱して熱交換液を暖めるか、地中熱によって暖められた地下水を汲み上げるものである。本第一実施形態における熱交換用中空管2は、熱交換液を流通させることで地中熱を採熱するようになっている。
【0024】
熱交換用中空管2の形状は、同一半径、同一ピッチの螺旋状に形成されている。これにより、熱交換用中空管2は、地中にねじ込まれるとき、または地中から取り外されるときに、同じ軌跡を通るようにして地中との摩擦を抑制している。また、熱交換用中空管2の先端は、先鋭状に形成されており、地中にねじ込まれるときの土砂等からの抵抗を低減している。つまり、熱交換用中空管2は、地中に埋設し易く、取り外し易い形状に形成されている。
【0025】
また、熱交換用中空管2の素材は、流通する熱交換液へ地中熱を採熱し易くするため、熱伝導率が高く、かつ地中や循環させる循環水との間の熱伝達率の高いものが望ましい。また、熱交換用中空管2は、基礎として使用されるため、埋設時および埋設後に破損等しないための耐力を要する。そこで、本第一実施形態では、熱交換用中空管2の素材として、鋳鉄等の金属が用いられているが、同様の効果を奏するものであれば、特に限定されるものではない。
【0026】
また、本第一実施形態における熱交換用中空管2の内部には、後述するように、軟質性材料により形成された内装管3が設けられる。一方、熱交換用中空管2は、その上部に構造物Aを支持する必要があるため、上部から内装管3を挿入する構成をとることができない。そこで、本第一実施形態における熱交換用中空管2の基端側には、図3および図4に示すように、内部に内装管3を挿入させるための口金部21と、この口金部21を塞ぐ有孔蓋22と、前記内装管3および前記口金部21との水密を保持する漏水防止ゴムリング23とを設けている。
【0027】
口金部21は、図4に示すように、熱交換用中空管2の内部と外部とを連通している孔であり、内装管3を挿通可能な寸法に形成されている。また、口金部21は熱交換用中空管2の外側に突出されており、漏水防止ゴムリング23を挿入する溝24が形成されている。さらに、その外周面には雄ねじ25が形成されており、有孔蓋22が螺合するようになっている。
【0028】
有孔蓋22は、口金部21の蓋であり、口金部21に設けられた孔と連通して内装管2を挿通することのできる孔を有している。有孔蓋22の基端側には、口金部21と同様、漏水防止ゴムリング23が挿入される溝26が形成されている。また、その溝26の内周面には、口金部21の雄ねじ25に螺合する雌ねじ27が形成されている。
【0029】
漏水防止ゴムリング23は、内装管3との水密を保持するためのものであり、内装管3を挿通させる孔が設けられている。また、漏水防止ゴムリング23は、内装管3との間、および、口金部21の溝24や有孔蓋22の溝26との間に隙間ができる寸法に形成されているとともに、前記口金部21の溝24の深さよりも長い寸法に形成されている。これにより、漏水防止ゴムリング23は、図3に示すように、有孔蓋22を口金部21に螺合させた際の押圧により縮径して、前記口金部21と前記内装管3との水密を保持するようになっている。
【0030】
なお、熱交換用中空管2に内装管3を挿入する構造は、口金部21等を使用するものに限定されるものではなく、同様の効果を奏するものであれば適宜変更してよい。
【0031】
内装管3は、図2および図3に示すように、熱交換用中空管2の内部に設けられることで、前記熱交換用中空管2とともに二重管構造を形成するものである。つまり、内装管3と熱交換用中空管2とを二重管構造とすることで、地上から地中および地中から地上への連続した流通経路が形成される。これにより、熱交換パイプのようなU字状の構造を熱交換用中空管2の内部に形成する必要がなく、熱交換用中空管2を細く形成することができる。
【0032】
内装管3は、前記熱交換用中空管2に沿って先端近傍まで螺旋状に形成され、内装管3の先端近傍には、熱交換用中空管2の内部と流通可能な流通口31が形成されている。これにより、地上の気温の影響を受けにくい地中深くまで、熱交換液を流通させることができる。
【0033】
また、本第一実施形態における内装管3は、熱交換用中空管2の内径より小径の外径を有する軟質性材料によって形成されている。つまり、内装管3は、熱交換用中空管2の基端部側から挿入することで、容易に二重管構造を形成することができる。なお、内装管3に用いられる軟質性材料は、特に限定されるものではなく適宜選択することができ、例えば塩化ビニル、シリコン、合成ゴム、天然ゴム等が例示される。
【0034】
次に、地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aに接続される熱交換液循環装置4について説明する。熱交換液循環装置4は、図1に示すように、熱交換液を循環させるためのポンプ41と、熱交換液との熱交換を行う熱交換手段42とを有する。
【0035】
ポンプ41は、内装管3に接続されており、熱交換液を内装管3に供給するようになっている。なお、ポンプ41の種類等は特に限定されるものではなく、ターボ形ポンプや容積ポンプ等から適宜選択されるものである。
【0036】
熱交換手段42は、熱交換液の熱を、融雪や暖房、または冷房等に用いる熱に交換するものである。本第一実施形態における熱交換手段42は、構造物Aの暖房用ヒートポンプであり、内部を通過する熱交換液の熱を効率よく取り出し、構造物A内に供給するようになっている。
【0037】
なお、ポンプ41と熱交換手段42とは、別体としているが、一体的に形成されていてもよい。また、熱交換手段42は、暖房用ヒートポンプに限定されるものではなく、冷房用であってもよく、ラジエーター等であってもよい。
【0038】
次に、本第一実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aにおける各構成の作用について説明する。
【0039】
まず、地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aの杭機能について説明する。地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aは、図1に示すように、構造物Aの基礎となるために地中に埋設される。本第一実施形態では、回転と圧力をかけながら先端側から地中にねじ込むことで地中に埋設することができる。熱交換用中空管2では、先鋭状に形成された先端により、地中の土砂を押し分けるように進むため抵抗が少ない。
【0040】
また、熱交換用中空管2が同一半径、同一ピッチに形成されているため、先端によって形成された軌跡に沿って埋設されるため抵抗が少ない。また、埋設する深度に応じて、構造物を支えるための十分な耐力を得ることができるため、設置する面積は、構造物Aに対して変わることがなく、敷地面積を有効に利用することができる。
【0041】
なお、地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aの埋設には、ねじ込みによる埋設に限られるものではなく、例えば、下穴を掘ってその中に地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aを設置し、土砂等を投入して埋設するようにしてもよい。
【0042】
埋設された地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aは、ねじ込んだ方向とは逆方向に回転させることで地中から取り出すことができる。同一半径、同一ピッチに形成された熱交換用中空管2が、形成された穴の軌跡に沿って回転するため、少ない抵抗で取り出すことができる。このように、地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aは、地中から容易に取り出すことができるため、移設、再利用が容易であり、その際の費用も安価で済む。よって、ビニールハウス等の簡易的な構造物Aの基礎にも適用することができる。
【0043】
次に、地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aの地中熱を採熱する機能について説明する。埋設された地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aでは、熱交換液を循環させることで、熱交換用中空管2を介して伝わってきた地中熱により前記熱交換液を加温・冷却する。
【0044】
具体的には、図5に示すように、ポンプ41によって、熱交換液を内装管3に供給する。供給された熱交換液は、内装管3の管内を通り、図6に示すように、先端近傍に設けられた流通口31から熱交換用中空管2に送られる。熱交換用中空管2内の熱交換液は、ポンプ41による水圧により先端側から基端側へと上昇していく。
【0045】
熱交換用中空管2は、上昇する過程で地中熱を採熱して熱交換液を温める。熱交換用中空管2と地中とは、直接的に接しているため地中熱が伝わり易い。また、熱交換用中空管2が、螺旋状に形成されていることにより、埋設されている深さや面積に対して、地中との接触面積が広い。よって、熱交換用中空管2では、地中熱を効率よく採熱することができる。
【0046】
暖められた熱交換液は、上昇して熱交換手段42に送られる。本第一実施形態では、ヒートポンプに送られ、ヒートポンプでは、熱交換液から熱を取りだし、構造物Aの暖房として利用される。
【0047】
また、熱交換用中空管2の基端部では、口金部21と有孔蓋22とにより縮径した漏水防止ゴムリング23と、内装管3との水密が保たれている。つまり、熱交換液は減ることなく循環することができる。よって、本第一実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aでは、熱交換液の補充等の必要がなく、ランニングコストを抑えることができる。
【0048】
なお、熱交換液は、逆方向に循環させることができる。つまり、熱交換液は、熱交換用中空管2の基端側から供給されて先端側へ流通する。熱交換用中空管2は、この流通過程で地中熱を採熱して熱交換液を温める。温められた熱交換液は、流通口31から内装管3に流通し、汲み上げられる。汲み上げられた熱交換液は、熱交換手段41に送られて地中熱が利用される。このように、本第一実施形態における地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aは、熱交換液を逆方向に循環させても地中熱を採熱することができる。
【0049】
以上のような本第一実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1aによれば、以下の効果を得ることができる。
1.構造物Aの基礎となる螺旋杭本来の機能を損なわず、地中熱を採熱する採熱管として機能することができる。
2.熱交換用中空管内2に熱交換パイプを要しないため細く形成することができ、ねじ込みに要する力を少なくて済む。
3.同一半径で同一ピッチの螺旋状に形成することで、埋設のみならず地中からの取り出しも容易になり、移設および再利用することができる。
4.設置面積に対し、地中との接触面積が広いため、効率よく採熱することができる。
【0050】
次に、本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭の第二実施形態について図面を用いて説明する。なお、本第二実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1bのうち、上述した第一実施形態の構成と同等または相当する構成については、再度の説明を省略する。
【0051】
本第二実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1bの特徴は、第一実施形態の構成のうち、内装管3を設けずに、熱交換用中空管2が2本密着して並設されている点にある。以下、詳細に説明する。
【0052】
本第二実施形態における熱交換用中空管2は、図7に示すように、第一熱交換用中空管2aと、第二熱交換用中空管2bとからなる。第一熱交換用中空管2aと第二熱交換用中空管2bとは密着した状態で並設されており、太くならないように形成されている。
【0053】
また、先端が第一熱交換用中空管2aと第二熱交換用中空管2bとが密着した状態で先鋭状になるように形成されている。よって、第一熱交換用中空管2aと第二熱交換用中空管2bとは、一本の螺旋杭として機能するようになっている。
【0054】
また、図8に示すように、第一熱交換用中空管2aおよび第二熱交換用中空管2bの各々の先端には、互いの内部同士の流通を可能にする流通口28が形成されている。これにより、一方の熱交換用中空管2が第一実施形態における内装管3として機能し、他方の熱交換用中空管2が第一実施形態における熱交換用中空管2として機能する。以下、本第二実施形態における第一熱交換用中空管2aおよび第二熱交換用中空管2bの作用について説明する。
【0055】
まず、杭機能については、第一実施形態と同様である。つまり、上述のとおり、第一熱交換用中空管2aと第二熱交換用中空管2bとは、一体的な一本の螺旋杭となっているため、回転と圧力をかけながら先端側から地中にねじ込むことで地中に埋設することができる。また、移設の際も、逆回転すれば地中から取り外すことができる。
【0056】
一方、採熱機能については、第一実施形態と異なる。本第二実施形態における第一熱交換用中空管2aは、第一実施形態における内装管3として機能する。具体的には、図7に示すように、第一熱交換用中空管2aに熱交換液が供給される。供給された熱交換液は、図8に示すように、流通口28を介して、第二熱交換用中空管2bに流通される。但し、第一熱交換用中空管2aは、地中熱を採熱し流通する熱交換液を加温または冷却することができる。
【0057】
第二熱交換用中空管2bには、第一熱交換用中空管2aによって温められた熱交換液が流入する。そして、第一実施形態の熱交換用中空管2と同様、先端側から基端側へと流通している間にも地中熱を得ることができる。
【0058】
また、第一熱交換用中空管2aと第二熱交換用中空管2bとが密着しているため、境界を通して相互に熱交換を行うこともできる。
【0059】
以上より、本第二実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1bによれば、第一熱交換用中空管2aおよび第二熱交換用中空管2bの両方で地中熱を採熱することができ、効率のよい採熱効果が期待できる。
【0060】
次に、本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭の第三実施形態について図面を用いて説明する。なお、本第三実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1cのうち、上述した第一実施形態および第二実施形態の構成と同等または相当する構成については、再度の説明を省略する。
【0061】
本第三実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1cの特徴は、熱交換用中空管2の先端近傍に複数のストレーナ29を設けている点にある。以下、詳細に説明する。
【0062】
本第三実施形態における熱交換用中空管2は、図9に示すように、複数のストレーナ29が設けられている。ストレーナ29は、地中から熱交換用中空管2内に地下水を取り込むことが可能な孔であり、土砂などの流入を防止するためのフィルター等を有している。また、これらストレーナ29は、熱交換用中空管2の先端近傍に設けられており、深度の深い帯水層から地下水を取り入れることができるようになっている。
【0063】
ポンプ41は、熱交換用中空管2に接続されており、熱交換用中空管2内の地下水を汲み上げるようになっている。また、熱交換手段42は、ポンプ41に接続されるとともに、利用された後の地下水を地上へと放出し、地中へと還元されるようになっている。なお、利用後の地下水の還元手段は、地上への放出に限定されるものではなく、例えば、井戸を設ける等して、別途、地中に対して還元手段を設けてもよい。
【0064】
次に、本第三実施形態における地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1cの作用について説明する。
【0065】
地下水は、ストレーナ29から熱交換用中空管2内に侵入してくる。ストレーナー29では、土砂等の流入を防止し、地下水のみを熱交換用中空管2内に侵入させる。また、本第三実施形態におけるストレーナ29は、熱交換用中空管2の先端に設けられているため、温度の高い地下水を直接的に熱交換用中空管2内に取り込むことができる。
【0066】
ポンプ41では、熱交換用中空管2内に取り込まれた地下水を地上へと汲み上げ熱交換手段42に供給する。熱交換手段42では、地下水から熱を取りだし、構造物Aの暖房として利用する。地下水は、熱交換用中空管2からの伝熱により採熱するよりも多くの熱量を有している。よって、熱交換手段42では、地下水から多くの熱量を取り出すことができる。
【0067】
熱交換手段42で利用された後の地下水は、地上へと放出され、地下へと還元される。そのため、地下水の枯渇や地盤沈下などを防ぐことができる。
【0068】
以上より、本第三実施形態の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭1cは、地熱を地下水から直接的に汲み上げることが可能であるため、効率的な採熱を行うことができる。
【0069】
なお、本発明に係る地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0070】
例えば、構造物Aを1本の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭で支持しているが、複数本で支えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭
2 熱交換用中空管
3 内装管
4 熱交換液循環装置
2a 第一熱交換用中空管
2b 第二熱交換用中空管
21 口金部
22 有孔蓋
23 漏水防止ゴムリング
24 溝
25 雄ねじ
26 溝
27 雌ねじ
28 流通口
29 ストレーナ
31 流通口
41 ポンプ
42 熱交換手段
A 構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2014年6月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されてその内部に熱交換液または地下水を流通させる熱交換用中空管であって、前記熱交換用中空管を同一半径で同一ピッチの螺旋状に形成するとともにその先端を先鋭状に形成してなる地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項2】
前記熱交換用中空管の内部には、前記熱交換用中空管に沿って先端近傍まで螺旋状に形成された内装管が設けられており、当該内装管の先端近傍には前記熱交換用中空管の内部と流通可能な流通口が形成されている、請求項1に記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項3】
前記内装管が軟質性材料により前記熱交換用中空管の内径より小径の外径を備える管に形成されている、請求項2に記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項4】
前記熱交換用中空管の基端側には、前記熱交換用中空管に連通しているとともに前記内装管が挿入される口金部と、前記内装管を挿入保持させつつ前記口金部に螺合する有孔蓋と、この有孔蓋を前記口金部に螺合させた際の押圧により縮径して前記内装管との水密を保持する漏水防止ゴムリングとを有する、請求項2または請求項3のいずれかに記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項5】
前記熱交換用中空管が2本密着して並設されているとともに、各々の先端には互いの内部同士の流通を可能にする流通口が形成されている、請求項1に記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。
【請求項6】
前記熱交換用中空管の先端近傍に地下水を流入または流出させる複数のストレーナが設けられている、請求項1に記載の地中熱採熱機能一体型ハイブリッド螺旋杭。