特開2015-151921(P2015-151921A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上野 康男の特許一覧 ▶ 学校法人日本大学の特許一覧

<>
  • 特開2015151921-動力装置 図000003
  • 特開2015151921-動力装置 図000004
  • 特開2015151921-動力装置 図000005
  • 特開2015151921-動力装置 図000006
  • 特開2015151921-動力装置 図000007
  • 特開2015151921-動力装置 図000008
  • 特開2015151921-動力装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-151921(P2015-151921A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】動力装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20150728BHJP
   F03D 11/00 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   F03D3/06 F
   F03D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-26110(P2014-26110)
(22)【出願日】2014年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000189589
【氏名又は名称】上野 康男
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(72)【発明者】
【氏名】上野 康男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康方
(72)【発明者】
【氏名】藤田 肇
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA15
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB08
3H178BB09
3H178BB31
3H178CC01
3H178CC03
3H178CC16
3H178DD12Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】風力を利用した発電装置として風向きや風の強弱に大きな影響を受けずに充分な回転力を有する。洋上に設置した場合でも保守が容易であり、強風時に風圧を避けて破損を免れる対策も備えており、ごく小型のものからメガワットクラスの大型のものまで適応可能な構造で、潮流や川の流れを利用した水力利用の発電機にも応用可能である。
【解決手段】回転軸1を中心とした円周上に複数の回転翼セットを配置し、該回転翼セットは前翼4と後翼5とで構成されており、前翼の前縁が円周の外側を向き、後縁が円周に沿った方向を向くごとく形成されたものであり、後翼は前記前翼の後縁の外側に位置し、後翼の前縁が円周方向を向き、後縁が円周の内側を向くごとく形状とされた動力装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部に回転自在に支持された回転軸を中心とした円周上に複数の回転翼を配置した動力装置である。該回転翼は回転翼セットを形成し、該回転翼セットは前翼と後翼とで構成されており、前翼の前縁が円周の外側を向き、後縁が円周に沿った方向を向くごとく湾曲した形状をしたものであり、後翼は前記前翼の後縁の外側に位置し、後翼の前縁がほぼ円周方向を向き、後縁が円周の内側を向くごとく湾曲した形状とされていることを特徴とする動力装置。
【請求項2】
ベース部に回転自在に支持された回転軸を中心とした円周上に複数の回転翼を配置した動力装置である。該回転翼上の1点を、回転軸から回転軸を中心とした円周の半径方向に伸びるごとく固定された複数の固定腕の先端に、該半径方向を向いた第1の軸の周りに回転する第1の回転ヒンジと、前記回転翼セットの翼弦方向を向いた第2の回転軸とする第2の回転ヒンジを介して取り付け、回転軸上の他の点で該回転軸対して回転自在に設けた円盤の外径上に回転円周に沿った回転軸の周りに回転する第3の回転軸を介して可動腕を設ける。該可動腕は回転面に対して傾いた状態でその先端に前記回転翼の他点を、任意の方向に回転出来る自在ヒンジを介して取り付けた構造としたことを特徴とする動力装置。
【請求項3】
ベース部に回転自在に支持された回転軸を中心とした円周上に複数の回転翼を配置した動力装置である。該回転翼が請求項1記載の構造を有する回転翼セットを形成し、該回転翼セット上の1点を、回転軸から回転軸を中心とした円周の半径方向に伸びるごとく固定された複数の固定腕の先端に、該半径方向を向いた第1の軸の周りに回転する第1の回転ヒンジと、前記回転翼セットの翼弦方向を向いた第2の回転軸とする第2の回転ヒンジを介して取り付け、回転軸上の他の点で該回転軸対して回転自在に設けた円盤の外径上に回転円周に沿った回転軸の周りに回転する第3の回転軸を介して可動腕を設ける。該可動腕は回転面に対して傾いた状態でその先端に前記回転翼セットの他点を、任意の方向に回転出来る自在ヒンジを介して取り付けた構造としたことを特徴とする動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に風力や水力を利用して発電などをするための動力装置に関するものであり、回転力が強くまた、強風時にコンパクトに折畳んで風圧を逃げることができる動力装置に関するものである。ごく小型のものからメガワットクラスの大型のものまで適応可能な構造であり、重心が低いので洋上の設置にも適し、広い応用範囲を有するものである。
【背景技術】
【0002】
再生可能な自然エネルギーの内、最も有効とされている風力は洋上に設置する技術の向上により更にその可能性を高めている。しかし、現在広く利用されているプロペラ方式のものは揺れに対する許容度が狭いことと、高い所に主要な機構が設置されていることが原因でメンテナンスが困難なことなどの理由で必ずしも最適な方式とは云えない。その他強弱や方向が常に変化する風に対して常に最適な状態にプロペラのねじれ角度や向きを制御する機構にも課題が多い。発電コストを下げるためには、よりロバスト性の高い垂直軸型の風車が望まれている。本案はその解決も含めたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−108330公報 代表的なものとして上記文献などがあるが、起動特性は改善されているが定常回転性能の向上に充分な効果を有するものではない。また、強風時にどのようにその風圧を避けて破損を免れるかの対策は含まれていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は風力を利用して発電などを行う為の動力装置として充分な回転力を有するとともに、強風時に風圧を避けて破損を免れる対策も備え、洋上に設置上で保守が容易であり、更に潮流や川の流れを利用した水力利用の発電機にも応用可能な動力装置を提供するものである。発電以外の用途として船舶に搭載した状態でその強風を利用して、直接推進器を駆動するための動力を得る動力装置としての用途等も可能であり、その他の機械的な駆動力を得ることができる動力装置である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題を解決するための第1の手段は、回転軸を中心とした円周上に複数の回転翼セットを配置し、該回転翼セットは前翼と後翼とで構成されており、前翼の前縁が円周の外側を向き、後縁が円周に沿った方向を向くよう湾曲した形状をしたものであり、後翼は前記前翼の後縁の外側に位置し、後翼の前縁が円周方向を向き、後縁が円周の内側を向くよう湾曲した形状とされている動力装置を提供することである。
【0006】
本発明の上記課題を解決するための第2の手段は、上記回転翼セット上の1点を回転軸から回転軸を中心とした円周の半径方向に伸びるごとく固定された複数の固定腕の先端に、該半径方向を軸とする第1の回転ヒンジと前記回転翼セットの翼弦方向を回転軸とする第2の回転ヒンジを介して前記回転翼セットを取り付け、回転軸上の他の点で回転自在に設けた円盤の外径上に回転円周に沿った方向を軸として回転する第3の回転軸を介して可動腕を設け、該稼動腕の先端に前記回転翼セットの他点を任意の方向に回転出来る自在ヒンジを介して固定した構造の動力装置を提供することである。
【0007】
この場合、回転翼セットの長手方向の形状は回転円周に沿った円弧状に形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の効果は、回転翼セットは前翼と後翼とで構成されており、前翼の前縁が円周の外側を向き、後縁が円周に沿った方向を向いたものとすることで該回転翼セットに当たる風の相対速度に応じて発生する回転軸と並行な大きな回転力によって風車を回転するものである。これは従来の風車が回転翼に生じる揚力や抗力によって回転するのとは異なり、回転翼あるいは回転翼セットに当たる風の方向(いわゆる迎角)による回転力の変化幅が大幅に減少し、極めて安定した回転力を得ることが出来る。したがってプロペラ型の風車の様に風に対する最適な回転数やピッチ角、回転面の変更制御が不要となり風の変動による回転力の変動が大幅に縮減できる。更に発電機等の重量のある機構部を低い位置に配置できる為、洋上に設置した場合でも保守が容易である。
【0009】
本発明の第2の効果は、回転翼セットが上記の複数の回転ヒンジによって支持されていることで、可動腕が回転することで複数の回転翼セットが同時に円周方向に傾斜して、最終的には円周と並行な状態となる。したがって、強風時に受風面積を任意に変化して回転力を制御することが出来る上、円周と並行な状態とすることで回転力を0として風圧を避けて破損を免れることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の動力装置の1実施例の運転状態の構造を示す側断面図である。
図2図2は、本発明の動力装置の1実施例の運転状態の構造を示す平面図である。
図3図3は、本発明の動力装置の1実施例の折畳み状態の構造を示す側断面図である。
図4図4は、本発明の動力装置の1実施例の折畳み状態の構造を示す平面図である。
図5図5は、本発明の動力装置の1実施例の構造を示す部分拡大図である。
図6図6は、本発明の動力装置の1実施例の構造を示す部分側面図である。
図7図7は、本発明の動力装置の1実施例の構造を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の本発明の動力装置の1実施例の運転状態の構造を示す側断面図、図2は、本発明の動力装置の1実施例の運転状態の構造を示す平面図である。
図1図2においてベース部15に回転自在に支持された回転軸1を中心とした円周上に複数の回転翼セット3を配置し、該回転翼セット3は前翼4と後翼5とで構成されており、前翼4の前縁16が円周の外側を向き、後縁17が円周に沿った方向を向くよう湾曲した形状をしたものであり、後翼5は前記前翼4の後縁17の外側に位置し、後翼5の前縁18が円周方向を向き、後縁19が円周の内側を向くよう湾曲した形状とされている。また、回転翼セット3上の1点を回転軸1から回転軸1を中心とした円周の半径方向に伸びるごとく固定された複数の固定腕2の先端に、該半径方向を第1の軸7と、その周りに回転する第1の回転ヒンジ8と、前記回転翼セット3の翼弦方向を回転軸9とし、その周りに回転する第2の回転ヒンジ10を介して前期回転翼セット3を取り付け、回転軸1上の他の点で該回転軸1に回転自在に設けた円盤11の外径上に回転円周に沿った軸周りに回転する第3の軸12を介して可動腕13を設け、該可動腕13は回転面に対して傾いた向いた状態でその先端に前記回転翼セット3の他点を任意の方向に回転出来る自在ヒンジ14を介して取り付けた構造の動力装置を提供することである。この場合、回転翼セット3の長手方向の形状は回転円周に沿った円弧状に形成されていることが望ましい。6は前翼4と後翼5を結合する結合部材である。なお、ベース15の内部には回転軸1によって駆動される発電機などが収納されている。
【0012】
図3は、本発明の動力装置の1実施例の折畳み状態の構造を示す側断面図であり、図4は、本発明の動力装置の1実施例の折畳み状態の構造を示す平面図である。
図3及び図4において円盤11は図1及び図2に示す位置から反時計方向に回転し、可動腕13はやや下方に向いた状態でその先端において自在ヒンジ14を介して取り付けた回転翼セット3は円周に添った形で図1及び図2に示す上端部と下端部は同じ高さとなっている。この状態になるまで円盤11の回転と可動腕13の上下運動によって回転翼セット3はその傾斜位置を任意に選択することが出来る。
図5は本発明の発電装置の1実施例の構造を示す部分拡大図であり、回転翼セット3の断面形状の詳細を示すものである。図6は発電装置の1実施例の構造を示す部分側面図であり、回転翼セットの長手方向の他の形状を示すものであり、製作上の理由などから形状を円弧状ではなく多角形状にしたものである。このようにしても性能及び機能上大きな差を生じない。
【0013】
図7は本発明の図2における右側の回転翼セット3の部分拡大図であり、回転中の回転翼セット3に働く流体力を示すものであり、Wは回転翼セット3に対する相対風向を示す。回転中の回転翼セット3には風向きに対する位置によって相対的に流入する風向き(迎角)が変化する。図7において回転中の回転翼セット3には通常ABCの範囲で迎角が変化する。図7Aの場合、相対風Wは回転翼セット3の左前方から流入する状態であり、前翼4の湾曲部の外側に弱い負圧FFaが発生する。また後翼5の後縁部の彎曲部の外側には強い負圧FRaが発生する。この2つの力の合成力として反時計方向の回転力が発生する。図7Bの場合、相対風Wは回転翼セット3の正面から流入する状態であり、前翼4の湾曲部の外側に中程度の負圧FFbが発生する。また後翼5の湾曲部の後縁部の外側にも中程度の負圧FRbが発生する。この2つの力の合成力としてAの場合と同様に反時計方向の回転力が発生する。図7Cの場合、相対風Wは回転翼セット3の右前方から流入する状態であり、前翼4の湾曲部の外側に強い負圧FFcが発生する。また後翼5の後縁部の湾曲部の外側には弱い負圧FRcが発生する。この2つの力の合成力としてAの場合と同様に反時計方向の回転力が発生する。上記説明のごとく風の迎角が変化しても回転中の回転翼セット3には安定した回転力が発生する。このことは、これまでの揚力に依存する風車の方式のものとは大きく異なり、安定した回転力を得られるものである。なお、風車が停止しているときには迎角は更に大きく変化するが、その状態でも上記の作用は大きく変化するものではない。したがって、極めて優れた起動特性を有するものとなる。一方、上記の回転翼セット3の効果に類似した形状の湾曲した板を、回転軸を中心とする位置に設置した風車(サボニウス型)があるが、本案の場合、回転翼セット3は回転円周上に設置されており、サボニウス型に比べて風車の回転速度に応じて発生する相対風速は著しく増加し、それに伴う回転出力もその相対風速の3乗に比例して増加するので極めて大きなものとなる。なお、上記説明は風車について説明したが、流体を水に置き換えてもその作用はほぼ同様のものである。
【0014】
図1図2に示す状態と図3図4に示す状態との中間状態として回転翼セット3が斜めになった状態も可能である。この状態では図示はされていないが受風面積が図1図2に示す状態より小さくなり、過大な風の力を避けて安定した回転力を得られることとなる。この傾きの制御は、円板11に働く回転トルクのデータを利用して電気的に行うことは公知の技術で容易に実現可能なものである。尚、上記の説明では、回転軸端から見て反時計周りに回転するものとして説明したが、逆方向に回転するものとした設計としても本案の主旨を損なうものではないことは云うまでも無い。
(作用)
【0015】
上記実施形態に示す本発明の発電装置としての作用について説明する。回転軸1に直角な方向から風が吹くと回転翼セット3の前翼4と後翼5に働く空気力によって回転軸1に並行な反時計方向の回転力が発生する。この回転力は風と回転翼セット3の方向差(いわゆる迎角)の広い範囲で同方向の回転力が発生することが発明者の風洞実験で図7に示すごとく確認されている。複数の回転翼セット3に働くこの回転力は加算されてムラも少なくなり、発電装置は安定した大きな回転力で回転することが出来る。この回転特性は、迎角によって大きく変動する従来のプロペラ型風力発電装置とはかなり大きく異なり極めて安定した強力なものである。
【0016】
上記の説明では風力によって回転する発電機について説明したが、この発電装置の機構を上下逆にして、潮流や川の流れの中で水中に設置すれば水力によって風力同様に回転力が得られることは云うまでも無い。更に上記説明における回転軸1は鉛直方向に限定する必要は無く、回転軸を横に倒してビルの壁などの垂直面に取り付ければ、いわゆるビル風を有効に利用することが出来る発電装置を構成することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上の説明で明らかなごとく本発明の動力装置は、風の方向や強さに影響されることが少なく、安定した回転力を得ることが出来るのみならず、強風時に風による過大な回転力を避けることが可能であり、更に強風となったときは円周と平行に折畳んで風圧を避けることが容易に出来るものである。構造的には小型のものからメガワットクラスのものまで対応し得るものであり、その他水力発電装置やビル風を利用する発電装置への応用も可能であり、さらに発電以外にも船舶に搭載した状態でその強風を利用して、直接推進器を駆動するための動力を得る動力装置としての用途等も可能であり、その産業上の可能性は極めて広く自然エネルギー利用を促進する効果は極めて著しい。
【符号の説明】
【0018】
1 回転軸
2 固定腕
3 回転翼セット
4 前翼
5 後翼
6 結合部材
7 第1の軸
8 第1の回転ヒンジ
9 第2の回転軸
10 第2の回転ヒンジ
11 円盤
12 第3の回転軸
13 可動腕
14 自在ヒンジ
15 ベース
16 前翼4の前縁
17 前翼4の後縁
18 後翼5の前縁
19 後翼5の後縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7