【解決手段】ゴム状弾性体から構成される保持部材20の軸方向に、ロッド6が挿通される中心孔22が貫通形成される。ばね部材30は弾性フォームから構成され、保持部材20に基端側が保持されると共に、ロッド6が挿通される貫通孔34が軸方向に貫通形成される。保持部材20及びばね部材30を備える緩衝部材10は、ロッド6及び硬質の筒体7とは非接着の状態で筒体7に内装されるので、保持部材20を筒体7に加硫成形と同時に加硫接着する場合と比較して、保持部材20を成形する成形型の構造を簡素化できる。また、保持部材20及びばね部材30により非線形のばね特性を確保できる。
車輪側に取り付けられる車輪側部材および車体側に取り付けられる車体側部材の間に介装されるショックアブソーバ本体の軸方向外側に一端側が延出されるロッドが貫設される硬質の有底筒状の筒体の底部と、前記ショックアブソーバ本体との間に介設され、前記底部に対する前記ショックアブソーバ本体の軸方向の相対変位を弾性的に制限する緩衝部材であって、
前記ロッドが挿通される中心孔が軸方向に貫通形成されると共にゴム状弾性体から構成される保持部材と、
前記保持部材に基端側が保持されると共に先端側が前記保持部材より軸方向に突出し、前記ロッドが挿通される貫通孔が軸方向に貫通形成された弾性フォームから構成されるばね部材とを備え、
前記保持部材および前記ばね部材は、前記筒体および前記ロッドとは非接着の状態で前記筒体に内装されることを特徴とする緩衝部材。
前記保持部材および前記ばね部材は、前記ショックアブソーバ本体と前記筒体とに挟圧されて軸方向に圧縮変形することで、前記筒体の底部または前記ショックアブソーバ本体に前記保持部材および前記ばね部材の先端側が圧接して、前記保持部材の外周面と前記筒体の内周面との隙間が小さくされると共に、前記貫通孔の内周面と前記ロッドの外周面との隙間が小さくされることを特徴とする請求項2記載の緩衝部材。
前記保持部材は、前記外周面の周方向の一部から径方向外側に向かって突出すると共に、無荷重時に径方向外側端部が前記筒体の内周面の複数箇所に密接する複数の凸起部を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の緩衝部材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1から
図3を参照して、本発明の第1実施の形態における緩衝部材10の概略構造について説明する。
図1は第1実施の形態における緩衝部材10が装着されたサスペンション装置1の軸方向断面図であり、
図2は緩衝部材10の軸方向断面図であり、
図3はサスペンション装置1に装着された緩衝部材10の軸方向断面図である。なお、
図3では、ショックアブソーバ本体5及びロッド6の軸方向の一部の図示を省略する。
【0016】
図1に示すようにサスペンション装置1は、車輪を回転可能に支持するナックル等が接合される車輪側部材2と、車体に固定されるストラットマウント等の車体側部材3との間に介装される装置であり、路面から車輪(図示せず)を介して車体(図示せず)に伝わる振動を緩和するためのものである。車体側部材3には、スプリングシート4及びショックアブソーバ本体5が固定される。
【0017】
ショックアブソーバ本体5は、油液およびガスが封入されたシリンダ(図示せず)内に、ロッド6を連結したピストン(図示せず)を摺動可能に嵌装し、ロッド6の一端をショックアブソーバ本体5の軸方向に延出させることよりショックアブソーバを構成する。ショックアブソーバは、ロッド6のストロークによって生じる流体(油液等)の抵抗を利用して、振動エネルギー等を吸収して減衰させるものである。ロッド6の軸方向一端側には筒体7が固定される。
【0018】
筒体7は、ロッド6が貫設される底部7aを有し、ショックアブソーバ本体5に向かって開口する硬質の有底筒状の部材である。筒体7は、ロッド6の摺動部等へのダストの侵入を防止するための部材であり、底部7aを厚さ方向に貫通する孔部7bが底部7aの中心に形成されている。孔部7bにロッド6の一端側が嵌挿され、底部7aにロッド6が固定されることにより、筒体7はロッド6の周りを取り囲むように設けられる。本実施の形態では、筒体7は高い剛性を有する金属製であり、底部7aが下方(車輪側)に配置される一方、軸方向(
図1上下方向)の他端側(
図1上側)がショックアブソーバ本体5の径方向外側に位置する。ショックアブソーバ本体5が筒体7の内側を自在に往復動できるように、筒体7の内周面とショックアブソーバ本体5の外周面との間に隙間が形成される。
【0019】
筒体7は、外周面にスプリングシート8が取り付けられる。車体側部材3に取り付けられたスプリングシート4とスプリングシート8との間にコイルスプリング9が介装される。この構成によりサスペンション装置1は、車体側部材3によってショックアブソーバ本体5、ロッド6及びコイルスプリング9を車体(図示せず)に支持して、車輪側部材2からの振動を弾性的に受け止める。緩衝部材10は、車体側部材3に対して変位可能に弾性支持された車輪側部材2のストローク量を弾性的に制限するための部材であり、筒体7の底部7aとショックアブソーバ本体5との間に介設される。
【0020】
図2に示すように緩衝部材10は、保持部材20及びばね部材30が互いに組み付けられて構成されている。保持部材20は、ゴム状弾性体から一体に構成される部材であり、軸方向(
図2上下方向)視して外形が円形に形成される円盤状の基端部21と、軸線Oと交わる基端部21の中心に軸線Oに沿って貫通形成される中心孔22と、基端部21の外周部から周方向に亘って軸線Oに沿って立設される円筒状の筒壁部23と、筒壁部23の軸方向先端から周方向に亘って径方向内側に向かって突設される円環状の張出部24とを備えている。本実施の形態では、
図3に示すように、保持部材20を筒体7の底部7aに載置して、ばね部材30をショックアブソーバ本体5側に配置する。
【0021】
基端部21は、保持部材20の基盤となる部位であり、軸線O上に延びる中心孔22が厚さ方向に貫通形成されている。中心孔22は、円筒状に形成された内周面を有しており、
図3に示すように、内径がロッド6の外径と略同一の大きさに設定されている。これにより、中心孔22にロッド6を圧入することで、保持部材20の芯出しができる。筒壁部23は、ばね部材30が収容される収容凹部21aを保持部材20に形成するための部位であり、外周面23aが、軸方向の他方(
図2上側)に向かうにつれて漸次縮径するように形成されている。
【0022】
図3に示すように筒壁部23は、軸方向の一方(
図2下側)の外径が、筒体7の内周面7cの内径と略同一に設定されているので、外周面23aと内周面7cとの間に隙間G1が形成される。筒壁部23は外周面23aが漸次縮径するので、外周面23aと内周面7cとの間に形成される隙間G1が、軸方向の他方(
図2上側)に向かうにつれて大きくなる。
【0023】
また、筒壁部23は、先端面23bが、径方向内側に向かうにつれて軸方向の他方(
図2上側)に向かって上昇傾斜する円錐台状に形成されている。筒壁部23の先端面23bを円錐台状にすることで、筒壁部23のばね特性を、軸方向の他方(先端側)に向かうにつれて柔らかくすることができる。張出部24は、ばね部材30の基端側を係止し、ばね部材30の基端側を保持するための部位である。
【0024】
ばね部材30は、軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製の弾性フォーム(軟質フォーム)から一体に構成されると共に、全体として肉厚の略円筒状に形成される部材である。ばね部材30は、ばね定数が、保持部材20のばね定数より小さく設定されている。ばね部材30は、軸方向(
図2上下方向)視して外形が円形に形成される円環状の基端部31と、基端部31の周方向に亘って軸線Oに沿って立設される円筒状の本体部32と、基端部31の外周から周方向に亘って径方向外側に向かってフランジ状に突設される係止凸部33と、基端部31及び本体部32の軸方向に亘って貫通して軸線O上に延びる貫通孔34とを備えている。
【0025】
基端部31は、保持部材20に形成された収容凹部21aに収容される部位であり、本体部32は、先端側が保持部材20より軸方向に突出する部位である。基端部31は、本体部32の外径より外径が大きく設定されており、基端部31は、外径が、保持部材20の張出部24の内径と略同一に設定されている。基端部31は、周方向に亘って係止凸部33がフランジ状に突設されているので、保持部材20に形成された張出部24に係止凸部33を係合させることにより、基端部31が収容凹部21aに嵌合し、基端部31(ばね部材30)が保持部材20に保持される。
【0026】
基端部31は、軸方向の一方(
図2下側、基端側)の端面に、径方向内側が貫通孔34に連通する凹溝31aが凹設されている。凹溝31aは、貫通孔34から径方向外側に向かって延び、軸線Oに沿って基端部31の外周面に凹設された外周凹溝31bと連通する。
【0027】
本体部32は、周方向に連続して延びる第1外周凹部32a及び第2外周凹部32bが外周面に形成されている。第1外周凹部32a及び第2外周凹部32bは、外周面にそれぞれ開口する略V字状の断面を有し、互いに軸方向に離間して形成される。また、本体部32は、先端面32cが、径方向内側に向かうにつれて軸方向の他方(
図2上側)に向かって上昇傾斜する円錐台状に形成されている。本体部32の先端面32cを円錐台状にすることで、本体部32の先端側のばね特性を、軸方向の他方(先端側)に向かうにつれて柔らかくすることができる。
【0028】
貫通孔34は、保持部材20に形成された中心孔22と略同一の内径に設定された円筒状の第1内周部34aと、第1内周部34aに連成されると共に軸方向の他端側(
図2上側)に向かうにつれて漸次拡径する拡径部34bと、拡径部34bに連成されると共に第1内周部34aより内径が大きく設定された円筒状の第2内周部34cとを備えている。
図3に示すように、第1内周部34aは、内径が、ロッド6の外径と略同一に設定されており、第2内周部34cは第1内周部34aより内径が大きく設定されている。従って、第1内周部34aにロッド6を圧入して、ばね部材30の芯出しができる。第1内周部34aにロッド6を圧入すると、ロッド6の外周面と第2内周部34cとの間に隙間G2が形成される。
【0029】
第2内周部34cは、周方向に連続して延びる第1内周凹部34d及び第2内周凹部34eが形成されている。第1内周凹部34d及び第2内周凹部34eは、内周面にそれぞれ開口する略V字状の断面を有し、互いに軸方向に離間して形成される。本体部32は、第1外周凹部32a、第1内周凹部34d、第2外周凹部32b及び第2内周凹部34eが、本体部32の外周面および内周面に交互に軸方向に距離を隔てて設けられるので、全体が蛇腹状に形成される。本体部32は、全体が蛇腹状に形成されるのに加え、基端部31の径方向厚さより径方向厚さが小さく設定されるので、ばね特性が、基端部31のばね特性より柔らかく設定される。
【0030】
次に
図3及び
図4を参照して、緩衝部材10の動作について説明する。
図4は圧縮変形された緩衝部材10の軸方向断面図である。
図3に示すように緩衝部材10は、筒体7及びロッド6とは非接着の状態で筒体7に内装され、筒体7の底部7aとショックアブソーバ本体5との間に介設される。サスペンション装置1が作動して筒体7の底部7aとショックアブソーバ本体5とが接近すると、まず、ショックアブソーバ本体5がばね部材30の本体部32の先端面32cに当接する。本体部32は、先端面32cが、径方向内側に向かうにつれて軸方向の他方(
図2上側)に向かって上昇傾斜する円錐台状に形成されているので、先端面32cによって柔らかいばね特性が発揮される。
【0031】
緩衝部材10は、ショックアブソーバ本体5が保持部材20に当接するまで、蛇腹状に形成されたばね部材30の圧縮ばねに基づき、柔らかいばね特性が発揮される。なお、ばね部材30は弾性フォームから構成されているので、圧縮変形時に体積収縮を伴い、座屈等のような不規則な変形を防止できる。そのため、軸方向に圧縮変形したばね部材30は、保持部材20に凹設された収容凹部21a内に収容される。ばね部材30の圧縮変形量が増加して、収容凹部21aに収容されるばね部材30の体積が増加するにつれて、筒壁部23は、筒体7の内周面7cとの間に形成される隙間G1の分だけ径方向外側に拡径される。筒壁部23が拡径されることで収容凹部21aの容積が増大するので、軸方向に圧縮変形したばね部材30を収容凹部21aに収容させ易くできる。
【0032】
その結果、保持部材20の先端面23bにばね部材30がはみ出して筒体7に干渉したり、保持部材20へのショックアブソーバ本体5の当接が阻害されたりすることを防止できる。また、ばね部材30は、貫通孔34の拡径部34b及び第2内周部34cとロッド6の外周面との間に隙間G2が形成されているので、隙間G2の分だけ、ばね部材30の本体部32の径方向内側への膨出変形も許容される。その結果、ばね部材30の径方向外側への膨出変形を軽減または抑制できる。
【0033】
さらにショックアブソーバ本体5の変位量が増大し、ばね部材30の圧縮変形量が大きくなると、ショックアブソーバ本体5が保持部材20の先端面23bに当接する。このときは、ばね部材30及び保持部材20の両方の圧縮ばねが作用するので、ばね定数が大きくなって硬いばね特性が発揮される。なお、筒壁部23は、先端面23bが、径方向内側に向かうにつれて軸方向の他方(
図3上側)に向かって上昇傾斜する円錐台状に形成されているので、筒壁部23のばね特性を、軸方向先端側に向かうにつれて柔らかくすることができる。その結果、ショックアブソーバ本体5が先端面23bに衝突するときの打音を軽減できる。さらに、ショックアブソーバ本体5が先端面23bに衝突するときに車両の搭乗者が覚える違和感を軽減し、車両の乗り心地を確保できる。
【0034】
ショックアブソーバ本体5がさらに変位すると、保持部材20の先端面23bに密接するショックアブソーバ本体5の面積が増加する。保持部材20の先端面23bは、径方向内側に向かうにつれて軸方向の他方(
図3上側)に向かって上昇傾斜するので、先端面23bに密接するショックアブソーバ本体5の面積が増加するにつれて、先端面23bが変形することで、筒壁部23は径方向外側に拡径(変形)される。筒壁部23は、軸方向に圧縮変形されつつ、隙間G1を次第に小さくすることで径方向に拡径し、保持部材20のばね定数が急激に大きくなることを抑制できる。これにより、ショックアブソーバ本体5が筒壁部23を圧縮変形するときに車両の搭乗者が覚える違和感を軽減し、車両の乗り心地を確保できる。
【0035】
図4に示すように、さらにショックアブソーバ本体5が変位してショックアブソーバ本体5に保持部材20及びばね部材30が密接し、保持部材20及びばね部材30が軸方向および径方向に変形して隙間G1,G2が消滅すると、急激にばね定数が大きくなって硬いばね特性が発揮される。これによりショックアブソーバ本体5の変位が確実に制限される。このときは、筒壁部23の外周面23aが全周に亘って筒体7の内周面7cに密接し、筒壁部23の先端面23bが全周に亘ってショックアブソーバ本体5に密接する。そのため、保持部材20に作用する荷重を分散させることができ、保持部材20に局部的に応力が集中することを抑制できる。その結果、保持部材20の耐久性を確保できる。
【0036】
また、本実施の形態では、ばね部材30に拘束リング等が装着されていないので、ばね部材30の圧縮変形時に局部的な応力集中が生じることを防止できる。さらに、ばね部材30の圧縮変形量が、筒壁部23の外周面23aが筒体7の内周面7cに密接することにより確実に制限される。その結果、ばね部材30の最大発生応力も抑制できるので、ばね部材30の耐久性を確保できる。
【0037】
以上説明した緩衝部材10は、筒体7及びロッド6とは非接着の状態で筒体7に内装されるので、従来のように保持部材(ストッパゴム)を加硫成形と同時に筒体(保持金具)に加硫接着する場合と比較して、保持部材10を成形する成形型の構造を簡素化できる。また、加硫接着が省略されると、筒体(保持金具)に接着剤を塗布する必要がなくなるので、接着剤の塗布工程を省略することができ、その分だけサスペンション装置1の製造コストを削減できる。また、保持部材20は、軸方向の他方(
図2上側)に向かうにつれて筒壁部23の外周面23aが漸次縮径されているので、保持部材20の加硫成形後、成形型(図示せず)からの脱型の方向を軸方向の一方(
図2上側)にすることで、脱型を容易にできる。
【0038】
なお、保持部材20の筒壁部23の外周面23aと筒体7の内周面7cとの間に隙間G1が形成されるので、筒体7に保持部材20を組み付けるときの組み付け作業性を向上できる。同様に、ばね部材30の貫通孔34の内周面とロッド6の外周面との間に隙間G2が形成されるので、ロッド6にばね部材30を組み付けるときの組み付け作業性を向上できる。
【0039】
また、保持部材20の中心孔22にロッド6が嵌挿(圧入)され、ロッド6に対して保持部材20が位置決め(芯出し)される。これにより、筒体7内で保持部材20にガタつきが生じることを防止できる。また、ばね部材30の第1内周部34aにロッド6が嵌挿(圧入)されるので、ロッド6に対してばね部材30の位置決め(芯出し)を行うことができる。緩衝部材10は、有底筒状の筒体7に内装されているので、筒体7やロッド6と非接着であっても、サスペンション装置1からの脱落を防止できる。
【0040】
次に
図5を参照して第2実施の形態について説明する。第2実施の形態では、第1実施の形態と比較して、保持部材50の筒壁部51の軸方向長さが大きく設定されると共に、ばね部材60の基端部61の軸方向長さが大きく設定される一方、本体部62の軸方向長さが小さく設定される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5は第2実施の形態における緩衝部材40の軸方向断面図である。
【0041】
図5に示すように緩衝部材40は、保持部材50及びばね部材60が互いに組み付けられて構成されている。保持部材50は、基端部21の外周部から周方向に亘って軸線Oに沿って立設される円筒状の筒壁部51と、筒壁部51の軸方向先端から周方向に亘って径方向内側に向かって突設される円環状の張出部52とを備え、それらがゴム状弾性体により一体に形成されている。
【0042】
筒壁部51は、ばね部材60が収容される収容凹部21aを保持部材50に形成するための部位であり、外周面51aが、軸方向の他方(
図5上側)に向かうにつれて漸次縮径するように形成されている。筒壁部51は、先端面51bが、径方向内側に向かうにつれて軸方向の他方(
図5上側)に向かって上昇傾斜する円錐台状に形成されている。張出部52は、ばね部材60の基端側を係止し、ばね部材60の基端側を保持するための部位である。
【0043】
ばね部材60は、軸方向(
図5上下方向)視して外形が円形に形成される円筒状の基端部61と、基端部61の周方向に亘って軸線Oに沿って立設される円筒状の本体部62と、基端部61の外周から周方向に亘って径方向外側に向かってフランジ状に突設される係止凸部63とを備え、弾性フォーム(軟質フォーム)から一体に構成されている。
【0044】
基端部61は、保持部材50に形成された収容凹部21aに収容される部位であり、本体部62は、先端側が保持部材50より軸方向に突出する部位である。基端部61は、周方向に亘って係止凸部63がフランジ状に突設されているので、保持部材50に形成された張出部52に係止凸部63を係合させることにより、基端部61が収容凹部21aに嵌合し、基端部61が保持部材50に保持される。
【0045】
本体部62は、周方向に連続して延びる外周凹部62aが外周面に形成されている。外周凹部62aは外周面に開口する略V字状の断面を有し、第1内周凹部34d、外周凹部62a及び第2内周凹部34eが、本体部62の外周面および内周面に交互に軸方向に距離を隔てて設けられる。その結果、本体部62は全体が蛇腹状に形成される。また、本体部62は、先端面62bが、径方向内側に向かうにつれて軸方向の他方(
図5上側)に向かって上昇傾斜する円錐台状に形成されている。
【0046】
第2実施の形態における緩衝部材40によれば、保持部材50の筒壁部51の軸方向長さを適宜設定することにより、ショックアブソーバ本体5の作動量を適宜設定することが可能である。
【0047】
次に
図6から
図8を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、保持部材20,50に形成された中心孔22にロッド6が嵌挿されることで、筒体7に対して保持部材20,50の位置決めを行う場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、保持部材80の外周面23aに突設された凸起部82により、筒体7に対して保持部材80の位置決め(芯出し)を行う場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第3実施の形態における緩衝部材70の底面図であり、
図7は
図6のVII−VII線における緩衝部材70の軸方向断面図であり、
図8はサスペンション装置1に装着された緩衝部材70の軸方向断面図である。
【0048】
図6及び
図7に示すように緩衝部材70は、保持部材80及びばね部材90が互いに組み付けられて構成されている。保持部材80は、ゴム状弾性体から一体に構成される部材であり、基端部21の中心に軸線Oを通る中心孔81が貫通形成され、筒壁部23の外周面23aから径方向外側に向かって凸起部82が放射状に突設される。
【0049】
中心孔81は、ロッド6が挿通される部位であり、内周面は円筒状に形成されている。
図8に示すように、中心孔81の内径はロッド6の外径より大きな値に設定されている。よって、中心孔81にロッド6を挿通(遊挿)すると、ロッド6の外周面と中心孔81の内周面との間に隙間G2が形成される。
【0050】
凸起部82は、筒体7に対して保持部材80の芯出し(センタリング)をするための部位であり、筒壁部23の軸方向の一方(
図7下側、基端側)に設けられている。
図6に示すように凸起部82は、保持部材80の外周面23aに、周方向に所定の間隔をあけて複数(本実施の形態では4つ)設けられている。
【0051】
凸起部82は、軸線O方向から視て複数の凸起部82の径方向外側端部を通る外接円C(
図6参照)の直径が、外周面23aの直径より大きく設定されている。外接円Cの直径は、筒体7の内周面7cの内径より少し大きめに設定されている。これにより、緩衝部材70を筒体7に内装すると、凸起部82の径方向外側端部が無荷重時に筒体7の内周面7cに密接する。
【0052】
図7に示すように凸起部82は、軸方向の一方(
図7下側)から軸方向の他方(
図7上側)に向かうにつれて径方向寸法(
図7左右方向寸法)が漸次小さくなるように形成されている。凸起部82が突設される筒壁部23の外周面23aも、軸方向の一方(
図7下側)から軸方向の他方(
図7上側)に向かうにつれて径方向寸法(
図7左右方向寸法)が漸次小さくなるように形成されている。そのため、保持部材80の外周面23a及び凸起部82にアンダーカットとなる部分が形成されることを防止できる。その結果、成形型(図示せず)の構造を簡素化できる。
【0053】
ばね部材90は、弾性フォーム(軟質フォーム)から一体に構成される部材であり、基端部31及び本体部32の軸方向に亘って貫通して軸線O上に延びる貫通孔91が形成されている。貫通孔91は、保持部材80に形成された中心孔81の内径と同一の内径に設定された円筒状の内周部91a(内周面)を有し、内周部91aの軸方向に互いに離間して第1内周凹部34d及び第2内周凹部34eが形成されている。よって、
図8に示すように、貫通孔91にロッド6を挿通(遊挿)すると、ロッド6の外周面と貫通孔91の内周部91aとの間に隙間G2が形成される。
【0054】
図8に示すように緩衝部材70は、ロッド6の外周面と中心孔81及び貫通孔91の内周面との間に隙間G2を有し、中心孔81及び貫通孔91にロッド6が遊挿されるので、緩衝部材70をサスペンション装置1に組み付けるときの組み付け作業性を向上できる。ロッド6の外周面と中心孔81及び貫通孔91の内周面との間に隙間G2は形成されるが、保持部材80に凸起部82が設けられているので、筒体7に対して保持部材80(緩衝部材70)の芯出し(センタリング)をすることができ、筒体7内の緩衝部材70のガタつきを防止できる。よって、緩衝部材70によれば、組み付け作業性を向上させつつ筒体7内のガタつきを防止できる。
【0055】
次に
図9及び
図10を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では、凸起部82が保持部材80の軸方向の一方(
図7下側)に設けられる場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、保持部材80の軸方向の一方(
図10下側)に突設された凸起部82に加え、凸起部82より軸方向の他方(
図10上側)に凸起部111が設けられた緩衝部材100について説明する。なお、第1実施の形態および第3実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図9は第4実施の形態における緩衝部材100の底面図であり、
図10は
図9のX−X線における緩衝部材100の軸方向断面図である。
【0056】
図9及び
図10に示すように緩衝部材100は、保持部材110及びばね部材90が互いに組み付けられて構成されている。保持部材110は、ゴム状弾性体から一体に構成される部材であり、筒壁部23の外周面から径方向外側に向かって凸起部82,111が放射状に突設される。
【0057】
凸起部111は、凸起部82と共に、筒体7に対して保持部材110の芯出し(センタリング)をするための部位であり、凸起部82より先端面23b寄りの軸方向の他方(
図10上側)の外周面23aに設けられている。
図9に示すように凸起部111は、保持部材110の外周面23aに、周方向に所定の間隔をあけて凸起部82,82間の位置に複数(本実施の形態では4つ)設けられている。
【0058】
凸起部111は、径方向外側端部が、軸線O方向から視て複数の凸起部82の径方向外側端部を通る外接円C(
図9参照)上に位置する。これにより、緩衝部材100を筒体7に内装すると、凸起部82,111の径方向外側端部が無荷重時に筒体7の内周面7cに密接する。緩衝部材100は、凸起部82に加えて、保持部材110の先端面23b寄りに凸起部111が設けられているので、隙間G1,G2(
図8参照)があるにも関わらず、凸起部82を支点とした軸線Oを通る平面(
図10紙面)内の保持部材110の揺動を抑制できる。
【0059】
次に
図11を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、保持部材20,50,80,110の外周面23a,51aが、軸方向の一方から軸方向の他方(先端面23b,51b側)に向かうにつれて漸次縮径される場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、保持部材130の外周面131aが、軸方向の他方(先端面131b側)から軸方向の一方に向かう(先端面131bから離隔する)につれて漸次縮径される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図11は第5実施の形態における緩衝部材120の軸方向断面図である。
【0060】
図11に示すように緩衝部材120は、保持部材130及びばね部材30が互いに組み付けられて構成されている。保持部材130は、基端部21の外周部から周方向に亘って軸線Oに沿って立設される円筒状の筒壁部131と、筒壁部131の軸方向先端から周方向に亘って径方向内側に向かって突設される円環状の張出部132とを備え、それらがゴム状弾性体から一体に構成されている。
【0061】
筒壁部131は、外周面131aが、先端面131b側から軸方向の一方(
図11下側、基端側)に向かうにつれて漸次縮径するように形成されている。これにより、外周面131aが軸方向に亘って同一の外径に設定された場合と比較して、成形型からの保持部材130の脱型を容易にできる。
【0062】
また、保持部材130は、先端面131b側から軸方向の一方(
図11下側、基端側)に向かうにつれて外周面131aが漸次縮径するので、緩衝部材120を筒体7に内装したときには、少なくとも保持部材130の基端側と筒体7の内周面7cとの間に隙間を設けることができる。隙間が形成されることで緩衝部材120(保持部材130)を筒体7に内装し易くできるので、緩衝部材120の組み付け作業性を向上できる。
【0063】
また、先端面131b側から軸方向の一方(
図11下側、基端側)に向かうにつれて外周面131aが漸次縮径するので、保持部材130の基端側の外径を先端側131b側の外径より小さくできる。その結果、ばね部材30を組み付けた保持部材130(緩衝部材120)を保持部材130の基端側から筒体7(
図1参照)へ内装するときに、保持部材130の基端側で案内して筒体7内へ挿入し易くできる。よって、緩衝部材120の組み付け作業性を向上できる。
【0064】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0065】
上記各実施の形態では、サスペンション装置1を構成する筒体7が金属製の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。筒体7は、緩衝部材10,40,70,100,120の弾性変形を制限するためのものなので、硬質の合成樹脂から筒体7を構成することは当然可能である。
【0066】
上記各実施の形態では、保持部材20,50,80,110,130とばね部材30,60,90とを互いに係合させることで緩衝部材10,40,70,100,120を構成する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、保持部材20,50,80,110,130及びばね部材30,60,90の端面同士を接着して、緩衝部材10,40,70,100,120を構成することは当然可能である。
【0067】
上記各実施の形態では、筒体7の底部7aに保持部材20,50,80,110,130を載せ、ばね部材30,60,90をショックアブソーバ本体5側に向ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これとは反対に、筒体7の底部7aにばね部材30,60,90を載せ、保持部材20,50,80,110,130をショックアブソーバ本体5側に向けることは当然可能である。緩衝部材10,40,70,100,120は筒体7に非接着なので、任意の向きで筒体7に設置できる。
【0068】
上記各実施の形態では、ロッド6を車輪側部材2に接合し、ショックアブソーバ本体5を車体側部材3に接合する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これとは逆に、ロッド6を車体側部材3に接合し、ショックアブソーバ本体5を車輪側部材2に接合することは当然可能である。この場合、筒体7は、底部7aが上方に配置され、下方に向けて開口されるように配置される。この場合も、保持部材20,50,80,110,130の中心孔22,81にロッド6を圧入したり、保持部材20,50,80,110,130の凸起部82,111を筒体7の内周面7cに密接させたりすることで、ガタつくことなく緩衝部材10,40,70,100,120を筒体7内に固定することができる。その結果、上記各実施の形態と同様の作用効果を実現できる。
【0069】
上記第1実施の形態では説明を省略したが、ばね部材30の第1内周部34aの内周面に、軸線Oに沿う内周凹溝を1乃至複数箇所に凹設することは可能である。内周凹溝を設けることで、貫通孔34と凹溝31aとを連通させることができる。その結果、内周凹溝、凹溝31a及び外周凹溝31bにより貫通孔34内の空気の給排が可能である。そのため、本体部32の先端にショックアブソーバ本体5が当接して、本体部32が軸方向に圧縮変形するときの貫通孔34の容積変化を許容できる。その結果、貫通孔34内に閉じ込められた空気の圧力が増大して本体部32が損傷することを防止できると共に、所望の本体部32のばね特性を得ることができる。また、貫通孔34内の空気の給排等に伴う異音の発生を防止できる。