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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-152078(P2015-152078A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】圧力緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20150728BHJP
【FI】
   F16F9/32 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-25938(P2014-25938)
(22)【出願日】2014年2月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】柿田 翔太
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC16
3J069EE03
3J069EE28
3J069EE64
3J069EE65
(57)【要約】
【課題】油圧緩衝装置におけるピストンの軸方向長さを短縮する。
【解決手段】油圧緩衝装置1は、オイルを収容するシリンダ11と、一方側の端部がシリンダ11内に収容され、他方側の端部がシリンダ11の開口部から突出し、シリンダ11の軸方向に移動するロッド21と、オイルが流れる第1油路321,第2油路322を形成する第1ピストン31と、第1ピストン31の軸方向の一方側または他方側に設けられる開口部31bとを有し、ロッド21の一方側に設けられる第1ピストン部30と、オイルが流れる第1油路421,第2油路422を形成する第2ピストン41を有し、第1ピストン部30の開口部の内径よりも小さい外径を有し、少なくとも一部が第1ピストン部30の開口部31bに挿入される第2ピストン部40とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容するシリンダと、
一方側の端部が前記シリンダ内に収容され、他方側の端部が前記シリンダの開口部から突出し、前記シリンダの軸方向に移動するロッドと、
前記流体が流れる第1流路を形成する第1流路形成部と、前記第1流路形成部の軸方向の一方側または他方側に設けられる開口部とを有し、前記ロッドの前記一方側に設けられる第1ピストン部と、
前記流体が流れる第2流路を形成する第2流路形成部を有し、前記第1ピストン部の前記開口部の内径よりも小さい外径を有し、少なくとも一部が前記第1ピストン部の前記開口部に挿入される第2ピストン部と、
を備える圧力緩衝装置。
【請求項2】
前記第1ピストン部と前記第2ピストン部との間にて前記ロッドの軸方向に移動可能に設けられ、前記ロッドに対する移動位置に応じて前記第1流路または前記第2流路を開閉する移動開閉部を有する請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項3】
前記移動開閉部は、
前記ロッドに対する前記移動位置に応じて前記第1流路および前記第2流路のうちいずれか一方を覆う覆い部材と、
弾性変形することによって前記覆い部材の移動に抗する力を前記覆い部材に対して付与する弾性部材と、
を有する請求項2に記載の圧力緩衝装置。
【請求項4】
前記覆い部材は、前記第1ピストン部側または前記第2ピストン部側に移動した際に前記弾性部材を収容可能な凹部を有する請求項3に記載の圧力緩衝装置。
【請求項5】
流体を収容するシリンダと、
一方側の端部が前記シリンダ内に収容され、他方側の端部が前記シリンダの開口部から突出し、前記シリンダの軸方向に移動するロッドと、
前記流体が流れる複数の第1流路を形成する第1流路形成部を有し、前記ロッドの前記一方側に設けられる第1ピストン部と、
前記流体が流れる複数の第2流路を形成する第2流路形成部を有し、前記第1ピストン部に対向して設けられる第2ピストン部と、
前記第1ピストン部と前記第2ピストン部との間にて前記ロッドの軸方向に移動可能に設けられ、前記ロッドに対する移動位置に応じて前記第1流路形成部のいずれかの前記第1流路または前記第2流路形成部のいずれかの前記第2流路を開閉する移動開閉部と、
を備える圧力緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のサスペンション装置には、走行中に路面から車体へ伝達される振動を適切に緩和する減衰力発生器を用いた圧力緩衝装置が設けられる。この種の圧力緩衝装置においては、液体を収容するシリンダと、シリンダの軸方向に移動するロッドと、ロッドに設けられるピストンとを有し、ロッド移動に伴う液体の流れに抵抗を与えて減衰力を発生させる。
【0003】
例えば特許文献1に記載される圧力緩衝装置は、図8に示すように、ピストンロッド940に取り付けられる、上方弁組立体910と、フロートリング920と、下方弁組立体930とを有する弁組立体900を備える。そして、上方弁組立体910は、弁プレート停止部911と、排出弁プレート912と、弁本体913と、インテーク弁ディスク914と組み合わされた柔軟ブリードディスク915とを有する。下方弁組立体930は、弁プレート停止部931と、排出弁プレート932と、排出柔軟ブリードディスク933と、弁本体934と、柔軟なブリードディスク935とインテーク弁ディスク936とを有する。
そして、大きな伸張時に、下方弁組立体930は、ピストンロッド940と共に移動してフロートリング920に接触する。また、大きな圧縮時には、上方弁組立体910はピストンロッド940とともに移動しフロートリング920に接触する。このように、特許文献1では、ピストンロッド940(圧力緩衝装置)の軸方向において、上方弁組立体910(第1ピストン部)と下方弁組立体930(第2ピストン部)という2つのピストンが並ぶように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−184760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば車両などの圧力緩衝装置の設置対象におけるレイアウトの制約により、圧力緩衝装置の軸方向の所定の長さを維持しながら、ロッドの移動範囲を出来る限り長く確保したいという要請がある。これに対して、例えばピストンを複数設けることによって発生させる減衰力の大きさの設定を行う場合、複数のピストンの軸方向長さが長くなることにつながる。そして、複数のピストンはロッドに設けられるため、複数のピストンの軸方向長さの延長に伴ってロッドの移動範囲が短くなるおそれがあった。あるいは、ロッドの移動範囲を一定量確保するために、圧力緩衝装置の軸方向長さを延長する必要があった。
本発明は、圧力緩衝装置の軸方向長さを短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、流体を収容するシリンダと、一方側の端部がシリンダ内に収容され、他方側の端部がシリンダの開口部から突出し、シリンダの軸方向に移動するロッドと、流体が流れる第1流路を形成する第1流路形成部と、第1流路形成部の軸方向の一方側または他方側に設けられる開口部とを有し、ロッドの一方側に設けられる第1ピストン部と、流体が流れる第2流路を形成する第2流路形成部を有し、第1ピストン部の開口部の内径よりも小さい外径を有し、少なくとも一部が第1ピストン部の開口部に挿入される第2ピストン部と、を備える圧力緩衝装置である。
そして、第1ピストン部と第2ピストン部とは、第1ピストン部の開口部に、第2ピストン部の少なくとも一部が挿入されることで、軸方向長さを短縮することができる。結果として、圧力緩衝装置の軸方向長さを短縮することができる。
【0007】
また、かかる目的のもと、本発明は、流体を収容するシリンダと、一方側の端部がシリンダ内に収容され、他方側の端部がシリンダの開口部から突出し、シリンダの軸方向に移動するロッドと、流体が流れる複数の第1流路を形成する第1流路形成部を有し、ロッドの一方側に設けられる第1ピストン部と、流体が流れる複数の第2流路を形成する第2流路形成部を有し、第1ピストン部に対向して設けられる第2ピストン部と、第1ピストン部と第2ピストン部との間にてロッドの軸方向に移動可能に設けられ、ロッドに対する移動位置に応じて第1流路形成部のいずれかの第1流路または第2流路形成部のいずれかの第2流路を開閉する移動開閉部と、を備える圧力緩衝装置である。
そして、移動開閉部が第1流路形成部の第1流路を開閉する機能と第2流路形成部の第2流路を開閉する機能とを兼ねるため、部品点数が削減されて圧力緩衝装置の軸方向長さを短縮することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧力緩衝装置の軸方向長さを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の油圧緩衝装置の全体図である。
図2】実施形態1のピストン部を説明するための断面図である。
図3】(a)〜(c)は、実施形態1のフリーピストン部を説明するための断面図である。
図4】(a)および(b)は、圧縮行程時のピストン部におけるオイルの流れを示す図である。
図5】(a)および(b)は、伸張行程時のピストン部におけるオイルの流れを示す図である。
図6】実施形態2のピストン部を説明するための断面図である。
図7】実施形態3のピストン部を説明するための断面図である。
図8】従来の圧力緩衝装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1の油圧緩衝装置1の全体構成図である。
図2は、実施形態1のピストン部100を説明するための断面図である。
なお、以下の説明においては、図1に示す油圧緩衝装置1の軸方向における図中下側を「一方側」と称し、図中上側を「他方側」と称する。
【0011】
[油圧緩衝装置1の構成・機能]
油圧緩衝装置1は、図1に示すように、シリンダ部10と、他方側がシリンダ部10の外部に突出して設けられるとともに一方側がシリンダ部10の内部にスライド可能に挿入されるロッド部20と、ロッド部20の一方側の端部に設けられるピストン部100と、シリンダ部10の一方側の端部に設けられるボトムバルブ部60とを備えている。
そして、油圧緩衝装置1は、四輪自動車や二輪自動車等において車体と車軸との間に設けられて、シリンダ部10に対するロッド部20の振幅運動の減衰を行う。
【0012】
シリンダ部10は、図1に示すように、シリンダ11と、シリンダ11の外側に設けられる外筒体12と、軸方向の一方側の端部に設けられる底部13とを備えている。また、シリンダ部10は、シリンダ11の他方側の端部に設けられるロッドガイド14と、外筒体12の他方側の端部を閉じるシール部材15とを有している。
【0013】
ロッド部20は、本実施形態では、軸方向に延びて形成されるロッド21と、ロッド21の一方側の端部に設けられる一方側取付部21aと、ロッド21の他方側の端部に設けられる他方側取付部21bとを有する。
【0014】
ピストン部100は、図2に示すように、第1ピストン部30と、第2ピストン部40と、フリーピストン部50とを備える。
第1ピストン部30は、図2に示すように、第1ピストン31と、第1ピストン31の他方側に設けられる圧側減衰バルブ33と、第1ピストン31の外周に設けられるピストンリング34とを有する。
また、第2ピストン部40は、第2ピストン41と、第2ピストン41の一方側に設けられる伸側減衰バルブ43と、第2ピストン41の外周に設けられるシール部材44とを有する。
そして、フリーピストン部50は、カラー部材51と、カラー部材51の半径方向の外側に配置されるチェックバルブ52と、チェックバルブ52の他方側に配置される第1バネ部材53と、チェックバルブ52の一方側に配置される第2バネ部材54とを有する。
【0015】
ボトムバルブ部60は、図1に示すように、軸方向に貫通する複数の油路を有するバルブボディ61と、バルブボディ61の一方側に設けられる圧側バルブ621と、バルブボディ61の他方側に設けられる伸側バルブ622とを備える。
【0016】
そして、本実施形態の油圧緩衝装置1では、図1に示すように、第1ピストン部30のピストンリング34よりも軸方向の一方側に第1油室Y1が形成される。また、第1ピストン部30のピストンリング34よりも軸方向の他方側に第2油室Y2が形成される。さらに、油圧緩衝装置1においては、ボトムバルブ部60のバルブボディ61によって、第1油室Y1とリザーバ室Rとが区画される。
【0017】
そして、本実施形態に係る油圧緩衝装置1の概略構成を説明する。
油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置)は、図1および図2に示すように、オイル(流体)を収容するシリンダ11と、一方側の端部がシリンダ11内に収容され、他方側の端部がシリンダ11の開口部から突出し、シリンダ11の軸方向に移動するロッド21と、オイルが流れる第1油路321,第2油路322(第1流路)を形成する第1ピストン31(第1流路形成部)と、第1ピストン31の軸方向の一方側または他方側に設けられる後述の開口部31bとを有し、ロッド21の一方側に設けられる第1ピストン部30と、オイルが流れる第1油路421,第2油路422(第2流路)を形成する第2ピストン41(第2流路形成部)を有し、第1ピストン部30の開口部31bの内径よりも小さい外径を有し、少なくとも一部が第1ピストン部30の開口部31bに挿入される第2ピストン部40とを備える。
以下で、各々の構成について詳述する。
【0018】
〔ロッド部20の構成・機能〕
ロッド21は、図2に示すように、軸方向に長く延びる棒状の部材である。ロッド21の一方側取付部21aには、図1および図2に示すように、ボルトが形成され、第1ピストン部30、第2ピストン部40およびフリーピストン部50を保持するナットが取り付けられる。また、ロッド21の他方側取付部21b(図1参照)には、ボルトが形成され、油圧緩衝装置1を自動車などの車体などに連結するための連結部材(不図示)が取り付けられる。
【0019】
(第1ピストン部30の構成・機能)
第1ピストン31は、有底円筒形状に形成された部材である。そして、第1ピストン31は、ロッド21の一方側取付部21aを通すロッド孔を有する略円柱状の流路形成部31aと、流路形成部31aの一方側においてさらに一方側に向けて開口する略円筒形状の開口部31bとを備えて構成される。
【0020】
流路形成部31aは、図2に示すように、ロッド孔よりも半径方向の外側にて軸方向に形成された複数の第1油路321と、ロッド孔よりも半径方向の外側にて軸方向に形成された複数の第2油路322とを有する。
開口部31bの内径は、第2ピストン41の外径よりも大きく形成される。そして、開口部31bには、第2ピストン部40の少なくとも一部が挿入される。本実施形態では、開口部31bには、第2ピストン41の流路形成部41aが挿入される。その結果、第1ピストン31と第2ピストン41とが重なって設けられる。そして、第1ピストン31は、開口部31bにおいて第2ピストン41を保持する。
また、開口部31bには、フリーピストン部50が挿入される。開口部31bの内径は、チェックバルブ52の外径と略等しく形成される。そして、第1ピストン31は、チェックバルブ52が軸方向において移動可能にチェックバルブ52の移動を案内する。
【0021】
圧側減衰バルブ33は、ロッド21の一方側取付部21aを通すロッド孔を有する円盤状の金属板材により構成される。圧側減衰バルブ33は、第1ピストン31の他方側の端部に向けて押さえつけられて保持される。そして、圧側減衰バルブ33は、第1ピストン31の第1油路321の他方側を開閉可能にするとともに、第2油路322の他方側を常に開放する。
【0022】
ピストンリング34は、シリンダ11の内径と略等しく形成された外径を有する。そして、ピストンリング34は、シリンダ11との間をシールする。また、ピストンリング34は、軸方向においてスライド可能にシリンダ11の内周に接触する。
【0023】
(第2ピストン部40の構成・機能)
第2ピストン41は、有底円筒形状に形成された部材である。また、第2ピストン41は、第1ピストン31の開口部31bにおける内径よりも小さい外径に形成される。即ち、実施形態1において、第2ピストン41は、第1ピストン31よりも外径が小さい。そして、第2ピストン41は、ロッド21の一方側取付部21aを通すロッド孔を有する略円柱状の流路形成部41aと、流路形成部41aの一方側においてさらに一方側に向けて突出する略円筒形状の開口部41bとを備えて構成される。
【0024】
流路形成部41aは、図2に示すように、ロッド孔よりも半径方向の外側にて軸方向に形成された複数の第1油路421と、ロッド孔よりも半径方向の外側にて軸方向に形成された複数の第2油路422とを有する。
開口部41bの内側には、実施形態1では、伸側減衰バルブ43が収容される。
【0025】
伸側減衰バルブ43は、ロッド21の一方側取付部21aを通すロッド孔を有する円盤状の金属板材により構成される。伸側減衰バルブ43は、第2ピストン41の一方側の端部に向けて押さえつけられて保持される。そして、伸側減衰バルブ43は、第2ピストン41の第1油路421の一方側を開閉可能にするとともに、第2油路422の一方側を常に開放する。
【0026】
シール部材44は、第2ピストン41の外周と第1ピストン31の開口部31bの内周との間に挟み込まれる。そして、シール部材44は、第1ピストン31と第2ピストン41との間をシールする。
【0027】
図3は、フリーピストン部50を説明するための図である。
(フリーピストン部50の構成・機能)
カラー部材51は、ロッド21の一方側取付部21aを通すロッド孔を有する略円柱形状の部材である。カラー部材51は、他方側に対向する第1ピストン31の第1油路321および一方側に対向する第2ピストン41の第1油路421を覆わない外径を有する。また、カラー部材51は、第1ピストン31の流路形成部31aの一方側の端部と、第2ピストン41の流路形成部41aの他方側の端部との間隔を一定に保つ。そして、後述するとおり、カラー部材51は、チェックバルブ52が軸方向において移動可能になる空間50Sを形成する。
【0028】
チェックバルブ52は、図2および図3に示すように、中央に開口52Hを有する略円盤状の部材である。開口52Hは、ロッド21の一方側取付部21aの外径よりも大きい内径を有する。従って、チェックバルブ52は、開口52Hによって、カラー部材51との間において軸方向におけるオイルの流れを可能にする。
また、チェックバルブ52(覆い部材)は、第1ピストン31の第2油路322および第2ピストン41の第2油路422を覆うことが可能な半径方向における幅を有する。具体的には、チェックバルブ52は、第1ピストン31の流路形成部31aの一方側に対向する側の面である第1面521と、第2ピストン41の流路形成部41aの他方側に対向する側の面である第2面522とを有する。
【0029】
第1面521は、流路形成部31aに形成される第2油路322を直接的に覆うことが可能に形成される。また、第1面521は、図3に示すように、第1バネ部材53の後述の脚部532を間に挟んだ状態にて、第1バネ部材53の脚部532を収容することで脚部532を第1ピストン31に対して退避させる第1退避部521Eを有する。第1退避部521Eは、チェックバルブ52自体が第1ピストン部30側に移動した際に第1バネ部材53を収容可能に軸方向に窪む凹部である。第1退避部521Eの軸方向の深さは、第1バネ部材53の脚部532の厚みよりも大きく形成される。
【0030】
第2面522は、流路形成部41aに形成される第2油路422を直接的に覆うことが可能に形成される。また、第2面522は、図3に示すように、第2バネ部材54の後述の脚部542を間に挟んだ状態にて、第2バネ部材54の脚部542を収容することで脚部542を第2ピストン41に対して退避させる第2退避部522Eを有する。第2退避部522Eは、チェックバルブ52自体が第2ピストン部40側に移動した際に第2バネ部材54を収容可能に軸方向に窪む凹部である。第2退避部522Eの軸方向の深さは、第2バネ部材54の脚部542の厚みよりも大きく形成される。
【0031】
なお、チェックバルブ52の第1退避部521Eおよび第2退避部522Eは、必須の構成ではない。また、第1退避部521Eおよび第2退避部522Eに代えて、第1バネ部材53の脚部532を収容する構造、第2バネ部材54の脚部542を収容する構造を例えば第1ピストン31や第2ピストン41にそれぞれ形成してもよい。
【0032】
第1バネ部材53(弾性部材)は、図3に示すように、略円盤状に形成される取付部531と、取付部531の半径方向における端部から外側に向けて放射状に伸びる脚部532とを有する。なお、本実施形態では、脚部532は、複数(例えば4つ)設けられる。第1バネ部材53は、弾性を有するように金属などの材料を用いて形成される。そして、図2に示すように、第1バネ部材53は、取付部531がカラー部材51の他方側の端部と第1ピストン31の一方側の端部との間に挟まれるようにして取り付けられる。そして、第1バネ部材53は、脚部532によってチェックバルブ52の他方側にて軸方向における一方側に押し付ける力をチェックバルブ52に付与する。そして、第1バネ部材53は、弾性変形することによってチェックバルブ52の移動に抗する力をチェックバルブ52に対して付与する。
【0033】
第2バネ部材54(弾性部材)は、図3に示すように、略円盤状に形成される取付部541と、取付部541の半径方向における端部から外側に向けて放射状に伸びる脚部542とを有する。なお、本実施形態では、脚部542は、複数(例えば4つ)設けられる。第2バネ部材54は、弾性を有するように金属などの材料を用いて形成される。そして、図2に示すように、第2バネ部材54は、取付部541がカラー部材51の一方側の端部と第2ピストン41の他方側の端部との間に挟まれるようにして取り付けられる。そして、第2バネ部材54は、脚部542によってチェックバルブ52の一方側にて軸方向における他方側に押し付ける力をチェックバルブ52に付与する。そして、第2バネ部材54は、弾性変形することによってチェックバルブ52の移動に抗する力をチェックバルブ52に対して付与する。
【0034】
本実施形態においては、図3(a)および図3(c)に示すように、第1バネ部材53の半径方向の大きさは、第2バネ部材54の半径方向の大きさよりも大きい。また、第1バネ部材53の剛性は、第2バネ部材54の剛性よりも大きくしている。そして、本実施形態では、伸側行程と圧側行程とにおいて、フリーピストン部50が移動するロッド21の速度が同一になるようにしている。
ただし、上述のとおりフリーピストン部50が移動するロッド21の速度を同一にすることに限定するものではない。例えば、フリーピストン部50が移動するロッド21の速度が異なるように、第1バネ部材53および第2バネ部材54の半径方向の大きさや剛性を調整してもよい。
【0035】
なお、第1バネ部材53および第2バネ部材54は、上述の形状に限定されるものではない。第1バネ部材53および第2バネ部材54の他の形状として、例えば脚部(532,542)等を有しなかったり、第1バネ部材53および第2バネ部材54自体に流路(貫通孔)を形成したりするようにしてもよい。
【0036】
以上のように構成されるフリーピストン部50(移動開閉部)は、第1ピストン部30と第2ピストン部40との間にてロッド21の軸方向に移動可能に設けられ、ロッド21に対する移動位置に応じて第1ピストン部30の第2油路322(第1流路)または第2ピストン部40の第2油路422(第2流路)を開閉する。
そして、本実施形態の油圧緩衝装置1では、ロッド21のストローク量(例えば、小振幅A1,大振幅A2)に応じて、フリーピストン部50のチェックバルブ52がピストン部100(第1ピストン部30,第2ピストン部40)における第1油室Y1と第2油室Y2とのオイルの流路を切り替えて、減衰力の大きさを変更するようにしている。
【0037】
小振幅A1とは、圧縮行程時において、第2ピストン部40の第2油路422および第1ピストン部30の第2油路322をオイルが流れるストロークである。また、小振幅A1とは、伸張工程時において、第1ピストン部30の第2油路322および第2ピストン部40の第2油路422をオイルが通過するストロークである。
大振幅A2とは、圧縮行程時において、第2ピストン部40の第2油路422および第1ピストン部30の第1油路321をオイルが流れるストロークである。また、大振幅A2とは、伸張工程時において、第1ピストン部30の第2油路322および第2ピストン部40の第1油路421を通過するストロークである。
より具体的には、後述するように、例えばフリーピストン部50のチェックバルブ52が一方側または他方側に突き当たるまで動く場合の速度の範囲は小振幅A1となり、チェックバルブ52が一方側または他方側に突き当たった後のストロークの範囲が大振幅A2となる。
【0038】
[油圧緩衝装置1の動作]
次に、上述のように構成された油圧緩衝装置1の動作について説明する。
図4は、圧縮行程時のピストン部100におけるオイルの流れを示す図である。なお、図4(a)はロッド21が小振幅A1で移動する場合のオイルの流れを示し、図4(b)はロッド21が大振幅A2で移動する場合のオイルの流れを示す。
【0039】
(圧縮行程時(小振幅))
油圧緩衝装置1の圧縮行程時における動作について説明する。さらに、ロッド21が小振幅A1で移動する場合について説明する。
ロッド21が、図4(a)の白抜き矢印のように軸方向の一方側へ移動すると、第1油室Y1の圧力が高まり、一方で第2油室Y2の圧力が低くなる。そして、第1油室Y1のオイルは、第2ピストン41の第2油路422、チェックバルブ52の開口52Hおよび第1ピストン31の第2油路322を通って第2油室Y2に流れ出る。
なお、この第1油室Y1から第2油室Y2へのオイルの流れは、開放されている第2油路322および第2油路422で絞られるだけである。そのため、ピストン部100において発生する減衰力は比較的小さくなる。
【0040】
ボトムバルブ部60においては、図1に示すように、ロッド21が一方側に移動することで第1油室Y1の圧力が高まる。そして、ボトムバルブ部60の油路閉塞する圧側バルブ621が開く。さらに、第1油室Y1内のオイルは、リザーバ室Rに流れ出る。この第1油室Y1からリザーバ室Rへのオイルの流れは、圧側バルブ621およびバルブボディ61の油路で絞られる。その結果として、ボトムバルブ部60において減衰力が発生する。
【0041】
以上のように、本実施形態の油圧緩衝装置1においては、圧縮行程時においてロッド21が小振幅A1で移動する場合、主にボトムバルブ部60にて減衰力が発生する。
【0042】
(圧縮行程時(大振幅))
次に、ロッド21が大振幅A2で移動する場合について説明する。
ロッド21が、図4(b)の白抜き矢印のように軸方向の一方側に比較的大きく移動すると、一気に、第1油室Y1の圧力が高まり、一方で第2油室Y2の圧力が低くなる。そして、先ずチェックバルブ52が第1バネ部材53のバネ力に抗して他方側に向けて移動し、第1ピストン31の流路形成部31aの一方側の端部に接触する。これによって、第1ピストン31の第2油路322の一方側がチェックバルブ52により閉じられる。
このとき、第1バネ部材53の脚部532は、チェックバルブ52の第1退避部521Eに収容された状態となる。従って、チェックバルブ52の第1面521は、第1ピストン31の流路形成部31aの一方側の端部に対してほぼ隙間無く接触することができる。
【0043】
そして、オイルは、第2ピストン41の第2油路422を通って第1油室Y1から空間50Sに流れ込む。さらに、オイルは、第1ピストン31の圧側減衰バルブ33を開きながら第1油路321を流れる。そして、オイルは、第2油室Y2に流れ出る。この第1油室Y1から第2油室Y2へのオイルの流れは、圧側減衰バルブ33および第1油路321で絞られて比較的大きな減衰力となる。
【0044】
以上のように、圧縮行程時においてロッド21が大振幅A2で移動する場合、ピストン部100およびボトムバルブ部60にて減衰力が発生する。そのため、ロッド21が大振幅A2で移動する場合には、小振幅A1で移動する際よりも大きな減衰力が発生することになる。
【0045】
図5は、伸張行程時のピストン部100におけるオイルの流れを示す図である。なお、図5(a)はロッド21が小振幅A1で移動する場合のオイルの流れを示し、図5(b)はロッド21が大振幅A2で移動する場合のオイルの流れを示す。
【0046】
(伸張行程時(小振幅))
油圧緩衝装置1の伸張行程時における動作について説明する。さらに、ロッド21が小振幅A1で移動する場合について説明する。
ロッド21が、図5(a)の白抜き矢印のように軸方向の他方側へ移動すると、第2油室Y2の圧力が高まり、一方で第1油室Y1の圧力が低くなる。そして、第2油室Y2のオイルは、第1ピストン31の第2油路322、チェックバルブ52の開口52Hおよび第2ピストン41の第2油路422を通って第1油室Y1に流れ出る。
なお、この第2油室Y2から第1油室Y1へのオイルの流れは、開放されている第2油路322および第2油路422で絞られるだけである。そのため、ピストン部100において発生する減衰力は比較的小さくなる。
【0047】
ボトムバルブ部60においては、図1に示すように、ロッド21が他方側に移動することで第1油室Y1の圧力が低くなる。そして、ボトムバルブ部60の油路を閉塞する伸側バルブ622が開く。さらに、リザーバ室Rのオイルは、第1油室Y1に流れ出る。このリザーバ室Rから第1油室Y1へのオイルの流れは、伸側バルブ622およびバルブボディ61の油路で絞られる。その結果として、ボトムバルブ部60において減衰力が発生する。
【0048】
以上のように、本実施形態の油圧緩衝装置1においては、伸張行程時においてロッド21が小振幅A1で移動する場合、主にボトムバルブ部60にて減衰力が発生する。
【0049】
(伸張行程時(大振幅))
次に、ロッド21が大振幅A2で移動する場合について説明する。
ロッド21が、図5(b)の白抜き矢印のように軸方向の他方側に比較的大きく移動すると、一気に、第2油室Y2の圧力が高まり、一方で第1油室Y1の圧力が低くなる。そして、先ずチェックバルブ52が第2バネ部材54のバネ力に抗して一方側に向けて移動し、第2ピストン41の流路形成部41aの他方側に接触する。これによって、第2ピストン41の第2油路422の他方側がチェックバルブ52により閉じられる。
このとき、第2バネ部材54の脚部542は、チェックバルブ52の第2退避部522Eに収容された状態となる。従って、チェックバルブ52の第2面522は、第2ピストン41の流路形成部41aの他方側の端部に対してほぼ隙間無く接触することができる。
【0050】
そして、オイルは、第1ピストン31の第2油路322を通り、第2油室Y2から空間50Sに流れ込む。さらに、オイルは、第2ピストン41の伸側減衰バルブ43を開きながら第1油路421を流れる。そして、オイルは、第1油室Y1に流れ出る。この第2油室Y2から第1油室Y1へのオイルの流れは、伸側減衰バルブ43および第1油路421で絞られて比較的大きな減衰力となる。
【0051】
以上のように、伸張行程時においてロッド21が大振幅A2で移動する場合、ピストン部100およびボトムバルブ部60にて減衰力が発生する。そのため、ロッド21が大振幅A2で移動する場合には、小振幅A1で移動する際よりも大きな減衰力が発生することになる。
【0052】
そして、以上のように構成される油圧緩衝装置1では、また、第1ピストン31と第2ピストン41とが軸方向において重なる部分が形成されることによって、本構成を採用しない場合と比較して、軸方向長さを短縮することが可能となる。
さらに、フリーピストン部50において、単一のチェックバルブ52は、オイルの流れに応じてロッド21の軸方向に移動する機能と、第1ピストン31の第2油路322および第2ピストン41の第2油路422に直接的に接して開閉する弁の機能を兼ねている。このように、チェックバルブ52が複数の機能を兼ねることによって、軸方向に設けられる部品点数が削減され、本構成を採用しない場合と比較して、軸方向長さを短縮することが可能となる。その結果、油圧緩衝装置1の軸方向長さを短縮することができる。
即ち、実施形態1の油圧緩衝装置1では、ロッド21のシリンダ11の軸方向における移動範囲がより長くなることによって、ロッド21の可動領域を広げることが可能になる。
【0053】
また、実施形態1の油圧緩衝装置1では、ピストン部100の組立性が向上される。即ち、ピストン部100を組み立てる際には、第1ピストン31における開口部31bの内側に、第2ピストン41の少なくとも一部(本実施形態では流路形成部41a)を挿入するだけである。これによって、例えば第1ピストン部30と第2ピストン部40との位置決めが容易になり、組立性が向上する。
【0054】
なお、上述した本実施形態におけるピストン部100を軸方向において反転させ、例えば一方側に第1ピストン部30が配置され、他方側に第2ピストン部40が配置されるようにしてもよい。
また、本実施形態では、第1ピストン31と第2ピストン41との2つのピストンを組み合わせる例を用いて説明したが、例えば3つ以上のピストンを組み合わせてもよい。この場合においても、一のピストン部に形成された開口部に他のピストン部を挿入するように構成することによって、複数のピストンの軸方向長さを短縮することができる。また、ピストン同士の位置決めが容易になり組立性を向上させることができる。
【0055】
さらに、実施形態1では、例えばシール部材44を用いて第1ピストン31と第2ピストン41との間をシールしているが、これに限定するものではない。例えば、第1ピストン31の開口部31bの内径と、第2ピストン41の流路形成部41aの外径とを略等しく設定する。そして、第1ピストン31の開口部31bに、第2ピストン41の流路形成部41aを圧入することで隙間が生じないようにすることができる。さらにまた、第1ピストン31の開口部31bの内周に雌ネジを形成し、第2ピストン41の流路形成部41aの外周に雄ネジ部を形成することによって、両者を結合しても構わない。
【0056】
また、本実施形態においては、第2ピストン41の開口部41bは必須ではない。即ち、第2ピストン41は、開口部41bを有さずに、流路形成部41aのみを有していても構わない。
【0057】
<実施形態2>
図6は、実施形態2のピストン部200を説明するための図である。
なお、実施形態2において、実施形態1と同様な部材等については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ピストン部200は、図6に示すように、第1ピストン部30と、第2ピストン部40と、フリーピストン部250とを備える。
第1ピストン部30は、第1ピストン31と、第1ピストン31の他方側に設けられる圧側減衰バルブ33と、第1ピストン31の半径方向における外周に設けられるピストンリング34とを有する。
また、第2ピストン部40は、第2ピストン41と、第2ピストン41の一方側に設けられる伸側減衰バルブ43と、第2ピストン41の半径方向における外周に設けられるシール部材44とを有する。
フリーピストン部250は、ロッド21の一方側取付部21aの半径方向の外側に配置されるチェックバルブ252と、チェックバルブ252の他方側に配置される第1バネ部材53と、チェックバルブ252の一方側に配置される第2バネ部材54とを有する。
【0058】
そして、実施形態2のピストン部200においては、図6に示すように、第1ピストン31の開口部31bが一方側を向き、第2ピストン41の開口部41bが他方側を向くように配置される。即ち、開口部31bと開口部41bとが対向して設けられる。そして、第1ピストン31の開口部31bの内側に、第2ピストン41が挿入される。実施形態2においては、第2ピストン41の開口部41bが、第1ピストン31の流路形成部31aの一方側に突き当たる。そのため、第1ピストン31と第2ピストン41との間には、空間250Sが形成される。この空間250Sは、チェックバルブ252を軸方向において移動可能にする。
また、第2ピストン41の開口部41bの内径は、チェックバルブ252の外径と略等しく形成される。そして、第2ピストン41は、チェックバルブ252が軸方向において移動可能にチェックバルブ252の移動を案内する。
【0059】
そして、フリーピストン部250は、空間250S内に設けられる。即ち、フリーピストン部250は、第2ピストン41の開口部41b内に設けられる。そして、チェックバルブ252は、内径及び外径が実施形態1のチェックバルブ52と異なるものの、基本構成はチェックバルブ52と同じである。
なお、実施形態2のフリーピストン部250は、実施形態1のフリーピストン部50に設けられるカラー部材51を備えていない。
【0060】
そして、実施形態2においても、実施形態1と同様に、ロッド21のストローク量に応じて、フリーピストン部250におけるチェックバルブ252がロッド21に対して移動することで、チェックバルブ52の移動位置に応じて発生させる減衰力を変更することができる。
また、実施形態2のピストン部200は、第1ピストン31と第2ピストン41とが軸方向において重なる部分が形成されることによって、本構成を採用しない場合と比較して、軸方向長さを短縮することが可能となる。その結果、油圧緩衝装置1の軸方向長さを短縮することができる。
【0061】
さらに、以上のように構成される実施形態2が適用される油圧緩衝装置1の製造の際、特にピストン部200の組立性が向上される。即ち、ピストン部200を組み立てる際には、第1ピストン31の開口部31bの内側に、第2ピストン41の少なくとも一部(本実施形態では開口部41b)を挿入するだけである。これによって、例えば第1ピストン部30と第2ピストン部40との位置決めが容易になり、組立性が向上する。
【0062】
また、実施形態2のピストン部200では、例えば実施形態1のフリーピストン部50におけるカラー部材51を必須の構成としない。従って、実施形態2が適用される油圧緩衝装置1においては、部品点数の削減を行うことが可能になる。
【0063】
<実施形態3>
図7は、実施形態3のピストン部300を説明するための図である。
なお、実施形態3において、実施形態1と同様な部材等については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ピストン部300は、図7に示すように、第1ピストン部30と、第1ピストン部30の一方側に設けられる第3ピストン部70と、第1ピストン部30と第3ピストン部70との間に設けられるフリーピストン部350とを備える。
第1ピストン部30は、第1ピストン31と、第1ピストン31の他方側に設けられる圧側減衰バルブ33と、第1ピストン31の半径方向における外周に設けられるピストンリング34とを有する。
第3ピストン部70は、第3ピストン71と、第3ピストン71の一方側に設けられる伸側減衰バルブ73と、第3ピストン71の半径方向における外周に設けられるピストンリング74とを有する。
フリーピストン部350は、半径方向の外側に配置されるチェックバルブ352と、チェックバルブ352の他方側に配置される第1バネ部材53と、チェックバルブ352の一方側に配置される第2バネ部材54とを有する。
【0064】
実施形態3において、第3ピストン部70は、第1ピストン部30と基本構成が同じである。
第3ピストン71の外径は、第1ピストン31の外径と略等しく設定される。また、第3ピストン71は、流路形成部71aと、開口部71bとを備えて構成される。さらに、流路形成部71aは、第1油路721と、第2油路722とを有する。これら、第3ピストン71における流路形成部71a、開口部71b、第1油路721および第2油路722は、第1ピストン31における流路形成部31a、開口部31b、第1油路321および第2油路322とそれぞれサイズや構造などの基本構成が同じである。即ち、実施形態3では、第1ピストン31と第3ピストン71とは、同じ部品を用いている。
なお、第1ピストン31と第3ピストン71とは、サイズや構造などを同じにするものの、材質等が異なるようにしてもよい。
【0065】
そして、実施形態3のピストン部300では、図7に示すように、第3ピストン71および第1ピストン31は、軸方向において並んで配置される。上述のとおり、第3ピストン71および第1ピストン31の外径は略等しい。従って、実施形態3においては、第1ピストン31の開口部31bと第3ピストン71の流路形成部71aの他方側との間に、空間350Sが形成される。この空間350Sは、チェックバルブ352を軸方向において移動可能にする。
【0066】
フリーピストン部350は、空間350S内に設けられる。即ち、実施形態3においては、フリーピストン部350は、第1ピストン31の開口部31b内に設けられる。そして、チェックバルブ352は、内径及び外径が実施形態1のチェックバルブ52と異なるものの、基本構成はチェックバルブ52と同じである。なお、実施形態3のフリーピストン部350は、実施形態1のフリーピストン部50に設けられるカラー部材51を備えていない。
【0067】
そして、実施形態3においても、実施形態1と同様に、ロッド21のストローク量に応じて、フリーピストン部350におけるチェックバルブ352がロッド21に対して移動することで、チェックバルブ352の移動位置に応じて発生させる減衰力を変更することができる。
【0068】
また、フリーピストン部350において、単一のチェックバルブ352は、オイルの流れに応じてロッド21の軸方向に移動する機能と、第1ピストン31の第2油路322および第3ピストン71の第2油路722に直接的に接して開閉する弁の機能を兼ねている。このように、チェックバルブ352が複数の機能を兼ねることによって、軸方向に設けられる部品点数が削減され、本構成を採用しない場合と比較して、軸方向長さを短縮することが可能となる。その結果、油圧緩衝装置1の軸方向長さを短縮することができる。
【0069】
さらに、実施形態3のピストン部300では、例えば実施形態1のフリーピストン部50におけるカラー部材51を必須の構成としない。従って、実施形態3が適用される油圧緩衝装置1においては、部品点数の削減を行うことが可能になる。
【0070】
なお、実施形態1〜3において、軸方向における他方側に設けられるピストン(第1ピストン部30)と、一方側に設けられるピストン(第2ピストン部40,第3ピストン部70)とを、軸方向において逆に配置しても構わない。
【0071】
また、実施形態1〜3において、フリーピストン部50(250,350)において、チェックバルブ52(252,352)にスリットやオリフィスなどのオイルが流れる微少な流路を形成してもよい。この場合、チェックバルブ52(252,352)の軸方向における一方側または他方側への移動量を調整することができる。また、チェックバルブ52(252,352)は、本実施形態の形状に限定されず、例えば複数の部材によって構成されていても構わず、各々の形状については特に限定されない。
さらに、本実施形態の第1バネ部材53や第2バネ部材54に代えて、例えば磁石による反発力や吸引力を利用する所謂磁気バネを適用しても構わない。
【0072】
また、例えば実施形態1において、例えば第1ピストン部30に圧側減衰バルブ33が設けられ、第2ピストン部40には伸側減衰バルブ43がそれぞれ設けられるが、これらのバルブを必ずしも設ける必要はない。即ち、第1ピストン部30および第2ピストン部40においてバルブが設けられていなくても、フリーピストン部50によって発生させる減衰力の大きさを変更することができる。即ち、フリーピストン部50のチェックバルブ52が第1ピストン部30および第2ピストン部40の各油路を開放している状態では、オイルが流れる断面積が大きく、発生する減衰力も小さくなる。一方で、チェックバルブ52が第1ピストン部30および第2ピストン部40のうちいずれかの油路を閉じている状態では、オイルが流れる断面積が小さくなり、発生する減衰力が大きくなる。このように、バルブを設けなくても、発生させる減衰力を変更することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…油圧緩衝装置、10…シリンダ部、11…シリンダ、20…ロッド部、30…第1ピストン部、40…第2ピストン部、50(250,350)…フリーピストン部、52(252,352)…チェックバルブ、70…第3ピストン部、100(200,300)…ピストン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8