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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-152152(P2015-152152A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】機器の支持構造および支持方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20150728BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   F16F15/02 Z
   G21D1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-28971(P2014-28971)
(22)【出願日】2014年2月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】上園 孝二
(72)【発明者】
【氏名】竹下 和則
(72)【発明者】
【氏名】濱田 圭
(72)【発明者】
【氏名】松林 利樹
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋司
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AD11
3J048CB05
3J048DA05
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】プラント設備における安全性の向上を可能とすること。
【解決手段】プラント設備に接続される機器52が支持される基板101と、床G側と基板101との間に設けられる免震装置110と、床G側に固定され基板101の周囲に配置された固定台2、および基板101側または固定台2側の一方に取り付けられて他方に対して進退移動可能に設けられ進出時に免震装置110による基板101の移動を規制する一方で、退避時に免震装置110による基板101の移動を許容する当接部3を有した固定装置1と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント設備に接続される機器が支持される基板と、
床側と前記基板との間に設けられる免震装置と、
前記床側に固定され前記基板の周囲に配置された固定台、および前記基板側または前記固定台側の一方に取り付けられて他方に対して進退移動可能に設けられ進出時に前記免震装置による前記基板の移動を規制する一方で、退避時に前記免震装置による前記基板の移動を許容する当接部を有した固定装置と、
を備えることを特徴とする機器の支持構造。
【請求項2】
前記当接部は、油圧によりロッドを進退移動させる油圧ジャッキからなり、進出した前記ロッドの先端部を当接させることを特徴とする請求項1に記載の機器の支持構造。
【請求項3】
前記当接部は、油圧によりロッドを進退移動させる油圧ジャッキからなり、進出した前記ロッドの先端部を当接させ、かつ前記ロッドの進出位置を保持する保持機構を有することを特徴とする請求項1に記載の機器の支持構造。
【請求項4】
前記保持機構は、前記ロッドに螺合して前記ロッドの長さ方向に移動可能に設けられたナットを有し、当該ナットが油圧ジャッキのケーシングに当接することで前記ロッドの進出位置を保持することを特徴とする請求項3に記載の機器の支持構造。
【請求項5】
前記機器は、プラント設備に対して接続配管を通して接続可能に構成された配管取合機器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の機器の支持構造。
【請求項6】
プラント設備に接続される機器が支持される基板と、
床側と前記基板との間に設けられる免震装置と、
前記床側に固定され前記基板の周囲に配置された固定台、および前記基板側または前記固定台側の一方に取り付けられて他方に対して進退移動可能に設けられ進出時に前記免震装置による前記基板の移動を規制する一方、退避時に前記免震装置による前記基板の移動を許容する当接部を有した固定装置と、
を備える支持構造を用いた機器の支持方法であって、
前記当接部を進出させることで前記機器が前記プラント設備に接続される基準位置となるように前記基板を移動させる工程と、
前記基準位置を保持するように前記当接部の進出位置を保持する工程と、
を含むことを特徴とする機器の支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント設備として、例えば、加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントは、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、原子炉の炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するものである。そして、蒸気発生器は、原子炉からの高温高圧の一次冷却水の熱を二次冷却水に伝え、二次冷却水で水蒸気を発生させるものである。
【0003】
このような原子力発電プラントにて、津波や地震などの発生により、海水による冷却機能が喪失すると共に全ての交流電源が喪失すると、補助給水ポンプにより蒸気発生器の二次系に給水を行って一次系、つまり、原子炉を冷却すると共に、主蒸気逃がし弁を開放して二次系の圧力を低下させて冷却する。そして、この間に交流電源の復旧を行う。
【0004】
ところで、原子力発電プラントにて、原子炉格納容器を免震構造とすることで、地震に対する揺れを抑制して安全性を向上させている。原子炉格納容器の免震構造としては、例えば、特許文献1,2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−047762号公報
【特許文献2】特許第2978732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の原子力発電プラントでは、補助給水ポンプにより給水した冷却水により安全性の向上を図っているが、さらなる安全性の向上が切望されている。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、プラント設備における安全性の向上を可能とすることのできる機器の支持構造および支持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の機器の支持構造は、プラント設備に接続される機器が支持される基板と、床側と前記基板との間に設けられる免震装置と、前記床側に固定され前記基板の周囲に配置された固定台、および前記基板側または前記固定台側の一方に取り付けられて他方に対して進退移動可能に設けられ進出時に前記免震装置による前記基板の移動を規制する一方で、退避時に前記免震装置による前記基板の移動を許容する当接部を有した固定装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この機器の支持構造によれば、機器の不使用時は、基板を免震装置により支持することで、地震が発生しても免震装置によりその振動を減衰することができる。一方、機器の使用時は、基板を固定装置により固定することで、固定装置により免震装置による基板の移動が規制されることから、機器を適正に作動することができる。特に、固定装置において、予め設置された当接部を進退移動させることで、基板の移動を規制できることから、新たに固定装置を設置することと比較して設置作業を容易に行うことができる。この結果、機器の設置を迅速に行うことができ、機器を必要とするプラント設備の安全性を向上することができる。
【0010】
また、本発明の機器の支持構造では、前記当接部は、油圧によりロッドを進退移動させる油圧ジャッキからなり、進出した前記ロッドの先端部を当接させることを特徴とする。
【0011】
この機器の支持構造によれば、当接部を油圧ジャッキとして進出したロッドの先端部を当接させる構成とすることで、基板の移動の規制が迅速に行えるため、機器の設置をより迅速に行うことができ、機器を必要とするプラント設備の安全性をより向上することができる。
【0012】
また、本発明の機器の支持構造では、前記当接部は、油圧によりロッドを進退移動させる油圧ジャッキからなり、進出した前記ロッドの先端部を当接させ、かつ前記ロッドの進出位置を保持する保持機構を有することを特徴とする。
【0013】
この機器の支持構造によれば、当接部を油圧ジャッキとして進出したロッドの先端部を当接させる構成とすることで、基板の移動の規制が迅速に行えるため、機器の設置をより迅速に行うことができ、機器を必要とするプラント設備の安全性をより向上することができる。しかも、保持機構によりロッドの進出位置を保持することで、油圧ジャッキへの作動油の加圧を止めても、基板の移動の規制を維持させることができる。
【0014】
また、本発明の機器の支持構造では、前記保持機構は、前記ロッドに螺合して前記ロッドの長さ方向に移動可能に設けられたナットを有し、当該ナットが油圧ジャッキのケーシングに当接することで前記ロッドの進出位置を保持することを特徴とする。
【0015】
この機器の支持構造によれば、油圧ジャッキへの作動油の加圧を止めても、基板の移動の規制を維持させる機構を得ることができる。しかも、ロッドの長さ方向にナットを移動させることで、ロッドの進出長さが変化しても当該変化に応じてロッドの進出位置を保持することができる。
【0016】
また、本発明の機器の支持構造では、前記機器は、プラント設備に対して接続配管を通して接続可能に構成された配管取合機器であることを特徴とする。
【0017】
配管取合機器の配置は接続配管との取り合いが要求される。従って、配管取合機器の使用時に機器が取り付けられている基板の移動を固定装置により固定することで、配管取合機器の正確な位置を確保するうえで好ましく、この固定作業を容易に行うことで、配管取合機器を迅速にプラント設備に適用することができるため、プラント設備において安全性を向上することができる。
【0018】
上述の目的を達成するために、本発明の機器の支持方法は、プラント設備に接続される機器が支持される基板と、床側と前記基板との間に設けられる免震装置と、前記床側に固定され前記基板の周囲に配置された固定台、および前記基板側または前記固定台側の一方に取り付けられて他方に対して進退移動可能に設けられ進出時に前記免震装置による前記基板の移動を規制する一方、退避時に前記免震装置による前記基板の移動を許容する当接部を有した固定装置と、を備える支持構造を用いた機器の支持方法であって、前記当接部を進出させることで前記機器が前記プラント設備に接続される基準位置となるように前記基板を移動させる工程と、前記基準位置を保持するように前記当接部の進出位置を保持する工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この機器の支持方法によれば、機器を基準位置に容易に戻すことができ、機器を迅速にプラント設備に適用することができるため、プラント設備において安全性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プラント設備における安全性の向上を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、プラント設備の一例の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る機器の支持構造および機器の一例の側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る機器の支持構造および機器の一例の平面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る機器の支持構造による機器の固定状態を示す側面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る機器の支持構造による機器の固定状態を示す平面図である。
図6図6は、固定装置の構成図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る機器の支持方法を示す平面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る機器の支持方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
図1は、プラント設備の一例の概略構成図である。図1では、プラント設備の一例として原子力発電プラント10を示している。なお、プラント設備は、この原子力発電プラントに限定されるものではない。図1に示す原子力発電プラント10において、原子炉は、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0024】
加圧水型原子炉を有する原子力発電プラント10において、図1に示すように、原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉12および蒸気発生器13が格納されている。この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは、配管14,15を介して連結されており、配管14に加圧器16が設けられ、配管15に一次冷却水ポンプ17が設けられている。この場合、減速材および一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)により一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高温高圧の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0025】
蒸気発生器13は、配管18を介して蒸気タービン19と連結されており、この配管18に主蒸気隔離弁20が設けられている。蒸気タービン19は、高圧タービン21と低圧タービン22を有すると共に、発電機(発電装置)23が接続されている。また、高圧タービン21と低圧タービン22との間には、湿分分離加熱器24が設けられており、配管18から分岐した冷却水分岐配管25が湿分分離加熱器24に連結される一方、高圧タービン21と湿分分離加熱器24は低温再熱管26により連結され、湿分分離加熱器24と低圧タービン22は高温再熱管27により連結されている。
【0026】
さらに、蒸気タービン19の低圧タービン22は、復水器28を有しており、この復水器28は、配管18からバイパス弁29を有するタービンバイパス配管30が接続されると共に、冷却水(例えば、海水)を給排する取水管31および排水管32が連結されている。この取水管31は、循環水ポンプ33を有し、排水管32と共に他端部が熱溜まりとして例えば海に配置されている。
【0027】
そして、この復水器28は、配管34が接続されており、復水ポンプ35、グランドコンデンサ36、復水脱塩装置37、復水ブースタポンプ38、低圧給水加熱器39が接続されている。また、配管34は、脱気器40が連結されると共に、主給水ポンプ41、高圧給水加熱器42、主給水制御弁43が設けられている。
【0028】
また、配管18は、主蒸気逃がし弁44を有する主蒸気逃がし配管45の一端部と、主蒸気安全弁46を有する主蒸気安全配管47の一端部が接続されており、各配管45,47の他端部は大気に開放している。一方、配管34は、主給水制御弁43と蒸気発生器13との間に補助給水配管48の一端部が接続されており、この補助給水配管48は、第1補助給水ポンプ49が設けられると共に、他端部に復水タンク50が接続されている。この第1補助給水ポンプ49は、蒸気によりタービンが回転することで駆動するものであり、配管18における主蒸気安全配管47と主蒸気隔離弁20との間から分岐した主蒸気分岐配管51が第1補助給水ポンプ49まで延設されており、この主蒸気分岐配管51に開閉弁51aが設けられている。
【0029】
従って、蒸気発生器13にて、高温高圧の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、配管18を通して蒸気タービン19(高圧タービン21から低圧タービン22)に送られ、この蒸気により蒸気タービン19を駆動して発電機23により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン21を駆動した後、湿分分離加熱器24で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン22を駆動する。そして、蒸気タービン19を駆動した蒸気は、復水器28で海水を用いて冷却されて復水となり、復水ポンプ35、グランドコンデンサ36、復水脱塩装置37、復水ブースタポンプ38、低圧給水加熱器39、脱気器40、主給水ポンプ41、高圧給水加熱器42などを通して蒸気発生器13に戻される。
【0030】
そして、上述した各種ポンプ17,33,35,38,41などは、常用電源装置(プラント内交流電源、外部電源、いずれも図示略)からの給電により駆動するものであることから、この電源装置の機能が喪失したときには、これらを駆動して冷却水を循環することができず、加圧水型原子炉12や蒸気発生器13を冷却することが困難となる。
【0031】
そのため、電源装置が喪失したとき、主蒸気逃がし弁44の開放などで、蒸気発生器13の蒸気(二次冷却水)を配管18から主蒸気逃がし配管45や主蒸気安全配管47を通して大気に開放し、蒸気発生器13内の圧力を低下させて冷却している。また、配管18内の蒸気を主蒸気分岐配管51から第1補助給水ポンプ49に供給することで、この第1補助給水ポンプ49を駆動し、復水タンク50の復水を補助給水配管48から配管34を通して蒸気発生器13に供給し、この蒸気発生器13を冷却している。そして、この間に電源装置の復旧を行っている。
【0032】
このように原子力発電プラント10では、電源装置が喪失したときの安全システムが構築されている。その一方、さらなる安全性の向上が求められている。そこで、図1に示す原子力発電プラント10にあっては、第1補助給水ポンプ49と並列に、本実施形態における機器としての第2補助給水ポンプ52が設けられている。第2補助給水ポンプ52は、第1補助給水ポンプ49を迂回するように各端部が補助給水配管48に接続された分岐給水配管(接続配管)53が設けられており、この分岐給水配管53に設けられている。第2補助給水ポンプ52は、第1補助給水ポンプ49と共にいずれかが作動できないとき、非常用として使用するために配置されている。なお、機器は、この第2補助給水ポンプ52に限定されるものではなく、ポンプの他に非常用発電機などの機械機器や、補助電源または制御盤などの電気機器であってもよい。
【0033】
図2は、本実施形態に係る機器の支持構造および機器の一例の側面図であり、図3は、本実施形態に係る機器の支持構造および機器の一例の平面図であり、図4は、本実施形態に係る機器の支持構造による機器の固定状態を示す側面図であり、図5は、本実施形態に係る機器の支持構造による機器の固定状態を示す平面図である。
【0034】
第2補助給水ポンプ52は、配管取合機器として適用されている。配管取合機器とは、配管を介してプラント設備に接続されるものである。
【0035】
第2補助給水ポンプ52は、図2および図3に示すように、基板101に設けられている。基板101は、矩形形状をなす所定厚さの平板である。第2補助給水ポンプ52は、給水ポンプ54および電動機55で構成され、給水ポンプ54の駆動軸54aと電動機55の出力軸55aと連結軸56により一体回転自在に連結されている。そして、基板101は、その上面部に枠状をなす上架台102が固定されている。この上架台102上にブラケット103を介して給水ポンプ54が支持されると共に、ブラケット104を介して電動機55が支持されている。給水ポンプ54は、吸込部となる接続フランジ57が設けられると共に、吐出部となる接続フランジ58が設けられている。
【0036】
この第2補助給水ポンプ52は、図4および図5に示すように、使用時は、接続フランジ57および接続フランジ58に分岐給水配管53がそれぞれ連結される。即ち、分岐給水配管53は、給水側の第1配管61と排水側の第2配管62から構成され、第1配管61の接続フランジ61aと給水ポンプ54の接続フランジ57がボルト63により接続されると共に、第2配管62の接続フランジ62aと給水ポンプ54の接続フランジ58がボルト64により接続される。一方、第2補助給水ポンプ52は、図2および図3に示すように、不使用時は、分岐給水配管53が取外される。即ち、図2に示すように、第1配管61の接続フランジ61aと給水ポンプ54の接続フランジ57が取外されると共に、第2配管62の接続フランジ62aと給水ポンプ54の接続フランジ58が取外される。
【0037】
第2補助給水ポンプ52は、免震装置110を有している。免震装置110は、床G側に固定された支持板106に対して取り付けられた固定板111と、第2補助給水ポンプ52を支持する基板101と、の間に設けられ、床G側から第2補助給水ポンプ52に伝わる水平方向の振動を減衰する。免震装置110の構造は一般に知られているもので様々なものが適用できる。そして、第2補助給水ポンプ52は、図2および図3に示す不使用時に、免震装置110により床Gに対して分岐給水配管53とは独立して移動自在に支持される。このように第2補助給水ポンプ52を支持した基板101は、免震装置110により地震により発生する水平方向の振動を減衰することができる。なお、床Gは、鉄筋コンクリート構造物のコンクリートの面をなす。
【0038】
一方、第2補助給水ポンプ52を使用するときには、図4および図5に示すように、分岐給水配管53に接続される。このため、分岐給水配管(接続配管)53に対して移動しないように基板101を固定する必要がある。そのため、本実施形態では、床Gに取り付けられた支持板106に対し、基板101を固定可能な固定装置1が取り付けられる。固定装置1は、詳細を後述するが、分岐給水配管(接続配管)53に第2補助給水ポンプ52が接続された基準位置にある基板101に対し、その周囲に複数設けられ、免震装置110による基板101の移動を規制することで基板101の基準位置を保持するものである。
【0039】
このように、本実施形態における機器としての第2補助給水ポンプ52は、その不使用時には、基板101を免震装置110により支持し、第2補助給水ポンプ52の使用時には、基板101を固定装置1により固定するようにしている。即ち、原子力発電プラント10の正常運転時、第2補助給水ポンプ52を支持した基板101は、地震が発生しても免震装置110によりその振動を減衰することができる。そして、原子力発電プラント10の非常運転時、第2補助給水ポンプ52を支持する基板101は、固定装置1により免震装置110による基板101の移動が規制されることから、第2補助給水ポンプ52を適正に作動することができる。
【0040】
図6は、固定装置の構成図である。上述したように固定装置1は、基板101の周囲に複数設けられ、免震装置110による基板101の移動を規制することで基板101の基準位置を保持する。図2図5に示すように、固定装置1は、固定台2と当接部3とを有する。固定台2は、床Gに固定される支持板106に固定されており、基板101の周囲に複数配置されている。基板101の周囲とは、免震装置110により基板101の最大移動範囲よりも広い位置である。具体的に、支持板106は、平面視で矩形状に形成され、固定台2は、支持板106の各辺に対応して2つずつ配置されている。そして、固定台2は、平坦な当接面2aが基板101側に向けて配置されている。なお、固定台2は、複数ではなく、基板101の周りを囲む壁状に形成され、その平坦な内壁面が当接面2aとして基板101側に向けて配置されていてもよい。
【0041】
当接部3は、基板101に取り付けられ、各固定台2の当接面2aに向けて進退移動可能に複数設けられている。具体的に、当接部3は、ジャッキとして構成されている。ジャッキは油圧ジャッキ、水圧ジャッキ、空圧ジャッキなどがあるが、本実施形態では、最も好ましい油圧ジャッキが適用されている。油圧ジャッキとして構成される当接部3は、図5および図6に示すように、作動油が供給されるケーシング3a、作動油の圧力によりケーシング3aに対して没入または突出するように進退移動するロッド3b、ロッド3bの突出端に設けられて固定台2の当接面2aに当接する当接子3cを有する。
【0042】
また、当接部3は、ロッド3bの突出状態を保持する保持機構をさらに有する。保持機構は、図6に示すように、ロッド3bは、雄ネジが形成されており、このロッド3bに螺合するナット3dを有する。ナット3dは、ロッド3bに螺合してロッド3bの進退移動方向である長さ方向に移動可能に設けられている。ナット3dは、図6(a)および図6(b)に示すようにロッド3bと共に進退移動し、図6(c)に示すようにケーシング3aに当接することで、ロッド3bの進出位置を保持することができる。即ち、ロッド3bを進出させるときに作動油に圧力を付与する必要があるが、ナット3dによりロッド3bの進出位置を保持することで、作動油に圧力を付与しなくてもロッド3bを進出位置のままとすることができる。保持機構は、上記構成に限らない。例えば、図には明示しないが、ロッド3bに溝が形成され、この溝に嵌合する爪部材がケーシング3aに設けられている構成であってもよい。この場合、爪部材がバネなどの付勢部材により溝側に押し付けられ、ロッド3bが進出位置に移動したときに自動的に溝に嵌合するように構成すれば、作業性がさらに向上する。
【0043】
なお、油圧ジャッキとして構成される当接部3は、作動油が供給される配管(図示略)がケーシング3aに接続されている。そして、配管は、作動油に圧力を付与する加圧ポンプ(図示略)に接続される。加圧ポンプは、電動式ポンプであってもよいが、電源を必要としない手動式ポンプであることが好ましい。
【0044】
そして、各当接部3は、図4および図5に示すように、ロッド3bを進出移動させて当接子3cを各固定台2の当接面2aに当接させることで、免震装置110による基板101の移動を規制し、基板101の基準位置を保持することができる。
【0045】
なお、図には明示しないが、当接部3は、固定台2に取り付けられて、基板101に対して進退移動可能に設けられていてもよい。この場合、各当接部3は、ロッド3bを進出移動させて当接子3cを基板101に当接させることで、免震装置110による基板101の移動を規制し、基板101の基準位置を保持することができる。
【0046】
このように、本実施形態の機器の支持構造は、プラント設備(原子力発電プラント10)に接続される機器(第2補助給水ポンプ52)が支持される基板101と、床G側と基板101との間に設けられる免震装置110と、床G側に固定され基板101の周囲に配置された固定台2、および基板101側または固定台2側の一方に取り付けられて他方に対して進退移動可能に設けられ進出時に免震装置110による基板101の移動を規制する一方で、退避時に免震装置110による基板101の移動を許容する当接部3を有した固定装置1と、を備える。
【0047】
この機器の支持構造によれば、機器としての第2補助給水ポンプ52の不使用時は、基板101を免震装置110により支持することで、地震が発生しても免震装置110によりその振動を減衰することができる。一方、第2補助給水ポンプ52の使用時は、基板101を固定装置1により固定することで、固定装置1により免震装置110による基板101の移動が規制されることから、第2補助給水ポンプ52を適正に作動することができる。特に、固定装置1において、予め設置された当接部3を進退移動させることで、基板101の移動を規制できることから、新たに固定装置を設置することと比較して設置作業を容易に行うことができる。この結果、機器の設置を迅速に行うことができ、機器を必要とする原子力発電プラント10の安全性を向上することができる。
【0048】
また、本実施形態の機器の支持構造では、当接部3は、油圧によりロッド3bを進退移動させる油圧ジャッキからなり、進出したロッド3bの先端部を当接させる。
【0049】
この機器の支持構造によれば、当接部3を油圧ジャッキとして進出したロッド3bの先端部を当接させる構成とすることで、基板101の移動の規制が迅速に行えるため、機器の設置をより迅速に行うことができ、機器を必要とする原子力発電プラント10の安全性をより向上することができる。
【0050】
また、本実施形態の機器の支持構造では、当接部3は、油圧によりロッド3bを進退移動させる油圧ジャッキからなり、進出したロッドの先端部を当接させ、かつロッド3bの進出位置を保持する保持機構を有する。
【0051】
この機器の支持構造によれば、保持機構によりロッド3bの進出位置を保持することで、油圧ジャッキへの作動油の加圧を止めても、基板101の移動の規制を維持させることができる。
【0052】
また、本実施形態の機器の支持構造では、保持機構は、ロッド3bに螺合してロッド3bの長さ方向に移動可能に設けられたナット3dを有し、当該ナット3dが油圧ジャッキのケーシング3aに当接することでロッド3bの進出位置を保持する。
【0053】
この機器の支持構造によれば、油圧ジャッキへの作動油の加圧を止めても、基板101の移動の規制を維持させる機構を得ることができる。しかも、ロッド3bの長さ方向にナット3dを移動させることで、ロッド3bの進出長さが変化しても当該変化に応じてロッド3bの進出位置を保持することができる。
【0054】
また、本実施形態の機器の支持構造では、機器は、プラント設備(原子力発電プラント10)に対して接続配管53を通して接続可能に構成された配管取合機器である。
【0055】
配管取合機器の配置は接続配管53との取り合いが要求される。従って、配管取合機器の使用時に機器が取り付けられている基板101の移動を固定装置1により固定することで、配管取合機器の正確な位置を確保するうえで好ましく、この固定作業を容易に行うことで、配管取合機器を迅速にプラント設備に適用することができるため、プラント設備において安全性を向上することができる。
【0056】
図7および図8は、本実施形態に係る機器の支持方法を示す平面図である。
【0057】
ところで、免震装置110は、地震が発生しても免震装置110によりその振動を減衰することができるが、地震が治まったとき、図7に示すように、機器(第2補助給水ポンプ52)がプラント設備(原子力発電プラント10の分岐給水配管(接続配管)53)に接続される基準位置からズレる場合がある。このような場合、本実施形態では、固定装置1の当接部3の進出移動により機器を基準位置に戻すことが可能である。
【0058】
具体的には、図8に示すように、当接部3を進出させることで機器がプラント設備に接続される基準位置となるように基板101を移動させる。その後は、図5に示すように、
基準位置を保持するように当接部3の進出位置を保持する。
【0059】
このようにすることで、機器を基準位置に容易に戻すことができ、機器を迅速にプラント設備に適用することができるため、プラント設備において安全性を向上することができる。
【0060】
なお、図8では、基板101が近づいた側の当接部3を進出移動させている。このように、機器を基準位置に移動させるために少なくとも当該当接部3を進出移動させればよいが、全ての当接部3を進出移動させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 固定装置
2 固定台
2a 当接面
3 当接部
3a ケーシング
3b ロッド
3c 当接子
3d ナット
10 原子力発電プラント(プラント設備)
52 第2補助給水ポンプ(配管取合機器:機器)
53 分岐給水配管(接続配管)
101 基板
110 免震装置
G 床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8