特開2015-152436(P2015-152436A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-152436(P2015-152436A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】卵のひび割れ検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20150728BHJP
   A01K 43/00 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   G01N29/12
   A01K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-26543(P2014-26543)
(22)【出願日】2014年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 健治
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AA12
2G047AD16
2G047BA04
2G047BC07
2G047GD02
2G047GG06
2G047GG28
(57)【要約】
【課題】特別な機構を設けなくても卵の寸法を測定することができるひび割れ検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るひび割れ検査装置1は、卵Eに衝撃を付与する衝撃付与手段2と、衝撃が付与されたときに生ずる振動音を検出するとともに該振動音に関する振動音信号を出力する振動音検出手段3と、振動音信号に演算処理を施して卵Eのひび割れを検出する演算手段4とを備えたものであって、振動音検出手段3は、卵Eの位置Pからの距離が異なる複数のマイクロフォン3a、3bを含み、複数のマイクロフォン3a、3bのそれぞれが振動音信号を出力し、演算手段4は、ひび割れを検出するとともに、複数のマイクロフォン3a、3bから出力された複数の振動音信号を比較した結果に基づいて卵Eの寸法を測定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵に衝撃を付与する衝撃付与手段と、前記衝撃が付与されたときに生ずる振動音を検出するとともに該振動音に関する振動音信号を出力する振動音検出手段と、前記振動音信号に演算処理を施して前記卵のひび割れを検出する演算手段とを備えたひび割れ検査装置であって、
前記振動音検出手段は、前記卵の前記衝撃が付与される位置からの距離が異なる複数のマイクロフォンを含み、前記複数のマイクロフォンのそれぞれが前記振動音信号を出力し、
前記演算手段は、前記ひび割れを検出するとともに、前記複数のマイクロフォンから出力された複数の前記振動音信号を比較した結果に基づいて前記卵の寸法を測定する
ことを特徴とするひび割れ検査装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記複数のマイクロフォンから出力された複数の振動音信号の時間的なずれに基づいて前記卵の寸法を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載のひび割れ検査装置。
【請求項3】
前記衝撃付与手段は、前記卵に複数回の衝撃を付与し、
前記演算手段は、前記時間的なずれの平均値に基づいて前記卵の寸法を測定する
ことを特徴とする請求項2に記載のひび割れ検査装置。
【請求項4】
前記衝撃付与手段は、前記卵の鋭端近傍および鈍端近傍の少なくとも一方に前記衝撃を付与し、
前記振動音検出手段は、前記卵の長軸方向に離間して配置された鋭端側マイクロフォンおよび鈍端側マイクロフォンを含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のひび割れ検査装置。
【請求項5】
前記衝撃付与手段は、前記鋭端近傍および前記鈍端近傍に交互に衝撃を付与し、
前記演算手段は、前記鋭端近傍に衝撃が付与されたときに前記鋭端側マイクロフォンから出力された振動音信号に対する前記鈍端側マイクロフォンから出力された振動音信号の時間遅れと、前記鈍端近傍に衝撃が付与されたときに前記鈍端側マイクロフォンから出力された振動音信号に対する前記鋭端側マイクロフォンから出力された振動音信号の時間遅れとに基づいて前記卵の寸法を測定する
ことを特徴とする請求項4に記載のひび割れ検査装置。
【請求項6】
前記複数のマイクロフォンは、MEMSマイクロフォンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のひび割れ検査装置。
【請求項7】
前記振動音信号は、波形信号であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のひび割れ検査装置。
【請求項8】
卵に衝撃を付与する衝撃付与手段と、前記衝撃が付与されたときに生ずる振動音を検出する振動音検出手段と、前記振動音に基づいて前記卵のひび割れに関する情報を演算する演算手段とを備えたひび割れ検査装置であって、
前記振動音検出手段は、前記卵の前記衝撃が付与される位置からの距離が異なる複数のマイクロフォンを含み、前記複数のマイクロフォンのそれぞれが前記振動音を検出し、
前記演算手段は、前記ひび割れに関する情報を演算するとともに、前記複数のマイクロフォンに前記振動音が到達するまでの到達時間から、前記卵に前記衝撃が付与された位置に関する情報を演算する
ことを特徴とするひび割れ検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵のひび割れを検出するひび割れ検査装置に関し、特に、ひび割れの検出と並行して卵の寸法の測定も行うことができるひび割れ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の卵のひび割れ検査装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。このひび割れ検査装置は、卵にインパルス衝撃を付与するハンマーと、衝撃が付与されたときに生ずる振動音を検出するマイクロフォンとを備え、マイクロフォンが検出した振動音の特性に基づいて卵にひび割れが生じているか否かを判定する。より詳しくは、このひび割れ検査装置は、マイクロフォンで検出した振動音がひび割れがある場合に特有の振動音であった場合にひび割れがあると判定する。
【0003】
また、従来から、振動音と予めレーザセンサを用いて測定しておいた卵の寸法情報とを併用してひび割れを検出するひび割れ検査装置も存在する。このタイプのひび割れ検査装置では、卵の寸法に応じて判定の際に使用する閾値を変化させることで、検出の精度を向上させている。具体的には、このひび割れ検査装置は、卵の寸法が小さい場合は閾値を高めに設定し、検出した振動音とひび割れがないときの振動音との差が大きい場合に限ってひび割れがあると判定する一方、卵の寸法が大きい場合は閾値を低めに設定し、検出した振動音とひび割れがないときの振動音との差がそれほど大きくなくてもひび割れがあると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−11322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検出精度を向上させるためにひび割れ検査装置にレーザセンサを付加すると、装置が高価になってしまうという問題が発生する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、レーザセンサのような特別な機構を設けなくても卵の寸法を測定することができるひび割れ検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るひび割れ検査装置は、卵に衝撃を付与する衝撃付与手段と、衝撃が付与されたときに生ずる振動音を検出するとともに該振動音に関する振動音信号を出力する振動音検出手段と、振動音信号に演算処理を施して卵のひび割れを検出する演算手段とを備えたひび割れ検査装置であって、振動音検出手段は、卵の衝撃が付与される位置からの距離が異なる複数のマイクロフォンを含み、複数のマイクロフォンのそれぞれが振動音信号を出力し、演算手段は、ひび割れを検出するとともに、複数のマイクロフォンから出力された複数の振動音信号を比較した結果に基づいて卵の寸法を測定することを特徴とする。
【0008】
上記ひび割れ検査装置は、演算手段が複数のマイクロフォンから出力された複数の振動音信号の時間的なずれに基づいて卵の寸法を測定する構成とすることができる。衝撃付与手段が卵に複数回の衝撃を付与する場合、演算手段は、上記時間的なずれの平均値に基づいて卵の寸法を測定することが好ましい。
【0009】
上記ひび割れ検査装置は、衝撃付与手段が卵の鋭端近傍および鈍端近傍の少なくとも一方に衝撃を付与する構成とすることができる。この場合は、振動音検出手段を卵の長軸方向に離間して配置された鋭端側マイクロフォンおよび鈍端側マイクロフォンで構成することにより、比較したときに差がでやすい2つの振動音信号を得ることができる。
【0010】
また、上記ひび割れ検査装置は、衝撃付与手段が鋭端近傍および鈍端近傍に交互に衝撃を付与する構成とすることもできる。この場合は、演算手段が、鋭端近傍に衝撃が付与されたときに鋭端側マイクロフォンから出力された振動音信号に対する鈍端側マイクロフォンから出力された振動音信号の時間遅れと、鈍端近傍に衝撃が付与されたときに鈍端側マイクロフォンから出力された振動音信号に対する鋭端側マイクロフォンから出力された振動音信号の時間遅れとに基づいて卵の寸法を測定すればよい。
【0011】
さらに、本発明に係る他のひび割れ検査装置は、卵に衝撃を付与する衝撃付与手段と、衝撃が付与されたときに生ずる振動音を検出する振動音検出手段と、振動音に基づいて卵のひび割れに関する情報を演算する演算手段とを備えたひび割れ検査装置であって、振動音検出手段は、卵の衝撃が付与される位置からの距離が異なる複数のマイクロフォンを含み、複数のマイクロフォンのそれぞれが振動音を検出し、演算手段は、ひび割れに関する情報を演算するとともに、複数のマイクロフォンに振動音が到達するまでの到達時間から、卵に衝撃が付与された位置に関する情報を演算することを特徴とする。
【0012】
本発明ではマイクロフォンおよび振動音信号の種別は特に限定されないが、一例を挙げるとすれば、マイクロフォンはMEMSマイクロフォン、振動音信号は波形信号である。
【0013】
なお、本発明の語句「卵の寸法」は、長径や短径を含む狭義の寸法のみを意味するのではなく、寸法と密接に関係する重量をも意味することとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーザセンサのような特別な機構を設けなくても卵の寸法を測定することができるひび割れ検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係るひび割れ検査装置の基本的な構成を示す図である。
図2】本発明の実施例に係るひび割れ検査装置による卵の寸法の測定原理を説明するための図である。
図3】本発明の実施例に係るひび割れ検査装置の振動音検出手段が出力する振動音信号の一例を示す波形図である。
図4】本発明の実施例に係るひび割れ検査装置が組み込まれた卵検査装置であって、(A)は上面図、(B)は側面図である。
図5】本発明の変形例に係るひび割れ検査装置による卵の寸法の測定原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るひび割れ検査装置の実施例について説明する。
【0017】
図1に、実施例に係るひび割れ検査装置1を示す。本実施例に係るひび割れ検査装置1は、卵Eに衝撃を付与する衝撃付与手段2と、衝撃が付与されたときに生ずる振動音を検出する振動音検出手段3と、振動音信号に演算処理を施して卵Eのひび割れを検出する演算手段4とを備えている。振動音検出手段3は、検出した振動音に関する振動音信号を出力する。本発明では、この演算手段4が、ひび割れの検出に用いられる振動音信号を利用して卵Eの寸法の測定も行う。
【0018】
本実施例に係るひび割れ検査装置1は、不図示の駆動源によって回転せしめられるローラー軸6に設けられたつづみ型の搬送ローラー5によって搬送されている最中の卵Eの寸法を測定するが、これは単なる一例である。本発明によれば、別の搬送手段によって搬送されている最中の卵Eの寸法を測定することもできるし、静止した卵Eの寸法を測定することもできる。
【0019】
衝撃付与手段3は、卵Eに傷を付けることがないような形状および材質の先端部を有するハンマー8と、ハンマー8を駆動する駆動部7とを有する。駆動部7は、一定時間おきにハンマー8を卵Eに当接させたり卵Eから遠ざけたりする。ハンマー8が卵Eに当接した位置にくると、卵Eに衝撃が付与され、振動音が生ずる。
【0020】
図1に示すように、本実施例では、ハンマー8によって卵Eの鋭端Ea近傍に衝撃が付与されるが、衝撃を付与する位置Pは適宜変更可能である。なお、本明細書中の「鋭端近傍」は、卵Eの表面のうち、鋭端Eaを中心とした全体の3割程度の領域を意味する。また、「鈍端近傍」は、鈍端Ebを中心とした全体の3割程度の領域を意味する。
【0021】
振動音検出手段3は、卵Eの長軸方向に離間して配置された2つのマイクロフォン(鋭端側マイクロフォン3a、鈍端側マイクロフォン3b)を有する。本実施例では、鋭端側マイクロフォン3a、鈍端側マイクロフォン3bとして、小型であるために配置の自由度が高いMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロフォンを使用した。
【0022】
図1から明らかなように、鋭端側マイクロフォン3aおよび鈍端側マイクロフォン3bは、位置Pからの距離が異なっている。より詳しくは、鋭端側マイクロフォン3aは、鈍端側マイクロフォン3bよりも位置Pに近い。
【0023】
鋭端側マイクロフォン3aおよび鈍端側マイクロフォン3bは、卵Eに衝撃が付与されたときに生ずる振動音に関する振動音信号をそれぞれ出力する。本実施例では、鋭端側マイクロフォン3aは、振動音の大きさに応じて電圧が変化する電圧波形信号を振動音信号Saとして出力する。同様に、鈍端側マイクロフォン3bは、振動音の大きさに応じて電圧が変化する電圧波形信号を振動音信号Sbとして出力する。
【0024】
演算手段4は、MPU(Micro-Processing Unit)からなり、特開平10−227766号公報に記載された手法により、ひび割れに関する情報を演算し、卵Eのひび割れを検出する。より詳しくは、演算手段4は、振動音信号SaまたはSbをフーリエ変換する。そして、これにより得られたスペクトル強度の低周波数帯(1kHz〜2kHz)および高周波数帯(5kHz〜10kHz)の積分値がそれぞれひび割れのない場合に比べてどの程度変化したのかによりひび割れを検出する。ただし、この手法は単なる一例であり、振動音信号に基づくひび割れの検出手法は、適宜変更することができる。
【0025】
演算手段4は、さらに、振動音信号Sa、Sbに基づいて卵Eの寸法の測定も行う。そして、演算手段4は、振動音信号Sa、Sbから得られた2つの情報、すなわち、ひび割れの有無や程度に関するひび割れ情報と、卵Eの寸法に関する寸法情報とを出力する。寸法情報には、例えば、長径[mm]、短径[mm]、重量[g]、重量分類(LL、L、M、S、SS)のうちの1つ、または2つ以上の情報が含まれる。
【0026】
なお、演算手段4は、ひび割れの検出を担う第1の演算手段と寸法の測定を担う第2の演算手段とで構成されていてもよいし、両方の機能を担う1つの演算手段で構成されていてもよい。
【0027】
図2に、演算手段4による寸法の測定原理を示す。なお、図2中の符号Rで示された線はハンマー8の軌跡を示す。また、符号La*は位置Pと鋭端側マイクロフォン3aとの距離を示し、符号Lb*は位置Pと鈍端側マイクロフォン3bとの距離を示す。
【0028】
卵Eの寸法がSの場合(図2(A))、鋭端側マイクロフォン3aは、卵Eの位置Pに衝撃が付与されてから距離La1に比例した時間だけ遅れて振動音信号Saを出力し始める。一方、鈍端側マイクロフォン3bは、卵Eの位置Pに衝撃が付与されてから距離Lb1に比例した時間だけ遅れて振動音信号Sbを出力し始める。前述の通り、距離Lb1は距離La1よりも長い。このため、鈍端側マイクロフォン3bは、鋭端側マイクロフォン3aが振動音信号Saを出力し始めてから、距離Lb1−La1に比例した時間遅れΔtが経過した後に、振動音信号Sbを出力し始める。
【0029】
図3に、振動音信号SaおよびSbの関係を示す。同図に示すように、時間遅れΔtは、振動音信号Saが所定の閾値THを超えた時間taと振動音信号Sbが該閾値THを超えた時間tbとの差、すなわち、tb−taを測定することにより、比較的容易に測定することができる。時間遅れΔtを測定することで、振動音信号SaおよびSbの時間的なずれ、より詳しくは、振動音信号Saに対する振動音信号Sbの遅れがどの程度なのかを知ることができる。
【0030】
卵Eの寸法がMの場合(図2(B))、時間遅れΔtは距離Lb2−La2に比例する。また、卵Eの寸法がLの場合(図2(C))、時間遅れΔtは距離Lb3−La3に比例する。
【0031】
このように、本発明では、振動音検出手段3を構成する複数のマイクロフォンのそれぞれに振動音が到達するまでの到達時間(上の例では、taおよびtb)が取得される。そして、それに基づいて、演算手段4が卵Eに衝撃が付与された位置に関する情報を演算する。
【0032】
表1に、本実施例に係るひび割れ検査装置1によって、寸法の異なる卵Eの鋭端Ea近傍にそれぞれ衝撃を3回付与して時間遅れΔtを測定し、その平均値を算出した結果を示す。
【表1】
上表から明らかなように、時間遅れΔt(=tb−ta)は、卵Eの寸法が大きくなるにつれて大きくなった。演算装置4は、この時間遅れΔtと卵Eの寸法の関係を利用して、卵Eの寸法を測定する。
【0033】
ハンマー8が、卵Eの鈍端Eb近傍に衝撃を付与する場合は、距離La*が距離Lb*よりも長くなる。この場合、演算手段4は、振動音信号Sbに対する振動音信号Saの時間遅れΔt(=ta−tb)に基づいて卵Eの寸法を測定する。
【0034】
表2に、本実施例に係るひび割れ検査装置1によって、寸法の異なる卵Eの鈍端Eb近傍にそれぞれ衝撃を3回付与して時間遅れΔtを測定し、その平均値を算出した結果を示す。
【表2】
卵Eの鋭端Ea近傍に衝撃を付与した場合と同様、時間遅れΔtは、卵Eの寸法が大きくなるにつれて大きくなった。
【0035】
図4に、ひび割れ検査装置1’が組み込まれた卵検査装置10を示す。卵検査装置10は、搬送方向に沿って等間隔に配置された複数のローラー軸6および該ローラー軸6に等間隔に設けられた複数の搬送ローラー5からなる搬送手段と、搬送中の卵Eの上方を覆うカバー9と、カバー9の内側に設けられたひび割れ検査装置1’とを備えている。同図に示すように、卵検査装置10は、搬送手段により形成される搬送ラインの数(図4では3つ)と同じ数のひび割れ検査装置1’を備えている。また、搬送中の卵Eは、その長軸方向と搬送方向が直角をなしている。卵検査装置10は、この他、卵Eの汚れを検出する不図示の汚検査装置等も備えている。
【0036】
ひび割れ検査装置1’は、卵Eの鋭端Ea近傍に衝撃を付与する8つの衝撃付与手段2aと、卵Eの鈍端Eb近傍に衝撃を付与する8つの衝撃付与手段2bと、隣接する衝撃付与手段2aおよび2bの間に各1つ設けられた鋭端側マイクロフォン3aおよび鈍端側マイクロフォン3bからなる振動音検出手段3と、振動音検出手段3に接続された演算手段4(不図示)とを備えている。
【0037】
衝撃付与手段2aおよび2bは、搬送中の卵Eに対して一定時間おき連続的に衝撃を付与する。ただし、隣接した衝撃付与手段2aおよび2bは、1つの卵Eに対して同じタイミングで衝撃を付与することがないように調整されている。このため、衝撃付与手段2aおよび2bは、搬送中の卵Eに対して交互に衝撃を付与する。
【0038】
鋭端側マイクロフォン3aおよび鈍端側マイクロフォン3bは、これらを結ぶ線が、卵Eの長軸方向に対して平行となり、かつ水平となるように配置されている。
【0039】
ある衝撃付与手段2bが卵Eに衝撃を付与すると、演算手段4は、その衝撃付与手段2bに隣接する振動音検出手段3が出力した振動音信号Sa、Sbから時間遅れΔt(=ta−tb)を測定し、測定した時間遅れΔtに基づいて卵Eの寸法を測定する。一方、ある衝撃付与手段2aが卵Eに衝撃を付与すると、演算手段4は、その衝撃付与手段2aに隣接する振動音検出手段3が出力した振動音信号Sa、Sbから時間遅れΔt(=tb−ta)を測定し、測定した時間遅れΔtに基づいて卵Eの寸法を測定する。
【0040】
衝撃付与手段2aおよび2bがそれぞれ1つの卵Eに対して複数回衝撃を付与する場合、演算手段4は、衝撃付与手段2aによって衝撃が付与されたときの時間遅れΔtの平均値と、衝撃付与手段2bによって衝撃が付与されたときの時間遅れΔtの平均値とに基づいて寸法を測定することが好ましい。振動音とともに雑音を検出してしまうことが避けられない場合でも、平均値に基づいて測定を行うことで、雑音による影響をある程度緩和することができる。
【0041】
また、演算手段4は、鋭端Ea近傍からの振動音に基づいて測定した寸法と鈍端Eb近傍からの振動音に基づいて測定した寸法とが一致した場合に限って寸法情報を出力し、不一致だった場合は寸法情報を出力しないように構成されていてもよい。この構成によれば、何らかの理由により鋭端Ea近傍またはり鈍端Eb近傍において正しい測定が行われなかった場合に、誤った寸法情報が出力されてしまうのを防ぐことができる。
【0042】
以上、本発明に係るひび割れ検査装置の実施例について説明してきたが、本発明は実施例の構成に限定されるものではなく、種々の変形例が存在する。
【0043】
振動音検出手段3を構成する2つのマイクロフォンの配置は、任意に変更することができる。例えば、2つのマイクロフォンは、図5に示すように、垂直方向に離間して設けられてもよい。この場合は、マイクロフォン3dが出力した振動音信号Sdに対するマイクロフォン3cが出力した振動音信号Scの時間遅れΔt(=tc−td)に基づいて卵Eの寸法を測定することができる。ただし、マイクロフォンの配置を変更する場合は、位置Pからの距離が等しくならないように注意する必要がある。
【0044】
振動音検出手段3が出力する振動音信号は、電圧波形信号に限定されない。例えば、振動音信号は、振動音の大きさに応じて電流が変化する電流波形信号であってもよいし、振動音の大きさが所定の閾値を超えたことを示すパルス信号であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ひび割れ検査装置
2、2a、2b 衝撃付与手段
3 振動音検出手段
3a 鋭端側マイクロフォン
3b 鈍端側マイクロフォン
4 演算装置
5 搬送ローラー
6 ローラー軸
7 駆動部
8 ハンマー
9 カバー
10 卵検査装置
E 卵
Ea 鋭端
Eb 鈍端
図1
図2
図3
図4
図5