(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-152568(P2015-152568A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】薬液濃度計
(51)【国際特許分類】
G01N 27/06 20060101AFI20150728BHJP
G01N 29/02 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
G01N27/06 Z
G01N29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-29649(P2014-29649)
(22)【出願日】2014年2月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮後 真
(72)【発明者】
【氏名】新井 義久
【テーマコード(参考)】
2G047
2G060
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA01
2G047BC02
2G047CA01
2G047GG14
2G060AA05
2G060AE17
2G060AF08
2G060AG11
2G060AG13
2G060FA01
2G060FA10
2G060FA15
2G060HC02
2G060HC13
(57)【要約】
【課題】薬液濃度計において、導電率計の電極からの漏れ電流の影響を受けることなく、しかも、管路の内径が、管路内の流体の圧力や温度に起因して変動した場合であっても、濃度を高精度に検出することができる。
【解決手段】薬液濃度計に通電されたときに出力される測定指令信号STに基づいて切換手段20の可動接点を、接地される固定接点に接続することをあらわす切換指令信号CSを形成し切換手段20をオフ状態とした状態で、超音波測定がなされ、濃度演算部56により、溶液SOの濃度が、音速演算部62からの音速をあらわすデータDv、および、導電率演算部54からの導電率をあらわすデータDdに基づいて算出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の流れに沿って所定の間隔をもって流路内に配される少なくとも2以上の電極部を有する導電率計測部と、超音波を前記溶液に送信し受信する超音波送受信部とを含んでなる検出部と、
前記検出部の前記電極部を駆動する駆動回路部と、
前記検出部の導電率計側部からのデータに基づいて前記溶液の導電率を演算する導電率演算部と、
前記検出部の前記超音波送受信部からの時間データに基づいて音速を演算する音速演算部と、
前記導電率演算部からの前記溶液の導電率、および、前記音速演算部からの音速に基づいて前記溶液の濃度を演算する濃度演算部と、
前記駆動回路、前記導電率演算部、前記音速演算部、前記濃度演算部に、動作を行わせる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記駆動回路を非作動状態とした場合、前記音速演算部に、前記超音波送受信部からの時間データに基づいて音速の演算を行わせることを特徴とする薬液濃度計。
【請求項2】
前記検出部における導電率計測部と超音波送受信部とが、前記流路に隣接して配されることを特徴とする請求項1記載の薬液濃度計。
【請求項3】
前記導電率計測部は、前記溶液の流れに沿って所定の間隔をもって流路内に配される3個の電極部を有することを特徴とする請求項1記載の薬液濃度計。
【請求項4】
前記超音波送受信部は、超音波を前記溶液の流れに対し直交する方向に、前記溶液に送信し受信することを特徴とする請求項1記載の薬液濃度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液濃度計に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液の濃度を計測する薬液濃度計としては、流体の導電率を計測する導電率計が、実用に供されている。直接印加式導電率計は、例えば、特許文献1および特許文献2にも示されるように、計測される流体が流れる管路内に、流体の流れ方向に沿って所定の間隔をもって3つの環状の電極が、流体と接触するように配置されている。3つの電極のうち中間の電極がアンプに接続され、残りの2つの電極が交流電源に接続されている。斯かる直接印加式導電率計の構成においては、交流電圧が、中間の電極と一方の端に位置する電極、および、中間の電極と他方の端に位置する電極とに並列に印加されるので並列合成抵抗が形成される。この並列合成抵抗を流れる電流が上述のアンプにより検出され電圧に変換されることによって、その流体の導電率がその電圧値に基づいて求められている。
【0003】
また、例えば、特許文献3にも示されるように、一対の電極を管路内の液体にさらすことなく管路の外側の対向する位置に設け、一対の基準電圧電源から周波数の異なる交流電圧を電極に与え、得られた2種類の電流値と、基準電圧値と、その周波数値とにより演算処理部において演算して流体の導電率を求めるものも提案されている。
【0004】
さらに、流体の濃度の測定において、管路内の流体の温度変化の影響を減らすように、例えば、特許文献4および特許文献5にも示されるように、流体の濃度の演算が、管路内の液体の温度を検出する温度検出器からの検出出力および導電率センサからの出力に基づいて流体の濃度について温度補償を行うこともなされている。
【0005】
さらにまた、流体の濃度の測定の精度を高めるべく、例えば、特許文献6にも示されるように、多成分濃度計が、現像液の温度、超音波伝播速度、電磁導電率および吸光度を計測し、予め作成された所定の温度、アルカリ濃度、炭酸塩濃度および溶解樹脂濃度における超音波伝播速度と電磁導電率と吸光度との関係に基づいて現像液のアルカリ濃度、現像液中の炭酸塩濃度および溶解樹脂濃度を検出するように構成されるものが提案されている。
【0006】
そして、例えば、特許文献7にも示されるように、濃度演算部が、超音波送受波器の検出量に基づいて演算された超音波の伝播速度、温度検出器が検出した温度、特定物性量検出器の検出した導電率に基づき各溶質の濃度を演算することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−329633号公報
【特許文献2】特開2005−241590号公報
【特許文献3】特開平3−261872号公報
【特許文献4】特開2005−189207号公報
【特許文献5】特開2002−236103号公報
【特許文献6】特開2008−283162号公報
【特許文献7】特開2006−184258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献6および特許文献7に示されるように、導電率計の出力および超音波送受波器(振動子)から得られる超音波の伝播速度に基づいて濃度を測定する場合、導電率計および超音波送受波器(振動子)が同時に作動状態とされるとき、導電率計の電極からの漏れ電流が、ノイズとして超音波送受波器(振動子)から得られる出力に悪影響を及ぼし、流体の濃度の検出精度が低下する虞がある。また、上述のような導電率計により測定される流体の導電率は、複数の電極間に構成される管路の内径及び電極相互間の距離に依存する。R=ρ・d/S(但し、R:抵抗値、ρ:抵抗率、d:抵抗通路の長さ、S:抵抗通路の断面積)、および、σ=1/R・セル定数(σ:導電率)という関係式により、測定される流体の導電率は、管路の横断面積および電流が流れる通路の長さによって変化するためである。即ち、管路の内径及び複数の電極相互間の距離が、管路内流体の圧力や温度に起因して変動した場合、得られた導電率の精度が低下する虞もある。
【0009】
以上の問題点を考慮し、本発明は、薬液濃度計であって、導電率計の電極からの漏れ電流の影響を受けることなく、しかも、管路の内径が、管路内の流体の圧力や温度に起因して変動した場合であっても、濃度を高精度に検出することができる薬液濃度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明に係る薬液濃度計は、溶液の流れに沿って所定の間隔をもって流路内に配される少なくとも2以上の電極部を有する導電率計測部と、超音波を溶液に送信し受信する超音波送受信部とを含んでなる検出部と、検出部の電極部を駆動する駆動回路部と、検出部の導電率計側部からのデータに基づいて溶液の導電率を演算する導電率演算部と、検出部の超音波送受信部からの時間データに基づいて音速を演算する音速演算部と、導電率演算部からの溶液の導電率、および、音速演算部からの音速に基づいて溶液の濃度を演算する濃度演算部と、駆動回路、導電率演算部、音速演算部、濃度演算部に、動作を行わせる制御部と、を備え、制御部は、駆動回路を非作動状態とした場合、音速演算部に、超音波送受信部からの時間データに基づいて音速の演算を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る薬液濃度計によれば、制御部は、駆動回路を非作動状態とした場合、音速演算部に、超音波送受信部からの時間データに基づいて音速の演算を行わせるので導電率計の電極からの漏れ電流の影響を受けることなく、しかも、濃度演算部が、導電率演算部からの溶液の導電率、および、音速演算部からの音速に基づいて溶液の濃度を算出するので管路の内径が、管路内の流体の圧力や温度に起因して変動した場合であっても、濃度を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は、本発明に係る薬液濃度計の一例を、制御ユニット部とともに示すブロック図であり、(B)は、
図1(A)に示される非反転増幅回路を示す回路図である。
【
図2】液温に応じた導電率、音速、濃度との関係を示す特性図である。
【
図3】
図2に示される特性図における導電率、音速、濃度、温度の関係をあらわす表である。
【
図4】濃度に応じた液温ごとの導電率、音速との関係を示す特性図である。
【
図5】
図1に示される制御ユニット部が、マイクロコンピュータにより構成された場合、制御ユニット部が実行するプログラムを示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示される制御ユニット部が、マイクロコンピュータにより構成された場合、制御ユニット部が実行するプログラムを示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示される制御ユニット部が、マイクロコンピュータにより構成された場合、制御ユニット部が実行するプログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る薬液濃度計の一例の構成を、制御ブロックとともに示す。
【0014】
図1に示される薬液濃度計の検出部10は、例えば、矢印が示す方向に沿って所定の溶液SOが供給される配管の所定の中継地点に接続されている。検出部10は、外郭部を形成するハウジングと、そのハウジング内に配され上述の配管に一端が接続される一対の接続パイプと、3つの電極プレート12A、12B,および、12Cと、超音波送受信部と、を主な要素として含んで構成されている。
【0015】
検出部10において、配管内に連通する溶液SOの流路は、上述の一対の接続パイプの内周部と、電極プレート12A、12B,および、12Cの孔と、により形成されている。
【0016】
検出部10において、電極プレート12A、12B,および、12Cは、それぞれ、所定の間隔をもって溶液SOの流れ方向に沿って流路内に配される。検出部10における電極プレート12Bは、例えば、所謂、プラス電極とされ、一方、電極プレート12A、および、電極プレート12Cは、それぞれ、マイナス電極とされる。電極プレート12Bは、後述する交流発生回路18に切換手段20を介して接続された非反転増幅回路22に接続されている。電極プレート12A、および、電極プレート12Cは、それぞれ、接地されている。斯かる構成において、後述するように、交流電圧が、中間の電極プレート12Bと一方の端に位置する電極プレート12A、および、中間の電極プレート12Bと他方の端に位置する電極プレート12Cとに並列に印加されるので並列合成抵抗が形成される。この並列合成抵抗R
1を流れる電流が後述の非反転増幅回路22のオペアンプ22a(
図1(B)参照)により検出され電圧に変換される。これにより、溶液SOの濃度に基づく並列合成抵抗R
1の変動に応じた電流値の変化が出力電圧の変化として得られる。
【0017】
超音波送受信部は、振動子の発信部14Tと、振動子の受信部14Rとから構成されている。発信部14Tは、溶液SOを挟んで受信部14Rに向かい合うように配置されている。なお、発信部14Tは、斯かる例に限られることなく、受信部14に対し所定の角度で互いに斜め位置となるように配置されてもよい。
【0018】
本発明に係る薬液濃度計の一例において、斯かる検出部10に、加えて、
図1に示されるような、制御ブロックを備えている。
【0019】
制御ブロックは、交流発生回路18および直流発生回路(不図示)に接続されている。交流発生回路18は、切換手段20を介して非反転増幅回路22のオペアンプ22aの入力端子(+)(
図1(B)参照)に接続されている。切換手段20は、後述する切換制御部66からの切換指令信号CSに基づいて制御される。切換手段20は、例えば、交流発生回路18と非反転増幅回路22との間を選択的に開状態とする、あるいは、電極プレート12Bと非反転増幅回路22との間を選択的に開状態とするアナログスイッチ、トランジスタにより構成されてもよい。また、切換手段20は、交流発生回路18に電力を供給する電源を選択的にオフ状態とするもの、あるいは、交流発生回路18からの信号を選択的に発生させないように構成されるものでもよい。さらに、切換手段20は、電極プレート12A、および、電極プレート12B相互間、および、電極プレート12B、および、電極プレート12C相互間を選択的に短絡させるものであってもよい。
【0020】
非反転増幅回路22のオペアンプ22aの入力端子(−)は、
図1(B)に示されるように、上述した並列合成抵抗R
1に接続されるとともに、オペアンプ22aの入力端子(+)は、切換手段20を介して交流発生回路18に接続されている。オペアンプ22aの出力端子には、フィードバック抵抗R
2の一端が接続されている。フィードバック抵抗R
2の他端は、並列合成抵抗R
1の接続端に接続されている。並列合成抵抗R
1は、検出部10における溶液SOの濃度の変化に応じて変化することとなる。これにより、非反転増幅回路22のオペアンプ22aからの出力電圧Voutと、交流発生回路18からの入力電圧Vinとの間には、以下の式(1)に示される関係がある。
Vout=(1+R
2/R
1)Vin …(1)
【0021】
非反転増幅回路22は、整流回路24および増幅回路26を介して後述する制御ユニット部50の入力部に接続されている。これにより、オペアンプ22aからの出力電圧Voutが、整流回路24に供給され、直流に変換された後、増幅回路26を介して増幅されることにより、並列合成抵抗R
1の値の変化に応じた電圧値をあらわす信号Srが、制御ユニット50の入力部に供給される。
【0022】
超音波送受信部における振動子の発信部14Tは、送信回路28を介して制御ユニット50における発振器64に接続されている。発振器64は、所定の駆動パルス信号Paを形成し、それを送信回路28に供給する。送信回路28は、所定の駆動パルス信号Paに基づいて駆動制御信号(発振信号)Dcを形成し発信部14Tに供給する。これにより、発信部14Tは、駆動制御信号(発振信号)Dcに基づいて管路内の溶液SOに向けて超音波信号を送出する。振動子の受信部14Rは、超音波信号を受信し到達時間をあらわす検出出力Scを形成し、それを受信回路30に供給する。受信回路30は、受信部14Rからの検出出力Scを電気信号に変換し増幅回路32を介して検波平滑整形回路34に供給する。これにより、検波平滑整形回路34は、増幅された出力信号Scに基づいて矩形波のパルス信号を形成し、それを積分器36に供給する。積分器36において、所定のタイミングでその信号の立上がりおよび立下りのエッジ検出がなされ得ることとなる。即ち、積分器36は、パルス信号の時間を拡大する回路になっており、機能としては、エッジ検出が始まってから積分器内部のコンデンサが放電するまでの時間、電流を流し続け、放電が終了次第、積分器36に内蔵されたコンパレータよりストップパルス信号Ptを出力している。例えば、そのようなコンパレータがコンデンサに対し充電抵抗および放電抵抗が接続された構成である場合、充電抵抗値が放電抵抗値に比べてかなり小さいとき、コンデンサに急激に充電された後、徐々に放電されることとなる。なお、積分器36の応答時間を早める方法としては、検波・平滑整形回路34から積分器36への入力ポートの他に、信号を逃がす分岐回路を作り、制御ユニットによりその分岐回路が所定時間経過後、積分器36に信号を供給するように分岐回路が制御されてもよい。積分器36が信号のエッジ検出をするまで時間があるのでその時間を逆算して、検波・平滑整形回路34からの信号をその時間だけ積分器36に入力しないという方法がとられてもよい。
【0023】
積分器36からのストップパルス信号Ptは、制御ユニット50のカウンタ60に供給されることとなる。カウンタ60は、発振器64からの駆動パルス信号Paのスタートパルスから積分器36からのストップパルス信号Ptを得るまでの時間を、所定のクロックパルスで計数することとなる。
【0024】
制御ユニット部50は、増幅回路26からの電圧値をあらわす信号Srをデジタル変換するA/D変換部52と、A/D変換部52からの電圧値をあらわすデータDrに基づいて導電率を演算する導電率演算部54と、上述のカウンタ60と、カウンタ60からの計数値をあらわすデータに基づいて音速を演算する音速演算部62と、導電率演算部54からの導電率をあらわすデータDdと、音速演算部62からの音速をあらわすデータDvとに基づいて溶液SOの濃度を演算する濃度演算部56と、上述の発振器64と、切換制御部66と、を含んで構成されている。また、制御ユニット50は、電極プレート12A、12B,および、12Cのセル定数(電流流路長/横断面積)をあらわすデータ、接続パイプの内周部の内径(音波の伝播距離)をあらわすデータ、各温度における導電率、および音速を参照することにより、それらと濃度又は温度との関係をあらわすルックアップテーブルデータ、導電率の演算プログラム、音速の演算プログラム、濃度の演算プログラムをあらわすデータ、および、他のデータ等を格納するデータ記憶部58を備えている。
【0025】
切換制御部66は、薬液濃度計の電源がオン状態とされ、所定時間経過後、図示が省略される他の制御部から出力される測定開始指令信号STに基づいて切換手段20の可動接点を接地される固定接点に接続することをあらわす切換指令信号CSを形成し切換手段20に送出する。また、切換制御部66は、超音波測定サブルーチンのプログラムの終了信号に基づいて切換手段20の可動接点を交流発生回路18に接続される固定接点に接続することをあらわす切換指令信号CSを形成し切換手段20に送出する。
【0026】
なお、斯かる例に限られることなく、図示が省略される薬液濃度計の操作スイッチからの測定開始指令信号STに基づいて切換手段20の可動接点を接地される固定接点に接続することをあらわす切換指令信号CSを形成するように構成されてもよい。
【0027】
制御ユニット部50は流路内の溶液SOの濃度を算出するにあたり、音速演算部62が、カウンタ60からの計数値および接続パイプの内周部の内径(音波の伝播距離)に基づいて音速を演算し、音速をあらわすデータDvを濃度演算部56に供給する。次に、導電率演算部54が、A/D変換部52からの電圧値をあらわすデータDr、および、データ記憶部58に格納される抵抗値、これら2つの相互関係をあらわすテーブルデータまたは演算式に基づいて抵抗値を算出する。そして、導電率演算部54は、得られた抵抗値の逆数とセル定数とを乗算することにより、溶液SOの導電率を演算し、溶液SOの導電率をあらわすデータDdを濃度演算部56に供給する。濃度演算部56は、音速をあらわすデータDvに基づく音速(m/s)および溶液SOの導電率をあらわすデータDdに基づき
図2および
図3に示されるマップを参照することにより、温度(℃)および濃度(wt%)を算出する。なお、温度(℃)および濃度(wt%)を算出するにあたり、温度と導電率および音速との関係式、あるいは、濃度と導電率および音速との関係式により、演算されてもよい。また、濃度は、音速から算出された温度と、導電率とに基づいて演算されてもよい。
【0028】
図2は、縦軸に、各濃度の導電率(σ)、音速(v)をとり、横軸に、液温(t)をとり、温度(t1〜t3)に応じた各濃度(m1、m2、m3)ごとの導電率(σ1〜σ9)の変化、および、各濃度ごとの音速(v1〜v9)の変化を示す。
【0029】
上述の例のように、濃度が音速および導電率に基づいて算出される場合、以下の理由により、濃度は、温度または圧力に起因した流路における半径方向の変形の影響が少なく、精度よく測定できるという効果がある。
【0030】
図4に示されるように、濃度(m)と、導電率(σ)、音速(V)との関係は、1次式の近似式であらわすことができる。
図4は、縦軸に導電率(σ)、音速Vをとり、横軸に濃度(m)をとり、濃度に応じた液温(t1、t2、t3、t4、t5)ごとの導電率、音速との関係を示す。液温t5の値は、他の液温(t1、t2、t3、t4)の値よりも高く、液温t1の値は、他の液温(t2、t3、t4)の値よりも低い。液温t2、t3、t4の値の間には、t2<t3<t4という関係がある。また、導電率σa〜σfの値の大小関係は、σa>σb>σc>σd>σe>σfという関係がある。さらに、音速Va〜Vhの値の大小関係は、Va>Vb>Vc>Vd>Ve>Vf>Vg>Vhという関係がある。そして、濃度ma〜mbの値の大小関係は、ma>mb>mc>md>meという関係がある。
【0031】
また、温度(t)と、導電率(σ)、音速(v)との関係は、同様に、下記のような1次式の近似式であらわすことができる。
σ=am+Z1=ct+Z3 …(2)
V=bm+Z2=dt+Z4 …(3)
但し、a、b、c、d、Z1、Z2、Z3、Z4は、それぞれ、係数である。
(2)式、(3)式により、以下の式が得られる。但し、e,fは、係数である。
σ=am−ct+e …(4)
V=−bm+dt+f …(5)
(4)式、(5)式により、以下の式が得られる。
m=pσ+qV+r=−pσ−qV−r …(6)
【0032】
ここで、流路における内径が大きくなった場合、電流通過面積が大きくなるから電流が流れやすくなるので導電率(σ)は大となり、伝搬距離が長くなるから伝搬時間は長くなるので音速(V)は小となる。即ち、(6)式より、流路の内径が大きくなる場合、導電率(σ)が大となり、音速(V)は、小となる。即ち、流路の内径が大きくなる場合、導電率(σ)が大となり、音速(V)は、小となるので濃度の変化量が少なくなり、従って、濃度は、温度または圧力に起因した流路における半径方向の変形の影響が少なく、精度よく測定できるという効果がある。検出部10において、
図1に示されるように、電極プレート12A、12B,および、12Cと、超音波式音速検出部における振動子の発信部14Tとが、互いに隣接して配置されているので管路内における電極プレート12A、12B,および、12C、および、振動子の発信部14Tに作用する圧力がほぼ同等となる。これにより、流路の内径における圧力による変化量が異なることが回避されるので濃度のばらつきも回避されることとなる。
【0033】
制御ユニット50は、例えば、マイクロコンピュータにより構成され、斯かるマイクロコンピュータが実行するプログラムを
図5乃至
図7を参照して説明する。
【0034】
図5において、制御ユニット50は、プログラムをスタート後、ステップSA1で各パラメータについて初期設定を行い、次に、ステップSA2に進み、薬液濃度計の電源がオン状態とされたとき、所定時間経過後、出力される測定開始指令信号STに基づいて切換手段20の可動接点を、接地される固定接点に接続することをあらわす切換指令信号CSを形成し切換手段20をオフ状態とする。これにより、導電率センサを形成する電極プレート12A、12B,および、12Cが非作動状態とされる。従って、電極プレート相互間に電流が流れないので導電率計測のために溶液SOに流す電流がノイズ源となり、音速計測の誤差が発生することが回避される。
【0035】
続いて、ステップSA3において、超音波測定プログラムを実行し、ステップSA4に進み、超音波測定サブルーチンのプログラムの終了信号に基づいて切換手段20の可動接点を交流発生回路18に接続される固定接点に接続することをあらわす切換指令信号CSを形成し切換手段20に送出する。続くステップSA5において、導電率測定プログラムを実行し、ステップSA6に進み、濃度演算を行い、続くステップSA7において濃度をあらわすデータDCを出力し、ステップSA2に戻り、それ以降、同様のステップを実行する。
【0036】
ステップSA3においては、
図6に示されるように、スタート後、ステップSB1において、送信回路28は、所定の駆動パルス信号Paに基づいて駆動制御信号Dcを形成し発信部14Tに供給し、次に、ステップSB2において、カウンタ60が、発振器64からの駆動パルス信号Paのスタートパルスから積分器36からのストップパルス信号Ptをカウンタが得るまでの時間を、所定のクロックパルスで計数し、続くステップSB3において、得られた計数値に基づいて音速を算出し、プログラムを終了し、終了信号を送出する。
【0037】
ステップSA5においては、
図7に示されるように、スタート後、ステップSC1において、データDrを取り込み、次に、ステップSC2において、データDrに基づく抵抗値、および、セル定数により導電率を演算し、プログラムを終了する。
【符号の説明】
【0038】
10 検出部
12A、12B、12C 電極プレート
14T 発信部
14R 受信部
20 切換手段
50 制御ユニット部
54 導電率演算部
56 濃度演算部
62 音速演算部