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特開2015-153458端子付電線、電線モジュール及び端子付電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-153458(P2015-153458A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】端子付電線、電線モジュール及び端子付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20150728BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20150728BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20150728BHJP
   H01R 43/05 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/62 A
   H01R13/42 B
   H01R43/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-23333(P2014-23333)
(22)【出願日】2014年2月10日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】蓮井 宏介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】寺内 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
(72)【発明者】
【氏名】芦田 大地
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
5E087
【Fターム(参考)】
5E063CB04
5E063CC05
5E063CD14
5E085BB02
5E085BB12
5E085BB22
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085HH08
5E085HH34
5E085JJ38
5E087EE14
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG14
5E087GG35
5E087LL02
5E087MM05
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】銅電線用に製造されたコネクタハウジング等の端子収容室にアルミ電線の端子を挿入しやすくすることができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】端子付電線12は、アルミニウム又はアルミニウム合金を材料として形成された導体芯線16と、前記導体芯線16の端部が露出するように前記導体芯線16の中間部分の周囲を覆う態様で絶縁材料により形成された絶縁被覆部18と、を含むアルミ電線14と、前記導体芯線16の露出する端部に加締められるワイヤーバレル部26と、前記絶縁被覆部18のうち端縁部よりも中央側の部分に加締められるインシュバレル部30と、を含み、前記アルミ電線14に圧着された圧着端子20と、を備える。前記インシュバレル部30と前記ワイヤーバレル部26との間に位置する前記絶縁被覆部18が前記インシュバレル部30よりも径方向外側に突出しないように切除されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金を材料として形成された導体芯線と、前記導体芯線の端部が露出するように前記導体芯線の中間部分の周囲を覆う態様で絶縁材料により形成された絶縁被覆部と、を含むアルミ電線と、
前記導体芯線の露出する端部に加締められるワイヤーバレル部と、前記絶縁被覆部のうちその端縁部よりも中央側の部分に加締められるインシュバレル部と、を含み、前記アルミ電線に圧着された圧着端子と、
を備え、
前記絶縁被覆部のうち前記インシュバレル部と前記ワイヤーバレル部との間に位置する部分が前記インシュバレル部よりも外側に突出しないように切除されている、端子付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付電線であって、
前記絶縁被覆部に対する前記インシュバレル部の加締め量が、前記絶縁被覆部のうち前記インシュバレル部と前記ワイヤーバレル部との間にある部分が前記インシュバレル部よりも外側に突出する程度に設定されている、端子付電線。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の端子付電線であって、
前記インシュバレル部は、端子収容室に挿通可能となるまで加締められる、端子付電線。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に係る端子付電線を少なくとも1本と、
端子収容室が形成され、前記端子収容室に前記端子付電線の端部に圧着された前記圧着端子が挿入されている、コネクタハウジングと、
を備える、電線モジュール。
【請求項5】
アルミニウム又はアルミニウム合金を材料として形成された導体芯線と、前記導体芯線の周囲を覆う態様で絶縁材料により形成された絶縁被覆部と、を含むアルミ電線に、ワイヤーバレル部と、インシュバレル部と、を含む圧着端子を圧着して端子付電線を製造する方法であって、
(a)アルミ電線の端部において露出する導体芯線にワイヤーバレル部を加締める工程と、
(b)絶縁被覆部のうち端縁部よりも中央側よりの部分に、絶縁被覆部のうちインシュバレル部とワイヤーバレル部との間にある部分がインシュバレル部よりも外側に突出するように、インシュバレル部を加締める工程と、
(c)インシュバレル部とワイヤーバレル部との間にある絶縁被覆部のうちインシュバレル部よりも外側に突出する部分を切除する工程と、
を備える、端子付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端部に端子が圧着された電線に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に配設される電線として、電線の端部に端子が圧着された端子付電線が用いられる。端子付電線の端子部分はコネクタハウジング等の端子収容室に挿入される。
【0003】
このような端子付電線の電線は、長らく、導体部分が銅又は銅合金である銅電線が主流であった。ところが、近年、軽量化等を目的として導体部分がアルミニウム又はアルミニウム合金であるアルミ電線の開発が進められている。このようなアルミ電線として、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−257719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、銅電線が配線されている箇所において、銅電線をアルミ電線に置き換えようとする場合には、銅とアルミニウムの導電率の違いから、アルミ電線の導体径を銅電線の導体径よりも大きくする必要が生じる。このため、従来の銅電線用に製造されたコネクタハウジング等の端子収容室にアルミ電線の端部に圧着された端子を挿入することが難しい場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、銅電線用に製造されたコネクタハウジング等の端子収容室にアルミ電線の端子を挿入しやすくすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る端子付電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金を材料として形成された導体芯線と、前記導体芯線の端部が露出するように前記導体芯線の中間部分の周囲を覆う態様で絶縁材料により形成された絶縁被覆部と、を含むアルミ電線と、前記導体芯線の露出する端部に加締められるワイヤーバレル部と、前記絶縁被覆部のうちその端縁部よりも中央側の部分に加締められるインシュバレル部と、を含み、前記アルミ電線に圧着された圧着端子と、を備え、前記絶縁被覆部のうち前記インシュバレル部と前記ワイヤーバレル部との間に位置する部分が前記インシュバレル部よりも外側に突出しないように切除されている。
【0008】
第2の態様に係る端子付電線は、第1の態様に係る端子付電線であって、前記絶縁被覆部に対する前記インシュバレル部の加締め量が、前記絶縁被覆部のうち前記インシュバレル部と前記ワイヤーバレル部との間にある部分が前記インシュバレル部よりも外側に突出する程度に設定されている。
【0009】
第3の態様に係る端子付電線は、第1又は第2の態様に係る端子付電線であって、前記インシュバレル部は、端子収容室に挿通可能となるまで加締められる。
【0010】
第4の態様に係る電線モジュールは、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る端子付電線を少なくとも1本と、端子収容室が形成され、前記端子収容室に前記端子付電線の端部に圧着された前記圧着端子が挿入されている、コネクタハウジングと、を備える。
【0011】
第5の態様に係る端子付電線の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金を材料として形成された導体芯線と、前記導体芯線の周囲を覆う態様で絶縁材料により形成された絶縁被覆部と、を含むアルミ電線に、ワイヤーバレル部と、インシュバレル部と、を含む圧着端子を圧着して端子付電線を製造する方法であって、(a)アルミ電線の端部において露出する導体芯線にワイヤーバレル部を加締める工程と、(b)絶縁被覆部のうち端縁部よりも中央側よりの部分に、絶縁被覆部のうちインシュバレル部とワイヤーバレル部との間にある部分がインシュバレル部よりも外側に突出するように、インシュバレル部を加締める工程と、(c)インシュバレル部とワイヤーバレル部との間にある絶縁被覆部のうちインシュバレル部よりも外側に突出する部分を切除する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
第1〜第3の態様に係る端子付電線によると、インシュバレル部とワイヤーバレル部との間に位置する絶縁被覆部がインシュバレル部よりも外側に突出しないように切除されているため、インシュバレル部とワイヤーバレル部との間に位置し、インシュバレル部よりも外側に突出する絶縁被覆部が端子収容室等の内周縁部に引っ掛かることを抑えることができる。これにより、銅電線用に製造されたコネクタハウジング等の端子収容室にアルミ電線の端子を挿入しやすくすることができる。
【0013】
特に、第2の態様に係る端子付電線によると、絶縁被覆部のうちインシュバレル部とワイヤーバレル部との間にある部分がインシュバレル部よりも外側に突出するようにインシュバレル部が加締められるため、インシュバレル部近傍の外径を小さくすることができる。
【0014】
特に、第3の態様に係る端子付電線によると、インシュバレル部が、アルミ電線に置き換えられた銅電線が挿通される端子収容室に、アルミ電線が挿通可能となるまで加締められるため、従来の銅電線用のコネクタにアルミ電線を挿入することができる。
【0015】
第4の態様に係る電線モジュールによると、インシュバレル部とワイヤーバレル部との間に位置する絶縁被覆部がインシュバレル部よりも径方向外側に突出しないように切除されている端子付電線を備えるため、端子挿入時にインシュバレル部とワイヤーバレル部との間に位置し、インシュバレル部よりも径方向外側に突出する絶縁被覆部が端子収容室の内周縁部に引っ掛かることを抑えることができる。
【0016】
第5の態様に係る端子付電線の製造法によると、インシュバレル部とワイヤーバレル部との間にある絶縁被覆部のうちインシュバレル部よりも外側に突出する部分を切除する工程を備えるため、インシュバレル部とワイヤーバレル部との間に位置し、インシュバレル部よりも外側に突出する絶縁被覆部が端子収容室の内周縁部に引っ掛かることを抑えることができる。これにより、銅電線用に製造されたコネクタハウジング等の端子収容室にアルミ電線の端子を挿入しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る電線モジュールを示す部分分解斜視図である。
図2】実施形態に係る端子付電線を示す平面図である。
図3】実施形態に係る端子付電線を示す正面図である。
図4】実施形態に係る端子付電線の一製造工程を説明する説明図である。
図5】実施形態に係る端子付電線の一製造工程を説明する説明図である。
図6】実施形態に係る端子付電線の一製造工程を説明する説明図である。
図7】端子収容室に挿入される端子付電線を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係る電線モジュール10及び端子付電線12について説明する。図1は、実施形態に係る電線モジュール10を示す部分分解斜視図である。図2は、実施形態に係る端子付電線12を示す平面図である。図3は、実施形態に係る端子付電線12を示す正面図である。
【0019】
実施形態に係る電線モジュール10は、少なくとも1本(ここでは、3本)の端子付電線12と、コネクタハウジング40とを備える。電線モジュール10は、車両に配設され、複数の電気機器を電気的に接続する部材である。
【0020】
端子付電線12は、アルミ電線14と、圧着端子20とを備える。アルミ電線14の端部に圧着端子20が圧着されている。
【0021】
アルミ電線14は、導体芯線16と絶縁被覆部18とを含む。絶縁被覆部18は、アルミ電線14の周囲に形成されている。
【0022】
導体芯線16は、アルミニウム又はアルミニウム合金を材料として形成されている。導体芯線16は、導電性を有する線状の部材である。導体芯線16は、ここでは、導体芯線16が複数の素線が束ねられることによって構成されているが、一本の素線で構成されていてもよい。また、複数の素線で構成されている場合、導体芯線16は複数の素線が撚られた撚り線であってもよい。
【0023】
絶縁被覆部18は、導体芯線16の周囲を覆う態様で絶縁材料により形成されている。ここでは、導体芯線16の端部が露出するように導体芯線16の中間部分の周囲を覆っている。
【0024】
このようなアルミ電線14は、例えば、長手方向に引っ張られる導体芯線16の周囲に熱可塑性樹脂の絶縁材料を順次押し出すことで形成することができる。また、導体芯線16の端部を露出させるためには、アルミ電線14の端部の絶縁被覆部18を剥がす等により取り去ってやればよい。
【0025】
圧着端子20は、ワイヤーバレル部26とインシュバレル部30とを含む。ここでは、圧着端子20は、一方側端部から他方側端部にかけて接続部22、第1連結部24、ワイヤーバレル部26、第2連結部28、インシュバレル部30の順でつながるように導電性を有する材料により一体成型されている。
【0026】
接続部22は、相手側の端子と接触し、圧着端子20と相手側の端子とを電気的に接続する部分である。ここでは、圧着端子20がコネクタハウジング40等の端子収容室46に挿入された際に、相手側の端子と接触し、圧着端子20と相手側の端子とを電気的に接続する部分である。
【0027】
ワイヤーバレル部26は、アルミ電線14の先端部分の導体芯線16が露出部分している部分に加締められ、圧着端子20とアルミ電線14とを電気的に接続する部分である。
【0028】
インシュバレル部30は、アルミ電線14のうち、絶縁被覆部18の端縁部よりも中央側の周囲に加締められる部分である。インシュバレル部30は、アルミ電線14の端部に圧着された圧着端子20がアルミ電線14から脱落しないように、アルミ電線14に圧着端子20をより強固に固定する部分である。
【0029】
第1連結部24は、接続部22とワイヤーバレル部26とをつなぐ部分であり、第2連結部28は、ワイヤーバレル部26とインシュバレル部30とをつなぐ部分である。
【0030】
具体的には、接続部22の一方側端縁部からインシュバレル部30にかけて、圧着端子20には、底部32と、底部32に立設するように形成された一対の対向する側壁部34とが設けられている。そして、ワイヤーバレル部26及びインシュバレル部30とには、一対の側壁部34からそれぞれの側壁部34の立設方向にさらに突出する一対の加締部26a、30aが設けられている。そして、この加締部26a、30aを底部32側に向けて倒すようにすることで加締部26a、30aがアルミ電線14に加締められる。
【0031】
より具体的には、ワイヤーバレル部26の加締部26aが底部32に向けて倒される際に、加締部26aが導体芯線16を巻き込みつつ底部32に向けて倒れる。そして、加締部26aの加締め作業が終了した状態で、加締部26aと側壁部34と底部32とで導体芯線16が挟持され、導体芯線16が長手方向に位置ずれしにくくなる。また、導体芯線16が加締部26aと側壁部34と底部32とに密着することにより、圧着端子20とアルミ電線14とが電気的に接続される。
【0032】
また、インシュバレル部30の加締部30aが底部32に向けて倒される際に、加締部30aが絶縁被覆部18を巻き込みつつ底部32に向けて倒れる。そして、加締部30aの加締め作業が終了した状態で、加締部30aが絶縁被覆部18を底部32に向けて押さえつけることで、加締部30aと側壁部34と底部32とで絶縁被覆部18が挟持される。これにより、圧着端子20のアルミ電線14に対する、長手方向への位置ずれ及び周方向への回転が抑えられ、圧着端子20がアルミ電線14により強固に固定される。
【0033】
なお、圧着端子20を構成する材料は、アルミ電線14の導体芯線16を構成する材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。圧着端子20を構成する材料に、アルミ電線14の導体芯線16を構成する材料とは異なる材料(例えば、銅又は銅合金など)が用いられている場合、導体芯線16と圧着端子20とが接触している部分に電解水等が付着すると、導体芯線16と圧着端子20間で腐食が発生する恐れがある。この腐食の発生を抑えるため、圧着端子20の圧着後に導体芯線16と圧着端子20とが接触している部分(導体芯線16が露出している部分)には、絶縁材料による保護層が設けられることが好ましい。
【0034】
コネクタハウジング40には、複数の端子収容室46が形成されている。それぞれの端子収容室46に端子付電線12の端部に圧着された圧着端子20が挿入される。
【0035】
具体的には、コネクタハウジング40は、例えば樹脂材を使用して成形される非導電性の部材である。コネクタハウジング40は、その外周部分を構成する枠体42と、枠体42の内側に配置され、複数の端子収容室46を形成する端子収容室形成体44とを備える。端子収容室形成体44は、枠体42内の空間を複数の端子収容室46に区分する隔壁をなしている。端子収容室形成体44と枠体42とは、一体的に成型されていてもよいし、別体とされてもよい。端子収容室46は、端子付電線12における端子が挿入される空間を構成している。
【0036】
端子収容室46の内壁部には、端子付電線12の圧着端子20を係止固定するための係止部(図示なし)が設けられる。この係止部に各端子収容室46に収容された端子付電線12における圧着端子20の一部(例えば接続部22の後端部)が引っ掛かることによって、端子付電線12の後抜けが抑制される。もちろん、その他の機構によって、端子付電線12の後抜けを抑制することも可能である。
【0037】
ここでは、コネクタハウジング40は、アルミ電線14と同等の電気抵抗率を有する銅電線用に製造されたものをそのまま用いている。そのため、銅電線で構成された端子付電線であれば、所定の端子収容室46に容易に挿入することができる。しかしながら、ここでは、端子付電線12において、銅電線の代わりにアルミ電線14が用いられており、アルミ電線14の導電率が銅電線よりも低い。このため、アルミ電線14の導体芯線16の径がアルミ電線14と同等の電気抵抗率を有する銅電線の導体芯線の径よりも大きくなっている。このことと、絶縁被覆部の厚みが同等であることにより、アルミ電線14の径は上記銅電線の径よりも大きくなっている。これにより、アルミ電線14を備える端子付電線12をもともと銅電線用に形成された端子収容室46に挿入することが難しくなっている。
【0038】
端子付電線12を銅電線用に形成された端子収容室46に容易に挿入できるようにするため、絶縁被覆部18のうちインシュバレル部30とワイヤーバレル部26との間に位置する部分が、インシュバレル部30よりも径方向外側に突出しないように切除されている。
【0039】
また、絶縁被覆部18に対するインシュバレル部30の加締め量が、絶縁被覆部18のうちインシュバレル部30とワイヤーバレル部26との間にある部分がインシュバレル部30よりも径方向外側に突出する程度に設定されている。
【0040】
具体的には、第2連結部28の位置に位置する絶縁被覆部18の端縁部のうち、インシュバレル部30が加締められることによって、インシュバレル部30よりも径方向外側に突出した部分がカッター50等の切断手段により切除されている。
【0041】
さらに、インシュバレル部30は、端子収容室46に挿通可能となるまで加締められている。
【0042】
なお、ここでは、一部の端子収容室46のみに端子付電線12の端部に圧着された圧着端子20が挿入されているが、すべての端子収容室46に端子付電線12の端部に圧着された圧着端子20が挿入されていてもよい。
【0043】
<製造方法>
次に、実施形態に係る電線モジュール10及び端子付電線12の製造方法について説明する。図4図6は、それぞれ、実施形態に係る端子付電線12の一製造工程を説明する説明図である。
【0044】
端子付電線12を製造するには、まず圧着端子20とアルミ電線14を用意する。圧着端子20は、複数の圧着端子20が連なる連続端子から連なったまま又は切り分けられて、一つ分ずつ端子圧着装置60に送られる。連続端子から連なったまま送られた場合は、圧着と同時に切り分けられるとよい。また、アルミ電線14は、リールに巻かれた長尺状の状態から所定長に切断されるとともに、端部の絶縁被覆部18がワイヤーバレル部26と第2連結部28との長さ寸法分程度剥がされ、端部において導体芯線16が露出した状態で端子圧着装置60に送られる。
【0045】
端子圧着装置60としては、例えば、対向する上型62と下型66とを備え、上型62と下型66との間にワイヤーバレル部26及びインシュバレル部30を挟み込みつつ、その間隔を狭めていくことで、ワイヤーバレル部26及びインシュバレル部30を加締めることができるものを採用することができる。上型62としては、例えば、以下のような構成を採用することができる。即ち、上型62はワイヤーバレル用上型63とインシュバレル用上型64とを含む。上型62のうち下型66の側を向く面は、奥部が先端側に向けて凹となる弧状周面を横並びにした形状に形成されると共に、先端側の対向する両内側面が先端側に向けて順次広がるテーパー形状に形成されている。
【0046】
そして、図4のように、圧着端子20のワイヤーバレル部26に導体芯線16が露出している部分が位置するとともに、インシュバレル部30に絶縁被覆部18の端縁部よりも中央側の部分が位置するように圧着端子20の底部32上にアルミ電線14を配設する。換言すると、第1連結部24に導体芯線16の端縁部が位置するとともに、第2連結部28に絶縁被覆部18の端縁部が位置するように圧着端子20とアルミ電線14とを配設する。
【0047】
この際に、ワイヤーバレル部26がワイヤーバレル用上型63と下型66との間に位置すると共に、インシュバレル部30がインシュバレル用上型64と下型66との間に位置するようにアルミ電線14と圧着端子20とを配設する。
【0048】
次に、図5のように、ワイヤーバレル部26及びインシュバレル部30を加締めていく。具体的には、固定された下型66に加締部26a、30aの端部が上を向くように圧着端子20を載せた状態で上型62を接近させていく。この際に、加締部26a、30aが、この上型62の内面に沿って底部32に向けて倒れていく。このように、ワイヤーバレル部26及びインシュバレル部30の加締部26a、30aが徐々に底部32に向かって倒れていくことにより、ワイヤーバレル部26及びインシュバレル部30が、それぞれ導体芯線16及び絶縁被覆部18を押圧することで、加締められていく。そして、加締部26a、30aの自由端側端部が圧着端子20の幅方向中央に位置するとともにその中間部分が弧状となる。図5では、インシュバレル部30は、絶縁被覆部18の径が小さくならない程度に加締められている。
【0049】
ここから、さらに図6のように、インシュバレル部30を加締めていく。具体的には、インシュバレル用上型64をさらに下型に向けて近づけていく。この際に、ここでは、インシュバレル部30の幅寸法及び高さ寸法が、このアルミ電線14の端子が挿入される端子収容室46、つまり、もともと銅電線用に形成された端子収容室46の幅寸法及び高さ寸法と同じかそれよりも小さく(ここでは、若干小さく)なるまで、インシュバレル部30を加締めていく。換言すると、インシュバレル部30の幅寸法及び高さ寸法が、このアルミ電線14と同等の電気抵抗率を有する銅電線のインシュバレル部の幅寸法及び高さ寸法と同程度になるまで、アルミ電線14のインシュバレル部30を加締めていく。これにより、第2連結部28に位置する絶縁被覆部18の端縁部が、インシュバレル部30よりも外側に突出する。
【0050】
より具体的には、インシュバレル部30の幅寸法及び高さ寸法が、このアルミ電線14の端子が挿入される端子収容室46の幅寸法及び高さ寸法となるまで、凸状部材と凹状部材とを接近させる。この際に、アルミ電線14のうちインシュバレル部30に加締められている部分の導体芯線16間の隙間が小さくなるとともにこの部分の絶縁被覆部18が圧縮されることにより、この部分のアルミ電線14の径が小さくなる。これにより、インシュバレル部30近傍の絶縁被覆部18がインシュバレル部30の方向に引っ張られる。そしてこの引っ張り応力が絶縁被覆部18の端縁部に作用することにより、絶縁被覆部18の端縁部が径方向外側に向けて広がり、インシュバレル部30よりも外側に突出する。
【0051】
そして、絶縁被覆部18の端部のうちインシュバレル部30よりも径方向外側に突出する部分をカッター50等の切断手段により切除することで、端子付電線12が完成する。
【0052】
後は、図7のように、製造された端子付電線12をコネクタハウジング40の端子収容室に挿入していけば、電線モジュール10が完成する。
【0053】
このような電線モジュール10及び端子付電線12によると、例えば、加締め前において、図7の仮想線で示された端子付電線112のように、アルミ電線14の端子の幅寸法及び高さ寸法が端子収容室46よりも大きく挿入が難しいものを、端子収容室46の幅寸法及び高さ寸法と同じかそれよりも小さく(ここでは、若干小さく)なるまでインシュバレル部30を加締めることによって、圧着端子20を端子収容室46の所定の位置まで挿入することが容易となる。
【0054】
また、絶縁被覆部18の端部のうちインシュバレル部30よりも径方向外側に突出する部分がカッター50等の切断手段により切除されているので、挿入時に、絶縁被覆部18の端部が端子収容室46の内周縁部に引っ掛かりにくい。これによっても、圧着端子20を端子収容室46の所定の位置まで容易に挿入できる。
【0055】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0056】
10 電線モジュール
12 端子付電線
14 アルミ電線
16 導体芯線
18 絶縁被覆部
20 圧着端子
26 ワイヤーバレル部
30 インシュバレル部
40 コネクタハウジング
46 端子収容室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7