【解決手段】ワイヤーハーネス1は、本線部91と複数の支線部92とを有する電線束90と、第一縁10およびその反対側の第二縁20の各々からの一部が重なった状態で本線部91の一部を囲む筒状に形成され、第一切れ込み11および第二切れ込み21が長手方向における異なる位置に形成された保護部材5と、を備える。そして、支線部92各々は、第一切れ込み11の最深部と第二縁20との間の部分である第一開口13および第二切れ込み21の最深部と第一縁10との間の部分である第二開口23の各々を貫通している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ワイヤーハーネスの電線束において、複数の支線部の分岐方向が異なること、即ち、複数の支線部が本線部を中心とする周方向における異なる位置から延び出た状態で配線されることが多い。例えば、一部の支線部が本線部の一の側方へ向けて配線され、他の支線部が反対側の側方へ向けて配線される場合がある。
【0009】
複数の支線部の分岐方向が異なる場合、切れ目が形成されたコルゲートチューブが、分岐方向が異なる支線部ごとに必要となる。この場合、ワイヤーハーネスを構成する部品点数が増大する。
【0010】
さらに、全長に亘る切れ目が形成されたコルゲートチューブが採用される場合、コルゲートチューブにおけるその全長に亘る範囲に密に粘着テープを巻き付けることが必要となる。電線束の本線部がコルゲートチューブからはみ出すことを防ぐためである。しかしながら、そのようなテープ巻き作業のように煩雑な作業の工数を軽減することが望ましい。
【0011】
本発明は、本線部からの分岐方向が異なる複数の支線部を有する電線束の保護に適した保護部材を備えるワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1態様に係るワイヤーハーネスは、電線束と保護部材とを備える。上記電線束は、本線部と複数の支線部とを有する。上記本線部は、複数の電線を含む。複数の上記支線部は、それぞれ電線を含み、上記本線部におけるそれぞれ異なる位置から分岐している。上記保護部材は、第一縁およびその反対側の第二縁の各々からの一部が重なった状態で上記電線束における上記本線部の一部を囲む筒状に形成される。上記保護部材においては、上記第一縁および上記第二縁が対向して離隔する状態まで弾性変形可能である。そして、上記保護部材には、上記第一縁から周方向における第一位置まで延びる第一切れ込みおよび上記第二縁から周方向における第二位置まで延びる第二切れ込みが長手方向における異なる位置に形成されている。そして、上記電線束の上記支線部各々は、上記保護部材の上記第一切れ込みにおけるその最深部と上記第二縁との間の部分である上記第一位置寄りの第一開口および上記保護部材の上記第二切れ込みにおけるその最深部と上記第一縁との間の部分である上記第二位置寄りの第二開口の各々を貫通している。
【0013】
第2態様に係るワイヤーハーネスは、第1態様に係るワイヤーハーネスの一態様である。第2態様に係るワイヤーハーネスにおいては、上記保護部材の上記第一開口および上記第二開口は、上記保護部材における相互に反対の側方に形成されている。
【0014】
第3態様に係るワイヤーハーネスは、第1態様又は第2態様に係るワイヤーハーネスの一態様である。第3態様に係るワイヤーハーネスにおいては、上記保護部材は、自然状態において上記第一切れ込みおよび上記第二切れ込み各々の全体がそれに重なった部分によって塞がった状態に形成されている。
【0015】
第4態様に係るワイヤーハーネスは、第1態様から第3態様のいずれかに係るワイヤーハーネスの一態様である。第4態様に係るワイヤーハーネスにおいては、上記保護部材には、複数の上記第一切れ込みと複数の上記第二切れ込みとが間隔を空けて並んで形成されている。そして、複数の上記支線部は、一部の上記第一切れ込みにおける上記第一開口および一部の上記第二切れ込みにおける上記第二開口を貫通している。
【0016】
第5態様に係るワイヤーハーネスは、第1態様から第4態様のいずれかに係るワイヤーハーネスの一態様である。第5態様に係るワイヤーハーネスにおいては、上記保護部材は、径の異なる小径部と大径部とが長手方向において交互に連なった蛇腹構造を有する。これにより上記保護部材は、長手方向において曲げ変形可能な部材である。
【0017】
第6態様に係るワイヤーハーネスは、第1態様から第5態様のいずれかに係るワイヤーハーネスの一態様である。第6態様に係るワイヤーハーネスにおいては、上記保護部材には、さらに、第三切れ込みと第四切れ込みとが形成されている。上記第三切れ込みは、上記第一縁から周方向における上記第一位置よりも上記第一縁に近い第三位置まで延びている。上記第四切れ込みは、上記第二縁から周方向における上記第二位置よりも上記第二縁に近い第四位置まで延びている。上記第三切れ込みおよび上記第四切れ込みは、長手方向において重なる位置に形成されている。そして、上記電線束の複数の上記支線部の一部が、さらに上記第三切れ込みにおけるその最深部と上記第四切れ込みにおけるその最深部との間の部分である第三開口を貫通している。
【発明の効果】
【0018】
上記の各態様において、1つの保護部材に形成された第一開口および第二開口は、それぞれ保護部材の周方向における異なる位置に形成されている。従って、複数の支線部を本線部から異なる2方向へ向けて分岐させたい場合であっても、各分岐部を1つの保護部材により保護することが可能となる。これにより、ワイヤーハーネスを構成する部品点数が増大することを防止できる。
【0019】
また、保護部材に保護部材の全長に亘る切れ目が形成されている場合、電線束の本線部は保護部材の切れ目の間の部分からはみ出しやすい。しかしながら、上記の各態様においては、本線部を囲む保護部材の第一縁および第二縁の各々からの一部が重なっているため、電線束における本線部がはみ出す恐れのある切れ目は保護部材に形成されない。なお、保護部材をその第一縁および第二縁が対向して離隔する状態(縦割れの状態)まで一時的に弾性変形させることにより、本線部における分岐部を含む部分を第一縁および第二縁の間から保護部材内へ挿入することが可能である。
【0020】
従って、上記の各態様においては、全長に亘る切れ目が形成されたコルゲートチューブ等の保護部材に比べ、電線束の本線部が保護部材からはみ出しにくい。この場合、保護部材の全長に亘る範囲に密に粘着テープが巻き付けられる必要がなく、保護部材に巻き付けられる粘着テープの量を削減することもできる。また、テープ巻き作業のような煩雑な作業の工数を軽減することもできる。
【0021】
以上に示されることから、上記の各態様においては、本線部からの分岐方向が異なる複数の支線部を有する電線束の保護に適した保護部材を備えるワイヤーハーネスを提供することができる。
【0022】
ところで、分岐部を有する電線束を備えるワイヤーハーネスにおいては、複数の支線部が一の平面に沿って本線部からその両側方へ分岐する場合が多い。
【0023】
上記の第2態様においては、保護部材の第一開口および第二開口が、保護部材における相互に反対の側方に形成されている。このワイヤーハーネスは、上記のような場合に好適である。即ち、第2態様にかかるワイヤーハーネスは、採用されることが多い態様の分岐構造を有するワイヤーハーネスにおける本線部と支線部との分岐部の保護に有効である。
【0024】
また、上記の第3態様においては、保護部材が、第一開口および第二開口が塞がれた状態である自然状態を維持しようする。これにより、保護部材における第一開口および第二開口は、第一開口および第二開口各々から引き出される支線部の太さに相当する幅の開口となる。この場合、保護部材における支線部が貫通した第一開口および第二開口の大きさを最小限にすることができる。
【0025】
また、上記の第4態様においては、保護部材には、複数の第一切れ込みと複数の第二切れ込みとが間隔を空けて並んで形成されている。そして、支線部が、一部の第一切れ込みにおける第一開口および一部の第二切れ込みにおける第二開口を貫通している。即ち、第4態様においては、複数形成された第一切れ込みおよび第二切れ込み各々の位置の中から支線部の分岐位置を任意に選択することができる。従って、第4態様におけるワイヤーハーネスが有する保護部材は、汎用性に優れる。
【0026】
また、上記の第5態様においては、保護部材は、径の異なる小径部と大径部とが長手方向において交互に連なった蛇腹構造を有する。この場合、保護部材は、長手方向において曲げ変形可能である。従って、曲がった経路に電線束における本線部が配線される必要がある場合に対しても、本発明のワイヤーハーネスが適用可能となる。
【0027】
また、上記の第6態様においては、保護部材には、周方向において第一開口および第二開口と異なる位置に形成された第三開口が形成されている。この場合、複数の支線部が本線部から少なくとも3方向へ向けて分岐したワイヤーハーネスを形成することができる。さらに、切れ込みの深さが異なる複数種類の第三切れ込みおよび第四切れ込みが保護部材に形成されていれば、複数の支線部が本線部から4つ以上の方向へ向けて分岐したワイヤーハーネスを形成することもできる。このワイヤーハーネスは、周方向において3つ以上の異なる方向へ支線部を分岐させたい場合に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される各実施形態および応用例は、分岐構造を有するワイヤーハーネスの分岐部の保護に関する。
【0030】
<第1実施形態>
図1〜4を参照しつつ、第1実施形態に係るワイヤーハーネス1について説明する。ワイヤーハーネス1は、自動車等の車両に搭載される。ワイヤーハーネス1は、電線束90と保護部材5とを備える。
【0031】
図1は、ワイヤーハーネス1の主要部の平面図である。
図2は、ワイヤーハーネス1の主要部の斜視図である。
図3は、
図1のII−II平面における保護部材5の断面図である。
図4は、
図1のIII−III平面における保護部材5の断面図である。
【0032】
<電線束>
電線束90は、複数本の電線9を含む本線部91とそれぞれ電線9を含む複数の支線部92とを有する。複数の支線部92は、本線部91におけるそれぞれ異なる位置から分岐している。
図1,2が示す例においては、電線束90における本線部91は、直線の経路に沿って配線されている。
【0033】
図1,2に示される例においては、2つの支線部92が、それぞれ本線部91の経路方向(長手方向)において異なる二箇所から分岐している。2つの支線部92は、相互に本線部91から反対の方向へ分岐している。
【0034】
また、
図1,2に示される例において、支線部92は3本の電線9を含んでいる。なお、支線部92が1本の電線9を含む場合、2本の電線9を含む場合又は4本以上の電線9を含む場合も考えられる。
【0035】
電線束90を構成する電線9は、例えば、銅又はアルミニウムなどを主成分とする導体と、その導体の周囲を覆う絶縁被覆と、を有する絶縁電線である。
【0036】
<保護部材>
図1〜4に示されるように、保護部材5は、第一縁10およびその反対側の第二縁20の各々からの一部が重なった状態で筒状に形成された部材である。以下の説明において、保護部材5における相互に重なった部分である第一縁10からの一部および第二縁20からの一部を二重部分と称する。
【0037】
保護部材5には、第一切れ込み11および第二切れ込み21が、保護部材5の長手方向おける異なる位置に形成されている。本実施形態においては、さらに、保護部材5には、第一切れ込み11および第二切れ込み21が複数形成されている。保護部材5における複数の第一切れ込み11および第二切れ込み21は、それぞれ間隔を空けて並んで形成されている。
【0038】
図3に示されるように、第一切れ込み11は、第一縁10から保護部材5の周方向における第一位置11Pまで延びて形成された切れ込みである。また、
図4に示されるように、第二切れ込み21は、第二縁20から保護部材5の周方向における第二位置21Pまで延びて形成された切れ込みである。
【0039】
換言すれば、第一位置11Pは、第一切れ込み11の最深部110の位置であり、第二位置21Pは第二切れ込み21の最深部210の位置である。第一位置11Pおよび第二位置21Pは、支線部92の分岐方向に応じて任意に定められる位置である。
【0040】
本実施形態においては、第一切れ込み11における周方向の長さと第二切れ込み21における周方向の長さとが、概ね一致している。即ち、本実施形態は、第一切れ込み11および第二切れ込み21は、保護部材5の中心線(筒の中心線)を基準として、同じ中心角を成す範囲に形成されている。
【0041】
また、
図1,2に示される例は、保護部材5にそれぞれ複数の第一切れ込み11および第二切れ込み21が、保護部材5の長手方向(軸心方向)において等間隔で並んで形成されている場合の例である。
【0042】
また、
図1,2に示される例においては、保護部材5における複数の第一切れ込み11および第二切れ込み21が、保護部材5の長手方向において交互に形成されている。しかしながら、保護部材5における第一切れ込み11および第二切れ込み21が、保護部材5の長手方向において交互ではない順序で形成されている場合も考えられる。
【0043】
例えば、保護部材5の長手方向において連続に並んだ複数の第一切れ込み11からなる第一切れ込み群と連続に並んだ複数の第二切れ込み21からなる第二切れ込み群とが交互に並んで形成されている場合が考えられる。また、第一切れ込み11および第二切れ込み21が保護部材5の長手方向において不規則に並んで形成されている場合等も考えられる。
【0044】
筒状に形成された保護部材5においては、第一切れ込み11におけるその最深部110と第二縁20との間の部分に、電線束90における複数の支線部92の一部が貫通可能な第一開口13が形成されている。また、第二切れ込み21におけるその最深部210と第一縁10との間の部分には、電線束90における複数の支線部92の一部が貫通可能な第二開口23が形成されている。
【0045】
第一開口13は、保護部材5における第一位置11P寄りの部分、即ち、第一切れ込み11の最深部110寄りの部分、に形成された開口である。第二開口23は、保護部材5における第二位置21P寄りの部分、即ち、第二切れ込み21の最深部210寄りの部分、に形成された開口である。
図1〜4に示されるように、第一開口13および第二開口23は、保護部材5の周方向においてそれぞれ異なる位置に形成されている。
【0046】
また、本実施形態において、保護部材5の第一開口13および第二開口23は、保護部材5における相互に反対の側方に形成されている。このような構造を有する保護部材5においては、例えば、第一縁10から第一切れ込み11の最深部110までに亘る部分が、保護部材5の中心線を基準として、概ね180度の中心角を成す範囲に形成されている。
【0047】
保護部材5は、第一縁10および第二縁20が対向して離隔する状態まで弾性変形可能である。
【0048】
本実施形態における保護部材5は、自然状態において、既に第一開口13および第二開口23が形成されている。即ち、自然状態の保護部材5において、第一縁10からの一部が、第二切れ込み21における最深部210からの一部を除く残りの部分を塞いでいる。また、第二縁20からの一部が、第一切れ込み11における最深部110からの一部を除く残りの部分を塞いでいる。そして、保護部材5は、その中空部を広げる方向に外力が加えられたときには、弾性変形する部材である。なお、自然状態とは、保護部材5に対して、外力が加えられていない状態である。
【0049】
保護部材5は、例えば、合成樹脂製の部材である。なお、保護部材5が、軟質の金属製の部材等であることも考えられなくはない。
【0050】
<ワイヤーハーネス>
ワイヤーハーネス1は、電線束90と保護部材5とを備える。保護部材5は、電線束90の本線部91の経路方向に沿う筒状に形成されている。
【0051】
本実施形態におけるワイヤーハーネス1においては、本線部91から分岐した複数の支線部92各々が、一部の第一切れ込み11における第一開口13および一部の第二切れ込み21における第二開口23を貫通している。
【0052】
図1,2に示される例では、2つの支線部92各々が、それぞれ3つの第一開口13および第二開口23から選択された一の開口を貫通している。
【0053】
本線部91は、第一縁10および第二縁20が対向して離隔した状態の保護部材5の内部に挿入される。さらに、支線部92各々の根元部分が、保護部材5の第一切れ込み11および第二切れ込み21に挿入される。これにより、支線部92各々が、第一切れ込み11および第二切れ込み21各々から延び出た状態となる。その後、保護部材5に加えられていた第一縁10および第二縁20を離隔させていた外力が除去されることにより、ワイヤーハーネス1が得られる。
【0054】
以上の手順を経ることにより、第一縁10およびその反対側の第二縁20の各々からの一部が重なった状態で筒状に形成された保護部材5が、本線部91と支線部92との分岐部を含む領域の本線部91にその周囲を囲む状態で装着される。
【0055】
また、
図1,2に示されるように、本線部91に装着された保護部材5の端部およびそこから延び出た本線部91に粘着テープ7が巻かれていてもよい。この場合、本線部91に対する保護部材5の位置ズレが抑制される。なお、粘着テープ7が、保護部材5の端部以外の部分に巻き付けられている場合も考えられる。また、粘着テープ7が、支線部92が引き出されていない第一開口13又は第二開口23を塞ぐように保護部材5に巻き付けられている場合も考えられる。
【0056】
<効果>
本実施形態においては、複数の支線部92を本線部91から異なる2方向へ向けて分岐させたい場合であっても、各分岐部を1つの保護部材5により保護することが可能となる。これにより、ワイヤーハーネス1を構成する部品点数が増大することを防止できる。
【0057】
また、従来のように、保護部材に保護部材の全長に亘る切れ目が形成されている場合、電線束の本線部は保護部材の切れ目の間の部分からはみ出しやすい。
【0058】
しかしながら、本実施形態においては、本線部91を囲む保護部材5の第一縁10および第二縁20の各々からの一部が重なっているため、電線束90における本線部91がはみ出す恐れのある切れ目は保護部材5に形成されない。なお、保護部材5をその第一縁10および第二縁20が対向して離隔する状態(縦割れの状態)まで一時的に弾性変形させることにより、本線部91における分岐部を含む部分を第一縁10および第二縁20の間から保護部材5内へ挿入することが可能である。
【0059】
従って、本実施形態においては、全長に亘る切れ目が形成されたコルゲートチューブ等の保護部材に比べ、電線束90の本線部91が保護部材5からはみ出しにくい。この場合、保護部材5の全長に亘る範囲に密に粘着テープ7が巻き付けられる必要がなく、保護部材5に巻き付けられる粘着テープ7の量を削減することもできる。また、テープ巻き作業のような煩雑な作業の工数を軽減することもできる。
【0060】
以上に示されることから、本実施形態においては、本線部91からの分岐方向が異なる複数の支線部92を有する電線束90の保護に適した保護部材5を備えるワイヤーハーネス1を提供することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、保護部材5の第一開口13および第二開口23が、保護部材5における相互に反対の側方に形成されている。このワイヤーハーネス1は、複数の支線部92が一の平面に沿って本線部91から分岐する場合に好適である。即ち、ワイヤーハーネス1は、採用されることが多い態様の分岐構造を有する電線束90における本線部91と支線部92との分岐部の保護に有効である。
【0062】
また、本実施形態においては、保護部材5には、複数の第一切れ込み11と複数の第二切れ込み21とが間隔を空けて並んで形成されている。そして、支線部92が、一部の第一切れ込み11における第一開口13および一部の第二切れ込み21における第二開口23を貫通している。本実施形態においては、複数形成された第一切れ込み11および第二切れ込み21各々の位置の中から支線部92の分岐位置を任意に選択することができる。従って、ワイヤーハーネス1が有する保護部材5は、汎用性に優れる。
【0063】
<応用例>
次に、
図5,6を参照しつつ、ワイヤーハーネス1に適用可能な応用例に係る保護部材5Aについて説明する。
図5は、保護部材5Aの第一態様を示す概略斜視図である。
図6は、保護部材5Aの第二態様を示す概略斜視図である。
【0064】
図5,6において、
図1〜4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、保護部材5Aにおける保護部材5と異なる点について説明する。
【0065】
保護部材5Aは、自然状態において第一切れ込み11および第二切れ込み12各々の全体がそれに重なった部分によって塞がった状態に形成されている。即ち、第一切れ込み11は、保護部材5Aにおける第二縁20からの一部分によって塞がれている。また、第二切れ込み12は、保護部材5Aにおける第一縁10からの一部分によって塞がれている。即ち、保護部材5Aにおいて、二重部分の周方向の幅が、第一切れ込み11および第二切れ込み21各々の深さ以上である。
【0066】
図5に示される例においては、保護部材5の周方向における第一縁10の位置が、第二位置21P(第二切れ込み21の最深部210Aの位置)と一致している。同様に、保護部材5の周方向における第二縁20の位置が、第一位置11P(第一切れ込み11の最深部110Aの位置)と一致している。
【0067】
従って、自然状態において、保護部材5Aには、支線部92が貫通可能な第一開口13および第二開口23が形成されない。
【0068】
図6は、保護部材5Aに対してその中空部を広げる方向に外力が加えられたことにより、第一開口13および第二開口23が形成された態様の保護部材5Aを示した概略斜視図である。第一開口13および第二開口23には、支線部92が通される。
【0069】
なお、
図6に示される状態の保護部材5Aに加わる外力が除去されると、保護部材5Aは、再び
図5に示されるような第一開口13および第二開口23が形成されていない自然状態に戻る。
【0070】
従って、支線部92が通された第一開口13および第二開口23においては、その開口が、支線部92の太さに相当する幅の開口となる。この場合、保護部材5Aにおける支線部92が貫通した第一開口13および第二開口23の大きさを最小限にすることができる。
【0071】
また、本実施形態においては、さらに、保護部材5Aにおける第一切れ込み11および第二切れ込み21各々の最深部110A,210Aには、湾曲面が形成されている。
【0072】
図5,6に示されるように、保護部材5Aにおける第一切れ込み11の最深部110Aには、角が形成されていない。即ち、第一切れ込み11の最深部110Aを形成する面が湾曲面である。この場合、第一開口13の内縁部に支線部92が接触することにより支線部92の電線9が受けるダメージを軽減することができる。保護部材5Aにおける第二切れ込み21においても同様である。
【0073】
また、本実施形態においては、保護部材5Aにおける第一縁10の一部には、湾曲縁10Aが形成されている。また、保護部材5Aにおける第二縁20の一部には、湾曲縁20Aが形成されている。
【0074】
図5に示される例において、湾曲縁10Aは、保護部材5Aの長手方向における第二切れ込み21と重なる。なお、湾曲縁10Aは、これと保護部材5Aの長手方向における位置が重なる第二切り込み21よりも浅く切り込んだ縁部であるともいえる。同様に、第二縁20の一部にも湾曲縁20Aが形成されている。湾曲縁20Aは、保護部材5Aの長手方向における第一切れ込み11と重なる。なお、湾曲縁20Aは、これと保護部材5Aの長手方向における位置が重なる第一切り込み11よりも浅く切り込んだ縁部であるともいえる。この場合、第一開口13の内縁部および第二開口23の内縁部に支線部92が接触することにより支線部92の電線9が受けるダメージを軽減することができる。
【0075】
<第2実施形態>
次に、
図7を参照しつつ、第2実施形態に係るワイヤーハーネス1Bについて説明する。
図7は、ワイヤーハーネス1Bの主要部の平面図である。本実施形態に係るワイヤーハーネス1Bは、他の実施形態に含まれる保護部材5,5Aと異なる保護部材5Bを含む。なお、
図7において、
図1〜6に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤーハーネス1Bにおける第1実施形態およびその応用例と異なる点について説明する。
【0076】
ワイヤーハーネス1Bに含まれる保護部材5Bは、径の異なる小径部51と大径部52とを有する。小径部51と大径部52とは、保護部材5Bの長手方向において交互に連なっている。即ち、保護部材5Bは、蛇腹構造を有する。この保護部材5Bは、保護部材5Bの長手方向において曲げ変形可能な部材である。
【0077】
本実施形態に係るワイヤーハーネス1Bは、曲がった経路に電線束90における本線部91が配線される必要がある場合に対して、有効である。
【0078】
また、電線束90の本線部91の部分に全長に切れ目が形成された既存のコルゲートチューブが装着されたワイヤーハーネスが曲がった経路に配線される際、コルゲートチューブに囲まれた本線部91は切れ目の間の部分からはみ出しやすい。そのため、コルゲートチューブの全長に亘る範囲に密に粘着テープ7が巻き付けられる必要がある。
【0079】
しかしながら、本実施形態においては、電線束90の本線部91が保護部材5Bからはみ出しにくい。保護部材5Bにおける第一縁10およびその反対側の第二縁20の各々からの一部が重なっているためである。
【0080】
従って、本実施形態においては、保護部材5Bの全長に亘る範囲に密に粘着テープが巻き付けられる必要がなく、保護部材5Bに巻き付けられる粘着テープの量をより多く削減することができる。また、テープ巻き作業のような煩雑な作業の工数をより軽減することもできる。
【0081】
<第3実施形態>
次に、
図8を参照しつつ、第3実施形態に係るワイヤーハーネス1Cについて説明する。
図8は、ワイヤーハーネス1Cの主要部の斜視図である。本実施形態に係るワイヤーハーネス1Cは、他の実施形態に含まれる保護部材5,5A,5Bと異なる保護部材5Cを含む。なお、
図8において、
図1〜7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤーハーネス1Cにおける第1実施形態、その応用例および第2実施形態と異なる点について説明する。
【0082】
ワイヤーハーネス1Cに含まれる保護部材5Cには、第三切れ込み31および第四切れ込み41がさらに形成されている。第三切れ込み31は、第一縁10から保護部材5Cの周方向における第一位置11Pよりも第一縁10に近い第三位置31Pまで延びた切れ込みである。第四切れ込み41は、第二縁20から保護部材5Cの周方向における第二位置21Pよりも第二縁20に近い第四位置41Pまで延びた切れ込みである。第三切れ込み31と第四切れ込み41は、保護部材5Cの長手方向において重なる位置に形成されている。
【0083】
ワイヤーハーネス1Cにおいては、電線束90の支線部92が、第三切れ込み31におけるその最深部310と第四切れ込み41におけるその最深部410との間の部分である第三開口343を貫通している。
図8に示される例においては、本線部91から3方向に分岐した3つの支線部92の一部が、第三開口343を貫通している。
【0084】
図8に示される例においては、保護部材5Cには、第一開口13、第三開口343および第二開口23が保護部材5Cの長手方向においてその順番で並んで形成されている。しかしながら、第一開口13、第三開口343および第二開口23の順番は、これに限らない。
【0085】
また、
図8に示される例においては、第一開口13、第三開口343および第二開口23が、保護部材5Cの外周面上において、中心角が90度を成す間隔で形成されている。即ち、第一開口13、第三開口343および第二開口23が、保護部材5Cの外周面上において、等間隔で形成されている。しかしながら、第一開口13、第三開口343および第二開口23が、保護部材5Cの外周面上において、等間隔で形成されていない場合も考えられる。
【0086】
本実施形態においては、電線束90における支線部92を、保護部材5Cにおけるそれぞれ周方向の異なる位置に形成された第一開口13、第二開口23および第三開口343から引き出すことができる。このワイヤーハーネス1Cは、周方向において3つ以上の異なる方向へ支線部92を分岐させたい場合に有効である。
【0087】
<その他の応用例>
保護部材5Aにおける湾曲縁10A,20Aが、保護部材5,5B,5Cに適用されていることも考えられる。また、保護部材5,5Bにおける第一切れ込み11および第二切れ込み21の最深部110.210に湾曲面が形成されていることも考えられる。また、保護部材5Cにおける第一切れ込み11、第二切れ込み21、第三切れ込み31および第四切れ込み41の最深部110,210,310,410に湾曲面が形成されていることも考えられる。
【0088】
また、保護部材5が、可撓性を有する部材である場合も考えられる。この場合も、保護部材5Bと同様、保護部材5の長手方向において曲げ可能である。
【0089】
なお、本発明に係るワイヤーハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態、その応用例およびその他の応用例を自由に組み合わせること、或いは各実施形態、その応用例およびその他の応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。