【実施例】
【0023】
(実施例1)
上記シールド電線1の実施例を、図を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、シールド電線1は、コア部2、シールド部3及びシールド固定部4を有している。コア部2は、導体21及び導体21の周囲に被覆された絶縁材22を有する1本の被覆電線20から構成されている。シールド部3は、コア部2の全周を覆うAl箔31を有している。シールド固定部4は、シールド部3の外周に巻回され、コア部2の長手方向に間隔をあけて複数配置されている。また、シールド部3は、隣り合うシールド固定部4の間に、
図2に示すように、Al箔31が少なくとも2重に重なってなる余長部5を有している。そして、余長部5は、コア部2を被覆した状態を維持しつつコア部2の長手方向に伸縮可能に構成されている。
【0024】
以下、本例のシールド電線1の詳細な構成を、作製手順と共に説明する。
【0025】
まず、帯状のAl箔31に、長手方向に一定の間隔をあけて山折りと谷折りとを交互に施し、
図3(a)に示すように蛇腹状の折り目311を形成した。なお、本例においては、隣り合う折り目311の間隔を10mmとした。
【0026】
次いで、Al箔31の長手方向とコア部2の長手方向とを揃えた状態で、Al箔31をコア部2の周方向に巻き付けた(
図3(a)、矢印100)。このとき、
図3(b)に示すように、コア部2とAl箔31との間には、蛇腹状の折り目311の存在に起因して、部分的に隙間312が形成された。その後、Al箔31をコア部2の径方向に押し縮めることにより、
図3(c)に示すように、多数のしわ314がAl箔31に形成された。そして、しわ314が形成された状態のAl箔31の表面に、一定間隔でシールド固定部4を設けることにより、シールド電線1を得た。なお、本例においては、コア部2を構成する被覆電線20として、直径5mmのものを用い、シールド固定部4として、PVCテープを用いた。
【0027】
図2に、シールド電線1における、長手方向に沿った断面の一例を示す。上述した方法により形成されたしわ314は、折り目が不規則な方向に伸びており、大部分の折り目の向きはコア部2の長手方向に対して直角または斜め方向であった。そのため、
図2に示すように、しわ314におけるAl箔31の重なり部分は、シールド電線1が屈曲した際に、コア部2の長手方向に伸縮することができる(矢印101)。それ故、しわ314を余長部5として機能させることができる。
【0028】
以上により得られたシールド電線1の屈曲性を評価するために、屈曲試験後のシールド性能の評価を行った。以下に、評価方法及び結果を示す。
【0029】
<屈曲試験>
シールド電線1を350mmの長さに切り出して試験片11とした。
図4に示すように、試験片11の一端を回動アーム61に固定し、他端におもり62をつるした状態で、試験片11の長手方向中間部を一対の円柱状部材63(63a、63b)で挟みこんだ。次いで、回動アーム61を回動させることにより、試験片11の一端側が鉛直方向に対して90°となるまで一方の円柱状部材63aに沿って試験片11を屈曲させた。その後、回動アーム61を逆方向に回動させ、試験片11の一端側が鉛直方向に対して90°となるまで他方の円柱状部材63bに沿って試験片11を屈曲させた後、回動アーム61を中立位置まで戻した。以上のサイクルを1回としてカウントし、所定のサイクル数に達するまで試験片11の屈曲を繰り返し行なった。なお、おもり62の荷重は1000gとし、屈曲動作の繰返し速度は1分間に30往復とした。
【0030】
<シールド性能評価>
図5に示すように、所定のサイクル数まで屈曲試験を行った試験片11をまっすぐに伸ばして配置し、その一端111をネットワークアナライザ7の出力端子71に接続すると共に、他端112を50Ωの終端抵抗72に接続した。また、試験片11と平行にノイズ誘導線73を配置し、その一端731をネットワークアナライザ7の入力端子74に接続した。なお、ノイズ誘導線73の他端732は開放とした。
【0031】
次いで、ネットワークアナライザ7から発生させた交流信号をノイズ誘導線73に入力し、交流信号の周波数を300kHz〜3GHzの間で掃引した。これにより、交流信号に由来する誘導ノイズを試験片11に発生させると共に、試験片11から出力端子71側に反射した反射信号の強度をネットワークアナライザ7により測定した。得られた反射信号の強度及びノイズ誘導線73に入力した交流信号の強度を用いて交流信号に対する反射信号の強度比を算出し、その値を誘導ノイズ量とした。
【0032】
また、シールド部3を設けず、コア部2のみからなる比較用電線を別途準備し、上記と同様の方法により比較用電線の誘導ノイズ量を算出した。そして、交流信号の周波数が10MHzであるときに得られた、試験片11の誘導ノイズ量と比較用電線の誘導ノイズ量との差を求め、これをノイズ低減量とした。
【0033】
表1に、屈曲試験前、50サイクル完了時及び500サイクル完了時におけるノイズ低減量を示す。なお、表1には、比較のため、余長部5を設けずに作製した従来のシールド電線の結果を示した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1より知られるように、余長部5を有するシールド電線1は、従来のシールド電線に比べて、屈曲を繰り返したときのノイズ低減量が低下しにくい。これは、余長部5の効果により、Al箔31に破断が生じにくくなった結果、屈曲を繰り返してもシールド性能が高い状態を維持できているためである。一方、従来のシールド電線は、屈曲試験によってAl箔31の破断が生じたため、シールド性能が低下し、ノイズ低減量が低下した。
【0036】
(実施例2)
本例は、Al箔31をらせん状に巻回したシールド部300を有するシールド電線12の例である。
図6に示すように、本例のシールド部300は、コア部2の表面に帯状のAl箔31をらせん状に巻回すことにより形成されている。また、
図7に示すように、Al箔31は、重なり部分315を有するように巻回されている。Al箔31の重なり部分315は、シールド電線12の屈曲に伴ってコア部2の長手方向に伸縮することができる(矢印102)。それ故、重なり部分315を余長部5として機能させることができる。その他は実施例1と同様である。なお、
図6及び
図7において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、実施例1と同様の構成要素等を示す。
【0037】
(実施例3)
本例は、余長部5となるひだ321を予め形成したAl箔32の例である。
図8に示すように、本例のAl箔32は、帯状を呈していると共に、長手方向に伸びた折り目322を有するひだ321が設けられている。本例のAl箔32は、例えば、コア部2にらせん状に巻回することにより、ひだ321を余長部5として機能させることができる。また、幅方向の端部323が重なるようにして巻回することにより、重なり部分を余長部5として機能させることができる。