(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-153553(P2015-153553A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/115 20060101AFI20150728BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
H01R13/115 A
H01R13/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-25179(P2014-25179)
(22)【出願日】2014年2月13日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椋野 潤一
(72)【発明者】
【氏名】高田 憲作
(72)【発明者】
【氏名】辻井 芳朋
(72)【発明者】
【氏名】宇野 雅文
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
(57)【要約】
【課題】誤って雌端子を落とした際に、一対の保護壁によって第1基端部を保護する。
【解決手段】雌端子10は、角筒状をなし、前端開口縁140において前方に開口する角筒部14と、前端開口縁140の一部から前方に突出して後方に折り返された第1基端部24と、第1基端部24の後端縁240から角筒部14の内方に延出された第1弾性片23と、前端開口縁140のうち第1基端部24を両側から囲む部分から前方に突出して設けられた一対の保護壁29と、を備えた構成としたから、誤って雌端子10を落とした際に、一対の保護壁29によって第1基端部24を保護することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角筒状をなし、前端開口縁において前方に開口する角筒部と、
前記前端開口縁の一部から前方に突出して後方に折り返された第1基端部と、
前記第1基端部の後端縁から前記角筒部の内方に延出された第1弾性片と、
前記前端開口縁のうち前記第1基端部を両側から囲む部分から前方に突出して設けられた一対の保護壁と、を備えた雌端子。
【請求項2】
前記一対の保護壁の前端は、前記第1基端部の前端よりも前方に位置している請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記前端開口縁のうち前記第1基端部と対向する部分から前方に突出して後方に折り返された第2基端部と、
前記第2基端部の後端縁から前記角筒部の内方に延出された第2弾性片と、を備えた請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記一対の保護壁の前端は、前記第2基端部の前端よりも前方に位置している請求項3に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄端子に接続される雌端子として、例えば特開2013−243016号公報(下記特許文献1)に記載の雌端子が知られている。この雌端子は、雄端子の雄タブが挿入される筒部を有している。この筒部は、前後方向に開口する略角筒部をなし、底壁と、底壁の両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁と、底壁に対向する天井壁とを備えて構成されている。底壁の前端縁には、第1基端部が前方に突出して形成されている。第1基端部は、底壁の前端縁から筒部の内方に折り返された形状をなしている。第1基端部の後端縁には、雄端子の挿入方向と交差する方向に間隔を空けて並ぶ複数の第1弾性片が筒部の内方に突出して形成されている。
【0003】
この雌端子では、第1基端部を筒部の前端開口縁から前方に突出させて形成しており、この第1基端部の後端縁に連なるように第1弾性片が形成されている。このようにして第1基端部および第1弾性片を形成すると、筒部の前端開口縁から後方に向けて底壁の一部を切り欠く必要がないため、底壁の強度低下を防止することができる。なお、底壁の一部を切り欠くことで第1基端部および第1弾性片を形成するものとして、例えば特開平4−147680号公報(下記特許文献2)に記載のコネクタ端子が挙げられる。
【0004】
ところが、底壁の一部を切り欠くものでは、雌端子の母材となる金属材として板厚が大きいものを使用した場合に、金属材を打ち抜く際の最小幅寸法が大きくなるため、底壁における切り欠きの幅寸法が大きくなり、第1基端部および第1弾性片の幅寸法が小さくなってしまう。特に、大電流用の雌端子では、雄端子との接触面積を増加させて接触抵抗を少しでも下げる必要があるところ、第1基端部および第1弾性片の幅寸法を少しでも大きくすることが望ましく、第1基端部を筒部の前端開口縁から前方に突出させて形成することの技術的意義はこの点にあるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−243016号公報
【特許文献2】特開平4−147580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1基端部を筒部の前端開口縁から前方に突出させて形成すると、第1基端部が筒部の外部に露出することになるため、誤って雌端子を落とした際に、第1基端部が地面に衝突して損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される雌端子は、角筒状をなし、前端開口縁において前方に開口する角筒部と、前記前端開口縁の一部から前方に突出して後方に折り返された第1基端部と、前記第1基端部の後端縁から前記角筒部の内方に延出された第1弾性片と、前記前端開口縁のうち前記第1基端部を両側から囲む部分から前方に突出して設けられた一対の保護壁と、を備えた構成とした。
このような構成によると、誤って雌端子を落とした際に、一対の保護壁によって第1基端部を保護することができる。
【0008】
本明細書によって開示される雌端子の構成として、以下のようにしてもよい。
前記一対の保護壁の前端は、前記第1基端部の前端よりも前方に位置している構成としてもよい。
このような構成によると、誤って雌端子を落とした際に、一対の保護壁が第1基端部よりも先に地面に衝突することになるため、第1基端部を確実に保護することができる。
【0009】
前記前端開口縁のうち前記第1基端部と対向する部分から前方に突出して後方に折り返された第2基端部と、前記第2基端部の後端縁から前記角筒部の内方に延出された第2弾性片と、を備えた構成としてもよい。
このような構成によると、誤って雌端子を落とした際に、一対の保護壁によって第2基端部を保護することができる。
【0010】
前記一対の保護壁の前端は、前記第2基端部の前端よりも前方に位置している構成としてもよい。
このような構成によると、誤って雌端子を落とした際に、一対の保護壁が第2基端部よりも先に地面に衝突することになるため、第2基端部を確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書によって開示される技術によれば、誤って雌端子を落とした際に、一対の保護壁によって第1基端部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における雌端子を示す一部切欠側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
実施形態を
図1から
図9の図面を参照しつつ説明する。本実施形態における雌端子10は、雄端子11に電気的に接続されるようになっている。以下の説明においては、
図1における左方を前方とし、
図1における右方を後方として説明する。また、
図1における上方を上方とし、
図1における下方を下方とする。
【0014】
雄端子11は金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。雄端子11は細長い板以上をなす雄タブ12を有する。雄端子11は、図示しない電線の端末に接続されていてもよく、また、図示しない機器に接続される構成としてもよい。
【0015】
雌端子10は、雄端子11の雄タブ12が前方から挿入される角筒部14を有する。
図2から
図4に示すように、角筒部14は、前後方向に開口する略角筒状をなしている。角筒部14は、底壁15と、底壁15の両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁16と、底壁15に対向する天井壁17と、を備えて構成されている。
【0016】
天井壁17は、一対の側壁16の一方の上端縁から、他方の側壁16に向かって略直角に折り曲げられて形成されている。天井壁17の側端縁には係止部18が突出して形成されており、この係止部18が他方の側壁16の上端縁に形成された係止孔19の内部に挿通されている。他方の側壁16の先端部分は、天井壁17の上面に沿って配されている。これにより、天井壁17の上方への開きが抑制され、角筒部14が角筒状に保持されている。
【0017】
角筒部14は、
図2に示すように、前方に開口する前端開口縁140を有している。この前端開口縁140は、底壁15の前端縁150と、一対の側壁16の前端縁160と、天井壁17の前端縁170とから構成されている。各前端縁150、160、170は同一平面上に並んで配置されている。
【0018】
底壁15の後方には、ワイヤーバレル20が延設されている。このワイヤーバレル20には、電線13の端末において絶縁被覆21から露出した芯線22が接続される。ワイヤーバレル20は、芯線22の外面に巻き付けられるようにして圧着されている。
【0019】
底壁15の前端縁150には、第1基端部24が前方に突出して形成されている。第1基端部24は、底壁15の前端縁150から角筒部14の内方に向けて後方に折り返された形状をなしている。
図4に示すように、第1基端部24は角筒部14の前端開口縁140から前方に突出している。
【0020】
図1および
図5に示すように、折り返された第1基端部24の後端縁240には、雄端子11の挿入方向と交差する方向に間隔を空けて並ぶ複数(本実施形態では3つ)の第1弾性片23が角筒部14の内部において後方に突出して形成されている。各第1弾性片23の、前後方向の長さ寸法は略同じに形成されている。また、各第1弾性片23の、雄端子11の挿入方向と直交する方向についての幅寸法は、略同じに形成されている。
【0021】
第1弾性片23は、少なくとも、雄端子11の挿入方向と交差する方向について両端部寄りの位置に形成されており、雄端子11の両側縁寄りの部分と接触するようになっている。第1弾性片23とこれに対向する側壁16との間の寸法は、底壁15の両側縁から側壁16を立ち上げて曲げ加工する際の曲げ代寸法と、曲げ加工する際の押さえ代寸法との合計にほぼ等しくされている。
【0022】
図1に示すように、第1弾性片23の後端部には、雄端子11と弾性的に接触する第1接点部25が下方から叩き出されて形成されている。第1接点部25はエンボス状をなし、各第1弾性片23に形成されている。
【0023】
天井壁17の前端縁170には、第2基端部27が前方に突出して形成されている。第2基端部27は、天井壁17の前端縁170から角筒部14の内方に向けて後方に折り返された形状をなしている。
図4に示すように、第2基端部27は角筒部14の前端開口縁140から前方にやや突出している。
【0024】
図1および
図2に示すように、折り返された第2基端部27の後端縁270には、雄端子11の挿入方向と交差する方向に間隔を空けて並ぶ複数(本実施形態では3つ)の第2弾性片26が角筒部14の内方において後方に突出して形成されている。各第2弾性片26の、前後方向の長さ寸法は略同じに形成されている。また、各第2弾性片26の、雄端子11の挿入方向と直交する方向についての幅寸法は、略同じに形成されている。
【0025】
図1に示すように、第2弾性片26の後端部には、雄端子11と弾性的に接触する第2接点部28が上方から叩き出されて形成されている。第2接点部28はエンボス状をなし、各第2弾性片26に形成されている。
【0026】
図1、
図6、および
図7に示すように、第1基端部24および第1弾性片23と、第2基端部27および第2弾性片26とは、上下対称に形成されている。これにより、第1弾性片23の第1接点部25と、第2弾性片26の第2接点部28とは、それぞれ対向して配されている(
図7参照)。
【0027】
詳細には図示しないが、第2弾性片26は、少なくとも、雄端子11の挿入方向と交差する方向について両端部寄りの位置に形成されており、雄端子11の両側縁寄りの部分と接触するようになっている。第2弾性片26とこれに対向する側壁16との間の寸法は、底壁15の両側縁から側壁16を立ち上げて曲げ加工する際の曲げ代寸法と、曲げ加工する際の押さえ代寸法との合計にほぼ等しくされている。
【0028】
さて、
図2に示すように、一対の側壁16の前端縁160には、一対の保護壁29が前方に突出して形成されている。これらの保護壁29は、角筒部14の前端開口縁140のうち第1基端部24および第2基端部27を左右両側から囲む位置に配されている。
図1および
図4に示すように、左右一対の保護壁29の前端は、第1基端部24および第2基端部27の前端よりも前方に位置している。詳細には、各保護壁29は、第1基端部24および第2基端部27のうち互いに対向する領域、すなわち雄端子11の雄タブ12が接触可能とされる領域を左右両側から囲むように形成されている。具体的には、各保護壁29は、第1基端部24の上半分と第2基端部27の下半分を左右両側から囲んでいる。したがって、誤って雌端子10を落下させた場合に、第1基端部24および第2基端部27が地面に衝突して損傷することを回避できる。
【0029】
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。
図6に示す状態から雄端子11が角筒部14内に挿入されると、雄端子11は、第1弾性片23と第2弾性片26との間に進入する。すると、雄端子11に押圧されることにより、第1弾性片23は下方に弾性変形し、第2弾性片26は上方に弾性変形する。さらに雄端子11が角筒部14の後方に進入すると、
図8に示すように、雄端子11は、第1弾性片23の第1接点部25と、第2弾性片26の第2接点部28との間に進入する。第1弾性片23の弾発力により雄端子11が押圧されることにより、雄端子11は第2接点部28に適正な接触圧で押圧される。一方、第2弾性片26の弾発力により雄端子11が押圧されることにより、雄端子11は第1接点部25に適正な接触圧で押圧される。これにより、雄端子11と雌端子10とが電気的に接続される。
【0030】
図9には、雄端子11が、角筒部14内への雄端子11の挿入方向を軸として捻回した状態を示す。
図8に示す正規の挿入状態から雄端子11を反時計回り方向に捻回させていくと、雄端子11と各接点部25、28の接点位置は、各接点部25、28の接触面に沿って反時計回り方向にわずかに移動しながら、
図9に示す姿勢に至る。このため、各接点部25、28に対して雄端子11が一点に集中して接触することを回避できる。
【0031】
また、雄端子11は、捻回動作の前後において各接点部25、28に対して同じように点接触状態あるいは線接触状態を保持しているため、雄端子11と各接点部25、28の接触状態が急激に変化することはなく、いずれの接触箇所においても十分な接圧が確保されている。すなわち、捻回前に雄端子11が各接点部25、28に対して線接触している場合には、捻回後においても雄端子11が各接点部25、28に対して線接触しており、捻回前に雄端子11が各接点部25、28に対して点接触している場合には、捻回後においても各接点部25、28に対して点接触していることになる。
【0032】
また、複数の第1弾性片23は、雄端子11の挿入方向に交差する方向に等しい間隔を空けて並んで形成されているので、各第1弾性片23は、雄端子11の捻回動作に追従して弾性変形する。これにより、雄端子11に対して各第1弾性片23が適正な接触圧を加えることができるので、雄端子11は第2接点部28に適正な接触圧で押圧される。
【0033】
同様に、雄端子11の挿入方向に交差する方向に等しい間隔を空けて並ぶ複数の第2弾性片26も、雄端子11の捻回動作に追従して弾性変形する。これにより、雄端子11に対して各第2弾性片26が適正な接触圧を加えることができるので、雄端子11は第1接点部25に適正な接触圧で押圧される。
【0034】
以上のように本実施形態の雌端子10は、角筒状をなし、前端開口縁140において前方に開口する角筒部14と、前端開口縁140の一部から前方に突出して後方に折り返された第1基端部24と、第1基端部24の後端縁240から角筒部14の内方に延出された第1弾性片23と、前端開口縁140のうち第1基端部24を両側から囲む部分から前方に突出して設けられた一対の保護壁29と、を備えた構成としたから、誤って雌端子10を落とした際に、一対の保護壁29によって第1基端部24を保護することができる。
【0035】
また、一対の保護壁29の前端は、第1基端部24の前端よりも前方に位置している構成としたから、誤って雌端子10を落とした際に、一対の保護壁29が第1基端部24よりも先に地面に衝突することになるため、第1基端部24を確実に保護することができる。
【0036】
また、前端開口縁140のうち第1基端部24と対向する部分から前方に突出して後方に折り返された第2基端部27と、第2基端部27の後端縁から角筒部14の内方に延出された第2弾性片26と、を備えた構成としたから、誤って雌端子10を落とした際に、一対の保護壁29によって第2基端部27を保護することができる。
【0037】
また、一対の保護壁29の前端は、第2基端部27の前端よりも前方に位置している構成としたから、誤って雌端子10を落とした際に、一対の保護壁29が第2基端部27よりも先に地面に衝突することになるため、第2基端部27を確実に保護することができる。
【0038】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では四角形状の角筒部14を例示しているものの、本発明によると、三角形状の角筒部としてもよいし、五角形状以上の角筒部としてもよい。
【0039】
(2)上記実施形態では、複数の第1弾性片23および第2弾性片26が、雄端子11の挿入方向と交差する方向に間隔を空けて並ぶものを例示しているものの、本発明によると、第1弾性片および第2弾性片を1つずつ設けてもよい。
【0040】
(3)上記実施形態では、エンボス状の第1接点部25および第2接点部28を例示しているものの、本発明によると、山形をなす第1弾性片の頂点を第1接点部としてもよいし、山形をなす第2弾性片の頂点を第2接点部としてもよい。
【0041】
(4)上記実施形態では、保護壁29の前端が第1基端部24および第2基端部27の前端よりも前方に位置しているものを例示しているものの、本発明によると、保護壁の前端が第1基端部および第2基端部の前端と揃っていてもよいし、やや後方に位置してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…雌端子
14…角筒部
140…前端開口縁
23…第1弾性片
24…第1基端部
240…後端縁
26…第2弾性片
27…第2基端部
270…後端縁
29…保護壁