【解決手段】筒状部材3は、電線2の長手方向の少なくとも一部を、空隙を介して囲む筒状形状を有し、当該筒状形状の第一端3aと電線2との間が塞がっている。筒状部材3には、第一端3aよりも第二端3bに近い位置において、通風用の開口(例えば第二端3b)が形成される。通風用チューブ4は、当該内部空間に位置して開口する第1開口端4aと、当該外部空間に位置して開口する第2開口端4bとを有し、当該通風用の開口を貫通する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電線の温度が上昇すると、電線の抵抗値が高まるので望ましくない。よって電線を冷却することが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、電線を空冷できる電線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる電線モジュールの第1の態様は、電線と、第一端および第二端を有し、前記電線の少なくとも一部を囲む筒状に形成され、前記第一端と前記電線との間が塞がっており、前記第一端よりも前記第二端に近い位置において通風用の開口が形成された筒状部材と、前記筒状部材の内部空間に位置して開口する第1開口端、および、前記筒状部材の外部空間に位置して開口する第2開口端を有し、前記通風用の開口を貫通する通風用チューブとを備える。
【0009】
本発明にかかる電線モジュールの第2の態様は、第1の態様にかかる電線モジュールであって、前記筒状部材の前記第二端は開口しており、前記筒状部材における前記通風用の開口は前記第二端の開口である。
【0010】
本発明にかかる電線モジュールの第3の態様は、第1または第2の態様にかかる電線モジュールであって、前記第1開口端は、前記筒状部材における前記第二端よりも前記第一端に近い。
【0011】
本発明にかかる電線モジュールの第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる電線モジュールであって、前記通風用チューブは、前記第1開口端と前記第2開口端とを繋ぎ、送風装置に連通する前記第2開口端から前記第1開口端へと空気が流れる本体管部と、前記第1開口端と前記第2開口端との間の分岐部において前記本体管部から分岐し、前記分岐部とは反対側の端部である第3開口端が開口し、前記本体管部の空気の流動に起因して前記第3開口端から前記分岐部へと空気が流れる枝管部とを備える。
【0012】
本発明にかかる電線モジュールの第5の態様は、第4の態様にかかる電線モジュールであって、前記第3開口端は前記筒状部材の前記内部空間に位置する。
【0013】
本発明にかかる電線モジュールの第6の態様は、第5の態様にかかる電線モジュールであって、前記第3開口端が、前記筒状部材の長手方向において前記第1開口端側に開口するように、前記通風用チューブが配置される。
【0014】
本発明にかかる電線モジュールの第7の態様は、第4の態様にかかる電線モジュールであって、前記第3開口端は前記筒状部材の前記外部空間に位置する。
【0015】
本発明にかかる電線モジュールの第8の態様は、第1から第3の態様にかかる電線モジュールであって、前記通風用チューブは、前記筒状部材の前記外部空間に位置する第3開口端と前記第2開口端とを繋ぎ、送風装置に連通する前記第2開口端から前記第3開口端へと空気が流れる本体管部と、前記第2開口端および前記第3開口端の間の分岐部と前記第1開口端とを繋ぎ、前記本体管部の空気の流動に起因して前記第1開口端から前記分岐部へと空気が流れる枝管部とを有する。
【0016】
本発明にかかる電線モジュールの第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる電線モジュールであって、前記電線と前記通風用チューブとは結束具によって結束される。
【0017】
本発明にかかる電線モジュールの第10の態様は、車外に搭載される第1装置と、いずれもが車内に搭載される第2装置および送風装置とを備える車両、に搭載される電線モジュールであって、前記第1装置と前記第2装置とを接続する電線と、第一端と第二端とを有し、前記電線の少なくとも一部を囲む筒状に形成され、前記第一端と前記電線との間が前記車外において塞がっており、前記車内において通風用の開口が形成された筒状部材と、前記筒状部材の内部空間に位置する第1開口端、および、前記車内に位置して前記送風装置に連通する第2開口端を有し、前記通風用の開口を貫通する通風用チューブとを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる電線モジュールの第1の態様によれば、通風用チューブを介して筒状部材の内部空間へと空気を送り込むことができる。このとき、通風用チューブから筒状部材の内部空間へと送出された空気は、筒状部材の内部空間を流れて、例えば開口を介して外部空間へと送出される。これにより、筒状部材内の電線を空冷することができる。
【0019】
しかも、通風用チューブを用いて筒状部材に空気を送り込むので、筒状部材における通風用の開口を、冷却および防水が必要な位置とは異なる位置に設けることができる。すなわち、筒状部材における冷却および防水が必要な位置に、通気口を設ける必要がない。これにより、筒状部材の防水性能を損なうことなく、電線を空冷することができる。
【0020】
本発明にかかる電線モジュールの第2の態様によれば、第二端が開口した筒状部材を製造することは、第二端と電線との間が塞がった筒状部材を製造するよりも容易である。しかも通風用の開口が第二端によって形成されるので、この開口を別途に形成する必要がない。よって、更に製造を容易にできる。これらは製造コストの低減に資する。
【0021】
本発明にかかる電線モジュールの第3の態様によれば、筒状部材の第一端は塞がっているので、空気が滞留しやすいところ、第一端側において空気を流動させやすい。よって、より温度が高まりやすい第一端側の電線を効率的に冷却できる。
【0022】
本発明にかかる電線モジュールの第4の態様によれば、筒状部材の内部空間を流れる空気の量を増大することができる。これにより、効率的に筒状部材内の電線を冷却することができる。
【0023】
本発明にかかる電線モジュールの第5の態様によれば、第1開口端から送出して内部空間を流れる空気の一部が、第3開口端を介して再び第1開口端から送出される。これにより、内部空間を流れる空気の一部を、内部空間内において循環させることができる。したがって、筒状部材の内部空間から外部空間へと流出する空気量が少なくなり、筒状部材の空気流出部における風切り音対策などが容易となる。
【0024】
本発明にかかる電線モジュールの第6の態様によれば、循環量を増大できる。
【0025】
本発明にかかる電線モジュールの第7の態様によれば、外部空間から内部空間へと送り込む空気の量を増大できる。これにより、効率的に筒状部材内の電線を冷却することができる。
【0026】
本発明にかかる電線モジュールの第8の態様によれば、空気が第1開口端から分岐部へと枝管部の内部を流れることに伴って、外部空間の空気が例えば通風用の開口を介して筒状部材の内部空間へと流れ込む。よって、例えば通風用の開口の周辺の外部空間の空気を用いて、電線を空冷することができる。これは、通風用の開口の周辺の空気の温度が第2開口端の周辺の空気の温度よりも低いときに特に有効である。
【0027】
本発明にかかる電線モジュールの第9の態様によれば、電線と通風用チューブとを一体的に取り扱って、筒状部材に挿入できる。
【0028】
本発明にかかる電線モジュールの第10の態様によれば、電線2を空冷することができる。しかも通風用の開口が車内に位置するので、当該開口が車外に配置される場合に比して、車外の水滴または粉塵が当該開口を介して筒状部材に侵入することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
第1の実施の形態.
<1.全体構成>
図1は、本電線モジュール1が搭載される車両(例えば自動車)100の側面を概念的に示している。車両100は、走行に要する構成(例えば車輪、および、車両の進行方向を操作するための操舵機構など)を当然に有しているものの、
図1では、本願と関連の低い構成要素については省略している。
【0031】
走行用モータ110および駆動装置120は、車体パネル130によって区画された車外に配置される。
図1の例示では、これらが、車両100の進行方向の前方に配置されている。走行用モータ110は車輪を回転させるためのモータである。駆動装置120は例えばインバータであって、走行用モータ110を駆動する。
【0032】
図1の例示では、自動車の後方において、駆動装置120へと直流電源を与えるための電源装置(例えばバッテリ)140が配置されている。電源装置140は、車体パネル130によって区画された車内に配置される。
【0033】
図1の例示では、送風装置(ファン)150も設けられる。ファン150は車内に設けられており、例えば電源装置140へと送風して、電源装置140を冷却する。
【0034】
<2.電線モジュール>
図2は、電線モジュール1の一例をより具体的に示す概念的な拡大図である。電線モジュール1は、電線2と、筒状部材3と、通風用チューブ4とを備えている。
【0035】
電線2は、駆動装置120と電源装置140とを相互に接続する(
図1も参照)。上述のように駆動装置120および電源装置140は、車体パネル130によって区画された車外および車内にそれぞれ配置されるので、電線2は車体パネル130を貫通することになる。
【0036】
電線2は任意の電線であってよく、例えば複数の芯線(線状の導体)が束ねられた撚線、或いは単線である。
図1も参照して、電線2の両端には例えばコネクタ21,22が形成されており、電線2は、それぞれコネクタ21,22を介して駆動装置120および電源装置140と電気的に接続される。
【0037】
筒状部材3は筒状に形成されており、電線2の少なくとも一部を囲んでいる。言い換えれば、電線2は長手方向に沿って筒状部材3を遊挿する。
【0038】
また筒状部材3は車体パネル130を貫通する。筒状部材3と車体パネル130とは、その貫通部分において、互いに密着する。つまり、車体パネル130の貫通孔131(
図2参照)の周縁が筒状部材3の外周面に密着する。あるいは、車体パネル130の貫通孔131の周縁と、筒状部材3の外周面との間が、所定のシール部材(不図示)により封止されても良い。シール部材は例えばゴム、シリコンまたは樹脂などによって形成される。これにより、車体パネル130と筒状部材3との間に隙間が生じることを回避でき、ひいては当該隙間を介して車内と車外とが互いに連通することを回避できる。
【0039】
図2の例示では、筒状部材3は、床板を形成する車体パネル130の下部において前後方向に配索されており、その第一端3a側で斜め上方へと延在して駆動装置120へ向かう。また筒状部材3は、その第二端3b側において、上方へと屈曲して、車体パネル130を貫通する。
【0040】
なお
図2に示すように、筒状部材3が車体パネル130よりも車内側に突き抜けて、第二端3bが車体パネル130よりも車内側に位置していてもよく、或いは、第二端3bが車体パネル130に当接していてもよい。
【0041】
第二端3bは車内において開口している。電線2は第二端3bを介して引き出され、車内に配置される電源装置140へと延在する。
【0042】
筒状部材3の第一端3aと電線2との間は塞がっている。例えば筒状部材3の第一端3aと電線2のコネクタ21との隙間をシール部材(不図示)によって封止することで、筒状部材3の第一端3aと電線2とが互いに固定される。これにより、第一端3aと電線2との間が塞がれる。シール部材は例えばゴム、シリコンまたは樹脂などによって形成される。
【0043】
このように第一端3aが塞がっているので、車外における水滴または粉塵が、第一端3aを介して筒状部材3の内部へと侵入することを防止できる。
【0044】
筒状部材3は、例えば金属(例えばアルミニウム合金、銅合金またはステンレス鋼など)によって形成される。この筒状部材3は、電線2を保護することができ、或いは、電線2を保持して、その配索形状を維持することができる。或いは、筒状部材3が上述のように金属等の導体で形成されている場合には、電線2をシールドすることができる。
【0045】
筒状部材3には、車外において、孔が形成されていないことが望ましい。これにより、車外の空間と筒状部材3の内部空間とが直接に連通しない。よって、車外の水滴または粉塵等が筒状部材3の内部に侵入することを防止できる。
【0046】
なお筒状部材3には一本の電線2が挿入されても良く、複数本の電線2が挿入されてもよい。
【0047】
通風用チューブ4は筒状の形状を有しており、その両端が開口する。よって以下では、通風用チューブ4の両端をそれぞれ開口端4a,4bとも呼ぶ。通風用チューブ4は後に詳述するように、筒状部材3の内部に空気を送り込むためのものである。
【0048】
通風用チューブ4は、例えば弾性材料(例えばゴムあるいはシリコンなど)で形成されて、柔軟性を有する。
図2の例示では、通風用チューブ4は第二端3bを介して筒状部材3に遊挿される。よって第二端3bは、通風用チューブ4を挿入するための通風用の開口と把握することができる。
図2の例示では、筒状部材3はその延在途中で屈曲する部分を有するところ、通風用チューブ4が、弾性材料で形成されていれば、筒状部材3の延在経路に沿って曲がりながら筒状部材3の内部空間に挿入できる。
【0049】
また、通風用チューブ4が弾性材料で形成されて、柔軟性を有していれば、延在経路が異なる複数種類の筒状部材3に対しても、共通して通風用チューブ4を採用することができる。これは、製造コストの低減に資する。
【0050】
通風用チューブ4の開口端4aは筒状部材3の内部空間に位置し、通風用チューブ4の開口端4bは筒状部材3の外部空間(より詳細には車内)に位置する。この開口端4bは、車内において、ファン150からの送風を受ける位置に設けられる。より詳細には、送風方向に対して反対側に開口するように、開口端4bが配置される。換言すれば、開口端4bはファン150に連通する。
【0051】
なお
図2とは異なって、開口端4bがファン150に近づくにつれて拡径した形状を有していてもよい。これにより、ファン150からの空気を、開口端4bを介して通風用チューブ4の内部に送り込みやすい。
【0052】
筒状部材3の内部空間は、通風用チューブ4と電線2との両方が挿入された状態においても、空隙が形成される程度の体積を有する。また、この空隙は第一端3aから第二端3bまで連続する。
【0053】
図3は電線モジュール1を模式的に示す図である。
図3の例示では、電線2が2本例示されており、電線2、筒状部材3および通風用チューブ4が湾曲することなく直線的に延在している。実際には
図2に例示するように、適宜に湾曲していても良い。また
図3の例示では、筒状部材3と電線2との間を封止するシール部材30も示されている。
図3の例示では、シール部材30はコネクタ21と筒状部材3との間を封止する。なお、筒状部材3とシール部材30との一組を筒状部材と把握しても構わない。
【0054】
図2を参照して、本電線モジュール1において、ファン150が動作すると、車内の空気が、開口端4bを介して通風用チューブ4の内部へと流れ込む。この空気は通風用チューブ4の内部を開口端4aへと向かって流れる。開口端4aから送出された空気は、例えば筒状部材3の内部をコネクタ21に向かって流れる。そして当該空気はコネクタ21で跳ね返って、筒状部材3の内部(より詳細には、当該内部のうち通風用チューブ4の外部)を第二端3bへと向かって流れ、第二端3bから車内へと送出される。
【0055】
以上のように、通風用チューブ4を筒状部材3への入口として機能させつつ、第二端3bを出口として機能させている。これにより、第一端3aが塞がった筒状部材3であっても、上述のように筒状部材3の内部を空気が流れて、電線2を空冷することができる。
【0056】
さてここで、通風用チューブ4が設けられていない構造を想定すると、第一端3aが塞がった筒状部材3の内部においては、第一端3a(コネクタ21)側の空気が滞留しやすい。よって、熱が蓄積されて、第一端3a側の電線2の温度が高まりやすい。
【0057】
しかも、
図1および
図2の例示では、コネクタ21は駆動装置120に接続される(
図1)ところ、当該駆動装置120、または、車両の前方に設けられるエンジン(不図示)は、他の装置に比べて比較的多くの熱を発生する。よって電線2のうち、第一端3a側の温度が第二端3b側の温度に比べて高まりやすい。
【0058】
よって、より温度が高まりやすい第一端3a側の電線2を、より効率的に空冷することが望ましい。
【0059】
そこで、
図2の例示では、通風用チューブ4の開口端4aが、筒状部材3の第二端3bよりも第一端3aに近い位置に配置される。より具体的な一例として、開口端4aは第一端3aの近傍に位置している。これにより、筒状部材3の内部において、第一端3a側に空気を送り届やすく、第一端3a側の電線2をより効率的に冷却できる。
【0060】
また
図2に例示するように、開口端4aが筒状部材3の長手方向においてコネクタ21(電線2の一端)側に開口していると、その反対側に開口する場合に比べて、第一端3a側に空気を届けやすい。これにより、電線2のうち第一端3a側の部分を、より効率的に空冷することができる。
【0061】
なお
図1の例では、通風用チューブ4の開口端4bは、ファン150からの送風を受ける位置に設けられている。つまりファン150によって、通風用チューブ4内に空気が送り込まれる。しかるに、例えば通風用チューブ4の開口端4bを、ファン150の送風側とは反対側(吸引側)に設けることで、ファン150によって、通風用チューブ4内の空気が引き抜かれてもよい。或いは、ファン150の替わりに、空気を吸引する吸引装置が設けられて、当該吸引装置によって通風用チューブ4内の空気が引き抜かれても良い。
【0062】
これらの場合、筒状部材3の内部の空気の流れが、
図2に示される流れと反対となる。つまり、車内の空気が第二端3bから筒状部材3の内部(より詳細には、当該内部のうち通風用チューブ4の外部)を流れ、開口端4aから通風用チューブ4の内部を開口端4bへと流れることになる。これにより、電線2が空冷される。
【0063】
しかもこの場合、筒状部材3の内部には、第二端3bの周辺の空気が流れ込む。つまり第二端3bの周辺の空気を用いて電線2を空冷できる。よって本態様は、第二端3bの周辺の空気の温度がファン150の周辺の空気の温度よりも低い場合に、電線2の冷却という観点で特に有効である。また、第二端3bの周辺の空気に含まれる粉塵の量がファン150の周辺の空気に含まれる粉塵の量よりも少ない場合に、電線2の保守という観点で、本態様は特に有効である。
【0064】
もちろん、ファン150からの空気が通風用チューブ4に流れ込む態様(
図2)であれば、ファン150の周辺の空気の温度が第二端3bの周辺の空気の温度よりも低い場合に、電線2の冷却という観点で有効である。また、ファン150の周辺の空気に含まれる粉塵の量が第二端3bの周辺の空気に含まれる粉塵の量よりも少ない場合に、本態様は電線2の保守という観点で有効である。
【0065】
また、
図2の例では、通風用チューブ4は、第二端3bを介して筒状部材3に挿入されている。しかるに、通風用チューブ4の挿入箇所は第二端3bに限られない。例えば
図4は電線モジュール1の他の一例を概念的に示す図である。筒状部材3の外周面には、第一端3aよりも第二端3b側に近い位置(より詳細には車内)において、貫通孔32が形成されている。そして、通風用チューブ4はこの貫通孔32を介して筒状部材3の内部に遊挿されている。よって貫通孔32は、通風用チューブ4を挿入するための通風用の開口と博することができる。この場合であっても、通風用チューブ4を介して、車内の空気を筒状部材3の内部に送り込むことができる。そして、この空気が筒状部材3の内部(より詳細には、当該内部のうち通風用チューブ4の外部)を流れて、第二端3bまたは貫通孔32を介して、車内へと送出される。よって、電線2を空冷することができる。
【0066】
またこの場合、第二端3bと電線2との間が塞がっていても構わない。通風用チューブ4と貫通孔32との間の空隙が、筒状部材3の内部を流れる空気にとっての出口として機能するからである。
【0067】
逆に、第二端3bが開口していれば、貫通孔32の周縁が通風用チューブ4の外周面と密着、或いは封止されてもよい。第二端3bが、筒状部材3の内部を流れる空気にとっての出口として機能するからである。或いは、第一端3aよりも第二端3b側に近い位置(より詳細には車内)において、空気の出口として機能する別の貫通孔が筒状部材3に設けられても良い。
【0068】
一方で、第二端3bが開口した筒状部材3を製造することは、第二端3bと電線2との間が塞がった固筒状部材3を製造するよりも容易である。しかも
図2の態様であれば、挿入孔が第二端3bによって形成されるので、通風用チューブ4を挿入するための貫通孔を別途に形成する必要がない。よって、更に製造を容易にできる。これらは製造コストの低減に資する。
【0069】
また本電線モジュール1によれば、通風用チューブ4の挿入口(
図2の第二端3bまたは
図4の貫通孔32、課題を解決するための)および空気の出口(
図2,4の第二端3b、
図4の貫通孔32、または別の貫通孔(不図示))が、筒状部材3の第一端3aよりも第二端3bに近い位置に設けられる。よって、当該挿入口および当該出口が車内に位置するように、筒状部材3を配置しやすい。
【0070】
また本電線モジュール1の利点を次のようにも説明できる。すなわち、通風用チューブ4の開口端4aを冷却に必要な位置に設けて空気を送り込むことができるので、挿入口(
図2の他端3bまたは
図4の貫通孔32)を、冷却に必要な位置とは異なる任意の位置に設けることができる。したがって、防水を要する位置(例えば車外)をも避けて、挿入口を設けることができるのである。
【0071】
また、上述の例では、電線2は車外の駆動装置120と車内の電源装置140とを接続している。しかるに電線2の接続対象は、駆動装置120と電源装置140とに限らない。電線2は、車外に搭載される任意の装置と、車内に搭載される任意の装置とを接続すればよい。
【0072】
第2の実施の形態.
図5は、第2の実施の形態にかかる電線モジュール1の一例を概念的に示す拡大図である。
図5に例示する電線モジュール1は、通風用チューブ4の構造という点で、第1の実施の形態にかかる電線モジュール1と相違する。
図5の例示では、通風用チューブ4は分岐部4dにおいて分岐している。つまり、通風用チューブ4は、開口端4aと分岐部4dとを繋ぐ管部42と、開口端4bと分岐部4dとを繋ぐ管部44と、開口端4cと分岐部4dとを繋ぐ管部46とを有している。開口端4cは管部46の分岐部4dとは反対側の端部であって、開口している。
【0073】
図5の例示では、管部42,44は分岐部4dにおいて鈍角をなして、互いに繋がっている。より詳細な一例として、管部42,44は分岐部4dにおいて略直線的に繋がっている。また
図5の例示では、管部44,46は分岐部4dにおいて例えば90度以下の角度をなして互いに繋がっている。
【0074】
また
図5の例示では、開口端4cは筒状部材3の内部に位置しており、例えば第一端3aよりも第二端3bに近い位置(より詳細には第二端3bの近傍)に配置されている。
【0075】
図6は、
図5の電線モジュール1を模式的に示す図である。
図6では、電線2が2本例示されており、電線2、筒状部材3および通風用チューブ4が湾曲することなく直線的に延在して示されている。また
図6では、筒状部材3と電線2との間を封止するシール部材30が例示されている。
【0076】
開口端4bは、
図5に示すように、ファン150から送風を受ける位置において、送風方向とは反対に開口する。よってファン150からの空気が、開口端4bを介して開口端4aへと管部44,42の内部をこの順に流れる。このようにファン150からの空気が管部42,44を流れることから、
図6を参照した説明では、管部42,44からなる部分を本体管部とも呼び、管部46を枝管部とも呼ぶ。
【0077】
この本体管部(管部42,44)の内部を流れる空気に起因して、いわゆるベンチュリ効果により、本体管部の内部の分岐部4dにおいて負圧が生じる。これにより、空気が、開口端4cを介して枝管部(管部46)の内部に引き込まれる。
【0078】
開口端4aから筒状部材3の内部に送出された空気は、第二端3bへと流れるところ、その一部は、開口端4cへと流れ込んで、再び通風用チューブ4の内部を開口端4aへと向かって流れる。よって、筒状部材3の内部において空気の一部を循環させることができる。したがって、筒状部材3の内部空間から外部空間へと流出される空気の量が少なくなり、筒状部材3の空気流出部における風切り音対策などが容易となる。
【0079】
また本態様によれば、開口端4bから通風用チューブ4へと空気が流れ込むとともに、開口端4cからも通風用チューブ4へと空気が流れ込む。よって、管部42を流れる空気の量、ひいては、開口端4aから筒状部材3の内部(より詳細には通風用チューブ4の外部)を流れる空気の量を増大することができる。
【0080】
なお管部42,44,46は、要するに、ファン150から管部42,44(本体管部)の内部を空気が流れ、当該空気の流動に起因して分岐部4dに負圧が生じて、開口端4cから分岐部4dへと管部46(枝管部)の内部を空気が流れるように、互いに接続されていればよい。例えば例えば管部42,44が鈍角をなして互いに繋がり、管部46が分岐部4dにおいて管部44に対して90度以下で繋がる。
【0081】
また
図5の例示では、開口端4cが筒状部材3の長手方向において第一端3a側に向かって開口するように、管部46が湾曲して延在している。なお、ここでいう「筒状部材3の長手方向において第一端3a側」とは、筒状部材3の長手方向に沿った方向のうち、第一端3a側に向かう方向を意味し、開口端4cから見た第一端3aの方向を意味するものではない。例えば
図5では、開口端4cから見た第一端3aの方向は、進行方向の前方であるのに対して、開口端4cは、筒状部材3の長手方向における第一端3a側としての鉛直下方に開口している。
【0082】
この構造によれば、開口端4cが筒状部材3の長手方向において第二端3b側に向かって開口する構造に比して、空気を循環させやすい。言い換えれば循環量を増大できる。
【0083】
図7は電線モジュール1の一例を模式的に示す図である。
図7の電線モジュール1は、開口端4cの位置という点で、
図6の電線モジュール1と相違する。
図7の例示では、開口端4cが筒状部材3の外部空間に位置している。より詳細には、開口端4cは車内に位置する。
【0084】
そして、ファン150からの空気が開口端4bから通風用チューブ4の内部に流れ込むと、当該空気は、開口端4bから開口端4aへと、管部44,42の内部をこの順に流れる。またこの空気の流動に起因して、車内の空気が開口端4cを介して分岐部4dへと管部46の内部を流れる。よって、車内から通風用チューブ4を介して筒状部材3の内部へと送出される空気の量を増大することができる。これにより、電線2を効率的に冷却することができる。
【0085】
図8は電線モジュール1の一例を模式的に示す図である。
図8の電線モジュール1は、管部42,46の間の角度および管部44,46との間の角度という点で、
図7の電線モジュール1と相違する。
図8の例示では、管部44,46が分岐部4dにおいて鈍角をなして、互いに繋がっている。より詳細な一例として、管部44,46は略直線的に互いに繋がっている。また管部42は分岐部4dにおいて管部44に対して90度以下で繋がっており、
図8の例示では管部42,44は互いに直交して示されている。
【0086】
このような通風用チューブ4において、ファン150からの空気が開口端4bから管部44の内部に流れ込むと、この空気は、分岐部4dを介して開口端4cへと管部46の内部を流れる。このようにファン150からの空気が管部44,46を流れることから、
図8の態様では、管部44,46からなる部分を本体管部とも呼び、管部42を枝管部とも呼ぶ。
【0087】
そしてこの本体管部の内部を流れる空気に起因して、いわゆるベンチュリ効果により、本体管部の内部の分岐部4dにおいて負圧が生じる。これにより、筒状部材3の内部(より詳細には通風用チューブ4の外部)の空気が、開口端4aを介して管部42の内部に引き込まれる。これに伴って、車内の空気が第二端3bを介して筒状部材3の内部に引き込まれる。つまり、車内の空気が第二端3bから開口端4aへと向かって、筒状部材3の内部(より詳細には、通風用チューブ4の外部)を流れ、開口端4aから分岐部4dへと枝管部(管部42)の内部を流れ、続いて開口端4cへと管部46の内部を流れ、開口端4cから車内へと送出される。
【0088】
これによっても、電線2を空冷することができる。またこの態様であれば、筒状部材3の内部には、第二端3bの周辺の空気が流れ込む。よって、本態様は、第二端3bの周辺の空気の温度が開口端4bの周辺の空気の温度よりも低い場合に、電線2を空冷するという観点で有効である。或いは、本態様は第二端3bの周辺の空気に含まれる粉塵の量が、開口端4bの周辺の空気に含まれる粉塵の量よりも少ない場合に、電線2の保守という観点で、有効である。
【0089】
なお
図8の態様においては、管部42,44,46は、要するに、ファン150から管部44,46(本体管部)の内部を空気が流れ、当該空気の流動に起因して分岐部4dに負圧が生じて、開口端4aから分岐部4dへと管部42(枝管部)の内部を空気が流れるように、互いに接続されていればよい。例えば、管部44,46が鈍角をなして互いに繋がり、管部42が分岐部4dにおいて管部44に対して90度以下で繋がる。
【0090】
第3の実施の形態.
電線2と通風用チューブ4とは、結束具(例えば粘着テープ、結束バンドなど)によって、結束されてもよい。これにより、電線2と通風用チューブ4との衝突を抑制することができる。また、通風用チューブ4が弾性材料で形成されて柔軟性を有する場合には、電線2と通風用チューブ4とを一体として扱って、これらを筒状部材3へと挿入することができる。これにより、組立作業性を向上できる。
【0091】
上述の各種実施の形態は、互いの機能を損ねない限り、適宜に組み合わせることができる。
【0092】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。