特開2015-153615(P2015-153615A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-153615(P2015-153615A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20150728BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
   H01R13/52 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-26528(P2014-26528)
(22)【出願日】2014年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB09
5E021FB20
5E021FC16
5E021FC40
5E021HC09
5E021HC35
5E087FF03
5E087FF08
5E087FF13
5E087LL02
5E087LL12
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR14
(57)【要約】
【課題】コスト低減を図りながら延焼を防止する。
【解決手段】コネクタCは、フード部12の奥端面が雄側対向面13となっている雄側ハウジング10と、雌側対向面31を雄側対向面13に正対して接近させながらフード部12内に嵌合される雌側ハウジング30と、両ハウジング10,30を嵌合状態にロックするロックアーム15と、熱膨張することによりロックアーム15をロック解除方向へ変位させる第1熱膨張部材51と、雄側ハウジング10の雄側対向面13と雌側ハウジング30の雌側対向面31との間に介在するように配された第2熱膨張部材52とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード部を有し、前記フード部の奥端面が雄側対向面となっている雄側ハウジングと、
正面の雌側対向面を前記雄側対向面に正対して接近させながら前記フード部内に嵌合される雌側ハウジングと、
前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングを嵌合状態にロック可能なロックアームとを備え、
前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングのうち少なくとも一方がワイヤーハーネスに接続されており、
前記ロックアームがロック解除方向へ変位することで、前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングが離脱可能となるコネクタであって、
熱膨張することにより前記ロックアームをロック解除方向へ変位させる第1熱膨張部材と、
前記雄側対向面と前記雌側対向面との間に介在するように配された第2熱膨張部材とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第2熱膨張部材が、前記雌側対向面又は前記雄側対向面に形成した収容凹部内に収容されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記雄側対向面と前記雌側対向面のうち前記収容凹部が形成されていない側の前記対向面に、前記収容凹部に収容される突部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2熱膨張部材が、熱膨張性ゴムからなり、前記雄側ハウジングの雄端子金具と前記雌側ハウジングの雌端子金具との接続領域を包囲するように配されており、
前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングが嵌合した状態では、前記第2熱膨張部材が前記雄側対向面と前記雌側対向面とに液密状に密着することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線を包囲する被覆材の材料として、ノンハロゲン難燃性樹脂を用いたワイヤーハーネスが開示されている。このワイヤーハーネスを自動車に適用すれば、車両火災が発生した際に、被覆材への引火を回避して被覆材を伝達経路とする延焼を防ぐ効果を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−263930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両火災における延焼を防止するためには、ワイヤーハーネスを構成する被覆材の全てを、難燃性樹脂とすることが好ましい。しかし、ノンハロゲンの難燃性樹脂の価格は、汎用の被覆材として広く用いられているPVC樹脂に比べると高価である。しかも、近年、自動車に取り付けられるワイヤーハーネスの長さや、ワイヤーハーネスを構成する電線の本数は、増大する傾向にある。そのため、ワイヤーハーネスを構成する被覆材の全てを難燃性材料にすることは、コストアップに直結する。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コスト低減を図りながら延焼を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコネクタは、
フード部を有し、前記フード部の奥端面が雄側対向面となっている雄側ハウジングと、
正面の雌側対向面を前記雄側対向面に正対して接近させながら前記フード部内に嵌合される雌側ハウジングと、
前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングを嵌合状態にロック可能なロックアームとを備え、
前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングのうち少なくとも一方がワイヤーハーネスに接続されており、
前記ロックアームがロック解除方向へ変位することで、前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングが離脱可能となるコネクタであって、
熱膨張することにより前記ロックアームをロック解除方向へ変位させる第1熱膨張部材と、
前記雄側対向面と前記雌側対向面との間に介在するように配された第2熱膨張部材とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
ワイヤーハーネスに引火してコネクタの温度が上昇すると、第1熱膨張部材が、熱膨張してロックアームをロック解除方向へ変位させるので、両ハウジングが離脱可能となる。そして、第2熱膨張部材が、熱膨張することによって雄側対向面と雌側対向面を離間させると、両ハウジングが離脱されるので、ワイヤーハーネスの延焼が阻止される。ロックアームによるロックを解除する第1熱膨張部材と、両ハウジングを離脱させる第2熱膨張部材は、ワイヤーハーネスの全長に亘って設ける必要がないので、コストを低減しながら、ワイヤーハーネスの延焼を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1において雄側ハウジングと雌側ハウジングが嵌合されている状態をあらわす一部切欠側面図
図2】第1熱膨張部材の熱膨張によりロックアームによるロックが解除された状態をあらわす一部切欠側面図
図3】第2熱膨張部材の熱膨張により雄側ハウジングと雌側ハウジングが離脱を開始した状態をあらわす一部切欠側面図
図4】雄側ハウジングと雌側ハウジングの離脱動作が完了した状態をあらわす一部切欠側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)本発明のコネクタは、前記第2熱膨張部材が、前記雌側対向面又は前記雄側対向面に形成した収容凹部内に収容されていてもよい。この構成によれば、第2熱膨張部材を雌側ハウジング又は雄側ハウジングに確実に取り付けることができる。
【0009】
(2)本発明のコネクタは、(1)において、前記雄側対向面と前記雌側対向面のうち前記収容凹部が形成されていない側の前記対向面に、前記収容凹部に収容される突部が形成されていてもよい。この構成によれば、第2熱膨張部材の熱膨張力が、収容凹部内で突部を介して両対向面を離間させる力として無駄なく作用する。
【0010】
(3)本発明のコネクタは、前記第2熱膨張部材が、熱膨張性ゴムからなり、前記雄側ハウジングの雄端子金具と前記雌側ハウジングの雌端子金具との接続領域を包囲するように配され、前記雄側ハウジングと前記雌側ハウジングが嵌合した状態では、前記第2熱膨張部材が前記雄側対向面と前記雌側対向面とに液密状に密着してもよい。この構成によれば、第2熱膨張部材を利用して両ハウジングの嵌合部分の防水を図ることができる。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図4を参照して説明する。本実施例1のコネクタCは、複数本の被覆電線Wを束ねて構成されるワイヤーハーネスHの途中に設けられたものであり、ワイヤーハーネスHに引火した炎が被覆電線Wを伝って延焼することを遮断する機能を備えている。被覆電線Wは、芯線Waを可燃性の絶縁被覆Wbで包囲した周知形態のものである。
【0012】
コネクタCは、複数の雄端子金具20が取り付けられた雄側ハウジング10と、複数の雌端子金具40が取り付けられた雌側ハウジング30とを備えている。両ハウジング10,30が嵌合した状態では、雄端子金具20が雌端子金具40と接続することにより、ワイヤーハーネスHが導通可能な状態となる。また、両ハウジング10,30が離脱すると、雄端子金具20と雌端子金具40が分離してワイヤーハーネスHにおける導通が遮断されるとともに、ワイヤーハーネスHの延焼が阻止される。
【0013】
雄側ハウジング10は、合成樹脂製であり、端子保持部11と、端子保持部11の前端部(図1〜4における右側の端部)の外周縁から前方へ突出したフード部12とを一体に形成したものである。端子本体部21の前端面、即ちフード部12の奥端面は、雄側対向面13となっている。この雄側対向面13には、フード部12よりも一回り小さい略角筒状(周壁状)をなす突部14が一体に形成されている。突部14の壁面は、両ハウジング10,30の嵌合方向と平行をなしている。
【0014】
フード部12は、略角筒状をなす。フード部12を構成する上壁部の一部は、両ハウジング10,30を嵌合状態にロックするためのロックアーム15となっている。フード部12の上壁部には、その前端縁から後方へ切り込んだ左右一対のスリット17(図2,3を参照)が形成され、上壁部のうち一対のスリット17の間の部分が、前方へ片持ち状に延出した形態のロックアーム15となっている。ロックアーム15の前端部に近い位置には、ロックアーム15の内面から外面に貫通した形態のロック孔16が形成されている。
【0015】
ロックアーム15は、常には、上壁部と面一状をなすロック位置(図1,4を参照)に保持されている。ロックアーム15にフード部12の内側からの外力が作用すると、ロックアーム15は、その後端部(基端部)を支点として斜め姿勢をとりながらロック解除方向(フード部12の外面側)へ弾性変形し得るようになっている。ロックアーム15がロック位置にある状態では、両ハウジング10,30が嵌合状態にロックされて離脱動作を規制される。また、ロックアーム15がロック解除方向へ弾性撓みすると、両ハウジング10,30のロックが解除され、両ハウジング10,30が離脱し得る状態となる。
【0016】
雄側ハウジング10に取り付けられた雄端子金具20は、図1に示すように、端子保持部11内に収容された端子本体部21と、端子本体部21から前方へ突出するタブ22と、端子本体部21の後端に連なって端子本体部21内に収容された圧着部23とから構成されている。圧着部23には、被覆電線Wが接続されている。タブ22は、雄側対向面13から前方へ突出している。雄側ハウジング10に取り付けられた全ての雄端子金具20のタブ22は、雄側対向面13から突出する周壁状の突部14により一括して包囲されている。
【0017】
雌側ハウジング30は、合成樹脂製であり、全体としてブロック状をなしている。雌側ハウジング30は、フード部12内に嵌入することによって雄側ハウジング10と嵌合される。雌側ハウジング30の前端面、即ち両ハウジング10,30が嵌合する過程で雄形対向面13に対して正対した状態で接近する面は、雌側対向面31となっている。雌側ハウジング30の外面のうちロックアーム15と対向する上面には、ロック突起32が形成されている。同じく、雌側ハウジング30の外面のうちロックアーム15と対向する上面には、取付け凹部33が形成されている。取付け凹部33には、第1熱膨張部材51が収容されている。
【0018】
第1熱膨張部材51の材質は、熱膨張性黒鉛が含有されたゴム材料である。熱膨張する前の第1熱膨張部材51は、取付け凹部33の奥端面に対し、接着剤(図示省略)により固着されている。但し、第1熱膨張部材51の側面は、接着されず、取付け凹部33の内壁面に対して相対変位し得るようになっている。また、熱膨張する前の第1熱膨張部材51の外面は、雌側ハウジング30の外面に対してほぼ面一状をなしている。第1熱膨張部材51は、例えば250〜300℃に加熱されると急激に膨張するようになっており、その膨張率は、最大で10倍程度に達する。熱膨張した第1熱膨張部材51は、雌側ハウジング30の外面から外方へ膨出する。このときの熱膨張力は、ロックアーム15に対し、ロック解除方向へ弾性変形させる押圧力として作用する。
【0019】
雌側ハウジング30には、雄側対向面13を深く凹ませた形態の収容凹部34が形成されている。収容凹部34は、雌側対向面31の外周縁に沿い、且つ全周に亘って連続した溝状をなしている。収容凹部34の正面視形状は、突部14と同様、略角形をなしている。そして、両ハウジング10,30の嵌合過程、離脱過程、及び正規嵌合状態では、収容凹部34内に突部14が嵌入されるようになっている。収容凹部34の内壁面は、両ハウジング10,30の嵌合方向と平行をなしている。
【0020】
収容凹部34の深さ(奥行き)寸法、即ち雌側対向面31から収容凹部34の奥端面までの前後方向(両ハウジング10,30の嵌合方向と平行な方向)の寸法は、雄側対向面13からの突部14の突出寸法よりも少し大きい寸法とされている。したがって、図1,2に示すように、両ハウジング10,30が嵌合した状態では、収容凹部34の奥端部には、その奥端面と突部14の先端面(前端面)との間に挟まれた収容空間35が構成される。
【0021】
収容凹部34の奥端の収容空間35内には、第2熱膨張部材52が収容されている。第2熱膨張部材52は、略角形のリング状をなしている。収容凹部34(収容空間35)内に収容された第2熱膨張部材52は、接着剤(図示省略)により収容凹部34の奥端面に固着されている。但し、第2熱膨張部材52の側面は、接着されず、収容凹部34の内壁面に対して相対変位し得るようになっている。
【0022】
第2熱膨張部材52の材質は、第1熱膨張部材51と同様、熱膨張性黒鉛が含有されたゴム材料である。第2熱膨張部材52は、加熱されると急激に膨張するようになっており、その膨張率は、最大で10倍程度に達する。第2熱膨張部材52が熱膨張を開始する温度は、第1熱膨張部材51の熱膨張が開始する温度よりも高い温度に設定されている。熱膨張した第1熱膨張部材51は、耐火性を有し、断熱体としても機能する。熱膨張した第2熱膨張部材52は、収容凹部34内を前方へ進出し、このときの熱膨張力は、突部14に対し、収容凹部34外へ押し出す押圧力として作用する。
【0023】
雌側ハウジング30に取り付けられた雌端子金具40は、図1に示すように、前端部に角筒状接続部41を有し、角筒状接続部41の後方に圧着部42が形成された周知の形態のものである。圧着部には、被覆電線Wが接続されている。各雌端子金具40には、夫々、個別にタブ22に接続されるようになっている。
【0024】
次に、本実施例1の作用を説明する。両ハウジング10,30を嵌合する過程では、雌側ハウジング30がフード部12内に進入し、ロックアーム15が、ロック突起32との干渉によりロック位置からロック解除方向へ弾性撓みする。そして、両ハウジング10,30が正規の嵌合状態に至ると、ロックアーム15がロック位置へ弾性復帰し、ロック孔16とロック突起32が係止し、この係止作用により、両ハウジング10,30が嵌合状態にロックされる。この正規嵌合状態では、タブ22が名内に進入して雌端子金具40と導通可能に接続される。これにより、ワイヤーハーネスHが導通可能となる。
【0025】
また、両ハウジング10,30が正規嵌合した状態では、第1熱膨張部材51の外面が、ロックアーム15の内面に対し接近して対向した状態となる。つまり、第1熱膨張部材51がロックアーム15のロックを解除するために待機する状態となる。また、収容凹部34内では、突部14の先端面が、第2熱膨張部材52の前面に当接した状態となっている。つまり、第2熱膨張部材52が、両ハウジング10,30を離脱させるために待機する状態となる。
【0026】
また、第2熱膨張部材52はゴム材料からなり、突部14の先端面(前面)と第2熱膨張部材52の前面は、全周に亘って液密状に密着した状態となる。そして、突部14と第2熱膨張部材52との密着領域は、雄端子金具20と雌端子金具40との接続部分の全体を一括して包囲するような略角形である。したがって、雄側対向面13と雌側対向面31との間においては、外部から両端子金具20,40の接続部分への浸水が阻止された防水状態となっている。
【0027】
両ハウジング10,30が正規嵌合している状態で、ワイヤーハーネスHの絶縁被覆Wbに引火し、炎が絶縁被覆Wbを伝ってコネクタCに接近すると、両ハウジング10,30が高温に晒されて、第1熱膨張部材51と第2熱膨張部材52の温度が上昇する。すると、まず、図2に示すように、第1熱膨張部材51が熱膨張を開始し、ロックアーム15が第1熱膨張部材51の熱膨張による押圧力を受けてロック解除方向へ弾性撓みさせられる。これにより、両ハウジング10,30が、ロックアーム15によるロックから解放されて、離脱可能な状態となる。
【0028】
ロックアーム15によるロックが解除された後は、第2熱膨張部材52の温度が上昇する。すると、図3に示すように、第2熱膨張部材52が熱膨張を開始し、収容凹部34内では、突部14が熱膨張する第2熱膨張部材52により収容凹部34の開口側(前端側)に向かって押し動かされる。第2熱膨張部材52から突部14に作用する押圧力は、雄側対向面13を雌側対向面31から遠ざける力、即ち両ハウジング10,30を離脱させる力となる。
【0029】
雄端子金具20と雌端子金具40との間の接触抵抗と、ロックアーム15と第1熱膨張部材51との間の摩擦抵抗とを合わせた力は、両ハウジング10,30の離脱を妨げる離脱抵抗となるのである。しかし、この離脱抵抗に比べると、第2熱膨張部材52の熱膨張に伴って発生する離脱推進力が十分に大きいので、第2熱膨張部材52の熱膨張が進むのに伴い、両ハウジング10,30の離脱動作が進む。このとき、突部14の側面と収容凹部34の側面が摺接することよってガイド機能が発揮されるので、両ハウジング10,30が離脱過程で傾いてこじりを生じる虞はない。
【0030】
そして、図4に示すように、両端子金具20,40が離間するとともに、ロックアーム15が第1熱膨張部材51から離間し、雌側ハウジング30の全体がフード部12の外部へ押し出される。この状態では、ハウジング10,30の自重やワイヤーハーネスHからハウジング10,30に作用する引張力等により、両ハウジング10,30が完全に離脱する。両ハウジング10,30が離脱した状態では、例えば、雄側ハウジング10に被覆電線Wの炎が引火したとしても、その炎が雌側ハウジング30や雌側ハウジング30に接続されている被覆電線Wに伝播することはない。したがって、ワイヤーハーネスHの延焼が本実施例1のコネクタCで遮断される。
【0031】
本実施例1のコネクタCは、フード部12を有し、フード部12の奥端面が雄側対向面13となっている雄側ハウジング10と、正面の雌側対向面31を雄側対向面13に対向接近させながらフード部12内に嵌合される雌側ハウジング30と、雄側ハウジング10と雌側ハウジング30を嵌合状態にロック可能なロックアーム15とを備えており、ロックアーム15がロック解除方向へ変位することで両ハウジング10,30が離脱可能となり、両ハウジング10,30はいずれもワイヤーハーネスHに接続されている。そして、コスト低減を図りながらワイヤーハーネスHの延焼を防止する手段として、熱膨張することによりロックアーム15をロック解除方向へ変位させる第1熱膨張部材51を設けるとともに、雄側対向面13と雌側対向面31との間に介在するように配された第2熱膨張部材52を設けた。
【0032】
本実施例1のコネクタCは、ワイヤーハーネスHに引火してコネクタCの温度が上昇すると、第1熱膨張部材51が熱膨張してロックアーム15をロック解除方向へ変位させるので、両ハウジング10,30が離脱可能となる。そして、第2熱膨張部材52が熱膨張することによって雄側対向面13と雌側対向面31を離間させると、両ハウジング10,30が離脱されるので、ワイヤーハーネスHの延焼が阻止される。ロックアーム15によるロックを解除する第1熱膨張部材51と、両ハウジング10,30を離脱させる第2熱膨張部材52は、ワイヤーハーネスHの全長に亘って設ける必要がないので、コストを低減しながら、ワイヤーハーネスHの延焼を防止することができる。
【0033】
また、本実施例1のコネクタCは、第2熱膨張部材52が、雌側対向面31に形成した収容凹部34内に収容されているので、第2熱膨張部材52を雌側ハウジング30に確実に取り付けることができる。また、雄側対向面13に形成した突部14を収容凹部34に収容したので、収容凹部34内では、第2熱膨張部材52の熱膨張力を、突部14を介して両対向面を離間させる力として無駄なく機能させることができる。
【0034】
また、第2熱膨張部材52は、熱膨張性ゴムからなり、雄側ハウジング10の雄端子金具20と雌側ハウジング30の雌端子金具40との接続領域を一括して包囲するように配されている。そして、雄側ハウジング10と雌側ハウジング30が嵌合した状態では、第2熱膨張部材52が雄側対向面13の突部14の前端面と雌側対向面31の収容凹部34の奥端面とに液密状に密着している。本実施例1では、この構成により、第2熱膨張部材52を利用して両ハウジング10,30の嵌合部分の防水を図ることを実現した。
【0035】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、第1熱膨張部材を雌側ハウジングのみに設けたが、第1熱膨張部材は、ロックアームのみに設けてもよく、雌側ハウジングとロックアームの両方に設けてもよい。
(2)上記実施例1では、第2熱膨張部材を雌側対向面に形成した収容凹部内に設けたが、雌側対向面を全領域に亘って単一の平面とした上で、その対向面に第2熱膨張部材を接着してもよい。
(3)上記実施例1では、雄側対向面に形成した突部を、雌側対向面の収容凹部に収容したが、雄側対向面に突部を形成しない形態としてもよい。
(4)上記実施例1では、第2熱膨張部材を雌側対向面の外周縁部に沿うように配置したが、第2熱膨張部材は、雌側対向面のほぼ全領域を覆うような形態であってもよい。
(5)上記実施例1では、雌側対向面に設けた第2熱膨張部材の数を1つだけとしたが、雌側対向面に複数の第2熱膨張部材を設けてもよい。
(6)上記実施例1では、第2熱膨張部材を雌側対向面のみに設けたが、第2熱膨張部材は、雄側対向面のみに設けてもよく、雌側対向面と雄側対向面の両方に設けてもよい。この場合、雄側対向面に形成した収容凹部に第2熱膨張部材を収容してもよい。
(7)上記実施例1では、第2熱膨張部材が防水機構を発揮するようにしたが、第2熱膨張部材は防水機能を発揮しないものであってもよい。
(8)上記実施例1では、ロックアームを雄側ハウジングのフード部に形成したが、本発明は、ロックアームが雌側ハウジングに形成されている場合にも適用できる。この場合、第1熱膨張部材は、ロックアームと雄側ハウジングのうちの少なくとも一方に設ければよい。
(9)上記実施例1では、ワイヤーハーネスの途中に設けたコネクタに適用した例を説明したが、本発明は、ワイヤーハーネスと機器との間に設けたコネクタにも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
C…コネクタ
H…ワイヤーハーネス
10…雄側ハウジング
12…フード部
13…雄側対向面
14…突部
15…ロックアーム
20…雄端子金具
30…雌側ハウジング
31…雌側対向面
34…収容凹部
40…雌端子金具
51…第1熱膨張部材
52…第2熱膨張部材
図1
図2
図3
図4