特開2015-153616(P2015-153616A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-153616(P2015-153616A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6561 20140101AFI20150728BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150728BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20150728BHJP
【FI】
   H01M10/6561
   H01M2/10 E
   H01M10/613
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-26529(P2014-26529)
(22)【出願日】2014年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031BB03
5H031EE04
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA33
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC01
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】小型化とコスト低減を図る。
【解決手段】バッテリパック10は、バッテリモジュール14を収容するバッテリケース11と、バッテリケース11内への外気の流入を許容する冷風流入口16(通気部)と、冷風流入口16に設けられ、常には冷風流入口16を通して外気がバッテリケース11内に流入することを許容し、熱膨張することより冷風両入口16における外気の流入を遮断する第1熱膨張部材24と、バッテリケース11内への外気の流入を許容する放熱口20(通気部)と、放熱口20に設けられ、常には放熱口20を通して外気がバッテリケース11内に流入することを許容し、熱膨張することより放熱口20における外気の流入を遮断する第2熱膨張部材25とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、
前記バッテリケース内への外気の流入を許容する通気部と、
前記通気部に設けられ、常には前記通気部を通して外気が前記バッテリケース内に流入することを許容し、熱膨張することより前記通気部における外気の流入を遮断する熱膨張部材とを備えていることを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
前記通気部が、前記バッテリケースの壁面から突出した庇部を有しており、
前記熱膨張部材が前記庇部に配置されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記通気部が筒状をなしており、
前記熱膨張部材が前記通気部の内周面に配置されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリモジュールをバッテリケース内に収容した電気自動車用のバッテリパックにおいて、放熱性を高める手段としてバッテリケースの外面に放熱フィンを形成する技術が開示されている。この種のバッテリパックにおいて、放熱性を更に高める手段としては、バッテリケースの内部と外部とを連通させる放熱口を形成することが考えられる。
【0003】
しかし、放熱口をバッテリケースに形成すると、バッテリモジュールが発火した場合に、放熱口を通して空気(酸素)がバッテリケース内に供給されるため、自然鎮火は期待できない。この対策としては、特許文献2に記載された火災対策技術を適用することが可能である。これは、バッテリケース内で火災が発生したことを検知すると、バッテリケース内に消化剤を噴射して鎮火するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−82312号公報
【特許文献2】特開平09−074603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載された火災対策手段は、バッテリケース内に、火災が発生したことを検知するための火災検知手段と、火災検知手段の検知信号に基づいて消化剤を噴射するための非常装置とを設ける必要がある。そのため、バッテリケース全体が大型化するだけでなく、コストが高くつくという問題がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化とコスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバッテリパックは、
バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、
前記バッテリケース内への外気の流入を許容する通気部と、
前記通気部に設けられ、常には前記通気部を通して外気が前記バッテリケース内に流入することを許容し、熱膨張することより前記通気部における外気の流入を遮断する熱膨張部材とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、バッテリモジュールが発火すると、熱膨張部材が熱膨張してバッテリケース内への外気の流入が遮断されるので、自然鎮火する。本発明によれば、火災を検知するための装置や消火剤を噴射させる装置を、不要に若しくは簡素化できるので、バッテリモジュールの小型化とコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のバッテリパックの側面図
図2】冷風流入口において熱膨張部材が熱膨張する前の状態をあらわす部分拡大側断面図
図3】冷風流入口において熱膨張部材が熱膨張した状態をあらわす部分拡大側断面図
図4】放熱口において熱膨張部材が熱膨張する前の状態をあらわす部分拡大側断面図
図5】放熱口において熱膨張部材が熱膨張した状態をあらわす部分拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明のバッテリパックは、前記通気部が、前記バッテリケースの壁面から突出した庇部を有しており、前記熱膨張部材が前記庇部に配置されていてもよい。この構成によれば、熱膨張部材を安定して配置することができる。
【0010】
(2)本発明のバッテリパックは、前記通気部が筒状をなしており、前記熱膨張部材が前記通気部の内周面に配置されていてもよい。この構成によれば、通気部の内部を熱膨張部材によって確実に塞ぐことができる。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図5を参照して説明する。本実施例1のバッテリパック10は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されるものであり、バッテリケース11と、バッテリモジュール14と、熱膨張部材24,25とを備えて構成されている。
【0012】
バッテリケース11は、上面を凹ませたロアケース12と、下面を凹ませたアッパケース13とを上下に重ね合わせ、両ケース12,13をボルト締め等により結合して構成されている。バッテリモジュール14は、複数のセル(図示省略)を水平方向に並列して配置するとともに、各セルの電極を直列接続した周知の形態のものである。バッテリモジュール14は、ロアケース12に載置された状態で、バッテリケース11内に収容されている。バッテリモジュール14は発熱するため、冷却手段として、バッテリケース11に冷風が供給されるようになっているとともに、バッテリケース11内の熱を外部へ排出するようになっている。
【0013】
冷風をバッテリケース11に供給する手段として、ロアケース12を構成する下部周壁部15には、冷風流入口16(請求項に記載の通気部)が形成されている。図2に示すように、冷風流入口16は、下部周壁部15の一部を外面側へ円筒状に膨出させた筒部17を有しており、ロアケース12(バッテリケース11)の内部と外部とを連通させている。筒部17の内周には、全周に亘って連続した形態の第1収容溝18が形成されている。この第1収容溝18には、後述する第1熱膨張部材24が収容されるようになっている。
【0014】
筒部17の外周には、熱交換機(図示省略)で発生させた冷風をバッテリケース11側へ送り出す流路となる冷風供給ホース26が接続されている。冷風は、熱交換機に取り込んだ大気中の空気を冷却することによって発生させたものである。したがって、バッテリケース11の内部には、熱交換機と冷風供給ホース26と冷風流入口16を介して外気(酸素)が流入し得るようになっている。
【0015】
また、バッテリケース11内の熱を外部へ排出する手段として、アッパケース13を構成する上部周壁部19には、複数の放熱口20(請求項に記載の通気部)が形成されている。放熱口20は、アッパケース13(バッテリケース11)の内部と外部とを連通させている。したがって、放熱時には、バッテリケース11内の高温の空気が放熱口20を通してバッテリケース11外へ排出される。しかし、火災発生時等のようにバッテリケース11内の温度分布に片寄りが生じた場合には、一部の放熱口20を通って外気(酸素)がバッテリケース11内に流入し得るようになっている。
【0016】
図4に示すように、放熱口20は、上部周壁部19の一部を外側へ叩き出すことによって形成されている。放熱口20は、庇部21と、一対の側壁部22とを有している。庇部21は、上部周壁部19からバッテリケース11の外方に向かって斜め下向きに傾斜した板状に延出している。側壁部22は、その壁面を略鉛直方向に向けた状態で上部周壁部19からバッテリケース11の外方へ延出している。側壁部22の上端縁は庇部21の側縁部に連なっている。庇部21の下面(放熱口20に臨む面)と、両側壁部22の内面(放熱口20に臨む面)の上端部には、第2収容溝23が形成されている。第2収容溝23は、庇部21及び両側壁部22に亘って連続した1つの凹部である。
【0017】
本実施例1のバッテリパック10には、バッテリケース11内で火災が発生した時に、自然鎮火を実現する手段として、第1熱膨張部材24と複数の第2熱膨張部材25とが設けられている。第1熱膨張部材24は、円環形をなしており、冷風流入口16(筒部17の内周)に形成した第1収容溝18内に収容されている。収容された第1熱膨張部材24の外周面は、第1収容溝18の内周面(溝底面)に対し接着剤(図示省略)により接着されている。しかし、第1熱膨張部材24の外面のうちその軸線と直交する一対の端面は、第1収容溝18の内側面に対して相対変位し得るようになっている。また、図2に示すように、第1熱膨張部材24が熱膨張していない状態では、第1熱膨張部材24の内周面が、筒部17の内周面に対して殆ど段差無く連なっている。
【0018】
複数の第2熱膨張部材25は、夫々、放熱口20に形成した第2収容溝23内に個別に収容されている。つまり、第2熱膨張部材25は、第2収容溝23に沿うように屈曲した形状をなしている。収容された第2熱膨張部材25のうち第2収容溝23の溝底面と対応する領域は、接着剤(図示省略)により第2収容溝23の溝底面に接着されている。しかし、第2熱膨張部材25のうち第2収容溝23の溝底面と非対応の領域は、第2収容溝23の内側面に対して相対変位し得るようになっている。また、図4に示すように、第2熱膨張部材25が熱膨張していない状態では、第2熱膨張部材25の内周面が、庇部21の下面及び側壁部22の内側面に対して殆ど段差無く連なっている。
【0019】
第1熱膨張部材24と第2熱膨張部材25の材質は、いずれも、熱膨張性黒鉛が含有されたゴム材料である。第1熱膨張部材24と第2熱膨張部材25は、例えば250〜300℃に加熱されると急激に膨張するようになっており、その膨張率は、最大で10倍程度に達するようになっている。熱膨張した第1熱膨張部材24は、第1収容溝18の外方(つまり、冷風流入口16の径方向内側)へ膨出する。また、熱膨張した第2熱膨張部材25は、第2収容溝23の外方(庇部21の下方であり、両側壁部22の内側)へ膨出するようになっている。
【0020】
次に、本実施例1の作用を説明する。バッテリケース11内のバッテリモジュール14が発火すると、バッテリケース11が高温となるため、第1熱膨張部材24と第2熱膨張部材25が熱膨張する。図3に示すように、熱膨張した第1熱膨張部材24は、冷風流入口16の全体を塞ぎ、冷風流入口16からバッテリケース11内への空気(酸素)の流入を遮断する。また、熱膨張した第2熱膨張部材25は、放熱口20の全体を塞ぎ、放熱口20からバッテリケース11内への空気(酸素)の流入を遮断する。このように第1熱膨張部材24と第2熱膨張部材25によってバッテリケース11内への酸素の供給が遮断されるので、バッテリケース11内は自然に鎮火する。
【0021】
本実施例1のバッテリパック10は、バッテリモジュール14を収容するバッテリケース11と、バッテリケース11内への外気の流入を許容する冷風流入口16と、冷風流入口16に設けた第1熱膨張部材24と、バッテリケース11内への外気の流入を許容する放熱口20と、放熱入口に設けた第2熱膨張部材25とを備えている。第1熱膨張部材24は、常には冷風流入口16を通して外気がバッテリケース11内に流入することを許容し、第2熱膨張部材25は、常には放熱口20を通して外気がバッテリケース11内に流入することを許容する。
【0022】
しかし、第1熱膨張部材24は、熱膨張することよって冷風流入口16における外気の流入を遮断し、第2熱膨張部材25は、熱膨張することよって放熱口20における外気の流入を遮断する。この構成によれば、バッテリモジュール14が発火すると、熱膨張部材24,25が熱膨張してバッテリケース11内への外気の流入が遮断されるので、自然鎮火する。本実施例1によれば、火災を検知するための装置や消火剤を噴射させる装置が、不要にでき若しくは簡素化できるので、バッテリモジュール14の小型化とコスト低減を図ることができる。
【0023】
また、本実施例1のバッテリパック10は、通気部としての放熱口20が、バッテリケース11の壁面から突出した庇部21を有しており、第2熱膨張部材25が庇部21に配置されているのであるが、この構成によれば、第2熱膨張部材25を安定して配置することができる。また、通気部としての冷風流入口16が筒状をなしており、第1熱膨張部材24が冷風流入口16の内周面に配置されているのであるが、この構成によれば、冷風流入口16の内部を第1熱膨張部材24によって確実に塞ぐことができる。
【0024】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、冷風流入口をロアケースのみに設けたが、冷風流入口は、アッパケースのみに設けた場合や、ロアケースとアッパケースの両方に設けた場合にも適用できる。
(2)上記実施例1では、放熱口をアッパケースのみに設けたが、放熱口は、ロアケースのみに設けた場合や、ロアケースとアッパケースの両方に設けた場合にも適用できる。
(3)上記実施例1では、熱膨張部材を、冷風流入口の内周面の全周に亘って配置したが、熱膨張部材は、冷風流入口の内周面のうち周方向の一部のみに配置してもよく、周方向に間隔を空けた複数箇所に分散して配置してもよい。
(4)上記実施例1では、熱膨張部材を、放熱口を構成する庇部と側壁部の両方に亘って配置したが、熱膨張部材は、庇部のみに配置してもよく、側壁部のみに配置してもよい。
(5)上記実施例1では、通気部が、冷風流入口と放熱口である場合について説明したが、本発明は、通気部が、冷風流入口や放熱口とは異なる用途に供されるもの(例えば、バッテリモジュールの充電や放電を行うためのケーブルが接続されるコネクタ等)であってもよい。また、ロアケースとアッパケースとの合せ面等、組付け公差に起因して生じるクリアランスが、通気部となってしまうような場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0025】
10…バッテリパック
11…バッテリケース
14…バッテリモジュール
16…冷風流入口(通気部)
20…放熱口(通気部)
21…庇部
24…第1熱膨張部材
25…第2熱膨張部材
図1
図2
図3
図4
図5