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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-153670(P2015-153670A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】コネクタ付電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20150728BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01B7/00 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-28070(P2014-28070)
(22)【出願日】2014年2月18日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】芦田 大地
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】寺内 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
(72)【発明者】
【氏名】蓮井 宏介
【テーマコード(参考)】
5E085
5G309
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD13
5E085EE04
5E085FF01
5E085GG04
5E085HH06
5E085JJ36
5E085JJ47
5G309FA05
5G309FA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の銅電線用のコネクタをそのまま流用してアルミニウム電線を含むコネクタ付電線を提供する。
【解決手段】コネクタ付電線においては、端子付アルミニウム電線の圧着端子における被覆圧着部182が、円形よりも入口側空間51の断面形状に近い輪郭形状を有する。被覆圧着部182は、少なくとも第一方向および第二方向のうちの一方において絶縁被覆1920を圧縮する状態で、かつ、端子付アルミニウム電線10の芯線1910から入口側空間51の四方の隅513に向かう方向における絶縁被覆1920の厚みが自然状態の絶縁被覆1920の厚みよりも拡大した状態で、絶縁被覆1920に圧着されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に直交する第一方向および第二方向各々において対向する二対の対向内壁面で囲まれた直方体状の入口側空間を含む複数のキャビティが形成された絶縁性のコネクタと、
芯線および前記芯線の周囲を覆う絶縁被覆を有する絶縁電線と前記絶縁電線の端部に圧着された状態で前記コネクタの前記キャビティ内に収容された圧着端子とを備える端子付電線と、を備え、
前記端子付電線の前記圧着端子は、前記絶縁被覆における前記入口側空間内に位置する部分に圧着された被覆圧着部を有し、
前記端子付電線は、アルミニウムを主成分とする前記芯線を有する端子付アルミニウム電線を含み、
前記端子付アルミニウム電線の前記圧着端子における前記被覆圧着部は、円形よりも前記入口側空間の断面形状に近い輪郭形状を有し、少なくとも前記第一方向および前記第二方向のうちの一方において前記絶縁被覆を圧縮する状態で、かつ、前記端子付アルミニウム電線の前記芯線から前記入口側空間の四隅に向かう方向における前記絶縁被覆の厚みが自然状態の前記絶縁被覆の厚みよりも拡大した状態で、前記絶縁被覆に圧着されている、コネクタ付電線。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ付電線であって、
前記端子付電線は、銅を主成分とする前記芯線を有する端子付銅電線をさらに含み、
前記端子付銅電線の前記端子における前記被覆圧着部は、前記入口側空間の断面形状よりも円形に近い輪郭形状を有する、コネクタ付電線。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ付電線であって、
前記端子付アルミニウム電線の前記圧着端子における前記被覆圧着部の外側面は、前記二対の対向内壁面各々に平行な平坦面を含む、コネクタ付電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線および圧着端子を有する端子付電線とコネクタとを備えるコネクタ付電線に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるワイヤーハーネスにおいて、コネクタ付電線は、絶縁電線および絶縁電線の端部に圧着された圧着端子を備える端子付電線と、その端子付電線の端部に取り付けられたコネクタと、を備える。
【0003】
絶縁電線は、芯線と芯線の周囲を覆う絶縁被覆とを有する。絶縁電線の芯線は、導電性に優れた銅を主成分とする線材を含むことが多い。以下、銅を主成分とする芯線を有する絶縁電線を銅電線と称する。
【0004】
圧着端子は、絶縁電線の絶縁被覆の端部に接続される被覆圧着部と、絶縁電線の端部の芯線に圧着される芯線圧着部と、相手側端子に接続可能な接点部と、を有する。圧着端子は、一般的には、銅を主成分とする金属の部材である。
【0005】
コネクタは、各種の電装機器に接続される部材である。コネクタには、複数のキャビティが形成されている。このキャビティ内に端子付電線の端部が挿入されることにより、端子付電線の端部にコネクタが装着される。
【0006】
例えば、コネクタ付電線においては、絶縁電線の太さが異なる複数種類の端子付電線がコネクタのキャビティ内に装着される。また、コネクタの複数のキャビティの一部にのみ端子付電線が装着される場合もある。
【0007】
ところで、昨今、車両の軽量化などの要請により、アルミニウム電線が採用されつつある。アルミニウム電線は、アルミニウムを主成分とする芯線を有する絶縁電線である。アルミニウム電線は、銅電線に比べ、軽量である。
【0008】
しかしながら、アルミニウムは銅に比べて電気伝導率が低い。そのため、アルミニウム電線が採用される場合、同等の導電性能を有する銅電線よりも太い絶縁電線を用いることが必要である。
【0009】
従って、コネクタ付電線において、銅電線がアルミニウム電線に置き換えられると、銅電線用の規格で作られたコネクタのキャビティ内に端子付電線における圧着端子の被覆圧着部の部分を挿入できないという問題が生じることがある。
【0010】
一方、特許文献1に示されるコネクタ付電線は、隣接する2つのキャビティ間を仕切る第一隔壁及び第二隔壁を有するコネクタを備える。以下、隣接する2つのキャビティを、それぞれ第一キャビティおよび第二キャビティと称する。
【0011】
特許文献1に示されるコネクタ付電線のコネクタにおいて、第一隔壁は、コネクタに固定されており、端子付電線における圧着端子の接点部側の部分を仕切る。第二隔壁は、変位可能であり端子付電線における圧着端子の被覆圧着部側の部分を仕切る。この場合、太い電線を含む端子付電線が第一キャビティに挿入されると、第二隔壁が第二キャビティ側へ押し退けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013−168335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
製造コストの削減の要請により、アルミニウム電線を含むコネクタ付電線において、既存の銅電線用のコネクタをそのまま流用できることが求められている。
【0014】
そこで、本発明は、既存の銅電線用のコネクタをそのまま流用してアルミニウム電線を含むコネクタ付電線を提供できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1態様に係るコネクタ付電線は、絶縁性のコネクタと端子付電線とを備える。上記コネクタには、複数のキャビティが形成されている。上記キャビティは、相互に直交する第一方向および第二方向各々において対向する二対の対向内壁面で囲まれた直方体状の入口側空間を含む。上記端子付電線は、絶縁電線と圧着端子とを備える。上記絶縁電線は、芯線および上記芯線の周囲を覆う絶縁被覆を有する。上記圧着端子は、上記絶縁電線の端部に圧着された状態で上記コネクタの上記キャビティ内に収容されている。また、上記端子付電線の上記圧着端子は、上記絶縁被覆における上記入口側空間内に位置する部分に圧着された被覆圧着部を有する。そして、上記端子付電線は、アルミニウムを主成分とする上記芯線を有する端子付アルミニウム電線を含む。そして、上記端子付アルミニウム電線の上記圧着端子における上記被覆圧着部は、円形よりも上記入口側空間の断面形状に近い輪郭形状を有する。また、上記端子付アルミニウム電線の上記圧着端子における上記被覆圧着部は、少なくとも上記第一方向および上記第二方向のうちの一方において上記絶縁被覆を圧縮する状態で、かつ、上記端子付アルミニウム電線の上記芯線から上記入口側空間の四隅に向かう方向における上記絶縁被覆の厚みが自然状態の上記絶縁被覆の厚みよりも拡大した状態で、上記絶縁被覆に圧着されている。
【0016】
第2態様に係るコネクタ付電線は、第1態様に係るコネクタ付電線の一態様である。第2態様に係るコネクタ付電線においては、上記端子付電線が、銅を主成分とする上記芯線を有する端子付銅電線をさらに含む。そして、上記端子付銅電線の上記端子における上記被覆圧着部は、上記入口側空間の断面形状よりも円形に近い輪郭形状を有する。
【0017】
第3態様に係るコネクタ付電線は、第1態様又は第2態様に係るコネクタ付電線の一態様である。第3態様に係るコネクタ付電線においては、上記端子付アルミニウム電線の上記圧着端子における上記被覆圧着部の外側面は、上記二対の対向内壁面各々に平行な平坦面を含む。
【発明の効果】
【0018】
上記の各態様においては、端子付アルミニウム電線に含まれる圧着端子の被覆圧着部は、銅電線用のコネクタにおけるキャビティの入口側空間に収容可能な大きさで、円形よりも入口側空間の断面形状(矩形状)に近い輪郭形状に成形されている。そのような矩形に近似した輪郭形状の被覆圧着部は、キャビティを形成する二対の対向内壁面が対向する2方向のうちの少なくとも一方の方向において絶縁被覆を圧縮している。しかしながら、その被覆圧着部の内側において、端子付アルミニウム電線の芯線からキャビティの入口側空間の四隅に向かう方向における絶縁被覆の厚みは、自然状態の絶縁被覆の厚みよりも拡大した状態となっている。
【0019】
圧着端子の被覆圧着部の内側において、絶縁被覆における厚みが拡大した部分は、被覆圧着部の圧力で圧縮した部分の弾力によって隣接する領域から押し寄せられることにより形成された部分である。そのため、圧着端子の被覆圧着部の部分に囲まれた絶縁被覆においては、芯線側に圧縮された部分と厚みが拡大した部分とが存在する。
【0020】
従来のコネクタ付電線において、キャビティの入口側空間の四隅の領域は、輪郭が概ね円形である絶縁被覆との間で、比較的大きな隙間が形成されやすい領域である。上記の各態様において、被覆圧着部は、従来活用されていなかったキャビティ内の四隅の領域を有効活用することにより、太いアルミニウム電線を含む端子付アルミニウム電線における絶縁被覆を過剰に圧縮せずにキャビティ内に収容可能な構造を有している。この場合、被覆圧着部が絶縁被覆をその全周に亘って圧縮する場合に比べ、絶縁被覆にかかる負荷を軽減することができる。
【0021】
以上に示されることから、既存の銅電線用のコネクタをそのまま流用してアルミニウム電線を含むコネクタ付電線を提供することが可能となる。また、このコネクタ付電線においては、被覆圧着部からの圧力によって絶縁被覆にかかる負荷を軽減することができる。
【0022】
また、上記の第2態様においては、端子付電線は、銅を主成分とする芯線を有する端子付銅電線をさらに含む。そして、端子付銅電線の端子における被覆圧着部は、入口側空間の断面形状よりも円形に近い輪郭形状を有する。即ち、このコネクタ付電線においては、アルミニウム電線と銅電線とが混在している。そして、端子付銅電線における圧着端子の被覆圧着部に比べ、端子付アルミニウム電線の圧着端子の被覆圧着部の方が、よりコネクタのキャビティの入口側空間の断面形状に近い形状を有する。このコネクタ付電線は、導電性に優れた銅電線を一部に採用しつつ、コネクタ付電線全体の軽量化を図りたい場合に有効である。
【0023】
また、上記の第3態様においては、端子付アルミニウム電線の圧着端子における被覆圧着部の外側面は、二対の対向内壁面各々に平行な平坦面を含む。この場合、端子付アルミニウム電線の圧着端子における被覆圧着部の輪郭形状を、よりコネクタのキャビティの断面形状に近付けることが可能となる。これにより、キャビティの対向内壁面と圧着端子の被覆圧着部との間の無駄な隙間をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るコネクタ付電線の一部切り欠き平面図である。
図2】第1実施形態に係るコネクタ付電線の分解斜視図である。
図3】第1実施形態に係るコネクタ付電線の主要部の断面図である。
図4】コネクタのキャビティと従来の端子付アルミニウム電線における被覆圧着部とを示す断面図である。
図5】第1実施形態に係るコネクタ付電線が有する端子付アルミニウム電線の製造における一部の工程を示す断面図である。
図6】第1実施形態に係るコネクタ付電線が有する端子付アルミニウム電線の製造における一部の工程を示す断面図である。
図7】第1実施形態に係るコネクタ付電線が有する端子付アルミニウム電線の製造における一部の工程を示す断面図である。
図8】第2実施形態に係るコネクタ付電線に含まれるコネクタのキャビティと従来の端子付アルミニウム電線における被覆圧着部とを示す断面図である。
図9】第2実施形態に係るコネクタ付電線に含まれるコネクタのキャビティと端子付アルミニウム電線における被覆圧着部とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0026】
<第1実施形態>
図1〜7を参照しつつ、第1実施形態に係るコネクタ付電線1について説明する。本実施形態に係るコネクタ付電線1を含むワイヤーハーネスは、例えば、自動車等の車両に搭載される。
【0027】
はじめに、図1〜3を参照しつつ、コネクタ付電線1の構成について説明する。
【0028】
<コネクタ付電線>
コネクタ付電線1は、絶縁性(非導電性)のコネクタ5および端子付アルミニウム電線10を備える。本実施形態では、コネクタ付電線1は、さらに、端子付銅電線20を備えている。
【0029】
図1は、コネクタ付電線1の一部切り欠き平面図であり、コネクタ5の内部を示す。図2は、コネクタ付電線1の分解斜視図である。図2においては、コネクタ5と端子付アルミニウム電線10および端子付銅電線20とが未接続である。図3は、コネクタ5、端子付アルミニウム電線10および端子付銅電線20における主要部の断面図である。
【0030】
なお、本実施形態は、コネクタ付電線1が1本の端子付アルミニウム電線10と1本の端子付銅電線20とを含む場合の事例である。他にも、コネクタ付電線1が、複数本の端子付アルミニウム電線10と複数本の端子付銅電線20とを備える場合が考えられる。また、コネクタ付電線1が、端子付銅電線20を備えず、1本又は複数本の端子付アルミニウム電線10のみを備える場合も考えられる。
【0031】
<コネクタ付電線:端子付アルミニウム電線>
図1,2に示されるように、端子付アルミニウム電線10は、絶縁電線19と圧着端子18とを備える。
【0032】
図3に示されるように、絶縁電線19は、長尺な導体である芯線1910と、その芯線1910の周囲を覆う絶縁体である絶縁被覆1920と、を有する。
【0033】
芯線1910は、アルミニウムを主成分とする金属の線材である。芯線1910は、例えば、細い導体からなる複数の素線が撚り合わされた撚り線である。しかしながら、芯線1910が単線であることも考えられる。絶縁電線19は、アルミニウム電線と称することもできる。
【0034】
絶縁電線19の絶縁被覆1920は、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル又はポリアミド系ナイロンなどを主成分とする合成樹脂の部材である。
【0035】
圧着端子18は、絶縁電線19の端部に圧着されている。圧着端子18が取り付けられる絶縁電線19の端部は、予め一定の長さの分の芯線1910の周囲から絶縁被覆1920が剥がれた状態、即ち、一定の長さ分の芯線1910が絶縁被覆1920から伸び出た状態に加工されている。
【0036】
以下、絶縁電線19の端部において、絶縁被覆1920の端から伸び出た芯線1910を裸芯線部191と称する。また、絶縁電線19の絶縁被覆1920における端部の一定の範囲(数ミリメートルから十数ミリメートル程度の長さの範囲)の部分を被覆端部192と称する。
【0037】
圧着端子18は、被覆端部192に圧着された被覆圧着部182を有する。本実施形態において、圧着端子18は、さらに、芯線圧着部181および接点部183を有する。
【0038】
図1〜3に示される例においては、被覆圧着部182は、底板部1821および一対のかしめ片1822を有する。
【0039】
底板部1821は、絶縁電線19を一の方向から支える。底板部1821は、後述する芯線圧着部181に連なっている。また、一対のかしめ片1822は、絶縁電線19の被覆端部192の周囲に沿って曲げられ、かしめられている。
【0040】
芯線圧着部181は、被覆圧着部182と同様、絶縁電線19の裸芯線部191にかしめられている。被覆圧着部182および芯線圧着部181各々が、絶縁電線19の被覆端部192および裸芯線部191にかしめられることにより、圧着端子18が絶縁電線19に圧着される。
【0041】
図1,2に示される被覆圧着部182は、絶縁電線19の両側に起立する一対のかしめ片1822が重ならない突き合わせタイプである。しかしながら、被覆圧着部182が、一対のかしめ片1822が重ねられて絶縁電線19に圧着される重ね合わせタイプであること、或いは、筒状に形成されたクローズドバレルタイプであることも考えられる。
【0042】
また、芯線圧着部181も、突き合わせタイプ、重ね合わせタイプ或いはクローズドバレルタイプであることが考えられる。
【0043】
接点部183は、圧着端子18の接続相手となる不図示の相手側端子と嵌り合うことによって相手側端子に接続される部分である。図1,2が示す例において、接点部183は、相手側端子が嵌め入れられる穴が形成された筒状の部分である。しかしながら、接点部183が、相手側端子の端子挿入孔に嵌め入れられる棒状の導体である場合等も考えられる。
【0044】
<コネクタ付電線:端子付銅電線>
図1,2に示されるように、端子付銅電線20は、絶縁電線29と圧着端子28とを備える。圧着端子28は、圧着端子18と同様の構造を有する。
【0045】
図1〜3に示されるように、絶縁電線29は、長尺な導体である芯線2910と、その芯線2910の周囲を覆う絶縁体である絶縁被覆2920と、を有する。
【0046】
芯線2910は、銅を主成分とする金属の線材である。芯線2910は、例えば、細い導体からなる複数の素線が撚り合わされた撚り線である。しかしながら、芯線2910が単線であることも考えられる。絶縁電線29は、銅電線と称することもできる。
【0047】
絶縁電線29の絶縁被覆2920は、絶縁被覆1920と同様、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル又はポリアミド系ナイロンなどを主成分とする合成樹脂の部材である。
【0048】
圧着端子28は、絶縁電線29の端部に圧着されている。圧着端子28が取り付けられる絶縁電線29の端部は、予め一定の長さの分の芯線2910の周囲から絶縁被覆2920が剥がれた状態、即ち、一定の長さ分の芯線2910が絶縁被覆2920から伸び出た状態に加工されている。
【0049】
以下、絶縁電線29の端部において、絶縁被覆2920の端から伸び出た芯線2910を裸芯線部291と称する。また、絶縁電線29の絶縁被覆2920における端部の一定の範囲(数ミリメートルから十数ミリメートル程度の長さの範囲)の部分を被覆端部292と称する。
【0050】
本実施形態において、圧着端子28は、被覆端部292に圧着された被覆圧着部282を有する。なお、図1,2に示される例では、圧着端子28は、さらに、芯線圧着部281および接点部283を有する。
【0051】
圧着端子18と同様、被覆圧着部282は、絶縁電線29の被覆端部292にかしめられている。また、芯線圧着部281は、絶縁電線29の裸芯線部291にかしめられている。被覆圧着部282および芯線圧着部281それぞれが、絶縁電線29の被覆端部292および裸芯線部291にかしめられることにより、圧着端子28が絶縁電線29に圧着される。
【0052】
また、図1,2に示される被覆圧着部282および芯線圧着部281は、突き合わせタイプである。しかしながら、圧着端子18と同様、被覆圧着部282および芯線圧着部281が、重ね合わせタイプであること、或いはクローズドバレルタイプであること等も考えられる。
【0053】
接点部283は、圧着端子28の接続相手となる不図示の相手側端子と嵌り合うことによって相手側端子に接続される部分である。図1,2が示す例において、接点部283は、相手側端子が嵌め入れられる穴が形成された筒状の部分である。しかしながら、接点部283が、相手側端子の端子挿入孔に嵌め入れられる棒状の導体である場合も考えられる。
【0054】
<コネクタ付電線:コネクタ>
コネクタ付電線1におけるコネクタ5は、絶縁性の部材である。コネクタ5は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂材料で構成されている。
【0055】
コネクタ5には、複数のキャビティ50が形成されている。図1,2が示す例は、コネクタ5に6つのキャビティ50が形成されている場合の事例である。
【0056】
複数のキャビティ50内には、それぞれ端子付アルミニウム電線10の圧着端子18および端子付銅電線20の圧着端子28が収容される。なお、図1,2に示される例においては、複数のキャビティ50のうちの一部にのみ、端子付アルミニウム電線10における圧着端子18および端子付銅電線20における圧着端子28が収容されている。しかしながら、複数のキャビティ50の全部に、それぞれ端子付アルミニウム電線10における圧着端子18および端子付銅電線20における圧着端子28が収容されていることも考えられる。
【0057】
キャビティ50は、直方体状の入口側空間51を含む。本実施形態では、キャビティ50は、さらに、奥側空間52を含んでいる。
【0058】
直方体状の入口側空間51は、相互に直交する第一方向および第二方向各々において対向する二対の対向内壁面510で囲まれている。
【0059】
以下、本実施形態においては、便宜上、第一方向を図3に示されるキャビティ50の入口側空間51の縦方向と定義する。また、第二方向を図3に示されるキャビティ50の入口側空間51の横方向と定義する。第一方向における一対の対向内壁面510の幅は、第二方向における一対の対向内壁面510の幅よりも小さい。
【0060】
また、必要に応じて、第一方向において対向する一対の対向内壁面510をそれぞれ対向内壁面511と称する。また、第二方向において対向する一対の対向内壁面510をそれぞれ対向内壁面512と称する。図1は、コネクタ5における一対の対向内壁面511の一方が切り欠かれた状態を示す。
【0061】
端子付アルミニウム電線10が挿入されるキャビティ50の入口側空間51は、端子付アルミニウム電線10における圧着端子18の被覆圧着部182の部分を取り囲む。同様に、端子付銅電線20が挿入されるキャビティ50の入口側空間51は、端子付銅電線20における圧着端子28の被覆圧着部282の部分を取り囲む。
【0062】
本実施形態において、奥側空間52は、相互に直交する第一方向および第二方向各々において対向する二対の対向内壁面520とキャビティ50の最深部に位置する奥面523とで囲まれている。図1,2に示される例では、奥側空間52は、入口側空間51と同じ直方体状の空間である。
【0063】
また、本実施形態においては、奥側空間52における二対の対向内壁面520の幅は、入口側空間51と同じ幅である。しかしながら、奥側空間52が、入口側空間51と異なる形状の空間であること、或いは、奥側空間52における二対の対向内壁面520の幅が、入口側空間51における対向内壁面510の幅と異なること等も考えられる。
【0064】
端子付アルミニウム電線10が挿入されるキャビティ50の奥側空間52は、例えば、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における被覆圧着部182以外の部分を取り囲む。即ち、この奥側空間52は、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における芯線圧着部181および接点部183を取り囲む。同様に、端子付銅電線20が挿入されるキャビティ50の奥側空間52は、端子付銅電線20の圧着端子28における芯線圧着部281および接点部283を取り囲む。
【0065】
また、コネクタ5は、不図示の端子ロック機構を備える。端子ロック機構は、例えば、キャビティ50の奥側空間52の部分に形成されている。端子ロック機構は、キャビティ50に挿入された圧着端子18,28に引っ掛かることにより、圧着端子18,28がコネクタ5から外れることを防ぐ機構である。
【0066】
例えば、端子ロック機構は、キャビティ50に挿入された圧着端子18,28の接点部183,283の一部に引っ掛かる機構である。しかしながら、その他の機構によって、端子付アルミニウム電線10および端子付銅電線20がコネクタ5に固定されてもよい。
【0067】
<コネクタ付電線:キャビティおよび被覆圧着部の詳細構造>
次に、図1〜4を参照しつつ、コネクタ5のキャビティ50の入口側空間51、端子付アルミニウム電線10における圧着端子18の被覆圧着部182および端子付銅電線20における圧着端子28の被覆圧着部282の詳細な構造について説明する。
【0068】
図3は、コネクタ5のキャビティ50の入口側空間51、端子付アルミニウム電線10の被覆圧着部182および端子付銅電線20の被覆圧着部282の断面図である。図4は、従来の端子付アルミニウム電線における被覆圧着部およびコネクタ5のキャビティ50の入口側空間51の断面図である。
【0069】
コネクタ付電線1においては、端子付アルミニウム電線10に含まれる絶縁電線19が、端子付銅電線20に含まれる絶縁電線29よりも太い。アルミニウムは銅に比べて電気伝導率が低いためである。
【0070】
コネクタ付電線1において、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18の被覆圧着部182は、絶縁電線19の絶縁被覆1920におけるコネクタ5のキャビティ50の入口側空間51に位置する部分(被覆端部192)に圧着されている。同様に、端子付銅電線20の圧着端子28の被覆圧着部282は、絶縁電線29の絶縁被覆2920におけるコネクタ5のキャビティ50の入口側空間51に位置する部分(被覆端部292)に圧着されている。
【0071】
図3に示されるように、コネクタ付電線1において、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における被覆圧着部182は、円形よりも入口側空間51の断面形状に近い輪郭形状を有する。即ち、被覆圧着部182は、円形よりも矩形に近い輪郭形状を有する。
【0072】
一方、端子付銅電線20の圧着端子28における被覆圧着部282は、図3に示されるように、入口側空間51の断面形状よりも円形に近い輪郭形状を有する。
【0073】
本実施形態において、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における被覆圧着部182の外側面は、二対の対向内壁面510各々に対向する四面(四方の面)を有している。本実施形態は、その四面が、二対の対向内壁面510各々に平行な平坦面1820を含んでいる場合の事例である。
【0074】
コネクタ付電線1におけるコネクタ5は、銅電線、即ち、絶縁電線29の規格に合わせて作成されたコネクタである。そのため、絶縁電線29よりも太い絶縁電線19を有する端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における最も太い部分(被覆圧着部182)が従来の形状である場合、銅電線用のコネクタ5のキャビティ50内に従来の端子付アルミニウム電線における圧着端子を収容することができないという問題が生じることがある。
【0075】
以下、従来の端子付アルミニウム電線の圧着端子の被覆圧着部を被覆圧着部182Xと称する。図4に示されるように、被覆圧着部182Xの断面形状は、円形に近い形状である。
【0076】
図4に示される例は、被覆圧着部182Xの外径が、コネクタ5のキャビティ50の入口側空間51の第一方向における幅よりも大きく、かつ、キャビティ50の入口側空間51の第二方向における幅よりも小さい場合の事例である。この場合、被覆圧着部182Xを有する圧着端子をコネクタ5のキャビティ50内に収容することができない。
【0077】
しかしながら、入口側空間51の第二方向の幅は、被覆圧着部182Xの外径に対して余裕がある。特に、図4に示されるように、入口側空間51における四方の隅513に向かう方向(対角方向)の寸法は、被覆圧着部182Xの外径に対して比較的大きな隙間がある。
【0078】
図4に示される例に対し、本実施形態においては、図3に示されるように、圧着端子18の被覆圧着部182の第一方向における寸法が、コネクタ5のキャビティ50の第一方向における幅よりも小さくなるまで圧縮されている。即ち、端子付アルミニウム電線10における圧着端子18の被覆圧着部182は、第一方向において絶縁被覆1920を圧縮する状態で、絶縁被覆1920の被覆端部192に圧着されている。
【0079】
また、図3に示されるように、圧着端子18の被覆圧着部182は、端子付アルミニウム電線10の芯線1910から入口側空間51の四方の隅513に向かう方向における絶縁被覆1920の厚みが自然状態の絶縁被覆1920の厚みよりも拡大した状態で、絶縁被覆1920の被覆端部192に圧着されている。
【0080】
なお、自然状態の絶縁被覆1920の厚みとは、外力が加えられていない状態の絶縁被覆1920の厚みである。例えば、端子付アルミニウム電線10におけるコネクタ5のキャビティ50から延び出ている部分の絶縁被覆1920の厚みが、自然状態の絶縁被覆1920の厚みである。
【0081】
本実施形態においては、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18の被覆圧着部182の第一方向における寸法(縦寸法)が、コネクタ5のキャビティ50の入口側空間51の第一方向における幅よりも小さい。また、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18の被覆圧着部182の第二方向における寸法(横寸法)が、コネクタ5のキャビティ50の入口側空間51の第二方向における幅よりも小さい。そのため、この端子付アルミニウム電線10の圧着端子18を、コネクタ5のキャビティ50内に収容することが可能となる。
【0082】
また、圧着端子18の被覆圧着部182の内側において、上記のような絶縁被覆1920における厚みが拡大した部分は、絶縁被覆1920が第一方向において圧縮される際に、被覆圧着部182の圧力で圧縮した部分の弾力によって隣接する領域から押し寄せられることにより形成された部分である。
【0083】
例えば、図4に示される例において、従来の端子付アルミニウム電線におけるコネクタ5のキャビティ50に収容できなかった非収容部分95Xが第一方向において圧縮される。絶縁被覆1920において、芯線1910から入口側空間51の四方の隅513に向かう方向における絶縁被覆1920の厚みが拡大した部分は、この非収容部分95Xに押し寄せられることにより形成された部分である。
【0084】
従って、本実施形態においては、従来活用されていなかったキャビティ50内の四方の隅513の領域を有効活用して、太い絶縁電線19を含む端子付アルミニウム電線10における圧着端子18を、キャビティ50内に収容することが可能となる。
【0085】
ところで、絶縁被覆1920をその全周に亘って圧縮する場合、絶縁被覆1920は比較的強い力で圧縮される。そのため、絶縁被覆1920に大きな負荷がかかってしまうという問題が生じる。
【0086】
しかしながら、本実施形態においては、圧着端子18の被覆圧着部182の部分に囲まれた絶縁被覆1920は、その全周に亘って圧縮されていない。即ち、被覆圧着部182の部分に囲まれた絶縁被覆1920は、第一方向において圧縮されているが、入口側空間51の四方の隅513に向かう方向には圧縮されていない。なお、本実施形態においては、さらに、第二方向においても圧縮されていない。この場合、絶縁被覆1920に大きな負荷をかけることなく、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18を、コネクタ5のキャビティ50内に収容することが可能となる。
【0087】
<端子付アルミニウム電線の製造>
次に、図5〜7を参照しつつ、コネクタ付電線1に含まれる端子付アルミニウム電線10の圧着工程の一例を説明する。図5〜7は、圧着工程のそれぞれの状態における圧着端子18および絶縁電線19がセットされた圧着機2の正断面図である。図5〜7は、圧着端子18が絶縁電線19に対して圧着される様子を表している。なお、圧着工程は、端子付アルミニウム電線10の製造工程における一部の工程である。
【0088】
<端子付アルミニウム電線の製造:圧着機>
まず、端子付アルミニウム電線10の圧着工程に使用される圧着機2について説明する。図5〜7に示される圧着機2は、端子付アルミニウム電線10の圧着工程に使用される機械の一例である。
【0089】
本実施形態において、圧着機2は、絶縁電線19及び圧着端子18を支持する下金型22と、圧着端子18における被覆圧着部182の一対のかしめ片1822を内側へ折り曲げてかしめる上金型21と、を備える。上金型21及び下金型22は、不図示の支持機構により、それらの一方又は両方が相互に対向する状態で接近すること及び離隔することが可能に支持されている。
【0090】
本実施形態において、上金型21には、端子付アルミニウム電線10における被覆圧着部182を成形する第一成形面211、一対の第二成形面212および一対の第三成形面213が形成されている。下金型22には、支持面221および縁面222が形成されている。
【0091】
下金型22に形成された支持面221は、圧着端子18および絶縁電線19を支持する。支持面221は、圧着端子18の被覆圧着部182の底板部1821と接する平坦な平面2211と曲面2212とを含む。曲面2212は、底板部1821と底板部1821から絶縁電線19の両側へ起立した一対のかしめ片1822の根元の部分に接する湾曲面である。
【0092】
下金型22に形成された縁面222は、後述する上金型21の第三成形面213に沿う湾曲面である。
【0093】
上金型21に形成された第一成形面211は、下金型22の支持面221に対向する面である。図5〜7に示される例において、第一成形面211は、支持面221の平面2211に対して概ね平行な平面2111と平面2111の両側の曲面2112とを含む。
【0094】
第一成形面211には、突起部2110が形成されている。この突起部2110は、圧着工程において、圧着端子18の被覆圧着部182における一対のかしめ片1822の先端の部分を絶縁被覆1920側に押し込む部分である。
【0095】
一対の第二成形面212は、第一成形面211から垂下して形成された面である。一対の第二成形面212は、相互に対向している。一対の第二成形面212は、相互に平行又は概ね平行な面である。
【0096】
第三成形面213は、第二成形面212の第一成形面211側に対し反対側(以下、下側)において連なっている。第三成形面213は、第二成形面212の下側への延長面に対し、外側へ湾曲した湾曲面である。従って、上金型21においては、一対の第三成形面213の間の幅は、一対の第二成形面212の間の幅よりも大きい。なお、上金型21と下金型22とが最接近した状態において、第三成形面213は、下金型22の縁面222に沿う。
【0097】
<端子付アルミニウム電線の製造:圧着工程>
次に、図5〜7を参照しつつ、端子付アルミニウム電線10の圧着工程について説明する。
【0098】
圧着端子18の被覆圧着部182の一対のかしめ片1822は、絶縁電線19に圧着される前の状態において、絶縁電線19の被覆端部192が挿入される溝を形成している。
【0099】
まず、圧着機2における下金型22の支持面221に圧着端子18が載せられる。そして、絶縁電線19が、圧着端子18の被覆圧着部182の底板部1821から起立した一対のかしめ片1822の間にセットされる。
【0100】
その後、上金型21の第一成形面211と下金型22の支持面221とが対向した状態で、上金型21及び下金型22の一方又は両方が、それらが接近する方向へ移動する。図5〜7に示される例においては、上金型21が、固定された下金型22に接近する方向へ移動する。
【0101】
図6に示されるように、まず、上金型21の第三成形面213が、圧着端子18の被覆圧着部182の一対のかしめ片1822の先端の部分に接触する。被覆圧着部182における一対のかしめ片1822は、上金型21の第三成形面213に沿って内側へ少し曲がる。
【0102】
さらに、上金型21が下金型22に接近すると、上金型21における第一成形面211と先端の部分が少し内側に曲がった一対のかしめ片1822とが接触する。その際、被覆圧着部182の一対のかしめ片1822は、上金型21の第一成形面211に沿って底板部1821に対向する向きへと曲がる。
【0103】
その後、さらに上金型21が下金型22に接近し、上金型21と下金型22とが最接近した状態においては、被覆圧着部182における一対のかしめ片1822は、押しつぶされ、絶縁電線19における被覆端部192へかしめられる。そして、図7に示されるように、第一成形面211に形成された突起部2110が、一対のかしめ片1822の先端の部分を少し絶縁電線19の絶縁被覆1920側へ押し込む。これにより、被覆圧着部182が絶縁電線19の被覆端部192に圧着され、端子付アルミニウム電線10が得られる。
【0104】
また、本実施形態においては、一対の第二成形面212は、互いに平行な状態で対向している。そのため、被覆圧着部182の外側面には、第一成形面211、一対の第二成形面212および支持面221各々により成形される平らな平坦面1820が形成される。
【0105】
<効果>
本実施形態においては、端子付アルミニウム電線10に含まれる圧着端子18の被覆圧着部182は、絶縁電線29用のコネクタ5におけるキャビティ50の入口側空間51に収容可能な大きさで、円形よりも入口側空間51の断面形状(矩形状)に近い輪郭形状に成形されている。そのような矩形に近似した輪郭形状の被覆圧着部182は、キャビティ50を形成する二対の対向内壁面510が対向する2方向のうちの少なくとも一方の方向において絶縁被覆1920を圧縮している。しかしながら、その被覆圧着部182の内側において、端子付アルミニウム電線10の芯線1910からキャビティ50の入口側空間51の四方の隅513に向かう方向における絶縁被覆1920の厚みは、自然状態の絶縁被覆1920の厚みよりも拡大した状態となっている。
【0106】
また、圧着端子18の被覆圧着部182の内側において、絶縁被覆1920における厚みが拡大した部分は、被覆圧着部182の圧力で圧縮した部分の弾力によって隣接する領域から押し寄せられることにより形成された部分である。そのため、圧着端子18の被覆圧着部182の部分に囲まれた絶縁被覆1920においては、芯線1910側に圧縮された部分と厚みが拡大した部分とが存在する。
【0107】
従来のコネクタ付電線において、キャビティ50の入口側空間51の四方の隅513の領域は、輪郭が概ね円形である絶縁被覆1920との間で、比較的大きな隙間が形成されやすい領域である。本実施形態において、被覆圧着部182は、従来活用されていなかったキャビティ50内の四方の隅513の領域を有効活用することにより、太い絶縁電線19を含む端子付アルミニウム電線10における絶縁被覆1920を過剰に圧縮せずにキャビティ50内に収容可能な構造を有している。この場合、被覆圧着部182が絶縁被覆1920をその全周に亘って圧縮する場合に比べ、絶縁被覆1920にかかる負荷を軽減することができる。
【0108】
以上に示されることから、既存の絶縁電線29用のコネクタ5をそのまま流用して絶縁電線19を含むコネクタ付電線1を提供することが可能となる。また、このコネクタ付電線1においては、被覆圧着部182からの圧力によって絶縁被覆1920にかかる負荷を軽減することができる。
【0109】
また、本実施形態においては、コネクタ付電線1は、銅を主成分とする芯線2910を有する端子付銅電線20をさらに含む。そして、端子付銅電線20の圧着端子28における被覆圧着部282は、入口側空間51の断面形状よりも円形に近い輪郭形状を有する。即ち、このコネクタ付電線1においては、絶縁電線19を有する端子付アルミニウム電線10と絶縁電線29を有する端子付銅電線20とが混在している。そして、端子付銅電線20における圧着端子28の被覆圧着部282に比べ、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18の被覆圧着部182の方が、よりコネクタ5のキャビティ50の入口側空間51の断面形状に近い形状を有する。このコネクタ付電線1は、導電性に優れた絶縁電線29を一部に採用しつつ、コネクタ付電線1全体の軽量化を図りたい場合に有効である。
【0110】
また、本実施形態においては、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における被覆圧着部182の外側面は、二対の対向内壁面510各々に平行な平坦面1820を含む。この場合、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における被覆圧着部182の輪郭形状を、よりコネクタ5のキャビティ50の断面形状に近付けることが可能となる。これにより、キャビティ50の対向内壁面510と圧着端子18の被覆圧着部182との間の無駄な隙間をより小さくすることができる。
【0111】
<第2実施形態>
次に、図8,9を参照しつつ、第2実施形態に係るコネクタ付電線1Aを説明する。図8は、コネクタ5Aの入口側空間51Aおよび従来の端子付アルミニウム電線の断面図である。図9は、コネクタ付電線1Aに含まれるコネクタ5Aの入口側空間51Aおよび端子付アルミニウム電線10の被覆圧着部182の断面図である。コネクタ5Aには、コネクタ5における入口側空間51と異なる形状の入口側空間51Aが形成されている。なお、図8,9において、図1〜7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0112】
図8に示されるように、コネクタ5Aにおけるキャビティ50Aの入口側空間51Aの断面形状は、コネクタ5におけるキャビティ50の入口側空間51の断面形状に比べ、正方形に近い形状を有する。
【0113】
図8に示される例は、被覆圧着部182Xの外径が、コネクタ5Aにおけるキャビティ50Aの入口側空間51Aの第一方向および第二方向におけるそれぞれの幅よりも大きい場合の事例である。この場合も、従来の被覆圧着部182Xを有する圧着端子をコネクタ5Aのキャビティ50A内に収容することができない。
【0114】
本実施形態において、端子付アルミニウム電線10における圧着端子18の被覆圧着部182は、第一方向および第二方向の両方において絶縁被覆1920を圧縮する状態で、絶縁被覆1920の被覆端部192に圧着されている。そして、圧着端子18の被覆圧着部182は、端子付アルミニウム電線10の芯線1910から入口側空間51Aの四方の隅513に向かう方向における絶縁被覆1920の厚みが自然状態の絶縁被覆1920の厚みよりも拡大した状態で、絶縁被覆1920の被覆端部192に圧着されている。
【0115】
本実施形態においても、入口側空間51Aの四方の隅513付近の空間を有効に活用することができる。これにより、端子付アルミニウム電線10における圧着端子18の被覆圧着部182をコネクタ5Aのキャビティ50A内に収容することができる。
【0116】
また、本実施形態においては、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における被覆圧着部182の外側面は、二対の対向内壁面510各々に平行な平坦面1820を含む。この場合、端子付アルミニウム電線10の圧着端子18における被覆圧着部182の輪郭形状を、よりコネクタ5Aのキャビティ50Aの断面形状に近付けることが可能となる。これにより、キャビティ50Aの対向内壁面510と圧着端子18の被覆圧着部182との間の無駄な隙間をより小さくすることができる。
【0117】
<応用例>
第1実施形態においては、端子付アルミニウム電線10における圧着端子18の被覆圧着部182は、第一方向において絶縁被覆1920を圧縮する状態で、絶縁被覆1920の被覆端部192に圧着されている。しかしながら、被覆圧着部182が、第二方向において絶縁被覆1920を圧縮する状態で、絶縁被覆1920の被覆端部192に圧着されている場合も考えられる。
【0118】
また、芯線圧着部181の代わりに、超音波溶接等の溶接によって、裸芯線部191と圧着端子18とが接続されている場合も考えられる。裸芯線部291と圧着端子28とにおいても、同様である。
【0119】
なお、本発明に係るコネクタ付電線は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態及び応用例を自由に組み合わせること、或いは各実施形態及び応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 コネクタ付電線
1A コネクタ付電線
10 端子付アルミニウム電線
18 圧着端子
181 芯線圧着部
182 被覆圧着部
1820 平坦面
1821 底板部
1822 かしめ片
182X 被覆圧着部
183 接点部
19 絶縁電線
191 裸芯線部
1910 芯線
192 被覆端部
1920 絶縁被覆
2 圧着機
20 端子付銅電線
21 上金型
211 第一成形面
2110 突起部
2111 平面
2112 曲面
212 第二成形面
213 第三成形面
22 下金型
221 支持面
2211 平面
2212 曲面
222 縁面
28 圧着端子
281 芯線圧着部
282 被覆圧着部
283 接点部
29 絶縁電線
291 裸芯線部
2910 芯線
292 被覆端部
2920 絶縁被覆
5 コネクタ
50 キャビティ
50A キャビティ
51 入口側空間
510 対向内壁面
511 対向内壁面
512 対向内壁面
513 隅
51A 入口側空間
52 奥側空間
520 対向内壁面
523 奥面
5A コネクタ
95X 非収容部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9