【解決手段】電子部品供給装置300を所定の保持位置で保持しつつ電子部品実装装置100の取り付け位置102に着脱可能とする部品交換台車200において、部品交換台車が当該部品交換台車に固有の実測位置データが記録された記録部を有し、固有の実測位置データは、予め部品交換台車の複数の保持位置の一部又は全部に対して電子部品供給装置又は当該電子部品供給装置と同寸の模型Mを取り付けてその部品受け渡し位置M1を実測した値からなることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、実装の対象となる電子部品は小型化が進み、各電子部品フィーダーから電子部品を受け取る際のヘッドの位置決めにはより高い精度が要求される。
例えば、電子部品フィーダーの部品受け渡し位置に対して要求される位置精度が±30[μm]であるのに対して、部品交換台車に取り付けられた電子部品フィーダーの並び方向に生じる誤差が100〜150[μm]となり、製造の精度だけでは実装動作の要求に対応することができなかった。
このため、設計寸法により忠実な部品交換台車の基準モデルと電子部品フィーダーの基準モデルとを高精度の加工によって作成し、電子部品フィーダーの基準モデルを複数の所定位置に載置装備した部品交換台車の基準モデルを電子部品実装装置にセットして、各所定位置での電子部品フィーダーの受け取り位置を測定していた。
そして、上記測定データを予め電子部品実装装置の制御装置内の記憶部に格納し、部品交換台車に載置した各電子部品フィーダーに対する電子部品の受け取りを行う際にヘッドの位置を測定データに基づいて補正していた。
【0005】
しかしながら、上記測定データは、部品交換台車の基準モデルと電子部品フィーダーの基準モデルに基づいて測定されたものであり、個々に製造された部品交換台車の加工精度及び組付け精度のバラつきは考慮されていないため、個々に製造された部品交換台車の使用時におけるヘッドの位置決めには精度が不充分となるおそれがあった。
【0006】
本発明は、電子部品実装装置のヘッドの部品受け取り時の位置精度を向上させることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
部品交換台車にかかる本発明は、
複数の電子部品供給装置を複数の所定の保持位置で保持した状態で電子部品実装装置の所定の取り付け位置に対して着脱可能とする部品交換台車において、前記部品交換台車が当該部品交換台車に固有の実測位置データが記録された記録部を有し、
前記固有の実測位置データは、予め前記部品交換台車の複数の所定の保持位置の一部又は全部に対して前記電子部品供給装置又は当該電子部品供給装置と同寸の模型を取り付けてその部品受け渡し位置を実測した値からなることを特徴とする。
【0008】
上記部品交換台車は、前記電子部品実装装置から位置認識可能な基準マークを前記部品交換台車の所定の位置に設け、前記実測位置データは、前記基準マークの位置から相対的に前記部品受け渡し位置を求めることが可能な位置情報を含む構成としても良い。
【0009】
また、上記部品交換台車は、前記記録部の前記実測位置データを前記電子部品実装装置に対して有線又は無線により送信可能な通信部を備える構成としても良い。
【0010】
また、上記部品交換台車は、前記記録部は、光学的に読み取り可能な1次元又は2次元コードにより前記実測位置データの情報を記録する構成としても良い。
【0011】
また、電子部品実装装置にかかる本発明は、上述した部品交換台車を所定の取り付け位置に取り付け可能であって、前記電子部品の実装が行われる基板を保持する基板保持部と、前記電子部品の保持と解放を行うヘッドと、前記基板保持部と前記部品交換台車との間で前記ヘッドの移動を行う移動機構と、前記部品交換台車の記録部から前記実測位置データを取得する取得部と、前記部品交換台車に保持された前記電子部品供給装置の部品受け渡し位置に前記ヘッドを位置決めする場合に、前記取得部から取得された前記実測位置データに基づいて補正を行うように前記移動機構を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、電子部品供給装置にかかる本発明は、上述の部品交換台車の所定の保持位置に保持されると共に、前記電子部品を一定間隔で格納する部品テープを部品受け渡し位置に搬送する駆動源を備えた送り機構と、前記部品交換台車の記録部から前記実測位置データを取得する取得部と、前記送りテープの電子部品の格納部を前記部品受け渡し位置に搬送する場合に、前記送り機構の駆動源に対して、前記取得部から取得された前記実測位置データに基づいて、送り方向について補正を行うように制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
部品交換台車にかかる本発明では、部品交換台車が固有の実測位置データを記録する記録部を備えているので、当該部品交換台車を電子部品実装装置に取り付けたときに、当該電子部品実装装置は部品交換台車に固有の実測位置データを容易に取得することができる。そして、この実測位置データは個々の部品交換台車の加工精度や組付け精度のバラつきを反映したものであることから、電子部品実装装置では、より正確に電子部品供給装置の部品受け渡し位置にヘッドを位置決めすることが可能となる。
また、電子部品実装装置側では、部品交換台車の記録部から実測位置データを読み取るだけで良いので、新たな部品交換台車が取付位置に取り付けられるたびに新たにティーチングを行うことが不要であり、作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0014】
電子部品実装装置にかかる本発明は、部品交換台車の記録部から当該部品交換台車に固有の実測位置データを取得する取得部を有するので、部品交換台車の加工精度や組付け精度のバラつきを反映したヘッドの位置補正を行うことができ、より正確に電子部品供給装置の部品受け渡し位置にヘッドを位置決めすることが可能となる。
また、部品交換台車の記録部から実測位置データを読み取ることができるので、個々の部品交換台車に対するティーチングを行うことが不要であり、作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0015】
電子部品供給装置にかかる本発明は、部品交換台車の記録部から当該部品交換台車に固有の実測位置データを取得する取得部を有するので、部品交換台車の加工精度や組付け精度のバラつきを反映した部品テープの位置補正を行うことができ、より正確に電子部品供給装置の部品受け渡し位置に格納部を位置決めすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の実施形態の概要]
発明の実施形態について、
図1乃至
図4に基づいて説明する。
図1は、本実施形態たる電子部品実装装置100及び部品交換台車200の斜視図、
図2は電子部品供給装置としての電子部品フィーダー300を所定の保持位置で保持した状態で電子部品実装装置100の予め定められた所定の取り付け位置102に取り付けた状態を示す平面図、
図3はこれらの制御系を示すブロック図である。また、
図4は実測位置データを取得するための構成を示した説明図である。
図2に示すように、水平面において互いに直交する二方向をそれぞれX軸方向とY軸方向とし、これらに直交する鉛直方向をZ軸方向というものとする。なお、
図2では電子部品実装装置100の表面カバーを取り除いて内部の主要な構成のみを図示している。
【0018】
本発明に係る部品交換台車200は、電子部品実装装置100に対して所定の取り付け位置に着脱自在に備えられ、部品交換台車200に搭載した電子部品フィーダー300から電子部品を収容する部品収容テープを電子部品フィーダー300の部品供給位置301に送り出すことにより、電子部品実装装置100に電子部品を供給するものである。
【0019】
[電子部品実装装置]
電子部品実装装置100は、基板に各種の電子部品の搭載を行うものであって、電子部品の搭載手段として、
図1に示すように、搭載される電子部品を供給する複数の電子部品フィーダー300と、一定方向に基板を搬送する基板搬送手段103と、当該基板搬送手段103による基板搬送経路の途中に設けられた基板の実装作業領域である基板保持部104と、電子部品の保持と解放を行う吸着ノズル105を搭載して電子部品の移送を行うヘッド106と、ヘッド106を所定の搬送範囲内の任意の位置に搬送する移動機構としてのX−Yガントリ107と、ヘッド106に搭載された撮像手段としての撮像カメラ108と、上記各構成を支持する基台114と、電子部品実装装置100の各構成に対して制御を行う制御部としての制御装置120とを備えている。
なお、
図1では電子部品フィーダー300が一つのみ図示されているが、実際には、より多くの電子部品フィーダー300を部品交換台車200に搭載することが可能である。
【0020】
基板搬送手段103は、図示しない搬送ベルトを備えており、その搬送ベルトにより基板をX軸方向に沿って搬送する。
また、前述したように、基板搬送手段103による基板搬送経路の途中には、電子部品を基板Kへ搭載する基板保持部104が設けられている。基板搬送手段103は、基板保持部104まで基板Kを搬送すると共に停止して、図示しない保持機構により基板Kの保持を行う。つまり、基板Kは保持機構により保持された状態で安定した電子部品の搭載作業が行われる。
【0021】
基台114は、平面視略正方形であり、上記基板搬送手段103はその中央をX軸方向に沿って横切るように載置装備されている。そして、基板搬送手段103の片側で基台114の一部が矩形に切り欠かれており、当該切欠き部分が部品交換台車200の取り付けとなっている。この取り付け位置102に部品交換台車200を嵌合させることができ、図示しないラッチ機構により部品交換台車200にがたつきが生じないように保持することを可能としている。
【0022】
また、図示を省略しているが、電子部品実装装置100は、部品交換台車200及び当該部品交換台車200を介して電子部品フィーダー300に電源供給を行う電源装置を備えており、取り付け位置102には部品交換台車200を取り付けたときに相互に連結される給電コネクタが設けられている。
【0023】
ヘッド106は、その先端部で空気吸引により電子部品を保持する複数の吸着ノズル105と、各吸着ノズル105をZ軸方向に沿って上下動させる駆動源であるZ軸モーター111(
図3参照)と、各吸着ノズル105をZ軸回りに回転させる回転駆動源である回転モーター112(
図3参照)とが設けられている。なお、Z軸モーター111と回転モーター112は各吸着ノズル105ごとに個別に備えているが、
図3では、いずれも一つのみを図示している。
また、各吸着ノズル105は負圧発生源に接続され、当該吸着ノズル105の先端部において吸引や大気開放等を行うことにより電子部品の吸着保持と解放とが行われる。
さらに、ヘッド106の移動領域内には下方から吸着ノズル105に吸着された電子部品の撮像を行う図示しないカメラが設けられている。
つまりこれらの構造により、搭載作業時には、吸着ノズル105の先端部で部品交換台車200に搭載された電子部品フィーダー300から電子部品を吸着し、吸着された電子部品をカメラにより下方から撮像し、吸着ノズル105に対する電子部品の位置ズレ及び角度ズレを求める。さらに、角度ズレを吸着ノズル105の回転により補正し、位置ズレはヘッド106を基板Kに対する実装位置に位置決めする際に補正する。そして、その後に、吸着ノズル105を下降させて基板Kに電子部品を実装させる。
【0024】
前述した撮像カメラ108は、ヘッド106に搭載されており、X−Yガントリ107によりヘッド106が駆動されることで、例えば、基板Kの位置を認識するための基板マークに位置決めされ、撮像を行うようになっている。
また、この撮像カメラ108は、実装作業前に、部品交換台車200に設けられた後述する基準マーク201の撮像を行い、これにより、制御装置120は、部品交換台車200に搭載された各電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301の認識を行う。
【0025】
X−Yガントリ107は、X軸方向にヘッド106の移動を案内するX軸ガイドレール107aと、このX軸ガイドレール107aと共にヘッド106をY軸方向に案内する二本のY軸ガイドレール107bと、X軸方向に沿ってヘッド106を移動させる駆動源であるX軸モーター109(
図3参照)と、X軸ガイドレール107aを介してヘッド106をY軸方向に移動させる駆動源であるY軸モーター110(
図3参照)とを備えている。そして、各モーター109,110の駆動により、ヘッド106を二本のY軸ガイドレール107bの間となる領域のほぼ全体に搬送することを可能としている。
なお、各モーター109,110は、ぞれぞれの回転量が制御装置120に認識され、所望の回転量となるように制御されることにより、ヘッド106を介して吸着ノズル105や撮像カメラ108の位置決めを行っている。
また、電子部品実装作業の必要上、部品交換台車200に搭載された電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301と部品交換台車200の基準マーク201はいずれもX−Yガントリ107によるヘッド106の搬送可能領域内に配置されている。
【0026】
[部品交換台車]
部品交換台車200は、四つの車輪202を下部に備えた支持フレーム203と、支持フレーム203の上部に設けられた矩形の載置台204と、載置台204の上面であって電子部品実装装置100側となる一端部に立設され、電子部品フィーダー300の先端部が突き当てられるフィーダー保持板205とを備えている。
【0027】
上記載置台204は支持フレーム203の上部において水平に支持された平板であり、その上部には複数の電子部品フィーダー300をX軸方向に沿って並べて載置することができる。
図2に示すように、この載置台204の一端部側が電子部品実装装置100の基台114の取り付け位置102に嵌合して、部品交換台車200が電子部品実装装置100に取り付けられるようになっている。
【0028】
各電子部品フィーダー300は、その長手方向をY軸方向に平行に向けた状態で上記載置台204上でX軸方向に並んだ状態で載置される。そして、電子部品フィーダー300の一端部には上下に並んだ二つの位置決め突起(図示略)が設けられており、フィーダー保持板205に形成された位置決め穴205a,205aに挿入される。フィーダー保持板205に設けられた上下の位置決め穴205a,205aは、複数の電子部品フィーダー300の並び方向(X軸方向)に沿って一定の間隔で複数形成されている。これらX軸方向に並んだ複数の位置決め穴205a,205aによって、一定の間隔で電子部品フィーダー300が並ぶように各電子部品フィーダー300の保持位置が決められている。
【0029】
なお、電子部品フィーダー300は、図示しないラッチ爪を備えており、載置台204の他端部側を挟持し、二つの位置決め突起との協働によって載置台204上で電子部品フィーダー300を固定する。
また、前述したように、部品交換台車200は、電子部品実装装置100から電源の供給を受けており、さらに、部品交換台車200から各電子部品フィーダー300に電源供給を行っている。このため、図示を省略しているが、載置台204上の保持位置に電子部品フィーダー300を取り付けたときに、電子部品フィーダー300と相互に連結される給電コネクタが設けられている。
【0030】
また、載置台204の一端部であってフィーダー保持板205の両側には、それぞれ基準マーク201が設けられている。この基準マーク201,201は電子部品実装装置100の撮像カメラ108に撮像されることにより、電子部品実装装置100の座標系内での部品交換台車200の位置を認識させるためのものである。この基準マーク201,201は撮像範囲内で画像処理によってその位置が識別可能なものであればよい。
【0031】
さらに、部品交換台車200は、電子部品フィーダー300の部品受け取り位置を示す実測位置データ212が記録された記録部としてのメモリ211を有する制御装置210を備えている。この実測位置データ212については後述する。
【0032】
電子部品フィーダー300は、前述したフィーダー保持板205に突き当てる一端部側の上部に部品受け渡し位置301を備えており、他端部側には一定間隔で電子部品を収容する部品テープを巻いたリール304を備えている。そして、リール304から繰り出す部品テープを部品受け渡し位置301に向かって搬送する送り機構を備えている。
この送り機構は、電子部品フィーダー300内において、部品テープを送るスプロケットを回転駆動する送りモーター302(
図3)を駆動源としている。
【0033】
また、電子部品フィーダー300は、電子部品実装装置100からの動作指令を受けて、部品テープに格納された電子部品の配置間隔ごとに部品テープが部品受け渡し位置301に送られるように、送りモーター302を制御する制御部としての制御装置310を備えている。
【0034】
[各構成の制御系]
図3に示すように、電子部品実装装置100の制御装置120は、主に、X−Yガントリ107のX軸モーター109、Y軸モーター110、ヘッド106において吸着ノズル105の昇降を行うZ軸モーター111、吸着ノズル105の回転を行う回転モーター112、撮像カメラ108の動作制御を行い、所定の制御プログラムに従って各種の処理及び制御を実行するCPU121と、各種の処理及び制御を実行するためのプログラムが格納されたシステムROM122と、各種のデータを格納することで各種の処理の作業領域となるRAM123と、CPU121と各種の機器との接続を図る図示しないI/F(インターフェイス)と、各種の設定や操作に要するデータの入力を行うための操作パネル124と、各種の処理及び制御を実行するための設定データが格納されたEEPROM126と、各種設定の内容や後述する検査の結果等を表示する表示モニタ125とを有している。また、前述した各モーター109〜112は、図示しないモータードライバを介して制御装置120に接続されている。
【0035】
また、電子部品実装装置100の制御装置120には、取り付け位置102に取り付けられた部品交換台車200が有する制御装置210(後述)との間で指令信号の送受信及び後述する実測位置データの受信を行うための取得部としての通信インターフェイス113が併設されている。
この通信インターフェイス113は、有線、無線いずれでも良い。また、有線通信の場合、電気信号による通信と光通信のいずれを用いても良い。また、無線通信の場合、遠距離通信と近距離通信のいずれの規格を使用しても良いが、電子部品実装装置100と部品交換台車200は近接しているので近距離通信が好ましい。また、無線の場合も電波、光通信のいずれを用いても良い。
また、装置同士が接触する構造であるため、例えば、USB(Universal Serial Bus)やIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)1394のような有線の通信インターフェイスを好適に利用することができるが、Bluetooth(登録商標)やNFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信インターフェイスも好適に利用することができる。
【0036】
部品交換台車200は、電子部品実装装置100の通信インターフェイス113及び後述する電子部品フィーダー300の通信インターフェイス303と通信可能な通信部としての通信インターフェイス206を備えている。
部品交換台車200の制御装置210は、内蔵するメモリ211に記録された実測位置データ212を電子部品実装装置100及び電子部品フィーダー300に送信する通信制御を行う。
ここで、実測位置データ212について
図4に基づいて説明する。
【0037】
図4は、部品交換台車200の先端部の部分拡大平面図である。
部品交換台車200は、各部品の加工精度及び組付け精度によって、製造時に個々の寸法差が生じている。従って、製造後の個々の部品交換台車200について個別に行った測定に基づく実測位置データ212をメモリ211に記録している。
【0038】
この実測位置データ212の測定の際には、各部の寸法を高精度に加工した測定用の電子部品フィーダーの模型(マスターフィーダーMとする)を使用する。
即ち、部品交換台車200を傾きのない水面面上に設置し、当該部品交換台車200のそれぞれの保持位置に順番にマスターフィーダーMを取り付けて、個別に上方から部品受け渡し位置301の水平面内の位置を測定する。
例えば、その測定方法は、部品交換台車200の二つの基準マーク201,201を結ぶ直線をX軸とし、一方の基準マークを原点とする部品交換台車200の座標系について、各保持位置に取り付けたマスターフィーダーMの部品受け渡し位置M1の実測位置を測定し、上記の座標系におけるX座標とY座標とを取得する。
即ち、実測位置データ212は、基準マーク201,201の位置から相対的に各電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301を求めることが可能な位置情報を含んでいることになる。
【0039】
そして、部品交換台車200の各保持位置における部品受け渡し位置の実測位置(位置座標)を実測位置データ212として制御装置210のメモリ211内に記録する。なお、実測位置の測定及びデータの記録は、部品交換台車200の製造過程において組み立て後の検査の段階で行われる。
【0040】
なお、部品交換台車200における位置誤差は、その各保持位置に取り付けた電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301がX軸方向に対して幾分傾斜した直線上に並ぶように生じる場合が多い。
従って、そのような傾向で位置誤差を生じることが分かっている場合には、部品交換台車200の全ての保持位置にマスターフィーダーMを取り付けて部品受け渡し位置M1の位置を測定しなくとも良い。例えば、間隔をあけて何点かの保持位置においてマスターフィーダーMの部品受け渡し位置M1について位置測定を行い、求めた各位置から最小二乗法などにより近似直線を求め、当該近似直線の上の一点の位置座標とX軸方向に対する傾きとを実測位置データとしても良い。
【0041】
一乃至複数の保持位置に電子部品フィーダー300が取り付けられた状態で部品交換台車200が電子部品実装装置100の取り付け位置102に取り付けられると、電子部品実装装置100から給電を受けて、当該部品交換台車200の制御装置210は、通信インターフェイス206を介して実測位置データ212を電子部品実装装置100及び搭載している各電子部品フィーダー300に対して送信する。
【0042】
電子部品フィーダー300は、部品交換台車200の通信インターフェイス206と通信可能な取得部としての通信インターフェイス303を備えている。
電子部品フィーダー300の制御装置310は、通信インターフェイス303及び部品交換台車200の通信インターフェイス206を介して電子部品実装装置100の制御装置120から電子部品の送り動作の実行指令を受信して、送りモーター302に対して部品テープを所定ピッチで送る動作制御を実行する。
【0043】
上記各構成により、一乃至複数の電子部品フィーダー300が各保持位置に取り付けられた部品交換台車200が、電子部品実装装置100の取り付け位置102に取り付けられると、部品交換台車200の制御装置210から実測位置データ212が電子部品実装装置100の制御装置120及び各電子部品フィーダー300の制御装置310に送信される。
【0044】
そして、電子部品実装装置100では、制御装置120の制御により、ヘッド106を部品交換台車200の二つの基準マーク201,201の各位置へ搬送し、撮像カメラ108によって各基準マーク201,201を個別に撮像する。
制御装置120は、各基準マーク201,201のそれぞれの撮像画像に対して画像処理を行い、撮像画像中から基準マーク201,201を抽出し、撮像範囲内における基準マーク201,201の各位置を算出する。
そして、各基準マーク201,201を撮像したときのヘッド106のそれぞれの位置と、撮像範囲内での基準マーク201,201の位置とから、電子部品実装装置100の座標系における各基準位置マーク201,201の位置座標を取得する。
【0045】
さらに、制御装置120では、部品交換台車200から実測位置データ212を取得しており、この実測位置データは、二つの基準マーク201,201を通る直線をX軸とし、一方の基準マーク201の位置を原点として、部品交換台車200の各保持位置における電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301の位置座標が記録されている。実測位置データ212が示す各部品受け渡し位置301の位置座標は、部品交換台車200による位置誤差が反映されている。
従って、前述した基準マーク201,201の撮像によって、電子部品実装装置100の座標系における各基準位置マーク201,201の位置座標を得ることにより、各部品受け渡し位置301も電子部品実装装置100の座標系における位置座標を算出することが可能である。
これにより、電子部品実装装置100の制御装置120は、各電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301の位置座標を取得し、各電子部品フィーダー300から電子部品を吸着する際に、ヘッド106に搭載された吸着ノズル105をより正確に位置決めすることが可能となっている。
【0046】
電子部品実装装置100の制御装置120は、実測位置データ212から部品交換台車200の各電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301の位置座標を取得した後には、EEPROM126から基板Kに対する実装データを読み込み、電子部品の実装動作を行う。
即ち、上記実装データには基板Kに対して実装を行う電子部品の電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301の所在と基板Kに対する実装位置の情報が記録されており、生産プログラムの記録の順番に従って電子部品の実装操作を実行する。
例えば、制御装置120のCPU121は、X軸モーター109及びY軸モーター110を制御して、所定の電子部品を保有する電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301に対してヘッド106を位置決めする。このとき、目標位置となる部品受け渡し位置301の位置座標は、実測位置データ212に基づいて部品交換台車200の位置誤差を反映しているので、ヘッド106の吸着ノズル105をより正確に位置決めすることが可能となっている。
そして、Z軸モーター111を制御して吸着ノズル105の下降により電子部品を吸着し、再び、吸着ノズル105を上昇させて図示しないカメラの撮像位置にヘッド106を搬送する。
そして、吸着ノズル105に吸着された電子部品を下方から撮像し、吸着ノズル105に対する電子部品の位置ズレと角度ズレとを検出する。
角度ズレについては、回転モーター112の駆動により補正し、位置ズレについては、位置ズレを相殺するようにヘッド106の吸着ノズル105を基板Kの実装位置に位置決めすることで補正する。
そして、基板Kの実装位置においてZ軸モーター111の駆動によって吸着ノズル105を下降させて、電子部品の実装動作を完了する。
【0047】
[実施形態の技術的効果]
上記実施形態に示す部品交換台車200は、複数の電子部品フィーダー(電子部品供給装置)300を複数の所定の保持位置で保持した状態で電子部品実装装置100の所定の取り付け位置102に対して着脱可能であり、
部品交換台車200が当該部品交換台車に固有の実測位置データ212が記録された記録部(メモリ)211を有し、
固有の実測位置データ212は、予め部品交換台車200の複数の所定の保持位置の一部又は全部に対して電子部品フィーダー(電子部品供給装置)300又は当該電子部品フィーダー(電子部品供給装置)300と同寸の模型であるマスターフィーダーMを取り付けてその部品受け渡し位置を実測した値からなる。
【0048】
このため、部品交換台車200を電子部品実装装置100に取り付けたときに、通信インターフェイス113,206を介して当該電子部品実装装置100は部品交換台車200に固有の実測位置データ212を容易に取得することができる。そして、この実測位置データ212は当該部品交換台車200の加工精度や組付け精度のバラつきを反映したものであることから、電子部品実装装置100では、より正確に電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301にヘッド106を位置決めすることが可能となる。
また、電子部品実装装置100は、通信インターフェイス113,206を介して部品交換台車200のメモリ211から実測位置データ212を読み取るだけで良いので、新たな部品交換台車200が取付位置102に取り付けられるたびに新たにティーチングを行うことが不要となり、作業負担の軽減を図ることが可能となる。
【0049】
また、部品交換台車200は、電子部品実装装置100から位置認識可能な基準マーク201,201を所定の位置に設け、実測位置データ212は、基準マーク201,201の位置から相対的に各部品受け渡し位置301を求めることが可能な位置情報を含んでいる。
即ち、実測位置データ212は、各基準マーク201,201の位置を結ぶ直線をX軸とし、一方の基準マーク201を原点とする座標系で各部品受け渡し位置301の位置座標を示している。
【0050】
このため、電子部品実装装置100は、撮像カメラ108によって基準マーク201,201を撮像し、その位置を認識することで全ての部品受け渡し位置301の位置を求めることが可能である。
従って、より正確に電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301にヘッド106を位置決めすることが可能となる。
【0051】
また、部品交換台車200は、メモリ211の実測位置データ212を電子部品実装装置100に対して有線又は無線により送信可能な通信インターフェイス(通信部)206を備えているので、部品交換台車200の取り付けの際に速やかに実測位置データ212を電子部品実装装置100に取得させることが可能となる。
【0052】
また、電子部品実装装置100は、電子部品の実装が行われる基板Kを保持する基板保持部104と、電子部品の保持と解放を行うヘッド106と、基板保持部104と部品交換台車200との間でヘッド106の移動を行う移動機構としてのX−Yガントリ107と、部品交換台車200のメモリ211ら実測位置データ212を取得する通信インターフェイス(取得部)113と、部品交換台車200に保持された電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301にヘッド106を位置決めする場合に、通信インターフェイス113から取得された実測位置データ212に基づいて補正を行うようにX−Yガントリ107を制御する制御装置120とを備えている。
【0053】
上記電子部品実装装置100は、部品交換台車200のメモリ211から当該部品交換台車に固有の実測位置データ212を取得する通信インターフェイス113を有するので、実測位置データ212を迅速且つ容易に取得することができ、部品交換台車200の加工精度や組付け精度のバラつきを反映したヘッド106の位置補正を行うことができ、より正確に電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301にヘッド106を位置決めすることが可能となる。
【0054】
[電子部品フィーダーにより補正動作の例]
上記構成において、電子部品フィーダー300の通信インターフェイス303が部品交換台車200のメモリ211から実測位置データ212を取得した場合に、その制御装置310は、実測位置データ212が示す部品受け渡し位置301と正規の位置(例えば、設計上の部品受け渡し位置301の正規の位置)とのY軸方向における誤差を算出する。
そして、制御装置310は、部品テープの電子部品の各格納部が毎回、部品受け渡し位置301に停止するようにY軸方向に沿った送りモーター302による送り動作の制御を行っている。
このとき、制御装置310は、部品受け渡し位置301についてY軸方向に生じた誤差分を相殺するように、部品テープの部品受け渡し位置301に対する停止位置を補正するように、送りモーター302を制御する。
これにより、部品交換台車200に搭載された電子部品フィーダー300の部品受け渡し位置301について、少なくともY軸方向の誤差を解消することが可能となる。
【0055】
[記録部の他の例]
部品交換台車200では、実測位置データ212を記録する記録部としてメモリ211を使用しているが、外部から情報を読み取ることが可能な他の記録部を部品交換台車200に設けても良い。
例えば、実測位置データの内容を1次元または2次元のコード化し(例えば、バーコード、QRコード(登録商標)等)、当該コードを記載したプレート、シートその他の平面状のものを部品交換台車200の外部に装備または貼着しても良い。
これに対して、電子部品実装装置100には、コード読み取り用のリーダーや撮像するカメラを設けることが望ましい。
これにより、部品交換台車200を電子部品実装装置100の取付位置102に取り付ける際に、コードで表示された実測位置データを読み取り、電子部品実装装置100において実測位置データを取得することができる。
【0056】
これにより、実測位置データを記録する記録部を有する部品交換台車を容易且つ低コストで製造するが可能となる。
また、例えば、記録部を持たない部品交換台車に対しても容易に記録部を装備することが可能となり、既存の部品交換台車を有効に活用することが可能となる。
【0057】
電子部品供給装置にかかる本発明は、部品交換台車の記録部から当該部品交換台車に固有の実測位置データを取得する取得部を有するので、部品交換台車の加工精度や組付け精度のバラつきを反映した部品テープの位置補正を行うことができ、より正確に電子部品供給装置の部品受け渡し位置に格納部を位置決めすることが可能となる。
【0058】
[その他]
本実施形態で示した電子部品フィーダー300は、上記構成のものに限定されない。
例えば、その後端部で部品テープのリールを保持する電子部品フィーダー300を例示したが、これに限らず、リールを別に保持するタイプの電子部品フィーダーを部品交換台車200に搭載することも可能である。
また、駆動源を備える電子部品フィーダー300を例示したがこれに限定されない。例えば、部品交換台車200を電子部品実装装置100に取り付けた状態で、当該電子部品実装装置100が有するアクチュエーターにより電子部品フィーダーに対して送り動作を行う駆動源の非搭載型の電子部品フィーダーを使用することも可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、実測位置データの測定の際に、部品交換台車200に対してマスターフィーダーMを搭載していたが、実製品である電子部品フィーダー300を搭載して測定を行っても良い。