【解決手段】受信した光の出力光パワーの減衰量を調整する可変光減衰器52と、前記出力光パワーが光遮断状態と判断される第1のレベル以下であることを検出する検出部551と、検出部551にて前記出力光パワーが前記第1のレベル以下であることが検出されると、前記減衰量を前記光遮断状態が解除されたと判断される第2のレベルに応じた減衰量に増加する制御部60と、を備える。
前記第2のレベルに応じた減衰量は、前記出力光パワーが増加した時に、前記出力光パワーが前記可変光減衰器の出力光を受光する受光器の最大受信レベル未満で、かつ、規定の時間内に前記第2のレベルに到達する範囲に収まる減衰量である、請求項1に記載の光受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。なお、以下の実施形態で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
【0018】
図1は、一実施形態に係る光伝送システム1の一例を示すブロック図である。
図1に示す光伝送システム1は、例示的に、光送信局2と、光送信局2に光ファイバ等を用いた光伝送路4を介して接続された光受信局3と、を備える。光送信局2及び光受信局3は、いずれも光伝送装置の一例である。
【0019】
光送信局2は、例示的に、光通信モジュールを備えており、光通信モジュールの送信部20に着目すると、複数の光源21と、各光源21に駆動信号を与える複数のドライバ22と、各光源21の出力光を合波(波長多重)する波長多重器23と、を備える。
【0020】
光源21のそれぞれは、複数の波長λ0〜λn(nは2以上の整数)に対応して設けられている。光源21の一例は、波長λ0〜λnに対応した発振波長を有するレーザダイオード(LD)である。
【0021】
ドライバ22は、送信するデータ信号に応じて光源21の例えば駆動電流を制御することで、光源21の発光状態を制御する。これにより、光源21は、データ信号により変調された信号光を出力する。当該変調方式は、いわゆる直接変調方式と呼ばれる方式であるが、変調方式には外部変調方式を適用してもよい。
【0022】
波長多重器23は、各光源21の出力光である、複数の波長λ0〜λnの送信変調信号光を波長多重(WDM)して光伝送路4へ出力する。波長多重器23は、例示的に、合波カプラである。
【0023】
一方、光受信局3は、例示的に、光通信モジュールを備えており、光通信モジュールの受信部30に着目すると、可変光減衰器(VOA)31と、波長分離器32と、複数の波長λ0〜λnに対応して設けられた複数の受光器33と、を備える。なお、受信部30は、光受信装置の一例である。
【0024】
VOA31は、光伝送路4から受信されたWDM信号光のパワーを調整して波長分離器32へ出力する。VOA31は、
図1において図示を省略した制御部によって減衰量(VOAロス)が制御される。VOAロスは、各受光器33への入力光パワーが受光器33の受信可能な上限値(最大受信レベル)を超えないように制御される。
【0025】
例えば、制御部は、VOA31への入力光パワーをモニタし、そのモニタ結果に基づいて、1つの受光器33あたりに入力される光パワーが最大受信レベルを超えないようにVOAロスをフィードバック制御する。これにより、
図2に例示するように、VOA31に受光器33の最大受信レベル(例えば、4.5dBm)を超えるパワーの光が入力されても、VOAロスにより1つの受光器33あたりの入力光パワーを所定値(例えば、0dBm)以下の一定レベルに制限できる。
【0026】
図1に戻り、波長分離器32は、VOA31から入力されるWDM信号光を波長毎の光信号に分離(分波)して対応する受光器33へ出力する。波長分離器32の一例は、分波カプラである。なお、波長分離器32から各受光器33を経由する波長毎の光経路を「レーン」と称することがある。
【0027】
受光器33は、それぞれ、波長分離器32からの出力光の受光パワーに応じた電気信号(P0〜Pn)を生成する。受光器33は、例示的に、受光素子の一例であるフォトダイオード(あるいは、フォトディテクタ)(PD)を備える。PDは、受光パワーに応じた電流を出力する。受光器33には、PDの出力電流を電圧に変換するトランスインビーダンスアンプ(TIA)を備えてもよい。波長分離器32、PD及びTIAを含むブロックは、ROSA(Receiver Optical SubAssembly)と称されることがある。
【0028】
次に、
図3に、上述した光伝送装置の一例である光送信局2又は光受信局3に備えられる光通信モジュール5の構成例を示す。
【0029】
図3に示す光通信モジュール5は、CFP2規格に準拠したモジュールの一例であり、4波長(λ0〜λ3)による双方向のWDM光通信をサポートする。光通信モジュール5は、受信部50Aに着目すると、光分岐カプラ51、VOA52、受光素子53、ROSA54、及び、クロックデータリカバリ(CDR)回路55を備える。なお、受信部50Aは、
図1に例示した受信部30に相当する。
【0030】
光分岐カプラ51は、光ファイバ等の光伝送路4AからVOA52に入力されるWDM信号光の一部をモニタ光として受光素子53へ分岐する。
【0031】
受光素子53は、例えばPDであり、光分岐カプラ51から入力されたモニタ光の受光パワーに応じた電気信号を生成する。当該電気信号は、
図3において図示を省略した制御部へ出力され、制御部による既述のVOAロス制御に用いられる。なお、受光素子53は、以下「モニタPD53」と称する。
【0032】
VOA52は、
図1に例示したVOA31に相当し、VOAロスが制御されることにより、ROSA54への入力光パワーを制御(調整)する。
【0033】
ROSA54は、例示的に、波長分離器541と、波長λ0〜λn毎に設けられた、PD542及びTIA543と、を備える。
【0034】
波長分離器541は、
図1に例示した波長分離器32に相当し、PD542及びTIA543は、
図1に例示した受光器33に相当する。PD542及びTIA543の機能は、既述のとおりである。
【0035】
CDR回路55は、ROSA54の波長毎のTIA543から出力される電気信号からクロック信号とデータ信号とを復元する。CDR回路55には、アラーム(LOS)機能が内蔵されてもよい。LOS機能は、レーン毎のアラーム信号の発出及び解除を行なう。
【0036】
例えば、LOS機能は、ROSA54のいずれかのTIA543から出力される電気信号(例えば、電圧値)が所定の受信レンジの下限値を下回ると、ROSA54の最小受信感度を満たさなくなるため、光信号の喪失を示すアラーム信号を出力する。アラーム信号の一例が、LOSアラームである。そのため、上記下限値をLOS発出レベルと称することがある。LOS発出レベルは、第1のレベルの一例である。例えば
図4に示すように、LOSアラームが未発出の状態でPD542への入力光パワーが低下し、TIA543の出力電圧値がLOS発出レベル以下になると、LOSアラームが発出される。
【0037】
LOSアラームは、対応するレーンのTIA543の出力電圧値がLOS発出レベル以上になった時に解除してもよいが、ノイズ等の影響によりTIA543の出力電圧値がLOS発出レベル近傍で変動することがある。その場合、LOSアラームの発出と解除とが頻繁に繰り返されるおそれがある。
【0038】
そのため、
図5に例示するように、LOS解除レベルは、LOS発出レベルよりも大きいレベル(ただし、TIA543の最大出力レベルよりも小さいレベル)に設定しておくとよい。別言すると、LOS発出レベルとLOS解除レベルとに対してヒステリシスを与えておくとよい。LOS解除レベルは、第2のレベルの一例である。LOSアラームは、TIA543の出力電圧値がLOS解除レベル以上になると解除(出力停止)される。
【0039】
図3に戻り、光通信モジュール5は、送信部50Bに着目すると、CDR回路56とTOSA(Transmitter Optical SubAssembly)57とを備える。TOSA57には、例示的に、光源の一例である、波長λ0〜λn毎のLD571と、波長多重器572と、を含む。なお、送信部50Bは、
図1に例示した送信部20に相当する。
【0040】
CDR回路56は、波長λ0〜λ3毎の送信データ及びクロックを受けて送信データに応じたLD571の駆動信号を生成する。
【0041】
LD571は、それぞれ、CDR回路56から与えられる駆動信号に応じて発光状態が制御されることにより、対応する波長の送信変調信号光を出力する。
【0042】
波長多重器572は、各LD571から入力される送信変調信号光を波長多重(合波)して光ファイバ等の光伝送路4Bへ送信する。
【0043】
LD571及び波長多重器572は、
図1に例示したLD21及び波長多重器23にそれぞれ相当する。なお、
図1に例示したドライバ22は、
図3において図示を省略している。
【0044】
次に、上述のごとく構成された光通信モジュール5の受信部50B(VOA52)に対して、光が入力されない状態(光遮断状態)から入力光が復帰し、受信部50Bへの入力光パワーが急激に増加する場合の、VOAロスの制御について検討する。
【0045】
図6(A)及び
図6(B)は、それぞれ、VOA52への入力光パワー、PD542への入力光パワー及びVOAロスの時間変化の一例を示す図である。
図6(A)及び
図6(B)のそれぞれにおいて、矩形状の実線Aが光通信モジュール5(VOA52)への入力光パワーの変化、点線BがPD542への入力光パワーの変化、実線CがVOAロスの変化をそれぞれ表している。
【0046】
なお、一点鎖線Dで示す光入力光パワー(レベル)は、当該入力光パワーを超えるパワーの光が入力されるとPD542がダメージを受ける閾値を表す。当該閾値は、PD542の「最大(あるいは定格)受信レベル」と称してもよいし「ダメージレベル」と称してもよい。また、
図6(A)及び
図6(B)には、それぞれ、時刻T1において光遮断状態となり、その後の時刻T2においてVOA52への入力光が復帰した場合を例示している。なお、「光遮断状態」とは、完全に光が入力されない状態だけでなく、ROSA54の最小受信感度を満たさないレベル(LOS発出レベル以下)の光が入力されている状態をも含む。
【0047】
まず、
図6(A)に例示するように、時刻T1において光遮断状態となった場合に、ROSA54の最小受信感度を満たすために、VOAロスを最小に制御して入力光の復帰を待機することを想定する。この場合、時刻T2において入力光が復帰すると、PD542への入力光パワーがダメージレベルを超えないようにVOAロスを最大値に向けて増加する制御が開始される(実線C参照)。
【0048】
しかし、既述のとおりVOA52の制御応答時間はmsオーダであるため、入力光パワーの減衰が間に合わず、
図6(A)中に点線枠Eに示すように、PD542にダメージレベルを超える入力光パワーが入力されてしまう。別言すると、光サージによる光オーバーシュートが生じる。
【0049】
このような入力光復帰時の光オーバーシュートを防止するために、
図6(B)に例示するように、時刻T1において光遮断状態となった場合に、VOAロスを最大値に制御しておくことが考えられる。そして、光入力が復帰した時点(時刻T2)でVOAロスを最大値から減少制御する。この場合、光オーバーシュートは防止できるものの、VOA52の制御応答時間に応じて、時刻T2以後にPD542への入力光パワーがLOS解除レベル(点線F参照)に到達するまでの時間に遅延が生じる。
【0050】
例えば
図6(B)では、VOA52の制御応答時間に応じた応答速度でPD542への入力光パワーが増加し(点線枠J参照)、時刻T3においてPD542への入力光パワーがLOS解除レベルに到達する。そのため、時刻T2−T3間の時間だけLOSアラームの解除タイミングが遅延する。この遅延が100μs以上になってしまうと、CFP規格において規定されるLOS解除時間(100μs未満)を満足できない。
【0051】
そこで、本実施形態では、光遮断状態となった場合に、VOAロスをLOS解除レベルに応じたロスに増加制御する。当該VOAロスは、例示的に、入力光が復帰した時にPD542への入力光パワーがダメージレベル未満で、かつ、CFP規格のLOS解除時間内にLOS解除レベルに到達する範囲に収まるようなロスである。
【0052】
そのようなVOAロスの非限定的な一例は、LOS発出レベルとLOS解除レベルとの差分(別言すると、既述のヒステリシス)に相当するロスである。仮に、光通信モジュール5(VOA52)への入力光復帰時の入力光パワーの最大値が4.5dBmであり、ヒステリシスが5dBに設定されているとすると、光遮断状態が検出(LOS発出)された場合のVOAロスはヒステリシス相当量の5dBに設定(増加制御)するとよい。
【0053】
このようなVOAロスの設定によれば、光入力復帰時に、PD542への入力光パワーをダメージレベル(例えば、0dBm)未満に制限しつつ、LOS解除時間の遅延を抑制する、別言すると、LOS解除時間の短縮化を図ることができる。
【0054】
すなわち、光入力復帰時においてPD542への入力光パワーはVOA52の制御応答を待たずにLOS解除レベルに速やかに到達するので、CFP規格のLOS解除時間内にLOSアラームの発出を解除できる。したがって、光入力復帰時のPD542のダメージ保護と、CFP規格のLOS解除時間内のLOSアラーム解除とを両立できる。
【0055】
図7(B)に、上述したVOAロス設定を適用した場合の、VOA52への入力光パワー、PD542への入力光パワー及びVOAロスの時間変化の一例を示す。なお、
図7(A)は、
図7(B)に対する比較図であり、
図6(A)と同じ図である。すなわち、
図7(A)は、光遮断状態検出後にVOAロスを最小に制御して入力光の復帰を待機する場合を例示している。
【0056】
図6(A)及び
図7(A)と同様に、
図7(B)において、矩形状の実線Aが光通信モジュール5(VOA52)への入力光パワーの変化、点線BがPD542への入力光パワーの変化、実線CがVOAロスの変化をそれぞれ表している。
【0057】
図7(B)に例示するように、時刻T1で光遮断状態が検出されると、VOAロスがヒステリシス相当のロスに増加制御される(点線枠G参照)。その後、時刻T2において、光入力が復帰してVOA52に例えば最大の入力光パワー(実線A参照)が入力されても、当該VOAロスによってPD542への入力光パワー(点線B参照)はダメージレベル(一点鎖線D参照)未満に制限される(点線枠H参照)。
【0058】
また、
図8(B)の(3)に例示するように、光入力復帰時(時刻T2)においてPD542への入力光パワーはLOS解除レベルに到達するので、LOSアラームが速やかに解除される。すなわち、
図8(A)の(3)及び
図6(B)に示すようなLOS解除タイミングの遅延(時刻T3参照)は生じないか、あるいは最小にできる。
【0059】
なお、
図8(B)は、本実施形態のVOAロス設定を適用した場合の、VOA52への入力光パワー、PD542への入力光パワー及びVOAロスの時間変化の一例を示す図である。
図8(B)は、
図7(B)に例示した時間変化の一例を、(1)VOA52への入力光パワー及びVOAロスの時間変化、(2)VOAロスの時間変化、及び、(3)PD542への入力光パワーの時間変化に分解して示す図に相当する。
【0060】
これに対し、
図8(A)は、
図6(B)に例示した、光遮断状態検出後にVOAロスを最大値に制御して光入力復帰を待機する場合の時間変化の一例を、
図8(B)の(1)〜(3)と同様に分解して示す図に相当する。
【0061】
次に、
図9に、上述したVOAロスの設定(制御)を実現する受信部50Aの構成例を示す。
図9において、既述の符号と同一符号を付した部分は、特に断らない限り、既述の部分と同一若しくは同様の部分を示す。
【0062】
図9に例示するように、受信部50Aは、波長(レーン)毎のPD542の出力のそれぞれに対してLOS検出部551及びモニタ部552が備えられる。また、LOS検出部551及びモニタ部552は、それぞれ、制御部60に接続される。
【0063】
制御部60は、受信部50Aに内蔵されていてもよいし、受信部50Aの外部に備えられていてもよい。LOS検出部551と制御部60とを含むブロック、あるいは、LOS検出部551及びモニタ部552と制御部60とを含むブロックは、光受信装置の一例である受信部50Aの制御装置の一例である。
【0064】
LOS検出部551は、PD542の出力電圧と閾値電圧とを比較し、PD542の出力電圧が閾値電圧を下回った場合にLOS検出信号を制御部60に出力する。
【0065】
そのため、LOS検出部551は、例えば
図10に示すように、コンパレータ5511とデジタル−アナログ変換器(DAC)5512とを備える。
【0066】
コンパレータ5511の一方(負側)の入力にはPD542の出力電圧が入力され、他方(正側)の入力にはDAC5512から閾値電圧が入力される。コンパレータ5511は、PD542の出力電圧がDAC5512からの閾値電圧を下回ると、LOS検出信号を出力する。なお、DAC5512からコンパレータ5511に与えられる閾値電圧は、例えば制御部60によって設定される。
【0067】
ここで、閾値電圧は、LOS発出レベルとLOS解除レベルとで個別に設定しなくてよい。別言すると、閾値電圧は、LOS発出レベルとLOS解除レベルとに共通でよい。その理由は、次のとおりである。すなわち、本実施形態では、光遮断状態においてVOAロスをヒステリシス相当のロスに設定することで、LOS発出レベルとLOS解除レベルとの間のヒステリシスを、電気回路(電気信号レベル)で実現せずに、代替的に、光回路(光信号レベル)で実現している。そのため、電気信号レベルにおいて、LOS発出レベルに相当する閾値電圧は、LOS解除レベルに相当する閾値電圧でもあると捉えてよい。閾値電圧を変更することは、
図5に例示したヒステリシスが横軸(PD入力光パワー)に沿ってシフトすることに相当すると捉えてよい。
【0068】
モニタ部552は、PD542の出力電圧をモニタすることにより、PD542の受光パワーをモニタし、そのモニタ結果(以下「受信パワーモニタ値」と称することがある。)を制御部60に出力する。
【0069】
なお、上述したLOS検出部551及びモニタ部552は、例示的に、
図3に示したCDR回路55に備えられてよい。別言すると、LOS検出部551及びモニタ部552の機能は、CDR回路55の一機能として実現されてよい。
【0070】
制御部60は、モニタPD53でモニタされた、VOA52へ入力されるWDM信号光のパワーに応じた電気信号(WDM信号光パワー情報)と、各レーンのLOS検出部551及びモニタ部552の出力信号とに基づいて、VOA52のVOAロスを制御する。
【0071】
例えば、通常運用時において、制御部60は、モニタPD53からのWDM信号光パワー情報と、各レーンのモニタ部552の受信パワーモニタ値とに基づいて、PD542への入力光パワーがダメージレベルを超えないようにVOAロスを制御する。
【0072】
そして、制御部60は、例えば
図11に示すように、いずれかのLOS検出部551からLOS検出信号が出力された否かを監視する(処理P11のNOルート)。いずれかのレーンのLOS検出部551からLOS検出信号が出力されると(処理P11でYESの場合)、制御部60は、VOAロスを既述のヒステリシス相当量のVOAロスに設定する(処理P12)。
【0073】
ここで、LOS検出信号は、VOA52へWDM信号光が入力されない場合、及び、WDM信号光に含まれる波長の一部だけが光遮断状態となった場合のいずれにおいても出力される。
【0074】
すなわち、VOA52へWDM信号光が入力されない場合、各レーンのLOS検出部551のそれぞれからLOS検出信号が出力される。これに対し、WDM信号光に含まれる波長の一部だけが光遮断状態となった場合、対応するレーンのLOS検出部551に限ってLOS検出信号が出力される。なお、LOS検出部551からLOS検出信号が出力されるレーンをLOS検出レーンと称し、それ以外の他のレーンをLOS非検出レーンと称することがある。
【0075】
一部のレーンのLOS検出部551に限ってLOS検出信号が出力される場合でも、制御部60は、VOA52に対して既述のヒステリシス相当量のVOAロス設定を行なうため、当該設定に応じてLOS非検出レーンのPD542への入力光パワーが減少する。当該減少によりPD542の出力電圧値が閾値電圧を下回ってしまうと、当該LOS非検出レーンに対応するLOS検出部552にてLOS検出信号が誤って出力されることになる。
【0076】
このような誤検出を防止するために、制御部60は、例えばLOS非検出レーンに対応するLOS検出部551においてDAC5512からコンパレータ5511に与えられる閾値電圧を補正する(処理P13B)。
【0077】
例えば、制御部60は、ヒステリシス相当量のVOAロス設定に応じて、LOS検出信号が誤出力されず、かつ、PD542の最小受信感度を満足する範囲の電圧に閾値電圧を下げる。当該閾値電圧の補正は、例えば、LOS非検出レーンに対応するモニタ部552の受信パワーモニタ値に基づいて行なわれる。
【0078】
なお、ヒステリシス相当量のVOAロス設定に応じて、光遮断状態となっていない波長(LOS非検出レーン)に対応するモニタ部552で検出される受信パワーモニタ値も、本来検出されるはずの受信パワーモニタ値からずれが生じる(減少する)。
【0079】
そのため、制御部60は、ヒステリシス相当量のVOAロス設定に応じて、当該LOS非検出レーンに対応するモニタ部552で検出される受信パワーモニタ値を本来検出されるべき値に補正(例えば、増加)するように補正してもよい(処理P13A)。当該受信パワーモニタ値の補正は、LOS検出信号が出力されているレーンに対応するモニタ部552に対しても適用してよい(処理P13B)。
【0080】
これにより、制御部60は、例えば、補正された受信パワーモニタ値とモニタPD53からのWDM信号光パワー情報とに基づいて、LOS非検出レーンのPD542への入力光パワーがダメージレベルを超えない適切な範囲で推移するようVOAロスを調整できる。
【0081】
その後、制御部60は、LOS検出信号の出力が停止(解除)されるか否かを監視する(処理P14のNOルート)。LOS検出信号の出力が停止(解除)されると(処理P14でYESの場合)、制御部60は、上述のごとく補正された受信パワーモニタ値及び閾値電圧をそれぞれ元に戻す制御を実施する(処理P15A及びP15B)。以降、制御部60は、処理P11に戻り、いずれかのLOS検出部551からLOS検出信号が出力されるか否かを監視する。
【0082】
図12に、LOS非検出レーンに着目した場合の、当該レーンへの入力光パワー、PD542への入力光パワー、VOAロス、及び、閾値電圧の時間変化の一例を示す。
図12において、最上段に示す実線AがLOS非検出レーンへの入力光パワーの変化、点線BがPD542への入力光パワーの変化、実線CがVOAロスの変化、一点鎖線Kが閾値電圧の時間変化をそれぞれ表している。
【0083】
図12に例示するように、時刻T1でLOS検出レーンからLOS検出信号が出力されると、VOAロスがヒステリシス相当量に増加制御されるとともに、LOS非検出レーンのLOS検出部551(コンパレータ5511)の閾値電圧が減少制御(補正)される。その後、時刻T2においてLOS検出信号の出力が停止されると、補正した閾値電圧が補正前の閾値電圧に戻される(増加制御される)。閾値電圧を補正前の電圧に戻すタイミングは、LOS検出信号の出力が停止されたタイミング(時刻T2)でもよいし、時刻T2から一定時間経過後のタイミングでもよい。
【0084】
なお、上述した実施形態では、光遮断状態が検出された場合に、VOAロスをヒステリシス相当量のロスに設定(増加)する例について説明したが、これに限られない。例えば、入力光が復帰した時にPD542への入力光パワーがダメージレベルを超えず、かつ、CFP規格で規定されるLOS解除時間未満でLOS解除レベルに到達するVOAロスであれば、ヒステリシス相当量を超えるVOAロスに設定してもよい。
【0085】
例えば、PD542の保護のために、VOA52に対してヒステリシス相当量を超えるVOAロスの設定が必要な場合がある(
図13の(2)の実線C参照)。ここで、ヒステリシス相当量を超えるVOAロスの設定を行なうと、LOS検出部551(コンパレータ5511)に入力されるPD出力電圧が閾値電圧を超えにくくなる。そのため、LOS検出信号の出力が解除されにくくなる。
【0086】
LOS検出信号の出力が解除されにくくなることは、例えば
図5に示したLOS解除レベルがLOS発出レベルに近づいてヒステリシス量が実質的に減少することに相当すると捉えてよい。そのため、ヒステリシス相当量のVOAロスを確保できないおそれがある。
【0087】
そこで、制御部60は、例えば
図13に例示するように、ヒステリシス相当量を超えるロスが補償される量に応じて、コンパレータ5511の閾値電圧を下げる制御を実施してよい。なお、
図13の(3)において、点線Bは、PD542への入力光パワー(別言すると、PD出力電圧)の時間変化を表し、一点鎖線Kは、閾値電圧の時間変化を表す。また、
図13の(1)は、VOA52への入力光パワーの時間変化(実線A)と、VOAロスの時間変化(点線C)との関係の一例を示す。
【0088】
図13の(2)に例示するようなヒステリシス相当量を超えるVOAロスの設定を行なう場合に、
図13の(3)に一点鎖線Kで例示するように閾値電圧を下げることで、
図13の(1)に点線Cで示すように、ヒステリシス相当量のVOAロスが確保可能になる。
【0089】
また、上述した実施形態では、受信部30(50A)で受信される光(別言すると、VOA52に入力される光)が、WDM信号光である場合について説明したが、1波長の光である場合についても上述したVOAロス制御を適用可能である。したがって、受信光が1波長の光である場合にも、PD542のダメージ保護とLOS解除時間の遅延抑制とを図ることができる。
【0090】
さらに、上述した実施形態では、LOS非検出レーンのLOS検出部551におけるLOS発出レベル(コンパレータ5511の閾値電圧)を補正することでLOS検出信号の誤発出を防止しているが、これに限られない。例えば、PD542からLOS検出部551に入力される、受光パワーに応じた電圧(PD出力電圧)を制御部60がVOAロスに応じて補正(増加)することによっても、LOS非検出レーンでのLOS検出信号の誤発出を防止することが可能である。PD出力電圧の補正は、例えばPD542とコンパレータ5511との間に増幅利得が可変の増幅器を設け、当該増幅利得を制御部60が制御することで実現可能である。