【解決手段】導電路Aは、耐火性のパイプ10と、複数本の被覆電線21を束ねて構成され、パイプ10内に挿通されたワイヤーハーネス20と、パイプ10の内周とワイヤーハーネス20の外周との間に配された熱膨張性の第1封止材11と、隣り合う被覆電線21の間に形成される線間隙間24に臨むように配された熱膨張性の第2封止材12とを備えている。第1封止材11と第2封止材12によりパイプ10内における空気の流動が遮断され、延焼を防止することができる。
前記第2封止材が、前記複数本の被覆電線のうち少なくとも1本の前記被覆電線の外周を全周に亘って包囲するように配されていることを特徴とする請求項1記載の導電路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の延焼防止技術は、熱発泡性耐火材がパイプの内周側から可燃性長尺体の外周に向かって膨らむようになっているので、可燃性長尺体が1本だけである場合には、パイプの内周と可燃性長尺体の外周との隙間を確実に塞ぐことができる。しかし、複数本の可燃性長尺体を束ねてパイプに挿通した場合には、可燃性長尺体同士の間に隙間に熱発泡性耐火材が入り込むことができず、可燃性長尺体同士の間に隙間が空気の流動経路となる。そのため、熱発泡性耐火材が可燃性長尺体の束を包囲しても、延焼を防止することはできない。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、パイプ内における延焼を確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電路は、
耐火性のパイプと、
複数本の被覆電線を束ねて構成され、前記パイプ内に挿通されたワイヤーハーネスと、
前記パイプの内周と前記ワイヤーハーネスの外周との間に配された熱膨張性の第1封止材と、
隣り合う前記被覆電線の間に形成される線間隙間に臨むように配された熱膨張性の第2封止材とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
被覆電線が燃えると、パイプの内周とワイヤーハーネスの外周との間が、熱膨張した第1封止材により塞がれて空気の流動が遮断されるとともに、ワイヤーハーネスでは、被覆電線同士の間の線間隙間が、熱膨張した第2封止材により塞がれて空気の流動が遮断される。この第1封止材と第2封止材によりパイプ内における空気の流動が確実に遮断されるので、延焼を確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の導電路は、前記第2封止材が、前記複数本の被覆電線のうち少なくとも1本の前記被覆電線の外周を全周に亘って包囲するように配されていてもよい。この構成によれば、第2封止材で包囲されている被覆電線がその軸線回りに捻れても、第2封止材は確実に線間隙間に臨む。
【0010】
(2)本発明の導電路は、前記第2封止材が、前記線間隙間に臨むように配され、且つ隣り合う前記被覆電線に接着されていてもよい。この構成によれば、隣り合う被覆電線が第2封止材を介して連結されるので、複数本の被覆電線が束ねられた状態に保持される。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図2を参照して説明する。本実施例1の導電路Aは、耐火性のパイプ10と、パイプ10内に挿通されたワイヤーハーネス20と、パイプ10内に収容された熱膨張性の第1封止材11と、ワイヤーハーネス20に設けられた熱膨張性の第2封止材12とを備えて構成されている。
【0012】
パイプ10は、金属製であり、シールド機能を有している。パイプ10の内周の断面形状は、真円形である。ワイヤーハーネス20は、3本の被覆電線21を俵積み状に束ねて構成されている。被覆電線21は、断面形状が真円形をなす金属製の芯線22と、芯線22を同心状に包囲する円筒形の絶縁被覆23とから構成されている。3本の被覆電線21の外径寸法は、全て同じ寸法である。芯線22は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属からなるので、不燃性である。しかし、絶縁被覆23は、合成樹脂製であるため、可燃性である。したがって、絶縁被覆23の一部に着火すると、その炎は絶縁被覆23を軸線方向に伝わっていく虞がある。
【0013】
絶縁被覆23が燃えた場合にパイプ10内における延焼を防止する手段として、パイプ10の軸線方向(長さ方向)における一カ所又は複数箇所に、第1封止材11と第2封止材12が設けられている。第1封止材11は、パイプ10と同心の円環形をなし、パイプ10の内周面に接着剤(図示省略)により接着されている。尚、接着範囲は、パイプ10及び第1封止材11の全周に亘る範囲でもよく、パイプ10及び第1封止材11の周方向における一部又は周方向に間隔を空けた複数箇所だけであってもよい。
【0014】
第1封止材11の材質は、熱膨張性黒鉛が含有されたゴム材料からなる。第1封止材11は、例えば250〜300℃に加熱されると急激に膨張するようになっており、その膨張率は、10倍程度である。また、膨張した第1封止材11は、耐火性を有し、断熱体としても機能する。第1封止材11の熱膨張していない状態の内径は、ワイヤーハーネス20に外接する外接円(図示省略)の直径寸法よりも大きい寸法とされている。
【0015】
第2封止材12は、3本の被覆電線21に個別に対応するように3つ設けられている。各第2封止材12は、被覆電線21と同心の円環形をなし、被覆電線21を全周に亘って包囲している。そして、各第2封止材12は、夫々、絶縁被覆23の外周面に接着剤(図示省略)により接着されている。第2封止材12は、パイプ10及びワイヤーハーネス20(被覆電線21)の軸線方向において第1封止材11と同じ位置で対応するように配置されている。3本の被覆電線21は俵積み状に束ねられているため、3つの第2封止材12は三角形をなすように配置されている。
【0016】
隣り合う第2封止材12同士は、その外周の一部において接着剤(図示省略)により接着されている。これにより、3本の被覆電線21は、径方向や周方向に相対変位することなく、束ねられた状態に保持されている。また、ワイヤーハーネス20は、外径寸法が同一であって断面形状が真円形をなす3本の被覆電線21を俵積み状に束ねて構成されているため、ワイヤーハーネス20の中心部には、断面形状が略正三角形をなす線間隙間24が形成される。
【0017】
第2封止材12は、各被覆電線21を全周に亘って包囲しているので、3つの第2封止材12の周方向における一部は、線間隙間24に臨んだ状態となっている。つまり、第2封止材12が熱膨張していない状態では、線間隙間24は空きスペースとなっている。また、第2封止材12の周方向における別の一部は、隣り合う被覆電線21の間に挟まれるように位置する。さらに、第2封止材12のうち周方向において隣り合う被覆電線21及び線間隙間24とは非対応の領域(第2封止材12の大部分の領域)は、第1封止材11に対して径方向に間隔を空けて対向するように配されている。
【0018】
次に、本実施例1の作用を説明する。被覆電線21が燃えてパイプ10内の温度が上昇すると、第1封止材11と第2封止材12が熱膨張する。第2封止材12の内周部は、比較的変形し易い絶縁被覆23に密着しているので、絶縁被覆23を径方向に潰しなら内径を小さくするように熱膨張する。また、第2封止材12の外周部のうち線間隙間24に臨む部分は、線間隙間24内に進出するように膨張し、隣り合う第2封止材12の外周部同士が隙間無く密着する。この熱膨張した3つの第2封止材12により、線間隙間24は全体がほぼ気密状に(隙間なく)塞がれる。
【0019】
また、第2封止材12の外周部のうち第1封止材11と対向する広い領域は、径方向外方へ膨らむように熱膨張する。一方、第1封止材11は、外周面が金属製のパイプ10に密着しているので、ワイヤーハーネス20に接近するように径方向内方へ膨らんでいく。この内周側へ膨らむ第1封止材11の内周面が、全周に亘り、外周側へ膨らむ3つの第2封止材12の外周面に隙間無く密着する。
【0020】
このように、ワイヤーハーネス20の中央部の線間隙間24が、熱膨張した3つの第2封止材12によりほぼ気密状に塞がれるとともに、パイプ10の内周とワイヤーハーネス20の外周との隙間が、全体に亘り、熱膨張した第1封止材11と3つの第2封止材12とによってほぼ気密状に塞がれる。したがって、パイプ10内における空気や煙の軸線方向の流れは、第1封止材11及び第2封止材12により封止された部分において、完全に遮断される。これにより、被覆電線21の延焼が確実に防止される。
【0021】
本実施例1の導電路Aは、耐火性のパイプ10と、3本の被覆電線21を束ねて構成されてパイプ10内に挿通されたワイヤーハーネス20と、パイプ10の内周とワイヤーハーネス20の外周との間に配された熱膨張性の第1封止材11と、隣り合う被覆電線21の間に形成される線間隙間24に臨むように配された熱膨張性の第2封止材12とを備えている。この構成によれば、被覆電線21の絶縁被覆23が燃えると、パイプ10の内周とワイヤーハーネス20の外周との間が、熱膨張した第1封止材11と第2封止材12とにより塞がれて空気の流動が遮断されるとともに、ワイヤーハーネス20の内部では、被覆電線21同士の間の線間隙間24が、熱膨張した第2封止材12により塞がれて(埋められて)空気の流動が遮断される。この第1封止材11と第2封止材12によりパイプ10内における空気の流動が確実に遮断されるので、延焼を確実に防止することができる。
【0022】
また、第2封止材12は、各被覆電線21の外周を個別に全周に亘って包囲するように配されているので、隣り合う第2封止材12同士の間での接着力が失われて、各第2封止材12が個別に回転したとしても、第2封止材12の一部は、必ず、線間隙間24に臨む状態に保たれる。したがって、第2封止材12は、熱膨張したときに確実に線間隙間24を埋めることができる。
【0023】
本実施例1では、隣り合う第2封止材12同士を接着しているので、3本の被覆電線21が束ねられた状態に保持される。また、各第2封止材12がその軸線を中心として回転することもない。したがって、第2封止材12の内周に接着されている被覆電線21も軸線回りに捻られる虞はない。尚、仮に被覆電線21と第2封止材12との間の接着力が失われ、被覆電線21が第2封止材12の内部で軸線回りに捻れたとしても、第2封止材12は確実に線間隙間24に臨んだ状態に保持される。
【0024】
<実施例2>
以下、本発明を具体化した実施例2を
図3〜
図4を参照して説明する。本実施例2の導電路Bは、耐火性のパイプ10と、パイプ10内に挿通されたワイヤーハーネス30とを備えている。さらに、絶縁被覆23が燃えた場合にパイプ10内における延焼を防止する手段として、パイプ10内には、その軸線方向(長さ方向)における一カ所又は複数箇所に、熱膨張性の第1封止材11と熱膨張性の第2封止材13が設けられている。パイプ10と、第1封止材11と、ワイヤーハーネス30を構成する3本の被覆電線21は、実施例1と同じであるから、説明は省略する。
【0025】
第2封止材13は、パイプ10及びワイヤーハーネス30(被覆電線21)の軸線方向において第1封止材11と同じ位置で対応するように配置されている。第2封止材13は、俵積み状に配置した3本の被覆電線21を連結するように3つに分けて設けられている。即ち、各第2封止材13は、周方向に隣り合う被覆電線21の外周面のうちの対向する領域に、接着剤(図示省略)により接着されている。これにより、3本の被覆電線21は、相対変位することなく俵積み状に束ねられた状態に保たれるとともに、各被覆電線21の軸線周りに捻られることもない。
【0026】
上記のように、ワイヤーハーネス30は、外径寸法が同一であって断面形状が真円形をなす3本の被覆電線21を俵積み状に束ねて構成されているため、ワイヤーハーネス30の中心部には、断面形状が略正三角形をなす線間隙間31が形成される。第2封止材13は、周方向に隣り合う被覆電線21同士を連結するように配置されているので、3つの第2封止材13の内面が、線間隙間31に臨んだ状態となっている。つまり、第2封止材13が熱膨張していない状態では、線間隙間31は空きスペースとなっている。また、第2封止材13の外面は、つまり線間隙間31に臨む内面とは反対側の面は、第1封止材11に対して径方向に間隔を空けて対向するように配されている。
【0027】
次に、本実施例2の作用を説明する。被覆電線21が燃えてパイプ10内の温度が上昇すると、第1封止材11と第2封止材13が熱膨張する。第2封止材13の内周部は、線間隙間31に臨んでいるので、ワイヤーハーネス30の中央部に向かって(つまり、線間隙間31内に進出するように)熱膨張する。そして、熱膨張した3つの第2封止材13により、線間隙間31は全体がほぼ気密状に(隙間なく)塞がれる。
【0028】
また、第2封止材13の外周部は、ワイヤーハーネス30の径方向外方(つまり、第1封止材11)に向かって膨らむように熱膨張する。一方、第1封止材11は、外周面が金属製のパイプ10に密着しているので、ワイヤーハーネス30に接近するように径方向内方へ膨らんでいく。そして、第1封止材11の内周部の一部が外周側へ膨らむ3つの第2封止材13の外周面と密着し、第1封止材11の内周部の大部分は、被覆電線21の外周面に密着する。
【0029】
上述のようにワイヤーハーネス30の中央部の線間隙間31が、熱膨張した第2封止材13によってほぼ気密状に塞がれるとともに、パイプ10の内周とワイヤーハーネス30の外周との隙間が、全周に亘り、熱膨張した第1封止材11と3つの第2封止材13とによってほぼ気密状に塞がれる。したがって、パイプ10内における空気や煙の軸線方向の流れは、第1封止材11及び第2封止材13により封止された部分において、完全に遮断される。これにより、被覆電線21の延焼が確実に防止される。
【0030】
本実施例2の導電路Bは、耐火性のパイプ10と、3本の被覆電線21を束ねて構成されてパイプ10内に挿通されたワイヤーハーネス30と、パイプ10の内周とワイヤーハーネス30の外周との間に配された熱膨張性の第1封止材11と、隣り合う被覆電線21の間に形成される線間隙間31に臨むように配された熱膨張性の第2封止材13とを備えている。この構成によれば、被覆電線21の絶縁被覆23が燃えると、パイプ10の内周とワイヤーハーネス30の外周との間が、熱膨張した第1封止材11と第2封止材13とにより塞がれて空気の流動が遮断されるとともに、ワイヤーハーネス30の内部では、被覆電線21同士の間の線間隙間31が、熱膨張した第2封止材13により塞がれて(埋められて)空気の流動が遮断される。この第1封止材11と第2封止材13によりパイプ10内における空気の流動が確実に遮断されるので、延焼を確実に防止することができる。
【0031】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、3本の被覆電線の全てを第2封止材で包囲したが、3本の被覆電線のうち第2封止材で包囲する被覆電線は、1本又は2本だけであってもよい。
(2)上記実施例1では、第2封止材の厚さ寸法が全周に亘って均一としたが、第2封止材の厚さ寸法は、周方向においてばらつきがあってもよい。
(3)上記実施例1では、各被覆電線を包囲する第2封止材同士が接着するようにしたが、第2封止材同士が接着されずに、被覆電線同士が相対変位可能な形態であってもよい。
(4)上記実施例2では、3本の被覆電線の全てに第2封止材が接着するようにしたが、第2封止材が接着する被覆電線は、2本だけであってもよい。この場合、第2封止材が、第2封止材で包囲されていない被覆電線に対して接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
(5)上記実施例1,2では、ワイヤーハーネスを構成する被覆電線の本数を3本としたが、ワイヤーハーネスを構成する被覆電線は、2本でもよく、4本以上でもよい。
(6)上記実施例1,2では、被覆電線の断面形状が真円形である場合について説明したが、被覆電線の断面形状は、長円形や楕円形等、真円以外の形状であってもよい。
(7)上記実施例1,2では、パイプの内周の断面形状が真円形である場合について説明したが、パイプの内周の断面形状は、長円形や楕円形等、真円以外の形状であってもよい。
(8)上記実施例1,2では、第2封止材が熱膨張しない状態において、線間隙間の全体が第2封止材で埋められないようにしたが、第2封止材が熱膨張しない状態において、線間隙間の全体が第2封止材で埋められていてもよい。
(9)上記実施例1,2では、第1封止材をパイプの内周に接着したが、第1封止材は、ワイヤーハーネスの外周に接着しておいてもよく、パイプの内周とワイヤーハーネスの外周の両方に接着しておいてもよい。この場合、第1封止材と第2封止材が、一体化されていてもよい。