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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-154881(P2015-154881A)
(43)【公開日】2015年8月27日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20150731BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20150731BHJP
【FI】
   A41B13/02 G
   A41B13/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-31358(P2014-31358)
(22)【出願日】2014年2月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 浩二
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BB03
3B200BB05
3B200BB13
3B200BB17
3B200BB22
3B200DA14
3B200DA17
3B200DC01
3B200DC07
3B200DC09
(57)【要約】
【課題】薄型で着用感に優れ、かつ2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】着用者側に向く液透過性のトップシート202と、液不透過性のバックシート204と、トップシートとバックシートの間に配置される吸収層210と、を有する吸収性物品200であって、トップシートと吸収層との間には、熱エンボスのみによって該トップシートと少なくとも部分的に一体化された液拡散性シート206が介装され、吸収層は、フラッフパルプと高吸収性樹脂とを含み、かつフラッフパルプと高吸収性樹脂との合計量に対する高吸収性樹脂の配合割合が35〜55質量%であり、トップシートからバックシートまでの厚さが4mm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者側に向く液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収層と、を有する吸収性物品であって、
前記トップシートと前記吸収層との間には、熱エンボスのみによって該トップシートと少なくとも部分的に一体化された液拡散性シートが介装され、
前記吸収層は、フラッフパルプと高吸収性樹脂とを含み、かつ前記フラッフパルプと前記高吸収性樹脂との合計量に対する前記高吸収性樹脂の配合割合が35〜55質量%であり、
前記トップシートから前記バックシートまでの厚さが4mm以下であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
1回当り5mlの生理食塩水を前記吸収性物品の前記トップシート上の測定冶具の内面(直径19mmの円周)のほぼ中心に5ml滴下し、滴下点を中心とする前記内面のすべてに生理食塩水が広がって前記トップシートの表面上から無くなるまでの時間(秒)を吸収速度Vとしたとき、
(V3/V1)=2〜3、かつ(V2/V1)≦2、(V3/V2)≦2である請求項1記載の吸収性物品。
但し、V1:1回目の吸収速度、V2:2回目の吸収速度、V3:3回目の吸収速度であり;滴下点は毎回同じ位置とする。
【請求項3】
V1が3秒以下であり、V3が12秒以下である請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
(総吸収量(g)/吸収層の質量(g))が30以上である請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記液透過性液拡散性シートは、厚さ0.1mm以上のエアースルー不織布である請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記液拡散性シートと前記吸収層との間には、木材パルプシート、又は、木材パルプ繊維内にゼオライト又は金属イオンを含むゼオライトを担持させてシート化するか、若しくは消臭剤を木材パルプシート表面に塗工してなる上部キャリアシートが介装されている請求項1〜5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記バックシートと前記吸収層との間には、スパンボンド不織布からなる下部キャリアシートが介装されている請求項1〜6のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿とりパッド、使い捨ておむつ、軽失禁パッド及びライナーなどの吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着用時の違和感がなく、コンパクトで持ち運びに便利な吸収性物品として、軽失禁ライナーなどの薄型タイプの吸収性物品が種々開発されている。
この種の吸収物品として、第1シートと第2シートとの間に吸水性ポリマー粒子を介装し、第1シートに横方向に複数の凹凸条を形成させて、第1シートと第2シートとの間に体液保持部を画定した技術が開発されている(特許文献1参照)。又、第1シートと第2シートとの間に吸水性ポリマー粒子を含む吸液性コアを設け、吸液性コアの中央部の両側部とで吸水性ポリマー粒子の単位面積当たりの質量を変えた技術が開発されている(特許文献2参照)。これらの技術によれば、吸収層を薄くするためにパルプ繊維を含まず、吸水性ポリマー粒子のみを含む場合であっても、吸収速度の低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-78369号公報
【特許文献1】特開2003-146459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸収層を薄くすると、吸収体の密度が高くなり、繰り返し吸収した場合、1回目の吸収速度(液体の浸透速度)は良好であるが、2回目以降、徐々に吸収速度が低下するという問題がある。
従って本発明は、薄型で着用感に優れ、かつ2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度に優れた吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが検討したところ、着用者側に向くトップシートと吸収層との間に、液拡散性シートを介装することで、面方向への体液の拡散が促進され、吸収層が薄くても繰り返し吸収時の吸収速度の低下を抑制できることが判明した。さらに、トップシートと液拡散性シートとを、ホットメルト接着剤を使用せず、熱エンボスのみによって結合することにより、吸収時の体液の水分によってトップシートと液拡散性シートとが剥離し難くなり、トップシートと液拡散性シートとが密着状態を維持し、その密着部から体液が液拡散性シート側に移行するので、面方向への体液の拡散がさらに促進されることが判明した。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の吸収性物品は、着用者側に向く液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収層と、を有する吸収性物品であって、前記トップシートと前記吸収層との間には、熱エンボスのみによって該トップシートと少なくとも部分的に一体化された液拡散性シートが介装され、前記吸収層は、フラッフパルプと高吸収性樹脂とを含み、かつ前記フラッフパルプと前記高吸収性樹脂との合計量に対する前記高吸収性樹脂の配合割合が35〜55質量%であり、前記トップシートから前記バックシートまでの厚さが4mm以下である。
【0007】
1回当り5mlの生理食塩水を前記吸収性物品の前記トップシート上の測定冶具の内面(直径19mmの円周)のほぼ中心に5ml滴下し、滴下点を中心とする前記内面のすべてに生理食塩水が広がって前記トップシートの表面上から無くなるまでの時間(秒)を吸収速度Vとしたとき、(V3/V1)=2〜3、かつ(V2/V1)≦2、(V3/V2)≦2であることが好ましい。但し、V1:1回目の吸収速度、V2:2回目の吸収速度、V3:3回目の吸収速度であり;滴下点は毎回同じ位置とする。
V1が3秒以下であり、V3が12秒以下であることが好ましい。
(総吸収量(g)/吸収層の質量(g))が30以上であることが好ましい。
前記液透過性液拡散性シートは、厚さ0.1mm以上のエアースルー不織布であることが好ましい。
前記液拡散性シートと前記吸収層との間には、木材パルプシート、又は、木材パルプ繊維内にゼオライト又は金属イオンを含むゼオライトを担持させてシート化するか、若しくは消臭剤を木材パルプシート表面に塗工してなる上部キャリアシートが介装されていることが好ましい。
前記バックシートと前記吸収層との間には、スパンボンド不織布からなる下部キャリアシートが介装されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、薄型で着用感に優れ、かつ2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度に優れた吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る吸収性物品の外観を示す斜視図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る吸収性物品200の外観を示す斜視図、図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図1図2に示すように、本発明の実施形態に係る吸収性物品200は細長い片状をなし、着用者の身体接触側 (図1の上面)に向く液透過性のトップシート202と、液不透過性のバックシート204と、トップシート202とバックシート204の間に配置された吸収層210とを含んで構成されている。
吸収性物品200は、長手方向を使用者の股部の前後に渡され、トップシート202が使用者の肌(股部)に触れるようにして装着され、吸収性物品200の両側部が立体ギャザー212として立ち上がって尿等の横漏れを防止する。又、吸収性物品200は、トップシート202の中央部付近がやや幅狭になっていて、股部に装着し易いようになっている。
【0011】
図2に示すように、トップシート202と吸収層210との間には、トップシート202側から順に液拡散性シート206及び上部キャリアシート208が介装されている。そして、液拡散性シート206は熱エンボスのみによって、トップシート202と少なくとも部分的に一体化されている。又、バックシート204と吸収層210との間には、下部キャリアシート209が介装されている。
さらに、バックシート204の裏面側(トップシート202と反対側)には、粘着層220が貼着され、粘着層220の表面には剥離紙222が貼着されている。そして、吸収性物品200の使用時には、剥離紙222を剥離して粘着層220の表面を肌着の所定位置に貼着することで、吸収性物品200のズレや脱落を防止可能になっている。
【0012】
ここで、「液拡散性シート206が熱エンボスのみによってトップシート202に一体化されている」とは、トップシート202の面方向に所定のエンボス模様が視認でき、少なくともエンボス部分で液拡散性シート206とトップシート202とが密着していることをいう。トップシート202と液拡散性シート206がホットメルト接着剤で結合されているか否かを確認する方法は、以下の通りである。トップシート202と液拡散性シート206との結合体を吸収性物品200から切り出したものを、シャーレに満たした有機溶媒(アセトン)中に完全に一昼夜浸漬する。トップシート202と液拡散性シート206をシャーレから取り出し、シャーレ内の残った液を加熱して有機溶媒を蒸発させ、シャーレ底面の残渣の有無を目視で確認する。ホットメルト接着剤が使用されている場合にはシャーレ底面に残渣が視認され、ホットメルト接着剤が使用されていなければシャーレ底面は透明なままとなる。
なお、上記熱エンボスは、液拡散性シート206とトップシート202とを一体化させる効果の他、美粧性を向上させる。このため、熱エンボスはドット状や花柄などのデザイン模様が好ましい。
【0013】
吸収層210は、フラッフパルプと高吸収性樹脂(高吸水性ポリマー;SAP)とを含み、かつフラッフパルプと高吸収性樹脂との合計量に対する高吸収性樹脂の配合割合が35〜55質量%である。
上記高吸収性樹脂の配合割合が35質量%未満であると、吸水量及び保水量が少なくなり、トップシート202表面が濡れて不快感を生じる。上記高吸収性樹脂の配合割合が55質量%を超えると、フラッフパルプが少なくなるので、初回の吸収速度が低下すると共に、2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度が大幅に低下する。
又、吸収層210がフラッフパルプを含まずにSAPのみからなる場合には、初回の吸収速度が低下し、吸収されなかった体液が漏れて不快感を生じる。
【0014】
高吸水性樹脂(SAP)は網目状の分子構造を有し、自重の数百倍の水を吸収してゲル状に膨潤し、その水を保持する機能を有するポリマーである。SAPには、合成ポリマー系と天然物由来系とがあり、合成ポリマー系としては、ポリアクリル酸系、ポリスルホン酸系、アクリルアミド系、ポリビニルアルコール系等が利用でき、天然物由来系としては、デンプン系、セルロース系等が利用できるが、特に限定されずにこれらを適宜用いることができる。
SAPとしては、破砕タイプと、パールタイプ(逆相懸濁重合法により得られるもの)のどちらでも選択できる。
フラッフパルプとしては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ等の木材パルプが主に使用できる。また、コットンリンターなどの非木材パルプや熱融着性の合成繊維などを適宜フラッフパルプと混合することもできる。
【0015】
吸収性物品200のトップシート202からバックシート204までの厚さが4mm以下であることにより、吸収性物品200を薄型にすることができる。
厚さは、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用い、35gf/cm2の荷重条件下で測定する。35gf/cm2の荷重条件下、基台上に吸収性物品200を載置し、円形の錘(50mmφ、質量687g)をトップシート202の中央部に載せ、ハイトゲージで基台の面から錘の上面までの高さを測定した後、錘の高さを差引いて求める。
なお、上記厚さの下限は吸収性物品としての吸収性が得られる範囲で特に限定されないが、実際の製品を考慮すると、厚さの下限は例えば2mmである。
【0016】
次に、液拡散性シート206の作用について説明する。トップシート202と吸収層210との間に、液拡散性シート206を介装することで、面方向への体液の拡散が促進され、吸収層210が薄くても繰り返し吸収時の吸収速度の低下を抑制できる。さらに、トップシート202と液拡散性シート206とを、ホットメルト接着剤を使用せず、熱エンボスのみによって結合することにより、吸収時の体液の水分によってトップシート202と液拡散性シート206とが剥離し難くなり、トップシート202と液拡散性シート206とが密着状態を維持し、その密着部から体液が液拡散性シート206側に移行するので、面方向への体液の拡散がさらに促進される。
このようにして、液拡散性シート206により吸収層210の全面に体液を拡散させるので、吸収層210の吸収能力を無駄なく利用することができ、その分吸収層210が薄くても吸収性能を損なわない。
【0017】
液拡散性シート206としては、好ましくは坪量15〜80g/m2(より好ましくは、25〜45g/m2)で、厚さ0.1mm以上(より好ましくは0.5mm以上)の親水性不織布を用いることができる。
親水性不織布としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維による、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布などが使用できる。特に液戻り量の少ないエアースルー不織布が好適である。
特に、液拡散性シート206を、厚さ0.1mm以上のエアースルー不織布とすると、2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度がより向上する。
【0018】
トップシート202は、液透過性の親水性不織布であればよく、使用者の肌に接するため、感触が柔らかで、皮膚に刺激を与えない繊維材料から形成されている。トップシート202の坪量は、例えば、15〜45g/m2(より好ましくは、20〜30g/m2)とすることができる。トップシート202は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維による、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布などが使用できる。特に液戻り量の少ないエアースルー不織布が好適である。
トップシート202の厚みは好ましくは0.1mm以上(より好ましくは0.5mm以上)である。
【0019】
バックシート204は、吸収層210内において保持している液体などが下着に漏れないような防水性を有する液不透過性の材料から形成されていればよく、非通気性又は通気性のポリエチレンフィルムなどの薄いプラスチックフィルムとすることができるが、着用中にカサカサした音がしにくく、柔らかさを付与するよう、バックシート204にマイクロエンボスを施したり、プラスチックフィルムの外側に不織布を貼合わせたクロスライクバックシートを用いることもできる。
又、通気性のフィルムを用いてムレを低減することが好ましい。
【0020】
次に、吸収性物品200のその他の構成部分について説明する。
上部キャリアシート208は、例えば、坪量10〜40g/m2(より好ましくは、15〜25g/m2)の木材パルプシート、または木材パルプ繊維内にゼオライトや金属イオン(Cuイオン、Agイオン等)を含むゼオライトを担持させてシート化したり、消臭剤を木材パルプシート表面に塗工することで消臭機能を付与した消臭シートとすることができる。上部キャリアシート208を設けると、初期の吸収速度が速くなると共に、吸収層210を押さえて吸収層210の飛び散りを防ぐ効果がある。又、上記消臭シートを使用すると、消臭効果を発揮する。
下部キャリアシート209は、例えば、坪量10〜40g/m2(より好ましくは、15〜25g/m2)の不織布(例えば、スパンボンド不織布)とすることで、吸収層210を押さえて吸収層210の飛び散りを防ぐ効果がある。
又、立体ギャザー212は、例えば、坪量10〜40g/m2(より好ましくは、15〜25g/m2)のスパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンドの複合不織布とすることができる。
【0021】
以上の構成を有する吸収性物品200は、1回当り5mlの生理食塩水を吸収性物品200のトップシート202上の測定冶具の内面(直径19mmの円周)のほぼ中心に5ml滴下し、滴下点を中心とする上記測定冶具の内面のすべてに生理食塩水が広がってトップシート202の表面上から無くなるまでの時間(秒)を吸収速度Vとしたとき、(V3/V1)=2〜3、かつ(V2/V1)≦2、(V3/V2)≦2を満たす。但し、V1:1回目の吸収速度、V2:2回目の吸収速度、V3:3回目の吸収速度であり;滴下点は毎回同じ位置とする。
なお、吸収速度の測定は、トップシート202上に、穴を除いた底面積16.8cm2(外径50mm、内径19mm)で質量755.6gの円柱状の測定冶具を載置し、測定冶具の開口部の中心に生理食塩水を滴下した時点を開始時間とする。このとき、測定冶具の開口部の中心を、トップシート202の長手方向及び幅方向の中央にほぼ合わせて載置する。又、測定冶具の内面(直径19mmの円周)のすべてに生理食塩水が広がり表面上から無くなった時を終了時間とする。又、2回目以降の吸収速度の測定は、前回の測定が終了してから3分経過後に行う。
又、V1〜V3は、それぞれN=3サンプルについて行ったものの平均値とする。
【0022】
V1が3秒以下であり、V3が12秒以下であると、初回の吸収速度、及び3回目以降の繰り返し吸収での吸収速度が向上するので好ましい。
(総吸収量(g)/吸収層の質量(g))が30以上であると、吸収層を薄くしても吸収量を確保することができるので好ましい。なお、総吸収量は、吸収性物品を生理食塩水に5分間完全に浸漬させた後、トップシートを下にして金網の上に置いて30秒水切りして吸収後の吸収性物品の質量を測定し、吸収前後の吸収性物品の質量差を総吸収量とする。
【0023】
次に、吸収性物品200の製造方法の一例を説明する。まず、トップシート202と液拡散性シート206とを熱エンボスして一体化したシート(以下、「一体化シート」という)とする。
そして、一体化シートに立体ギャザー206を配置して積層体とする。次にこの積層体と、バックシート204との間に、上部キャリアシート208と下部キャリアシート209との間に吸収層210を挟持したものを配置する。そして、積層体と、バックシート204との間を、全周にわたってホットメルト接着剤を用いて固定することで、吸収性物品200を製造することができる。接着剤としては、融点が100〜180℃程度の、スチレンーブタジエン−スチレン系共重合体、スチレンーイソプレン−スチレン系共重合体などの合成ゴム系;又はエチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤を使用できる。ホットメルト接着剤の塗布方法には、ノズルから溶融状態の接着剤を糸状に非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法などがあり、公知のあらゆる方法が利用できる。
【0024】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0025】
<吸収性物品の製造>
図1図2に示す吸収性物品200を製造した。トップシート202は、25g/m2のエアースルー不織布とし、バックシート204は32g/m2 の通気性ポリエチレンシートとし、液拡散性シート206は30g/m2 のエアースルー不織布とした。上部キャリアシート208は16g/m2の木材パルプシートとし、下部キャリアシート209は20g/m2のスパンボンド不織布とした。
吸収性物品200の長手方向の長さ230mm、両端の幅を95mmとし、中央部の幅を85mmとした。吸収層210の長手方向の長さ185mm、両端の幅を70mmとし、中央部の幅を55mmとした。
トップシート202と液拡散性シート206とを、ホットメルトを使用せずに熱エンボスして一体化した。
熱エンボスは、直径1mmのドット模様と所定の花柄模様として所定の圧力で行い、これらの模様部分で一体化した。
なお、比較例4、5は、吸収層として、フラッフを混合せずにSAPを不織布にホットメルトで接着して固定したSAPシートを使用した。
得られた吸収性物品200、及びその各構成部分につき、以下の評価を行った。
【0026】
坪量:JIS P8124に基づいて測定した。
トップシートからバックシートまでの厚さ:上述の通りとした。
なお、坪量、厚さの測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0027】
吸収性物品の吸収速度V1〜V3:上述の通りとした。
総吸収量:上述の通りとした。
逆流量:吸収性物品200の長手方向、かつ幅方向の中央部のトップシート上に生理食塩水を40ml注入し、1分経過後に、あらかじめ重量を測定した濾紙(ADVANTEC社製No.2濾紙、直径55mm)を注入部の中心におき、濾紙の上に687gの錘を載せた(圧力;35g/cm)。錘を乗せてから1分経過後、濾紙の重量を測り、試験前後の濾紙の重量差を逆流量とした。逆流量は1g以下であれば良好である。逆流量は、N=3サンプルについて行ったものの平均値とした。
【0028】
官能評価:20名のパネラーにより、各実施例及び比較例の吸収性物品の不快感(肌触り、及び使用時のモレ)を評価した。「(a)不快感がない」、「(b)どちらでもない」、「(c)不快感あり」のいずれかの評価を選択させ、以下の基準で評価した。
◎:(a)の評価が16〜20人
○:(a)の評価が11〜15人
△:(a)の評価が6〜10人
×:(a)の評価が0〜5人
総合評価:吸収性物品の上記各特性及び官能評価の結果を基に、総合評価を行った。
◎:吸収性物品として非常に優れている
○:優れている
△:普通
×:劣っている
得られた結果を表1に示す。各評価が◎、○であれば良好である。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から明らかなように、トップシートと液拡散性シートとを熱エンボスのみによって一体化し、かつ吸収層として、フラッフパルプと高吸収性樹脂とを含み、高吸収性樹脂の配合割合が35〜55質量%であるものを用いた各実施例の場合、厚さが薄くても2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度に優れ、官能評価も良好であり、吸収性能に優れたものとなった。
又、各実施例の場合、吸収層の質量当りの総吸収量が30以上となり、逆流量も少なかった。
【0031】
一方、トップシートと液拡散性シートとを熱エンボスのみによって一体化した比較例1,4の場合、2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度が低下し、官能評価で不快感があった。なお、比較例4の場合、吸収層がフラッフを含まず、吸収層の高吸収性樹脂の配合割合が55質量%を超えたため、1回目の吸収速度V1も低下した。
吸収層の高吸収性樹脂の配合割合が55質量%を超えた比較例2の場合、1回目の吸収速度V1が低く、2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度も低下し、官能評価で不快感があった。
吸収層の高吸収性樹脂の配合割合が35質量%未満の比較例3の場合、2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度が低下し、官能評価で不快感があった。なお、比較例3の場合、吸収層の質量当りの総吸収量が30未満に低下し、吸水量および保水量が少なかった。
吸収層がフラッフを含まず、吸収層の高吸収性樹脂の配合割合が55質量%を超えた比較例5の場合も、1回目の吸収速度V1が低く、2回目以降の繰り返し吸収での吸収速度も低下し、官能評価で不快感があった。
【符号の説明】
【0032】
200 吸収性物品
202 トップシート
204 バックシート
206 液拡散性シート
210 吸収層
図1
図2