【課題】 水性平版印刷インキを用いて水なし印刷を行う場合において、印刷時にインキの物性が変動して印刷品質が劣化することを防ぐ印刷方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 顔料、水分散性樹脂(A)、水溶性有機溶媒(B)及び水(C)を含有する水なし平版印刷インキの印刷方法であって、印刷時に、少なくともインキ壺、インキングロール、版及びブランケットを部品としてなる印刷ユニットを、水を加熱せずに噴霧する装置で加湿しながら印刷することを特徴とする水なし平版印刷インキの印刷方法である。前記の加湿をする方法としては、印刷ユニット全体を加湿する方法又はその一部を加湿する。
顔料、水分散性樹脂(A)、水溶性有機溶媒(B)、及び水(C)を含有する水なし平版印刷インキを、少なくともインキ壺、インキングロール、版及びブランケットを部品としてなる印刷ユニットを有する印刷機を用いて印刷する印刷方法であって、印刷時に前記印刷ユニットを加湿しながら印刷することを特徴とする水なし平版印刷インキの印刷方法。
顔料、水分散性樹脂(A)、水溶性有機溶媒(B)、及び水(C)を含有する水なし平版印刷インキを用いて、請求項1〜5のいずれかに記載の印刷方法によって印刷された印刷物。
【背景技術】
【0002】
平版印刷は、高速、大量且つ安価に印刷物を供給するシステムとして広範に用いられている。平版印刷では版面に湿し水が供給される。この湿し水は親水性である非画線部に吸着して保水層を形成して油性のインキを反発し、インキは非画線部以外の部分(画線部)に付着して画像を形成し、これを紙等の被印刷基材に転写する印刷方法である。
【0003】
近年、湿し水に関わる作業の煩雑さを減らし、湿し水に含まれる成分の大気放出や使用後の廃水等に起因する環境上の問題を解決する方法として、水なし平版印刷が実用化されている。この印刷では印刷版面に湿し水を供給する必要の無い専用の印刷版を用いる。版面にはシリコーンゴム層の部分があって、この部分は非画線部としてインキを反発する。シリコーンゴム層が無い部分は画線部としてインキを受容して画像を形成し、この画像を紙等に転写して印刷を行うことができる。
【0004】
水なし平版印刷に用いられる印刷インキには油性、水性いずれのものもあるが、例えば水性平版印刷インキとしては、下記先行技術文献として挙げた特許文献1〜4に記載のインキ等が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの水性の水なし平版印刷インキを用いて印刷する場合、印刷機上で水がインキ系から離脱しやすく、物性が安定しにくい問題があった。
印刷機の回転速度や印刷用紙などの諸条件に応じて、粘度、粘弾性、タック、流動性等のインキの物性を適正な範囲に維持する必要があるが、印刷中にインキから水が離脱するとインキの組成比率が変動し、前記のインキの物性が変動し、安定して印刷することが困難になる。
尚、タックとは、例えば2000年朝倉書店発行の色材工学ハンドブックp.1098の(2)インコメーターの記載に有る通り、インキがローラー間で練られつつ転移していく際にインキ膜が分裂して示す抵抗・粘着性を言い、通常はインコメーターで測定して得られる値である。
【0006】
インキの物性が変動する結果、シリコーンゴム層との反発性が適正ではなくなる。例えば印刷インキの粘度、粘弾性が適正範囲より低下した場合は、非画線部分にもインキが付着して汚れ(地汚れ)が発生しやすくなる。また粘度、粘弾性が適正範囲より上昇した場合は、画線部にインキが均質に付着せずに画像が欠けたり(着肉不良)、印刷用紙の表面が紙剥け(エッジピック)したりするなどの問題が発生する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水なし平版印刷インキを用いた印刷方法としては、印刷機周辺を加湿しながら印刷する方法が挙げられる。
前記印刷機周辺を加湿する方法としては、印刷ユニット全体を加湿する方法があるが、印刷ユニット全体ではなく、その一部を加湿してもよい。
印刷ユニット全体又はその一部を加湿する場合は、印刷ユニットをビニールシートやプラスチックケース等で覆い、加湿することができる。
【0013】
前記印刷ユニットとは、印刷機全体の中で、インキ壺等のインキ供給部分、インキングロール、印刷版、ブランケット等から成る印刷機の主要部分を指す。
また印刷ユニットを加湿するために、加湿器、水供給部及び湿度センサー等からなる加湿装置が設けられる。湿度センサーは加湿しようとする印刷ユニット近傍の湿度を計測するために設けられ、その値に応じて加湿量を調節する。
【0014】
本発明の印刷方法では、加湿装置として、水を加熱せずに加湿する加湿器が好ましい。加熱型の加湿器も使用できるが、水分が印刷機周りで結露して印刷環境の安定化が難しい場合がある。結露して水滴となった水がインキ中に混入するとインキ粘度が低下する場合がある。インキ粘度が下がると、版の非画線部からインキが剥がれにくくなり、地汚れとなって印刷品質が劣化する場合がある。
【0015】
本発明で用いる加湿装置としては、例えば気化式加湿器や超音波加湿器、霧吹き等が挙げられ、なかでも超音波加湿器を用いることが好ましい。
【0016】
本発明において、加湿条件としては、加湿しようとする印刷ユニットの湿度が、70%RH(相対湿度)〜100%RHに維持されていることが好ましく、特に80〜100%RHであることが好ましい。そのため前述のように印刷ユニットをビニールシート等で覆い、湿度を一定に保つ手段を講じることが好ましい。
【0017】
次いで、本発明の印刷方法において好ましく用いられる水なし平版印刷インキについて説明する。
本発明の水なし平版印刷インキは、顔料、水分散性樹脂(A)、水溶性有機溶媒(B)、及び水(C)を含有する。
【0018】
前記水分散性樹脂(A)としては、水分散性、或いは水溶性の合成樹脂であれば特に限定されないが、例えばそれぞれ水分散性或いは水溶性の、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、α−オレフィンマレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂(アルキド樹脂も含む)及びポリウレタン樹脂から成る群から任意に選ばれる一つ以上を用いることができる。これらは単独でも、複数を併用することもできる。
【0019】
前記アクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルから選ばれる1種以上の単量体を付加重合して得られる樹脂が好ましく用いられる。水酸基、エポキシ基、アミノ基等の官能基を分子中に含有する共単量体を用いることもできる。さらに酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル単量体を一部共重合することも可能である。
【0020】
なお、これらの樹脂を水溶化または水分散化するには、アクリル酸、メタクリル酸等の酸基含有単量体を共重合した後に、塩基性化合物で中和することが必要である。酸価は30〜350がインキ保存安定性の点で好ましい。また、分子内に、ポリオキシアルキレン骨格を含有する単量体類を共重合させて、ポリオキシアルキレン構造を導入することにより水溶化または水分散化することも可能である。これらの樹脂は、特に、良好なインキ保存安定性、高速印刷適性が得られることから、重量平均分子量は3000〜100000であることが好ましい。
【0021】
前記塩基性化合物としては、モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジエチルプロパノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノールアミン、4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
なお、以下に挙げる樹脂についても、同様の手法で水溶化または水分散化可能である。
【0022】
前記スチレンアクリル樹脂としては、前記アクリル樹脂において、スチレンを単量体成分として含有する樹脂である。これらの樹脂の酸価は30〜350がインキ保存安定性の点で好ましい。また、分子内にポリエチレンオキサイド基を含有する単量体の共重合により水溶化または水分散化することも可能である。良好なインキ保存安定性、高速印刷適性の点から、重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0023】
前記スチレンマレイン酸樹脂としては、スチレンと無水マレイン酸を必須成分とした単量体を共重合して得られる樹脂である。他の単量体を一部共重合することもできる。また、必要に応じて、さらに、水酸基含有化合物やアミノ基含有化合物で一部変性してもよい。酸無水物基または変性後の酸基の一部または全部を塩基性化合物で中和することにより水溶性または水分散性樹脂を得ることができる。酸価は30〜450がインキ保存安定性の点で好ましい。重量分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0024】
前記α−オレフィンマレイン酸樹脂としては、α−オレフィンと無水マレイン酸を単量体の必須成分として、共重合して得られる樹脂である。更に、他の単量体を一部共重合することもできる。また、水酸基含有化合物やアミノ基含有化合物で一部変性してもよい。酸無水物基または変性後の酸基の一部または全部を塩基性化合物で中和することにより水溶性または水分散性樹脂を得ることができる。酸価は30〜450がインキ保存安定性の点で好ましい。重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0025】
前記ポリエステル樹脂としては、ポリエステル鎖の一部に親水性基を導入した樹脂、或いはカルボキシル基を有するアルキド樹脂等が挙げられる。重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0026】
前記ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートと親水性基を有するアルコール成分とを反応したものが挙げられる。重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0027】
本発明の水性水なし平版印刷インキは、水酸基を2個以上有し、沸点140℃以上であって、且つ20℃において水と任意の割合で溶解する水溶性有機溶媒(B)を含有することが好ましい。
この水溶性有機溶媒(B)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、アセチレンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンが好ましい。
【0028】
また、前記水分散性樹脂(A)と前記水溶性有機溶媒(B)との質量比〔(a)/(b)〕が0.8〜2.2であることが好ましく、0.85〜2.0であることがより好ましい。
前記〔(a)/(b)〕が0.8未満の場合、乾燥後のインキ皮膜中に残留する水溶性有機溶媒の比率が大きいため、表面のべたつきが残り、乾燥皮膜が得られない。
前記〔(a)/(b)〕が2.2を超える場合、インキ中の樹脂含有量が多くなり、インキ粘度及びタックが高くなりすぎて版の画線部への着肉が悪く、良好な品質の印刷物が得られない。
【0029】
本発明で用いる水は、前記水溶性有機溶媒(B)と水(C)との比〔(b)/(c)〕が0.8〜2.5であることが好ましく、1.0〜2.5であることがより好ましい。
前記〔(b)/(c)〕が0.8未満の場合、インキ中の水分含有量が多く、また樹脂含有量が少なすぎるため、インキ粘度及びタックが低すぎて、版の非画線部からインキが剥がれにくくなり、良好な品質の印刷物が得られない。
前記〔(b)/(c)〕が2.5を超える場合、インキ中の水分含有量が少なすぎるため、印刷中にインキ中の水分含有量が蒸発等により減少した場合にインキ粘度及びタックが増大し、良好な品質の印刷物が得られない。
【0030】
また、前記水分散性樹脂(A)、水溶性高沸点溶剤(B)及び水(C)を(A):(B):(C)=1.0:1.0:1.0(質量比)で均一に混合した場合、その液状混合物の25℃、1Hzにおける動的粘弾性測定におけるη*(複素粘性率)が100〜5000Pa・S、であり、且つtanδが1〜5の範囲であることが好ましい。
【0031】
前記の複素粘性率が高すぎる場合、或いは、tanδが低すぎる場合は、それらを用いて構成されるインキの流動性が小さすぎるため、十分なインキ転移性が得られない場合がある。また、複素粘性率が低すぎる場合、或いは、tanδが高すぎる場合は、それらを用いて構成されるインキの粘弾性が小さすぎるため、水なし平版上で地汚れを発生し、良好な印刷物が得られない場合がある。
なお、前記複素粘性率及びtanδは、HAAKE社製、粘度・粘弾性測定装置RS600を用いて得られた値である。
【0032】
本発明の水なし平版印刷インキには、必要に応じて、界面活性剤を添加してもよい。この場合、使用可能な界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系及びノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0033】
本発明の水なし平版印刷インキに用いられる顔料としては、特に限定されず、種々の顔料を用いることができる。例えば、無機顔料および有機顔料を示すことができる。
無機顔料としては硫酸バリウム、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉等が例示される。
有機顔料としては、溶性アゾ顔料(アゾレーキ顔料)、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、及び酸性若しくは塩基性染料のレーキ顔料が例示される。
前記の有機顔料を例示すれば、溶性アゾ顔料(アゾレーキ顔料)としてはアセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系及びβ−オキシナフトエ酸アニリド系が例示される。前記の不溶性アゾ顔料としてはアセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系モノアゾ、ピラゾロン系ジスアゾ、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸アニリド系モノアゾ及びβ−オキシナフトエ酸アニリド系ジスアゾが例示される。前記の縮合アゾ顔料としてはアセト酢酸アニリド系及びβ−オキシナフトエ酸アニリド系が例示される。前記の銅フタロシアニン顔料としては銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン及びスルホン化銅フタロシアニンレーキが例示される。前記の縮合多環顔料としてはアントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系及び金属錯体系等の顔料が例示される。
【0034】
本発明の水なし平版印刷インキには、必要に応じて、植物油、植物油由来脂肪酸エステル及び植物油を原料とするエーテルから成る群から選ばれる一つ以上を単独で又は任意に併用して配合することができる。
前記植物油としては、大豆油、亜麻仁油、キリ油、ひまし油、脱水ひまし油、コーン油、サフラワー油、南洋油桐油、再生植物油、カノール油等の油類及びこれらの熱重合油、酸化重合油が挙げられる。
前記植物油由来脂肪酸エステルとしては、アマニ油脂肪酸メチルエステル、アマニ油脂肪酸エチルエステル、アマニ油脂肪酸プロピルエステル、アマニ油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸エチルエステル、大豆油脂肪酸プロピルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸エチルエステル、パーム油脂肪酸プロピルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、ひまし油脂肪酸メチルエステル、ひまし油脂肪酸エチルエステル、ひまし油脂肪酸プロピルエステル、ひまし油脂肪酸ブチルエステル、再生植物油のエステル、南洋油桐油のエステル等が挙げられる。
前記植物油を原料とするエーテルとしては、ジ−n−オクチルエーテル、ジ−ノニルエーテル、ジヘキシルエーテル、ノニルヘキシルエーテル、ノニルブチルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルオクチルエーテル等が挙げられる。
【0035】
本発明の水なし平版印刷インキは、先ず水分散性樹脂(A)を含有するワニスを調製し、次にそのワニス及び顔料その他の原料を混合し、ロールミル等の練肉分散機で混合分散して製造される。
インキ組成物中に含まれる顔料の含有量は1〜60質量%程度であることが好ましく、水分散性樹脂の含有量は10〜40質量%程度が好ましく、水溶性高沸点溶剤の含有量は10〜40%程度が好ましく、水の含有量は10〜40質量%程度であることが好ましい。
インキ粘度の調整には水溶性有機溶媒及び又は水を添加して行う。インキの粘度範囲としてはラレー粘度計(L型粘度計)において25℃、1000g加重の条件下で5〜60秒が好ましく、10〜40秒であることがより好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本明細書において部および%は特に断りのない限り質量基準である。
【0037】
<樹脂の製造>
還流冷却器、攪拌機、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール500部を仕込んで撹拌を開始し、80℃まで昇温した。ここに窒素気流下で、スチレン100部、メチルメタクリレート160部、ブチルアクリレート140部、アクリル酸100部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部を5時間かけて連続滴下した。80℃で2時間攪拌後、イソプロピルアルコールを減圧脱溶剤にて留去することにより固形アクリル樹脂(R−1)を得た。この固形アクリル樹脂(R−1)の酸価は156mgKOH/gであった。
【0038】
<ワニス1の製造>
下記表1に示す組成で、前記の樹脂R−1を含むワニス1を調製した。なお、表中のDMEAはジメチルエタノールアミンを表す。
【0039】
【表1】
【0040】
次いで、下記表2に示す組成で、インキ1を製造し、そのインキ1を用いて後述する方法で評価した。得られた結果を表3に示す。尚、藍顔料はDIC株式会社製のFASTOGEN BLUE FDB15を用いた。粘度はラレー粘度計(L型粘度計)において25℃、1000g加重の条件で測定した値である。
【0041】
【表2】
【0042】
<印刷試験>
前記のインキ1を用いて、ローランド製印刷機を使用し、印刷速度1万枚/時、用紙はOKトップコート+(王子製紙(株)製)、版は水なし版TAC(東レ(株)製)にて印刷評価を行った。印刷ユニットの雰囲気温度は30℃に調節した。
加湿方法、湿度及び評価結果を表3に示す。湿度の数値は相対湿度(%)である。
加湿する場合は印刷ユニットをビニールシートで覆い、内部を超音波加湿器又は加熱式加湿器で加湿した。内部の温度及び湿度はおんどとり((株)T&D製)にて測定した。
【0043】
紙剥けは、印刷物のベタ部を観察し、紙面の部分的欠損(コートピックおよびエッジピック)の有無を目視で評価した。
○:紙剥けは無く、優れている。
△:紙剥けは少なく、実用上問題無い。
×:紙剥けが有り、実用レベルに達していない。
地汚れは、絵柄の非画線部分にインキが付着して発生する印刷物の汚れの有無を目視にて評価した。
○:地汚れは無く、優れている。
△:地汚れは少なく、実用上問題無い。
×:地汚れが有り、実用レベルに達していない。
着肉性は、印刷物のベタ部の着肉(ガサツキの程度)を目視にて評価した。
○:ガサツキが無く優れている。
△:ガサツキは若干あるが、実用上問題無い。
×:ガサツキが多く、実用レベルに達していない。
【0044】
【表3】
【0045】
<機上安定性の評価>
表3の機上安定性の評価は、インコメーター(東洋精機(株)製)を用いて下記の方法で行った。
インキ1.31ccをインコメーターのロールに塗布し、ロール温度32℃、回転スピード400rpmに設定して測定を開始する。測定初期のタック値と、その1分後のタック値を読み取り、タック値の経時的な変動(タック値の変化量)を測定する。変動の少ない方が安定性良好と評価した。
○:タック値の変動が非常に少なく、機上安定性に優れる。
△:タック値の変動が少なく、機上安定性が実用レベルに達している。
×:機上安定性が実用レベルに達していない。
加湿方法、湿度及び評価結果を表3に示す。湿度の数値は相対湿度(%)である。
加湿する場合はインコメーターをビニールシートで覆い、内部を超音波加湿器又は加熱式加湿器で加湿した。内部の湿度はおんどとり((株)T&D製)にて測定した。
インコメーターは前記の通り、印刷インキのタックの測定器である。本器を用いることにより回転するロール上のインキの挙動を実際の印刷機に近い条件で観察することができるため、実際の印刷機に代えてインコメーターを用いて前記の方法で評価を行った。
【0046】
<結露の有無について>
結露の有無は下記の方法で調べた。
印刷ユニットをビニールシートで覆い、その覆いの内部の湿度を計測して調節しながら、超音波加湿器または加熱式の加湿器で覆いの内部を加湿する。加湿1時間後の該覆いの内部の結露の有無を調べた。
【0047】
<印刷品質の評価>
前記に説明した評価項目(結露、機上安定性、紙剥け、地汚れ及び着肉性)に基づき、総合的に次の3段階で評価した。
○:印刷品質に優れる。
△:印刷品質が実用レベルに達している。
×:印刷品質が実用レベルに達していない。
【0048】
本発明の実施形態に属する実施例1〜6では機上安定性、印刷品質とも実用レベルに達する評価結果が得られた。
比較例1は加湿しないために機上安定性等が悪く、実用レベルに達しない結果となった。