【解決手段】鉄道車両1は、車体30の振動を抑制する制振用ダンパ40を備え、この制振用ダンパ40に温度差によって発電する熱電変換素子70が取付けられている。制振用ダンパ40は、制御コントローラ60を組み込んでいる。制御コントローラ60は、熱電変換素子70が発電した電力を充電可能な充電回路61と、充電回路61から供給される電力で作動し且つ車体30の振動を加速度として検出する加速度センサ63と、充電回路61から供給される電力で作動し且つ加速度センサ63で検出された加速度に基づいて車両の状態(アンロード制御を行う状態)を判断する状態判断回路64とを組み込んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された制御コントローラ260は、車体に搭載されている車両電源に電源ケーブル260aを介して接続されていて、車両電源から供給される電力によって作動している。即ち、加速度センサ263は電源ケーブル260aから供給される電力で加速度を検出することができ、指令演算部262も電源ケーブル260aから供給される電力で指令値を演算することができ、指令増幅部261も電源ケーブル260aから供給される電力で電磁弁に通電することができる。
【0008】
このように、制御コントローラ260を作動させるには外部からの電源が必要であり、車両電源に長く且つ多くの電源ケーブル260aを接続しなければならない。特に、鉄道車両はその他の車両に比べて大きいため、電源ケーブル260aが長く且つ多いと、艤装及び保守点検する際の手間が非常に大きくなり、コストを上昇させる原因になる。
【0009】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、車両の状態を判断する制御コントローラを外部から電源を供給することなく作動させることができる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鉄道車両は、鉄道車両に作用している物理値を検出可能な物理値センサと、車両の状態を判断する制御コントローラとを備えるものであって、走行に伴って高温になる高温熱源部に、温度差によって発電する熱電変換素子が取付けられていて、前記制御コントローラは、前記熱電変換素子が発電した電力を充電可能な充電回路と、前記充電回路から供給される電力で作動する前記物理値センサと、前記充電回路から供給される電力で作動し且つ前記物理値センサで検出された物理値に基づいて車両の状態を判断する状態判断回路とを組み込んでいることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る鉄道車両によれば、熱電変換素子が発電し、発電した電力が制御コントローラに組み込まれた充電回路によって充電される。そして、物理値センサ及び状態判断回路は、充電回路から供給される電力で作動する。これにより、状態判断回路は、物理値センサによって検出された物理値に基づいて車両の状態を判断することができる。こうして、物理値センサ及び状態判断回路を作動させるために、外部から電源を供給する必要がない。従って、従来に比べて電源ケーブル等の配線を減らすことができ、艤装及び保守点検する際の手間を減らすことができる。
【0012】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記高温熱源部は、車体の振動を抑制する油圧用の制振用ダンパであり、前記制振用ダンパは、前記制御コントローラを組み込んでいて、前記物理値センサは、車体の振動を加速度として検出する加速度センサであっても良い。
この場合には、制振用ダンパが減衰力を発揮する際に作動油が高温になることを利用して熱電変換素子で発電させることができる。そして、制御コントローラの状態判断回路は、加速度センサが検出した加速度に基づいて車体の振動状態を判断できる。このため、外部から電源を供給することなく車体の振動状態を判断する制振用ダンパを構成することができる。
【0013】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記制振用ダンパは、ピストンロッドに一体的に設けられたピストンと、前記ピストンに形成された流路で作動油を前記ピストンロッド側にのみ流す第1チェック弁と、前記ピストンによってヘッド側室とロッド側室とに区画されたシリンダと、前記ヘッド側室に接続されるオイルタンクと、前記ヘッド側室と前記オイルタンクとの間の流路で作動油を前記ヘッド側室にのみ流す第2チェック弁と、前記制振用ダンパの伸縮に伴って流れる作動油の制御荷重を大きくするオンロード制御と前記作動油の制御荷重を略零にするアンロード制御との切換えが可能な油圧回路とを有し、前記油圧回路では、前記ロッド側室と前記ヘッド側室との間で作動油が流れる第1流路と、前記第1流路の第1分岐点から前記オイルタンクへ分岐する第2流路と、前記第1流路のうち前記第1分岐点より下流側の第2分岐点から前記オイルタンクへ分岐する第3流路と、前記第2流路に作動油が流れる際に減衰力を発生させるパッシブ回路と、前記第1流路のうち前記第1分岐点と前記第2分岐点との間で作動油の流れを許容又は規制する第1電磁弁と、前記第3流路で作動油の流れを許容又は規制する第2電磁弁とが設けられていても良い。
この場合には、制振用ダンパが所謂セミアクティブダンパになっていて、外部から電源を供給することなく車体の振動状態(オンロード制御を行う状態又はアンロード制御を行う状態)を判断する新たなセミアクティブダンパを提供することができる。
【0014】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記第1電磁弁と前記第2電磁弁は、通電によって開閉を切換える第1オンオフ弁と第2オンオフ弁であり、前記制御コントローラは、前記状態判断回路が前記アンロード制御を行う状態であると判断したときに、前記充電回路から供給される電力で作動し且つ前記第1オンオフ弁と前記第2オンオフ弁とに通電可能な出力回路を組み込んでいても良い。
この場合には、状態判断回路がアンロード制御を行う状態であると判断すると、出力回路が第1オンオフ弁又は第2オンオフ弁に通電して、アンロード制御が行われる。こうして、外部から電源を供給することなくアンロード制御に切換えるセミアクティブダンパを提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記制御コントローラは、前記充電回路が充電した充電量を検出する検出用センサを組み込んでいて、前記状態判断回路は、前記充電量が予め設定する基準量より大きいか否かを判断し、前記出力回路は、前記充電量が前記基準量より大きく且つ伸び側の前記アンロード制御を行う状態であると判断されたときに、前記第1オンオフ弁が開くように通電し、前記充電量が前記基準量より大きく且つ縮み側の前記アンロード制御を行う状態であると判断されたときに、前記第2オンオフ弁が開くように通電しても良い。
この場合には、制振用ダンパが基本的にパッシブダンパとして機能していて、充電量が基準量より大きくなったときに、アンロード制御を適宜行うことができる。こうして、既存の鉄道車両が備えるパッシブダンパから本発明の制振用ダンパに取り換えれば、電源ケーブル等の配線を艤装する手間、及びコストをほとんどかけずに、アンロード制御を適宜行うセミアクティブダンパを備えた鉄道車両を提供することができる。
【0016】
前記熱電変換素子は、前記パッシブ回路を流れる作動油の熱で発電するように前記パッシブ回路の近くに取付けられていると良い。
この場合には、作動油がパッシブ回路のオリフィスを流れる際に大きく発熱するため、制振用ダンパのうちパッシブ回路が最も高温になる。このため、熱電変換素子をパッシブ回路の近くに取付けることで、最も効果的に発電させることができる。
【0017】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記高温熱源部は、内部で回転部材を回転可能に支持する回転収容装置であり、前記物理値センサは、前記回転収容装置の温度を検出する温度センサであり、前記状態判断回路は、前記検出された温度に基づいて異常な発熱状態を判断しても良い。
この場合には、高温熱源部が例えば軸箱、電動モータ、歯車装置等の回転収容装置である場合に、走行中に回転収容装置が高温になることを利用して熱電変換素子が発電し、発電した電力によって制御コントローラを作動させることができる。そして、走行中に回転収容装置に万一異常が生じると、回転収容装置が異常な発熱状態になる。このとき、状態判断回路が温度センサによって検出された温度に基づいて、回転収容装置に異常な発熱状態が生じていることを判断する。こうして、外部から電源を供給することなく、回転収容装置に生じる万一の異常(発熱状態)を検知することができる。
【0018】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記高温熱源部は、内部で回転部材を回転可能に支持する回転収容装置であり、前記物理値センサは、前記回転収容装置の振動を加速度として検出する加速度センサであり、前記状態判断回路は、前記検出された加速度に基づいて異常な振動状態を判断しても良い。
この場合には、上記した作用効果と類似していて、状態判断回路が加速度センサによって検出された加速度に基づいて、回転収容装置に異常な振動状態が生じていることを判断する。こうして、外部から電源を供給することなく、回転収容装置に生じる万一の異常(振動状態)を検知することができる。
【0019】
また、本発明に係る鉄道車両において、前記制御コントローラには、前記充電回路から供給される電力で作動し且つ前記物理値センサで検出された物理値を車体の制御装置に送信するデータ送信部が組み込まれていても良い。
この場合には、制御コントローラが物理値センサで検出された物理値を情報データとして収集し、この情報データをデータ送信部によって車体の制御装置に送信する。これにより、車体の制御装置が、受信した情報データを例えば車体傾斜制御に用いたり、部品の状態又は乗り心地を監視する状態監視システムに用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の鉄道車両によれば、車両の状態を判断する制御コントローラを外部から電源を供給することなく作動させることができる。即ち、この制御コントローラを鉄道車両に適用することで、艤装及び保守点検する手間が小さくなり、鉄道車両の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
本発明に係る鉄道車両の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の鉄道車両1を模式的に示した全体構成図である。
図1に示すように、鉄道車両1では、台車10の枕木方向(
図1の左右方向)の両端部に空気バネ20が載置されていて、車体30が各空気バネ20を介して台車10に支持されている。台車10では、台車枠11の枕木方向の両端部が各軸バネ12を介して各軸箱13に支持されていて、各軸箱13が車軸15の両端を回転可能に支持している。車軸15の両端部には、車輪16が一体回転可能に組付けられている。
【0023】
また、この鉄道車両1には、車体30と台車10との間に制振用ダンパ40が設けられている。制振用ダンパ40は、車体30に生じる枕木方向の振動に対して減衰力を発生させて抑制(減衰)するものであり、所謂セミアクティブダンパとして構成されている。ここで、セミアクティブダンパとは、発生させる減衰力を能動的に切換えることができ、減衰力を切換える構成部材(電磁弁)のみに動力源(電源)を用いるダンパのことである。なお、パッシブダンパは減衰力を受動的にのみ発生させるダンパであり、アクティブダンパは例えばモータとポンプとを用いて能動的な力を発生させて減衰力を積極的に切換えるダンパである。ここで、
図2は、
図1に示した制振用ダンパ40の正面図である。
【0024】
制振用ダンパ40は、
図2に示すように、両端に取付部40A,40Bを有している。一方の取付部40Aは車体30に接続され、他方の取付部40Bは台車10に接続されている。そして、制振用ダンパ40は、内部に油圧回路50を有し、制御コントローラ60を一体的に組み込んでいる。このように、制振用ダンパ40が制御コントローラ60を一体的に組み込むことによって、制振用ダンパ40の制御部品と制御コントローラ60との間の制御線を簡素化している。ここで、
図3は、
図2に示した制振用ダンパ40の構成を模式的に示した図である。
【0025】
制振用ダンパ40は、
図3に示すように、ピストンロッド41と、ピストン42と、第1チェック弁43と、シリンダ44と、オイルタンク45と、第2チェック弁46とを有している。ピストンロッド41の一端部にはピストン42が一体的に設けられていて、ピストンロッド41の他端部はシリンダ44の外部に突出している。ピストン42は、シリンダ44の内周面に対して気密的に摺動可能になっていて、シリンダ44の内部をヘッド側室44aとロッド側室44bとに区画している。ヘッド側室44aの断面積はピストンロッド41の断面積の2倍になっていて、ピストンロッド41(制振用ダンパ40)の伸張時と収縮時のストロークに対して、シリンダ44から排出される作動油の量が同一になっている。
【0026】
ピストン42には、ヘッド側室44aとロッド側室44bとを連通する流路r6が形成されている。この流路r6に第1チェック弁43が設けられている。第1チェック弁43は、作動油がピストンロッド41側(ロッド側室44b)にのみ流れるように作動油の流れを一方向に制限するものである。ヘッド側室44aは、流路r0を介してオイルタンク45に接続されていて、この流路r0に第2チェック弁46が設けられている。第2チェック弁46は、作動油がヘッド側室44aにのみ流れるように作動油の流れを一方向の制限するものである。オイルタンク45は、所定量の作動油を貯留している。
【0027】
次に、油圧回路50について説明する。この油圧回路50では、
図3に示すように、第1流路r1と、第2流路r2と、第3流路r3と、第4流路r4と、パッシブ回路51と、第1オンオフ弁52と、第2オンオフ弁53と、高圧リリーフ弁54とが設けられている。第1流路r1は、ロッド側室44bとヘッド側室44aとの間で作動油が流れる流路である。この第1流路r1には、作動油がロッド側室44bからヘッド側室44aに向かう流れを基準として、上流側に第1分岐点p1が設けられ、下流側に第2分岐点p2が設けられている。
【0028】
第2流路r2は、第1流路r1の第1分岐点p1からオイルタンク45へ分岐する流路である。この第2流路r2に、パッシブ回路51が設けられている。パッシブ回路51は、リリーフ弁51aとオリフィス51bとを組み込んでいて、作動油がオリフィス51bを通過する際にパッシブ荷重としての減衰力を発生させるようになっている。また、第1流路r1のうち第1分岐点とp1と第2分岐点p2との間に、第1電磁弁としての第1オンオフ弁52が設けられている。第1オンオフ弁52は、第1分岐点とp1と第2分岐
点p2との間で作動油の流れを許容又は規制するものである。この第1オンオフ弁52
は、ノーマルクローズタイプの電磁弁であり、通電されることによって作動油の流れを許容する。
【0029】
第3流路r3は、第1流路r1の第2分岐点p2からオイルタンク45へ分岐する流路である。この第3流路r3に、第2電磁弁としての第2オンオフ弁53が設けられている。第2オンオフ弁53は、第3流路r3で作動油の流れを許容又は規制するものである。この第2オンオフ弁53は、ノーマルクローズタイプの電磁弁であり、通電されることによって作動油の流れを許容する。ここで、以下の説明においては、第1流路r1のうち第2分岐点p2とヘッド側室44aとの間の流路を「流路r1a」と呼ぶことにする。
【0030】
第4流路r4は、第1流路r1のうち第1分岐点p1より上流側に設けられた分岐点p0と、オイルタンク45との間の流路である。この第4流路r4に、油圧回路50を保護する高圧リリーフ弁54が設けられている。また、第1流路r1のうち最も上流側の分岐点p3とオイルタンク45との間に、第5流路r5が形成されている。第5流路r5には、オイルタンク45の内部のエア抜き用にオリフィス55が設けられている。このオリフィス55の流路抵抗は、パッシブ回路51のオリフィス51bの流路抵抗より大きく設定されている。
【0031】
こうして、制振用ダンパ40(油圧回路50)は、第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53の開閉を切換えることで、オンロード制御とアンロード制御とを切換え可能になっている。ここで、オンロード制御とは、制振用ダンパ40の伸縮に伴って流れる作動油の制御荷重(減衰力)を大きくする制御であり、アンロード制御とは、制振用ダンパ40の伸縮に伴って流れる作動油の制御荷重を略零にする制御である。
【0032】
例えば、鉄道車両1の走行中に風圧が車体30に作用すると、車体30が
図1の右側又は左側に揺れる。このとき、車体30と台車10とが逆方向に揺れて、制振用ダンパ40が伸縮する。この場合、制振用ダンパ40はオンロード制御を行い、車体30の揺れを抑えるように減衰力を発生させる。なお、後述するように本実施形態の制振用ダンパ40は、基本的にはパッシブダンパとして機能するものであり、オンロード制御を行うとはパッシブ荷重としての減衰力を発生させるという意味である。
【0033】
これに対して、例えば、鉄道車両1がレールの狂いが生じている箇所を走行したり、レールの分岐点で軌道の切換えが行われると、台車10が車体30の揺れる速度よりも速い速度で揺れることがある。このとき、台車10と車体30とが同じ方向(
図1の右側又は左側)に揺れて、制振用ダンパ40が伸縮する。この場合、制振用ダンパ40はアンロード制御を行い、減衰力をゼロに近い値にすることによって台車10の揺れが車体30に伝達することを抑える。
【0034】
次に、制振用ダンパ40がオンロード制御を行う際の作動油の流れについて説明する。例えば、走行中に車体30が
図1の右側に揺れると、ピストンロッド41はシリンダ44に対して相対的に
図3の左側に移動しようとする。このとき、制振用ダンパ40は伸張しようとするため、伸び側のオンロード制御を行い、伸びに対するパッシブ荷重としての減衰力を発生させる。つまり、伸び側のオンロード制御では、
図4に示すように、第1オンオフ弁52は通電されずに閉じたままであり、第2オンオフ弁53も通電されずに閉じたままである。
【0035】
このため、ロッド側室44bの作動油は、第1流路r1の第1分岐点p1から第2流路r2へ流れて、パッシブ回路51を経由する。このとき、作動油がパッシブ回路51のオ
リフィス51bを通過することで、伸びに対するパッシブ荷重としての減衰力が発生す
る。これにより、車体30の
図1の右側の揺れが、制振用ダンパ40によって受動的に抑
制される。パッシブ回路51を経由した作動油は、オイルタンク45に排出される。オイルタンク45に排出された作動油は、流路r0でチェック弁46を通って、負圧状態になっているヘッド側室44aに還流する。
【0036】
また、走行中に車体30が
図1の左側に揺れると、ピストンロッド41はシリンダ44に対して相対的に
図3の右側に移動しようとする。このとき、制振用ダンパ40は収縮しようとするため、縮み側のオンロード制御を行い、縮みに対するパッシブ荷重としての減衰力を発生させる。つまり、縮み側のオンロード制御では、
図5に示すように、第1オンオフ弁52は通電されずに閉じたままであり、第2オンオフ弁53も通電されずに閉じたままである。
【0037】
このため、ヘッド側室44aの作動油は、流路r1aに流れ込もうとしても、第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53が閉じているため、流路r1aへ向かって流れない。従って、ヘッド側室44aの作動油は、流路r6でチェック弁43を通って、ロッド側室44bに流れ込む。ロッド側室44bに流れ込んだ作動油は、上述した場合と同様にパッシブ回路51を経由して、縮みに対するパッシブ荷重の減衰力が発生する。これにより、車体30の
図1の左側の揺れが、制振用ダンパ40によって受動的に抑制される。
【0038】
続いて、制振用ダンパ40がアンロード制御を行う際の作動油の流れについて説明する。例えば、走行中に台車10と車体30とが
図1の左側へ揺れて、台車10が車体30の揺れる速度よりも速い速度で揺れると、ピストンロッド41はシリンダ44に対して
図3の左側に移動しようとする。このとき、制振用ダンパ40は伸張しようとするため、伸び側のアンロード制御を行い、伸びに対する制御荷重(減衰力)を略零にする。つまり、伸び側のアンロード制御では、
図6に示すように、第1オンオフ弁52に通電して第1オンオフ弁52を開かせるのに対して、第2オンオフ弁53に通電しなくて第2オンオフ弁53を閉じたままにする。
【0039】
このため、ロッド側室44bの作動油は、流路r1を流れて、第1オンオフ弁52を通ってヘッド側室44aに流れ込む。こうして、作動油はパッシブ回路51を経由しないため、パッシブ荷重としての減衰力が発生しない。このように、第1オンオフ弁52に通電することで伸び側のアンロード制御が行われて、台車10の
図1の左側の揺れが車体30に伝達することを抑えている。
【0040】
また、走行中に台車10と車体30とが
図1の右側に揺れて、台車10が車体30の揺れる速度よりも速い速度で揺れると、ピストンロッド41はシリンダ44に対して
図3の右側に移動しようとする。このとき、制振用ダンパ40は収縮しようとするため、縮み側のアンロード制御を行い、縮みに対する制御荷重を略零にする。つまり、縮み側のアンロード制御では、
図7に示すように、第2オンオフ弁53に通電して第2オンオフ弁53を開かせるのに対して、第1オンオフ弁52に通電しなくて第1オンオフ弁52を閉じたままにする。
【0041】
このため、ヘッド側室44aの作動油は、流路r1aを通って、分岐点p2から第3流路r3へ流れ込む。第3流路r3へ流れ込んだ作動油は、開いている第2オンオフ弁53を通って、オイルタンク45に排出される。こうして、作動油は、パッシブ回路51を経由しないため、パッシブ荷重としての減衰力が発生しない。このように、第2オンオフ弁53に通電することで縮み側のアンロード制御が行われて、台車10の
図1の右側の揺れが車体30に伝達することを抑えている。
【0042】
ところで、上述したオンロード制御を行う状態又はアンロード制御を行う状態は、制御コントローラ60によって判断される。しかし、従来の制御コントローラは、車体30に搭載される車両電源から電力が供給されて作動するようになっていた。この場合、制御コントローラが電源ケーブルを介して車両電源に接続されることになり、電源ケーブルが長く且つ多くなる。これにより、艤装及び保守点検する際の手間が非常に大きくなり、コストを上昇させる原因になっていた。
【0043】
そこで、本実施形態の鉄道車両1は、制御コントローラ60を外部から電源を供給することなく作動させて、車両の状態(アンロード制御を行う状態)を判断できるように構成されている。特に、本実施形態では、熱電変換素子70が発電する電力を用いて、制御コントローラ60が第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53の開閉を切換えて、オンロード制御からアンロード制御に切換え可能な点に特徴がある。以下、制御コントローラ60及び熱電変換素子70について詳細に説明する。
【0044】
制御コントローラ60は、
図3に示すように、充電回路61と、電流/電圧センサ62と、加速度センサ63と、状態判断回路64と、出力回路65とを組み込んでいて、絶縁体で密閉されたケース内で基盤に実装されている。また、熱電変換素子70は、高温熱源部である制振用ダンパ40に取付けられている。この熱電変換素子70は、例えばP型半導体素子及びN型半導体素子と、これら半導体素子をつなぐ導電材料(電極)と、絶縁材料と、電極取出口とで構成されていて、ゼーベック効果を利用して発電するものである。即ち、P型半導体素子及びN型半導体素子のうち一方を高温にし、他方を低温にすることで、温度差によって熱エネルギーが電気エネルギーに変換できるようになっている。
【0045】
本実施形態では、熱電変換素子70は、制振用ダンパ40のうちパッシブ回路51の近くに取付けられている。これは、上述したように、作動油がパッシブ回路51のオリフィス51bを流れて減衰力を発生する際に、パッシブ回路51が制振用ダンパ40のうち最も高温になるためである。そして、この制振用ダンパ40では、シリンダ44が鉄で構成されているのに対して、パッシブ回路51や第1,第2オンオフ弁52,53等をシリンダ44に組付けるブロックがアルミニウムで構成されている。アルミニウムは鉄より熱伝導率が大きいため、そのブロックはシリンダ44より高温になり易くて、熱電変換素子70はそのブロックに取付けられている。こうして、熱電変換素子70が最も効果的に発電できる位置に取付けられている。
【0046】
充電回路61は、熱電変換素子70が発電した電力を充電するものである。この充電回路61は、状態判断回路64の制御指令に基づいて、充電した電力を放電可能になっている。電流/電圧センサ62は、充電回路61に接続されていて、充電回路61から供給される電力によって作動することができる。この電流/電圧センサ62は、充電回路61の電流/電圧を常に監視していて、検出した電流/電圧を状態判断回路64に出力している。状態判断回路64は、入力した電流/電圧に基づいて充電回路61が充電した充電量Xを推定している。電流/電圧センサ62が本発明の「充電量を検出する検出用センサ」に相当するが、検出用センサの構成は適宜変更可能である。
【0047】
加速度センサ63は、充電回路61に接続されていて、充電回路61から供給される電力によって作動することができる。この加速度センサ63は、車体30の振動を加速度として逐次検出するものであり、検出した加速度を状態判断回路64に出力している。状態判断回路64は、入力した加速度を逐次記憶していて、車両の状態(アンロード制御を行う状態)を判断するためのデータとして用いている。
【0048】
ここで、
図3に示すように、制振用ダンパ40には、ストロークセンサ66が設けられている。このストロークセンサ66は、充電回路61に接続されていて、充電回路61から供給される電力によって作動することができる。このストロークセンサ66は、ピストンロッド41が伸張しているか又は収縮しているかを検出するものであり、検出したストロークを状態判断回路64に出力している。状態判断回路64は、入力したストロークによって制振用ダンパ40の伸張又は収縮を判断する。具体的に、ストロークセンサ66は、ヘッド側室44aの圧力の正負を検知して、ピストンロッド41が伸張しているか又は収縮しているかを検出している。こうして、ストロークセンサ66の構造が簡易且つ小型になっている。
【0049】
状態判断回路64は、充電回路61に接続されていて、充電回路61から供給される電力によって作動することができる。この状態判断回路64は、上述したように、各センサ62,63,66が検出した検出値に基づいて、車両の状態を判断する。また、状態判断回路64は、出力回路65に制御線を介して接続されていて、出力回路65の作動を制御している。
【0050】
出力回路65は、充電回路61に接続されていて、充電回路61から供給される電力によって作動することができる。また、出力回路65は、第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53に対して通電可能に接続されている。こうして、出力回路65は、充電回路61から供給される電力を用いて、第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53に通電して、第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53を開いた状態に保持することができる。
【0051】
次に、状態判断回路64の動作について
図8を参照して説明する。状態判断回路64は、
図8に示すプログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行する。先ず、ステップS1では、加速度センサ63によって検出された加速度と、電流/電圧センサ62によって検出された電流/電圧と、ストロークセンサ66によって検出されたストロークを入力する。次に、ステップS2では、入力した電流/電圧に基づいて、充電回路61が充電した充電量Xを推定する。
【0052】
続いて、ステップS3では、推定した充電量Xが、予め設定された基準量Xaより大きいか否かを判断する。ここで、基準量Xaは、後述するように出力回路65を作動させても制御コントローラ60自体が作動できるように最低限必要な電力として設定された値である。こうして、状態判断回路64は、充電量Xと基準量Xaとを比較することで、出力回路65が作動できる分だけ充電されているか否かを判断している。このため、充電量Xが基準量Xaより大きい場合には、「Yes」と判断してステップS4に進み、充電量Xが基準量Xa以下である場合には、「No」と判断してこのプログラムを一旦終了する。
【0053】
ステップS4では、入力した加速度及びストロークに基づいて、伸び側のアンロード制御を行う状態(
図6参照)であるか否かを判断する。即ち、上述したように、台車10と車体30とが
図1の左側へ揺れて、台車10が車体30の揺れる速度よりも速い速度で揺れる状態か否かを判断している。これにより、伸び側のアンロード制御を行う状態である場合には、「Yes」と判断してステップS5に進む。そして、ステップS5では、状態判断回路64が、伸び側のアンロード制御を行うための制御指令を出力回路65に出力する。
【0054】
これにより、出力回路65は、
図6に示すように、充電回路61から供給される電力で第1オンオフ弁52に通電して、第1オンオフ弁52を開いた状態に保持する。この結果、伸び側のアンロード制御を行うことができる。その後、このプログラムを一旦終了する。一方、伸び側のアンロード制御を行う状態でない場合には、ステップS4で「No」と判断してステップS6に進む。
【0055】
ステップS6では、入力した加速度及びストロークに基づいて、縮み側のアンロード制御を行う状態(
図7参照)であるか否かを判断する。即ち、上述したように、台車10と車体30とが
図1の右側へ揺れて、台車10が車体30の揺れる速度よりも速い速度で揺れる状態か否かを判断している。これにより、縮み側のアンロード制御を行う状態である場合には、「Yes」と判断してステップS7に進む。そして、ステップS7では、状態判断回路64が、縮み側のアンロード制御を行うための制御指令を出力回路65に出力する。
【0056】
これにより、出力回路65は、
図7に示すように、充電回路61から供給される電力で第2オンオフ弁53に通電して、第2オンオフ弁53を開いた状態に保持する。この結果、縮み側のアンロード制御を行うことができる。その後、このプログラムを一旦終了する。一方、縮み側のアンロード制御を行う状態でない場合でも、ステップS7で「No」と判断してこのプログラムを一旦終了する。
【0057】
上述した説明から分かるように、第1オンオフ弁52又は第2オンオフ弁53を開かせることができる分だけ充電量Xが足りている状態では、
図6及び
図7に示すように、伸び側のアンロード制御又は縮み側のアンロード制御を行うことができる。即ち、制振用ダンパ40は、セミアクティブダンパとして機能することができる。一方、充電量Xが足りていない状態や、アンロード制御を行う状態ではないと判断したときには、第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53が通電されなくて、第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53が閉じたままになる。このときには、制振用ダンパ40は、
図4及び
図5に示すようにパッシブダンパとして機能することになる。
【0058】
第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態の鉄道車両1によれば、走行中に制振用ダンパ40が減衰力を発揮する際に作動油が高温になることを利用して、熱電変換素子70が発電する。発電した電力は、制御コントローラ60に組み込まれた充電回路61によって充電される。そして、電流/電圧センサ62、加速度センサ63、状態判断回路64、及びストロークセンサ66は、充電回路61から供給される電力で作動する。
【0059】
これにより、状態判断回路64は、検出された電流/電圧に基づいて充電量Xを推定できると共に、検出された加速度及びストロークに基づいて車両の状態(アンロード制御を行う状態)を判断することができる。こうして、制御コントローラ60(各センサ62,63,66及び状態判断回路64)を作動させるために、外部から電源を供給する必要がない。従って、従来に比べて電源ケーブル等の配線を減らすことができ、艤装及び保守点検する際の手間を減らすことができる。
【0060】
また、第1実施形態によれば、制振用ダンパ40は、
図4及び
図5に示すように、基本的にはパッシブダンパとして機能していて、充電量Xが基準量Xaより大きく且つアンロード制御を行う状態であると判断したときにのみ、
図6及び
図7に示すように、アンロード制御に切換える。従って、制振用ダンパ40は、充電量Xが足りなくてもパッシブダンパとして機能できるため、従来のパッシブダンパに比べて優れたものになっている。
【0061】
要するに、本実施形態の制振用ダンパ40は、外部から電源を供給することなく車両の状態及び充電量Xを判断でき、外部から電源を供給することなくアンロード制御を行う全く新しいセミアクティブダンパになっている。ここで、在来線の既存の鉄道車両においては、パッシブダンパを備えたものが未だ多く存在していて、コストをかけずに性能の向上が望まれている。そこで、このような鉄道車両のパッシブダンパを本実施形態の制振用ダンパ40に取り換えれば、電源ケーブル等の配線を艤装する手間、及びコストをほとんどかけずに、セミアクティブダンパを備えた鉄道車両1を構成することができる。
【0062】
また、本実施形態の制振用ダンパ40は、セミアクティブダンパとして構成されているが、パッシブダンパに対して主に第1オンオフ弁52と第2オンオフ弁53とを追加した簡素な構造になっている。そして、減衰力を切換える電磁弁として、電磁比例弁ではなく、比較的消費電力が少ない第1オンオフ弁52及び第2オンオフ弁53を用いている。こうして、本実施形態の制振用ダンパ40は、作動の信頼性が高く且つ比較的安価に構成されたものになっている。
【0063】
また、本実施形態においては、熱電変換素子70の発電量を大きくするために、制振用ダンパ40がより高温になることが好ましい。ここで、ピストン42の径が小さい程、作動油の発熱によって制振用ダンパ40がより高温になる。近年の鉄道車両の制振用ダンパでは、発熱を抑えるためにピストンの径が大きくなって、大型化する傾向があった。そこで、本実施形態では、ピストン42の径を小さくして、熱電変換素子70の発電量を大きくしつつ、制振用ダンパ40の小型化を図るという従来とは逆の技術的思想を有している。そして、小型化された制振用ダンパは商品化のニーズが非常に大きいものであるため、本実施形態の制振用ダンパ40であればそのニーズに十分対応することができる。
【0064】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図9は、第2実施形態の制御コントローラ80が軸箱13に組み込まれている状態を示した図であり、
図10は、第2実施形態の制御コントローラ80の構成を模式的に示した図である。第2実施形態の鉄道車両1A(
図10参照)では、軸箱13に組み込まれ制御コントローラ80が軸箱13の異常な発熱状態を判断することに特徴がある。
【0065】
軸箱13は、内部に潤滑油を封入していて、ベアリングを介して車軸15(回転部材)の端部を回転可能に支持する回転収容装置である。鉄道車両1Aの走行中には、車軸15の回転に伴って潤滑油が発熱するため、軸箱13が高温になる。軸箱13(潤滑油)の温度は、鉄道車両1Aの走行速度、即ち車軸15の回転速度が大きくなるほど大きくなる。そして、万一ベアリングの故障等によって異常な発熱状態になると、潤滑油の温度は100度以上に達する。第2実施形態では、このような異常な発熱状態を判断することを目的としている。
【0066】
第2実施形態では、熱電変換素子90が高温熱源部としての軸箱13に取付けられている。熱電変換素子90の構成は、第1実施形態の熱電変換素子70の構成と同様であるため、その説明を省略する。制御コントローラ80は、
図10に示すように、充電回路81と、電流/電圧センサ82と、温度センサ83と、状態判断回路84と、出力回路85とを組み込んでいる。充電回路81は、熱電変換素子90が発電した電力を充電する。電流/電圧センサ82は、第1実施形態の電流/電圧センサ62と同様であるため、その説明を省略する。
【0067】
温度センサ83は、充電回路81に接続されていて、充電回路81から供給される電力によって作動することができる。この温度センサ83は、軸箱13の潤滑油の温度を常に監視していて、検出した温度を状態判断回路84に出力している。状態判断回路84は、温度センサ83が検出した温度に基づいて、軸箱13で異常な発熱状態が生じているか否かを判断している。具体的には、検出された温度が予め設定された所定温度より大きい場合に、異常な発熱状態が生じていると判断する。
【0068】
こうして、異常な発熱状態が生じていると判断すると、状態判断回路84から出力回路85に異常信号が出力される。出力回路85は、異常信号を入力すると、車体30が備えている制御装置31に制御線を介して異常信号を送信する。なお、異常信号を送信する方法は、無線機器を用いて無線によって送信しても良い。車体30の制御装置31は、異常信号を入力すると警報装置32を作動させる。これにより、運転士は、軸箱13で異常な発熱状態が生じていることを把握できるようになっている。
【0069】
第2実施形態の作用効果について説明する。
第2実施形態の鉄道車両1Aによれば、走行中に軸箱13が高温になることを利用して熱電変換素子90が発電し、発電した電力によって制御コントローラ80を作動させることができる。そして、走行中に軸箱13に万一異常が生じると、軸箱13が異常な発熱状態になる。このとき、状態判断回路84が温度センサ83によって検出された温度に基づいて、軸箱13に異常な発熱状態が生じていることを判断する。こうして、外部からの電源を供給することなく、軸箱13に生じる万一の異常を検知することができる。そして、運転士は警報装置32によって軸箱13の異常を把握できるため、車両を停止させる等のその後の措置を速やかに行うことができる。
【0070】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第2実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、第3実施形態の制御コントローラ80Bの構成を模式的に示した図である。第3実施形態の鉄道車両1Bでは、軸箱13に組み込まれた制御コントローラ80Bが軸箱13の異常な振動状態を判断することに特徴がある。
図11に示すように、第3実施形態の制御コントローラ80Bでは、第2実施形態の温度センサ83に換えて加速度センサ83Bが設けられ、第2実施形態の出力回路85に換えてデータ送信部85Bが設けられている。
【0071】
第3実施形態の制御コントローラ80Bにおいて、加速度センサ83Bは、軸箱13の振動を加速度として逐次検出するものであり、検出した加速度を状態判断回路84Bに出力している。状態判断回路84Bは、入力した加速度を逐次記憶していて、軸箱13に異常振動が生じているか否かを判断している。例えば、検出された加速度の振幅が予め設定されたしきい値より大きい場合や、検出された加速度の2乗の平均値であるパワーが予め設定されたしきい値より大きい場合に、異常な振動状態が生じていると判断する。
【0072】
こうして、異常な振動状態が生じていると判断されると、状態判断回路84Bからデータ送信部85Bに異常信号が出力される。データ送信部85Bは、異常信号を入力すると、車体30が備えている制御装置31に異常信号を送信する。車体30の制御装置31は、異常信号を入力すると警報装置32を作動させる。これにより、運転士は、軸箱13で異常な振動状態が生じていることを把握できるようになっている。
【0073】
また、第3実施形態では、状態判断回路84Bが加速度センサ83Bによって検出された加速度を情報データとして収集している。そして、収集された加速度の情報データは、状態判断回路84Bからデータ送信部85Bに出力される。データ送信部85Bは、収集された加速度の情報データを制御線又は無線機器を介して車体30の制御装置31に送信するようになっている。なお、情報データを送信するための消費電力が大きい場合には、充電回路81が充電する充電量が所定量より大きいことを条件として、データ送信部85Bが情報データを送信するように構成しても良い。
【0074】
第3実施形態の作用効果について説明する。
第3実施形態の鉄道車両1Bによれば、上記した第2実施形態の作用効果と類似していて、状態判断回路84Bが加速度センサ83Bによって検出された加速度に基づいて、軸箱13に異常な振動状態が生じていることを判断する。こうして、外部からの電源を供給することなく、軸箱13に生じる万一の異常を検知することができる。更に、第3実施形態では、車体30の制御装置31が、データ送信部85Bによって加速度の情報データを受信する。これにより、車体30の制御装置31は、受信した加速度の情報データを例えば車体傾斜制御に用いたり、部品の状態又は乗り心地を監視する状態監視システムに用いることができる。
【0075】
以上、本発明に係る鉄道車両の各実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1実施形態において、熱電変換素子70はパッシブ回路51の近くにのみ取付けたが、制振用ダンパ40のその他の部位に取付けても良く、熱電変換素子の個数及び取付位置は適宜変更可能である。
また、第1実施形態において示した油圧回路50はあくまで一例であって、油圧回路の構成は適宜変更可能である。
【0076】
また、第2実施形態及び第3実施形態において、高温熱源部である回転収容装置が軸箱13であったが、回転収容装置は軸箱13に限られるものではなく、例えば
図9に示す歯車装置17や電動モータであっても良い。
また、第1実施形態及び第3実施形態において物理値センサが加速度センサ63,83Bであり、第2実施形態において物理値センサが温度センサ83であったが、物理値センサはこれらに限られるものではなく、例えば速度センサ、歪みセンサ、角度センサ、角速度センサ、圧力センサ等であっても良い。
また、第1実施形態と第2実施形態と第3実施形態の各特徴をそれぞれ組み合わせて実施することも可能である。