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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-155225(P2015-155225A)
(43)【公開日】2015年8月27日
(54)【発明の名称】車両用ヒータ装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20150731BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20150731BHJP
【FI】
   B62D1/06
   A61B5/02 320C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-30255(P2014-30255)
(22)【出願日】2014年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 達也
【テーマコード(参考)】
3D030
4C017
【Fターム(参考)】
3D030DB02
4C017AA02
4C017BC11
4C017DD14
(57)【要約】
【課題】運転者の緊張を緩和し運転の安全性を向上できる車両用ヒータ装置を提供することを目的としている。
【解決手段】車両用ヒータ装置100は、ステアリングホイール104に設けられヒータとして機能するヒータ電極106、108と、車両の運転状態を検出する第1デバイス118と、検出された車両の運転状態が危険であるときに所定のトリガ信号132を発信する駆動トリガ発信部120と、トリガ信号を受信するとヒータを駆動するヒータ制御部114とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたヒータと、
車両の運転状態を検出する第1デバイスと、
前記検出された車両の運転状態が危険であるときに所定のトリガ信号を発信する駆動トリガ発信部と、
前記トリガ信号を受信すると前記ヒータを駆動するヒータ制御部とを備えることを特徴とする車両用ヒータ装置。
【請求項2】
前記ヒータは、車両のステアリングホイールに設けられ、通電により発熱するヒータ電極を含むことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項3】
前記ヒータは、車両のシートに設けられ、通電により発熱するヒータ電極を含むことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項4】
第1デバイスは、運転者の心拍数を検出する心拍検出部であり、
前記駆動トリガ発信部は、前記心拍数が平常値から所定の短時間で上昇すると前記トリガ信号を発信し、
前記ヒータ制御部は、上昇した前記心拍数が平常値に戻ると、前記ヒータの駆動を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項5】
当該車両用ヒータ装置は、運転者が車両に乗車する兆候を検出する第2デバイスをさらに備え、
前記駆動トリガ発信部は、前記兆候が検出されると前記トリガ信号を発信することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項6】
当該車両用ヒータ装置は、前記ヒータの駆動時間を計測するタイマをさらに備え、
前記ヒータ制御部は、前記タイマにより計測された駆動時間が所定時間を経過すると、前記ヒータの駆動を停止することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項7】
当該車両用ヒータ装置は、車両のイグニッションをさらに備え、
前記ヒータ制御部は、前記ヒータの駆動時間が所定時間経過後、前記イグニッションがOFFであれば、前記ヒータの駆動を停止することを特徴とする請求項5または6に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項8】
第2デバイスは、ドアスイッチであって、
前記駆動トリガ発信部は、ドア開動作に伴う前記ドアスイッチの論理変化を受けて、前記トリガ信号を発信することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項9】
第2デバイスは、前記車両へ開錠命令信号を送信可能であり、前記車両からの電波を受信して反射波を該車両に発信することで該車両からの距離を該車両に知らせるリモコンキーであって、
前記駆動トリガ発信部は、前記リモコンキーと車両との距離が所定距離以内である場合、または、前記リモコンキーから車両に向けて送信される前記開錠命令信号を受信した場合、前記トリガ信号を発信することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の車両用ヒータ装置。
【請求項10】
第2デバイスは、通信端末であって、
前記駆動トリガ発信部は、前記通信端末から無線通信による作動命令信号を受信すると、前記トリガ信号を発信することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の車両用ヒータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたヒータを制御する車両用ヒータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用ヒータ装置としては、例えば運転者によって把持されるステアリングホイールに設けられたヒータと、ヒータを制御するヒータ制御部とを備えたものが知られている。特許文献1には、ステアリングホイールを覆う発熱体によってヒータ機能が付加された車両用ヒータ装置が記載されている。
【0003】
特許文献1では、運転者がスイッチ操作を行うことによって、バッテリに接続された発熱体に通電し、所定時間後には通電を停止するという制御が実行される。特許文献1によれば、この制御が実行されることで、ステアリングホイールが必要以上に加熱されることを防止できるとしている。
【0004】
特許文献2に記載の車両用ヒータ装置は、ステアリングホイールに設けられたヒータを制御するヒータ制御部と、運転者の心拍を検出する心拍検出部と、イグニッションスイッチ検知部とを備えている。イグニッションスイッチ検知部は、イグニッションがONの場合にイグニッション信号を所定時間だけ出力する。ヒータ制御部は、イグニッション信号が入力されている間、ヒータを駆動して心拍検出部の電極と手との接触部を加温する。
【0005】
特許文献2によれば、心拍検出部の電極と手との接触部を加温することで、手の発汗を促し、接触部の接触抵抗を低い状態で安定させ、心拍信号の計測結果の信頼性を向上させるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−76922号公報
【特許文献2】特開2000−23929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の運転状態が危険であれば、運転者は緊張状態になる。特に、危険な運転状態に遭遇しその危険を回避した直後、運転者は、過度な緊張状態に陥ると考えられる。運転者が過度な緊張状態であれば、安全運転に支障をきたす可能性がある。このため、危険が回避された後、運転者は緊張が緩和されることが好ましい。
【0008】
本発明者らは、緊張状態になると、人は手足などの末端の温度が低下し、また、緊張状態で末端の温度を上昇させると、緊張が緩和される点に着目した。
【0009】
特許文献1では、運転者によるスイッチ操作によって、ヒータが駆動される。特許文献2では、イグニッションがONの場合に所定時間だけ出力されるイグニッション信号によって、ヒータが駆動される。つまり、特許文献1、2に記載の技術では、運転者の緊張を緩和する観点でヒータを駆動していないため、運転の安全性を向上させることは困難である。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、運転者の緊張を緩和し運転の安全性を向上できる車両用ヒータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用ヒータ装置の代表的な構成は、車両に設けられたヒータと、車両の運転状態を検出する第1デバイスと、検出された車両の運転状態が危険であるときに所定のトリガ信号を発信する駆動トリガ発信部と、トリガ信号を受信するとヒータを駆動するヒータ制御部とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、車両の運転状態が危険であるとき、ヒータを駆動できる。これにより、緊張状態に陥り手足などの末端の温度が低下した運転者を温めることができ、緊張の緩和を促進し、運転の安全性を向上できる。
【0013】
上記のヒータは、車両のステアリングホイールに設けられ、通電により発熱するヒータ電極を含むとよい。このように、運転者が把持するステアリングホイールにヒータ電極が設けられているので、危険な運転状態に遭遇したとき、運転者の手を温めて緊張の緩和を促進できる。
【0014】
上記のヒータは、車両のシートに設けられ、通電により発熱するヒータ電極を含むとよい。このように、運転者が着座するシートにヒータ電極が設けられているので、危険な運転状態に遭遇したとき、運転者の足を温めて緊張の緩和を促進できる。
【0015】
上記の第1デバイスは、運転者の心拍数を検出する心拍検出部であり、駆動トリガ発信部は、心拍数が平常値から所定の短時間で上昇するとトリガ信号を発信し、ヒータ制御部は、上昇した心拍数が平常値に戻ると、ヒータの駆動を停止するとよい。これにより、運転者の緊張が緩和されると、ヒータを停止でき、運転者を不必要に温めることがない。
【0016】
当該車両用ヒータ装置は、運転者が車両に乗車する兆候を検出する第2デバイスをさらに備え、駆動トリガ発信部は、兆候が検出されるとトリガ信号を発信するとよい。これにより、運転者が車両に乗車する前に、ヒータを駆動できる。したがって、上記構成によれば、運転者が運転を開始する時点で、ヒータが既に温まっているため、快適性を向上できる。
【0017】
当該車両用ヒータ装置は、ヒータの駆動時間を計測するタイマをさらに備え、ヒータ制御部は、タイマにより計測された駆動時間が所定時間を経過すると、ヒータの駆動を停止するとよい。これにより、ヒータの駆動時間を制限できるので、運転者を過度に温めることがない。
【0018】
当該車両用ヒータ装置は、車両のイグニッションをさらに備え、ヒータ制御部は、ヒータの駆動時間が所定時間経過後、イグニッションがOFFであれば、ヒータの駆動を停止するとよい。このように、運転者が車両に乗車する兆候が検出され、ヒータの駆動時間が所定時間経過した場合であっても、イグニッションがOFFであれば、運転者に運転の意思がない可能性が高い。上記構成では、このような場合にヒータの駆動を停止できるため、ヒータを不必要に駆動せずに済み、電力の消費を抑制できる。
【0019】
上記の第2デバイスは、ドアスイッチであって、駆動トリガ発信部は、ドア開動作に伴うドアスイッチの論理変化を受けて、トリガ信号を発信するとよい。これにより、運転者がドア開動作を行う場合、すなわち運転者が車両に乗車する前に、ヒータを確実に駆動できる。
【0020】
上記の第2デバイスは、車両へ開錠命令信号を送信可能であり、車両からの電波を受信して反射波を車両に発信することで車両からの距離を車両に知らせるリモコンキーであって、駆動トリガ発信部は、リモコンキーと車両との距離が所定距離以内である場合、または、リモコンキーから車両に向けて送信される開錠命令信号を受信した場合、トリガ信号を発信するとよい。これにより、リモコンキーを持った運転者が車両に接近した場合や、リモコンキーを操作して開錠命令信号を送信した場合、すなわち運転者が車両に乗車する前に、ヒータを確実に駆動できる。
【0021】
上記の第2デバイスは、通信端末であって、駆動トリガ発信部は、通信端末から無線通信による作動命令信号を受信すると、トリガ信号を発信するとよい。これにより、運転者が車両に乗車する前に、通信端末を用いて作動命令信号を送信することで、ヒータを確実に駆動できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、運転者の緊張を緩和し運転の安全性を向上できる車両用ヒータ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態における車両用ヒータ装置を例示した機能ブロック図である。
図2図1の車両用ヒータ装置の一部を例示した図である。
図3図1の車両用ヒータ装置の動作を例示したフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態における車両用ヒータ装置を例示した機能ブロック図である。
図5図4の車両用ヒータ装置の一部を例示した図である。
図6図4の車両用ヒータ装置でのトリガ信号を発信する状態を例示した図である。
図7図4の車両用ヒータ装置の動作を例示したフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施形態における車両用ヒータ装置を例示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における車両用ヒータ装置を例示した機能ブロック図である。図2は、図1の車両用ヒータ装置の一部を例示した図である。
【0026】
車両用ヒータ装置100は、図1に例示するように、車両の運転者である乗員102によって両手で把持されるステアリングホイール104を備える。ステアリングホイール104は、図中の矢印Lに例示する車幅方向左側に設けられる左手用電極(ヒータ電極106)と、車幅方向右側に設けられる右手用電極(ヒータ電極108)とを有する。これらのヒータ電極106、108は、ステアリングホイール104の表面に位置する導電体であり、互いに絶縁分離されていて、通電により発熱する。
【0027】
車両用ヒータ装置100は、ヒータ電源110と、スイッチング素子112a、112bと、ヒータ制御部114とを備える。ヒータ電極106、108は、ヒータ電源110によって給電されることで発熱し、ヒータとして機能する。
【0028】
スイッチング素子112a、112bは、ヒータ電源110からヒータ電極106、108に至る回路の途中にそれぞれ設けられている。スイッチング素子112a、112bは、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)であり、ヒータ制御部114からの制御信号116a、116bによって、ヒータ電源110とヒータ電極106、108との間を通電状態または非通電状態とする。つまり、ヒータ制御部114は、スイッチング素子112a、112bを制御することで、ヒータ電極106、108を発熱させるか否かを設定でき、ヒータを駆動あるいは停止できる。
【0029】
さらに車両用ヒータ装置100は、第1デバイス118と、駆動トリガ発信部120と、記憶部122と、タイマ124とを備える。第1デバイス118は、車両の運転状態を検出するデバイスである。第1デバイス118としては、図2に例示するように、心拍検出部(心拍モニタ118a)、舵角センサ118b、加速度センサ118c、カメラ118d、レーダー118e、ECU126内のABS(Antilock Brake System)制御部118fおよび姿勢制御部118gなどが挙げられる。
【0030】
心拍モニタ118aは、運転者である乗員102の心拍数を検出し、心拍数が平常値から所定の短時間で所定値まで上昇すると、心拍数が急上昇したことを示す信号128aを生成し、この信号128aを駆動トリガ発信部120に出力する。心拍数の平常値は、例えば心拍数を所定時間検出して得られた平均値とし、記憶部122に格納してよい。また心拍数が急上昇したと判定するための閾値、すなわち所定の短時間および所定値も、記憶部122に格納してよい。このようにすれば、心拍モニタ118aは、心拍数を検出しながら、記憶部122から平常値および閾値を読み出して、心拍数が急上昇した旨を示す信号128aを生成できる。
【0031】
舵角センサ118bは、急ハンドルを検知すると、駆動トリガ発信部120に信号128bを出力する。加速度センサ118cは、急ブレーキを検知すると、駆動トリガ発信部120に信号128cを出力する。カメラ118dは、前方の車両が急接近したことを検知すると、駆動トリガ発信部120に信号128dを出力する。
【0032】
レーダー118eは、歩行者の飛び出しを検知すると、駆動トリガ発信部120に信号128eを出力する。ABS制御部118fは、ABS制御を作動すると、駆動トリガ発信部120に信号128fを出力する。姿勢制御部118gは、横滑りを検知すると、駆動トリガ発信部120に信号128gを出力する。
【0033】
駆動トリガ発信部120は、図2に例示するように、OR回路である論理回路130を含んでいる。論理回路130は、信号128a〜128gのうち少なくとも1つが入力されると、ヒータを駆動させるトリガ信号132を発信する。ヒータ制御部114は、図1に例示するようにトリガ信号132を受信すると、制御信号116a、116bによりスイッチング素子112a、112bを制御して、ヒータ電源110とヒータ電極106、108との間を通電状態とし、ヒータを駆動する。タイマ124は、ヒータの駆動時間を計測する。
【0034】
ここで、信号128a〜128gは、車両の運転状態が危険であることを示している。車両の運転状態が危険であれば、乗員102は緊張状態になる。特に、危険な運転状態に遭遇しその危険を回避した直後、乗員102は、過度な緊張状態に陥ると考えられる。そして、乗員102が過度な緊張状態に陥ったままでは、安全運転に支障をきたす可能性がある。したがって、危険が回避された直後、乗員102は、緊張が緩和されることが好ましい。
【0035】
本実施形態では、緊張状態になると人は手足などの末端の温度が低下し、緊張状態で末端の温度を上昇させると緊張が緩和されるという生理現象に着目し、乗員102の緊張を緩和する観点から、ヒータを駆動している。以下、図3を参照して、ヒータを駆動あるいは停止する動作について説明する。
【0036】
図3は、図1の車両用ヒータ装置100の動作を例示したフローチャートである。まず、ヒータ制御部114は、スイッチング素子112a、112bをOFFにして、ヒータ電極106、108を非通電状態とし、ヒータを停止している(ステップS100)。つぎに、ヒータ制御部114は、駆動トリガ発信部120からのトリガ信号132を受信したか否かを判定する(ステップS102)。
【0037】
ステップS102でトリガ信号132を受信すると(Yes)、ヒータ制御部114は、スイッチング素子112a、112bをONにして、ヒータ電極106、108を通電状態とし、ヒータを駆動する(ステップS104)。一方、ステップS102でトリガ信号132を受信していなければ(No)、ステップS100の処理に戻る。
【0038】
つぎに、ヒータ制御部114は、タイマ124により計測されたヒータの駆動時間が所定時間を経過したか否かを判定し(ステップS106)、所定時間経過すると(Yes)、上記ステップS100に戻り、ヒータの駆動を停止する。これにより、ヒータの駆動時間を所定時間に制限できるので、乗員102を過度に温めることがない。
【0039】
一方、ステップS106でヒータの駆動時間が所定時間を経過していなければ(No)、ステップS104の処理を続行する。なおステップS106での判定の閾値となる所定時間は、記憶部122に予め格納すればよい。このようにすれば、ヒータ制御部114は、記憶部122から閾値を読み出して、ステップS106の処理を実行できる。
【0040】
ステップS106の処理では、ヒータの駆動を停止する条件として、ヒータの駆動時間のみを例示したが、これに限られず、心拍モニタ118aで検出された心拍数を条件としてもよい。一例として、ヒータ制御部114は、心拍モニタ118aから急上昇した心拍数が平常値に戻ったことを示す信号を受信したとき、ヒータの駆動を停止してもよい。このようにすれば、ヒータ制御部114は、乗員102の心拍数が平常値に戻り緊張が緩和されると、ヒータを停止できるため、乗員102を不必要に温めることがない。
【0041】
また第1デバイス118は、生体情報として心拍数に限らず、脳波を検出する脳波モニタを採用し、脳波に基づいて交感神経の上昇を検出してもよい。交感神経の上昇は、乗員102が緊張し興奮した状態にあることを示している。よって、駆動トリガ発信部120は、交感神経の上昇を示す信号を脳波モニタから受信したとき、トリガ信号132を発信してもよい。
【0042】
第1の実施形態にかかる車両用ヒータ装置100では、車両の運転状態が危険であるとき、乗員102が把持するステアリングホイール104に設けられたヒータを駆動できる。したがって、車両用ヒータ装置100によれば、危険な運転状態に遭遇し緊張状態に陥った乗員102の手を温めて、緊張の緩和を促進し、運転の安全性を向上できる。
【0043】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態における車両用ヒータ装置100Aを例示した機能ブロック図である。図5は、図4の車両用ヒータ装置100Aの一部を例示した図である。
【0044】
車両用ヒータ装置100Aは、以下の点で第1の実施形態にかかる車両用ヒータ装置100と異なる。すなわち車両用ヒータ装置100Aは、図4に例示するように、2つのヒータ電極106、108に代えて、ステアリングホイール104Aに共通の1つのヒータ電極134を設けてヒータとしている。また車両用ヒータ装置100Aは、第1デバイス118に代えて第2デバイス136を設け、さらにイグニッション138を備えている。
【0045】
車両用ヒータ装置100Aは、ヒータ電源110Aと、スイッチング素子112cと、ヒータ制御部114Aとを備える。ヒータ電極134は、ヒータ電源110Aによって給電されることで発熱し、ヒータとして機能する。ヒータ制御部114Aは、制御信号116cによってスイッチング素子112cを制御することで、ヒータを駆動あるいは停止できる。
【0046】
さらに車両用ヒータ装置100Aは、第2デバイス136と、駆動トリガ発信部120Aと、記憶部122Aとを備える。第2デバイス136としては、図5に例示するように、ドアスイッチ136a、スマートエントリーキーなどのリモコンキー136b、スマートフォンなどの通信端末136cなどが挙げられる。これらドアスイッチ136a、リモコンキー136bおよび通信端末136cは、乗員102が車両に乗車する兆候を検出するために用いられ、信号140a〜140dを駆動トリガ発信部120Aにそれぞれ出力する。
【0047】
駆動トリガ発信部120Aは、図5に例示するように、OR回路である論理回路130Aを含んでいる。論理回路130Aは、信号140a〜140dのうち少なくとも1つが入力されると、ヒータを駆動させるトリガ信号132Aを発信する。ヒータ制御部114Aは、図4に例示するようにトリガ信号132Aを受信すると、制御信号116cによりスイッチング素子112cを制御して、ヒータ電源110Aとヒータ電極134との間を通電状態とし、ヒータを駆動する。タイマ124Aは、ヒータの駆動時間を計測する。イグニッション138は、車両の原動機が始動されるとONになり、始動されていないときはOFFとなっている。
【0048】
図6は、図4の車両用ヒータ装置100Aでのトリガ信号132Aを発信する状態を例示した図である。図6(a)、図6(b)は、ドアスイッチ136a、リモコンキー136bを用いた場合、通信端末136cを用いた場合での動作をそれぞれ概略的に例示した図である。
【0049】
ドアスイッチ136aは、車両200のドア開閉動作によって論理値が変化するように設定されている。一例として、ドアスイッチ136aは、ドア開動作によってスイッチONであれば、論理値が「H」から「L」に変化する。ドアスイッチ136aは、図6(a)に例示するように、ドア開動作を検知すると、駆動トリガ発信部120Aに信号140aを出力する。
【0050】
信号140aは、駆動トリガ発信部120Aを兼ねるドアスイッチ検知部142に入力される。ドアスイッチ検知部142は、信号140aによってドア開動作に伴う論理変化を検知すると、ヒータ制御部114Aにトリガ信号132Aを発信する。ヒータ制御部114Aは、トリガ信号132Aを受信すると、ヒータを駆動する。これにより、乗員102がドア開動作を行う場合、すなわち乗員102が車両200に乗車する前に、ヒータを確実に駆動できる。
【0051】
リモコンキー136bは、例えばパッシブタグ式のデバイスであって、車両200からの電波を受信して反射波である信号140bを車両200に発信することで、車両200からの距離を車両200に通知可能である。信号140bは、図6(a)に例示するように、駆動トリガ発信部120Aを兼ねるキー制御部144に入力される。キー制御部144は、信号140bによってリモコンキー136bと車両200との距離が所定距離以内であると判定すれば、ヒータ制御部114Aにトリガ信号132Aを発信する。これにより、リモコンキー136bを持った乗員102が車両200に接近した場合、すなわち乗員102が車両200に乗車する前に、ヒータを確実に駆動できる。
【0052】
またリモコンキー136bは、乗員102が車両200に向けて開錠命令信号である信号140cを送信可能である。信号140cは、図6(a)に例示するように、キー制御部144に入力される。キー制御部144は、信号140cを受信すると、ヒータ制御部114Aにトリガ信号132Aを発信する。これにより、乗員102がリモコンキー136bを操作して開錠命令信号である信号140cを送信した場合、すなわち乗員102が車両200に乗車する前に、ヒータを確実に駆動できる。
【0053】
通信端末136cは、図6(b)に例示するように、無線通信によって作動命令信号である信号140dを車両200Aに送信可能である。通信端末136cは、点線Aで例示する経路により、駆動トリガ発信部120Aに信号140dを出力可能である。この場合、信号140dは、駆動トリガ発信部120Aを兼ねる無線通信部146に入力される。無線通信部146は、信号140dを受信すると、ヒータ制御部114Aにトリガ信号132Aを発信する。
【0054】
ここで、車両200Aは、例えば電気自動車であって、充電スタンド148で充電を行っている場合を想定する。充電スタンド148は、充電装置150と無線基地局152とを備えている。充電装置150は、電力線154aを介して無線基地局152に接続され、電力線154bを介して車両200A内の充電管理部156に接続されている。
【0055】
通信端末136cは、点線Bで例示する経路により、駆動トリガ発信部120Aに信号140dを出力可能である。この場合、信号140dは、無線基地局152を経由して無線通信部146に入力される。無線通信部146は、信号140dを受信すると、ヒータ制御部114Aにトリガ信号132Aを発信する。
【0056】
通信端末136cは、点線Cで例示する経路により、駆動トリガ発信部120Aに信号140dを出力可能である。この場合、信号140dは、無線基地局152を経由した後、電力線通信(PLC:Power Line Communication)によって、駆動トリガ発信部120Aを兼ねる充電管理部156に入力される。つまり、信号140dは、無線基地局152から電力線154aを経由して充電装置150に送信され、さらに電力線154bを経由して充電管理部156に入力される。
【0057】
充電管理部156は、信号140dを受信すると、ヒータ制御部114Aにトリガ信号132Aを発信する。これにより、乗員102が車両200Aに乗車する前に、通信端末136cを用いて作動命令信号である信号140dを送信することで、ヒータを確実に駆動できる。
【0058】
図7は、図4の車両用ヒータ装置100Aの動作を例示したフローチャートである。まず、ヒータ制御部114Aは、スイッチング素子112cをOFFにして、ヒータ電極134を非通電状態とし、ヒータを停止している(ステップS200)。つぎに、ヒータ制御部114Aは、駆動トリガ発信部120Aからのトリガ信号132Aを受信したか否かを判定する(ステップS202)。
【0059】
ステップS202でトリガ信号132Aを受信すると(Yes)、ヒータ制御部114Aは、スイッチング素子112cをONにして、ヒータ電極134を通電状態とし、ヒータを駆動する(ステップS204)。一方、ステップS202でトリガ信号132Aを受信していなければ(No)、ステップS200の処理に戻る。
【0060】
ヒータ制御部114Aは、タイマ124Aにより計測されたヒータの駆動時間が所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS206)。なおステップS206での判定の閾値となる所定時間は、記憶部122Aに予め格納すればよい。ステップS206でヒータの駆動時間が所定時間を経過すると(Yes)、ヒータ制御部114Aは、イグニッション138がONであるか否かを判定する(ステップS208)。
【0061】
ステップS206でヒータの駆動時間が所定時間を経過していない場合(No)、また、ステップS208でイグニッション138がONである場合(Yes)、ヒータ制御部114Aは、ステップS204の処理に戻り、ヒータを駆動し続ける。一方、ステップS208でイグニッション138がOFFである場合(No)、ヒータ制御部114Aは、ステップS204の処理に戻り、ヒータの駆動を停止する。
【0062】
第2の実施形態にかかる車両用ヒータ装置100Aでは、第2デバイス136を用いて乗員102が車両に乗車する兆候が検出されると、ステアリングホイール104Aに設けられたヒータを駆動する。したがって、車両用ヒータ装置100Aによれば、乗員102が車両に乗車し運転を開始する時点で、ヒータが駆動し温まっているため、乗員102の手を温めて快適性を向上できる。
【0063】
また、第2デバイス136によって乗車の兆候が検出され、ヒータの駆動時間が所定時間経過した場合であっても、イグニッションがOFFであれば、乗員102に運転の意思がない可能性が高い。車両用ヒータ装置100Aでは、イグニッションがOFFである場合、ヒータの駆動を停止できるため、ヒータを不必要に駆動せずに済み、電力の消費を抑制できる。
【0064】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態における車両用ヒータ装置100Bを例示した機能ブロック図である。車両用ヒータ装置100Bは、以下の点で第1の実施形態にかかる車両用ヒータ装置100と異なる。すなわち車両用ヒータ装置100Bは、図8に例示するように、2つのヒータ電極106、108に代えて、車両用シート158に設けられたヒータ電極160、162を設けてヒータとしている。また車両用ヒータ装置100Bは、第1デバイス118に加えて第2デバイス136を設け、さらにイグニッション138を備えている。
【0065】
車両用ヒータ装置100Bは、ヒータ電源110Bと、スイッチング素子112d、112eと、ヒータ制御部114Bとを備える。ヒータ電極160は、乗員102が着座するシートクッション164に設けられている。ヒータ電極162は、乗員102の背中が接するシートバック162に設けられている。ヒータ制御部114Bは、制御信号116d、116eによってスイッチング素子112d、112eを制御することで、ヒータを駆動あるいは停止できる。
【0066】
さらに車両用ヒータ装置100Bは、第1デバイス118と、第2デバイス136と、駆動トリガ発信部120Bと、記憶部122Bとを備える。駆動トリガ発信部120Bは、第1デバイス118からの信号128a〜128g、第2デバイス136からの信号140a〜140dのうち少なくとも1つが入力されると、ヒータを駆動させるトリガ信号132Bを発信する。
【0067】
ヒータ制御部114Bは、図8に例示するようにトリガ信号132Bを受信すると、制御信号116d、116eによりスイッチング素子112d、112eを制御して、ヒータ電源110Bとヒータ電極160、162との間を通電状態とし、ヒータを駆動する。
【0068】
上記したように、信号128a〜128gは、車両の運転状態が危険であることを示している。信号140a〜140dは、乗員102が車両に乗車する兆候を示している。つまり、ヒータ制御部114Bは、危険な運転状態に遭遇し乗員102が緊張状態に陥ったとき、さらには、乗員102が車両に乗車する兆候があるときに、ヒータを駆動する。
【0069】
ヒータ制御部114Bは、ヒータを駆動した後、タイマ124Bで計測されたヒータの駆動時間が所定時間を経過したか否か、また、イグニッション138がONであるか否かを判定する。そして、ヒータ制御部114Bは、上記のように判定結果に応じてヒータの駆動を停止する。なおヒータ制御部114Bは、所定の判定処理を実行する際、記憶部122Bから閾値を適宜読み出してよい。
【0070】
第3の実施形態にかかる車両用ヒータ装置100Bでは、第1デバイス118および第2デバイス136を用いることで、車両の運転状態が危険であるときに加え、乗員102が車両に乗車する前に、ヒータを駆動できる。したがって、車両用ヒータ装置100Bによれば、乗員102の緊張を緩和して運転の安全性を向上するだけでなく、乗員102が運転を開始する時点で、ヒータが駆動し温まっているため、快適性も向上できる。
【0071】
また、車両用ヒータ装置100Bでは、ヒータが車両用シート158に設けられているため、乗員102の足や背中を温めることができる。よって、車両用ヒータ装置100Bによれば、緊張の緩和をより促進でき、さらには快適性もさらに向上できる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0073】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、車両に設けられたヒータを制御する車両用ヒータ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
100、100A、100B…車両用ヒータ装置、102…乗員、104、104A…ステアリングホイール、106、108、134、160、162…ヒータ電極、110、110A、110B…ヒータ電源、112a〜112e…スイッチング素子、114、114A、114B…ヒータ制御部、116a〜116e…制御信号、118…第1デバイス、118a…心拍モニタ、118b…舵角センサ、118c…加速度センサ、118d…カメラ、118e…レーダー、118f…ABS制御部、118g…姿勢制御部、120、120A、120B…駆動トリガ発信部、122、122A、122B…記憶部、124、124A、124B…タイマ、126…ECU、128a〜128g、140a〜140d…信号、130、130A…論理回路、132、132A、132B…トリガ信号、136…第2デバイス、136a…ドアスイッチ、136b…リモコンキー、136c…通信端末、138…イグニッション、142…ドアスイッチ検知部、144…キー制御部、146…無線通信部、148…充電スタンド、150…充電装置、152…無線基地局、154a、154b…電力線、156…充電管理部、158…車両用シート、164…シートクッション、166…シートバック、200、200A…車両
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8