【実施例】
【0037】
−実施例1−
図1は、実施例1に係るデジタル放送システムの構成を示す。
図1に示すように、デジタル放送システム1は、キー局又は準キー局のスタジオ局(本明細書において、「デジタル放送用スタジオ局」ということがある。)11と、それに併設するSNG地上局61と、衛星回線58と、地方局送信所31(本明細書において、「地上波デジタル放送用送信所」又は、単に「送信所」ということがある。)とで構成される。
本実施例では、災害等により自社のスタジオにおいて放送プログラムの制作ができなくなり、自社制作の放送プログラム(放送TS信号)を、放送TS信号配信回線(TTL回線)28を介して地方局送信所31に伝送できなくなった地方局に代わり、当該地方局の放送プログラムとしてキー局又は準キー局が制作した放送プログラムを地方局送信所31に伝送する。
【0038】
図1において、スタジオ局11は、スタジオ設備としての現用系81Aの他に、災害時用のバックアップとなる予備系81Bを備え、予備系81Bが当該地方局の放送プログラムを制作する。
現用系81Aは、制作された各種の番組素材が供給されるスイッチャ(#1)14Aと、スイッチャ(#1)14Aで選択された番組素材(放送プログラム)をエンコードして変換したデジタル信号(TV信号)に、データ放送用信号やPSI生成装置(#1)20Aで生成された番組特定情報を多重して放送TS信号を生成する多重化装置(#1)21Aとを備える。
【0039】
また、スタジオ設備の予備系81Bは、現用のスイッチャ14Aと同様な構成の予備のスイッチャ(#2)14Bと、現用のPSI生成装置20Aと同様な構成の予備のPSI生成装置(#2)20Bと、現用の多重化装置21Aと同様な構成の予備の多重化装置(#2)21Bとを備える。
現用の多重化装置(#1)21Aで生成された放送TS信号は、自社の送信所(図示せず)に伝送された後、一般家庭のTV受信機に配信される。予備の多重化装置(#2)21Bで生成された放送TS信号は、SNG地上局61に伝送される。
【0040】
SNG地上局61は、ここではキー局又は準キー局のスタジオ局11に併設され、衛星通信用送受信アンテナ62と、衛星通信用送受信機63を備え、スタジオ局11が制作した当該地方局向け放送TS信号を、衛星回線58を介して地方局送信所31に伝送する。
災害時、放送TS信号配信回線28に不具合が生じた場合には、当該地方局向け放送プログラム信号は、スタジオ局11の中のスタジオ設備予備系81Bを使用して制作される。このため、当該地方局向け放送プログラム信号は、直接送信所31に配信可能な放送TS信号まで生成してSNG地上局61に供給される。SNG地上局61は、この放送TS信号を衛星回線58を介して地方局送信所31に伝送する。
【0041】
地方局送信所31では、非常用バックアップのために設置された衛星受信アンテナ71と、衛星通信用受信機56と、受信された放送TS信号内の番組特定情報を当該地方局に割り当てられたIDに書き換えるためのPSI書換装置72と、当該地方局送信所31の地上放送用送信設備(伝送路符号化部32、デジタル変調部33、送信部37、送信アンテナ38)とを備え、SNG地上局61から伝送された当該地方局向け放送TS信号を変換・変調し、当該地方局の放送区域向け放送信号を送信アンテナ38から無線送信する。
【0042】
キー局又は準キー局のスタジオ設備予備系81Bにおいては、災害時にスタジオ局11が使用できなくなった地方局の放送プログラムを制作し、送信可能な信号形式である放送TS信号まで変換する。この放送TS信号に多重化されている番組特定情報は、特に当該地方局に割り当てられたID番号でなくてもよい。この放送TS信号は、SNG地上局61、衛星回線58を介して、地方局送信所31に設置された衛星受信アンテナ71と衛星通信用受信機56に配信される。
【0043】
衛星通信用受信機56から供給される放送TS信号に多重化されている番組特定情報は、スタジオ設備予備系81Bにおいて生成されているため、キー局又は準キー局の放送区域に割り当てられたID番号に設定されている。そのため、そのまま伝送路符号化部32に供給して地上波放送を行うと、当該地方局の放送区域に割り当てられたID番号と異なるため、放送区域内の一般家庭のTV受信機が当該地方局の放送信号と認識できないので、視聴者は当該地方局の放送サービスを受けることができない。
本実施例では、衛星通信用受信機56から供給される放送TS信号に多重化されている番組特定情報をPSI書換装置72において当該地方局に割り当てられたID番号に書き換えるので、当該地方局の放送区域内の受信機は、平常サービス時と同じID番号であることを認識して正常に受信することが可能になった。
【0044】
また、
図1には、地方局送信所31が1個しか図示されていないが複数としてもよい。複数の送信所31に対して1個の放送TS信号を放送TS信号配信回線28を介して配信することによって、複数の送信所31で当該放送区域をカバーできる。
従って、非常災害時バックアップのため当該放送区域内の複数の送信所31に衛星受信アンテナ71と衛星通信用受信機56とPSI書換装置72とを備えることにより、衛星回線58を介して直接放送TS信号を配信することができるので、放送TS信号配信回線28が罹災した場合においても平常時と同様な放送サービスを提供することができる。
【0045】
更に、
図1では、当該対象区域が1つしか記載されていないが、放送区域が異なる複数の地方局の送信所に同様なバックアップ設備を設置し、各PSI書換装置72において書き換えるID番号を各放送区域向けの平常時のID番号とすることにより、各区域で平常時と同様の受信が可能となる。また、
図1では、当該地方局向けの番組を作るためにスタジオ設備予備系81Bを例示しているが、スタジオ設備現用系81Aで制作された自社送信所向けの放送TS信号を当該地方局の送信所に送出することも可能である。
【0046】
日本の地上デジタルテレビジョン放送では、その運用規定(ARIB TR−B14)[非特許文献2]によって、それぞれの地域の放送事業者名毎に、ネットワークID、TSID、サービスIDが割り当てられている。これらのID番号はNITで定義され、ARIB TR−B14によれば受信機が記憶することを推奨している。NITに記載したID番号と各TSパケットとの関連付けを行うために、プログラムアソシエーションテーブル(PAT:Program Association Table)と、プログラムマップテーブル(PMT:Program Map Table)という2つの構造体を参照する。
図2は、NIT,PAT及びPMTの関係を示す番組特定情報の構成図である。なお、TS信号の構造は、ARIB TR−B14[非特許文献2]で定義されている。
【0047】
図2に示すように、NITは、ネットワーク識別、TS識別、サービス識別(サービスタイプ)、送信パラメータの各情報を含んでいる。PATは、NITのTS識別情報、サービス識別情報からそれぞれ抽出するTS識別情報,プログラムナンバー情報(すなわち、PMT PID)を含んでいる。そして、PMTは、PATのプログラムナンバー情報から抽出するプログラムナンバー情報(使用するPID)を含んでいる。
【0048】
図3は、PSI書換装置72の詳細構成を示す。PSI書換装置72は、当該地方局のID番号(NIT)などの番組特定情報を記憶するPSI記憶部101、放送TS信号のパケットの種別を検出するPID検出部102、NITの書き換えを行うNIT書換部103、PATの書き換えを行うPAT書換部104、PMTの書き換えを行うPMT書換部105、ID番号の書き換えに伴い誤り検出パリティ(以下、CRC32と略記する。)を再計算するCRC32生成部106A,106B,106C、伝送するパケットを選択するパケット選択部107、放送TSのリードソロモン誤り訂正符号(RSECC)を再計算するRSECC部108を備える。
【0049】
キー局又は準キー局から伝送された放送TS信号は、PID検出部102に供給され、PID検出部102において、放送TS信号のパケットの種別(パケットID)が検出される。PID検出部102において検出されたパケット種別情報は、NIT書換部103、PAT書換部104、PMT書換部105、パケット選択部107にそれぞれ供給される。
一方、NIT書換部103、PAT書換部104、PMT書換部105には、PSI記憶部101に記憶された当該地方局のID番号(ネットワーク識別情報、TSID、サービス識別情報)がそれぞれ供給される。各書換部103,104,105の出力は、CRC32生成部106A,106B,106Cを介してパケット選択部107に供給される。パケット選択部107の出力は、RSECC部108を介して当該放送区域の放送TS信号として出力される。
【0050】
図4は、PSI書換装置72におけるTSパケット書き換えを示す。書き換え後のNITは、PSI記憶部101にあらかじめ記憶させておく。また、他の番組特定情報の書き換えに必要なID番号(PAT、PMT)はNITから抽出される。
キー局又は準キー局から送られてきた放送TS信号に、パケットID(以下、PIDという。)に基づいてNITを示すTSパケットが見つかった場合、NIT書換部103において、送られてきたパケットの情報(NIT)を、PSI記憶部101に記憶されていたNITに書き換える。そして、CRC32生成部106Aにおいて、書き換えたNITに合わせてCRC32を再計算し、パケット選択部107において、書き換えたパケットが選択されて、RSECC部108において、書き換えたTSパケットのリードソロモン誤り訂正符号(RSECC)を再計算してパリティが付け直される。
【0051】
PIDに基づいてPATを示すTSパケットが見つかった場合、PAT書換部104において、送られてきたパケットの情報(PATのTSID及びプログラムナンバー)を、PSI記憶部101に記憶されていたPATのTSID及びプログラムナンバーに書き換える。そして、NITの場合と同様に、CRC32生成部106Bにおいて、書き換えたPATに合わせてCRC32を再計算し、パケット選択部107において、書き換えたパケットが選択されて、RSECC部108において、書き換えたTSパケットのリードソロモン誤り訂正符号を再計算してパリティ付け直される。
【0052】
PIDに基づいてPMTを示すTSパケットが見つかった場合、PMT書換部105において、送られてきたパケットの情報(PMTのプログラムナンバー)を、PSI記憶部101に記憶されていたPMTのプログラムナンバーに書き換える。そして、NITの場合と同様に、CRC32生成部106Cにおいて、書き換えたPMTに合わせてCRC32を再計算し、パケット選択部107において、書き換えたパケットが選択されて、RSECC部108において、書き換えたTSパケットのリードソロモンエラー訂正符号を再計算してパリティ付け直される。
また、提供サービスの種類に応じて、番組特定情報のほか番組配列情報についてもこれらの識別情報の書き換えが行われる。このことで、他の地域の放送TS信号を、当該地方局の放送TS信号に変換することができる。そして、書き換えないパケット(映像パケット、音声パケット)はそのまま出力される。
【0053】
以上、説明したように、実施例1では、衛星通信用受信機56から供給される放送TS信号に多重化されている番組特定情報がPSI書換装置72において当該地方局に割り当てられたID番号に書き換えられるので、当該地方局の放送区域内の受信機は平常サービス時と同じID番号であることを認識して正常に受信することができる。このため、当該地方局の放送区域内において、受信機がネットワークIDを認識できず受信不能となる事態が防止できる。
つまり、異常事態発生時、当該放送区域内の受信機を周波数スキャンさせて各周波数に対応するネットワークIDを取り直すというような、ある程度の電子機器に精通した操作を一般家庭の受信者に要請することが解消できる。また、情報が必要な時に周波数スキャンなどの作業で重要な情報の受信を失敗することを防止できる。更に、周波数スキャン後に取得したネットワークIDは当該地域の放送局のものではないため、ステーションマーク等は違うものが表示されることによる受信者の混乱を防止できる。
【0054】
さらに、異常事態発生時に周波数スキャンさせてネットワークIDを取り直した受信機は、災害から復旧し平常時の放送サービスに戻った場合、平常時とは異なるネットワークIDを受信機内に記憶しているため、非常用設備での運用開始時と同様にネットワークIDの認識ができないので、このような事態を回避するためには、再度周波数スキャンを行い、改めて平常時運用の時のネットワークIDを取得し直す必要がある。このように異なる地域向けに同一の放送プログラム信号を配信した場合、平常時とは異なるネットワークIDが送信されるため、当該地域の受信機に受信障害が発生する、もしくは通常運用復帰時に受信障害が発生する等の問題を生じるおそれがあった。
【0055】
このような対策の場合には、多重化装置を含む代替放送のプログラム編成機能を複数準備する必要があるが、災害地域に放送プログラム信号を伝送するための衛星回線を複数準備する必要があるなど、設備・運用コストが嵩むという欠点を有していた。とりわけ災害状況に関する取材などの放送素材の伝送にSNGが要請されるため、通信回線の利用が制限される危険性が大きかった。また、複数プログラムを制作・編成するための人員も確保する必要があり、大きな負担となる弊害もあった。
本発明の完成により、これらの課題が解決できた。
【0056】
以上、説明したように、実施例1では、激甚災害などで複数の地方局の放送プログラム制作、伝送機能が喪失した場合においても、1つのバックアップで対応することが可能となる。従って、従来技術のバックアップで対応した場合に比べて、バックアップに必要な通信回線数を大幅に削減することが可能である。特に、激甚災害の場合は、平常時に比べて通信需要が急増するため、こうした通信回線需要の削減はコスト削減以上に効果が大きいと期待できる。
【0057】
−実施例2−
図5は、実施例2に係るデジタル放送システムの構成を示す。
図5に示すデジタル放送システム2は、
図1のSNG地上局61、地方局送信所31の衛星受信アンテナ71及び衛星通信用受信機56で構成されるバックアップ用衛星通信システムの代わりに、放送局が番組中継などで使用する運搬可能なマイクロ波送受信システム(FPU:フィールド・ピックアップ・ユニット)(以下、「FPU」ということがある。)を使用する場合を示す。
【0058】
つまり、
図1のSNG地上局61の代わりにFPU送信部82、地方局送信所31の衛星受信アンテナ71と衛星通信用受信機56の代わりにFPU受信部83で構成され、FPU送信部82は、マイクロ波送受信アンテナ84とマイクロ波送受信機85を備え、FPU受信部83は、マイクロ波送受信アンテナ86とマイクロ波送受信機87を備える。
本実施例では、スタジオ設備予備系81Bで制作された放送TS信号は、FPU送信部82に供給され、マイクロ波送受信機85においてマイクロ波デジタル変調信号に変換された後、マイクロ波送受信アンテナ84から地方局送信所31に運び込まれたFPU受信部83に伝送される。
【0059】
地方局送信所31のFPU受信部83のマイクロ波送受信アンテナ86で受信された信号は、マイクロ波送受信機87において復調され、PSI書換装置72に供給される。
本実施例では、激甚災害時に特に需要が高まる衛星通信システムを使用することなしに、実施例1と同様な効果を得ることができる。。
−変形例−
実施例2のFPUの代わりに、光ファイバー通信システムなど衛星通信システム以外の通信システムを使用してもよい。
【0060】
−実施例3−
図6は、実施例3に係るデジタル放送システムの構成を示す。
図6に示すデジタル放送システム3では、スタジオ局11に非常用バックアップとして放送TS信号圧縮装置73がSNG地上局61の前段に、地方局送信所31には放送TS信号伸長装置74が衛星通信用送受信機56の後段にそれぞれ配置される。本実施例では、放送TS信号を伝送する代わりに、無効パケットを削除してビットレートを圧縮した放送TS信号である圧縮放送TS信号を伝送する。
【0061】
放送TS信号は、わが国ではビットレートの値が、32.50…Mbpsに規定されており、このビットレートに合わせるように、無効パケットが放送TS信号に挿入される。無効パケット信号は情報を伝送していないため送信所に伝送しなくても放送業務に支障は生じない。無効パケットを削除した伝送ビットレートは、フルセグ・プラス(+)・ワンセグの場合約21Mbpsになるため、大幅なビットレートの削減ができる。
キー局又は準キー局のスタジオ設備予備系81Bで制作された放送TS信号は、放送TS信号圧縮装置73において放送TS信号から無効パケットが削除されて圧縮放送TS信号が生成される。一方、地方局送信所31に伝送された圧縮放送TS信号は、放送TS信号伸長装置74において圧縮放送TS信号に無効パケットが再度挿入されて規定のビットレートに合わされる。
【0062】
図7は、放送TS信号と圧縮放送TS信号の構成を示す。必要パケット121と無効パケット122で構成される放送TS信号は、スタジオ局11内の多重化装置21Bと地方局送信所31内の伝送路符号化部32(
図6参照)のインターフェースを統一化するために、信号の伝送速度を放送波の任意の伝送パラメータ設定に対して一定の伝送速度(例えば、6MHz放送帯域の場合、32.5…Mbps)に設定されている。このため、必要パケット121に無効パケット122を追加して伝送速度を合わせている。従って、無効パケット122は、放送TS信号配信回線28を介して伝送する必要はなく、地方局送信所31において伝送路符号化部32の前段において再生すればよい。
【0063】
図7下段は、放送TS信号圧縮装置73(
図6参照)の出力端の信号である圧縮放送TS信号を示し、無効パケット122が削除された状態で伝送される。無効パケット122の挿入位置は、放送波の伝送パラメータにより、一位的に決定されるため、送信所31に備えられる放送TS信号伸長装置74において挿入位置情報なしで再度挿入することができる。従って、放送TS信号伸長装置74から伝送路符号化部32に供給される信号は放送TS信号となる。
このように、放送TS信号圧縮装置73と放送TS信号伸長装置74を使用することにより、所定の効果を損ねることなく放送TS信号伝送回線28における所要帯域幅を圧縮することができる。
【0064】
本実施例では、衛星回線58を介して伝送される圧縮放送TS信号のビットレートは21Mbps強となり、所要衛星通信回線帯域幅を大幅に削減することが可能となる。これに伴って所要送信電力の削減も可能となる。
また、本実施例において、衛星回線58を介して伝送される信号は圧縮放送TS信号であるが、送り側のスタジオ設備予備系81Bの出力端及び受信側のPSI書換装置72の入力端における信号形式は放送TS信号であるため、既存設備との信号インターフェース規格は実施例1の場合と同じである。
【0065】
以上、説明したように、本実施例では、自然災害などで複数の地方局の放送プログラム制作、伝送機能が喪失した場合においても、1つのバックアップで対応することが可能となるので、バックアップに必要な通信回線数を大幅に削減することが可能であり、更なる所要通信回線帯域幅の削減が可能となる。また、所要送信電力を削減することができるので、削減された帯域幅、電力をSNG地上局など別の設備運用に割り当てることができる。
【0066】
−実施例4−
図8は、実施例4に係るデジタル放送システムの構成を示す。
図8に示すデジタル放送システム4は、放送TS信号に対しての、フレーム同期処理、PID検出処理、クロック再生処理等のトランスポートストリーム信号処理機能を共に有している放送TS信号伸長装置74とPSI書換装置72(
図6参照)の機能を統合して、これら共通の回路機能を共有化又は一体化し、回路の削減を図っている。
具体的には、放送TS信号伸長装置74とPSI書換装置72(
図6参照)の代わりに、両装置を一体化した放送TS信号伸張・PSI書換装置75が地方局送信所31に備えられている。その他の構成は、デジタル放送システム3(
図6参照)と同じである。
本実施例では、地方局送信所31に伝送された圧縮放送TS信号は、放送TS信号伸張・PSI書換装置75において圧縮放送TS信号に再度無効パケットが挿入されて規定のビットレートに合わされ、更に、当該地方局に割り当てられたID番号に書き換えられる。
【0067】
図9は、放送TS信号伸張・PSI書換装置75の詳細構成を示す。放送TS信号伸張・PSI書換装置75は、TSクロックを再生しTSパケットを抽出するTS入力インターフェイス部111、TS入力インターフェイス部111の後段に接続されて放送TS信号のパケットの種別を検出するPID検出部102、PID検出部102の後段に接続されて放送TSの復元に必要なデータを抽出する放送TS抽出部113、放送TS抽出部113の後段に接続されて無効パケットを挿入する無効パケット挿入部114、放送TS抽出部113の後段に接続されて放送TS信号のデータから放送TSクロックを再生する放送TSクロック再生部115を備える。
【0068】
更に、当該地方局のID番号(NIT)などの番組特定情報を記憶しておくPSI記憶部116、無効パケット挿入部114の後段に接続されてPSI記憶部116に記憶された当該地方局のID番号などの番組特定情報を書き換えるPSI書換部117、PSI書換部117の後段に接続されてリードソロモン誤り訂正符号(RSECC)を再計算するRSECC部108、RSECC生成部108の後段に接続されたTS出力インターフェイス部119を備える。
【0069】
TS入力インターフェイス部111において抽出されたTSクロックはPID検出部102及び放送TS抽出部113の各ブロックにそれぞれ供給される。また、放送TSクロック再生部115において再生されたTSクロックは無効パケット挿入部114、PSI書換部117、RSECC生成部108及びTS出力インターフェイス部119の各ブロックにそれぞれ供給される。
ここで、TS入力インターフェイス部111、PID検出部102、RSECC生成部108、TS出力インターフェイス部119は、放送TS信号伸長装置74とPSI書換装置72に共通しているので、放送TS信号伸張・PSI書換装置75として一体化することによって装置を簡易化することができ、安価になる。
【0070】
以下、
図9を参照しながら、放送TS信号伸張・PSI書換装置75の動作を説明する。
図9において、スタジオ局11の放送TS信号圧縮装置73(
図8参照)によって無効パケットを削除し、伝送用TSに変換され、衛星回線58を介して地方局送信所31に伝送された圧縮放送TS信号は、放送TS信号伸張・PSI書換装置75のTS入力インターフェイス部111に入力され、TSクロックの再生及びTSパケットの抽出が行われる。更に、PID検出部102においてPIDを監視してパケットの種別が検出される。放送TS抽出部113において放送TSの復元に必要なデータが抽出される。抽出された放送TS信号のデータから放送TSクロック再生部115においてクロックが生成され、このクロックに従って無効パケット挿入部114において無効パケットが挿入される。
【0071】
無効パケット挿入部114の出力は、リードソロモン誤り訂正符号パリティを除き、伸張後の放送TS信号が復元されている。この放送TS信号の番組特定情報を書き換え、RSECC部108においてリードソロモン誤り訂正符号パリティが計算し直され、パリティが付け直され、当該放送区域の放送TS信号が完成する。そして、完成した当該放送区域放送TS信号が出力され、次段の伝送路符号化部32(
図8参照)に供給される。
以上、説明したように、本実施例では、実施例3と同様な効果を得ることができるとともに、更なる回路機能の削減が可能となる。そして、回路を削減した分だけ送信所に設置する機器コスト及び設置容積を削減することができる。
【0072】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明の構成及び上記説明に記載されていないその他のシステム構成や、放送プログラム制作や放送TS信号生成のバックアップ方法、放送TS信号及び圧縮放送TS信号の伝送放送、番組特定情報の書き換え方法等についても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づいて種々の変形、修正、改良を加えて実施できる。