特開2015-155386(P2015-155386A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-155386糖アルコール球形造粒物集合体及びその製造方法、並びに錠剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-155386(P2015-155386A)
(43)【公開日】2015年8月27日
(54)【発明の名称】糖アルコール球形造粒物集合体及びその製造方法、並びに錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20060101AFI20150731BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150731BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150731BHJP
【FI】
   A61K47/10
   A61K9/20
   A61K9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-30329(P2014-30329)
(22)【出願日】2014年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】石崎 康雄
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA94
4C076AA95
4C076DD38
4C076FF06
4C076FF31
4C076FF56
4C076GG12
4C076GG13
(57)【要約】
【課題】平均粒子径が小さく、口腔内崩壊錠に用いた場合に口腔内でのざらつきを低減することができ、また、薬物との反応性が低く、更には粒度分布がシャープな糖アルコール球形造粒物集合体、及びその効率的な製造方法、並びに該糖アルコール球形造粒物集合体を用いた錠剤を提供すること。
【解決手段】平均粒子径が100μm未満であり、粒度分布により得られるσの値が1.1〜1.5である糖アルコール球形造粒物集合体、及び平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒する糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が100μm未満であり、粒度分布により得られるσの値が1.1〜1.5であることを特徴とする糖アルコール球形造粒物集合体。
【請求項2】
糖アルコールが、マンニトールである請求項1に記載の糖アルコール球形造粒物集合体。
【請求項3】
口腔内崩壊錠用である請求項1から2のいずれかに記載の糖アルコール球形造粒物集合体。
【請求項4】
平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒することを特徴とする糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法。
【請求項5】
糖アルコールの結晶粒子が解砕されたものである請求項4に記載の糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の糖アルコール球形造粒物集合体と、食品素材又は活性成分とを含むことを特徴とする錠剤。
【請求項7】
口腔内崩壊錠である請求項6に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品などの基材として好適な糖アルコール球形造粒物集合体及びその効率的な製造方法、並びに該糖アルコール球形造粒物集合体を用いた錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品や食品などの基材として使用される球形造粒物が各種提供されている。前記球形造粒物は、その表面に食品素材又は活性成分(以下、「薬物」と称することがある)を被覆した製剤として使用されたり、あるいは更にその表面に機能性コーティング層が形成された製剤、あるいはカプセルに内包された製剤などとして使用されたりしている。
【0003】
例えば、口腔内崩壊錠(以下、「OD錠」と称することがある)として、前記球形造粒物の表面に、薬物等含有層と、1層以上の放出制御層とをこの順に被覆した放出制御粒子(以下、「放出制御顆粒」と称することがある)を、結晶セルロース等の結合剤、クロスポビドン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤などと共に打錠して調製された錠剤が用いられている。
前記OD錠では、前記放出制御粒子の粒子径が200μm以上の場合、口腔内で、ざらつきが生じてしまうという問題がある。
【0004】
これまでに、前記球形造粒物の製造方法として、例えば、糖アルコールの造粒粒子を核とし、遠心転動装置を用い、糖アルコールの粉末を散布しながら、糖アルコール水溶液を噴霧して球形造粒物を製造する方法(特許文献1参照)、糖アルコールの粉末を、遠心転動装置を用い、糖アルコール水溶液を噴霧して球形造粒物を製造する方法(特許文献2参照)、結晶粒の角を削って得た結晶粒であって、粒子径が50μm〜1,000μmの結晶粒を中心核粒子とし、遠心転動装置を用い、糖アルコール等を水に溶解、又は分散させた液体を噴霧して球形造粒物を製造する方法(特許文献3参照)などが提案されている。
しかしながら、薬物等含有層と放出制御層とを有しつつ、放出制御粒子の粒子径を200μm未満とし得る大きさの球形造粒物及びその製造方法は、未だ開発されていないのが現状である。
【0005】
また、前記球形造粒物を前記放出制御粒子などに用いる場合、薬物の放出時間を可能な限り正確に制御するには各粒子の膜厚を均一にするのが望ましく、これを実現するには前記球形造粒物の粒度分布がシャープであることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−92403号公報
【特許文献2】特開2001−10979号公報
【特許文献3】特開2009−155215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、平均粒子径が小さく、口腔内崩壊錠に用いた場合に口腔内でのざらつきを低減することができ、また、薬物との反応性が低く、更には粒度分布がシャープな糖アルコール球形造粒物集合体、及びその効率的な製造方法、並びに該糖アルコール球形造粒物集合体を用いた錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、放出制御粒子などの核粒子となる球形造粒物の粒子径が100μm以上の場合、前記放出制御粒子などの粒子径が、200μm以上になりやすいことを知見した。また、平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒することにより、平均粒子径が小さく、粒度分布がシャープな糖アルコール球形造粒物集合体を効率良く製造できること、及び該糖アルコール球形造粒物集合体を核粒子として用いることにより、前記放出制御粒子などの粒子径を200μm未満とすることができることを知見した。
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 平均粒子径が100μm未満であり、粒度分布により得られるσの値が1.1〜1.5であることを特徴とする糖アルコール球形造粒物集合体である。
<2> 糖アルコールが、マンニトールである前記<1>に記載の糖アルコール球形造粒物集合体である。
<3> 口腔内崩壊錠用である前記<1>から<2>のいずれかに記載の糖アルコール球形造粒物集合体である。
<4> 平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒することを特徴とする糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法である。
<5> 糖アルコールの結晶粒子が解砕されたものである前記<4>に記載の糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法である。
<6> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖アルコール球形造粒物集合体と、食品素材又は活性成分とを含むことを特徴とする錠剤である。
<7> 口腔内崩壊錠である前記<6>に記載の錠剤である。
<8> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖アルコール球形造粒物集合体の表面に、食品素材又は活性成分を含有する層と、放出制御層とがこの順に被覆されたことを特徴とする放出制御顆粒である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、平均粒子径が小さく、口腔内崩壊錠に用いた場合に口腔内でのざらつきを低減することができ、また、薬物との反応性が低く、更には粒度分布がシャープな糖アルコール球形造粒物集合体、及びその効率的な製造方法、並びに該糖アルコール球形造粒物集合体を用いた錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(糖アルコール球形造粒物集合体)
本発明の糖アルコール球形造粒物集合体は、糖アルコールを含む。前記糖アルコール球形造粒物集合体は、糖アルコールのみからなることが好ましい。
前記糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法により、好適に製造することができる。
以下、本発明の糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法と併せて、本発明の糖アルコール球形造粒物集合体についても説明する。
【0012】
<糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法>
本発明の糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法は、平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒する工程(以下、「造粒工程」と称することがある)を含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0013】
<<造粒工程>>
前記造粒工程は、平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒する工程である。
【0014】
−糖アルコールの結晶粒子−
前記糖アルコールの結晶粒子としては、平均粒子径が15μm超50μm未満であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記糖アルコールは、分子中に還元基を有していないことから、錠剤に含まれる他成分との反応性が比較的低い点で、有利である。
前記糖アルコールの結晶粒子は、市販品を用いてもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0015】
前記糖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マンニトール(以下、「D−マンニトール」と称することがある)、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、1種単独が好ましい。
前記糖アルコールの中でも、吸湿性が低く、また活性成分との反応性が低い点で、マンニトールが好ましい。
【0016】
前記糖アルコールの結晶粒子の平均粒子径としては、15μm超50μm未満であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、18μm〜25μmが好ましい。
前記好ましい範囲内であると、平均粒子径が100μm未満であり、粒度分布により得られるσの値が1.1〜1.5である糖アルコール球形造粒物集合体を効率良く製造することができる点で、有利である。
本発明において、平均粒子径とは、体積基準の粒度分布の累積50%の粒子径をいう。前記平均粒子径は、公知の装置により測定し、算出することができ、例えば、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA、日機装株式会社製)により測定し、算出することができる。
【0017】
前記糖アルコールの結晶粒子は、解砕されたものであることが好ましい。前記解砕の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して行うことができ、例えば、破砕式造粒機、パワーミルP−3(株式会社ダルトン製)を用いて行う方法などが挙げられる。
【0018】
−糖アルコール溶液−
前記糖アルコール溶液は、糖アルコールを含有する液(以下、「結合液」と称することがある)である。
前記糖アルコール溶液における糖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記結晶粒子の糖アルコールと同様のものが挙げられるが、前記結晶粒子の糖アルコールと同一のものを使用することが好ましい。
【0019】
前記糖アルコール溶液における糖アルコールの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜
30質量%がより好ましく、15質量%〜25質量%が特に好ましい。前記糖アルコール溶液における糖アルコールの含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、糖アルコール溶液が糖アルコール球形造粒物集合体を効率良く製造出来る結合力をもつ。
【0020】
前記糖アルコール溶液の溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水が好ましい。前記糖アルコール溶液における水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
前記糖アルコール溶液の調製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記糖アルコールと、水と混合し、攪拌等する方法などが挙げられる。
【0022】
−造粒−
前記造粒工程に用いる遠心転動装置(以下、「遠心転動造粒装置」と称することがある)としては、糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒することができれば、特に制限はなく、公知の装置を適宜選択することができる。
前記遠心転動装置の一例としては、処理容器底部にほぼ水平に回転する平滑な回転円板を回転させる回転軸と、処理容器の内壁部と前記回転円板の円周部に位置する縁部との間に形成される環状の空隙であるスリットと、前記スリットより処理容器内にスリットエアーを供給するためのスリットエアー供給装置と、処理容器内の前記糖アルコールの結晶粒子へ前記糖アルコール溶液を噴霧するためのスプレーノズルとを備えるものが挙げられ、該装置の具体例としては、CFグラニュレーター(フロイント産業株式会社製)、遠心転動型造粒コーティング装置、グラニュレックス(フロイント産業株式会社製)などが挙げられる。
また、前記遠心転動装置は、上記構成以外の構成を備えた装置であってもよく、例えば、転動流動層造粒コーティング装置、スパイラフロー(フロイント産業株式会社製)などを用いることもできる。
前記遠心転動装置の操作条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記回転円板の回転数は、その直径が360mm程度のものであれば、150rpm〜250rpm程度が好ましい。
【0023】
前記造粒工程では、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒する。
前記糖アルコール溶液を前記糖アルコールの結晶粒子へ噴霧する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、使用する遠心転動装置に設けられた噴霧手段、例えば、スプレーガン、噴霧ノズルなどから噴霧する方法などが好適に挙げられる。
なお、このとき、前記噴霧の条件としては、特に制限はなく、公知の条件を採用することができ、目的に応じてその噴霧量、噴霧する霧粒子(ミスト)の大きさ、噴霧時間などを適宜選択することができる。前記噴霧にスプレーガンを使用する場合、そのスプレー空気圧としては、例えば、0.1MPa〜0.5MPa程度が好ましい。
【0024】
前記糖アルコール溶液の噴霧量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶粒子の質量に対する前記糖アルコールの固形分の質量として、1質量%〜10質量%が好ましく、2質量%〜9質量%がより好ましく、5質量%〜8質量%が特に好ましい。前記糖アルコール溶液の噴霧量が、前記特に好ましい範囲内であると、平均粒子径100μm未満である糖アルコール造粒物集合体を効率良く製造することができる点で、有利である。
【0025】
本発明の製造方法では、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒するため、平均粒子径100μm未満である糖アルコール造粒物集合体を効率良く製造することができる点で、有利である。
【0026】
前記造粒工程では、前記遠心転動装置を用いた造粒の後に、流動層装置(以下、「流動層造粒装置」と称することがある)を用いて、前記造粒された糖アルコール球形粒をコーティングすることが好ましい。
前記流動層装置としては、特に制限はなく、公知の装置を適宜選択することができる。
前記流動層装置の一例としては、流動エアーを供給し、前記造粒物を流動させるための流動エアー供給装置と、容器内の前記造粒物に糖アルコール溶液噴霧するためのスプレーノズルとを備えるものが挙げられ、該装置の具体例としては、フローコーター(フロイント産業株式会社製)などが挙げられる。
また、前記流動層装置は、上記構成以外の構成を備えた装置であってもよく、例えば、転動流動層造粒コーティング装置、スパイラフロー(フロイント産業株式会社製)、遠心転動型造粒コーティング装置、グラニュレックス(フロイント産業株式会社製)などを用いることもできる。
前記流動層装置の操作条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記コーティングの際の温度としては、排気温度として20℃〜40℃程度が好ましい。
【0027】
前記流動層装置を用いたコーティングに用いる糖アルコール溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記遠心転動装置による造粒の際の糖アルコール溶液と同じものを用いることができる。
前記糖アルコール溶液の噴霧量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記造粒された糖アルコール球形粒に対して、糖アルコール溶液の固形分で10質量%とすることができる。
【0028】
以上の工程により、平均粒子径が100μm未満であり、粒度分布により得られるσの値が1.1〜1.5である糖アルコール球形造粒物集合体を得ることができる。
なお、前記造粒工程の後に、必要に応じて、前記造粒工程で得られた球形造粒物集合体を篩過してもよい。前記篩過に用いるふるいとしては、例えば、53μm及び106μmのふるいを用いることができる。
【0029】
<糖アルコール球形造粒物集合体>
−平均粒子径−
本発明の糖アルコール球形造粒物集合体の平均粒子径としては、100μm未満であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、45μm〜95μmが好ましく、50μm〜90μmがより好ましく、60μm〜80μmが特に好ましい。
前記糖アルコール球形造粒物集合体の平均粒子径が、前記特に好ましい範囲内であると、後述する口腔内崩壊錠に用いた場合に、口腔内でのざらつきをより低減することができる点で、有利である。
【0030】
−粒度分布により得られるσの値−
本発明の糖アルコール球形造粒物集合体の粒度分布により得られるσの値としては、1.1〜1.5であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.1〜1.4が好ましく、1.1〜1.3がより好ましい。
前記糖アルコール球形造粒物集合体の粒度分布により得られるσの値が、前記より好ましい範囲内であると、後述する錠剤に用いた際に、活性成分などの放出時間をより正確に制御できる点で、有利である。
本発明において、粒度分布により得られるσの値とは、以下の式(1)により求められる標準偏差をいう。
σ=D84.13/D50 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、「D84.13」は、粉体の体積基準の粒度分布の累積カーブを求めたとき、その累積カーブが84.13%となる点の粒子径(μm)を表し、「D50」は、粉体の体積基準の粒度分布の累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径(μm)を表す。
前記粒度分布により得られるσの値は、公知の装置により測定し、算出することができ、例えば、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA、日機装株式会社製)により測定し、算出することができる。
【0031】
−真球度−
本発明の糖アルコール球形造粒物集合体の真球度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.70以上が好ましく、0.80以上がより好ましい。
前記糖アルコール球形造粒物集合体の真球度値が、前記より好ましい範囲内であると、後述する錠剤に用いた際に、活性成分などの放出時間をより正確に制御できる点で、有利である。
本発明において、前記真球度は、糖アルコール球形造粒物の短径/長径比で表したものである。前記短径/長径比とは、糖アルコール球形造粒物の短軸と長軸との比であり、真球度を示す目安となる。短軸、長軸の比は、糖アルコール球形造粒物を試料台にランダムに置き、写真撮影し、50個の糖アルコール球形造粒物について、長軸の長さ(長径)と、長軸の中点に直交する短軸の長さ(短径)とを各々測定し、各々について長径に対する短径の比を求め、50個の平均値で示したものである。
【0032】
本発明の糖アルコール球形造粒物集合体は、平均粒子径が小さく、粒度分布がシャープであり、薬物との反応性が低いことから、後述する口腔内崩壊錠における放出制御顆粒の核粒子として好適に用いることができる。
【0033】
(錠剤)
本発明の錠剤は、本発明の糖アルコール球形造粒物集合体と、食品素材又は活性成分とを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記錠剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、口腔内崩壊錠として好適に用いることができる。
【0034】
−糖アルコール球形造粒物集合体−
前記糖アルコール球形造粒物集合体は、上述した本発明の糖アルコール球形造粒物集合体である。
前記錠剤における前記糖アルコール球形造粒物集合体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20質量%〜70質量%とすることができる。
【0035】
−食品素材又は活性成分−
−−食品素材−−
前記食品素材としては、食品に用いることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコサミン、アミノ酸、ビタミン類、コンドロイチン、ミネラル類、コラーゲン、ウコン、イチョウ葉、ブルーベリー、大豆イソフラボン、ローヤルゼリー、クロレラなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記錠剤における前記食品素材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
−−活性成分−−
前記活性成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高血圧薬、狭心薬、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬、鎮痛鎮痙薬などに使用される活性成分などが挙げられ、具体的には、アセトアミノフェン、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド、アカルボースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記錠剤における前記活性成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、流動化剤、甘味剤、コーティング剤、吸湿剤、除湿剤、色素、矯味矯臭剤、溶解補助剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記錠剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
前記賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳糖、結晶セルロース、D−マンニトールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースNa、カルボキシメチルセルロースCa等)等のセルロース誘導体、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ等のデンプンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、硬化油などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶セルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記流動化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、親水性シリカ、疎水性シリカ、ケイ酸カルシウム、アルキルホスフェイト(PAP)、水溶性高分子化合物、無水リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記甘味剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスパルテーム、グルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、マルトース、ラクトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、パラチノースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記コーティング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、エチルセルロース、セラックなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
−態様−
前記錠剤は、前記糖アルコール球形造粒物集合体を核粒子とし、その表面に食品素材又は活性成分を含有する層(以下、「薬物等含有層」と称することがある)と、機能性コーティング層とがこの順に被覆された被覆顆粒を含む態様が好ましい。
前記機能性コーティング層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、放出制御層、マスキング層などが挙げられる。
前記被覆顆粒の中でも、前記核粒子の表面に、前記薬物含有層と、前記放出制御層とをこの順に被覆した放出制御顆粒が好ましい。
【0046】
前記被覆顆粒を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撹拌造粒、遠心転動造粒、流動層造粒、通常型又は通気型コーティングパンを用いる方法などが挙げられる。
前記被覆顆粒の製造に用いる装置としては、特に制限はなく、公知の装置を適宜選択して使用して製造することができ、例えば、複合型流動層造粒コーティング装置、スパイラフロー(フロイント産業株式会社製)などが挙げられる。前記複合型流動層造粒コーティング装置の操作条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
前記薬物等含有層の被覆量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記核粒子の質量に対する前記食品素材又は活性成分の量を10質量%とするなどが挙げられる。
また、前記機能性コーティング層の被覆量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記薬物等含有層を形成した核粒子(以下、「薬物顆粒」と称することがある)の質量に対する前記コーティング剤の量を30質量%とするなどが挙げられる。
【0048】
前記被覆顆粒は、本発明の糖アルコール球形造粒物集合体を核粒子として用いているため、その粒子径を200μm以下にすることが可能となる。そのため、例えば、前記放出制御顆粒を口腔内崩壊錠に用いた場合には、口腔内でのざらつきを低減することができるので、口腔内崩壊錠に好適に用いることができる。
【0049】
前記錠剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被覆顆粒と、前記賦形剤と、前記結合剤と、前記崩壊剤と、前記滑沢剤とを混合後、打錠する方法などが挙げられる。この際、使用する混合機や打錠機などは一般的に用いられるものを使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1:糖アルコール球形造粒物集合体の製造)
<結晶粒子の調製>
結晶粒子として、D−マンニトール(平均粒子径20μm)を解砕したものを調製した。なお、前記解砕は、以下のようにして行った。
−解砕−
直径3mmの細孔(パンチング)を施したスクリーンを設置した破砕式造粒機、パワーミルP−3(株式会社ダルトン製)に前記D−マンニトール結晶粒子を投入した。
【0052】
<造粒>
遠心転動造粒装置、CFグラニュレーター CF−360(フロイント産業株式会社製)の造粒容器に前記D−マンニトール結晶粒子を投入した。スリットエアーを供給しながら回転円板を230rpmで回転させ、糖アルコール溶液として、D−マンニトールの20質量%水溶液を、前記結晶粒子の質量に対するD−マンニトールの固形分の質量が7.6質量%になるまで12mL/分間の流速で噴霧造粒し、湿潤状態のD−マンニトール球形粒を得た。
【0053】
次に、前記湿潤状態のD−マンニトール球形粒を流動層造粒装置、フローコーター FL−5(フロイント産業株式会社製)の造粒容器に入れ、排気温度30℃で乾燥しながら、D−マンニトールの20質量%水溶液944mLを20mL/分間の速度で噴霧コーティングした。
【0054】
前記噴霧コーティング後、53μmと106μmのふるいで篩過し、真球度0.84、平均粒子径69μm、粒度分布により得られるσの値が1.22である糖アルコール球形造粒物集合体を76%の収率で得た。
前記平均粒子径、及び粒度分布により得られるσの値は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、マイクロトラックHRA(日機装株式会社製)により、測定し、算出した。
前記真球度は、糖アルコール球形造粒物の短径/長径比で表したものである。前記短径/長径比とは、糖アルコール球形造粒物の短軸と長軸との比であり、真球度を示す目安となる。短軸、長軸の比は、糖アルコール球形造粒物を試料台にランダムに置き、写真撮影し、50個の糖アルコール球形造粒物について、長軸の長さ(長径)と、長軸の中点に直交する短軸の長さ(短径)とを各々測定し、各々について長径に対する短径の比を求め、50個の平均値で示したものである。
【0055】
(比較例1:糖アルコール球形造粒物集合体の製造)
<結晶粒子の調製>
実施例1と同様にして、D−マンニトールの結晶粒子を調製した。
【0056】
<造粒>
遠心転動造粒装置、CFグラニュレーター CF−360(フロイント産業株式会社製)の造粒容器に前記D−マンニトール結晶粒子を投入した。スリットエアーを供給しながら回転円板を190rpmで回転させ、糖アルコール溶液として、D−マンニトールの20質量%水溶液を、前記結晶粒子の質量に対するD−マンニトールの固形分の質量が2.5質量%になるまで12mL/分間の流速で噴霧造粒し、湿潤状態のD−マンニトール球形粒を得た。引き続き、平均粒子径9μmのD−マンニトール粉末を前記結晶粒子の質量に対して120質量%になるまで34g/分間の速度で散布しつつ、D−マンニトールの20質量%水溶液を8mL/分間の流速で噴霧造粒し、湿潤状態のD−マンニトール球形粒を得た。
【0057】
次に、実施例1と同様にして、前記湿潤状態のD−マンニトール球形粒を噴霧コーティングした。
【0058】
前記噴霧コーティング後、53μmと106μmのふるいで篩過した結果、粒子径が100μm未満の糖アルコール球形粒は、ほとんど得られなかった。
【0059】
(実施例2:糖アルコール球形造粒物集合体の製造)
実施例1の造粒において、D−マンニトールの20質量%水溶液を、結晶粒子の質量に対するD−マンニトールの固形分の質量が7.6質量%になるまで12mL/分間の流速で噴霧造粒していた点を、D−マンニトールの20質量%水溶液を、結晶粒子の質量に対するD−マンニトールの固形分の質量が3.7質量%になるまで18mL/分間の流速で噴霧造粒したこと以外は、実施例1と同様にして、糖アルコール球形造粒物集合体を製造し、真球度0.84、平均粒子径75μm、粒度分布により得られるσの値が1.19である糖アルコール球形造粒物集合体を37%の収率で得た。
【0060】
以上の結果から、平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒することにより、平均粒子径が100μm未満であり、粒度分布により得られるσの値が1.1〜1.5である糖アルコール球形造粒物集合体を効率良く製造できることが示された。
前記糖アルコール球形造粒物集合体は、平均粒子径が100μm未満であるため、該糖アルコール球形造粒物集合体を用いることにより、放出制御粒子の粒子径を200μm未満とすることができ、従来、口腔内崩壊錠の放出制御粒子に用いた場合に生じていた口腔内でのざらつきを低減することができる。