特開2015-155492(P2015-155492A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-155492(P2015-155492A)
(43)【公開日】2015年8月27日
(54)【発明の名称】溶融接着性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20060101AFI20150731BHJP
   C09J 201/04 20060101ALI20150731BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20150731BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20150731BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20150731BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20150731BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20150731BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150731BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J201/04
   C09J11/08
   C08L27/12
   C08L67/03
   C08L71/00
   C08L81/06
   C08J5/18CEW
   C08J5/18CEZ
   C08J5/18CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-30258(P2014-30258)
(22)【出願日】2014年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(72)【発明者】
【氏名】三好 勝
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F071AA26
4F071AA27
4F071AA43
4F071AA48
4F071AA64
4F071BB03
4F071BB04
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC17
4J002BD12W
4J002BD13W
4J002BD14W
4J002BD15W
4J002BD16W
4J002BD18W
4J002CF16X
4J002CF18X
4J002CN03Y
4J002GQ00
4J004AA03
4J004AA07
4J004AB03
4J004BA02
4J004FA04
4J004FA05
4J040DA181
4J040EE001
4J040JB01
4J040LA07
4J040LA08
4J040LA09
4J040MA02
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】フッ素樹脂に特有の耐熱性、耐候性、耐薬品性、剥離性、低誘電特性等の優れた特性を有すると共に、異種材料、特に銅箔との溶融接着性が優れる溶融接着性フィルムを提供する。
【解決手段】溶融接着性フィルムが、フッ素樹脂、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなり、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる分散粒子がフッ素樹脂中に分散する構造を有し、上記分散粒子の平均粒子径が1〜10μmであり、溶融接着性フィルムの厚さ方向断面において、1辺が50μmの正方形を単位面積とするとき、上記単位面積中の上記分散粒子の個数が10〜30個である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる溶融接着性フィルムにおいて、
液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる分散粒子がフッ素樹脂中に分散する構造を有し、上記分散粒子の平均粒子径が1〜10μmであり、
前記溶融接着性フィルムの厚さ方向断面において、1辺が50μmの正方形を単位面積とするとき、上記単位面積中の上記分散粒子の個数が10〜30個である溶融接着性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂に特有の耐熱性、耐候性、耐薬品性、剥離性、低誘電特性等の優れた特性を有すると共に、異種材料、特に金属材料との溶融接着性が優れる溶融接着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、耐熱性、耐候性、耐薬品性、剥離性、低誘電特性等の優れた特性を有し、成形体に成形されるだけでなく、被覆材料としても使用され、異種材料との積層が検討されてきた。しかしながら、フッ素樹脂の表面エネルギーは小さく、フッ素樹脂と異種材料の接着は困難である。
【0003】
そこで、金属材料などの基材とフッ素樹脂を積層させる方法として、従来、一般的に、基材上に、基材及びフッ素樹脂の両方との接着性を有する接着層を形成し、その上にフッ素樹脂を積層する方法が検討されてきた。例えば、特許文献1には、(a)テトラフルオロエチレン/パーフルオロオレフィン共重合体と、ポリアミドイミド等の非溶融加工性結合剤と、ポリエーテルスルホン等の溶融加工性結合剤とを含むプライマ粉末が基材上に被着されてプライマ層が形成される工程、(b)テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体を含むオーバーコート粉末がプライマ層上に被着されてオーバーコート層が形成される工程、プライマ層とオーバーコート層の両方が被着された後に(c)基材が焼き付けられる工程を含む方法が開示されている。
【0004】
本発明の発明者は、上述の従来技術の方法を用いて、テトラフルオロエチレン/パーフルオロオレフィン共重合体の1種であるテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、非溶融加工性結合剤の1種であるポリアミドイミド(PAI)、溶融加工性結合剤の1種であるポリフェニレンスルフィド(PPS)が、50/25/25の質量比で含まれるプライマ粉末をSUS基材上に被着させてプライマ層を形成し、その後、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含むオーバーコート粉末を当該プライマ層上に被着させてオーバーコート層を形成し、焼き付けを行ってSUS基材上に離型表面を形成した。そして、当該離型表面の断面を電子顕微鏡で観察した。その結果、従来の一般的な方法では、下記(a)及び(b)のメカニズムで、基材とフッ素樹脂とが接着していることが確認された。
【0005】
(a)フッ素樹脂3(FEP)粉末、PAI5粉末及びPPS4粉末を含むプライマ粉末がプライマ層(III)としてSUS基板(IV)上に塗布され(図1)、焼き付けられて、オーバーコート層(V)との親和性が高いフッ素樹脂3(FEP)相と、SUS基板(IV)との親和性が高いPAI5相及びPPS4相とからなるプライマ層(III)が形成された(図2)。(b)その後形成されたオーバーコート層(V)のPFAの一部は、プライマ層(III)のフッ素樹脂3(FEP)相と相溶し(図3)、上記されるとおり、PFAからなるオーバーコート層(V)が、フッ素樹脂3(FEP)相、PPS4相及びPAI5相からなるプライマ層(III)を介してSUS基板(IV)上に形成された。
【0006】
しかし、上述した従来の一般的な接着は、フッ素樹脂から相分離した結合剤相が基材と結合することによって接着力を得ているため、プライマ層と基材との接着強度を十分に向上させるためには、結合剤樹脂が相当量必要である。例えば、先述の先行技術文献1に開示される方法では、プライマ粉末中のテトラフルオロエチレン/パーフルオロオレフィン共重合体の配合比は、70質量%以下である。そのため、プライマ層のテトラフルオロエチレン/パーフルオロオレフィン共重合体に由来する特性は損なわれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2010−517747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近、フッ素樹脂に特有の耐熱性、耐候性、耐薬品性、剥離性、低誘電特性等の優れた特性を有すると共に、異種材料、特に銅箔との溶融接着性が優れる溶融接着性フィルムが要求されてきていたが、そのような溶融接着性フィルムは実現されていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、フッ素樹脂に特有の耐熱性、耐候性、耐薬品性、剥離性、低誘電特性等の優れた特性を有すると共に、異種材料、特に銅箔との溶融接着性が優れる溶融接着性フィルムの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フッ素樹脂、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなり、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる特定平均粒子径の分散粒子が特定濃度でフッ素樹脂中に分散されている溶融接着性フィルムが、上記特性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、フッ素樹脂、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなり、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる分散粒子がフッ素樹脂中に分散する構造を有し、上記分散粒子の平均粒子径が1〜10μmであり、溶融接着性フィルムの厚さ方向断面において、1辺が50μmの正方形を単位面積とするとき、上記単位面積中の上記分散粒子の個数が10〜30個である溶融接着性フィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の溶融接着性フィルムは、フッ素樹脂に特有の耐熱性、耐候性、耐薬品性、剥離性、低誘電特性等の優れた特性を有すると共に、異種材料、特に銅箔との溶融接着性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術のプライマ粉末が塗布された基材を模式的に示す図
図2】従来技術のプライマ層が形成された基材を模式的に示す図
図3】従来技術のオーバーコート層がプライマ層上に形成された基材を模式的に示す図
図4】本発明の溶融接着性フィルムの厚さ方向断面のSEM写真
図5】本発明の分散粒子がフッ素樹脂中に分散する構造の模式図
図6】本発明の分散粒子が銅箔の凹部にはまり込む様子を示す模式図
図7】本発明の分散粒子のアンカー効果を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の溶融接着性フィルムを構成するフッ素樹脂の具体例は、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン‐ビニリデンフロライド共重合体(THV)などの熱溶融性フッ素樹脂である。好ましいフッ素樹脂は、ポリエーテルスルホンのスルホン基と類似する構造であるエーテル基を有するテトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)である。これらのフッ素樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0013】
フッ素樹脂は、末端基がフッ素化剤によってフッ素化処理された末端基安定化処理フッ素樹脂であっても、フッ素化処理による末端基安定化処理されていないフッ素樹脂あってもよく、両者の混合物であってもよい。好ましいフッ素樹脂は、フッ素化処理による末端基安定化処理されていないフッ素樹脂である。フッ素樹脂の末端基が安定化処理されていないフッ素樹脂は、末端基安定化処理されたフッ素樹脂に比べて、他樹脂との相溶性及び銅箔との濡れ性を改善する。
【0014】
本発明の溶融接着性フィルムは、液晶ポリマー(以下、「LCP」と言うことがある)を含む。LCPは、熱溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶高分子である。本発明の溶融接着性フィルムを構成するLCPの具体例は、ポリプラスチックス社製ベクトラ、住友化学株式会社製スミカスーパー、JX日鉱日石エネルギー株式会社製ザイダー、上野製薬株式会社製UENO LCP、東レ株式会社製シベラスなどである。好ましいLCPは、融点が高く、耐熱性に優れるものである。LCPは、フッ素樹脂と金属材料との積層体を使用する用途では、高温になるところに使用されることが多く、例えば銅箔との接着で使用する場合、その用途は基板が多いため、ハンダ耐熱がひとつの基準とされる。LCPの用途が共晶ハンダの場合、融点が240℃以上のLCPが好ましい。また、剛直な直線上の分子構造を有する全芳香族性ポリエステルが、使用するLCPとして、好ましい。
【0015】
全芳香族性ポリエステルは、剛直な直線状の分子構造により、線膨張が小さく、高強度であるという特性を示す。そのため、後述する本発明のフッ素樹脂フィルムの接着構造において、上述のようなLCP及びポリエーテルスルホンで構成される分散粒子が一旦銅箔表面に引っかかると、熱収縮による変動が小さく、かつ高強度であるため、高いアンカー効果が得られる。また、全芳香族性ポリエステルは融点が高く、フッ素樹脂の融点に近くなるためフッ素樹脂中に分散させる時の熱劣化を抑えることが出来る。
【0016】
本発明の溶融接着性フィルムは、ポリエーテルスルホンを含む。使用するポリエーテルスルホンの具体例は、BASFジャパン株式会社製ウルトラゾーン、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社レーデル、住友化学株式会社製スミカエクセルなどである。好ましいポリエーテルスルホンは、液晶ポリマーのフッ素樹脂中への分散性の向上と、溶融接着性フィルムの異種材料、特に銅箔との溶融接着性の向上の観点から、分子末端に官能基を有するポリエーテルスルホンである。分子末端に官能基を有するポリエーテルスルホンは、分子末端に官能基を有しないポリエーテルスルホンに比べて、他樹脂との相溶性及び銅箔との接着性がより高い。
【0017】
本発明の溶融接着性フィルムは、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる分散粒子がフッ素樹脂中に分散する構造を有している。フッ素樹脂のSP値は約13(MJ/m3)、液晶ポリマーのSP値は約20(MJ/m3)、ポリエーテルスルホンのSP値は約18(MJ/m3)である。これら3つの樹脂は比較的相溶性が高く、特にSP値が近い液晶ポリマーとポリエーテルスルホンとが共に分散粒子を形成してフッ素樹脂中に分散しており、後述するように、上記分散粒子は、ポリエーテルスルホンからなる小粒子が、液晶ポリエステルからなる大粒子の表面に付着しているような構造をしている。
【0018】
図4は、本発明の溶融接着性フィルムの厚さ方向断面のSEM写真である。図4を基に本発明のメカニズムを考察する。図5図6及び図7は、本発明の溶融接着性フィルムにおいて推察される基材との接着メカニズムを示す図である。図5は、液晶ポリマー1及びポリエーテルスルホン2からなる分散粒子がフッ素樹脂3中に分散する構造を模式的に示している。銅箔(II)表面には、成形時に生じる微細な凹凸が存在する。図5に模式的に
示される本発明の溶融接着性フィルム(I)が溶融され、銅箔(II)に接着されると、上記分散粒子が銅箔(II)の凹部にはまり込む(図6)。銅箔(II)に接着されたフィルムが冷却されると、収縮率が大きいフッ素樹脂3部分が収縮し、上記分散粒子が上記凹部にかみつく(図7)。このアンカー効果により、本発明の溶融接着性フィルム(I)は、銅箔(II)に強固に接着される。従来の一般的な接着では、結合剤樹脂が基材及びフッ素樹脂と面で接着するのに対し、本発明では分散粒子が接着点となり、多数の点で接着する構造となる。
【0019】
上述のように、アンカー効果を発揮し接着点となる、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンの分散粒子の平均粒子径及び単位面積当たりの分散粒子の個数が、本発明の溶融接着性フィルムにおいて、接着強度に大きく影響する。上記分散粒子の平均粒子径は1〜10μmである。上記分散粒子の平均粒子径が小さすぎたり、大きすぎたりすると、銅箔凹部との上記アンカー効果が十分に得られず、溶融接着性フィルムと異種材料との接着力が小さくなる。
【0020】
液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる上記分散粒子は、溶融接着性フィルムの厚さ方向断面において、1辺が50μmの正方形を単位面積としたとき、前記単位面積中に10〜30個となるようにフッ素樹脂中に分散している。上記分散粒子が基材との接着点となるため、上記分散粒子の数が少なすぎると、溶融接着性フィルムと異種材料との接着力が小さくなる。上記分散粒子の数があまりにも多い溶融接着性フィルムの作製は困難である。
【0021】
フッ素樹脂、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンの総重量を基準にして、液晶ポリマーの好ましい配合量は1〜10質量%、ポリエーテルスルホンの好ましい配合量は1〜5質量%である。液晶ポリマーとポリエーテルスルホンとを合わせた好ましい配合量は2〜15質量%である。先述のように、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンは、アンカー効果を発揮する上記分散粒子の構成成分であり、その分散粒子の平均粒子径及び単位面積当たりの分散粒子の個数が、接着強度に大きく影響する。上述した範囲で配合することにより、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンの分散粒子径が1〜10μmであり、溶融接着性フィルムの厚さ方向断面において、一辺が50μmの正方形を単位面積とするときの単位面積中の分散粒子の数を10〜30個に容易に調整することが出来る。液晶ポリマーとポリエーテルスルホンの配合量が多すぎると、上記分散粒子径及び分散粒子の数を調整することが困難になり、上記分散粒子径は大きく、分散粒子の数は少なくなり、銅箔凹部とのアンカー効果が十分に得られなくなる。液晶ポリマーとポリエーテルスルホンの配合量がさらに多くなると、その接着構造は従来技術と何ら変わらないものとなり、十分な接着力が得られない上に、溶融接着性フィルムのフッ素樹脂に由来する特性が損なわれる。
【0022】
本発明の溶融接着性フィルムは、フッ素樹脂、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる組成物を押出成形、プレス成形など任意の成形方法で成形して得られる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0024】
実施例1〜8及び比較例1〜7
フッ素樹脂(三井デュポンフロロケミカル社製PFA 340-J)、液晶ポリマー(ポリプラスチックス社製LCP A950、融点280℃)、ポリエーテルスルホン(BASF社製E-2020P)を、表1及び2に示される配合比で、ローラミキサ型混練装置(東洋精機製作所製ラボプラストミル モデル 30C120 )に投入し、ローラ回転数30rpm、温度360℃で10分間混練した。その後、得られた樹脂(組成物)を当該混練装置から取り出し、340℃で熱プレスして、厚さ0.1mm、50mm画の溶融接着性フィルム試料を作製した。
【0025】
溶融接着性フィルムと銅箔の接着強度の測定
得られた溶融接着性フィルム試料を18μmの厚さの両面圧延銅箔で挟み込み、340℃で加熱・圧着し、銅箔付き試料を得た。上記銅箔付き試料の接着強度を、島津製作所製オートグラフで180°剥離試験により測定した。その結果を表1及び2に示す。
【0026】
溶融接着性フィルム中の分散粒子の平均粒子径と分散密度の測定
上記溶融接着性フィルム試料の厚さ方向断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した(倍率:1000倍、撮影範囲:260μm×110μm)。その断面SEM写真上で任意の50μm角の範囲に観察される分散粒子の同一方向で最大幅を計測し、分散粒子の粒子径を算術平均して平均粒子径を求めた。中心が上記断面SEM写真上にある全ての分散粒子の個数を計測した。その結果を表1及び2に示す。
【0027】
溶融接着性フィルム中の分散粒子の組成の確認
分散粒子の組成については以下の方法にて確認した。フィルム断面にカーボンを蒸着し、SEM上でエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて観察した。ポリエーテルスルホンはS原子、フッ素樹脂に関してはF原子によるスペクトルを確認し、それぞれの原子の存在位置からポリエーテルスルホン及びフッ素樹脂を同定した。どちらも確認されないものを液晶ポリマーと判断した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
上記溶融接着性フィルム試料の厚さ方向の断面SEM写真と、EDXの結果から、液晶ポリマー及びポリエーテルスルホンからなる分散粒子は、ポリエーテルスルホンからなる小粒子が、液晶ポリエステルからなる大粒子の表面に付着しているような構造をした粒子の状態で、フッ素樹脂中に分散していることが確認できた。
【0031】
表1の結果から、実施例1〜8の溶融接着性フィルムと銅箔との接着強度は十分に高かった。ここで、必要とされる接着強度は、9N/cm以上である。分散粒子の平均粒子径が10μm以上であり、分散粒子の数が10個以下である比較例1及び4の溶融接着性フィルムと銅箔との接着強度は低かった。分散粒子の数が少なすぎる比較例2及び3の溶融接着性フィルムと銅箔の接着強度も低かった。フッ素樹脂のみからなる比較例5の溶融接着性フィルム、液晶ポリマーのみからなる比較例6の溶融接着性フィルム、ポリエーテルスルホンのみからなる比較例7の溶融接着性フィルムと銅箔との接着強度も低く、それぞれの樹脂単体での銅箔への接着性は低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の溶融接着性フィルムは、フッ素樹脂製のものと異種材料、特に銅箔が接着される際の媒体として好適に使用される。
【符号の説明】
【0033】
1…液晶ポリマー、2…ポリエーテルスルホン、3…フッ素樹脂、4…PPS、5…PAI、(I)…溶融接着性フィルム、(II)…溶融接着性フィルム、(III)…プライマ層、(IV)…SUS基板、(V)…オーバーコート層
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図4