【解決手段】音場補正フィルタ生成方法では、スピーカより出力された測定信号と、リスニングエリアで集音して取得した収録信号とに基づいて、リスニングエリアの周波数特性を算出し、算出された周波数特性の分散αと重み変換値k1とに基づいて、重み量WtをWt=10
式により算出し、算出された重み量Wtに、周波数特性に基づいて算出される平均周波数特性をレベルオフセットした基準音響特性を乗算して、音場補正フィルタを生成することを特徴とする。
室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、収録信号取得手段が、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、
前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、
該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、
該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性に基づいて、分散算出手段が、周波数特性の分散αを算出する分散算出ステップと、
前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、
該平均周波数特性算出ステップにおいて算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、
前記分散算出ステップにおいて算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、重み量算出手段が、重み量Wtを、
Wt=10(−α×k1)
より算出する重み量算出ステップと、
該重み量算出ステップにおいて算出された重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタ生成手段が、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成ステップと
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成方法。
室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、収録信号取得手段が、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、
前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、
該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、
該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性に基づいて、差値算出手段が、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして算出する差値算出ステップと、
前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、
該平均周波数特性算出ステップにおいて算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、
前記差値算出ステップにおいて算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、重み量算出手段が、重み量Wtを、
Wt=10(−β×k2)
より算出する重み量算出ステップと、
該重み量算出ステップにおいて算出された重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタ生成手段が、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成ステップと
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成方法。
車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、収録信号取得手段が、前記チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、
前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、
該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、
該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、分散算出手段が、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出ステップと、
該分散算出ステップにおいて算出された分散αに基づいて、帯域判定手段が、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定ステップと、
前記インパルス応答算出ステップにおいて算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、平均インパルス応答算出手段が、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答Aijを算出する平均インパルス応答算出ステップと、
予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をDiとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQiとして、平均インパルス応答Aijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答Diを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQiを要素とする行列[Q]とに基づいて、低域補正フィルタ算出手段が、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出ステップと、
前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、
前記平均周波数特性算出ステップにおいて算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、
前記分散算出ステップにおいて算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、重み量算出手段が、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10(−α×k1)
より算出する重み量算出ステップと、
該重み量算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、中高域補正フィルタ生成手段が、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成ステップと
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成方法。
車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、収録信号取得手段が、前記チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、
前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、
該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、
該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、分散算出手段が、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出ステップと、
該分散算出ステップにおいて算出された分散αに基づいて、帯域判定手段が、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定ステップと、
前記インパルス応答算出ステップにおいて算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、平均インパルス応答算出手段が、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答Aijを算出する平均インパルス応答算出ステップと、
予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をDiとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQiとして、平均インパルス応答Aijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答Diを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQiを要素とする行列[Q]とに基づいて、低域補正フィルタ算出手段が、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出ステップと、
前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、差値算出手段が、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして前記チャンネル毎に算出する差値算出ステップと、
前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、
前記平均周波数特性算出ステップにおいて算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、
前記差値算出ステップにおいて算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、重み量算出手段が、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10(−β×k2)
より算出する重み量算出ステップと、
該重み量算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、中高域補正フィルタ生成手段が、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成ステップと
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成方法。
請求項4又は請求項5に記載の音場補正フィルタ生成方法により生成された前記低域補正フィルタと前記中高域補正フィルタとを用いて、前記車室内の音場補正を行う音場補正装置であって、
オーディオ信号を出力するオーディオ再生手段と、
該オーディオ再生手段により出力されたオーディオ信号をフーリエ変換することにより、前記オーディオ信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段と、
該フーリエ変換手段により周波数領域の信号に変換されたオーディオ信号に対して、前記低域補正フィルタを用いてフィルタ処理を行う低域補正手段と、
前記フーリエ変換手段により周波数領域の信号に変換された前記オーディオ信号に対して、前記中高域補正フィルタを用いてフィルタ処理を行う中高域補正手段と、
前記低域補正手段によりフィルタ処理が行われた低域のオーディオ信号と、前記中高域補正手段によりフィルタ処理が行われた中高域のオーディオ信号とを合成する合成手段と、
該合成手段により合成されたオーディオ信号を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、
該逆フーリエ変換手段により逆フーリエ変換されたオーディオ信号を、前記車室内に設置される前記スピーカより出力させるアンプ手段と、
を有することを特徴とする音場補正装置。
室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、
前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記複数の収録信号とに基づいて、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、
該インパルス応答算出手段により算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、
該周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性に基づいて、周波数特性の分散αを算出する分散算出手段と、
前記周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、
該平均周波数特性算出手段により算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより、基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、
前記分散算出手段により算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、重み量Wtを、
Wt=10(−α×k1)
より算出する重み量算出手段と、
該重み量算出手段により算出された重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成手段と
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成装置。
室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、
前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記複数の収録信号とに基づいて、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、
該インパルス応答算出手段により算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、
該周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性に基づいて、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして算出する差値算出手段と、
前記周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、
該平均周波数特性算出手段よりに算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、
前記差値算出手段により算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、重み量Wtを、
Wt=10(−β×k2)
より算出する重み量算出手段と、
該重み量算出手段により算出された重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成手段と
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成装置。
車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、該チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、
前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、
該インパルス応答算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、
該周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出手段と、
該分散算出手段により算出された分散αに基づいて、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定手段と、
前記インパルス応答算出手段により算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答Aijを算出する平均インパルス応答算出手段と、
予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をDiとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQiとして、平均インパルス応答Aijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答Diを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQiを要素とする行列[Q]とに基づいて、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出手段と、
前記周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、
前記平均周波数特性算出手段により算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、
前記分散算出手段により算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10(−α×k1)
より算出する重み量算出手段と、
該重み量算出手段により算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成手段と
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成装置。
車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、該チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、
前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、
該インパルス応答算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、
該周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出手段と、
該分散算出手段により算出された分散αに基づいて、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定手段と、
前記インパルス応答算出手段により算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答Aijを算出する平均インパルス応答算出手段と、
予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をDiとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQiとして、平均インパルス応答Aijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答Diを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQiを要素とする行列[Q]とに基づいて、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出手段と、
前記周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして前記チャンネル毎に算出する差値算出手段と、
前記周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、
前記平均周波数特性算出手段により算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、
前記差値算出手段により算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10(−β×k2)
より算出する重み量算出手段と、
該重み量算出手段により算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成手段と
を有することを特徴とする音場補正フィルタ生成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、同じリスニングエリア内であっても、測定ポイントによって周波数特性に大きく変動が生ずる傾向がある。このため、リスニングエリア内の平均的な音響特性に基づいて補正フィルタを求めて音源より出力されるオーディオ信号の補正を行っても、リスニングエリアによっては、却って過剰な補正となってしまう場合があった。このため、全てのリスニングエリアにおいて聴感上の音質向上を同時に得ることが困難であるという問題があった。
【0007】
さらに、低域のオーディオ信号の波長は、車室空間のサイズに比べて比較的長い波長となる傾向がある。例えば、100Hzの波長は、伝播速度が340m/secの場合に3.4mとなり、一般的な車室内におけるスピーカからリスニングエリアまでの間(スピーカとリスニングエリアとの間をチャンネル間という)の距離よりも長くなってしまう。このように、波長が長くなる低域のオーディオ信号では、チャンネル間の長さが1波長以内の長さとなるため、周波数におけるディップの発生に加えて、位相特性にも影響を及ぼす傾向があった。このため、低域においてチャンネル間で相関性が生じるおそれがあり、それぞれ独立して扱うことが難しかった。
【0008】
従って、特定のチャンネルの音場補正だけでは、複数のリスニングエリアにおいて、所望の低域音響特性を得ることが容易ではなく、音質改善を期待することがより難しいという問題があった。また、上述した特許文献2により提案される方法は、十分に広い空間を備えたリスニングルーム(リスニング環境)を対象とした方法であるため、リスニングエリアにおける反射波の干渉とチャンネル間の相関性との双方の問題は考慮されていない。このため、車室空間のように狭い空間(リスニング環境)では、効果的な音質向上を望むことが難しかった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みて成されたものであり、リスニングエリア内の複数の測定ポイントにおいて周波数特性に大きく変動が生ずる傾向があるリスニング環境であっても、適切な音場補正処理を行うことにより、全てのリスニングエリアにおいて聴感上の音質向上を図ることが可能な音場補正装置、音場補正フィルタ生成装置および音場補正フィルタ生成方法を提供することを第1の課題とする。
【0010】
また、本願発明は、車室空間のように反射波による干渉が生じやすく、さらにチャンネル間の位相特性の影響が生じやすい環境において、帯域毎に最適な補正を行うことにより、リスニングエリアにおける音質向上を実現することが可能な音場補正装置、音場補正フィルタ生成装置および音場補正フィルタ生成方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る音場補正フィルタ生成方法は、室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、収録信号取得手段が、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性に基づいて、分散算出手段が、周波数特性の分散αを算出する分散算出ステップと、前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、該平均周波数特性算出ステップにおいて算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、前記分散算出ステップにおいて算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、重み量算出手段が、重み量Wtを、
Wt=10
(−α×k1)
より算出する重み量算出ステップと、該重み量算出ステップにおいて算出された重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタ生成手段が、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る音場補正フィルタ生成方法は、室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、収録信号取得手段が、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性に基づいて、差値算出手段が、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして算出する差値算出ステップと、前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、該平均周波数特性算出ステップにおいて算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、前記差値算出ステップにおいて算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、重み量算出手段が、重み量Wtを、
Wt=10
(−β×k2)
より算出する重み量算出ステップと、該重み量算出ステップにおいて算出された重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタ生成手段が、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成ステップとを有することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る音場補正装置は、上述した音場補正フィルタ生成方法により生成された前記音場補正フィルタを用いて、前記室内の音場補正を行う音場補正装置であって、オーディオ信号を出力するオーディオ再生手段と、該オーディオ再生手段により出力されたオーディオ信号をフーリエ変換することにより、前記オーディオ信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段と、該フーリエ変換手段により周波数領域の信号に変換されたオーディオ信号に対して、前記音場補正フィルタを用いてフィルタ処理を行うフィルタ処理手段と、該フィルタ処理手段によりフィルタ処理されたオーディオ信号を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、該逆フーリエ変換手段により逆フーリエ変換されたオーディオ信号を、前記室内に設置される前記スピーカより出力させるアンプ手段とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る音場補正フィルタ生成装置は、室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記複数の収録信号とに基づいて、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、該インパルス応答算出手段により算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、該周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性に基づいて、周波数特性の分散αを算出する分散算出手段と、前記周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、該平均周波数特性算出手段により算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより、基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、前記分散算出手段により算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、重み量Wtを、
Wt=10
(−α×k1)
より算出する重み量算出手段と、該重み量算出手段により算出された重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成手段とを有することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係る音場補正フィルタ生成装置は、室内に設置されるスピーカより出力された測定信号を、前記室内のリスニングエリアにおける複数の測定ポイントで集音することにより、前記リスニングエリアで複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記複数の収録信号とに基づいて、前記リスニングエリアにおける複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、該インパルス応答算出手段により算出された前記リスニングエリアにおける前記複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、該周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性に基づいて、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして算出する差値算出手段と、前記周波数特性算出手段により算出された前記複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、該平均周波数特性算出手段よりに算出された前記平均周波数特性を、信号レベルの平均値が0[dB]となるようにレベルオフセット処理することにより基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、前記差値算出手段により算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、重み量Wtを、
Wt=10
(−β×k2)
より算出する重み量算出手段と、該重み量算出手段により算出された重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた基準音響特性とを乗算することにより、音場補正フィルタを生成する音場補正フィルタ生成手段とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る音場補正フィルタ生成方法、音場補正装置および音場補正フィルタ生成装置では、分散算出手段において、リスニングエリアにおける周波数特性の分散を求めることにより、あるいは、差値算出手段において、リスニングエリアにおける最大値と最小値との差を差値として求めることにより、測定ポイント毎の周波数特性の変動状態を求めることができる。そして、重み量算出手段において、分散あるいは差値に基づいて、周波数特性の変動が大きい場合に、重み量が小さくなるようにして重み量を求めて音場補正フィルタを生成する。このようにして生成される音場補正フィルタを用いて音場補正処理を行うことにより、リスニングエリア内の複数の測定ポイントにおいて周波数特性が大きく変動するリスニング環境であっても、過剰な補正を抑制して適切な音場補正処理を行うことができ、全てのリスニングエリアにおいて聴感上の音質向上を図ることが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る音場補正フィルタ生成方法は、車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、収録信号取得手段が、前記チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、分散算出手段が、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出ステップと、該分散算出ステップにおいて算出された分散αに基づいて、帯域判定手段が、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定ステップと、前記インパルス応答算出ステップにおいて算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、平均インパルス応答算出手段が、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答A
ijを算出する平均インパルス応答算出ステップと、予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をD
iとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQ
iとして、平均インパルス応答A
ijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答D
iを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQ
iを要素とする行列[Q]とに基づいて、低域補正フィルタ算出手段が、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出ステップと、前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、前記平均周波数特性算出ステップにおいて算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、前記分散算出ステップにおいて算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、重み量算出手段が、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10
(−α×k1)
より算出する重み量算出ステップと、該重み量算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、中高域補正フィルタ生成手段が、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成ステップとを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る音場補正フィルタ生成方法は、車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、収録信号取得手段が、前記チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得ステップと、前記測定信号と、前記収録信号取得ステップにおいて取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、インパルス応答算出手段が、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出ステップと、該インパルス応答算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出ステップと、該周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、分散算出手段が、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出ステップと、該分散算出ステップにおいて算出された分散αに基づいて、帯域判定手段が、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定ステップと、前記インパルス応答算出ステップにおいて算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、平均インパルス応答算出手段が、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答A
ijを算出する平均インパルス応答算出ステップと、予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をD
iとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQ
iとして、平均インパルス応答A
ijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答D
iを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQ
iを要素とする行列[Q]とに基づいて、低域補正フィルタ算出手段が、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出ステップと、前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、差値算出手段が、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして前記チャンネル毎に算出する差値算出ステップと、前記周波数特性算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、平均周波数特性算出手段が、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出ステップと、前記平均周波数特性算出ステップにおいて算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、レベルオフセット手段が、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセットステップと、前記差値算出ステップにおいて算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、重み量算出手段が、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10
(−β×k2)
より算出する重み量算出ステップと、該重み量算出ステップにおいて算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセットステップにおいて求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、中高域補正フィルタ生成手段が、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成ステップとを有することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る音場補正装置は、上述した音場補正フィルタ生成方法により生成された前記低域補正フィルタと前記中高域補正フィルタとを用いて、前記車室内の音場補正を行う音場補正装置であって、オーディオ信号を出力するオーディオ再生手段と、該オーディオ再生手段により出力されたオーディオ信号をフーリエ変換することにより、前記オーディオ信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段と、該フーリエ変換手段により周波数領域の信号に変換されたオーディオ信号に対して、前記低域補正フィルタを用いてフィルタ処理を行う低域補正手段と、前記フーリエ変換手段により周波数領域の信号に変換された前記オーディオ信号に対して、前記中高域補正フィルタを用いてフィルタ処理を行う中高域補正手段と、前記低域補正手段によりフィルタ処理が行われた低域のオーディオ信号と、前記中高域補正手段によりフィルタ処理が行われた中高域のオーディオ信号とを合成する合成手段と、該合成手段により合成されたオーディオ信号を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、該逆フーリエ変換手段により逆フーリエ変換されたオーディオ信号を、前記車室内に設置される前記スピーカより出力させるアンプ手段と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る音場補正フィルタ生成装置は、車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、該チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、該インパルス応答算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、該周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出手段と、該分散算出手段により算出された分散αに基づいて、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定手段と、前記インパルス応答算出手段により算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答A
ijを算出する平均インパルス応答算出手段と、予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をD
iとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQ
iとして、平均インパルス応答A
ijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答D
iを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQ
iを要素とする行列[Q]とに基づいて、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出手段と、前記周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、前記平均周波数特性算出手段により算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、前記分散算出手段により算出された分散αと、予め設定される重み変換値k1とを用いて、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10
(−α×k1)
より算出する重み量算出手段と、該重み量算出手段により算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成手段とを有することを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明に係る音場補正フィルタ生成装置は、車室内に設置されるj個のスピーカのいずれかより測定信号を出力し、前記車室内のi箇所の着座位置をリスニングエリアiとして、各リスニングエリアの複数の測定ポイントでスピーカjより出力された前記測定信号を集音することにより、測定信号を出力したスピーカjと集音を行ったリスニングエリアiとの組み合わせをチャンネルとして、該チャンネル毎に複数の収録信号を取得する収録信号取得手段と、前記測定信号と、前記収録信号取得手段により取得された前記チャンネル毎の複数の収録信号とに基づいて、前記チャンネル毎に複数のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、該インパルス応答算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数のインパルス応答をフーリエ変換することにより、前記チャンネル毎に複数の周波数特性を算出する周波数特性算出手段と、該周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、前記チャンネル毎に周波数特性の分散αを算出する分散算出手段と、該分散算出手段により算出された分散αに基づいて、前記分散αの変動の大きい中高域と、前記分散αの変動が小さい低域と、該低域以下の周波数であって前記分散αの値が大きくなる再生不可領域とを求める帯域判定手段と、前記インパルス応答算出手段により算出された複数のインパルス応答を用いて前記チャンネル毎に平均化処理を行うことにより、j個の前記スピーカとi箇所の前記リスニングエリアとの対応数となるj×i個の平均インパルス応答A
ijを算出する平均インパルス応答算出手段と、予め設定される各リスニングエリアの理想的なインパルス応答をD
iとし、算出対象となるリスニングエリア毎の低域補正フィルタをQ
iとして、平均インパルス応答A
ijを要素とする行列[A]と、理想的なインパルス応答D
iを要素とする行列[D]と、低域補正フィルタQ
iを要素とする行列[Q]とに基づいて、
[A][Q]=[D]
の関係行列式より、低域補正フィルタを算出する低域補正フィルタ算出手段と、前記周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性に基づいて、信号レベルの最大値と最小値との差を差値βとして前記チャンネル毎に算出する差値算出手段と、前記周波数特性算出手段により算出された前記チャンネル毎の複数の周波数特性の平均を求めることにより、前記チャンネル毎に平均周波数特性を算出する平均周波数特性算出手段と、前記平均周波数特性算出手段により算出されたいずれか一のチャンネルの平均周波数特性における平均信号レベルSaを求め、該平均信号レベルSaが0[dB]になるように全てのチャンネルの平均周波数特性をレベルオフセット処理することにより、前記チャンネル毎に基準音響特性を求めるレベルオフセット手段と、前記差値算出手段により算出された差値βと、予め設定される重み変換値k2とを用いて、前記チャンネル毎の重み量Wtを、
Wt=10
(−β×k2)
より算出する重み量算出手段と、
該重み量算出手段により算出された前記チャンネル毎の重み量Wtと、前記レベルオフセット手段により求められた前記チャンネル毎の基準音響特性とを、対応するチャンネル毎に乗算することにより、前記チャンネル毎に中高域補正フィルタを生成する中高域補正フィルタ生成手段とを有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る音場補正フィルタ生成方法、音場補正装置および音場補正フィルタ生成装置では、帯域判定手段が、分散に基づいて、低域と、中高域と、再生不可領域とを求める。このように分散に基づいて低域を求めることにより、車室内においてスピーカとリスニングエリアとの間(チャンネル間)の距離よりも波長が長くなるおそれのある帯域を求めることが可能となる。このため、中高域補正フィルタとは別に、振幅特性だけでなく位相特性の影響を生ずるおそれのある低域用の補正フィルタ(低域補正フィルタ)を求めることが可能となる。
【0023】
具体的には、予めリスニングエリア毎の理想的なインパルス応答Di(理想的な周波数特性)を設定し、このインパルス応答と、チャンネル毎の平均インパルス応答A
ijとに基づいて、低域補正フィルタQ
iを算出することにより、振幅特性および位相特性の影響を考慮した低域補正フィルタを算出することができる。従って、音場補正装置において、オーディオ信号の低域に対しては低域補正フィルタQ
iを用いて音場補正処理を行い、オーディオ信号の中高域に対しては、分散あるいは差値に基づいて重み付けされた中高域補正フィルタを用いて音場補正処理を行うことにより、中高域における過剰な補正を抑制しつつ、低域における位相特性に基づく音質劣化を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る音場補正フィルタ生成方法、音場補正装置および音場補正フィルタ生成装置によれば、チャンネル毎の周波数特性の分散を求めることにより、あるいは、周波数特性の最大値と最小値との差値を求めることにより、周波数特性の変動状態を求めることができる。そして、重み量算出手段において、分散あるいは差値に基づいて、周波数特性の変動が大きい場合に、重み量が小さくなるようにして重み量を求めて音場補正フィルタまたは中高域補正フィルタを生成することにより、リスニングエリア内の周波数特性が測定ポイントに応じて大きく変動する場合であっても、補正処理による補正量を低減させることが可能となる。このため、周波数特性が大きく変動するリスニング環境であっても、過剰な補正を抑制して適切な音場補正処理を行うことができ、聴感上の音質向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る音場補正フィルタ生成装置および音場補正装置について一例を示し、図面を用いて詳細に説明を行う。音場補正装置を用いて車室内のディップの低減および音質向上を図るためは、まず、対象となる車室内(リスニングエリア)におけるインパルス応答を求めて、低域用逆フィルタ(低域補正フィルタ)と中高域用逆フィルタ(中高域補正フィルタ、音場補正フィルタ)とを生成する必要がある。このため、まずは、対象となる車室内で低域用逆フィルタと中高域用逆フィルタとを生成する音場測定装置を、本発明に係る音場補正フィルタ生成装置の一例として説明を行う。その後に、求められた低域用逆フィルタと中高域用逆フィルタとを用いて音場補正を行う音場補正装置を、本発明に係る音場補正装置の一例として説明する。
【0027】
[音場測定装置]
図1は、本実施の形態に係る音場測定装置の概略構成を示したブロック図である。音場測定装置100は、測定信号再生部110と、チャンネル選択部120と、アンプ部(アンプ手段)130と、スピーカ141〜144と、測定マイクロホン(収録信号取得手段)150と、音場測定部160とを有している。また、
図2は、音場測定装置100における処理手順の概略を示したフローチャートである。
【0028】
測定信号再生部110は、測定信号としてM系列符号を出力する役割を有している。
チャンネル選択部120は、測定信号再生部110より出力された測定信号を、車室内に設置される4つのスピーカ141〜144のいずれかより出力させる役割を有している。具体的に、チャンネル選択部120は、スピーカ141〜144のいずれか1つのスピーカより測定信号を出力させたり、または、いくつかのスピーカを組み合わせて出力させたり、あるいは、全てのスピーカより出力させたりするための分配装置として機能する。
【0029】
スピーカ141〜144は、
図3に示すように、車室200内に設置されている。スピーカ141〜144は、車室200の前席左側に設置されるスピーカ(FL)141と、前席右側に設置されるスピーカ(FR)142と、後席左側に設置されるスピーカ(RL)143と、後席右側に設置されるスピーカ(RR)144とによって構成されている。なお、スピーカ141〜141の設置位置および設置個数は一例であって、
図3に示すような前後左右位置には限定されず、またスピーカの設置個数も、上述した4個には限定されない。
【0030】
車室200には、車室内の着座位置(助手席、運転席、後席左側および後席右側のシート位置)に応じて4つのリスニングエリア200a〜200dが設けられている。具体的には、前席左側の着座位置がリスニングエリア(MFL)200aとして設定され、前席右側の着座位置がリスニングエリア(MFR)200bとして設定され、後席左側の着座位置がリスニングエリア(MRL)200cとして設定され、後席右側の着座位置がリスニングエリア(MRR)200dとして設定される。音場測定装置100では、リスニングエリア200a〜200d内の複数の測定ポイントにおいて、測定信号の集音を行うことにより(収録信号取得ステップ)、各リスニングエリア200a〜200dにおける音響特性(各リスニングエリアにおける各チャンネルの周波数特性)の測定を行う(
図2のステップS.1)
【0031】
アンプ部130は、チャンネル選択部120によって分配されたそれぞれの測定信号の増幅を行う役割を有している。測定マイクロホン150は、
図3に示すリスニングエリア200a〜200dに設置される。測定マイクロホン150は、設置されたリスニングエリアにおいて、4つのスピーカ141〜144から出力される測定音(M系列符号:測定信号)の集音(取得)を行う役割を有している。
【0032】
図4は、測定マイクロホン150で測定信号の集音を行う場合における、音場補正対象となる補正位置と、補正位置に向けて測定信号を再生するスピーカの再生順序と、補正位置に該当する収録位置(リスニングエリア)と、測定ポイント毎の収録信号とを示した表である。具体的には、前席左側の補正位置に対しては、(1)左前スピーカ(FL)、(2)右前スピーカ(FR)、(3)左後スピーカ(RL)、(4)右後スピーカ(RR)の順番に測定信号が出力されている。そして、前席左側の補正位置に該当するリスニングエリア(MFL)200aに設置された測定マイクロホン150によって、(1)左前スピーカ(FL)より出力された測定信号を、測定マイクロホン150で収録信号DFL1として測定ポイント毎に集音し、(2)右前スピーカ(FR)より出力された測定信号を、測定マイクロホン150で収録信号DFL2として測定ポイント毎に集音し、(3)左後スピーカ(RL)より出力された測定信号を、測定マイクロホン150で収録信号DFL3として測定ポイント毎に集音し、(4)右後スピーカ(RR)より出力された測定信号を、測定マイクロホン150で収録信号DFL4として測定ポイント毎に集音する。同様にして、前席右側、後席左側、後席右側の順で同様に集音する。
【0033】
また、前席の補正位置として、(1)左前スピーカ(FL)と右前スピーカ(FR)とから同時に測定信号を出力し、前席左側の補正位置に該当するリスニングエリア(MFL)200aに設置された測定マイクロホン150で、測定信号を収録信号DF1として測定ポイント毎に集音し、その後に、(2)左後スピーカ(RL)と右後スピーカ(RR)とから同時に測定信号を出力し、前席左側の補正位置に該当するリスニングエリア(MFL)200aに設置された測定マイクロホン150で、測定信号を収録信号DF2として測定ポイント毎に集音する。
【0034】
また、後席の補正位置として、(1)左前スピーカ(FL)と右前スピーカ(FR)とから同時に測定信号を出力し、後席左側の補正位置に該当するリスニングエリア(MRL)200cに設置された測定マイクロホン150で、測定信号を収録信号DR1として測定ポイント毎に集音し、その後に、(2)左後スピーカ(RL)と右後スピーカ(RR)とから同時に測定信号を出力し、後席左側の補正位置に該当するリスニングエリア(MRL)200cに設置された測定マイクロホン150で、測定信号を収録信号DR2として測定ポイント毎に集音する。
【0035】
なお、
図4では、前席補正位置の収録信号を測定する場合に、前席左側の補正位置(リスニングエリアMFL)に測定マイクロホン150を設置する場合を一例として示しているが、測定マイクロホン150の測定位置は、前席左側の補正位置(リスニングエリアMFL)には限定されず、前席右側の補正位置(リスニングエリアMFR)であってもよい。同様に、
図4では、後席補正位置の収録信号を測定する場合に、後席左側の補正位置(リスニングエリアMRL)に測定マイクロホン150を設置する場合を一例として示しているが、測定マイクロホン150の測定位置は、後席左側の補正位置(リスニングエリアMRL)には限定されず、後席右側の補正位置(リスニングエリアMRR)であってもよい。
【0036】
全席の補正を考慮する場合には、
図4の表の最下段に示すように、前席と後席との収録信号(DF1とDR2)を利用する。測定される収録信号は、
図4に示したように、測定信号を出力するスピーカの設置位置と、測定マイクロホン150の設置位置との組み合わせ(この組み合わせをチャンネルとして区別する)によって、DFL1〜DFL4、DFR1〜DFR4、DRL1〜DRL4、DRR1〜DRR4、DF1、DF2、DR1、DR2からなる全20パターン(20チャンネル)となる。
【0037】
測定マイクロホン150を用いて、各リスニングエリアで収録信号を集音する場合、各リスニングエリア(MFL,MFR,MRL,MRR)内でゆっくりと測定マイクロホン150を移動させることにより、リスニングエリア内の複数の測定ポイント(リスニングポイント)で、一定の時間間隔で収録信号の集音を行う。但し、複数の測定ポイントで収録信号の集音を行う方法は、測定マイクロホン150をゆっくり移動させるだけでなく、他の方法を用いることも可能である。例えば、1つのリスニングエリア全体をカバーし得るだけの複数の測定マイクロホンを、測定対象となるリスニングエリアに設置して、同時に複数の測定ポイントで収録信号を集音する方法を採用することも可能である。
【0038】
音場測定部160は、
図1に示すように、インパルス応答算出部(インパルス応答算出手段)161と、第1FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部(周波数特性算出手段)162と、対数平均化処理部163と、エリア音場測定部(分散算出手段、差値算出手段)164と、帯域判定部(帯域判定手段)165と、平均インパルス応答部(平均インパルス応答算出手段)166と、低域逆フィルタ算出部(低域補正フィルタ算出手段)167と、レベル調節部(平均周波数特性算出手段、レベルオフセット手段)168と、重み量計算部(重み量算出手段、音場補正フィルタ生成手段、中高域補正フィルタ生成手段)169と、中高域逆フィルタ算出部170と、メモリ180とを有している。
【0039】
インパルス応答算出部161は、測定信号再生部110から出力(再生)された測定信号をリファレンスとして、測定マイクロホン150を用いて集音した収録信号における相関演算処理を、リスニングエリア内の測定ポイント毎に行うことによって、測定マイクロホン150とスピーカ141〜141との間(各チャンネル)のインパルス応答を算出する役割を有している(
図2のステップS.2:インパルス応答算出ステップ)。
【0040】
図5(a)(b)は、インパルス応答算出部161におけるインパルス応答の算出処理を説明するための図である。インパルス応答算出部161は、測定マイクロホン150より集音した収録信号と、測定信号再生部110より取得したリファレンスの測定信号との双方に対して、
図5(a)に示すようにオーバーラップ処理を行い、相対的なサンプリング速度の向上を図る。
【0041】
具体的に、インパルス応答算出部161では、測定信号再生部110より取得した測定信号(M系列符号)に基づいて符号長を求め、求められた符号長を相関演算処理の処理範囲(相関演算処理範囲)としてインパルス応答を求める。さらに、インパルス応答算出部161では、符号長だけ測定マイクロホン150が移動される間に、等間隔で多数回測定できるように、測定マイクロホン150での収録信号の測定(集音)タイミングの設定を行う。このようにして測定タイミングの設定を行うことにより、測定マイクロホン150が符号長だけ移動する間に、収録信号を複数回測定することが可能となる。
【0042】
また、インパルス応答算出部161では、相関演算処理の処理範囲を符号長とすることにより、
図5(a)に示すように、相関演算処理に用いることが可能な測定信号にオーバーラップを生じさせる。このため、通常であれば測定信号の符号長の間隔で測定されるインパルス応答を、符号長よりも短い間隔で測定ポイント毎に測定することが可能となり、
図5(b)に示すように、検出可能なインパルス応答数を増加させることができる。また、インパルス応答算出部161では、インパルス応答長を設定して、インパルス応答の生成間隔よりも短くなるようにゲート処理を行うことにより、不要な残響音の除去とSNR(Signal to noise ratio:S/N比、信号に対するノイズ(雑音)の量を対数で表したもの)の改善を行う。
【0043】
このようにして、インパルス応答算出部161では、音場測定装置100より出力される測定信号と、前席左側,前席右側,後席左側,後席右側の各リスニングエリア(MFL,MFR,MRL,MRR)において測定マイクロホン150により集音される、各スピーカ141〜144(FL,FR,RL,RR)からの収録信号とに基づいて、チャンネル毎に複数のインパルス応答(複数の測定ポイントに対応したインパルス応答)を算出する。
【0044】
第1FFT部162は、ゲート処理した測定ポイント毎のインパルス応答に対して、フーリエ変換を行った後に、リニアの振幅スペクトル信号をデシベル信号に変換する役割を有している。第1FFT部162は、測定されたインパルス応答をフーリエ変換することにより、測定ポイント毎の周波数特性を求める(
図2のステップS.3:周波数特性算出ステップ)。インパルス応答数をn個、フーリエ変換長(FFT長)を2mとすると、第1FFT部162において、リスニングエリア毎にn×m個の振幅スペクトル信号を得ることができる。
【0045】
対数平均化処理部163は、第1FFT部162において求められた複数の振幅スペクトル信号に対して、人間の聴覚の周波数分解能を考慮した処理を行う。具体的には、周波数が高くなるに従って平均化数を増加させる対数平均化処理を行うことにより、周波数領域でのスムージング処理を行う(
図2のステップS.4)。
【0046】
図6は、対数平均化処理部163において対数平均化処理を行った振幅スペクトル信号の一例を示しており、インパルス応答数を500個、フーリエ変換長を2×4,096とすることにより、500×4,096個の振幅スペクトル信号が示されている。
【0047】
また、
図7は、第1FFT部162および対数平均化処理部163における処理条件(測定条件)の一例が示された表である。具体的に、サンプリング速度は、44,100サンプル/sec、M系列符号長は16,383サンプルであり、0.372sec毎にインパルス応答が生成される。しかしながら、上述したように、符号長(16,383サンプル)の3/4でなる12,287サンプルのオーバーラップ処理によって、0.093sec毎にインパルス応答が生成されるので、
図7に示すように47secだけ収録信号を集音することにより、約500個のインパルス応答が求められる。この約500個のインパルス応答を、符号長(16,383サンプル)の半分となる8,192サンプル毎にフーリエ変換することにより、上述した500×4,096個の振幅スペクトル信号を得ることができる。なお、対数平均化数は、聴覚の周波数分解能として知られている1/3オクターブ幅よりも小さい1/6オクターブ幅としている。
【0048】
エリア音場測定部164は、対数平均化処理部163による対数平均化処理により求められた振幅スペクトル信号(
図6参照)に対して、振幅スペクトル毎の最大値、平均値、最小値、分散を計算する役割を有している(
図2のステップS.5:分散算出ステップ、差値算出ステップ)。
図8(a)は、右前スピーカ(FR)より出力された測定信号を、前席左側のリスニングエリア(MFL)に設置された測定マイクロホン150で集音した収録信号DFL2(
図4参照)に基づいて求められた振幅スペクトルの最大値、平均値、最小値を示した図であり、
図8(b)は、同じ振幅スペクトルの分散を示した図である。
【0049】
測定マイクロホン150を少しずつ移動させて47secの時間だけ収録信号を集音しているため、求められる振幅スペクトルは、
図6に示すように集音時間(測定ポイント)に応じてそれぞれ異なる信号レベル値を示すことになる。このため、エリア音場測定部164では、異なる信号レベル値を示す複数の振幅スペクトルに基づいて、チャンネル毎に最大値、平均値、最小値、分散を算出する。
【0050】
図8(a)(b)を確認すると、30Hz〜170Hzの周波数区間(低域)以外の区間では、最大値と最小値との差(差値)、および分散の変動が大きくなっている。このため、低域以外の周波数では、周波数変動が大きいと判断することができる。ここで、30Hz以下の低帯域は、スピーカ141〜144の再生能力以下の周波数に該当し、雑音による変動と判断することができる。この周波数帯域を、再生不可領域という。
【0051】
また、4kHz以上の高域に比べて、170Hz〜4kHzまでの中域では、分散の値が特に大きく変動しており、測定ポイント毎に周波数特性のばらつきが大きいと判断することができる。エリア音場測定部164では、
図4に示したように、スピーカとリスニングエリアとの対応(チャンネル)に応じた20パターンの収録信号に対して、振幅スペクトル毎の最大値、平均値、最小値、分散を計算する。
【0052】
帯域判定部165は、エリア音場測定部164で求められた分散に基づいて、低域と、中高域と、再生不可領域との帯域判定を行う役割を有している(
図2のステップS.6:帯域判定ステップ)。本実施の形態に係る帯域判定部165は、
図8(b)に示すように、分散の変動に対して領域判定スレッショルド(閾値)を設定することにより、低域と中高域と再生不可領域との帯域判定を行う。
【0053】
一般に、スピーカの再生能力以下の周波数では、雑音によって高い分散値を示す傾向がある。低域では、分散の変動が比較的少ない傾向がある。中高域では、低域に比べて測定ポイント毎に周波数特性に変動が生じやすいことから、分散の値が大きく変動する傾向がある。このため、分散の変動状態に応じて領域判定スレッショルドを設定することにより、スピーカの再生能力以下の再生不可領域と、分散の変動が比較的少ない低域と、分散の変動が大きい中高域とに帯域を分けることが可能となる。
【0054】
図8(b)では、領域判定スレッショルドとして1[dB]が設定される場合が示されている。この領域判定スレッショルドにより、再生不可領域として33Hz未満、低域として33Hz〜160Hz、中高域として160Hz〜22kHzの帯域判定が行われる。このように、分散を基準としてリスニングエリア内の周波数変動を判断し、適切に帯域判定を行うことによって、帯域毎の特性に応じた音場補正を行うことが可能となる。音場測定装置100では、帯域判定部165により判定された低域と中高域とに基づいてそれぞれ異なる処理を行うことにより、低域における音場補正用の逆フィルタ(低域補正フィルタ)と、中高域における音場補正用の逆フィルタ(中高域補正フィルタ)とを求める。帯域判定部165において低域と判断された低域情報は、平均インパルス応答部166に出力され、中高域と判断された中高域情報は、レベル調節部168へ出力される。
【0055】
次に、低域と判断された周波数帯域を補正するための低域用逆フィルタを算出する処理について説明する。
【0056】
平均インパルス応答部166は、4つのスピーカ141〜144(FL,FR,RL,RR)と4つのリスニングポイント(MFL,MFR,MRL,MRR)との組み合わせ(各チャンネル)に基づいて、インパルス応答算出部161において算出されたインパルス応答を用いて平均化処理を行うことにより、16個の平均インパルス応答を生成する(
図2のステップS.7:平均インパルス応答算出ステップ)。生成された16個の平均インパルス応答は、低域逆フィルタ算出部167へと出力される。
【0057】
低域逆フィルタ算出部167は、平均インパルス応答部166で生成された平均インパルス応答を用いて、振幅と位相とを制御するための低域用逆フィルタを算出する役割を有している(
図2のステップS.8:低域補正フィルタ算出ステップ)。上述したように、平均インパルス応答部166では、4つのスピーカ141〜144(FL,FR,RL,RR)と4つのリスニングエリア(MFL,MFR,MRL,MRR)との組み合わせ(各チャンネル)に基づいて16個の平均インパルス応答が生成される。このため、スピーカをj(1≦j≦4)、リスニングエリアをi(1≦i≦4)で示すと、平均インパルス応答は、A
ijで示すことができる。また、低域逆フィルタ算出部167において算出する低域用逆フィルタをQ
i(1≦i≦4)とし、低域用逆フィルタQ
iによって平均インパルス応答A
ijが理想的な(所望の)特性となるように、予め設定されるインパルス応答を低域用ターゲット特性としてD
i(1≦i≦4)で示す。つまり、
A
ij :スピーカjとリスニングエリアiとの間の平均インパルス応答
Q
i :低域逆フィルタ算出部167において算出する低域用逆フィルタ
D
i :低域用ターゲット特性(ターゲットとなるインパルス応答)
とになり、以下の式1で示すことが可能となる。
【数1】
ここで、平均インパルス応答A
ijを要素とする行列[A]と、ターゲットとなるインパルス応答D
iを要素とする行列[D]と、低域用逆フィルタQ
iを要素とする行列[Q]とに基づいて、便宜上、式1を[A][Q]=[D]で示すと、低域用逆フィルタの行列[Q]は、[A][Q]=[D]を満たす[Q]を算出することにより求めることができる。[A]
Hを[A]の共役転置行列とすると、式1は、[A]
H[A][Q]=[A]
H[D]と表すことができる。[R]=[A]
H[A]とし、[P]=[A]
H[D]とすると、式1は、[R][Q]=[P]で表すことができ、低域用逆フィルタ[Q]を、[Q]=[R]
−1[P]で求めることが可能となる。
【0058】
図9(a)〜(d)は、4つのスピーカ141〜144(FL,FR,RL,RR)と前席左側のリスニングエリアMFLとの間の音響特性を示した図である。
図9(a)〜(d)では、各スピーカ(FL,FR,RL,RR)とリスニングエリアMFLとに基づく平均インパルス応答をフーリエ変換することにより周波数特性で示したものを示している。
図9(a)〜(d)に示すように、それぞれのスピーカ(FL,FR,RL,RR)とリスニングエリアMFLとの間の音響特性は、それぞれ大きく異なった特性を示している。また、リスニングエリアが異なる場合においても、スピーカが異なる場合と同様に音響特性が大きく異なり、音質や音量が異なったものになる傾向がある。
【0059】
低域のオーディオ信号では、各チャンネル(各スピーカと各リスニングエリアとの対応関係)間の位相特性が影響して相関性が生じるため、リスニングエリア毎に相違した特性を示す傾向がある。従って、低域に対する音場補正処理において、振幅のみを抑制するパラメトリックイコライザ等のIIR(Infinite impulse response:無限インパルス応答)フィルタを用いた補正だけを行っても、音響特性を改善することが困難であった。このため、本実施の形態に係る低域逆フィルタ算出部167では、振幅と位相とを制御するFIRフィルタをベースとして低域用逆フィルタを算出する。
【0060】
図10(a)〜(d)は、予め設定される低域用ターゲット特性D
1〜D
4(ターゲットとなるインパルス応答)の一例を示した図である。具体的に、
図10(a)は、前席左側のリスニングエリアMFLの低域用ターゲット特性を示し、
図10(b)は、前席右側のリスニングエリアMFRの低域用ターゲット特性を示し、
図10(c)は、後席左側のリスニングエリアMRLの低域用ターゲット特性を示し、
図10(d)は、後席右側のリスニングエリアMRRの低域用ターゲット特性を示している。
図10(a)〜(d)に示す低域用ターゲット特性では、全てのリスニングエリア(MFL,MFR,MRL,MRR)において、33Hz〜160Hzの帯域で周波数特性の信号レベルがフラットになるように設定されている。そして33Hz未満あるいは160Hz以上の周波数では信号レベルが大きく減衰するように設定されている。
【0061】
図11(a)〜(d)は、
図10(a)〜(d)に示した低域用ターゲット特性D
1〜D
4と、
図9に示す音響特性とを用いて求められたチャンネル毎の低域用逆フィルタの一例を示している。具体的に、
図11(a)は、前席左側のスピーカFLとリスニングエリアMFLとの間のチャンネルCh1における低域用逆フィルタの周波数特性を示しており、
図11(b)は、前席右側のスピーカFRとリスニングエリアMFLとの間のチャンネルCh2における低域用逆フィルタの周波数特性を示しており、
図11(c)は、後席左側のスピーカRLとリスニングエリアMFLとの間のチャンネルCh3における低域用逆フィルタの周波数特性を示しており、
図11(d)は、後席右側のスピーカRRとリスニングエリアMFLとの間のチャンネルCh4における低域用逆フィルタの周波数特性を示している。
【0062】
平均インパルス応答部166では、インパルス応答算出部161において算出されたインパルス応答を用いて平均化処理を行っており、16,384個の実数と虚数とのフィルタ係数が生成されるが、
図11(a)〜(d)では、実数と虚数とを振幅と位相とに変換した後に、振幅のみを表示したものを示している。この
図11(a)〜(d)に示す低域用逆フィルタを用いて低域の音場補正を行った後のリスニングエリア毎の低域の音響特性については後述する。
【0063】
また、低域用ターゲット特性は予め設定されるものであるため、車室内の音響特性に応じてさまざまに設定を行うことが可能である。
図12(a)(b)に示す低域用ターゲット特性(ターゲットとなるインパルス応答)は、前席左右のリスニングエリア(MFL,MFR)において、33Hz〜160Hzの帯域で周波数特性の信号レベルがフラットになるように設定され、33Hz未満あるいは160Hz以上の周波数では信号レベルが大きく減衰するように設定されている。一方で、
図12(c)(d)に示す低域用ターゲット特性(ターゲットとなるインパルス応答)は、後席左右のリスニングエリア(MRL,MRR)において、33Hz〜160Hzの帯域で周波数特性の信号レベルが、前席左右のリスニングエリア(MFL,MFR)に比べて信号レベルが10[dB]低くなるように設定され、全ての周波数において減衰するように設定されている。
図12(a)〜(d)に示す低域用ターゲット特性によって生成される低域用逆フィルタを用いて低域の音場補正を行った後のリスニングエリア毎の低域の音響特性についても後述する。
【0064】
このように低域用ターゲット特性を設定することにより、リスニングエリア毎の音量を任意に設定・調節することが可能となる。例えば、音楽再生時における低域の音量レベルは、聴取者の嗜好により大きく異なる傾向があり、強めの低域音量を好む人がいる一方で、強めの低域音量を嫌う人もいる。このため、各リスニングエリアで所望の音量を得られるように、リスニングエリア毎に独立して低域用ターゲット特性D
iを設定・調節することによって、聴取者の嗜好に合った音場環境を提供することが可能となる。例えば、各リスニングエリアの音量調節例として、音量の範囲を1〜5の5段階設定とすると、前席左側の音量を1、前席右側の音量を5、後席左側の音量を2、後席右側の音量を3として設定することにより、車両において前席右側の低域音量を他の座席よりも大きくする一方で、前席左側の低域音量を他の席に比べて最も小さい音量にすることも可能となる。
【0065】
上述したようにして、平均インパルス応答部166および低域逆フィルタ算出部167では、全てのリスニングエリアの低域用逆フィルタQ
1〜Q
4を算出する。算出された低域用逆フィルタQ
1〜Q
4は、メモリ180に記録される(
図2のステップS.9)。
【0066】
次に、中高域と判断された周波数帯域を補正するための中高域用逆フィルタを算出する処理を説明する。
【0067】
レベル調節部168は、特定のチャンネルの基準帯域に基づいて各チャンネルのレベル調節を行う役割を有している(
図2のステップS.10)。本実施の形態に係るレベル調節部168では、まず、前席左側のスピーカ(FL)と前席左側のリスニングエリア(MFL)との間の音響特性(周波数特性)の平均(
図8(a)参照:平均周波数特性)を求める(平均周波数特性算出ステップ)。そして、レベル調節部168では、中域の500Hz〜3kHzの平均信号レベルSa[dB]を求めて、求められた平均信号レベルSa[dB]のレベルオフセットを行って平均信号レベルの値が0[dB]となるように調節を行い、調節された平均の周波数特性をリファレンスの音響特性(基準音響特性)にする(レベルオフセットステップ)。
【0068】
レベル調節部168では、前席左側のスピーカ(FL)と前席左側のリスニングエリア(MFL)との他に、それぞれのスピーカとそれぞれのリスニングエリアとの間(各チャンネル)においても、音響特性(周波数特性)の平均を求めて、求められた音響特性(周波数特性)の平均に対しても、同様にして平均信号レベルSa[dB]を用いてレベルオフセット(レベル調節)を行う。レベル調節部168は、このように全てのチャンネルの音響特性に対してレベルオフセット(レベル調節)を行うことにより、チャンネル毎の基準音響特性を生成する。
【0069】
重み量計算部169は、チャンネル毎の音響特性の分散に応じて重み量計算を行う役割を有している(
図2のステップS.11:重み量算出ステップ)。各チャンネルにおける分散α[dB]は、
図8(b)に示すように、各リスニングエリアのチャンネル毎に算出される。重み量計算部169は、チャンネル毎に分散α[dB]を用いて、以下の式2により重み量Wtを算出する。
Wt=10
(−α×k1) ・・・式2
但し、k1は重み変換値であって、0<k1<<1の値となる。この重み量Wtは、チャンネル毎に算出される。
【0070】
次に、重み量計算部169は、求められたチャンネル毎の重み量Wtと、レベル調節部168において生成されたチャンネル毎の基準音響特性とを、互いのチャンネルに対応させてそれぞれ乗算処理を行い、重み付けされた音響特性を生成する(音場補正フィルタ生成ステップ、中高域補正フィルタ生成ステップ)。
図13は、基準音響特性と、重み付けされた音響特性とを示した図の一例である。なお、
図13に示す例では、0[dB]を基準値とし、重み量を算出するための重み変換値k1をk1=0.03に設定した。式2に示すように、分散αが大きな値になると重み量Wtが小さくなるため、
図8(b)に示すように分散の値が大きい周波数では、重み付けされた音響特性の値が、重み付けされていない音響特性に比べて、基準レベル(0[dB])に近い値となる(0[dB]との差が小さくなる)傾向を示している。このようにして分散を用いて音響特性の補正を行うことにより、分散の変動が大きな中高域の音響特性の重み付けが小さくなるように中高域用逆フィルタのフィルタ特性を設定することが可能となる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、重み量Wtの算出に分散を用いる場合について説明を行ったが、分散を用いて重み量Wtを算出する方法は一例であり、周波数変動量に応じて重み量を算出することが可能であれば、分散を用いた算出方法には限定されない。例えば、
図8(a)に示すように、最大値と最小値との差が大きい帯域は、分散が大きい値を示す傾向がある。このため、次の式3のように、チャンネル毎の周波数特性に関して、最大値と最小値との差を差値βとして用いて、重み量Wtを算出することも可能である。
Wt=10
(−(最大値−最小値)×k2)
=10
(−β×k2) ・・・式3
但し、k2は重み変換値を意味している。
【0072】
中高域逆フィルタ算出部170は、予め設定される中高域用のターゲット特性(中高域用ターゲット特性)を用いて重み付けされた音響特性を基準として、重み量計算部169で重み付けされた音響特性に対し、周波数の振幅スペクトル毎に逆フィルタ特性を計算して、中高域用逆フィルタ(中高域補正フィルタ)を生成する役割を有している(
図2のステップS.12)。
【0073】
図14は、中高域用ターゲット特性と、基準音響特性と、重み量計算部169で重み付けを行わずに中高域逆フィルタ算出部170だけで重み付けを行った中高域用逆フィルタの補正フィルタ特性と、中高域用逆フィルタで音場補正が行われた後の補正特性との一例を示した図である。一方で、
図15は、中高域用ターゲット特性と、基準音響特性と、重み量計算部169で重み付けを行った後に中高域逆フィルタ算出部170で重み付けを行った中高域用逆フィルタの補正フィルタ特性と、中高域用逆フィルタで音場補正が行われた後の補正特性との一例を示した図である。なお、中高域逆フィルタ算出部170における中高域用ターゲット特性は、
図14および
図15に示すように、18kHz以上を減衰させたものであり、22kHzでは20[dB]減衰するように設定されている。
【0074】
図14に示すように、重み量計算部169で重み付けを行わない場合には、基準音響特性に対して補正フィルタ特性が逆特性となっており、補正特性は中高域用ターゲット特性とほとんど一致していることがわかる。しかしながら、
図6や
図8に示すように、リスニングエリア内では、周波数特性が大きく変動する傾向を示している。このため、リスニングエリア内で平均的な音響特性に基づいて音場補正を行っても、リスニングエリアによっては却って過剰な補正になってしまう場合があり、聴感上で音質の向上を得られないおそれがある。
【0075】
また、本実施の形態に係るレベル調節部168、重み量計算部169および中高域逆フィルタ算出部170では、中高域に対する音場補正だけを補正対象として説明を行っているが、低域から高域まで全帯域を補正対象として補正処理を行う場合もあり得る。このように全帯域を補正対象とする場合に、分散による重み付け、あるいは、差値による重み付けを行わずに補正処理を行うと、30Hz以下の低域において、スピーカの再生能力を考慮せずに補正が行われてしまうため、歪みが発生してしまうという問題が生ずる。
【0076】
一方で、
図15に示すように、重み量計算部169で重み付けを行う場合には、分散の値(あるいは差値)が大きく、また、分散の変動が大きい周波数において、補正量が小さくなる傾向が示されており、分散が大きく変動する帯域では過剰な補正を低減して良好な音質でリスニングを行うことが可能となる。また、スピーカの再生能力以下の周波数で、補正量を小さくすることができ、歪みの発生を抑制することが可能になるという特徴が生ずる。
【0077】
上述したレベル調節部168、重み量計算部169および中高域逆フィルタ算出部170では、中高域の補正処理を対象として、前席左側スピーカFLと前席左側のリスニングエリアMFLとの間(スピーカFLとリスニングエリアMFLとの間のチャンネル)の音響特性に基づいて中高域用逆フィルタを生成する場合について説明を行った。レベル調節部168,重み量計算部169および中高域逆フィルタ算出部170では、前席左側スピーカFLと前席左側のリスニングエリアMFLのチャンネル以外においても同様にして、中高域用逆フィルタの生成を行う。各チャンネルに基づいてエリア周波数特性を求めて高域用逆フィルタを求めることにより、全てのスピーカとリスニングエリアとの組み合わせに対応する中高域用逆フィルタを求めることが可能となる。
【0078】
なお、
図14および
図15に示す補正フィルタ特性および補正特性では、説明の便宜上、全帯域を補正対象とする場合の補正フィルタ特性が示されているが、本実施の形態に係るレベル調節部168,重み量計算部169および中高域逆フィルタ算出部170の処理では、中高域用逆フィルタを生成することを目的とするため、補正帯域を中高域に限定する必要がある。このため、中高域逆フィルタ算出部170において設定される中高域用ターゲット特性を、
図14および
図15に示す中高域用ターゲット特性に比べて、160Hz以下で周波数特性が大きく減衰するように設定する。このように中高域用ターゲット特性を設定することにより、周波数特性の信号レベルの変動が大きい中高域に適したチャンネル毎の中高域用逆フィルタを生成することが可能となる。中高域逆フィルタ算出部170で生成されたチャンネル毎の中高域用逆フィルタは、メモリ180に記録される(
図2のステップS.13)。
【0079】
[音場補正装置]
次に、音場補正装置について説明を行う。
図16は、音場補正装置の概略構成を示したブロック図である。音場補正装置300は、オーディオ再生部(オーディオ再生手段)310と、音場補正部320と、アンプ部(アンプ手段)130と、スピーカ141〜144とを備えている。ここで、アンプ部130とスピーカ141〜144とに関しては、音場測定装置100において説明したものと同じものであるため、ここでの説明は省略する。スピーカ141〜144は、音場測定装置100と同様に4つ設けられており、
図3に示すように、車室200内の前後左右位置にそれぞれ設置されている。
【0080】
音場補正装置300は、音場測定装置100により求められた低域用逆フィルタおよび中高域用逆フィルタを用いて、車室200内の音場補正を行うことを目的とするものであり、音場測定装置100の音場環境(スピーカ数、スピーカ設置位置、車室内の構造、座席の配置など)と音場補正装置300の音場環境とは、同じ環境である。
【0081】
オーディオ再生部310は、CD、MD、ラジオなどに基づいてオーディオ信号を出力するものであり、一般的な車載用オーディ再生装置に該当する。オーディオ再生部310より出力されるオーディオ信号は、LチャンネルとRチャンネルとからなるステレオタイプのオーディオ信号であり、出力されたオーディオ信号は、音場補正部320に入力される。
【0082】
音場補正部320は、第2FFT部(フーリエ変換手段)321と、モノラル部322と、低域補正部(低域補正手段)323と、中高域補正部(フィルタ処理手段、中高域補正手段)324と、合成部(合成手段)325と、IFFT部(逆フーリエ変換手段)326と、メモリ180とを備えている。音場補正部320では、第2FFT部321とIFFT部326とを用いたオーバーラップ加算型による周波数領域の補正を行う。なお、メモリ180には、音場測定装置100の音場測定部160において生成された低域用逆フィルタ(低域補正フィルタ)と中高域用逆フィルタ(中高域補正フィルタ)とが記録されている。メモリ180は、音場測定部160において用いられるメモリと同じメモリである。
【0083】
第2FFT部321は、オーディオ再生部310より入力されるオーディオ信号を、第1FFT部162と同様に、フーリエ変換する処理を行う役割を有している。第2FFT部321では、入力されるオーディオ信号を8,192サンプル毎に区切り、8,192サンプル分のゼロを付加することにより16,384サンプルの高速フーリエ変換を行う。高速フーリエ変換されたオーディオ信号は、モノラル部322と中高域補正部324とへ出力される。
【0084】
モノラル部322では、入力されたオーディオ信号をモノラル化する役割を有している。モノラル化されたオーディオ信号は、低域補正部323に出力される。低域補正部323は、メモリ180より低域用逆フィルタのフィルタ情報を取得して、入力されるオーディオ信号に対して低域用のフィルタ処理を行う。ここで、音場測定部160において生成される低域用逆フィルタに基づいて、4つのスピーカ141〜144に対応する低域用のフィルタ処理(音場補正処理)を行う。低域補正部323においてフィルタ処理(音場補正処理)が行われたオーディオ信号は、4つのスピーカに対応してそれぞれ出力される。
【0085】
図17(a)〜(c)は、低域補正部323において、
図11(a)〜(d)に示される低域用逆フィルタを、M系列符号から成るオーディオ信号に適用した場合における各リスニングエリアの音響特性を示している。既に説明したように、
図11(a)〜(d)に示される低域用逆フィルタは、
図10(a)〜(d)に示す低域用ターゲット特性に基づいて低域逆フィルタ算出部167で算出されたものである。このため、
図11(a)〜(d)に示す低域用逆フィルタを用いてフィルタ処理を行った音響特性(
図17(a)〜(d))は、低域用ターゲット特性を示す
図10(a)〜(d)の周波数特性に共通した特性を示すことになる。
【0086】
図17(a)〜(d)と
図10(a)〜(d)とを比較すると、共に33Hz〜160Hzの周波数において信号レベルが全てのリスニングエリアにおいてフラットになっており、33Hz以下および160Hz以上では、信号レベルが大きく減衰している。このように、低域逆フィルタ算出部167において設定される低域用ターゲット特性に基づいて、全てのリスニングエリアにおいて低域成分の音質改善を行うことができ、また、音量調節を行うことが可能となる。なお、低域の音響特性は、リスニングエリア内においてほとんど変化しないため、各リスニングエリアにおいて補正効果を維持することができる。
【0087】
また、
図18(a)〜(d)は、低域補正部323において、
図12(a)〜(d)に示される低域用ターゲット特性に基づいて算出された低域用逆フィルタを、M系列符号から成るオーディオ信号に適用した場合における各リスニングエリアの音響特性を示している。
図12(a)(b)に示した前席左右側のリスニングエリア(MFL,MFR)の低域用ターゲット特性は、33Hz〜160Hzの帯域で周波数特性の信号レベルがフラットになるように設定され、
図12(c)(d)に示した後席左右側のリスニングエリア(MRL,MRR)のターゲット特性は、33Hz〜160Hzの帯域の信号レベルが、
図12(a)(b)に示す場合に比べて、10[dB]低くなるように設定されている。
【0088】
一方で、
図18(a)(b)に示した前席左右側のリスニングエリア(MFL,MFR)における音響特性は、33Hz〜160Hzの周波数において信号レベルがフラットになっており、
図12(a)(b)と同じ周波数特性を示している。また、
図18(c)(d)に示す後席左右側のリスニングエリア(MRL,MRR)における音響特性も、信号レベルが
図12(c)(d)と同様に10[dB]程低くなっており、低域用ターゲット特性に応じて信号レベルが低減されている。このように、所望の音響特性となるように予め低域用ターゲット特性を設定することにより、リスニングエリア毎の音量を任意に設定・調節することが可能となる。
【0089】
中高域補正部324は、メモリ180より中高域用逆フィルタのフィルタ情報を取得して、入力されるオーディオ信号に対して中高域用のフィルタ処理を行う。フィルタ処理を行う場合に、中高域補正部324では、補正対象となるリスニングエリア(補正位置)に応じて中高域用逆フィルタに基づく補正係数(フィルタ係数)を決定する。
図19は、中高域補正部324において設定される補正係数を示した補正係数テーブルである。
図19に示す補正位置およびチャンネルCh1〜Ch4は、
図4に示す補正位置およびチャンネルCh1〜Ch4に対応している。また、
図19に示す補正係数CFL1〜CFL4,CFR1〜CFR4, CRL1〜CRL4, CRR1〜CRR4は、中高域用逆フィルタにおけるチャンネル毎の補正係数に対応している。
【0090】
さらに、
図19の前席の補正位置におけるCF1は、
図4の前席と同様に、前席左側のリスニングエリアMFLに対して測定マイクロホン150を設置して左右前のスピーカ(FLとFR)から測定信号を出力して求められた中高域用逆フィルタの補正係数を意味している。同様にして、
図19のCF2は、前席左側のリスニングエリアMFLにおいて左右後のスピーカ(RLとRR)とから測定信号を出力して求められた中高域用逆フィルタの補正係数を意味し、CR1は、後席左側のリスニングエリアMRLにおいて左右前のスピーカ(FLとFR)とから測定信号を出力して求められた中高域用逆フィルタの補正係数を意味し、CR2は、後席左側のリスニングエリアMRLにおいて左右後のスピーカ(RLとRR)とから測定信号を出力して求められた中高域用逆フィルタの補正係数を意味している。
【0091】
図19に示すようにして、中高域補正部324が、リスニングエリア(補正位置)の各チャンネルに応じて任意の補正係数を用いて補正処理を行うことにより、リスニングエリア毎に最良の音質でリスニングを行うことが可能となる。
【0092】
合成部325は、低域補正部323において低域用逆フィルタに基づいてフィルタ処理された低域のオーディオ信号と、中高域補正部324において中高域用逆フィルタに基づいてフィルタ処理された中高域のオーディオ信号とを、それぞれのチャンネルに対応させて合成する役割を有している。このように、合成部325において、低域用逆フィルタにより振幅および位相に対応するフィルタ処理が行われた低域のオーディオ信号と、中高域用逆フィルタにより振幅に対応するフィルタ処理が行われた中高域のオーディオ信号とが合成されることにより、振幅の影響が生ずる全帯域のオーディオ信号に対して最適な音場補正処理を行うことが可能になると共に、車室内のように位相の影響が生じ得る低域のオーディオ信号に対しても最適な音場補正処理を行うことが可能になる。
【0093】
IFFT部326は、低域と中高域とが合成された全帯域のオーディオ信号に対して、第2FFT部321による高速フーリエ変換の逆変換(逆フーリエ変換:Inverse FFT)処理を行う役割を有している。逆フーリエ変換処理されたオーディオ信号は、周波数領域のオーディオ信号からリニアなオーディオ信号へと変換される。逆フーリエ変換処理されたオーディオ信号は、アンプ部130に出力される。アンプ部130に出力されたオーディオ信号は、それぞれ該当するスピーカ141〜144より出力される。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態に係る音場測定装置100では、音場測定部160の帯域判定部165において、車室内で位相特性の影響を受けやすい周波数帯域を低域として判断すると共に、スピーカの再生能力以下の帯域となる再生不可領域と、位相特性の影響を受け難い中高域とを判断するため、低域に対しては、位相と振幅による影響を考慮した低域用逆フィルタを生成し、中高域に対しては、振幅による影響を考慮した中高域用逆フィルタを生成することが可能となる。
【0095】
さらに、音場測定装置100では、低域逆フィルタ算出部167において、各リスニングエリアの所望の音響特性を低域用ターゲット特性として予め設定しておくことにより、振幅特性だけでなく位相特性をも考慮した低域用逆フィルタを、リスニングエリア毎にFIRフィルタをベースとして生成することが可能となる。そして、生成された低域用逆フィルタを用いて音場補正部320の低域補正部323において、入力されるオーディオ信号に対してフィルタ処理を行うことにより、所望の音質および音量を実現した音響環境をリスニングエリア毎に実現することが可能となる。
【0096】
また、音場測定装置100では、重み量計算部169において、各チャンネルの音響特性の分散に基づいて、あるいは最大値と最小値との差値に基づいて、重み量Wtを算出し、基準音響特性に重み量Wtを乗算することにより、分散(又は差値)の大きさに応じて補正量を調整することが可能となる。このため、リスニングエリア内において周波数特性が大きく変動する場合であっても、変動の大きな周波数における補正量を小さくすることができ、従来のような平均的な音場補正により過剰に補正がされてしまうことを防止することが可能となる。
【0097】
以上、本発明に係る音場補正装置、音場補正フィルタ生成装置および音場補正フィルタ生成方法について一例を示し、図面を用いて詳細に説明したが、本発明に係る音場補正装置、音場補正フィルタ生成装置および音場補正フィルタ生成方法は、上述した実施の形態の例には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。
【0098】
例えば、本実施の形態に係る音場測定部160では、低域逆フィルタ算出部167において振幅特性と位相特性との音場補正を行うための低域用逆フィルタを算出し、重み量計算部169および中高域逆フィルタ算出部170において、振幅特性に対する音場補正を行うための中高域用逆フィルタを求め、音場補正装置300において、求められた低域用逆フィルタを用いて低域補正部323で低域の音場補正処理を行い、求められた中高域用逆フィルタを用いて中高域補正部324で中高域の音場補正処理を行う場合について説明を行った。
【0099】
しかしながら、重み量計算部169および中高域逆フィルタ算出部170により、全帯域に対して音場補正を行うための音場補正フィルタ(全帯域用逆フィルタ)を求め、求められた音場補正フィルタを用いて、全帯域に対する音場補正を行う構成とすることも可能である。既に説明したように、車室内のように狭い音響環境ではなく、低域の波長の長さが音響空間におけるエリア寸法よりも短い場合には、位相特性の影響が生じ難くなる。このため、振幅特性に対する音場補正を行うための逆フィルタを、分散あるいは差値に応じて求めることにより、最適な音場補正を行うことが可能となる。
【0100】
また、本実施の形態では、音場測定装置100と音場補正装置300とを別の装置として説明を行ったが、アンプ部130やスピーカ141等重複する構成が存在し、また、車室内のリスニングエリアを音場補正の対象としている点で共通している。このため、音場測定装置100と音場補正装置300との構成をまとめて1つの装置として、音場測定と音場補正との両方を1つの装置で実現する構成にすることも可能である。音場測定と音場補正との両方を1つの装置で実現することによって、車両毎に異なる車内環境(例えば、車室内にカーテンを設置したり、クッションなどを置いたりすることにより、音響特性が異なる)に応じて、低域用逆フィルタおよび中高域用逆フィルタを求めることが可能となり、個々の車室内の音響環境に適した音場補正を行うことが可能となる。