【解決手段】筒状容器2の内部を、上下に昇降可能なピストン3により区画し、ピストン3の上方または下方の空間がガスを貯蔵するための貯蔵空間とされ、筒状容器2の内壁面を外方に向けて押圧しながら走行する車輪を各々が備える複数のガイドローラ20が、周方向に間隔を空けてピストンの周囲に設けられるガスホルダの残存寿命を評価する残存寿命評価システム40に関する。この残存寿命評価システム40は、ガイドローラ20に設けられたひずみゲージGから継続的に得られる荷重情報に基づいて、疲労累積度Dを演算により求め、予め定められ疲労限界寿命Lとこの疲労累積度Dを比較する。疲労累積度Dが疲労限界寿命Lに達すると、残存寿命評価システム40は、残存寿命が尽きたことを知らせる警報を発する。
筒状容器の内部を、上下に昇降可能なピストンにより区画し、前記ピストンの上方または下方の空間がガスを貯蔵するための貯蔵空間とされ、前記筒状容器の内壁面を外方に向けて押圧しながら走行する車輪を各々が備える複数のガイドローラが、周方向に間隔を空けて前記ピストンの周囲に設けられるガスホルダの残存寿命を評価するシステムであって、
前記システムは、
前記ガイドローラに設けられた反力検出手段から継続的に得られる反力情報に基づいて、疲労累積度Dを演算により求め、
予め定められた疲労限界寿命Lと前記疲労累積度Dを比較する、
ことを特徴とするガスホルダの残存寿命評価システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態に係るガスホルダ1は、
図1〜
図3に示すように、円筒形状の外殻構造を有する筒状容器2と、筒状容器2の内部を上下に区画するピストン3とを備えるとともに、ピストン3の下方に形成された貯蔵空間4に対して、ガス出入口管5から供給されたガスを貯蔵し、さらに、ガス出入口管5を通じて貯留したガスを払い出しできるようになっている。
筒状容器2は、その側壁部7が、ガスホルダ1の設置対象位置を囲むように所定間隔で立設された基柱8と、基柱8同士の間に架設されるとともに、その板面を筒状容器2の内部に向けて配置された側板9とにより形成されている。
【0013】
ガスホルダ1は、管理装置30を備えている。
管理装置30は、
図1に示すように、ピストン3に設けられるひずみゲージGが計測するゲージ値に基づいて疲労累積度Dを求め、この疲労累積度Dに基づいて残存寿命に関する警報を発する残存寿命評価システム40を備えている。管理装置30は、
図1に示すように、ローラ反力の適否をシミュレーションにより評価するローラ反力評価システム50を備えている。
【0014】
ピストン3は、平面視した場合に円盤状に形成されるとともに、側壁部7の内壁面7aに沿って上下に昇降可能とされており、その昇降位置(上下位置)が貯蔵空間4へのガスの流出入に応じて変化するようになっている。ピストン3は、一日の内で、10回以上の昇降を繰り返すことがある。また、ピストン3の周囲には、ピストン3と側壁部7の内壁面7aとの間を封止して貯蔵空間4からのガスの漏洩を防ぐとともに、ピストン3が上下に円滑に摺動できるようにピストン3を案内するシール部10が設けられている。
【0015】
シール部10は、
図3に示すように、ガイドローラ20を備えており、このガイドローラ20は側壁部7の内壁面7aに対して当接するとともに、側壁部7の内壁面7aに沿って走行し、これによりピストン3を上下に案内する役割を果たす。
図3に示すように、ガスホルダ1は、ピストン3の周方向に均等な間隔をあけて、複数(本実施形態では24個)のガイドローラ20を備えている。また、ガスホルダ1は、向いている方位が南側と北側で異なるガイドローラ20を用いている。具体的には、
図3において、北側を向いている領域Aには固定式と称されるガイドローラ20を、南側を向いている領域Bにはばね式と称されるガイドローラ20を用いる。以下、領域Aに用いられるのをガイドローラ20Aと、また、領域Bに用いられるのをガイドローラ20Bという。
【0016】
本実施形態が、向いている方位により異なるガイドローラ20A,20Bを用いるのは、南側を向いている方が北側を向いている方より日射を強く受けるからである。つまり、日射を強く受ける南側は筒状容器2の熱膨張による変形が大きい。したがって、南側を向いている領域Bには、この筒状容器2の伸縮に追従できるように、弾性体であるばねによりローラを支持するガイドローラ20Bを用いる。一方、北側を向いている領域Aは、熱膨張による変形が、ガイドローラ20Aの走行に支障のないレベルであるから、コストのかかるばね式ではなく、ローラを単純に支持する固定式のガイドローラ20Aを用いる。以下、固定式のガイドローラ20A、ばね式のガイドローラ20Bの順に、その構造を説明する。
【0017】
図4に示すように、固定式のガイドローラ20Aは、上側に配置される上ローラ21Aと、下側に配置される下ローラ22Aの一対からなる。上ローラ21Aと下ローラ22Aは配置が異なるのを除くと構成が同じであるから、上ローラ21Aを説明するのにとどめ、下ローラ22Aには上ローラ21Aと同じ符号を
図4に付け、その説明を省略する。
上ローラ21Aは、シール部10の要素であるトラス構造の支持体11にシム12を介して固定される支持ブロック23と、支持ブロック23に支持される揺動軸24と、揺動軸24に回転可能に支持されるブラケット25と、ブラケット25に支持される一対の車軸26,26と、ブラケット25の内部において車軸26,26に夫々回転可能に支持される車輪27,27と、を備えている。
上ローラ21Aは、揺動軸24を介して支持される2輪の車輪27,27を備えることで、高い反力低減効果が発揮される。特に、揺動軸24を有し、揺動の中心を挟む両側に車輪27.27を配置することで、ピストン3が傾斜し、あるいは、車輪27,27の走行面である筒状容器2の内壁面7aに凹凸が生じている場合でも、各々の車輪27,27が凹凸面に追従することで反力は確実に半分に分担される。
また、揺動軸24を有する2輪の車輪27,27を採用することにより、1輪のローラだけに比べて、上ローラ21Aと下ローラ22Bの間隔を離すことができるので、ピストン3の傾きに対する抵抗を増強させる効果も見込まれる。
【0018】
次に、
図5に示すように、ばね式のガイドローラ20Bは、上側に配置される上ローラ21Bと、下側に配置される下ローラ22Bの一対からなる。上ローラ21Bと下ローラ22Bは配置が異なるのを除くと構成が同じであることは、ガイドローラ20Aと同様である。
上ローラ21Bは、支持体31に固定される支持ブロック33と、支持ブロック33により支持される揺動軸34と、揺動軸34に一端側が回転可能に支持されるブラケット35と、ブラケット35に支持される車軸36と、ブラケット35の内部において車軸36に回転可能に支持される車輪37と、ブラケット35の他端側にその基端側が支持され、支持体31に先端が押し付けられるばね38と、を備えている。
上ローラ21Bは、ブラケット35が、一端側が揺動軸34で支持されるとともに、他端側がばね38により支持体31に対して接近又は離間するピボット運動が可能とされている。したがって、上ローラ21Bと下ローラ22Bを備えるばね式のガイドローラ20Bを、南側を向く領域Bに設けると、強い日射により筒状容器2が伸縮したとしても、上ローラ21Bと下ローラ22Bが、この伸縮に追従してばね38を設けた他端側が変位するので、ガイドローラ20Bの円滑な走行を確保することができる。
【0019】
ガスホルダ1においては、上ローラ21Aはトラス構造を有する支持体11の上端に設置され、下ローラ22Aよりも構造的に柔な特性を有する。したがって、受ける反力は、上ローラ21Aのほうが下ローラ22Aより小さくなる。よって、ガスホルダ1では、下ローラ22Aの方だけに揺動軸24を有する2輪の車輪27,27を適用することもできる。
なお、南側を向く領域Bは日照により生じる変形に対応するために、ばね式のガイドローラ20Bを配置する。
【0020】
次に、管理装置30について、残存寿命評価システム40、ローラ反力評価システム50の順に説明する。
残存寿命評価システム40は、ガイドローラ20に生ずる反力の履歴から残存寿命を自動で評価し警報を発するシステムである。
ガスホルダ1の作製に当たっては、設計年数を満足する疲労性能を有するよう、試運転時にローラ反力を調整している。しかし、経年的な走行面の腐食、ダスト付着などによる凹凸によってガイドローラ20の反力が増加したり、反力のアンバランスによりローラ反力が増加したりすることがある。これらは経年的に変化するもので、初期の試運転時の反力で寿命を判断すると、残存寿命を過少評価または過大評価してしまうおそれがある。そこで、リアルタイムに反力履歴を算出し、残存寿命を算定し、一定の残存寿命より低下した場合に警報が作動するシステムである残存寿命評価システム40を提案する。
【0021】
図6(a)にシステム構成を示している。
残存寿命評価システム40は、ここでは図示を省略するひずみゲージGで検知された値(ひずみ量)を取得して反力を演算により求る反力演算器41と、反力演算器41で得られた反力に基づいて疲労累積度Dを演算する疲労累積度演算器43と、疲労累積度演算器43で得られた疲労累積度Dと予め定められた疲労限界寿命Lとを比較して、残存寿命の有無を判定するとともに、残存寿命が尽きていると判定すると警報を発する警報器45と、を備えている。
【0022】
ひずみゲージGは、No.1からNo.24の識別番号が付与されている24個のガイドローラ20の各々に設けられており、反力演算器41は、各々のひずみゲージGから取得するひずみ量に基づいて、No.1からNo.24のガイドローラ20の各々について24個の反力Pを求める。なお、24個の反力Pを求めるのはあくまで一例であり、例えば、偶数の識別番号が付与されているガイドローラ20についてだけ反力Pを設けるというように、反力Pを求めるガイドローラ20(ひずみゲージG)を絞ることができる。
反力演算器41は、ピストン3の高さ方向の位置に関する情報を逐次取得するとともに、取得した位置情報と求められた反力Pとを対応付けたデータ群として記憶する。例えば、ガスホルダ1を高さ方向に10分割し、分割された各々の領域を、H1,H2,…,H10とすると、反力演算器41は、反力P1,P2,…,P23,P24毎に、かつ、H1,H2,…,H10毎に反力Pを求める。なお、10分割はあくまで一例であり、10未満の分割数、又は、10を超える分割数を選択することもできる。
【0023】
図7(a)に、データ群を例示する。
図7(a)において、P(1−1)は、高さH1で得られたNo.1のガイドローラ20の反力であることを示し、P(2−1)は、高さH2で得られたNo.1のガイドローラ20の反力であることを示している。
【0024】
ピストン3は、前述したように、昇降を繰り返す。
図8に、昇降過程を例示する。
図8において、白抜き矢印が、昇降の行程を示しており、この例では1回目には、ピストン3が筒状容器2の最上位の領域H1から最下位の領域H10まで降下し、次いで、2回目には最下位の領域H10から領域H3まで上昇し、次の3回目には領域H3から領域H7まで降下する。4回目以降も同様である。
反力演算器41は、1回目、2回目…の昇降のたびに、
図7(a)に示した反力Pからなるデータ群を演算により求める。つまり、反力演算器41は、
図7(b)に示すように、1回目、2回目…の昇降の回数に対応するデータ群を求め、記憶することになる。
図8に示したように、最上位の領域H1から最下位の領域H10の中で昇降に関わらない領域が存在し得るが、当該領域についての反力Pは得られないことになる。
【0025】
反力演算器41は、求めた反力Pに関するデータ群を疲労累積度演算器43に送る。
疲労累積度演算器43は、反力演算器41から逐次送られるデータ群に基づいて、疲労累積度Dを演算する。
図6(b)に、反力演算器41で得られた反力の強度レベルごとの頻度を累積した結果の一例を示している。これは、ある特定の識別番号のガイドローラ20について、ある特定の高さ方向の領域のものであり、このような結果が、領域H1〜H10の各々について、かつ、ピストン3に設けられる全てのガイドローラ20について求められる。
疲労累積度演算器43は、求めた疲労累積度Dに関する情報を警報器45に送る。
【0026】
疲労累積度演算器43は、反力の強度レベルごとの頻度を累積した結果に基づいて、以下の式(1)に基づいて、疲労累積度Dを求める。この疲労累積度Dもまた、領域H1〜H10の各々について、かつ、ピストン3に設けられる全てのガイドローラ20について求められる。疲労累積度演算器43は、求めた疲労累積度Dを警報器45に送る。
【0027】
警報器45は、取得した疲労累積度Dが予め定められる安全率Fsとの関係が式(2)を満たしていれば残存寿命があり、そうでなければ残存寿命がないものと判断する。なお、
図6(c)に、予め試験により求められる疲労限界寿命線
図DLを示すが、式(2)は、
図6(b)に示される反力の強度レベルごとの頻度を累積した結果が、
図6(c)に示される疲労限界寿命線
図DLの範囲を超えるか否かを示している。例えば、
図6(b)の反力レベルがP5についての疲労累積度D
P5を
図6(c)に展開し、疲労限界寿命線
図DLに達すれば残存寿命が尽きたと判定する。
D=Σ(ni/Ni) … 式(1)
ni:ある反力レベルΔPiの頻度
Ni:試験で求められるΔPiに対応する疲労寿命
D≧1/Fs … 式(2)
【0028】
警報器45は、残存寿命が尽きたと判定すると、例えば音声により残存寿命が尽きたことを知らせる警報を発する。警報は、音声に限らず、文字を含む画像情報として、液晶表示装置などのディスプレイに表示させることができる。
【0029】
次に、管理装置30のもう一つの機能であるローラ反力評価システム50について説明する。
ガイドローラ20の反力を実測により求めた後に、ローラ反力の調整をガスホルダ1の試運転時に行う。この反力調整は、ピストン3とガイドローラ20との間に挿入するシムの厚さを変更して行う。通常、シム厚さの調整は、介在させるシムの枚数を変更することで行われる。従来、シム厚さの変更は経験的な判断で決めており、調整に失敗し繰り返し調整することもあり、そうすると、コスト増加や納期遅延を発生させてしまう。そこで、ローラ反力調整において経験的な判断に寄らない手段が望まれている。そこで、本実施形態では、以下に説明するように、コンピュータによるシミュレーションを使用したシム厚さ判定による高精度ローラ反力調整システムを提案する。
【0030】
ガスホルダ1を
図9(a)に示すようにメッシュに分割してシミュレーションにより求めた、全てのガイドローラ20の反力を事前に予測した結果の一例を
図9(b)に示す。この例では24個のガイドローラ20がピストン3の周囲に等間隔で設けられているものとする。各ガイドローラ20には、1から24までの識別番号(No.)が付与されている。
図9(b)は、シムを調整する前の結果と、調整前の結果からシムを調整した後の結果を併せて示している。つまり、調整前の結果では、No.1及びNo.13のガイドローラ20の反力が大きいために、当該位置のシムを薄くする調整を行った結果が示されている。このシミュレーションを適用したローラ反力の調整手順を、
図10を参照して説明する。
【0031】
図10に示すように、ローラ反力の調整手順は、ピストン3を試運転してNo.1からNo.24までの全てのガイドローラ20の反力を実測により求める(
図10 S101)。このとき、各ガイドローラ20について、予め定められた厚さのシム(初期シム量モデル)が設けられている。反力は、ピストン3を上から下又は下から上へ間欠的に移動させながら、ガスホルダ1の高さ方向の複数の位置で計測する。計測する複数の位置は、例えば、前述した10分割(H1〜H10)の各領域とし、No.1からNo.24のガイドローラ20の反力をH1〜H10の各領域について計測する。
【0032】
本実施形態によるローラ反力の調整手順を実行する前提として、
図11に示されるように、許容反力範囲が設定されており、各高さで測定された反力が、この許容反力範囲に入るか否かを判定する(
図10 S103)。
図11は、No.1のガイドローラ20が中間よりも少し下の位置で許容反力範囲を超えており、No.2のガイドローラ20が高さ方向の全域で許容反力範囲に収まっている例を示している。
上記判定において許容反力範囲に入っていなければ、ローラ反力評価システム50によるシミュレーションを実行する。
図11の場合、No.1のガイドローラ20(シム調整前)が許容反力範囲を超えているので、シミュレーションを実行する(
図10 S103 NG)。No.1からNo.24の全てのガイドローラ20が、測定された高さのすべてにおいて許容反力範囲に収まっていれば、シミュレーションを実行することなくローラ反力の調整は完了する(
図10 S103 OK)。
【0033】
シミュレーションでは、初期シム量モデルから各ガイドローラ20のシム厚さを変更したシム量モデルを採用する(
図10 S105)。新たなシム量モデルについて、No.1からNo.24の全てのガイドローラ20について、例えば、高さ方向のH1〜H10の各領域における反力を測定する(
図10 S107)。次いで、測定された反力を予め設定されている許容反力範囲と照合することで、新たなシム量モデルによる反力が許容範囲に収まるかの判定を行う(
図10 S109)。そして、No.1からNo.24の全てのガイドローラ20が、測定された高さのすべてにおいて許容反力範囲に収まっていれば、次のガスホルダ1について、以上の手順と同様にしてローラ反力の調整を行なう(
図10 S109 OK)。一方、いずれかのガイドローラ20の反力が許容反力範囲を超えていれば、さらに新たなシム量モデルに変えてシミュレーションを実行し(
図10 S109 NG)、これを全てのガイドローラ20の反力が許容反力範囲に収まるまで繰り返す。
【0034】
残存寿命評価システム40及びローラ反力評価システム50を有効に機能させるためには、ピストン3の周囲に配置してある全てのガイドローラ20の反力を適切な範囲に収めることが必要である。特許文献2においても、ガイドローラの反力を実測して、その結果に基づいて各々のガイドローラの反力を調整している。反力はひずみゲージにより測定し、事前に試験で求めておいた反力−ひずみ線図に、測定されたひずみを照合して反力を換算により求めている。このとき、ひずみゲージによる測定結果の精度が高いことが、ガイドローラ20の反力を精度よく求めるために必要である。
【0035】
そこで、本実施形態では、より高い精度で反力を測定するためのひずみゲージGの配置位置を、
図12を参照して説明する。
はじめに、2輪の車輪27,27を備える固定式の上ローラ21A(または、下ローラ22A)は、
図12(a)に示すように、車輪27,27を支持するブラケット25に、ひずみゲージGを貼り付ける。車輪27と車輪27の間は、車輪27と車輪27が走行面上を走行すると、曲げ応力が作用する領域である。そして、ブラケット25を構成する部材は板厚が比較的薄いので、例えば車輪27の側面に貼り付けるのに比べて、同じ反力に対するひずみの出力が大きいので、
図12(a)のグラフに示すように、ひずみを精度よく測定することができる。貼り付けるひずみゲージGは1枚に限らず、複数枚を貼り付けることもできる。ちなみに、車輪27は幅が100mm程度に達するため、側面に貼り付けたひずみゲージGのひずみ出力は小さく、反力の測定精度は低くなる。
【0036】
次に、1輪の車輪37を備えるばね式の上ローラ21B(または、下ローラ22B)についても、
図12(b)に示すように、ブラケット35に、ひずみゲージGを貼り付ける。この位置は、揺動軸34とばね38の間に位置しており、ばね38の伸縮に追従して曲げ応力が作用する領域である。しかも、ブラケット35を構成する部材の板厚が比較的薄いので、ひずみを精度よく測定することができる。
【0037】
さらに、
図12(c)に示すように、揺動軸24にひずみゲージGを貼り付けることもできる。
この場合、ひずみゲージGは、揺動軸24の外周面に貼り付ける方法と、揺動軸24を中空状にしてその内周面に貼り付ける方法とがある。また、ここでは2輪の上ローラ21A(または下ローラ22A)を例にしたが、ばね式の1輪ローラ、多輪ローラにも適用できる。
【0038】
以上説明した本実施形態のガスホルダ1の効果について説明する。
ガスホルダ1は、残存寿命評価システム40が、疲労累積度Dをリアルタイムに演算するので、残存寿命を高い精度で評価できる。しかも、残存寿命が尽きたと判定すると警報を発するので、迅速に適切な対応を採ることができる。
また、本実施形態のガスホルダ1は、ローラ反力評価システム50が、シミュレーションによりシム厚さの判定を行って最適なシム厚さを把握できるので、ローラ反力の調整作業を軽減できる。
また、高い精度でひずみ、つまり反力を測定するためにひずみゲージGの配置位置を選択すると、残存寿命評価システム40においては残存寿命の評価の精度向上に寄与し、ローラ反力評価システム50においては、最適なシム厚さの評価に寄与する。
【0039】
さらに、本実施形態のガスホルダ1は、日射による筒状容器2の変形が大きくなる南側にばね式のガイドローラ20Bを設けるので、変形に追従した車輪の走行が可能になり、北側にもばね式のガイドローラ20Bを設けるのに比べてコストの増加を抑えることができる。一方で、北側に配置される固定式のガイドローラ20Aについては、揺動軸24を挟む両側に回転可能に支持される車輪27,27を備えることで、各々の車輪が受ける反力を低減し、かつ均等に分担できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、残存寿命評価システム40は、演算により求めた疲労累積度Dが予め定められた疲労限界寿命Lに達すると警報を発することにしているが、演算により求めた疲労累積度Dをディスプレイに表示させることもできる。また、現時点での疲労累積度Dが、予め定められた疲労限界累積度D
Eに対して、例えば80%に達しているといったレベルをディスプレイに表示させることもできる。さらに、現時点での疲労累積度Dと、この疲労累積度Dに達するまでの経過時間tと、を用い、疲労限界累積度D
Eに達するまでに要する時間Tを演算により求め、この時間Tに基づいて、疲労限界累積度D
Eに達する日時を予測し、これをディスプレイに表示させることもできる。
また、残存寿命評価システム40は、反力演算器41、疲労累積度演算器43及び警報器45の3つの機能を区分したが、これはあくまで一例に過ぎない。例えば、疲労累積度演算器43において、疲労累積度Dと疲労限界寿命線
図DLを比較して、残存寿命が尽きたか否かを判定し、警報器45に警報を発するように指示することもできる。