(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-156507(P2015-156507A)
(43)【公開日】2015年8月27日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20150731BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20150731BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20150731BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20150731BHJP
【FI】
H01L29/78 301D
H01L29/78 616S
H01L29/06 301F
H01L29/06 301D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-84525(P2015-84525)
(22)【出願日】2015年4月16日
(62)【分割の表示】特願2014-4209(P2014-4209)の分割
【原出願日】2007年9月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(72)【発明者】
【氏名】泉 直希
(72)【発明者】
【氏名】佐田 智庸
(57)【要約】
【課題】素子の耐圧を下げることなく、半導体層の層厚を小さくする。
【解決手段】BOX層4上に積層されたN
−型のSOI層5に、環状のディープトレンチ6が形成されている。ディープトレンチ6は、SOI層5の表面からBOX層4に至る深さを有している。ディープトレンチ6に取り囲まれる素子形成領域9には、P型のボディ領域10と、このボディ領域10以外の残余の領域からなるN
−型のドリフト領域11とが形成されている。ボディ領域10の表層部には、N
+型のソース領域12が形成されている。ドリフト領域11の表層部には、N
+型のドレイン領域14が形成されている。ドリフト領域11には、SOI層5のN型不純物濃度よりも高く、かつ、ドレイン領域のN型不純物濃度よりも低いN型不純物濃度を有するN型領域42が形成されている。N型領域42の最深部は、ドレイン領域14よりも深い位置に達している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層上に積層され、素子形成領域を有する第1導電型の半導体層と、
前記素子形成領域の周縁部に形成される第2導電型のボディ領域と、
前記素子形成領域において、前記ボディ領域以外の残余の領域からなる第1導電型のドリフト領域と、
前記ボディ領域の表層部に形成された第1導電型のソース領域と、
前記ドリフト領域の表層部に形成された第1導電型のドレイン領域と、
前記ドリフト領域の表面に形成され、前記ドレイン領域を露出させる開口部を有する絶縁膜と、
前記ドリフト領域において、前記絶縁膜の前記開口部の周縁部およびその内側の領域に選択的に前記ドレイン領域に対して隣接して形成され、前記ドレイン領域の下部全体を覆う第1部分を含み、最深部が前記ドレイン領域よりも深い位置に達し、前記ドリフト領域の第1導電型不純物濃度よりも高く、かつ、前記ドレイン領域の第1導電型不純物濃度よりも低い第1導電型不純物濃度を有する第1導電型領域とを含み、
前記ドリフト領域において、前記ドレイン領域および前記第1導電型領域を除く領域は、実質的に一定の不純物濃度を有し、
前記絶縁膜は、厚さが一定の第1部分と、前記第1部分から前記開口部にかけて厚さが減少する第2部分とを含み、
前記第1導電型領域における前記ドリフト領域の表面に沿う方向の端部が、前記絶縁膜の前記第2部分の下領域に位置している、半導体装置。
【請求項2】
前記第1導電型領域は、前記ドレイン領域の側方部に前記ドレイン領域に対して隣接して形成された第2部分を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1導電型領域の前記第2部分は、前記絶縁膜の前記開口部の周縁部に形成されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導電型領域の前記第2部分における前記ドリフト領域の表面に沿う方向の厚さは、前記第1導電型領域の前記第1部分における前記ドリフト領域の深さ方向の厚さよりも薄い、請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ドリフト領域の表面において、前記ソース領域から前記ボディ領域を介して前記ドレイン領域へ向かって延びるように形成され、ゲート絶縁膜を介して配置されたゲート電極をさらに含み、
前記第1導電型領域の前記ドリフト領域の表面に沿う方向の端部は、前記ゲート電極に対して前記ドレイン領域側に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁膜は、LOCOS酸化膜を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ボディ領域の外側を取り囲む絶縁体からなる素子分離層をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記素子分離層は、前記半導体層の表面から前記絶縁層に至る深さを有している、請求項7に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LDMOSFET(Lateral Double diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、LDMOSFETを備える半導体装置には、その基体として厚膜SOI(Silicon On Insulator)基板を採用することにより、LDMOSFETの高耐圧化を図ったものがある。
図6は、高耐圧のLDMOSFETを備える半導体装置の模式的な断面図である。
半導体装置101の基体をなす厚膜SOI基板102は、シリコン基板103上に、SiO
2(酸化シリコン)からなるBOX(Buried Oxide)層104を介して、Si(シリコン)からなるSOI層105を積層した構造を有している。
【0003】
SOI層105には、環状のディープトレンチ106がその表面から掘り下げて形成されている。ディープトレンチ106の最深部は、BOX層104に達している。ディープトレンチ106内は、シリコン酸化膜107を介して、ポリシリコン108で埋め尽くされている。これにより、ディープトレンチ106に囲まれる領域は、その周囲から絶縁分離(誘電体分離)された素子形成領域となっている。
【0004】
素子形成領域には、LDMOSFETが形成されている。具体的には、素子形成領域において、SOI層105には、ディープトレンチ106の側面に沿って、P型のボディ領域109が形成されている。素子形成領域におけるボディ領域109以外の領域110は、N
−型(低濃度N型)のドリフト領域である。ボディ領域109の表層部には、N
+型(高濃度N型)のソース領域111と、P
+型(高濃度P型)のボディコンタクト領域112とが互いに隣接して形成されている。ドリフト領域110の表層部には、N
+型のドレイン領域113が形成されている。
【0005】
ドリフト領域110の表面には、ボディ領域109とドレイン領域113との間に、LOCOS酸化膜114が形成されている。SOI層105の表面上には、ソース領域111とLOCOS酸化膜114との間に、ゲート酸化膜115が形成されている。ゲート酸化膜115上には、ゲート電極116が形成されている。
この構造では、ドレイン領域113に印加される正極性の高電圧(ドレイン電圧)を、ドリフト領域110に生じる空乏層とBOX層104とに分担させることができ、LDMOSFETの高耐圧化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−19508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LDMOSFETのさらなる高耐圧化を図るためには、ドリフト領域110の不純物濃度をさらに低くすればよい。しかし、ドリフト領域110の不純物濃度を低下させると、空乏層がドレイン領域113に向かって大きく延び(空乏層の深さ方向の幅が大きくなり)、空乏層容量が低下する。その結果、BOX層104によるドレイン電圧の分担が小さくなるので、耐圧を維持するためには、SOI層105(ドリフト領域110)の層厚を大きくせざるを得ない。たとえば、BOX層104の層厚が1.5μmであり、ドリフト領域110のN型不純物濃度が3.5×10
14/cm
3である場合、600Vの耐圧を得るためには、SOI層105の層厚を40μm以上にしなければならない。SOI層105の層厚が大きいと、ディープトレンチ106の形成が困難となり、半導体装置の製造に手間および時間がかかってしまう。
【0008】
また、SOI層105の層厚の増大を回避するために、BOX層104の層厚を大きくすることにより、BOX層104によるドレイン電圧の分担を増やし、ドリフト領域110における空乏層の広がりを抑えることが考えられる。しかし、現在の技術では、層厚4μm以上のBOX層104を有する厚膜SOI基板102を製造することはできない。したがって、ドリフト領域110のN型不純物濃度が3.5×10
14/cm
3である場合に、600Vの耐圧を得るためには、BOX層104の層厚を4μmにしても、SOI層105の層厚を40μm以下にすることはできない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、素子の耐圧を下げることなく、半導体層の層厚を小さくすることができる、半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、絶縁層と、前記絶縁層上に積層され、素子形成領域を有する第1導電型の半導体層と、前記素子形成領域の周縁部に形成される第2導電型のボディ領域と、前記素子形成領域において、前記ボディ領域以外の残余の領域からなる第1導電型のドリフト領域と、前記ボディ領域の表層部に形成された第1導電型のソース領域と、前記ドリフト領域の表層部に形成された第1導電型のドレイン領域と、前記ドリフト領域の表面に形成され、前記ドレイン領域を露出させる開口部を有する絶縁膜と、前記ドリフト領域において、前記絶縁膜の前記開口部の周縁部およびその内側の領域に選択的に前記ドレイン領域に対して隣接して形成され、前記ドレイン領域の下部全体を覆う第1部分を含み、最深部が前記ドレイン領域よりも深い位置に達し、前記ドリフト領域の第1導電型不純物濃度よりも高く、かつ、前記ドレイン領域の第1導電型不純物濃度よりも低い第1導電型不純物濃度を有する第1導電型領域とを含み、前記ドリフト領域において、前記ドレイン領域および前記第1導電型領域を除く領域は、実質的に一定の不純物濃度を有する、半導体装置である。
【0011】
この半導体装置では、絶縁層上に積層された第1導電型の半導体層の素子形成領域には、第2導電型のボディ領域と、このボディ領域以外の残余の領域からなる第1導電型のドリフト領域とが形成されている。ドリフト領域は、半導体層の第1導電型不純物濃度と等しい第1導電型不純物濃度を有している。ボディ領域の表層部には、第1導電型のソース領域が形成されている。ドリフト領域の表層部には、第1導電型のドレイン領域が形成されている。ドリフト領域には、半導体層(ドリフト領域)の第1導電型不純物濃度よりも高く、かつ、ドレイン領域の第1導電型不純物濃度よりも低い第1導電型不純物濃度を有する第1導電型領域が形成されている。第1導電型領域の最深部は、ドレイン領域よりも深い位置に達している。
【0012】
第1導電型領域が形成されていることにより、空乏層がドレイン領域に向かって延びるのを抑制することができる。そのため、素子形成領域に形成される素子の耐圧を下げることなく、半導体層の層厚を小さくすることができる。
たとえば、半導体層(ドリフト領域)の不純物濃度が3.5×10
14/cm
3であり、ドレイン領域の第1導電型不純物濃度が10
20/cm
3である場合、前記第1導電型領域における第1導電型不純物濃度の極大値(ピーク濃度)は、10
18〜19/cm
3であることが好ましい。また、第1導電型領域は、ドレイン領域の表面からの深さが0〜10μmの位置でピーク濃度を有することが好ましく、ドレイン領域の表面からの深さが2〜5μmの位置でピーク濃度を有することがより好ましい。ピーク濃度が10
18〜19/cm
3であり、そのピーク濃度をドレイン領域の表面からの深さが2〜5μmの位置で有する場合、絶縁層の層厚を1.5μmとし、半導体層の層厚を30μmとして、600V以上の素子耐圧を得ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記第1導電型領域は、前記ドレイン領域の側方部に前記ドレイン領域に対して隣接して形成された第2部分を含む、請求項1に記載の半導体装置である。
請求項3記載の発明は、前記第1導電型領域の前記第2部分は、前記絶縁膜の前記開口部の周縁部に形成されている、請求項2に記載の半導体装置である。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記第1導電型領域の前記第2部分における前記ドリフト領域の表面に沿う方向の厚さは、前記第1導電型領域の前記第1部分における前記ドリフト領域の深さ方向の厚さよりも薄い、請求項2または3に記載の半導体装置である。
請求項5記載の発明は、前記ドリフト領域の表面において、前記ソース領域から前記ボディ領域を介して前記ドレイン領域へ向かって延びるように形成され、ゲート絶縁膜を介して配置されたゲート電極をさらに含み、前記第1導電型領域の前記ドリフト領域の表面に沿う方向の端部は、前記ゲート電極に対して前記ドレイン領域側に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置である。
【0015】
請求項6記載の発明は、前記絶縁膜は、LOCOS酸化膜を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置である。
請求項7記載の発明は、前記ボディ領域の外側を取り囲む絶縁体からなる素子分離層をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置である。
請求項8記載の発明は前記素子分離層は、前記半導体層の表面から前記絶縁層に至る深さを有している、請求項7に記載の半導体装置である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の参考例に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【
図2A】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図2B】
図2Aに示す工程の次の工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図2C】
図2Bに示す工程の次の工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図2D】
図2Cに示す工程の次の工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図2E】
図2Dに示す工程の次の工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図3】N型拡散領域を形成するための他の手法(
図2Bに示す工程とは異なる手法)について説明するための模式的な断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【
図5A】
図4に示す半導体装置の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図5B】
図5Aに示す工程の次の工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図5C】
図5Bに示す工程の次の工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図5D】
図5Cに示す工程の次の工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図6】従来のLDMOSFETを備える半導体装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態および参考例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の参考例に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
半導体装置1は、厚膜SOI基板2を備えている。厚膜SOI基板2は、シリコン基板3上に、SiO
2からなる絶縁層としてのBOX層4を介して、SiからなるN
−型のSOI層5を積層した構造を有している。BOX層4の層厚は、たとえば、1.5μmである。SOI層5の層厚は、たとえば、30μmである。SOI層5のN型不純物濃度は、たとえば、3.5×10
14/cm
3である。
【0018】
半導体層としてのSOI層5には、環状のディープトレンチ6が層厚方向に貫通して形成されている。すなわち、SOI層5には、その表面からBOX層4に至る深さを有する、環状のディープトレンチ6が形成されている。ディープトレンチ6の内側面は、シリコン酸化膜7で覆われている。シリコン酸化膜7の内側は、ポリシリコン8で埋め尽くされている。これにより、ディープトレンチ6に囲まれる領域は、BOX層4およびシリコン酸化膜7により、その周囲から絶縁分離(誘電体分離)された素子形成領域9となっている。
【0019】
素子形成領域9には、LDMOSFETが形成されている。具体的には、素子形成領域9において、SOI層5には、P型のボディ領域10が形成されている。ボディ領域10は、ディープトレンチ6の側面に沿って環状をなし、SOI層5の全厚にわたって形成されている。また、素子形成領域9におけるボディ領域10以外の領域11は、N
−型のドリフト領域であり、SOI層5のN型不純物濃度と同じN型不純物濃度を有している。
【0020】
ボディ領域10の表層部には、N
+型のソース領域12と、P
+型のボディコンタクト領域13とが環状に形成されている。ソース領域12およびボディコンタクト領域13は、互いに隣接している。
ドリフト領域11の表層部には、平面視で中央部に、N
+型のドレイン領域14が形成されている。ドレイン領域14のN型不純物濃度は、たとえば、10
20/cm
3である。
【0021】
また、ドリフト領域11には、SOI層5のN型不純物濃度よりも高く、かつ、ドレイン領域14のN型不純物濃度よりも低いN型不純物濃度を有するN型領域15が形成されている。
図1に示す半導体装置1では、N型領域15は、ドレイン領域14のBOX層4に面する下部全体を覆うようにドレイン領域14の下方部のみに選択的に形成され、ドレイン領域14よりも深い位置に、ドレイン領域14に対して間隔を空けて対向して形成されている。N型領域15は、たとえば、N型不純物濃度の極大値(ピーク濃度)が10
19/cm
3であり、そのピーク濃度をドレイン領域14の表面からの深さが5μmの位置に有している。
【0022】
ドリフト領域11の表面には、ボディ領域10との境界から所定間隔を空けた位置とドレイン領域14との間に、LOCOS酸化膜16が形成されている。ソース領域12とLOCOS酸化膜16との間において、SOI層5の表面上には、ゲート酸化膜17が形成されている。ゲート酸化膜17上には、ゲート電極18が形成されている。また、LOCOS酸化膜16上には、フィールドプレート19がゲート電極18と一体的に形成されている。
【0023】
また、厚膜SOI基板2上は、SiO
2からなる層間絶縁膜20で覆われている。層間絶縁膜20には、ソース領域12およびボディコンタクト領域13に臨むソースコンタクトホール21と、ドレイン領域14に臨むドレインコンタクトホール22とが貫通して形成されている。
層間絶縁膜20上には、ソース配線23およびドレイン配線24が形成されている。ソース配線23は、ソースコンタクトホール21を介して、ソース領域12およびボディコンタクト領域13に接続されている。ドレイン配線24は、ドレインコンタクトホール22を介して、ドレイン領域14に接続されている。
【0024】
ソース配線23を接地し、ドレイン配線24に正極性の高電圧(ドレイン電圧)を印加しつつ、ゲート電極18の電位を制御することにより、ボディ領域10におけるゲート酸化膜17との界面近傍にチャネルを形成して、ソース領域12とドレイン領域14との間に電流を流すことができる。
そして、ドレイン領域14のBOX層4側にN型領域15が形成されていることにより、ドレイン電圧の印加時に、空乏層がドレイン領域14に向かって延びるのを抑制することができる。そのため、素子形成領域9に形成されるLDMOSFETの耐圧を下げることなく、SOI層5の層厚を小さくすることができる。たとえば、BOX層4の層厚が1.5μmであり、ドリフト領域11のN型不純物濃度が3.5×10
14/cm
3であり、N型領域15のピーク濃度が10
19/cm
3であり、そのピーク濃度をドレイン領域14の表面からの深さが5μmの位置に有する場合、SOI層5の層厚を30μmとして、600V以上の耐圧を得ることができる。すなわち、600V以上の耐圧を得るために、従来の構造では、SOI層の層厚が40μm以上必要であるのに対し、半導体装置1では、SOI層5の層厚が30μmでよい。SOI層5の層厚を小さくすることにより、ディープトレンチ6を容易に形成することができるようになるので、半導体装置1の製造に要する手間および時間を低減することができる。
【0025】
図2A〜
図2Eは、半導体装置1の製造方法を工程順に示す模式的な断面図である。
たとえば、イオン注入法によって、実質的に一定の不純物濃度を有するN
−型シリコン基板内にO(酸素)を埋め込んだ後、そのOを熱酸化させることにより、
図2Aに示すように、層厚1.5μmのBOX層4および層厚25μmのN
−型シリコン層21を有する厚膜SOI基板が作成される。この作成過程において、B(ボロン)などのP型不純物がN
−型シリコン層21に選択的に注入されることにより、P型領域22が形成される。
【0026】
次いで、
図2Bに示すように、熱酸化法により、N
−型シリコン層21上に、SiO
2からなる熱酸化膜23が形成される。そして、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、熱酸化膜23に、N
−型シリコン層21の表面を部分的に露出させる開口24が形成される。その後、熱酸化膜23上に、As(ヒ素)またはP(リン)などのN型不純物を含む材料からなる塗布膜25が形成される。塗布膜25は、開口24内にも形成され、開口24内でN
−型シリコン層21の表面に接する。
【0027】
つづいて、熱処理が行われることにより、N
−型シリコン層21における塗布膜25と接している部分(開口24に臨む部分)に、塗布膜25中のN型不純物が拡散する。このN型不純物の拡散により、
図2Cに示すように、N
−型シリコン層21の表層部に、N型拡散領域26が形成される。N型拡散領域26の形成後、N
−型シリコン層21上から熱酸化膜23および塗布膜25が除去される。
【0028】
その後、
図2Dに示すように、エピタキシャル成長法により、N
−型シリコン層21上に、N
−型シリコン層21のN型不純物濃度と同じN型不純物濃度を有するN
−型エピタキシャル層27が形成される。N
−型エピタキシャル層27は、層厚が5μmに形成される。これにより、N
−型シリコン層21およびN
−型エピタキシャル層27からなる層厚30μmのSOI層5が得られる。そして、N
−型エピタキシャル層27におけるP型領域22上の部分に、BなどのP型不純物が選択的に注入されることにより、P型領域28が形成される。これにより、P型領域22,28からなるボディ領域10が得られるとともに、N
−型シリコン層21およびN
−型エピタキシャル層27からなるドリフト領域11が得られる。また、N型拡散領域26に含まれるN型不純物がN
−型エピタキシャル層27に拡散することにより、ドリフト領域11に、N型領域15が形成される。
【0029】
その後、
図2Eに示すように、LOCOS法により、ドリフト領域11の表面に、LOCOS酸化膜16が形成される。また、熱酸化法により、ボディ領域10の表面とドリフト領域11の表面とに跨って、ゲート酸化膜17が形成される。さらに、P−CVD(Plasma Chemical Vapor Deposition:プラズマ化学気相成長)法により、SOI層5、LOCOS酸化膜16およびゲート酸化膜17上に、N型不純物が高濃度にドーピングされたポリシリコンの堆積層が形成され、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、そのポリシリコンの堆積層がパターニングされる。これにより、ゲート酸化膜17上に、ゲート電極18が形成されるとともに、LOCOS酸化膜16上に、フィールドプレート19が形成される。
【0030】
その後、イオン注入法により、ボディ領域10の表層部に、ソース領域12およびボディコンタクト領域13が形成され、ドリフト領域11の表層部に、ドレイン領域14が形成される。そして、層間絶縁膜20、ソース配線23およびドレイン配線24が形成されると、
図1に示す構造の半導体装置1が得られる。
なお、
図2Aに示す工程の後、
図2Bに示す工程に代えて、
図3に示す工程が行われてもよい。
図3に示す工程では、まず、熱酸化法により、N
−型シリコン層21上に、SiO
2からなる熱酸化膜23が形成される。つづいて、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、熱酸化膜23の表面に、N型拡散領域26を形成すべき部分に対向する凹部31が形成される。その後、イオン注入法により、熱酸化膜23の凹部31からN
−型シリコン層21の表層部に、AsまたはPなどのN型不純物が注入される。そして、熱処理(アニール処理)が行われることにより、
図2Cに示すように、N
−型シリコン層21の表層部に、N型拡散領域26が形成される。熱酸化膜23は、N型拡散領域26の形成後に除去される。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
図4において、
図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付して示している。また、以下では、
図4に示す構造に関して、
図1に示す構造との相違点を中心に説明し、
図1に示す各部に相当する部分についての説明を省略する。
図1に示す半導体装置1では、ドレイン領域14からBOX層4側に間隔を空けて、N型領域15が形成されている。これに対し、
図4に示す半導体装置41では、ドリフト領域11において、SOI層5のN型不純物濃度よりも高く、かつ、ドレイン領域14のN型不純物濃度よりも低いN型不純物濃度を有するN型領域42が、ドレイン領域14に対してBOX層4側に隣接して形成されている。N型領域42は、たとえば、N型不純物濃度の極大値(ピーク濃度)が10
18/cm
3であり、そのピーク濃度をドレイン領域14の表面からの深さが2μmの位置に有している。
【0032】
図4に示す構造によっても、
図1に示す構造と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、たとえば、BOX層4の層厚が1.5μmであり、ドリフト領域11のN型不純物濃度が3.5×10
14/cm
3であり、N型領域15のピーク濃度が10
18/cm
3であり、そのピーク濃度をドレイン領域14の表面からの深さが2μmの位置に有する場合、SOI層5の層厚を30μmとして、600V以上の耐圧を得ることができる。
【0033】
図5A〜
図5Dは、半導体装置41の製造方法を工程順に示す模式的な断面図である。たとえば、イオン注入法によって、N
−型シリコン基板内にOを埋め込んだ後、そのOを熱酸化させることにより、
図5Aに示すように、層厚1.5μmのBOX層4および層厚30μmのSOI層5を有する厚膜SOI基板2が作成される。この作成過程において、B(ボロン)などのP型不純物がSOI層5に選択的に注入されることにより、ボディ領域10およびドリフト領域11が形成される。
【0034】
次いで、
図5Bに示すように、熱酸化法により、SOI層5上に、SiO
2からなる熱酸化膜51が形成される。そして、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、熱酸化膜51上に、N型領域42を形成すべき部分に対向する開口52を有するマスク53が形成される。そして、イオン注入法により、マスク53の開口52を介して、ドリフト領域11の表層部に、AsまたはPなどのN型不純物が注入される。N型不純物の注入後、マスク53は除去される。
【0035】
その後、
図5Cに示すように、熱処理(アニール処理)が行われることにより、ドリフト領域11に注入されたN型不純物が活性化され、ドリフト領域11の表層部に、N型領域42が形成される。
N型領域42の形成後、熱酸化膜51が除去される。そして、
図5Dに示すように、LOCOS法により、ドリフト領域11の表面に、LOCOS酸化膜16が形成される。また、熱酸化法により、ボディ領域10の表面とドリフト領域11の表面とに跨って、ゲート酸化膜17が形成される。さらに、P−CVD法により、SOI層5、LOCOS酸化膜16およびゲート酸化膜17上に、N型不純物が高濃度にドーピングされたポリシリコンの堆積層が形成され、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、そのポリシリコンの堆積層がパターニングされる。これにより、ゲート酸化膜17上に、ゲート電極18が形成されるとともに、LOCOS酸化膜16上に、フィールドプレート19が形成される。
【0036】
その後、イオン注入法により、ボディ領域10の表層部に、ソース領域12およびボディコンタクト領域13が形成され、ドリフト領域11の表層部に、ドレイン領域14が形成される。そして、層間絶縁膜20、ソース配線23およびドレイン配線24が形成されると、
図4に示す構造の半導体装置41が得られる。
以上、本発明の実施形態および参考例を説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、半導体装置1,41において、ソース領域12およびボディコンタクト領域13の形成位置とドレイン領域14の形成位置とが逆であってもよい。すなわち、SOI層5において、その中央部に、P型のボディ領域10が形成され、ディープトレンチ6の側面に沿って環状をなす領域(ボディ領域10を取り囲む領域)が、N
−型のドリフト領域11とされて、ボディ領域10の表層部の平面視中央部にソース領域12およびボディコンタクト領域13が形成され、ドリフト領域11の表層部に環状のドレイン領域14が形成されてもよい。
【0037】
また、半導体装置1,41の各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。すなわち、半導体装置1,41において、P型の部分がN型であり、N型の部分がP型であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 半導体装置
4 BOX層
5 SOI層
6 ディープトレンチ
9 素子形成領域
10 ボディ領域
11 ドリフト領域
12 ソース領域
14 ドレイン領域
15 N型領域
41 半導体装置
42 N型領域