【解決手段】回路構成体10は、電子部品11,12と、電子部品11,12が実装される回路基板15と、回路基板15に重ねられ、回路基板15の熱を放熱する放熱部材20と、回路基板15と放熱部材20との間に配されるスペーサ27と、を備え、放熱部材20には、気体の吸引により回路基板15及び放熱部材20をスペーサ27に密着させるための気体の吸引路21が形成されており、スペーサ27は、吸引路21の所定の領域を覆うカバー部30を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、回路体を放熱板上に固定する際に回路体を放熱板側に押し付けているが、この押し付けの際に、回路体の全面に対して均一の力で押し付けることは容易ではない。そのため、回路体を介して接着剤に生じる圧力が不均一になり、接着剤の接着が不十分な箇所が生じうる。このような接着剤の接着が不十分な箇所があると、そこから回路体と放熱板との間に剥がれが生じることが懸念される。
【0006】
一方、回路基板と放熱部材の貼り付けの際に、回路基板を放熱部材側に吸引すれば、回路基板を放熱部材に密着させて比較的均一に密着させることができ、回路基板と放熱部材との間に剥がれを抑制することができると考えられる。ここで、、回路基板を放熱部材側に吸引するために放熱部材に吸引穴等の吸引用の経路を設けて、放熱部材の上に回路基板を載置する構成とすると、回路基板側から放熱部材の吸引用の経路に空気が流入し、回路基板を放熱部材に均一に密着させることができず、回路基板と放熱部材との間の貼り付け不良が生じることが懸念される。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、回路基板と放熱部材との間の貼り付け不良を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回路構成体は、電子部品と、前記電子部品が実装される回路基板と、前記回路基板に重ねられ、前記回路基板の熱を放熱する放熱部材と、前記回路基板と前記放熱部材との間に配されるスペーサと、を備え、前記放熱部材には、気体の吸引により前記回路基板及び前記放熱部材を前記スペーサに密着させるための前記気体の吸引路が形成されており、前記スペーサは、前記吸引路の所定の領域を覆うカバー部を有する。
【0009】
本構成によれば、吸引路の所定の領域がスペーサのカバー部で覆われるため、気体の吸引時に、回路基板側から放熱部材の吸引路への気体の流入を抑制できる。よって、回路基板及び放熱部材をスペーサに均一に密着させることが可能になるため、回路基板と放熱部材との間の貼り付け不良を抑制することが可能になる。
【0010】
上記構成に加えて以下の構成を有すれば好ましい。
・前記回路基板には、前記気体を吸引する吸引口が前記吸引路に連なる位置に貫通形成されている。
このようにすれば、回路基板の吸引口から気体を吸引することができるため、例えば、放熱部材の外部に露出する部分に吸引口を設ける場合と比較して、防水性を向上させることが可能になる。
【0011】
・前記吸引路は、前記回路基板と前記放熱部材とを貼り付けるための貼付部が収容される収容室を有する。
このようにすれば、貼付部が配される収容室内の気体を吸引することで、回路基板と放熱部材との間を貼付部で確実に貼り付けることができる。
【0012】
・前記収容室は、前記貼付部を所定の位置に案内するガイド部を有する。
このようにすれば、貼付部の所定の位置への組み付けを容易に行うことができるとともに、気体の吸引時における貼付部の位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路基板と放熱部材との間の貼り付け不良を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図11を参照しつつ説明する。
回路構成体10は、例えば車両のバッテリ等の電源と、ランプ、ワイパー等の車載電装品等からなる負荷との間の電力供給経路に配され、例えばDC−DCコンバータやインバータ等に用いることができる。以下では、上下方向及び左右方向は、
図2の方向を基準として説明する。
【0016】
(回路構成体10)
回路構成体10は、
図2に示すように、電子部品11,12と、電子部品11,12が実装される回路基板15と、回路基板15に重ねられ、回路基板15の熱を放熱する放熱部材20と、回路基板15と放熱部材20との間に配されるスペーサ27と、回路基板15と放熱部材20とを貼り付ける貼付部31と、を備えている。
【0017】
(電子部品11,12)
電子部品11,12は、スイッチング素子(例えば、メカニカルリレーやFET(Field Effect Transistor)等のリレー)からなり、共に箱形の本体13と、リード端子14とを有する。本体13は、直方体状であって、その底面側にリード端子14が配されている。電子部品11,12のうち、電子部品11は、本体13の底面側からリード端子14が複数突出し、電子部品12は、本体13の底面の全体に亘ってリード端子14が形成されている。各リード端子14は、例えばリフロー半田付けにより、回路基板15の導電路に接続されている。
【0018】
(回路基板15)
回路基板15は、
図3に示すように、長方形状であって、空気(気体)を真空吸引するための円形状の吸引口16が貫通形成されている。吸引口16は、外部の真空吸引の装置を接続することにより、回路基板15及び放熱部材20をスペーサ27に密着する方向に吸引するための穴である。この回路基板15は、プリント基板15Aとバスバー15Bとを接着部材等(例えば、接着シートや接着剤等)を用いて貼り合わせて構成されている。プリント基板15Aは、絶縁材料からなる絶縁板に銅箔等からなる導電路(図示しない)がプリント配線されている。プリント基板15Aには、電子部品11,12のリード端子14をバスバー15B側に通して接続するための通し孔17と、ネジをネジ留めするための留め部18とが形成されている。
【0019】
各通し孔17は、矩形状であって、電子部品11,12の位置に応じて配されている。バスバー15Bは、通し孔17の位置を通るように配されており、銅や銅合金等の金属板材を導電路の形状に打ち抜くことで形成されている。留め部18は、回路基板15の角部に配されており、ネジの軸部が挿通される円形状の挿通孔18Aが貫通形成されている。
プリント基板15Aの導電路に電子部品11のリード端子14が半田付けされるとともに、同じ電子部品11の他のリード端子14が通し孔17からバスバー15Bに半田付けされている。なお、
図3ではプリント基板15A上の導電路におけるリード端子14との接続部分を接続部Sとして示している。
【0020】
(放熱部材20)
放熱部材20は、
図4,
図5に示すように、扁平な長方形状であって、平坦な上面20Aに、真空吸引の際の空気を抜く経路となる吸引路21と、回路基板15をネジ留めするための複数のネジ孔25とが凹設されている。この放熱部材20は、アルミニウム合金や銅合金等の熱伝導性が高い金属材料からなり、金型に溶融した金属を圧入するダイキャストにより成形することができる。
【0021】
吸引路21は、上面20A側が回路基板15及びスペーサ27で覆われて塞がれた状態で内部の気体が吸引されるものであり、ほぼ一定の深さで放熱部材20の上面20Aに窪んで形成されており、吸引口16の下に連なる連通部21Aから枝状に延びる枝状路22と、貼付部31の下側が収容される分割収容室23とを有する。
【0022】
枝状路22は、環状に延びる溝であり、吸引口16の下に連なる円形状の連通部21Aを起点として、分割収容室23の並び方向に沿うように直線状に延びるとともに複数個所でほぼ直角に曲がっている。枝状路22は、各分割収容室23の近傍では分割収容室23に連なるように分岐されている。分割収容室23は、矩形状に仕切られた内壁を有しており、対角に位置する一対の角部に貼付部31の装着の際に案内するガイド部24が形成されている。
【0023】
ガイド部24は、分割収容室23の内方にL字状に張り出しており、テーパ状の傾斜面に貼付部31の角部が摺接して貼付部31が所定の位置に案内される。
ネジ孔25は、吸引路21の外側に、4箇所形成されている。
【0024】
(スペーサ27)
スペーサ27は、
図6に示すように、長方形状で厚みが一定のシートであって、貼付部31の上部が収容される分割収容室28と、吸引口16の下に連なる中継孔27Aと、ネジの軸部が挿通される挿通孔27Bとが貫通形成されている。
【0025】
複数の分割収容室28は、互いに離間した長方形状の空間を形成しており、気体の吸引時に回路基板15を裏面側から吸引する領域となる。分割収容室28が放熱部材20の分割収容室23と重なることで、貼付部31が収容される収容室29が形成される。中継孔27Aと挿通孔27Bとは共に円形状の貫通孔である。
【0026】
このスペーサ27は、
図9,
図10に示すように、放熱部材20の所定の位置に重ねられた状態で吸引路21における枝状路22の領域(所定の領域)を覆うカバー部30を有している。カバー部30は、スペーサ27のうちの枝状路22に重なる部分であり、枝状路22と同じ形状で枝状に延びている。
スペーサ27は、例えば、薄肉のプラスチック(合成樹脂)製であって、気体の吸引時における回路基板15や放熱部材20からの力や、ネジ留めの際の力で容易に変形しない程度の強度を有する材質が用いられている。
【0027】
(貼付部31)
貼付部31は、接着性を有するシート状の部材であって、収容室29よりわずかに小さい長方形状である。貼付部31は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂製のフィルムの両面に絶縁性を有する接着剤が塗布されたものを用いることができる。本実施形態では、接着剤として例えば2液を混合して常温で固化するものを用いることができる。
【0028】
回路構成体10の製造方法について説明する。
放熱部材20の分割収容室23に貼付部31を収容し(
図8)、スペーサ27を放熱部材20の上面20Aの所定の位置にセットする(
図10)。
また、プリント基板15Aとバスバー15Bとを接着部材で貼り合わせて形成した回路基板15を放熱部材20上におけるスペーサ27及び貼付部31の上に載置する(
図11)。
【0029】
そして、外部の図示しない気体を吸引可能な装置を用いて、回路基板15の吸引口16から吸引路21の空気を吸引する。吸引路21の空気が吸引されると、収容室29内の空間に面した回路基板15の底面が収容室29側に吸引され、回路基板15及び放熱部材20がスペーサ27に密着する。
【0030】
そして、電子部品11,12のリード端子14と回路基板15の導電路との間に半田ペーストを付着し、リフロー炉に通すリフロー半田付けすることで、電子部品11,12等を回路基板15に実装するとともに、ネジを留め部18にネジ留めして回路基板15と放熱部材20との間を固定する。これにより、回路構成体10が形成される(
図2)。回路構成体10は、ケース(図示しない)に収容されて電気接続箱(図示しない)として車両の電源から負荷に至る経路に配される。
【0031】
上記実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
回路構成体10は、電子部品11,12と、電子部品11,12が実装される回路基板15と、回路基板15に重ねられ、回路基板15の熱を放熱する放熱部材20と、回路基板15と放熱部材20との間に配されるスペーサ27と、を備え、放熱部材20には、気体の吸引により回路基板15及び放熱部材20をスペーサ27に密着させるための気体の吸引路21が形成されており、スペーサ27は、吸引路21の所定の領域を覆うカバー部30を有する。
【0032】
本実施形態によれば、吸引路21の所定の領域がスペーサ27のカバー部30で覆われるため、気体の吸引時に、回路基板15側から放熱部材20の吸引路21への気体の流入を抑制できる。よって、回路基板15及び放熱部材20をスペーサ27に均一に密着させることが可能になるため、回路基板15と放熱部材20との間の貼り付け不良を抑制することが可能になる。
【0033】
また、回路基板15には、気体を吸引する吸引口16が吸引路21に連なる位置に貫通形成されている。
このようにすれば、回路基板15の吸引口16から気体を吸引することができるため、例えば、放熱部材20の外部に露出する部分に吸引口16を設ける場合と比較して、防水性を向上させることが可能になる。
【0034】
さらに、吸引路21は、回路基板15と放熱部材20とを貼り付けるための貼付部31が収容される収容室29を有する。
このようにすれば、貼付部31が配される収容室29内の気体を吸引することで、回路基板15と放熱部材20との間を貼付部31で確実に貼り付けることができる。
【0035】
また、収容室29は、貼付部31を所定の位置に案内するガイド部24を有する。
このようにすれば、貼付部31の所定の位置への組み付けを容易に行うことができるとともに、気体の吸引時における貼付部31の位置ずれを抑制することができる。
【0036】
<実施形態2>
次に、実施形態2を
図12ないし
図17を参照しつつ説明する。実施形態1では、回路基板15の吸引口16から空気を吸引するものであったが、実施形態2では、放熱部材40の吸引口41Aから空気を吸引するものである。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
放熱部材40の右端側には、
図12,
図13に示すように、円形状の吸引穴41が貫通形成されている。吸引穴41の下端は、外部の装置を接続して吸引可能な吸引口41Aとされている。
【0038】
また、放熱部材40の上面40Aには、真空吸引するための経路となる吸引路47の分割収容室42及び枝状路46が凹設されている。分割収容室42は、長方形状に仕切る内壁により長方形状の空間を形成している。分割収容室42の内壁には、テーパ状のガイド部42Aが全周に亘って形成されている。貼付部31をガイド部42Aのテーパ面に摺接させて、貼付部31を分割収容室42の底面に当接する所定位置に収容すると、貼付部31がガイド部42Aの内側に保持される。
また、実施形態1の分割収容室23は、2本の枝状路22に接続されていたが、実施形態2の分割収容室42は、1本の枝状路46に接続されており、枝状路46の経路が枝状路22とは異なっている。
【0039】
回路基板43及びスペーサ45は、実施形態1とは異なり、吸引口16及び中継孔27Aは形成されていない(
図14,
図15)。回路基板43に吸引口16を形成しないため、既存の形状の回路基板43を用いることができる。
放熱部材40に貼付部31,スペーサ45及び回路基板43を装着して吸引口41Aから空気を真空吸引すると(
図16)、吸引路47から空気が吸引され、回路基板43が放熱部材40側に引き付けられて回路基板43及び放熱部材40がスペーサ45に密着する。
【0040】
図17は、実施形態2の回路構成体の一部を拡大した断面図であり、回路基板43と放熱部材40との間のうち、スペーサ45及び貼付部31が配されない位置には吸引路47への空気の流入を防止するためのシール部材44が回路基板43と放熱部材40との間に挟まれている。
【0041】
<実施形態3>
次に、実施形態3を
図18ないし
図20を参照しつつ説明する。実施形態3は、分割収容室23,42に代えて分割収容室51を設けたものである。上記実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
放熱部材50の上面50Aには、
図18,
図19に示すように、分割収容室51が凹設されている。分割収容室51は、貼付部55とほぼ同じ大きさで貼付部55が載置される座部52と、座部52の縁部に沿い枝状路22と一体に連なる枝状路53とを備える。
枝状路53は、枝状路22と同じ深さで形成されており、座部52は、長方形状であって、枝状路22,53よりも底面が浅く形成されている。
【0043】
分割収容室51は、貼付部31を内側に保持する保持部54が座部52の対角に位置する一対の角部側に形成されている。保持部54は、枝状路53が座部52の一対の角部までは延びていないことにより、上面50Aと面一に形成されている。
貼付部55は、上記実施形態の貼付部31よりも上下方向の厚みが薄肉とされている。
放熱部材50に貼付部55,スペーサ45及び回路基板43を装着して吸引口41Aから空気を真空吸引すると(
図19)、回路基板43が放熱部材50側に引き付けられて回路基板43及び放熱部材50がスペーサ45に密着する。
【0044】
図20は、実施形態3の回路構成体の一部を拡大した断面図であり、回路基板43と放熱部材50との間のうち、スペーサ45及び貼付部55が配されない位置には吸引路21への空気の流入を防止するためのシール部材44が回路基板43と放熱部材40との間に挟まれている。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、スペーサ27は、1個であったが、これに限られず、
2個以上のスペーサを重ねて吸引路の一部である枝状路22,53を覆うようにしてもよい。
【0046】
(2)気体の吸引口16,41Aを上記と異なる箇所に設けてもよい。例えば、放熱部材20の上面における回路基板15と重なる領域の外側に吸引口を設けてもよい。
【0047】
(3)上記実施形態では、貼付部31は接着性を有する熱伝導シートであったが、これに限られない。例えば、粘着剤を有する熱伝導シートとしたり、接着剤や粘着剤を回路基板15と放熱部材20の間に塗布して回路基板15と放熱部材20を貼り付けるようにしてもよい。また、接着剤は上記実施形態の接着剤に限られず、種々の接着剤を用いることができる。例えば、熱硬化性や熱可塑性の接着剤を用いることが可能である。また、粘着剤を用いる場合についても、種々の粘着剤を用いることができる。例えば、接着テープや粘着テープを用いてもよい。更に、接着力と粘着力がなくても、回路基板15と放熱部材20の間の密着性を確保できる熱伝導シートを用いてもよい。
【0048】
(4)電子部品11,12としては、リレーに限られず、通電により発熱する種々の電子部品を用いることができる。
【0049】
(5)上記実施形態では、回路基板15と放熱部材20を貼付部31により貼り付けられるとともに、回路基板15と放熱部材20とはスペーサ27の挿通孔27Bを通してネジでネジ留めされて固定する構成としたが、これに限られず、貼付部31による貼り付け又はネジによるネジ留めの一方のみを行うようにしてもよい。
【0050】
(6)回路基板15の導電路に連なる位置で回路基板15を貫通するスルーホールを設ける場合には、スペーサがスルーホールを覆うことでスルーホール側を塞いで吸引路21に空気が流入しないようにしてもよい。