【課題】複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材によってプロテクタを形成した場合において、前記プロテクタ内の空間内に電線を容易に収容できるようにすることを目的とする。
【解決手段】電線モジュール10は、複数の板状部分32と、複数の板状部分32の間で中空構造を形成する介在部分36とを含む中空板材によって形成されたプロテクタ30と、プロテクタ30内の空間に収容された電線12とを備える。複数の板状部分32のうち外側に位置するものの少なくとも1つに、プロテクタ30内での電線12の収容経路に沿ってスリット33が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のプロテクタでは、ワイヤーハーネスの配設経路に応じた形状のプロテクタを、射出成型金型装置によって製造する必要がある。このため、製造コストが高くなってしまう傾向にある。
【0006】
また、特許文献2に開示のフラットワイヤーハーネス形成用シートでは、そのシートによって電線の外周囲全体を覆うことはできないため、電線の保護性能が不十分である。
【0007】
そこで、複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材によってプロテクタを形成し、このプロテクタの中空構造内に電線を収容することが考えられる。
【0008】
しかしながら、上記中空板材の中空構造は、複数の板状部分間に存在しているため、その中空構造内に電線を収容することは困難である。特に、電線の端部に端子が圧着されていると、その端子付電線を前記中空構造内に通していくことは困難となる。
【0009】
そこで、本発明は、複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材によってプロテクタを形成した場合において、前記プロテクタ内の空間内に電線を容易に収容できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る電線モジュールは、複数の板状部分と、前記複数の板状部分の間で中空構造を形成する介在部分とを含む中空板材によって形成されたプロテクタと、前記プロテクタ内の空間に収容された電線と、を備え、前記複数の板状部分のうち外側に位置するものの少なくとも1つに、前記プロテクタ内での前記電線の収容経路に沿ってスリットが形成されているものである。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係る電線モジュールであって、前記介在部分は、前記複数の板状部分の間で、並列状に延在する複数の空間を形成する複数の仕切部を含み、前記スリットは、前記複数の板状部分のうち外側に位置するものの少なくとも1つにおいて、前記複数の仕切部間に形成されているものである。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る電線モジュールであって、前記スリットの少なくも一方の端部は、前記板状部分の縁部よりも内側に位置しているものである。
【0013】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る電線モジュールであって、前記プロテクタを複数備え、前記複数のプロテクタのうちの少なくとも1つに形成された前記スリット上に、前記複数のプロテクタのうちの他のプロテクタが被さるように、前記複数のプロテクタが積層されているものである。
【0014】
第5の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る電線モジュールであって、前記スリット上に被さるように、前記プロテクタが折り重ねられているものである。
【0015】
第6の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る電線モジュールであって、前記スリット上に被さるように、前記プロテクタが渦巻き状に巻かれているものである。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様によると、前記複数の板状部分のうち外側に位置するものの少なくとも1つに、電線の収容経路に沿ってスリットが形成されているため、当該スリットを利用して電線をプロテクタ内の空間に容易に収容することができる。
【0017】
第2の態様によると、並列状に延在する複数の空間のそれぞれに、スリットを利用して電線を容易に収容できる。
【0018】
第3の態様によると、板状部分の内側の領域では、スリットを利用して電線を容易に収容できる。板状部分の縁部では、板状部分間を通すように電線を収容することで、電線の脱出を抑制することができる。
【0019】
第4の態様によると、スリットからの電線の抜けを抑制することができる。
【0020】
第5の態様によると、スリットからの電線の抜けを抑制することができる。
【0021】
第6の態様によると、スリットからの電線の抜けを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
{実施形態}
以下、実施形態に係る電線モジュールについて説明する。
図1は電線モジュール10を示す概略斜視図であり、
図2は同電線モジュール10のプロテクタ30部分を示す概略正面図であり、
図3及び
図4はプロテクタ30に端子付電線11を収容する作業を示す説明図である。
【0024】
電線モジュール10は、プロテクタ30と、電線12とを備える。
【0025】
電線12は、導線の周囲に押出被覆等によって樹脂被覆が施されたものである。ここでは、電線モジュール10は、複数(ここでは14本)の電線12を備える。各電線12の端部には、圧着端子14が接続されている。なお、電線12の端部に圧着端子14が接続されたものを端子付電線11と表記する場合がある。複数の圧着端子は、コネクタに組込まれる。そして、本電線モジュール10が車両等に取付けられた状態で、コネクタが車両に搭載された電気制御ユニット、各種センサ、各種駆動機器に接続される。これにより、本電線モジュール10は、車両に搭載された各種電気部品同士を電気的に接続する配線材として用いられる。
【0026】
プロテクタ30は、複数の板状部分32と、介在部分36とを備え、全体として板状に形成されている。介在部分36は、複数の板状部分32間に介在し、複数の板状部分32の間に、電線12を収容可能な中空構造を形成するように構成されている。
【0027】
このプロテクタ30の中空構造内に、少なくとも1本の電線12の延在方向の少なくとも一部が収容されることで、電線モジュール10が構成される。プロテクタ30は、電線12を外部(例えば、配線経路の周辺にあるエッジ部分等)から保護する役割、電線12を所定の配線経路に沿って維持する役割等を果す。また、本プロテクタ30に、複数の電線12が収容される場合には、それらを配線経路における経路スペースに応じた形状に維持する役割、即ち、複数の電線12を互いに平行な状態で並ぶように維持する役割をも果す。なお、車両への配設状態において、プロテクタ30が曲げられていてもよい。
【0028】
プロテクタ30についてより具体的に説明すると、プロテクタ30は、複数(ここでは2つ)の板状部分32と、複数の板状部分32の間に設けられた介在部分36とを備える。
【0029】
複数の板状部分32及び介在部分36を形成する材質は特に限定されない。複数の板状部分32及び介在部分36は、紙によって形成されていてもよいし、樹脂(ポリプロピレン等)によって形成されていてもよいし、また、これらの組合わせによって構成されていてもよい。複数の板状部分32及び介在部分36の少なくとも1つを紙によって形成する場合には、その表面に撥水処理等を施すことが好ましい。ここでは、複数の板状部分32と介在部分36とが樹脂によって一体成型された例で説明する。
【0030】
板状部分32は、平板状に形成されている。複数の板状部分32が介在部分36を介して間隔をあけた状態で連結されている。
【0031】
介在部分36は、複数の仕切部分36aを備える。各仕切部分36aは、細長い帯板状に形成されている。複数の仕切部分36aは、板状部分32の間で、当該板状部分32に対し直交し、かつ、相互間に間隔をあけた並列状態で設けられている。各仕切部分36aの両側部は、板状部分32の内向き面に連結されている。これにより、複数の板状部分32が間隔をあけた状態で支持されている。また、複数の板状部分32の間であって各仕切部分36aの間に、並行状に延在する複数の空間(電線12を収容可能な空間)が形成される。
【0032】
かかるプロテクタ30を、仕切部分36aの延在方向に対して直交する面で切断すると、2つの板状部分32の間に複数の仕切部分36aが介在するはしご状断面を示す。
【0033】
このようなプロテクタ30は、例えば、前記はしご状断面に応じた押出孔から樹脂を押出す押出成型装置によって、中空板材を連続的に押出成型し、この中空板材を、保護対象となる電線12の本数、当該電線12において保護すべき距離等に応じて切断することで形成することができる。これにより、プロテクタ30を容易に低コストで製造することができる。
【0034】
なお、上記板状部分32及び介在部分36の少なくとも一方には、アルミ箔又は銅箔等によるシールド層が設けられていてもよい。
【0035】
なお、プロテクタ30の厚み寸法は、1.5mm〜15.0mmであることが好ましい。また、プロテクタ30において並列状に形成された空間を仕切る仕切部分36aのピッチは、4mm〜20mmであることが好ましい。
【0036】
本実施形態の例では、プロテクタ30には、複数(ここでは14個)の細長状の収容空間が並列状に形成されている。そして、複数の収容空間のそれぞれに電線12が収容されている。従って、プロテクタ30内には複数の電線12が並行状態で中空構造内に収容されている。もっとも、複数の収容空間の一部のみに電線12が収容されていてもよい。
【0037】
そして、プロテクタ30の一端部から延出する電線12が共通するコネクタに接続されている。
【0038】
上記収容空間は、プロテクタ30の板状部分32間を通る細長い空間であるため、電線12を当該収容空間内に収容することは難しい。特に、電線12の端部に圧着端子14が接続されていると、そのような端子付電線11を収容空間内に通していくことは難しい。特に、圧着端子14の太さが、収容空間内を通過可能な太さではなく、通過不能な大きさであると、上記作業は基本的には実施できないことになる。
【0039】
そこで、本実施形態では、複数の板状部分32のうち外側に位置するものの少なくとも1つに、プロテクタ30内での電線12の収容経路(ここでは、仕切部分36a間の各収容空間)に沿ってスリット33が形成されている。
【0040】
より具体的には、本プロテクタ30は、2つの板状部分32を備えており、両板状部分32はプロテクタ30の外側に位置している。この2つの板状部分32のうちの一方にスリット33が形成されている。ここでは、プロテクタ30には、各仕切部分36a間に位置して14個の細長い収容空間が形成されている。スリット33は、一方の板状部分32において、各仕切部分36aの中間位置(ここでは中央位置)で、細長い収容空間に沿うように形成されている。スリット33は、切断刃等によって形成された線状の切れ目である。このため、本スリット33は、通常状態では閉じており、プロテクタ30から当該スリット33を通じて電線12を観察することは困難である。
【0041】
そして、上記端子付電線11がスリット33を通じてプロテクタ30内に収容空間に収容される。すなわち、端子付電線11のうちプロテクタ30内への収容部分を、一方の板状部分32のスリット33に向けて押込むと(
図3及び
図4参照)、当該板状部分32がスリット33を挟む部分で弾性変形し、電線12を通過可能な空間が形成される。そして、電線12がスリット33を通過し、プロテクタ30内の収容空間内に収容されると、板状部分32は、スリット33を閉じるように元の板形状に弾性復帰する。本作業が、複数の端子付電線11に対して同様になされることで、電線モジュール10が製造される。勿論、圧着端子14が取付けられていない電線12をプロテクタ30内に収容する際にも、電線12をプロテクタ30内の細長い収容空間にその延在方向に沿って通していく作業を省略できるため、電線12の収容作業を容易に行える。
【0042】
以上のように構成された電線モジュール10によると、板状部分32に、電線12の収容経路に沿ってスリット33が形成されているため、当該スリット33を利用して電線12を容易にプロテクタ30内に収容することができる。
【0043】
特に、端子付電線11であっても、スリット33を利用して容易にプロテクタ30内に収容できるため、製造工程上の制約を少なくすることができる。
【0044】
また、介在部分36は、複数の板状部分32の間で、並列状に延在する複数の空間を形成する複数の仕切部分36aを含んでいるため、複数の電線12を互いに平行な状態に維持することができる。また、スリット33は、板状部分32のうち複数の仕切部分36a間に形成されているため、各仕切部分36a間の複数の収容空間のそれぞれに、スリット33を利用して容易に電線12を収容することができる。
【0045】
また、板状部分32によって電線12と外部とをより確実に絶縁でき、また、仕切部分36aによって、個々の電線12をより確実に絶縁できるため、絶縁性に優れるという効果もある。
【0046】
なお、上記実施形態では、プロテクタ30が2つの板状部分32を備える例で説明したが、プロテクタが、3つ以上の板状部分を備え、各板状部分間に介在部分が設けられた構成であってもよい。この場合には、プロテクタの外側に位置する2つの板状部分のうち少なくとも一方にスリットが形成されていればよい。
【0047】
また、プロテクタ30は、ある程度電線12を所定の経路に沿って維持可能な程度の剛性を有すると共に、折曲げたり湾曲させたりして曲げることもできる。このため、経路規制すべき箇所及び曲げて配設すべき箇所を含む配線経路に対して、比較的低コストで対応することができる。
【0048】
また、プロテクタ30自体は、板状形態であるため、効率よく保管、輸送することができるという利点がある。また、上記中空板材を適宜切断して、必要に応じた幅、長さのプロテクタ30を製造することができるため、汎用性に優れるという利点もある。
【0049】
{変形例}
上記実施形態を前提として、各種変形例について説明する。
【0050】
図5に示す第1変形例に係る電線モジュール110では、上記スリット33を塞ぐように、板状部分32の表面に粘着テープ102が貼付けられている。ここでは、板状部分32に複数の粘着テープ102がスリット33の延在方向に沿って貼付けられている。各粘着テープ102は、その幅に応じて、1つのスリット33のみを塞ぐものであってもよいし、複数のスリット33を塞ぐものであってもよい。ここでは、各粘着テープ102は、複数のスリット33を塞ぐように、板状部分32の表面に貼付けられている。
【0051】
この変形例によると、粘着テープ102によってスリット33を塞ぐことで、電線12がスリット33を通じて外部に脱出してしまうことを有効に抑制できる。
【0052】
図6に示す第2変形例に係る電線モジュール210では、板状部分32に対応する板状部分232にスリット33に対応するスリット233が形成されている。上記実施形態では、スリット33は、板状部分32の縁部に達するように形成されていたが、本変形例では、スリット233の少なくとも一方の端部(ここでは一方の端部)は、板状部分232の縁部よりも内側に位置している。このため、スリット233の端部延長上では、板状部分232は板状に延在している(ここでは、切残し部分232aとして説明する)。
【0053】
この変形例では、電線12の大部分を、スリット233を通じてプロテクタ230内に収容し、電線12を板状部分232間に通す作業を実施し端子圧着することで、端子付電線11をプロテクタ230内に収容することができる。このため、スリット233が無い場合と比べると、電線12の収容作業を容易に行える。
【0054】
また、電線12を収容した状態では、電線12は切残し部分232a部分で、一対の板状部分232間に収容された状態に維持される。このため、電線12がプロテクタ230内から脱出し難いという利点がある。
【0055】
図7は第3変形例に係る電線モジュール310を示す概略斜視図であり、
図8は同電線モジュール310のプロテクタ30部分の概略正面図である。
【0056】
この電線モジュール310は、第1実施形態におけるプロテクタ30を複数(ここでは2つ)備えている。なお、各プロテクタ30には、上記実施形態と同様に、端子付電線11が収容されている。
【0057】
そして、複数のプロテクタ30のうちの少なくとも1つに形成されたスリット33上に、他のプロテクタ30が被さるように、複数のプロテクタ30が積層されている。ここでは、一方のプロテクタ30の上側の板状部分32にスリット33が形成されており、このプロテクタ30上に他方のプロテクタ30が積層されている。従って、一方のプロテクタ30のスリット33の外方(上方)には、他方のプロテクタ30の下側の板状部分32が位置しており、一方のプロテクタ30に収容された電線12がスリット33を通じて外部に脱出し難いようになっている。
【0058】
なお、複数のプロテクタ30の積層状態は、両プロテクタ30間の接着剤、粘着剤(両面テープの形態で提供される場合を含む)、複数のプロテクタ30の積層形態に巻回された粘着テープ等によって維持される。
【0059】
なお、他方のプロテクタ30のスリット33が内向き(つまり、一方のプロテクタ30側を向く)となるように、両プロテクタ30が積層されていてもよい。また、3つ以上のプロテクタが積層されていてもよい。
【0060】
図9は第4変形例に係る電線モジュール410を示す概略斜視図であり、
図10は同電線モジュール410のプロテクタ430の概略正面図であり、
図11〜
図14は電線モジュール410の製造工程を示す説明図である。
【0061】
この電線モジュール410では、スリット433上に被さるように、プロテクタ430が折り重ねられた構成とされている。
【0062】
折り重ね前のプロテクタ430は、上記実施形態におけるプロテクタ30に対してスリット33の位置が異なる構成とされている。すなわち、プロテクタ430は、上記プロテクタ30と同様に、複数(ここでは2つ)の板状部分432と、その複数の板状部分432の間に介在する介在部分36とを備える(
図11及び
図12参照)。そして、プロテクタ430内に、複数の細長い収容空間が並列状に形成されている。
【0063】
一方の板状部分432に対して、並列状の収容空間の一つおきに対応する位置に、スリット433が形成されている。また、好ましくは、一方の板状部分432の幅方向中央に、スリット433の延在方向に沿って折目434が形成されている。折目434は、板材のエッジを押し当てること等によって形成することができる。
【0064】
また、上記実施形態と同様に、端子付電線11を、スリット433を介して、プロテクタ430内に収容空間に収容していく。この際、並列状の収容空間のうちスリット433が形成されたもの、即ち、並列状の収容空間に一つおきに端子付電線11を収容していく(収容途中の状態について
図11及び
図12参照、収容後の状態について
図13及び
図14参照)。
【0065】
そして、平板状のプロテクタ430を、スリット433が形成された側の面を内向きにするようにして、その幅方向中央部で折り重ねる。ここでは、平板状のプロテクタ430を、二つ折りにする。
【0066】
すると、
図9及び
図10に示すように、スリット433上に被さるようにプロテクタ430が折り重ねられ、上記電線のモジュール410が製造される。
【0067】
この電線モジュール410によると、プロテクタ430のスリット433上に、プロテクタ430の他の部分が被さっているため、プロテクタ430に収容された電線12がスリット433を通じて外部に脱出し難いようになっている。
【0068】
特に、並列状の収容空間の一つおきにスリット433を形成して電線12を収容し、スリット433上に、板状部分432のうちスリット433が形成されていない部分が被さるようにしているため、電線12の脱出をより確実に抑制できる。
【0069】
なお、プロテクタ430の折重ね状態は、プロテクタ430間の接着剤、粘着剤(両面テープの形態で提供される場合を含む)、プロテクタ430の折重ね形態に巻回された粘着テープ等によって維持される。
【0070】
なお、板状部分のうち全ての収容空間に対応する位置にスリットが形成されていてもよく、また、全ての収容空間に電線が収容されていてもよい。
【0071】
上記第3変形例及び第4変形例によると、電線12を多段に並列配置した状態で維持できるというメリットもある。
【0072】
図15に示す第5変形例に係る電線モジュール510では、上記実施形態におけるプロテクタ30が渦巻状に巻回されており、その各層部分の内側又は外側のスリット上に他の層部分が被さっている。
【0073】
この変形例によっても、電線12の脱出をより確実に抑制できる。
【0074】
また、中空構造を有する板状のプロテクタの形状は上記例に限られない。
【0075】
図16は第6変形例に係るプロテクタを製造するための中空板材630Bを示す一部切欠斜視図である。この中空板材630Bは、複数(ここでは2つ)の板状部分632の間に介在部分636が設けられた構成とされている。
【0076】
介在部分636は、凹凸形状を呈する板状に形成された部材である。かかる介在部分636が、複数の板状部分632の間に挟み込まれた状態で、当該板状部分632の内向き面に接合される。板状部分632と介在部分636との接合は、例えば、接着剤、粘着剤等により行われる。これにより、介在部分636が呈する凹凸形状に応じた中空構造が、複数の板状部分632の間に形成される。
【0077】
ここでは、介在部分636は、山部636aと谷部636bとが波状に連続する形状に形成されている。山部636aの延在方向と谷部636bの延在方向とは、平行な位置関係にあり、従って、介在部分636を平面視すると、複数の山部636aと複数の谷部636bとが交互に並列状に形成された構成とされている。山部636aの頂部と谷部636bの底部とは、湾曲していてもよいし、所定の角度をなして曲っていてもよい。山部636aと谷部636bとのうち板状部分632の間に配設される部分が、並行状に延在する複数の空間を形成する仕切部分となる。
【0078】
そして、介在部分636が複数の板状部分632の間に挟み込まれ、谷部636bの底部の下面と下側の板状部分632とが接合されると共に、山部636aの頂部の上面と上側の板状部分632とが接合されている。
【0079】
また、板状部分632(ここでは上側)のうち各谷部636bの間の部分にスリット633が形成されている。なお、板状部分632のうち各山部636a部分にも当該スリットが形成されていてもよい。この場合、山部636aもスリットを形成することで、それらのスリットを通じて電線を収容できる。
【0080】
この電線モジュールによっても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
図17は第7変形例に係るプロテクタを製造するための中空板材730Bを示す一部切欠斜視図である。この中空板材730Bは、複数(ここでは2つ)の板状部分732の間に介在部分736が設けられた構成とされている。
【0082】
すなわち、介在部分736は、凹凸形状を呈する板状に形成された部材であり、より具体的には、介在部分736の平面視において点在するように複数の突部737が形成された構成とされている。ここでは、介在部分736を平面視した状態において、複数の突部737が縦横に一定間隔で並ぶように形成されている。突部737は、介在部分736のうち平板状に延在する基板部738より一方主面側に突出するように形成されており、筒の上端部が閉じられた形状を呈している。ここでは、突部737は、上方に向けて徐々に狭まる形状、即ち、錐台形状に形成されている。突部737は、円錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台の角を丸めた形状に形成されていてもよい。
【0083】
そして、介在部分736が複数の板状部分732の間に挟み込まれ、基板部738の下面が下側の板状部分732に接合され、突部737の頂部が上側の板状部分732に接合されている。
【0084】
また、板状部分732(ここでは上側)のうち各突部737間の部分にスリット733、733bが形成されている。スリット733、733bは、収容される電線の経路に沿っていればよく、直線状であってもよいし(スリット733参照)、各突部737間において電線が曲げられつつ収容される場合には、曲るように形成されていてもよい(スリット733b参照)。
【0085】
この中空板材730Bを、収容対象となる電線12の本数、収容すべき長さ寸法等に応じて適宜切断してプロテクタを構成し、各突部737間の空間にスリット733、733bを利用して電線12を収容することで、電線モジュールが構成される。
【0086】
なお、板状部分間の介在部分は、複数の部分の組合わせによって構成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態等では、1つのプロテクタを備える電線モジュールに係る構成を説明したが、電線モジュールは、複数のプロテクタを備えていてもよい。
【0088】
なお、上記実施形態及び各変形例において、板状部分が3枚以上設けられていてもよい。この場合、板状部分の各間に介在部分が設けられていることが好ましい。
【0089】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0090】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。