【解決手段】薬液容器3は、導入部28を有するシリンダ10と、シリンダ10内に設けられたピストン11と、ピストン11に連結されているとともにシリンダ10の外側からピストン11を操作するための操作部材12とを備えている。動力供給機構は、シリンダ10とピストン11との間に形成される収容室10a内に収容された薬液を吸引することにより薬液に対して薬液容器3から導出するための動力を供給可能なポンプ4を有する。操作部材12は、ピストン11から取り外し可能である。
前記ポンプは、駆動電圧が供給されることにより伸長と収縮とを繰り返す圧電素子と、前記圧電素子の伸長及び収縮によって振動するダイヤフラムとを有し、前記駆動電圧の供給に応じて前記薬液容器から導出するための動力を薬液に与える、請求項1〜3の何れか1項に記載の薬液注入装置。
前記制御装置は、前記駆動電圧を指定するための指令を無線で送信可能な送信部を有する出力装置と、前記出力装置からの指令を無線で受信可能な受信部を有するとともに前記指令に応じた駆動電圧を前記圧電素子に供給する制御装置本体とを備えている、請求項5に記載の薬液注入装置。
前記薬液容器又は前記制御装置は、薬液の導出量が増加するための指令を前記制御装置に対して出力するための追加投与手段をさらに備えている、請求項5又は6に記載の薬液注入装置。
前記シリンダから薬液が導入される前記ポンプの導入口には、前記導入口に導入される薬液をろ過するためのフィルタが設けられている、請求項4〜7の何れか1項に記載の薬液注入装置。
前記薬液容器には、前記収容室から前記ポンプを介して導かれた薬液を導出するための導出部が前記導入部とは別に設けられている、請求項1〜8の何れか1項に記載の薬液注入装置。
前記薬液注入装置は、前記ポンプと前記導出部までの間の薬液の流通経路に設けられ、前記収容室内の薬液の圧力が予め設定された基準圧力未満である場合に前記流通経路を開ける状態に付勢されている一方、前記収容室内の薬液の圧力が前記基準圧力以上である場合に当該薬液の圧力によって前記流通経路を閉じる状態に切り換えられる切換弁をさらに備えている、請求項9に記載の薬液注入装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の輸液装置では、シリンダ、プランジャ、及びスライダを一列に並べるための大きなスペースが要求されるため、装置全体を小型化するのに限界がある。
【0011】
本発明の目的は、医療従事者に対する薬液の接触機会を減らしながら、装置全体の小型化を図ることができる薬液注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本願発明者等は、シリンダとピストンとの間に収容された薬液を吸引して薬液容器から薬液を導出することができれば、シリンジ自体を薬液容器として利用しながらプランジャを用いることなく薬液の導出が可能となる点に着目して本願発明に想到した。
【0013】
具体的に、本発明は、薬液を患者へ注入するための薬液注入装置であって、薬液を導入するための導入部と、前記導入部を通じて導入された薬液を収容するための収容室とを有する薬液容器と、前記薬液容器内の薬液に対して前記薬液容器から導出するための動力を与える動力供給機構とを備え、前記薬液容器は、前記導入部を有するシリンダと、前記シリンダ内に設けられたピストンと、前記ピストンに連結されているとともに前記シリンダの外側から前記ピストンを操作するための操作部材とを備え、前記動力供給機構は、前記シリンダと前記ピストンとの間に形成される前記収容室内に収容された薬液を吸引することにより薬液に対して前記薬液容器から導出するための動力を供給可能なポンプを有し、前記操作部材は、前記ピストンから取り外し可能である、薬液注入装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、薬液の保管容器にシリンダ(導入部)を接続した状態で、ピストンに連結された操作部材を引いてシリンダ内に保管容器内の薬液を充填し、ポンプを駆動することにより、シリンダとピストンとの間の薬液を導出することができる。
【0015】
このようにシリンダ及びピストンを薬液容器として利用して薬液を導出することができるので、当該シリンダ及びピストンから別の薬液容器に薬液を移す場合と比較して医療従事者に対する薬液の接触機会を低減することができる。
【0016】
また、本発明では、ポンプがシリンダとピストンとの間の薬液を吸引することにより薬液を薬液容器から導出することができるため、薬液の導出のためにピストンを押圧することが不要となる。
【0017】
そこで、本発明では、操作部材がピストンから取り外し可能に構成されている。そのため、薬液の充填後、薬液の導出時にピストンから操作部材を取り外すことにより、薬液導出時における装置全体の小型化を図ることができる。
【0018】
ここで、前記操作部材は、予めピストンに連結されており、薬液の充填後にピストンから取り外されるものであってもよいが、薬液充填前においてピストンはシリンダ内に挿入されている必要がある。そのため、この場合には、薬液の充填前の状態(例えば、搬送時)においてシリンダ、ピストン及び操作部材が一列に並んでこれら全体が嵩の高いものとなる。
【0019】
そこで、前記薬液注入装置において、前記操作部材は、前記ピストンに対して取り外し可能な状態で取り付け可能であることが好ましい。
【0020】
この態様によれば、薬液の充填前の状態においてシリンダ及びこれに挿入されたピストンと、操作部材とを別々にして、両者を長手方向と直交する方向に並べて配置することにより、シリンダ、ピストン、及び操作部材全体の嵩を低くすることができる。
【0021】
一方、操作部材をピストンに取り付けてピストンを移動させることにより、シリンダ内に薬液を充填することができる。
【0022】
ここで、シリンダがピストンに連結された操作部材を通すための開口を有する場合、操作部材をピストンから取り外した後に、開口を通じてシリンダ内に何らかの部材が侵入してピストンに接触し、薬液の導出の悪影響を及ぼすおそれがある。
【0023】
そこで、前記薬液注入装置において、前記薬液容器は、前記操作部材が前記ピストンから取り外された状態で前記シリンダの開口を閉鎖可能な蓋部材をさらに備えていることが好ましい。
【0024】
この態様によれば、操作部材の取り外し後に蓋部材によってシリンダの開口を閉鎖することにより、開口を通じてピストンに外力が加わるのを抑制することができ、これにより、薬液をより安定した状態で導出することが可能となる。
【0025】
前記ポンプは、シリンダとピストンとの間の薬液を吸引可能なものであれば特に限定されないが、駆動電圧が供給されることにより伸長と収縮とを繰り返す圧電素子と、前記圧電素子の伸長及び収縮によって振動するダイヤフラムとを有し、前記駆動電圧の供給に応じて前記薬液容器から導出するための動力を薬液に与えることが好ましい。
【0026】
ここで、圧電素子及びダイヤフラムを有するいわゆるダイヤフラムポンプは、その構造が簡素であるため、使い捨てに適している。
【0027】
したがって、前記態様によれば、特定の患者に使用された薬液容器及びポンプを他の患者に使用することなく使い捨てすることにより感染を確実に防止することができる。
【0028】
また、ダイヤフラムポンプは、薬液容器内の薬液に直接力を加えるために薬液容器における薬液の経路に組み込まれたものであるため、シリンジの外側に設けられたスライダ及び駆動機構を有する従来の装置に比べて装置の小型化を図ることができる。
【0029】
前記薬液注入装置において、前記ポンプは、前記圧電素子に電気的に接続された接続導体をさらに有し、前記薬液注入装置は、前記接続導体を介して前記圧電素子に駆動電圧を供給するための接続端子を有するとともに前記駆動電圧を制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記接続端子が前記接続導体に電気的に接続された状態で前記ポンプに対して取り外し可能に装着されていることが好ましい。
【0030】
ここで、ポンプへの駆動電圧を制御する制御装置は、ポンプの接続導体に対して電気的に接続していればよく薬液に対して接触しないため、再利用することができる。
【0031】
したがって、上述のように特定の患者に使用された薬液容器及びポンプを使い捨てするとともにポンプから取り外された制御装置を再利用することにより、感染を確実に防止しながらランニングコストの低減及び資源の有効利用を図ることができる。
【0032】
前記薬液注入装置において、前記制御装置は、前記駆動電圧を指定するための指令を無線で送信可能な送信部を有する出力装置と、前記出力装置からの指令を無線で受信可能な受信部を有するとともに前記指令に応じた駆動電圧を前記圧電素子に供給する制御装置本体とを備えていることが好ましい。
【0033】
この態様によれば、制御装置が制御装置本体に対して無線で指令を出力可能な出力装置を備えているため、医療従事者が出力装置を管理及び操作することにより、医療従事者による薬液の流量調整を許容しながら、患者による薬液の流量調整を規制することができる。
【0034】
前記薬液注入装置において、前記薬液容器又は前記制御装置は、薬液の導出量が増加するための指令を前記制御装置に対して出力するための追加投与手段をさらに備えていることが好ましい。
【0035】
この態様によれば、患者が感じる症状の変化に応じて患者自らが追加投与手段を操作することにより、薬液の導出量を増やして前記症状の変化を緩和することができる。例えば、薬液として麻酔薬を使用している場合、患者は、痛みの増加に応じて追加投与手段を操作することにより、麻酔薬の投与量を増やして痛みを緩和することができる。
【0036】
ここで、前記ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムの微小な振動によって薬液を送出するものであるため、ダイヤフラムポンプ内へ異物が侵入すると、ダイヤフラムの振動が阻害されて薬液の流量等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0037】
そこで、前記薬液注入装置において、前記シリンダから薬液が導入される前記ポンプの導入口には、前記導入口に導入される薬液をろ過するためのフィルタが設けられていることが好ましい。
【0038】
この態様によれば、フィルタによってダイヤフラムポンプ内への異物の侵入を抑制することができるため、ポンプを安定して駆動することが可能となる。
【0039】
ここで、前記薬液装置の導入部は、薬液を導出するための導出部としても兼用することもできるが、このようにした場合、次の問題が生じる。
【0040】
導入部を導出部として兼用する場合、収容室と導入部との間に薬液導入用の経路と薬液導出用の経路とを設け、薬液導出用の経路の途中にポンプが設けられる。この構成において薬液を充填すると、導入部及び薬液導入用の経路内に薬液が満たされる一方、薬液導出用の経路及びポンプ内にはエアが残存する。このように導出時に薬液が流れる経路の途中にエアが残存するため、このエアを抜くための作業が煩雑となる。
【0041】
そこで、前記薬液注入装置において、前記薬液容器には、前記収容室から前記ポンプを介して導かれた薬液を導出するための導出部が前記導入部とは別に設けられていることが好ましい。
【0042】
この態様によれば、収容室からポンプを介して導出部へ至る経路を薬液の導入時に使用することなく導入部を通じて収容室内に薬液を充填することができる。これにより、ポンプによる薬液導出時に薬液が導出部に向けて移動することに応じて当該導出部に至る経路内のエアが自動的に排出される。そのため、薬液が導出される経路の途中にエアが残存するのを回避することができる。
【0043】
また、前記態様によれば、収容室内にエアが存在する場合に、ポンプを経由することなく導入部を通じてエアを排出することができる。
【0044】
ここで、上述のように導入部を通じてエアを排出する際、又は、保管容器に導入部を接続した状態でピストンを往復動作させて薬液を混合する際等には、ピストンがシリンダに押し込まれることにより収容室内の薬液の圧力が上昇する場合がある。ポンプの構造にもよるが、このように収容室内の薬液の圧力が上昇すると、薬液がポンプ内を流れて導出部から導出されるおそれがある。例えば、ポンプが収容室から導出部へ向かう流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制する一方弁を有している場合、薬液の充填時に導出部を通じて薬液が導出するおそれがある。
【0045】
そこで、前記薬液注入装置は、前記ポンプと前記導出部までの間の薬液の流通経路に設けられ、前記収容室内の薬液の圧力が予め設定された基準圧力未満である場合に前記流通経路を開ける状態に付勢されている一方、前記収容室内の薬液の圧力が前記基準圧力以上である場合に当該薬液の圧力によって前記流通経路を閉じる状態に切り換えられる切換弁をさらに備えていることが好ましい。
【0046】
この態様によれば、収容室内が基準圧力以上となった場合に導出部から薬液が導出されるのを防止することができるので、医療従事者に対する薬液の接触機会をより低減することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、医療従事者に対する薬液の接触機会を減らしながら、装置全体の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0050】
<第1実施形態>
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係る薬液注入装置1の使用状態(薬液を導出可能な状態)を示すものであり、
図3及び
図4は、薬液注入装置1に対する薬液充填時の状態を示すものである。
図1〜
図4を参照して、薬液注入装置1について説明する。
【0051】
薬液注入装置1は、患者へ薬液を注入するためのものであり、使い捨ての部分である注入装置本体2Aと、再利用される部分である制御装置2Bとを備えている。
【0052】
注入装置本体2Aは、薬液を収容するための収容室10a(
図3及び
図4参照)を有する薬液容器3と、収容室10a内に収容された薬液を吸引することにより薬液に対して薬液容器3から導出するための動力を供給可能なポンプ(動力供給機構)4とを備えている。
【0053】
薬液容器3は、収容室10a内に薬液を導入するための導入部28を有するシリンダ10と、シリンダ10内に設けられたピストン11と、ピストン11に連結されているとともにシリンダ10の外側からピストン11を操作するための操作部材12と、導入部28を閉鎖するための栓部材13(
図1及び
図2参照)と、栓部材13を取り外した状態で導入部28に装着可能な針部材14(
図3及び
図4参照)と、ポンプ4によりシリンダ10から導出された薬液を導くための導管5と、導管5の途中に設けられた追加投与手段6と、導管5の先端部に設けられた接続部(導出部)7と、シリンダ10の導入部28と反対側の開口26aを閉鎖するための蓋部材21とを備えている。なお、シリンダ10の軸線方向における導入部28側を先端側、開口26a側を基端側として以下説明する。また、接続部7は、患者の体内に留置される部分を有する留置部材(カテーテル及び注射針を含む)に接続可能である。
【0054】
シリンダ10は、円筒状の側壁26と、側壁26の先端側の開口を塞ぐ底壁27と、底壁27に設けられた導入部28、ポンプ取付部29、導管保持部30及び電池収納部31と、側壁26の基端部に設けられた蓋保持部32とを備えている。
【0055】
導入部28は、底壁27から先端側に突出する。また、導入部28及び底壁27には、両者を貫通する連通穴(符号省略)が形成されている。この連通穴を通じて収容室10a内に薬液を導入可能である。また、導入部28は、雌ルアーコネクタと嵌合可能な雄ルアーコネクタによって構成されている。そのため、薬液が保管された保管容器が雌ルアーコネクタを有する場合には、その雌ルアーコネクタに導入部28を嵌め込むことにより両者の間がシールされた状態で保管容器内と収容室10a内とが連通する。一方、保管容器がゴム栓を有する場合(例えば、薬液バッグ又はアンプルの場合)には、針部材14に形成された雌ルアーコネクタに導入部28を嵌め込むとともにこの針部材14をゴム栓に刺し込むことにより両者の間がシールされた状態で保管容器内と収容室10aとが連通する。
【0056】
ポンプ取付部29は、ポンプ4を取り付けるための部分である。まず、ポンプ4の構成について
図5〜
図7を参照して説明する。
【0057】
ポンプ4は、底部と底部の周縁部に立設された側壁とを有する筐体15と、筐体15の底部との間にポンプ室15aが形成されるように筐体15の側壁に取り付けられたダイヤフラム16と、ダイヤフラム16のポンプ室15aと反対側の面に設けられた圧電素子17と、圧電素子17に駆動電圧を供給するための接続導体18と、筐体15の底部に形成された導入口15bに設けられた導入側一方弁19と、筐体15の底部に形成された導出口15cに設けられた導出側一方弁20とを備えている。
【0058】
導入側一方弁19は、導入口15b内の薬液の圧力がポンプ室15a内の薬液の圧力を超えた場合に開放して、導入口15bからポンプ室15aに向けた薬液の流れを許容する。
【0059】
導出側一方弁20は、ポンプ室15a内の薬液の圧力が導出口15c内の薬液の圧力を超えた場合に開放して、ポンプ室15aから導出口15cに向けた薬液の流れを許容する。
【0060】
圧電素子17は、交流電源Pからの駆動電圧が供給されることにより、
図6及び
図7に示すように伸長と収縮とを繰り返す。この圧電素子17の伸縮によってダイヤフラム16は、振動する。なお、
図5は、交流電源Pから駆動電圧が供給されていない状態を示す。
【0061】
図6に示すように、交流電源Pから駆動電圧が供給されてポンプ室15aが膨張しようとすると、ポンプ室15a内の圧力低下に伴い、
図7に示すように、導出側一方弁20が閉じるとともに導入側一方弁19が開放して、ポンプ室15a内に薬液が導入される。
【0062】
次に、
図7に示すように、交流電源Pから駆動電圧によりポンプ室15aが収縮しようとすると、ポンプ室15a内の圧力増加に伴い、
図7に示すように、導入側一方弁19が閉じるとともに導出側一方弁20が開いて、ポンプ室15a内の薬液が導出される。
【0063】
このように構成されたポンプ4は、
図2及び
図4に示すようにポンプ取付部29に取り付けられている。
【0064】
具体的に、ポンプ取付部29は、シリンダ10の底壁27から先端側に突出するとともに先端側からポンプ4が載せられる載置部29aと、載置部29aに載せられたポンプ4を側方から保持する保持壁29b、29cとを備えている。載置部29aは、ポンプ4の平面形状と同等の平面形状(本実施形態では長方形)を有する。保持壁29b、29cは、載置部29aの縁部(本実施形態では互いに隣接する長辺と短辺)に沿ってそれぞれ底壁27から載置部29aよりも先端側に突出する。これらの保持壁29b、29cは、後述する電池収納部31の側面と協働してポンプ4を側方から保持する。
【0065】
また、載置部29aには、吸引穴29d及び導出穴29eが設けられている。吸引穴29dは、収容室10aからポンプ4内へ薬液を吸引するために載置部29aの先端側の面から底壁27の基端側の面まで貫通する。導出穴29eは、ポンプ4から導出された薬液を導管5へ導くために載置部29aの先端側の面から基端側に延びるとともに側方に屈曲して保持壁29cの側面で開口している(
図2参照)。この開口に対して導管5が接続されている。
【0066】
吸引穴29dとポンプ4の導入口15bとが連通し、導出穴29eとポンプ4の導出口15cとが連通し、かつ、ポンプ4の接続導体18が先端側に向いた状態で載置部29aにポンプ4が取り付けられている(固定されている)。吸引穴29dと導入口15bとを確実に接続するとともに導出穴29eと導出口15cとを確実に接続するために、載置部29aとポンプ4との間にシール部材を設けてもよい。また、ポンプ4の導入口15bには、導入口15bに導入される薬液をろ過するためのフィルタF(
図4参照)が設けられている。
【0067】
図2を参照して、導管保持部30は、導管5をその軸線と直交する方向に挟む一対の挟持板30aと、両挟持板30a同士の間に挟まれる導管5の姿勢を規制する規制部30bとを備えている。両挟持板30aは、側面視において導出穴29eの開口の両側位置で底壁27から先端側に延びる。規制部30bは、側面視において導出穴29eの開口に重なる位置で両挟持板30a同士の間に設けられている。導管5は、その一部が規制部30bを回避するように屈曲した姿勢で、両挟持板30a同士の間で保持されている。そのため、導管5に対して引張力が生じた場合、導管5の屈曲部分と規制部30bとが当接し当該規制部30bによって引張力を受けることができる。これにより、導管5自体、及び導管5とポンプ取付部29との接続部分が受ける引張力を軽減することができる。
【0068】
電池収納部31は、シリンダ10の軸線と平行する軸回りに後述する電池23を取り囲むための側壁を有する。
【0069】
ピストン11は、シリンダ10の側壁26及び底壁27との間で収容室10aを形成するためのものであり、シリンダ10の軸線方向に沿って移動可能となるようにシリンダ10内に設けられている。ピストン11は、円盤状のピストン本体33と、ピストン本体33の外周面とシリンダ10の内周面との間をシールするためのシール部34とを備えている。ピストン本体33の中心部には、雌ねじ部33aが形成されている。シール部34は、雌ねじ部33aを開放した状態でピストン本体33を外側から被覆している。
【0070】
操作部材12は、ピストン11に対して取り外し可能な状態で取り付け可能である。操作部材12は、開口26aを通じてシリンダ10内に基端側から挿入可能な操作部材本体12aと、操作部材本体12aの先端部に形成された雄ねじ部12bとを備えている。雄ねじ部12bは、ピストン11の雌ねじ部33aに螺合可能である。操作部材12がピストン11に連結された状態で操作部材12をシリンダ10から引くことにより、収容室10a内に薬液を吸い込むことができる。この状態で操作部材本体12aをピストン11から取り外すことにより、シリンダ10から基端側に突出する操作部材本体12aの長さL(
図3参照)だけ薬液容器3の嵩を低くすることができる。
【0071】
蓋部材21は、操作部材本体12aが取り外された状態でシリンダ10の開口26aを閉鎖するためのものである。蓋部材21は、シリンダ10の蓋保持部32に回転可能に保持されている。蓋保持部32は、シリンダ10の軸線と直交する方向に延びる支持軸32aと、蓋部材21を係合するための係合穴32bとを備えている。支持軸32a及び係合穴32bは、開口26aを挟むように配置されている。蓋部材21は、開口26aを閉鎖可能な大きさを持つ蓋部材本体21aと、蓋部材本体21aの一端に設けられているとともに支持軸32a回りに回転可能に支持された被支持部21bと、蓋部材本体21aの他端に設けられているとともに係合穴32bに係合可能な係合爪21cとを有する。操作部材本体12aがシリンダ10から取り外された状態で、蓋部材21を支持軸32a回りに回転させるとともに係合爪21cを係合穴32bに係合させることにより、開口26aを閉鎖することができる。
【0072】
図1、
図2及び
図4を参照して、制御装置2Bは、ポンプ4に対する駆動電圧を制御する制御装置本体8と、制御装置本体8に対して指令を出力するための出力装置9とを備えている。
【0073】
制御装置本体8は、基板22と、基板22に電気的に接続された状態で基板22に固定された電池23及び一対の接続端子24と、基板22、電池23及び接続端子24を被覆するカバー25とを備えている。
【0074】
カバー25は、基板22、電池23、及び接続端子24を保持するとともに、シリンダ10に対して取り外し可能な状態で取り付け可能である。具体的に、カバー25は、ポンプ取付部29、導管保持部30、及び電池収納部31を収納する収納部25aと、収納部25aの基端部から側方に突出する突出部25bとを備えている。
【0075】
収納部25aは、ポンプ取付部29、導管保持部30、及び電池収納部31を外側から取り囲んだ状態で各部29〜31に嵌合する側壁(符号省略)と、側壁の先端側の開口を閉じる天井壁とを有する。収納部25aの側壁と各部29〜31との嵌合によって、カバー25は、シリンダ10に対して取り外し可能な状態で取り付けられている。また、収納部25aには、シリンダ10に取り付けられた状態で導管5を通すための切欠き25cが形成されている。一方、突出部25bには、シリンダ10の導入部28を通すための挿入穴25dが形成されている。
【0076】
基板22は、複数のボルトB1(
図4で1本のみ示す)によって収納部25aの天井壁に固定されている。電池23は、カバー25がシリンダ10に取り付けられた状態で電池収納部31内に配置されるように基板22上に固定されている。接続端子24の各々は、カバー25がシリンダ10に取り付けられた状態でポンプ4の接続導体18の各々に接触するように基板22上に固定されている。したがって、カバー25がシリンダ10に取り付けられることにより、ポンプ4、基板22及び電池23が互いに電気的に接続される。
【0077】
なお、接続端子24は、伸縮可能なプローブであり、接続端子24の基端部は、設計上の接続導体18の位置よりも基端側に配置されている。これにより、接続端子24を縮小させながら、接続端子24と接続導体18とを確実に接続することができる。
【0078】
基板22は、複数の素子と、これらの素子を電気的に接続する回路とを有している。具体的に、基板22は、電池23からの直流電力を交流電力に変換する素子と、この素子と接続端子24とを接続する回路とを備えている。また、基板22上に設けられた素子及び回路によって
図8に示すメイン制御部35が構成されている。
【0079】
以下、
図8を参照して、薬液注入装置1の電気的構成について説明する。
【0080】
上述のように、薬液注入装置1は、注入装置本体2Aと、制御装置2Bとを備えている。
【0081】
注入装置本体2Aは、ポンプ4と、追加投与手段6とを備え、制御装置2Bは、出力装置9と、メイン制御部35とを備えている。
【0082】
出力装置9は、流量設定値等を表示する表示部9aと、流量設定値の変更及び薬液注入の開始及び停止の操作を行うための操作部9bと、操作部9bにより設定された流量設定値に相当する指令を作成するとともに前記表示部9aの表示を制御する出力制御部9cと、出力制御部9cにより作成された指令を無線でメイン制御部35に送信する送信部9dとを備えている。
【0083】
メイン制御部35は、出力装置9から出力された指令を受信する受信部35aと、受信部35aで受信された指令に基づいてポンプ4に出力する駆動電圧を設定する電圧設定部35bと、電圧設定部35bにより設定された駆動電圧を接続端子24を介してポンプ4に出力する出力部35cとを備えている。
【0084】
これにより、出力装置9により設定された流量で薬液が導出されるようにポンプ4を駆動することができる。
【0085】
また、追加投与手段6は、追加投与ボタン6aと、追加投与ボタン6aが押込操作された場合に追加投与量として予め設定された増加流量(出力装置9で設定された流量+予め設定された追加投与流量)に相当する指令を作成する指令作成部6bと、指令作成部6bにより作成された指令を無線でメイン制御部35に送信する送信部6cとを備えている。
【0086】
メイン制御部35の電圧設定部35bは、追加投与手段6からの指令を受信した場合に、出力装置9からの指令を受信した場合と異なる次の処理を実行する。
【0087】
まず、電圧設定部35bは、追加投与手段6からの指令を受信した場合に、追加投与手段6からの前回の指令を受信してから予め設定された時間(以下、ロックアウトタイムという)が経過しているか否かを判定する。
【0088】
電圧設定部35bは、ロックアウトタイムが経過していないと判定すると、当該追加投与手段6からの指令は無効と判断する。これにより、患者に対して過剰な薬液の投与を防止する。
【0089】
一方、電圧設定部35bは、ロックアウトタイムが経過していると判定すると、追加投与手段6からの指令に応じた流量で薬液を導出するための駆動電圧を設定し、予め設定された期間が経過すると、通常の流量(出力装置9による設定流量)で薬液を導出するための駆動電圧に戻す。
【0090】
つまり、追加投与は、患者の症状の変化に応じて短期間で一定量の薬液投与量の増加を許容するものであるため、電圧設定部35bは、一定期間中のみ薬液投与量を増加させるための処理を行う。
【0091】
なお、前記実施形態では、制御装置2B専用の出力装置9を採用しているが、出力装置9は、携帯型情報通信端末(スマートフォン及びタブレット等)により代用することもできる。
【0092】
上述した薬液注入装置1を使用する場合、まず、操作部材12をピストン11に取り付ける(螺合する)とともに導入部28を利用して薬液の保管容器から収容室10a内に薬液を充填する。
【0093】
具体的に、保管容器が雌ルアーコネクタを有する場合には、この雌ルアーコネクタ内に導入部28(雄ルアーコネクタ)をそのまま挿入する一方、保管容器がゴム栓を有する場合には導入部28に針部材14(
図3及び
図4)を装着するとともにこの針部材14をゴム栓に挿し込む。
【0094】
この状態で、操作部材12を引いてピストン11を移動させることにより、保管容器から収容室10a内に薬液を必要量だけ吸引する。ここで、収容室10a内にエアが残存する場合には、このエアを導入部28側に寄せるようにシリンダ10を傾けた状態で操作部材12を押すことにより導入部28を通じてエアを導出する。そして、導入部28に栓部材13を取り付けることにより、導入部28を閉鎖する。なお、シリンダ10から分離した栓部材13を例示しているが、栓部材13は、紐等によって注入装置本体2Aに拘束されていてもよい。
【0095】
次いで、出力装置9を用いて薬液の吐出流量を設定するとともにポンプ4の駆動指令を出力する。ポンプ4により吸引された薬液の移動によって、吸引穴29dから接続部7までの間のエアは、接続部7を通じて自動的に排出される。
【0096】
全てのエアの排出が確認されると、出力装置9を用いてポンプ4を一旦停止させ、この状態で患者に挿入されたカテーテル等に対して接続部7を接続し、再度ポンプ4を駆動させる。これにより、収容室10a内の薬液がポンプ4に吸引されて接続部7を介して患者に注入されるとともに、これに応じて収容室10aを縮小する方向にピストン11がシリンダ10に対して移動する。
【0097】
以上説明したように、薬液の保管容器にシリンダ10(導入部28)を接続した状態で、ピストン11に連結された操作部材12を引いてシリンダ10内に保管容器内の薬液を充填し、ポンプ4を駆動することにより、シリンダ10とピストン11との間の薬液を導出することができる。
【0098】
このようにシリンダ10及びピストン11を薬液容器3として利用して薬液を導出することができるので、当該シリンダ10及びピストン11から別の薬液容器に薬液を移す場合と比較して医療従事者に対する薬液の接触機会を低減することができる。
【0099】
また、ポンプ4がシリンダ10とピストン11との間の薬液を吸引することにより薬液を薬液容器3から導出することができるため、薬液の導出のためにピストン11を押圧することが不要となる。
【0100】
ここで、操作部材12は、ピストン11から取り外し可能に構成されている。そのため、薬液の充填後、薬液の導出時にピストン11から操作部材12を取り外すことにより、薬液導出時における装置全体の小型化を図ることができる。
【0101】
また、第1実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0102】
薬液の充填前の状態においてシリンダ10及びこれに挿入されたピストン11と、操作部材12とを別々にして、両者を長手方向と直交する方向に並べて配置することにより、シリンダ10、ピストン11、及び操作部材12全体の嵩を低くすることができる。
【0103】
一方、操作部材12をピストンに取り付けてピストン11を移動させることにより、シリンダ10内に薬液を充填することができる。
【0104】
操作部材12の取り外し後に蓋部材21によってシリンダ10の開口26aを閉鎖することにより、開口26aを通じてピストン11に外力が加わるのを抑制することができる。これにより、薬液をより安定した状態で導出することが可能となる。
【0105】
圧電素子17及びダイヤフラム16を有するいわゆるダイヤフラムポンプ4は、その構造が簡素であるため、使い捨てに適している。
【0106】
したがって、特定の患者に使用された薬液容器3及びポンプ4を他の患者に使用することなく使い捨てすることにより感染を確実に防止することができる。
【0107】
また、ダイヤフラムポンプ4は、薬液容器3内の薬液に直接力を加えるために薬液容器3における薬液の経路に組み込まれたものであるため、シリンジの外側に設けられたスライダ及び駆動機構を有する従来の装置に比べて装置の小型化を図ることができる。
【0108】
ここで、ポンプ4に対する駆動電圧を制御する制御装置2Bは、ポンプ4の接続導体18に対して電気的に接続していればよく薬液に対して接触しないため、再利用することができる。
【0109】
したがって、上述のように特定の患者に使用された薬液容器3及びポンプ4を使い捨てするとともにポンプ4から取り外された制御装置2Bを再利用することにより、感染を確実に防止しながらランニングコストの低減及び資源の有効利用を図ることができる。
【0110】
制御装置2Bが制御装置本体8に対して無線で指令を出力可能な出力装置9を備えているため、医療従事者が出力装置9を管理及び操作することにより、医療従事者による薬液の流量調整を許容しながら、患者による薬液の流量調整を規制することができる。
【0111】
患者が感じる症状の変化に応じて患者自らが追加投与手段6を操作することにより、薬液の導出量を増やして前記症状の変化を緩和することができる。例えば、薬液として麻酔薬を使用している場合、患者は、痛みの増加に応じて追加投与手段6を操作することにより、麻酔薬の投与量を増やして痛みを緩和することができる。
【0112】
フィルタFによってダイヤフラムポンプ4内への異物の侵入を抑制することができるため、ポンプ4を安定して駆動することが可能となる。
【0113】
収容室10aからポンプ4を介して接続部(導出部)7へ至る経路を薬液の導入時に使用することなく導入部28を通じて収容室内に薬液を充填することができる。これにより、ポンプ4による薬液導出時に薬液が接続部7に向けて移動することに応じて当該接続部7に至る経路内のエアが自動的に排出される。そのため、薬液が導出される経路の途中にエアが残存するのを回避することができる。
【0114】
また、収容室10a内にエアが存在する場合に、ポンプ4を経由することなく導入部28を通じてエアを排出することができる。
【0115】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ポンプ4の導出口15cがシリンダ10の導出穴29eを介して導管5及び接続部7に接続されている。
【0116】
ここで、ポンプ4は、
図5〜
図7に示すように、収容室10aから接続部7に向かう薬液の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制する一方弁19、20を有している。そのため、第1実施形態において収容室10a内の薬液の圧力が高くなると、一方弁19、20を通じて接続部7から薬液が導出されるおそれがある。
【0117】
そこで、第2実施形態では、収容室10a内の薬液の圧力が高くなったときに接続部7からの薬液の導出を規制するための切換弁36(
図9及び
図10参照)が設けられている。
【0118】
切換弁36は、第1導入ポート36aを通じてポンプ4と接続されているとともに、第2導入ポート36bを通じて薬液容器3(シリンダ10)に直接接続されている。また、切換弁36は、導出ポート36cを通じて導管5に接続されている。
【0119】
具体的に、切換弁36は、第1導入ポート36aに接続された異常停止弁38と、異常停止弁38及び第2導入ポート36bに接続された高圧選択弁37とを備えている。
【0120】
高圧選択弁37は、ポンプ4が非作動の状態において第1導入ポート36aに接続された通路(以下、第1通路という)を閉じる一方、ポンプ4が作動中の状態において第1通路を開放して、ポンプ4から吐出された薬液を導管5に導くためのものである。
【0121】
具体的に、高圧選択弁37は、第1通路及び第2導入ポート36bに接続された通路(以下、第2通路という)を閉じる初期位置37aと、第1通路を閉じたまま第2通路を開く切換位置37bとの間で切換可能である。また、高圧選択弁37は、差圧設定ばね37cによって初期位置37aに付勢されている。差圧設定ばね37cは、ポンプ4の作動時に生じる第1通路に対する第2通路の差圧に相当する圧力によって高圧選択弁37が切換位置37bに切り換えられるように設定された付勢力を有する。
【0122】
ポンプ4が非作動の状態においては、第1通路及び第2通路内の薬液の圧力が等しくなるため、高圧選択弁37は、差圧設定ばね37cの付勢力によって初期位置37aに切り換えられる。
【0123】
一方、ポンプ4が作動すると、第1通路に対する第2通路の差圧が生じることにより、高圧選択弁37が切換位置37bに切り換えられ(付勢され)、ポンプ4から吐出された薬液が導管5に導かれる。
【0124】
異常停止弁38は、収容室10a内の薬液の圧力が前記基準圧未満である場合に第1通路を開く一方、収容室10a内の薬液の圧力が基準圧以上である場合に第1通路を閉じるためのものである。
【0125】
具体的に、異常停止弁38は、第1通路を開く初期位置38aと、第1通路を閉じる切換位置38bとの間で切換可能である。また、異常停止弁38は、基準圧設定ばね38cによって初期位置38aに付勢されている。基準圧設定ばね38cは、収容室10a内の薬液の圧力が基準圧力となることにより異常停止弁38が切換位置38bに切り換えられるように設定された付勢力を有する。なお、初期位置38aには、背圧を発生させるための絞りが設けられているが、異常停止弁38の下流側の経路の流通抵抗が背圧を発生させるのに十分大きい場合には、この絞りを省略することもできる。
【0126】
収容室10a内の薬液が基準圧力未満である場合、異常停止弁38は、初期位置38aに切り換えられる(付勢される)。この状態では、ポンプ4から吐出された薬液は、異常停止弁38及び高圧選択弁37を通じて導管5に導かれる。
【0127】
一方、収容室10a内の薬液が基準圧力以上である場合、異常停止弁38は、薬液の圧力によって切換位置38bに切り換えられる。これにより、第1通路が遮断され、薬液が接続部7から導出されるのを防止することができる。
【0128】
このように切換弁36は、薬液容器3及びポンプ4と導管5との間に設けることができる。なお、本明細書において説明するすべての実施形態について切換弁36は適用可能である。
【0129】
第2実施形態によれば、収容室10a内が基準圧力以上となった場合に接続部(導出部)7から薬液が導出されるのを防止することができるので、医療従事者に対する薬液の接触機会をより低減することができる。
【0130】
<第3実施形態>
第1実施形態及び第2実施形態において、薬液容器3には、
図4に示すように導入部28とは別に接続部(導出部)7が設けられているが、
図11及び
図12に示す第3実施形態のように導入部を導出部として兼用することもできる。
【0131】
図11及び
図12を参照して、第3実施形態に係るシリンダ10は、収容室10a内に薬液を導入するための導入部39と、導入部39と収容室10aとを連結する連通路40と、連通路40に設けられた三方活栓41とを備えている。なお、導入部39は、第1実施形態と同様に雄ルアーコネクタである。
【0132】
ポンプ4は、シリンダ10の吸引穴29dから薬液を吸引可能となるようにシリンダ10の底壁27に接続されているとともに、連通路40の側孔40aを通じて連通路40内に薬液を導入可能となるように連通路40に接続されている。
【0133】
三方活栓41は、
図11に示すように収容室10aと導入部39とを接続する位置と、
図12に示すように導入部39とポンプ4(側孔40a)とを接続する位置との間で連通路40に対して回転可能である。
【0134】
第3実施形態に係る薬液注入装置1を使用する場合、まず、
図11に示すように三方活栓41を回転した状態で、導入部39を通じて保管容器から収容室10a内に薬液を導入する。
【0135】
次いで、
図12に示すように三方活栓41を回転した状態でポンプ4を駆動することにより、収容室10aから薬液が吸引され、ポンプ4から側孔40a、連通路40、及び導入部39を通じて薬液を導出することができる。
【0136】
薬液の導出時には、導入部39に導管を設けることができる。具体的に、雌ルアーコネクタを一端に有する導管を準備するとともに、この雌ルアーコネクタに導入部39(雄ルアーコネクタ)を挿入することにより導入部39に導管を接続することができる。
【0137】
なお、上述のように導入部39を導出部として兼用する場合、薬液の充填時に導入部39及び連通路40内は薬液で満たされるものの、それ以外の部分にエアが残存するため、薬液導出時にこのエアを抜く作業を行う必要がある。
【0138】
具体的に、
図12に示すように、三方活栓41の一部の範囲E1、ポンプ4から連通路40までの範囲E2、ポンプ4内、及び吸引穴29dからポンプ4までの範囲E3に、エアが残存する。
【0139】
このように薬液が通る経路において薬液で満たされた部分とエアが残存する部分とが混在すると、薬液の表面張力等の影響により当該経路からエアを抜くのは難しい。
【0140】
これに対し、第1実施形態のように導入部28と接続部(導出部)7とを個別に設けると、薬液の充填時に導出用の経路内をエアで満たされた状態で維持することができ、当該エアは、ポンプ4の駆動によって自動的に排出される。
【0141】
したがって、エア抜き作業を考慮すると、第3実施形態よりも第1実施形態の方が有利である。
【0142】
なお、前記実施形態では、シリンダ10と導管5との間にポンプ4を取り付ける例について説明したが、ポンプ4は、導管5に設けられていてもよい。この場合、ポンプ4を保護するためのカバー等を設けることが好ましい。
【0143】
前記実施形態では、制御装置本体8が薬液容器3に対して取り外し可能であるが、制御装置本体8を薬液容器3に固定してもよい。
【0144】
前記実施形態では、出力装置9と制御装置本体8とが分離しているが、これらを一体に構成することもできる。この場合、患者自らによる出力装置の操作が不能となるように、ロック機能を設けることが好ましい。
【0145】
前記実施形態では、追加投与手段6がメイン制御部35に対して無線で指令を出力する構成について説明したが、追加投与手段とメイン制御部とが互いに機械的にかつ電気的に接続(有線接続)していてもよい。例えば、メイン制御部35の受信部35aに電気的に接続された接続導体を制御装置2Bに設けるとともに、追加投与手段6の送信部6cに電気的に接続された接続導体を薬液容器3に設け、これらの接続導体が薬液容器3に対する制御装置2Bの装着時に互いに接続されるように構成することもできる。
【0146】
前記実施形態では、注入装置本体2Aの導管5の途中、つまり、注入装置本体2Aに追加投与手段6を設けているが、追加投与手段6は、注入装置本体2Aから分離することもできる。このようにすれば、制御装置2Bとともに追加投与手段6も再利用することができる。また、この場合、追加投与手段6の紛失を防止するために、紐等の拘束手段を用いて追加投与手段6を制御装置2Bに繋ぎ止めることが好ましい。