特開2015-157321(P2015-157321A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015157321-チャックユニット 図000003
  • 特開2015157321-チャックユニット 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-157321(P2015-157321A)
(43)【公開日】2015年9月3日
(54)【発明の名称】チャックユニット
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/04 20060101AFI20150807BHJP
【FI】
   B25B23/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-31788(P2014-31788)
(22)【出願日】2014年2月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大槻 和行
(72)【発明者】
【氏名】今川 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038BA03
(57)【要約】
【課題】ビットの移動路上に正しくナットを保持するとともにコンパクトなチャックユニットの提供。
【解決手段】本発明のチャックユニット1は、昇降するビット80を挿通可能なチャック本体110と、このチャック本体110に取り付けられ前記ビット80の移動経路上に配された開閉自在な爪20とから成る。また、前記爪20には、外部から供給される前記ナット81を保持する保持穴21が形成され、さらに前記ナット81を吸着する磁石5が取り付けられている。よって、爪20に供給されたナット81は、前記磁石5の磁力により前記保持穴21へ引き込まれ、正規の位置である前記ビット80の移動経路上で確実に保持される。つまり、前記磁石5を備えたチャックユニット1は、従来のようなナット81を押し込む機構を設置する必要がないため、従来に比べ小型になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動手段の駆動により直進移動するビットを挿通可能なチャック本体と、このチャック本体に接続され前記ビットの移動経路上に配された開閉自在な爪とを備え、さらに閉じた状態の前記爪には前記ビットに係合可能なナットを保持する保持穴が形成され、外部から供給される前記ナットを保持するとともに前記ビットの移動経路上に配置可能なチャックユニットにおいて、
前記爪は、前記ナットを吸着する吸着手段を備えて成り、この吸着手段は、前記爪の開閉動作に伴って前記爪とともに動作することを特徴とするチャックユニット。
【請求項2】
前記吸着手段は、所定の磁力を発する磁石であることを特徴とする請求項1に記載のチャックユニット。
【請求項3】
前記磁石は、外部からの信号を受けて励磁状態あるいは非励磁状態となる電磁石であることを特徴とする請求項2に記載のチャックユニット。
【請求項4】
前記爪は、磁化しない樹脂材から成ることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のチャックユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットをワークへ螺入する自動ねじ締め機に搭載され、外部から分離供給された前記ナットを一時的に保持するチャックユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ナットをワークに締結するに当たっては、外部より分離供給されたナットを一時的に保持するチャックユニットと、前記ナットに嵌合し、かつ回転および往復移動自在なビットとを備えたナット締結機が従来から広く採用されている。
【0003】
上述した従来のチャックユニット100は、特許文献1および図2に示すものであり、前記ビット80を挿通可能なチャック本体110と、前記ビット80の移動路上に配され常時閉じる方向へ付勢された一対の爪120と、前記爪120に供給したナット81を所定の位置まで押し込む押出機構130とから構成される。
【0004】
前記押出機構130は、図示しないナット供給装置に接続されており、ナット供給装置から分離供給されたナットを案内する案内路135および前記案内路135に接続される導入路136をそれぞれ備えた案内ブロック131と、前記導入路136を移動自在な押圧部材138と、この押圧部材138を連結して成り外部の信号に基づいて駆動する押出シリンダ137とから構成される。また、この押出機構130は、前記チャック本体110の側面に固定され、前記案内路135および前記導入路136が前記爪120の側面側に配されている。
【0005】
前記爪120は、前記チャック本体110に揺動自在に取り付けられており、前記ビット80の往復移動により閉状態から開状態となるように構成されている。また、この爪120には、前記案内路135および前記導入路136と連通する保持穴121が形成されており、前記保持穴121には、前記案内路135から進入した前記ナット81を前記爪120内に留めるための内壁面121aおよび支持面121bが形成されている。
【0006】
次に、従来のチャックユニット100の作用について説明する。前記ナット供給装置の作動によりエア圧送された前記ナット81は、前記案内路135を通過して前記保持穴121へ供給される。この後、前記押出シリンダ137が作動して前記押圧部材138を前記爪120側へ移動させる。つまり、前記押圧部材138は、前記ナット81を前記保持穴121の内壁面121aに押し当てるまで移動する。これにより、ナット81は、保持穴121の正規の位置で保持される。また、この後、前記押出シリンダ137の複動に伴い前記押圧部材138は、前記爪120から遠ざかる方向へ移動し復帰する。この押出シリンダ137の複動が完了することで、前記ビット80は、回転および下降して前記爪120を押し開き前記ナット81をワークに螺入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開H10-263951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のチャックユニット100は、前記押出シリンダ137が前記爪120の側面側に張り出すように配置されているため、ワークに突起があるような場合は、この突起部に干渉して締結できない問題があった。また、従来のチャックユニット100は、前記押出シリンダ137を駆動制御しなければならないため、制御が煩雑となる問題もあった。さらに、前記ナット81の圧送後に前記押出シリンダ137を作動および復帰させた後でなければ前記ビット80を下降できなかったため、この押出シリンダ137の作動および復帰に要する時間だけ締結時間が長くなる問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、ワークに突起があるようなワークに対しても締結が行えるコンパクトなチャックユニットの提供を目的とする。
【0010】
この目的を達成するため、本発明のチャックユニットは、往復移動手段の駆動により直進移動するビットを挿通可能なチャック本体と、このチャック本体に接続され前記ビットの移動経路上に配された開閉自在な爪とを備え、さらに閉じた状態の前記爪には前記ビットに係合可能なナットを保持する保持穴が形成され、外部から供給される前記ナットを保持するとともに前記ビットの移動経路上に配置可能なチャックユニットにおいて、前記爪は、前記ナットを吸着する吸着手段を備えて成り、この吸着手段は、前記爪の開閉動作に伴って前記爪とともに動作することを特徴とする。なお、前記吸着手段は、所定の磁力を発する磁石が望ましく、前記磁石は、外部からの信号を受けて励磁状態あるいは非励磁状態となる電磁石であっても良い。また、前記爪は、磁化しない樹脂材としても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチャックユニットは、ナットを吸着する吸着手段を前記爪に配置できるため、従来のような押出シリンダを配置する必要がなく、従来に比べて寸法をコンパクトにできる利点がある。これにより、例えば締結面よりも高い位置に突き出た突出部を備えたワークであっても、この突出部にチャックユニットが干渉しなくなるため、従来に比べて締結可能なワークの種類が増える。また、前記吸着手段は、金属製のナットを磁力により前記保持穴に引き込む磁石であるため、従来のように押出シリンダを駆動制御する必要がない利点や、さらに、ナットの圧送後に前記押出シリンダを駆動する必要がないので、ビットの下降タイミングを従来よりも早く設定できることから、本発明のチャックユニットは、ナットの圧送から締結完了に要する時間を短縮できるという利点もある。さらに、前記磁石を所定時間励磁可能な電磁石に変更することで、本来励磁の必要がないナット圧送前や爪を開いた後など、前記爪でナットを保持している工程を除いて、前記保持穴に磁力が作用しないよう設定できる。よって、本発明のチャックユニットは、金属から成る部材の磁化を最小限に抑えることができ、前記ビットやナットの磁化を必要最小限に抑制できる利点もある。また、前記爪を樹脂材とすることで前記爪が全く磁化しないため、この爪に接触する前記ビットが磁化し難い。つまり、本発明のチャックユニットは、前記爪に接触した状態で下降するビットが前記爪によって磁化し難いので、このビットに嵌合するナットの磁化も低減できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るチャックユニットを説明するための概略一部切欠断面図である。
図2】従来のチャックユニットを説明するための概略一部切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のチャックユニットについて、図1を用いて以下に説明する。本発明のチャックユニット1は、ナット81に嵌合可能なビット80を挿通自在なチャック本体110と、外部から供給される前記ナット81を通過可能な案内ブロック31と、この案内ブロック31を通過した前記ナット81を一時的に保持する爪20とから構成される。
【0014】
前記チャック本体110の先端側には、一対の前記爪20がそれぞれ揺動自在に配される一方、チャック本体110の側面側には、前記案内ブロック31が爪20に接するように取り付けられている。
【0015】
前記爪20は、図示しないばねによりそれぞれ閉じる方向へ付勢されており、前記ビット80の移動路を常時は遮っている。また、閉じた前記爪20には、後述するクッション軸80bを挿通可能な挿通穴20aと、この挿通穴20aに連通するすり鉢状の傾斜面20bと、前記ナット81を支持可能な保持穴21とがそれぞれ形成される。前記保持穴21は、前記案内路35に連通しており、前記ナット81の側面を支持する内壁面21aと、前記ナット81の下面を支持する支持面21bとをそれぞれ備え、前記ナット81を保持するように構成される。さらに、前記爪20は金属材から成り、耐摩耗性を考慮して熱処理が施されている。このように構成された爪20は、前記保持穴21に前記ナット81が保持されると、前記ビット80の移動路上に位置し、その軸線が前記ビット80の軸線とほぼ一致する。つまり、前記ナット81の側面が前記内壁面21aに当接している状態であると、前記ナット81に成形されためねじ(図示せず)に前記クッション軸80bを挿通可能となる。なお、以下の説明において、前記クッション軸80bを前記めねじに挿通可能なナット81の位置を正規の位置という。
【0016】
また、前記爪20には、前記ナット81を正規の位置まで引き込む吸着手段が配設されており、前記吸着手段は、所定の磁力を発する磁石5で構成され、この磁力により前記ナット81を前記内壁面21aに当接する位置まで引き込み吸着することができる。なお、本実施形態において、前記磁石5は、常時磁力を発する永久磁石であるため、前記ナット81が保持穴21に供給された後、前記爪20が開くまでの間は前記ナット81を正規の位置で留めることができる。よって、爪20が振動などしてもナット81は正規の位置で保持され続ける。
【0017】
前記案内ブロック31には、閉じた状態の前記爪20に前記ナット81を案内する案内路35が形成されており、前記案内路35は、前記ナット81の上下面が反転しない寸法に設定され、湾曲して成る。よって、前記案内ブロック31に進入した前記ナット81は、垂直な状態から水平な状態になり、前述の進入に伴って徐々に姿勢を変える。また、図1に示すように前記案内ブロック31には、湾曲した前記案内路35の成形の妨げとならない程度の面取りが施されているため、チャックユニット1を小さな寸法にできる。これにより、締結面よりも高い位置に突起を備えたワークであっても、このワークにチャックユニット1を近づけることができるとともに、ワークとの干渉が低減する。
【0018】
前記ビット80は、その先端側に前記ナット81に嵌合する嵌合穴80aを備えるとともに、この嵌合穴80aから常時突出しビット80の軸線に沿って延びるクッション軸80bを備えて成る。前記ビット80は、図示しない回転駆動源の一例であるモータおよび上下方向に移動自在な往復移動手段の一例であるエアシリンダに接続されており、前記チャック本体110内を回転および昇降可能に構成される。一方、前記クッション軸80bは、図示しないばねにより常時前記ビット80の先端側に突出するよう付勢されており、ビット80から抜け落ちないよう抜け止めが施されている。また、このクッション軸80bは、前記めねじを挿通可能な外形寸法で設定されており、その先端は、前記めねじに差し込み易いよう丸みを帯びた形状となっている。なお、前記モータおよびエアシリンダは、図示しない制御装置により駆動制御可能に構成されている。
【0019】
次に、本発明のチャックユニット1の作用について説明する。前記ナット81は、図示しないナット供給装置に多数貯留されており、このナット供給装置から1つずつエア圧送され前記案内路35内を通過して前記保持穴21に供給される。この時、前記ナット81は、前記磁石5により前記内壁面21aと接触した状態で吸着されるため、高速でエア圧送されても、前記内壁面21aに衝突した反動によって前記案内路35側へ跳ね返ることがない。つまり、前記ナット81は、内壁面21aに接した状態で保持され、正規の位置で保持されることになる。このように、前記ナット81が、正規の位置で保持されると、前記制御装置により前記モータおよびエアシリンダがそれぞれ駆動するため、前記ビット80は、前記チャック本体110にガイドされて回転かつ下降する。これにより、前記クッション軸80bは、前記めねじに挿通され、前記ビット80から突出した状態を保って前記挿通穴20aを通過し、閉じた状態の前記爪20から突出する。この後、前記クッション軸80bは、ワークであるおねじ(図示せず)の上面に当接し、前記ビット80の下降に伴って前記ビット80内へ入り込む方向にクッションする。さらに、前記ビット80は下降し続けるため、チャック本体110の下端から突出して前記傾斜面20bに当接し、前記爪20を閉じた状態から徐々に押し広げ開く。これにより、前記磁石5は、前記爪20とともに揺動するため、自身の発する磁力が保持していた前記ナット81に及ばなくなり、前記クッション軸80bに挿通された前記ナット81を下方へ解放する。この解放により前記ナット81が前記クッション軸80bに沿って落下し、前記おねじの上端まで移動する。また、前記ビット80は引き続き回転および下降しているため、前記ナット81が前記嵌合穴80aに嵌まり込み前記おねじへ螺入され所定のトルクで締結される。これを受け前記制御装置は、前記モータの駆動を停止すると同時に前記シリンダを複動させ前記ビット80を復帰させる。
【0020】
なお、前記永久磁石は、信号等により励磁状態あるいは非励磁状態に変化する電磁石であってもよい。この場合、前記電磁石は、前記制御装置から出力される信号によって励磁状態へ変化するため、必要な時のみ磁力を発することになる。つまり、本来磁力を必要とする前記ナット81の引き込み時あるいは引き込んだナット81を保持しなければならない時に励磁状態にすればよいことから、金属製の爪20あるいは前記ナット81などの金属部材が磁化することを最小限に抑えることができる利点がある。
【0021】
また、本実施形態において、前記爪20は金属材から成るが、これに替えて磁化し難い樹脂材にしてもよい。この場合、前記磁石5が発する磁力により前記爪20が磁化し難くなり、前記爪20を押し広げた前記ビット80あるいは前記爪20の周辺に配される部材が金属製であっても磁化し難くなる利点もある。さらに、本実施形態において、前記吸着手段は、エアを吸引することで前記ナット81を前記内壁面21aに当接するまで引き込むエア吸引装置としてもよい。これにより、ナット81を圧送すると同時に前記エア吸引装置を作動させることで、ナット81の圧送時に前記爪20から漏れる余分なエアを前記エア吸引装置に回収できる。よって、チャックユニット周辺の粉じん等の撒き上がりが生じ難いという利点もある。また、本実施形態において、前記チャックユニット1は、前記ナット81を上方向から下方向へ螺入する使用形態で説明しているが、ナットの螺入方向は、これに限定するものではなく、下方向から上方向、あるいは水平方向、斜め方向といずれの方向であってもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0022】
1 チャックユニット
5 磁石
20 爪
21 保持穴
21a 内壁面
21b 支持面
31 案内ブロック
35 案内路
80 ビット
81 ナット
図1
図2