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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-157322(P2015-157322A)
(43)【公開日】2015年9月3日
(54)【発明の名称】放電加工機
(51)【国際特許分類】
   B23H 7/02 20060101AFI20150807BHJP
   B23H 7/14 20060101ALI20150807BHJP
   B23H 1/02 20060101ALI20150807BHJP
【FI】
   B23H7/02 F
   B23H7/14 A
   B23H1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-31938(P2014-31938)
(22)【出願日】2014年2月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】保坂 昭夫
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB05
3C059BA03
3C059BA06
3C059BA21
3C059CC01
3C059CC02
3C059JA05
3C059JA10
3C059JA17
(57)【要約】
【課題】 基板を冷却する冷却構造の小型化かつ簡素化を図り、かつ、維持管理に要する手間暇を低減しながらも冷却効率を高めることができる。
【解決手段】 放電回路の構成部品40を実装した基板30を備え、ワークWと工具電極Eとの間に形成される極間9に電圧を印加して放電を発生させ放電加工を行う放電加工機1において、基板30を冷却する冷却構造50を備え、冷却構造50は、冷却プレート60とカバー70を有し、冷却プレート60は、平板状をなし、一方の面を基板30と接触する接触面61とし、かつ、他方の面を冷却液が流通し基板30を冷却する冷却面62とするとともに、カバー70は、冷却プレート60の冷却面62を覆う被覆面73を有し、冷却プレート60の冷却面62に冷却液が流通する溝67が形成されることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電加工に用いられる放電回路または検出器の構成部品を実装した基板を備え、加工槽においてワークを加工液に浸漬しつつ該ワークと工具電極との間に形成される極間に電圧を印加して放電を発生させ前記ワークの放電加工を行う放電加工機において、
前記基板を冷却する冷却構造を備えるとともに、前記冷却構造は、冷却プレートとカバーを有し、
前記冷却プレートは、平板状をなし、一方の面を前記基板と接触する接触面とし、かつ、他方の面を冷却液が流通し前記基板を冷却する冷却面とするとともに、前記カバーは、前記冷却プレートの前記冷却面を覆う被覆面を有し、
前記冷却プレートの冷却面および前記カバーの被覆面のうち少なくともいずれか一方に前記冷却液が流通する溝が形成されることを特徴とする放電加工機。
【請求項2】
前記溝は、扁平状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項3】
前記溝は、前記冷却液が供給される供給口となる始端と、前記冷却液が排出される排出口となる終端と、を有することを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項4】
前記溝は、環状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項5】
前記溝は、更にC字状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の放電加工機。
【請求項6】
前記冷却プレートの接触面は、高熱伝導性の材料を介して前記基板と接触することを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項7】
前記高熱伝導性の材料は、シート状またはグリース状とすることを特徴とする請求項6に記載の放電加工機。
【請求項8】
前記冷却プレートの冷却面と前記カバーの被覆面との間にシール材を介在させることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項9】
前記シール材は、Oリングとすることを特徴とする請求項8に記載の放電加工機。
【請求項10】
前記シール材は、前記冷却プレートの冷却面と、前記カバーの被覆面と、を接着する接着剤とすることを特徴とする請求項8に記載の放電加工機。
【請求項11】
前記冷却プレートおよび前記カバーは、高熱伝導性の材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項12】
前記高熱伝導性の材料は、アルミニウムとすることを特徴とする請求項11に記載の放電加工機。
【請求項13】
前記冷却プレートおよび前記カバーは、アルマイト処理されていることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項14】
前記基板は、前記冷却構造とともに、前記加工槽の外壁側に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工機に関し、特に、放電回路や検出器の構成部品を実装した基板を冷却する冷却構造を備える放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
放電加工方法は、被加工物と工具電極とで形成される加工間隙に放電を繰り返し発生させて、放電エネルギによって被加工物から材料を除去する加工方法である。望ましい加工を続けるためには、加工間隙に安定して電圧パルスを連続的に供給し所望の波形の放電電流パルスを繰返し供給することが要求される。
【0003】
この放電加工方法は、放電加工機により行われ、放電加工機は、放電電流パルスを供給するための放電回路を有する。放電回路は、少なくとも、加工間隙に直列に接続される直流電源と、直流電源と加工間隙との間に設けられる逆流阻止ダイオード、電流制限抵抗、およびスイッチング素子を含んでなる。また、放電加工機は、サーボまたはいわゆる適応制御のために、電圧検出器ないしは電流検出器等の検出器を設ける。これら放電回路および検出器の構成部品は基板に配設された状態で可能な限り加工間隙に近い位置、例えば加工槽に設けられるようにされているが、構成部品の中には発熱して高温になるものも存在する。
【0004】
このため、特許文献1には、スイッチング素子や抵抗素子を取り付けた基板を水密な箱状のケーシング内に密閉して収容し載物台の下部に配置して加工液に浸し基板を冷却する放電加工機が開示されている。また、特許文献2においては、金属片に基板を埋め込むとともに、冷却液を流通させるための蛇行した金属配管を金属片の表面に設け、或いは冷却液を流通させるための穴を金属片の内部に設け、または金属片を加工槽内の加工液に浸漬させて、それぞれ冷却する放電加工機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−250920号公報
【特許文献2】特開平10−34445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された発明にあっては、基板をケーシングに収容した状態で加工液に浸すため、ケーシングを水密にする等、十分な防漏構造が必要になる。また、ケーシングが大掛かりなものになる等、冷却構造も大型化してしまう。更に、基板の構成部品が損傷した場合にあっては、ケーシングを開放して基板を取り出す必要があり、基板の維持管理が煩雑となる。
【0007】
特許文献2に開示された発明においては、基板を金属片とともに加工槽内の加工液に浸漬させて冷却するため、同様に十分な防漏構造が必要となるとともに、冷却構造も大型化してしまう。更に、蛇行した金属配管や金属片の内部に設けられた穴に冷却液を流通させるため、構造が複雑となる。更にまた、金属片に基板を埋め込むため、構成部品が損傷した場合にあっては、金属片から基板を外す必要があり、同様に基板の維持管理が煩雑になる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、基板を冷却する冷却構造の小型化かつ簡素化を図り、かつ、維持管理に要する手間暇を低減しながらも冷却効率を高めることができる放電加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、放電加工機に係る請求項1の発明は、放電加工に用いられる放電回路または検出器の構成部品を実装した基板を備え、加工槽内においてワークを加工液に浸漬しつつ該ワークと工具電極との間に形成される極間に電圧を印加して放電を発生させ前記ワークの放電加工を行う放電加工機において、基板を冷却する冷却構造を有するとともに、冷却構造は、冷却プレートとカバーを有し、冷却プレートは、平板状をなし、一方の面を基板と接触する接触面とし、かつ、他方の面を冷却液が流通し基板を冷却する冷却面とするとともに、カバーは、冷却プレートの冷却面を覆う被覆面を有し、冷却プレートの冷却面およびカバーの被覆面の少なくともいずれか一方に冷却液が流通する溝が形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、基板を冷却する冷却構造を有するとともに、冷却構造は、冷却プレートとカバーを有し、冷却プレートは、平板状をなし、一方の面を基板と接触する接触面とし、かつ、他方の面を冷却液が流通し基板を冷却する冷却面とするとともに、カバーは、冷却プレートの冷却面を覆う被覆面を有し、冷却プレートの冷却面およびカバーの被覆面の少なくともいずれか一方に冷却液が流通する溝が形成されることとしたので、冷却構造を加工液に浸すことがなく基板の冷却を行うことができ構造の小型化を図ることができる。また、防漏構造の簡素化を図ることができ、冷却液を流通させる構造も冷却プレートの冷却面およびカバーの被覆面のうち少なくともいずれか一方に溝を形成すれば足りる等、簡素化を図ることができる。更に、冷却プレートの接触面に基板を単に接触させて冷却することとしたので、構成部品が損傷した場合にあっても簡単に冷却構造を基板等から外すことができ、基板の維持管理に要する手間暇も低減させることができる。更にまた、密閉して収容することなく基板を冷却するので、基板の通気性がよく冷却効率を高めることができる。
【0011】
溝は、扁平状に形成されることとすれば、冷却構造を薄く成形することができ、設置スペースが狭小な場合にあっても容易に設置することができる。また、冷却面積も大きく設定され、冷却効率も更に高めることができる(請求項2)。
【0012】
溝は、冷却液が供給される供給口となる始端と、冷却液が排出される排出口となる終端と、を有することとすれば、溝内の冷却液のスムーズな流れを実現して流通性を向上させることができる(請求項3)。
溝は、例えば、環状に形成(請求項4)、より詳しくは、更にC字状に形成されることとすることができる(請求項5)。
【0013】
冷却プレートの接触面は、高熱伝導性の材料を介して基板と接触することとすれば、冷却プレートと基板等との間の伝熱を促進させることができる(請求項6)。
【0014】
高熱伝導性の材料は、シート状またはグリース状とすることとすれば、基板を冷却プレートの接触面に隙間なく接触させることができ、熱の伝導性を向上させることができる(請求項7)。
【0015】
冷却プレートの冷却面とカバーの被覆面との間にシール材を介在させることとすれば、冷却プレートとカバーとの間からの液漏れを確実に防止することができる(請求項8)。
【0016】
シール材は、例えば、Oリングとしたり(請求項9)、冷却プレートの冷却面と、カバーの被覆面と、を接着する接着剤とすることができる(請求項10)。
冷却プレートおよびカバーは、高熱伝導性の材料で形成されることとすれば、冷却効果を更に向上させることができる(請求項11)。
高熱伝導性の材料は、例えば、アルミニウムとすることができる(請求項12)。
【0017】
冷却プレートおよびカバーは、アルマイト処理されることとすれば、基板の冷却構造の耐腐食性を向上させることができる(請求項13)。
基板は、冷却構造とともに、加工槽の外壁側に設けられることとすれば、加工槽に満たされる加工液によっても基板が冷却され、かつ、基板の通気性も確保することができる(請求項14)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板を冷却する冷却構造の小型化かつ簡素化を図り、かつ、維持管理に要する手間暇を低減しながらも冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る放電加工機の全体概要を示す構成図である。
図2】同放電加工機の回路構成を示す図である。
図3】基板の冷却構造の構成を示す平面図である。
図4】基板の冷却構造の構成を示す側面図である。
図5】基板の冷却構造の構成を示す分解側面図である。
図6】本発明の冷却構造の取り付け方法を説明するための側面図である。
図7】本発明の冷却構造の取り付け方法を説明するための図6に続く側面図である。
図8】本発明の冷却構造の取り付け方法を説明するための図7に続く側面図である。
図9】本発明の冷却構造の取り付け方法を説明するための図8に続く側面図である。
図10】本発明の冷却構造の取り付け方法を説明するための図9に続く側面図である。
図11】本発明の冷却構造の取り付け方法を説明するための図10に続く側面図である。
図12】本発明の第1の変形例を示す側面図である。
図13】本発明の第2の変形例を示す側面図である。
図14】本発明の第3の変形例を示す側面図である。
図15】本発明の第4の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施形態を示す放電加工機の概略を示す構成図である。同図を参照して放電加工機1の概要を説明すると、放電加工機1は、工具電極をワイヤ電極Eとするワイヤ放電加工機であり、ベッド2、コラム3、加工ヘッド4、加工槽5、およびワークスタンド6の各構成を有している。ベッド2は、放電加工機1の基部をなし、コラム3は、ベッド2の後部から立設し、加工ヘッド4は、コラム3の前面上部に装着され、加工槽5は、サドル5aおよびテーブル5bを介してベッド2の前部に載置され水系の加工液を満たし、ワークスタンド6は、加工槽5に収容されてワークWを加工液に浸漬しつつ保持している。加工ヘッド4には上側アーム7aを介して上側ガイド組体7が、コラム3の前面下部には下側アーム8aを介して下側ガイド組体8が、ワークWを挟むように備えられており、上側ガイド組体7と下側ガイド組体8との間にはワイヤ電極Eが連続的に供給される。
【0021】
放電加工機1は、ワイヤ電極EとワークWとの間に形成される極間9に放電を発生させてワークWの放電加工を行う。実施の形態の放電加工機1では、図示しない荒加工用の放電回路と仕上げ加工用の放電回路20とを具備し、放電回路20を可能な限り極間9に近い加工槽5の側壁に設けるようにされている。仕上げ加工は、放電回路20を動作させて極間9に所定の電圧パルスを印加して行われる。放電加工機1には、サーボまたは適応制御のための電圧検出器ないしは電流検出器が設けられている。なお、図1において、便宜上、放電回路20と極間9までの配線が機体の外側に引き回すように示されているが、実際は、放電回路20と極間9の間は、可能な限り短い距離で接続するようにされる。
【0022】
図2に示すように、実施の形態のワイヤ放電加工機1における仕上げ加工用の放電回路20は、主に直流電源21、逆流阻止ダイオード22、電流制限抵抗23、およびスイッチング回路24からなり、スイッチング回路24は、4つのスイッチング素子24A乃至24Dが図示の如くブリッジ接続されている。
すなわち、スイッチング回路24は、スイッチング素子24Bとスイッチング素子24Dとの接続点Aが直流電源21のマイナス側に接続され、スイッチング素子24Aとスイッチング素子24Cとの接続点Bが電流制限抵抗23及び逆流阻止ダイオード22を介して直流電源21のプラス側と接続されている。そして、スイッチング素子24Aとスイッチング素子24Bとの接続点Cが通電体7b,8bを介してワイヤ電極Eと電気的に接続され、スイッチング素子24Cとスイッチング素子24Dとの接続点DがワークWと電気的に接続されている。
【0023】
つまり、スイッチング回路24は、スイッチング素子24A、24Dおよびスイッチング素子24B,24Cのオンオフ動作を交互に行うことで正極性および逆極性の両極性を有するパルス電圧を交互に出力して極間9に印加することができる。
【0024】
この放電加工機1は、基板30を備えており、図3乃至図5に示すように、基板30には、放電回路20の逆流阻止ダイオード22、電流制限抵抗23、スイッチング素子24A乃至24D、および電圧検出器ないし電流検出器等の構成部品40が実装されている。
【0025】
また、放電加工機1は、基板30を冷却する冷却構造50を備えており、基板30は冷却構造50とともに、加工槽5の側壁の外壁側より詳しくは後壁の外壁側に取り付けられている。
【0026】
冷却構造50は、冷却プレート60およびカバー70を有している。
冷却プレート60は、平板状(平板状とは略平板状も含む)をなし、一方の面を基板30と接触する接触面61とし、他方の面を基板30を冷却する冷却面62としている。
【0027】
接触面61には、第1乃至第3の凸部63乃至65が設けられている。すなわち、第1および第3の凸部63,65は、接触面61の縁部に設けられ、構成部品40のうち最大高さの構成部品41と同一(同一とは略同一も含む)の高さに設定されている。また、第2の凸部64は、構成部品40のうち最大高さの構成部品41よりも高さの低い構成部品42の相当位置に設けられており、第2の凸部64の高さは、最大高さの構成部品41と高さの低い構成部品42の高さの差と同一(同一とは略同一も含む)に設定されている。
【0028】
つまり、冷却プレート60を基板30に取り付けたとき、第1および第3の凸部63,65は脚部として機能し、その凸面63a,65aが基板30の表面に接触しながら、接触面61の凹面61aが構成部品40のうち最大高さの構成部品41の上面に接触し、第2の凸部64の凸面64aが構成部品40のうち高さの低い構成部品42の上面に接触する等、接触面61の凸面63a,64a,65aおよび凹面61aと基板30の表面および構成部品41,42の上面を確実に接触させることができ、基板30に対する冷却プレート60の安定した取り付け状態を確保することができる。
【0029】
ここで、接触面61は、高熱伝導性の材料66を介して構成部品40と接触しており、これにより、冷却プレート60と基板30との間の伝熱が促進され、冷却効果を向上させることができる。
【0030】
なお、第3の凸部65は、基板30の裏面側に設けられた構成部品43の相当位置に設けられており、この第3の凸部65の凸面65aと基板30の表面との間にも高熱伝導性の材料66が設けられている。これにより、裏面側の構成部品43と冷却プレート60との間の熱の伝達も高熱伝導性の材料66を介して積極的に促進させることができる。高熱伝導性の材料66は、シート状またはグリース状をなしており、接触面61と基板30の表面および構成部品41,42の上面とを隙間なく接触させることができ、熱の伝導性を向上させることができる。
【0031】
一方、冷却面62には、冷却液が流通する溝67が形成されており、溝67は、扁平状に形成されている。つまり、このような構成とすることで、冷却構造50を薄く成形することができ、設置スペースが狭小な場合にあっても容易に設置することができる。また、冷却面積も大きく設定され、冷却効率も更に高めることができる。
【0032】
更に溝67は、冷却液が供給される供給口67aとなる始端と、冷却液が排出される排出口67bとなる終端と、を有しており、溝67内の冷却液のスムーズな流れを実現して流通性も向上させることができる。なお、溝67は、円形(円形とは略円形を含む)の環状に形成より詳しくはC字状に形成されており、冷却液の流通性をより一層向上させることができるとともに、C字状の開口部分に溝67を形成する必要がない等、溝67の形成作業の簡略化を図ることができる。
【0033】
カバー70は、円形の平板状をなしており、カバー70の裏面側は、冷却プレート60の冷却面62を覆う平坦な被覆面73となっている。つまり、カバー70の平坦な被覆面73により冷却プレート60の冷却面62を覆うことにより、溝67の上部側の開口が閉塞され、溝67を冷却液が流通する流路として確実に機能させることができる。
【0034】
このカバー70には、冷却液を供給する供給路74および冷却液を排出する排出路75が内部に設けられ、供給路74は、溝67の供給口67aと連通し、排出路75は、溝67の排出口67bと連通する。そして、供給路74の始端74aおよび排出路75の終端75aは、それぞれ外部に開口する開口部74a,75aをなしている。これら開口部74a,75aは、カバー70の外部に設けられた冷却液の供給配管80および排出配管90と継ぎ手を介して液密に接続されている。なお、冷却液の供給は、加工槽5のサービスタンク(図示せぬ)から行われ、サービスタンクの液温は加工槽5の液温と同等となるように設定されている。
【0035】
ここで、カバー70の被覆面73には、凹部73aが形成されており、凹部73aにはシール材100が嵌め込まれている。すなわち、冷却プレート60とカバー70は、溝67の内側の領域および溝67の外側の領域において、締結具76を用いて締結されており、この締結は、冷却プレート60の上面からカバー70の下面に至る貫通穴(図示せぬ)に貫通させて行われる。このため、貫通穴を介しての冷却液の液漏れを防止すべく、冷却プレート60の冷却面62とカバー70の被覆面73との間にはシール材100を介在させている。シール材100は、環状の溝67の外側をシールする第1のシール材101と内側をシールする第2のシール材102からなり、第1のシール材101および第2のシール材102は、いずれもOリングとしている。
【0036】
なお、冷却プレート60およびカバー70は、高熱伝導性の材料で形成より詳しくはアルミニウムで形成されており、冷却効果を更に向上させることができる。また、冷却プレート60およびカバー70は、アルマイト処理されており、耐腐食性も向上させることができる。
【0037】
以上の如く構成された冷却構造50の基板30への取り付け方法および冷却構造50を取り付けた基板30の加工槽5への取り付け方法は以下のように説明される。
【0038】
すなわち、図6に示すように、まずカバー70の凹部73aにシール材101,102を嵌め込み、次いで、図7に示すように、締結具76を用いて冷却プレート60にカバー70を取り付ける。続いて、図8に示すように、基板30の構成部品41,42の上面および基板30の表面における構成部品43の相当位置に高熱伝導性の材料66を設け、次に、図9に示すように、基板30上に冷却構造50を載せ、更に図10に示すように、スペーサ33を介在させ、第1の取り付け具31および締結具32を用いて、基板30に冷却構造50を取り付ける。そして、図11に示すように、冷却構造50を取り付けた基板30を第2の取り付け具34および締結具35を用いて加工槽5の側壁の外壁側に取り付ける。基板30を加工槽5の外壁側に設けることにより、加工槽5に満たされる加工液によっても基板30が冷却され、かつ、基板30の通気性も確保することができる。
【0039】
以上説明したように本発明によれば、基板30を冷却する冷却構造50を有するとともに、冷却構造50は、冷却プレート60とカバー70を有し、冷却プレート60は、平板状をなし、一方の面を基板30と接触する接触面61とし、かつ、他方の面を冷却液が流通し基板30を冷却する冷却面62とするとともに、カバー70は、冷却プレート60の冷却面62を覆う被覆面73を有し、冷却プレート60の冷却面62に冷却液が流通する溝67が形成されることとしたので、冷却構造50を加工液に浸すことがなく基板30の冷却を行うことができ構造の小型化を図ることができる。また、防漏構造の簡素化を図ることができ、冷却液を流通させる構造も冷却プレート60の冷却面62に溝67を形成すれば足りる等、簡素化を図ることができる。更に、冷却プレート60の接触面63に基板30を単に接触させて冷却することとしたので、構成部品40が損傷した場合にあっても簡単に冷却構造50を基板67等から外すことができ、基板67の維持管理に要する手間暇も低減させることができる。更にまた、密閉して収容することなく基板67を冷却するので、基板67の通気性がよく冷却効率を高めることができる。
【0040】
更に、冷却構造50は、基板30とともに、加工槽5の外壁に設けることとしたので、基板30を確実に外気に晒すことができ、かつ、基板30を加工槽5に満たされた加工液によっても冷却することができ、一層冷却効率を高めることができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更実施が可能である。
すなわち、図12の第1の変形例に示すように、冷却液が流通する溝67をカバー70側に設けたり、或いは図13の第2の変形例に示すように、冷却プレート60およびカバー70のいずれにも溝67を設けることとしてもよい。すなわち、溝67は、冷却プレート60の冷却面62およびカバー70の被覆面73のうち少なくともいずれか一方に設けることとすればよい。
【0042】
また、図14の第3の変形例に示すように、締結具76による取り付けを、溝67の外側の領域のみで行い、溝67の内側の領域で行わない場合は、溝67の内側をシールする第2のシール材102を省略することとしてもよい。
更に、図15の第4の変形例に示すように、冷却プレート60の冷却面62とカバー70の被覆面73とを接着剤103を用いて接着することとすれば、つまりは、冷却プレート60の冷却面62とカバー70の被覆面73との間に介在させるシール材100を接着剤103とすることとすれば、該接着剤103の効果により貫通穴を介しての外部への液漏れを確実に防止することができる。なお、この場合においては図15から明らかなように上述したシール材101,102としてのOリング101,102を省略することができる。
【0043】
更にまた、上述した実施形態においては、放電加工機1をワイヤ放電加工機とし、ワイヤ放電加工機の基板を冷却することとしているが、形彫放電加工機の基板を冷却構造50を用いて冷却することとしてもよい。この場合においても本発明の技術的効果を奏するのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、放電加工機において、放電回路や検出器の構成部品を実装した基板を冷却する場合に役立つ。
【符号の説明】
【0045】
A,B,C,D:接続点
E:ワイヤ電極
W:ワーク
1:放電加工機
2:ベッド
3:コラム
4:加工ヘッド
5:加工槽
5a:サドル
5b:テーブル
6:ワークスタンド
7:上側ガイド組体
7a:上側アーム
7b:通電体
8:下側ガイド組体
8a:下側アーム
8b:通電体
9:極間
20:放電回路
21:直流電源
22:逆流阻止ダイオード
23:電流制限抵抗
24:スイッチング回路
24A,24B,24C,24D:スイッチング素子
30:基板
31:第1の取り付け具
32:締結具
33:スペーサ
34:第2の取り付け具
35:締結具
40:構成部品
41:最大高さの構成部品
42:高さの低い構成部品
43:基板の裏面側に設けられた構成部品
50:冷却構造
60:冷却プレート
61:接触面
61a:凹面
62:冷却面
63:第1の凸部
63a:凸面
64:第2の凸部
64a:凸面
65:第3の凸部
65a:凸面
66:高熱伝導性の材料
67:溝
67a:供給口
67b:排出口
70:カバー
72:凸部
73:被覆面
73a:凹部
74:供給路
74a:始端(開口部)
75:排出路
75a:終端(開口部)
76:締結具
80:供給配管
90:排出配管
100:シール材
101:第1のシール材(Oリング)
102:第2のシール材(Oリング)
103:接着剤(シール材)
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図15