(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-157658(P2015-157658A)
(43)【公開日】2015年9月3日
(54)【発明の名称】糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/28 20060101AFI20150807BHJP
B65H 63/036 20060101ALI20150807BHJP
【FI】
B65H54/28 Z
B65H63/036 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-31989(P2014-31989)
(22)【出願日】2014年2月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】平井 克尚
【テーマコード(参考)】
3F056
3F115
【Fターム(参考)】
3F056CA01
3F115CB02
(57)【要約】
【課題】様々な色糸を容易に検出可能であるとともに、トラバース領域が小さいこと又は棒巻き等を確実に検出できる糸巻取装置を提供する。
【解決手段】糸巻取装置(自動ワインダ)が備えるトラバース検出センサ70は、トラバース領域に配置され、トラバースされる糸21を検出する。トラバース検出センサ70は、投光部72と、投光部72から投光された光を反射する反射部74と、反射部74で反射された光を受光する受光部73と、を有する。受光部73と反射部74とは、トラバースされる糸21が通過する糸道を挟む位置、かつ、トラバース領域をパッケージ幅方向に3つの領域に等分割した領域の一端の領域に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸をトラバースさせながら巻き取る巻取部と、
前記巻取部によって糸がトラバースされるトラバース領域に配置され、トラバースされる糸を検出するトラバース検出部と、
を備え、
前記トラバース検出部は、投光部と、前記投光部から投光された光を反射する反射部と、前記反射部で反射された光を受光する受光部と、を有し、
前記受光部と前記反射部とは、前記トラバースされる糸が通過する糸道を挟む位置、かつ、前記トラバース領域をパッケージ幅方向に3つの領域に等分割した領域のうち両端の2領域の何れかの領域を検出する位置に配置されることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取装置であって、
前記投光部と前記受光部とは、前記トラバースされる糸が通過する糸道に対して同じ側に配置されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取装置であって、
前記投光部と前記受光部とは、検出対象の糸の走行方向に沿って配置されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記投光部と前記受光部は、一体として構成されることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
糸がトラバースされる際に、トラバースの支点となる糸ガイド部と、
パッケージと前記糸ガイド部の間に配置され、トラバースされる糸を案内するカバー部と、
を備え、
前記トラバース検出部は、前記カバー部に配置されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の糸巻取装置であって、
前記カバー部の一部が前記反射部であることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部を含む前記カバー部にメッキ処理が施されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部を含む前記カバー部に亜鉛メッキ処理が施されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項9】
請求項7に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部を含む前記カバー部にクロムメッキ処理が施されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項10】
請求項6に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部を含む前記カバー部がステンレスであることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項11】
請求項5に記載の糸巻取装置であって、
前記カバー部は、前記糸がトラバースされる方向に沿って、かつ、前記トラバースされる糸が通過する糸道を挟むように配置された第1プレート及び第2プレートを備え、
前記第1プレートと第2プレートのそれぞれには、前記糸がトラバースされる方向に直交する方向において同じ位置に孔部が形成されており、
前記第1プレートの孔部の反糸通過側には、前記投光部及び前記受光部が取り付けられており、
前記第2プレートの孔部の反糸通過側には、当該第2プレートから間隔を開けた位置に前記反射部が位置していることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項12】
請求項11に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部にメッキ処理が施されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項13】
請求項12に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部に亜鉛メッキ処理が施されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項14】
請求項12に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部にクロムメッキ処理が施されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項15】
請求項11に記載の糸巻取装置であって、
前記反射部がステンレスであることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項16】
請求項1から15までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
少なくとも前記トラバース検出部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、糸を検出していないときに前記受光部が受光する光量が一定となるように、前記投光部が投光する光量を変化させることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項17】
請求項1から16までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記巻取部は、パッケージを回転させる綾振り溝を備えた巻取ドラムを有しており、前記綾振り溝により糸がトラバースされることを特徴とする糸巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラバースされる糸を検出するトラバース検出部を備えた糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダ等の糸巻取装置は、糸を巻取ボビンの巻幅方向に往復運動させるトラバース装置を備える。糸巻取装置は、トラバース装置によって糸の綾振り(トラバース)を行いながら、回転する巻取ボビンに糸を巻き取る。この種の糸巻取装置は、トラバースされる糸を検出するトラバース検出部を備え、このトラバース検出部の検出結果に基づいて、適切にトラバースが行われているか判断する。特許文献1及び特許文献2は、この種の糸巻取装置を開示する。
【0003】
特許文献1の糸巻取装置は、トラバースされる糸を囲むように配置されるカバー部を備え、当該カバー部にトラバース検出部(糸検出センサ)が配置されている。このトラバース検出部は、赤外線等の光を投光するとともに、この光が糸で反射した光を受光することで、糸が横切ったことを検出する。より具体的には、
図7(b)に示すように、予め閾値を決定し、当該閾値を超える光が入力された場合に、糸が横切ったと判断する。
【0004】
特許文献2の糸巻取装置は、カバー部のパッケージ幅方向の中央にトラバース検出部が配置される。特許文献2のトラバース検出部は、光を投光する投光部(光源部)と、投光部が投光した光を受光する受光部と、カバー部(案内プレート)と、を備える。受光部は、通常は、投光部が投光してカバー部で反射した光を受光する。受光部は、トラバースされる糸が横切っているときは、投光された光が糸に遮られるので、受光量が減少した光を受光する。これにより、トラバース検出部は、糸が横切ったことを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−63840号公報
【特許文献2】特開2012−153476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成は、糸で反射した光を検出するため、光を吸収する色糸(特に黒糸)を検出することは困難である(
図7(b)の黒糸を参照)。なお、黒糸を検出できるように閾値を下げた場合、誤検出が生じ易くなる。また、糸で反射した光は弱いので、特許文献1の構成では、強い光を照射する必要がある。そのため、トラバース検出部の寿命が短くなってしまう。
【0007】
特許文献2では、トラバース検出部をパッケージ幅方向の中央に配置することを前提としている。この場合、例えば設定されたトラバース領域よりも小さいトラバース領域で巻取作業が実行されていても、当該事実を検出できない場合がある。また、棒巻きはパッケージ幅方向の中央で生じ易いので、トラバース検出部が糸を検出している場合であっても、棒巻きが発生した事実を検出できない場合がある。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、様々な色糸を容易に検出可能であるとともに、トラバース領域が小さいこと又は棒巻き等を確実に検出できる糸巻取装置を提供することにある。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取装置が提供される。即ち、この糸巻取装置は、巻取部と、トラバース検出部と、を備える。前記巻取部は、糸をトラバースさせながら巻き取る。前記トラバース検出部は、前記巻取部によって糸がトラバースされるトラバース領域に配置され、トラバースされる糸を検出する。前記トラバース検出部は、投光部と、前記投光部から投光された光を反射する反射部と、前記反射部で反射された光を受光する受光部と、を有する。前記受光部と前記反射部とは、前記トラバースされる糸が通過する糸道を挟む位置、かつ、前記トラバース領域をパッケージ幅方向に3つの領域に等分割した領域のうち両端の2領域の何れかの領域を検出する位置に配置される。
【0011】
これにより、投光部が投光して反射部で反射された光は、トラバースされる糸によって遮られることで、光量が低下する。この結果、糸の色に関係なくトラバースされる糸を検出することができる。また、トラバース検出部がトラバース領域の端部領域に配置されているので、トラバース領域が小さくなる状態、糸がトラバースされずにパッケージの一部に巻き取られる棒巻き、又は、糸がドラムに巻かれるドラム巻き付きなどの不具合を的確に検出することができる。
【0012】
前記の糸巻取装置においては、前記投光部と前記受光部とは、前記トラバースされる糸が通過する糸道に対して同じ側に配置されていることが好ましい。
【0013】
これにより、投光部と受光部が同じ側に配置されることにより、投光部から照射された光が糸によって遮られ、反射部からの反射光も糸によって遮られる。そのため、トラバース検出部は、トラバースされる糸を確実に検出できる。また、糸道を挟んで投光部と受光部とが設けられるトラバース検出部と比較して、サイズを抑えることができ、レイアウト上邪魔になることを防止できる。
【0014】
前記の糸巻取装置においては、前記投光部と前記受光部とは、検出対象の糸の走行方向に沿って配置されていることが好ましい。
【0015】
これにより、投光部から投光された光が糸によって遮られると同時に、反射部で反射した光が糸によって遮られる。従って、受光部で受光する光量が大きく低下するので、より確実に糸の通過を検出できる。
【0016】
前記の糸巻取装置においては、前記投光部と前記受光部は、一体として構成されることが好ましい。
【0017】
これにより、投光部及び受光部の取付作業を簡単にすることができる。また、投光部と受光部の位置関係の誤差を抑えることができる。
【0018】
前記の糸巻取装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、糸ガイド部と、カバー部と、を備える。前記糸ガイド部は、糸がトラバースされる際に、トラバースの支点となる。前記カバー部は、前記パッケージと前記糸ガイド部の間に配置され、トラバースされる糸を案内する。前記トラバース検出部は、前記カバー部に配置されている。
【0019】
これにより、糸を案内するカバー部にトラバース検出部が配置されているので、トラバースされる糸をより確実に検出することができる。
【0020】
前記の糸巻取装置においては、前記カバー部の一部が前記反射部であることが好ましい。
【0021】
これにより、部品点数を減らすことができるので、組立コストを低減することができる。
【0022】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部を含む前記カバー部にメッキ処理が施されていることが好ましい。
【0023】
これにより、メッキ処理を施すことで反射部の反射率を向上させることができるので、投光部の光量を抑えることができ、寿命を延ばすことができる。
【0024】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部を含む前記カバー部に亜鉛メッキ処理が施されていることが好ましい。
【0025】
これにより、亜鉛メッキ処理が施された部分は強度が高く傷付きにくいので、反射部の反射率を長期間にわたって維持したり、腐食を効果的に防止したりすることができる。
【0026】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部を含む前記カバー部にクロムメッキ処理が施されていることが好ましい。
【0027】
これにより、クロムメッキ処理が施された部分は強度が高く傷付きにくいので、反射部の反射率を長期間にわたって維持したり、光沢を向上させて投光部の光量をより抑えたりすることができる。
【0028】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部を含む前記カバー部がステンレスであることが好ましい。
【0029】
これにより、メッキ処理を行う手間を低減することができる。また、反射部の反射率を高くするとともに、錆が発生することを防止できる。
【0030】
前記の糸巻取装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記カバー部は、前記糸がトラバースされる方向に沿って、かつ、前記トラバースされる糸が通過する糸道を挟むように配置された第1プレート及び第2プレートを備える。前記第1プレートと第2プレートのそれぞれには、前記糸がトラバースされる方向に直交する方向において同じ位置に孔部が形成されている。前記第1プレートの孔部の反糸通過側には、前記投光部及び前記受光部が取り付けられている。前記第2プレートの孔部の反糸通過側には、当該第2プレートから間隔を開けた位置に前記反射部が位置している。
【0031】
これにより、第2プレートの孔部の反糸通過側に、間隔を開けて前記反射部が位置しているので、投光部、受光部、又は反射部が汚れた際に簡単に汚れを除去することができる。
【0032】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部にメッキ処理が施されていることが好ましい。
【0033】
これにより、メッキ処理を施すことで反射率を向上させることができるので、投光部が照射する光の光量を抑えることができ、寿命を延ばすことができる。
【0034】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部に亜鉛メッキ処理が施されていることが好ましい。
【0035】
これにより、亜鉛メッキ処理が施された部分は強度が高く傷付きにくいので、反射部の反射率を長期間にわたって維持したり、腐食を効果的に防止したりすることができる。
【0036】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部にクロムメッキ処理が施されていることが好ましい。
【0037】
これにより、クロムメッキ処理が施された部分は強度が高く傷付きにくいので、反射部の反射率を長期間にわたって維持したり、光沢を向上させて投光部の光量をより抑えたりすることができる。
【0038】
前記の糸巻取装置においては、前記反射部がステンレスであることが好ましい。
【0039】
これにより、メッキ処理を行う手間を低減することができる。また、反射部の反射率を高くするとともに、錆が発生することを防止できる。
【0040】
前記の糸巻取装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記トラバース検出部を制御する制御部を備える。前記制御部は、糸を検出していないときに前記受光部が受光する光量が一定となるように、前記投光部が投光する光量を変化させる。
【0041】
これにより、投光面及び受光面等が汚れた場合であっても、光量を増加させることで、トラバースされる糸を的確に検出することができる。
【0042】
前記の糸巻取装置においては、前記巻取部は、前記パッケージを回転させる綾振り溝を備えた巻取ドラムを有しており、前記綾振り溝により糸がトラバースされることが好ましい。
【0043】
これにより、綾振り溝を外れることにより生じるトラバース不良又は棒巻きを的確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの全体的な構成を示す正面図。
【
図4】トラバース領域とトラバース検出センサの位置関係を示す図。
【
図7】本実施形態と従来例で取得できるデータの違いを説明するグラフ。
【
図8】カバー部と反射部が一体的な構成の変形例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ(糸巻取装置)1は、並べて配置された複数のワインダユニット(糸巻取ユニット)10と、その並べられた方向の一端に配置された機台制御部11を備えている。
【0046】
機台制御部11は、各ワインダユニット10に関する情報を表示可能な表示装置12、オペレータが機台制御部11に対して各種の指示を入力するための指示入力部13等を備えている。自動ワインダ1のオペレータは、表示装置12に表示された各種の情報を確認するとともに、指示入力部13を適宜操作することにより、複数のワインダユニット10を一括して管理できる。
【0047】
各ワインダユニット10は、給糸ボビン20から糸21を解舒して、巻取ボビン22に巻き返すように構成されている。なお、巻取ボビン22に糸21が巻き取られた状態のものをパッケージ23と呼ぶ。以下の説明において「上流側」「下流側」という時には、糸21の走行方向で見たときの上流側及び下流側をいうものとする。
【0048】
図2に示すように、ワインダユニット10は、給糸部25と、巻取部26と、を備えている。
【0049】
給糸部25は、糸21を供給するための給糸ボビン20を略直立状態で保持することが可能である。巻取部26は、クレードル27と、巻取ドラム28と、カバー部29と、を備えている。
【0050】
クレードル27は、巻取ボビン22を回転可能に支持する。クレードル27は、支持した巻取ボビン22の周面を巻取ドラム28の外周面に接触させることができる。巻取ドラム28は、巻取ボビン22に対向して配置されており、ドラム駆動モータ53によって回転駆動される。
【0051】
巻取ドラム28の外周面には、巻取ボビン22に巻き取られる糸21をトラバース(綾振り)するために、往復螺旋状の綾振溝28aが形成されている。巻取ドラム28は、ドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53によって回転駆動される。綾振溝28aに糸21が導入された状態で巻取ドラム28を回転駆動することにより、当該巻取ドラム28と接触しているパッケージ23を従動回転させ、当該パッケージ23の外周面に糸21をトラバースさせながら巻き取ることができる。これにより、パッケージ23の表面に糸層が形成されていく。
【0052】
カバー部29は、金属製の板状体であり、トラバースされる糸21の軌道を取り囲むように形成されている。カバー部29は、トラバースされる糸21と接触することで、当該糸21をガイドする。
【0053】
カバー部29にはトラバース検出センサ(トラバース検出部)70が取り付けられている。このトラバース検出センサ70は、光学式のセンサであり、検出領域における糸21の通過を検出できる。トラバース検出センサ70は、検出結果から糸21の有無を判断し、判断結果をユニット制御部(制御部)30へ出力する。
【0054】
ユニット制御部30は、トラバース検出センサ70の判断結果に基づいて、所定のトラバース周期で糸21が検出されるか否かを更に判断する。仮に、規定のトラバース周期で糸21が検出されない場合、棒巻き(表示装置12が綾振りされずに同じ箇所に巻き取られる状態)、又は、ドラム巻き付き(糸21が巻取ドラム28に巻き付く状態)等が発生している可能性がある。なお、トラバース検出センサ70の具体的な構成は後述する。
【0055】
各ワインダユニット10は、ユニット制御部30を備えている。このユニット制御部30は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアと、前記RAMに記憶された制御プログラム等のソフトウェアと、から構成されている。前記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、ワインダユニット10の各構成を制御する。各ワインダユニット10のユニット制御部30は、前記機台制御部11と通信可能に構成されている。これにより、各ワインダユニット10の動作を、機台制御部11において集中的に管理することが可能となっている。
【0056】
ワインダユニット10には、給糸部25と巻取部26との間の糸走行経路中に、上流側から順に、解舒補助装置31と、テンション付与装置32と、糸継装置33と、糸監視装置34と、糸ガイド35と、が配置されている。
【0057】
解舒補助装置31は、給糸ボビン20の芯管に被さることが可能な規制部材31aを備えている。規制部材31aは、略筒状に構成されており、給糸ボビン20の糸層上部に形成されたバルーンに接触するように配置されている。なお、バルーンとは、給糸ボビン20から解舒される糸21が遠心力に振り回されている部分のことである。このバルーンに対して規制部材31aを接触させることにより、当該バルーンの部分の糸に対してテンションを付与し、糸21が過度に振り回されることを防止する。これにより、当該糸21を給糸ボビン20から適切に解舒することができる。
【0058】
テンション付与装置32は、走行する糸21に所定のテンションを付与する。本実施形態のテンション付与装置32は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを採用している。噛み合わせ状態にある櫛歯の間を屈曲させながら糸21を通過させることにより、当該糸21に対して適切なテンションを付与する。なお、テンション付与装置32には、上記ゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0059】
糸継装置33は、給糸ボビン20とパッケージ23との間の糸21が何らかの理由により分断状態となったときに、給糸ボビン20側の下糸と、パッケージ23側の上糸と、を糸継ぎする。本実施形態において、糸継装置33は、圧縮空気により発生させた旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置として構成されている。ただし、糸継装置33は上記スプライサ装置に限らず、例えば機械式のノッタ等を採用することができる。
【0060】
ワインダユニット10の高さ方向において、糸継装置33の下側及び上側には、給糸ボビン20側の糸(下糸)を捕捉して案内する下糸捕捉部材54と、パッケージ23側の糸(上糸)を捕捉して案内する上糸捕捉部材55と、が設けられている。下糸捕捉部材54は、図略の負圧源に接続される下糸捕捉パイプ56と、先端部の吸引口57と、から構成されている。上糸捕捉部材55は、図略の負圧源に接続される上糸捕捉パイプ58と、先端部のサクションマウス59と、から構成されている。この構成により、前記吸引口57及びサクションマウス59に吸引流を作用させることができる。また、下糸捕捉パイプ56及び上糸捕捉パイプ58は、それぞれ根元部分が回転可能に支持されており、上下方向に回転することができる。
【0061】
給糸ボビン20とパッケージ23との間で糸21が分断状態となったときには、下糸捕捉部材54によって給糸ボビン20側の下糸を捕捉して糸継装置33に導入するとともに、上糸捕捉部材55によってパッケージ23側の上糸を捕捉して糸継装置33に導入する。この状態で糸継装置33を駆動することで、上糸と下糸を糸継ぎし、給糸ボビン20とパッケージ23との間で糸21を連続状態とする。これにより、パッケージ23への糸21の巻取りを再開することができる。
【0062】
糸監視装置34は、走行する糸21の品質を、図略の光学センサによって監視し、糸21に含まれる糸欠陥(糸21に異常がある箇所)を検出する。糸監視装置34の近傍には、糸監視装置34が糸欠陥を検出した場合に糸21を切断するためのカッタ39が設けられている。カッタ39は図示しない切断刃及びソレノイドを備えており、ソレノイドに通電することで切断刃を駆動して糸21を切断することができる。
【0063】
糸ガイド35は、糸21をガイドするための切欠きが形成された平板状の板材である。糸ガイド35が糸21をガイドすることで、トラバースの往復動が上流側に伝達されることを防止できる。また、糸ガイド35が糸21をガイドする位置が、トラバースの支点となる。
【0064】
次に、トラバース検出センサ70の構成及び配置について
図3から
図6を参照して詳細に説明する。
【0065】
図3に示すように、上述したカバー部29は、正面側(巻取ドラム28の反対側)に配置される正面プレート(第2プレート)81と、背面側(巻取ドラム28側)に配置される背面プレート(第1プレート)82と、から構成されている。正面プレート81と背面プレート82は、間隔を空けて平行に並べられており、その間をトラバースされる糸21が通過する。また、正面プレート81は、トラバース領域の中央を避けて設けられている。
【0066】
図6に示すように、正面プレート81には貫通状の孔部81aが形成されており、背面プレート82には貫通状の孔部82aが形成されている。孔部81a及び孔部82aは、対応する位置(詳細には、トラバース領域に直交する方向において同じ位置)に形成されている。
【0067】
カバー部29には、全体にわたってメッキ処理が施されている。このメッキ処理の種類は任意であるが、亜鉛メッキ又はクロムメッキ(ハードクロムメッキ)であることが好ましい。また、カバー部29をステンレス製として、メッキ処理を省略しても良い。
【0068】
トラバース検出センサ70は、トラバース領域の一端部に配置されている。より具体的には、トラバース領域をパッケージ幅方向に3つの領域に等分割した領域のうち中央ではなく端部側に配置される(
図4を参照)。なお、本実施形態のトラバース検出センサ70は、4つの領域に分割した場合であっても、最も端部の領域内に配置されている。
図3及び
図6に示すように、トラバース検出センサ70は、ケース71と、投光部72と、受光部73と、反射部74と、センサ制御部75と、を備える。
【0069】
ケース71は、箱状の部材であり、背面プレート82の背面側(糸21が通過する側の反対側、反糸通過側)に取り付けられている(
図6を参照)。ケース71には、投光部72及び受光部73が設けられている。また、ケース71には、センサ制御部(制御部)75が設けられている。このセンサ制御部75は、受光部73により得られる信号を適宜変換し、ユニット制御部30へ出力する処理等を行う。
【0070】
投光部72は、ケース71に設けられているので、背面プレート82の背面側(反糸通過側)に位置することとなる。投光部72は、赤外線等の光を孔部82aから正面プレート81側に向けて投光することができる。投光部72が投光した光は、孔部82a、正面プレート81と背面プレート82の間(トラバースされる糸21が通過する糸道)、孔部81aを通過し、反射部74に照射される。
【0071】
反射部74は、
図3、
図5、及び
図6に示すように、正面プレート81より正面側(反糸通過側)に間隔を空けて配置された板状の部材である。反射部74は、正面プレート81の外側を背面側から正面側に延びる部分によって支持されている。また、反射部74は、孔部81a及び孔部82aに対応する位置に配置されている。反射部74に対しても、亜鉛メッキ又はクロムメッキ(ハードクロムメッキ)等のメッキ処理が施されている。あるいは、反射部74をステンレス製とし、メッキ処理を省略しても良い。
【0072】
受光部73は、投光部72と同様に、背面プレート82の背面側(反糸通過側)に位置する。従って、投光部72及び受光部73は、両方ともトラバースされる糸21が通過する糸道の一側に位置し、反射部74がその他側に位置する。受光部73は、投光部72が投光し、反射部74で反射した光を受光する。受光部73は、受光した光量に応じた電圧値の検出信号を生成する。
【0073】
糸21がトラバース検出センサ70を横切っていない場合、検出信号の電圧値は略一定である。しかし、糸21がトラバース検出センサ70を横切っている場合、この糸21に光が遮られるので、検出信号の電圧値が減少する。センサ制御部75は、検出信号の電圧値が減少したタイミングで糸21が横切ったと判断し、判断結果をユニット制御部30へ出力する。
【0074】
上述のように糸からの反射光を検出する従来の方法では、光を吸収する色糸の検出が困難であった(
図7(b)を参照)。これに対し、糸21を通過するときの光量の減少を検出する本実施形態の方法では、光の吸収率が高い黒糸はもちろんのこと、白糸もある程度の光を吸収するので白糸も検出できる。従って、投光部72の光量を増加させることなく、様々な糸を検出できる。
【0075】
ここで、
図3及び
図4に示すように、投光部72及び受光部73は、検出対象の糸21の走行方向に沿って配置されている。これにより、トラバースされる糸21は、投光部72及び受光部73を同時に横切ることとなる。この結果、
図6に示すように、投光部72が投光した光が糸21に遮られて光量が低下し、反射部74で反射した光が再び糸21に遮られて更に光量が低下する。従って、糸21の検出精度を向上させることができる。
【0076】
次に、トラバース検出センサ70の検出精度を維持するための構成について説明する。
【0077】
反射部74にメッキ処理が施されている場合、反射率を向上させることができるとともに、強度を向上させて傷付きにくくすることができる。これにより、長期にわたって反射率を維持できる。また、反射部74がステンレス製の場合、錆を防止できるので、長期にわたって反射率を維持できる。
【0078】
しかし、正面プレート81と背面プレート82の間には、糸21の繊維又はワックス等が飛散することがある。従って、投光部72、受光部73、又は反射部74に繊維等が付着することがある。繊維等が付着した場合、この繊維等で光が遮られてしまうので、糸21の検出精度が徐々に低下する。この点を考慮して、本実施形態では、2つの対策を実現した。
【0079】
1つ目の対策は、投光部72が投光する光の光量を調整する方法である。本実施形態では、糸21が横切らない限り、受光部73は一定の光量を検出するはずである。そのため、本実施形態では、糸21が横切らないときに受光部73が受光する光量の予測値を設定しておき、受光部73が受光する光量がこの予測値となるように、投光部72を制御する。具体的には、センサ制御部75は、予測値と、受光部73が実際に受光した光量と、の偏差を求める。そして、センサ制御部75は、偏差及び必要に応じて偏差の微分値又は積分値等も加味して、偏差が小さくなるようにフィードバック制御を行う。
【0080】
これにより、仮に投光部72、受光部73、又は反射部74に繊維等が付着しても、それに応じて投光部72の光量を上げることができるので、糸21の検出精度の低下を防止できる。また、常時ではなく必要に応じて投光部72の光量を上げるため、常時光量を上げた状態で検出を行う従来の方式に比べて、投光部72の負荷を抑えて寿命を長くすることができる。
【0081】
なお、投光部72の光量にも限界値があるので、所定以上の光量が必要になった場合、又は、所定時間の間継続してフィードバック制御を行っても偏差が減らない場合等にアラームを発しても良い。
【0082】
2つ目は、清掃を容易に行うことができる点である。本実施形態では、反射部74を正面プレート81から離れた位置に配置するとともに、投光部72と反射部74の間の空間が開放されている。従って、この開放部分に細い棒状の部材等を差し込んで投光部72等の表面を擦ることで、投光部72等に付着した繊維等を除去することができる。なお、投光部72へのフィードバック制御に基づいて投光部72等の清掃を促すアラームを発しても良い。
【0083】
次に、
図8を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0084】
上記実施形態では、正面プレート81とは別に反射部74を備える構成である。これに対し、本変形例では、正面プレート81の一部が反射部74として機能する。つまり、投光部72が投光した光は、正面プレート81の背面で反射し、この反射光を受光部73が受光する。
【0085】
これにより、上記実施形態より清掃は手間になるが、部品点数を抑えることができる。また、このように正面プレート81で光を反射させる場合、反射部74を含む正面プレート81の全体に対して、亜鉛メッキ又はクロムメッキ(ハードクロムメッキ)等のメッキ処理を施すことが好ましい。あるいは、反射部74を含む正面プレート81の全体をステンレス製とし、メッキ処理を省略しても良い。
【0086】
以上に説明したように、自動ワインダ1は、巻取部26と、トラバース検出センサ70と、を備える。巻取部26は、糸21をトラバースさせながら巻き取る。トラバース検出センサ70は、巻取部26によって糸21がトラバースされるトラバース領域に配置され、トラバースされる糸21を検出する。トラバース検出センサ70は、投光部72と、投光部72から投光された光を反射する反射部74と、反射部74で反射された光を受光する受光部73と、を有する。受光部73と反射部74とは、トラバースされる糸21が通過する糸道を挟む位置、かつ、トラバース領域をパッケージ幅方向に3つの領域に等分割した領域のうち両端の2領域の何れかの領域を検出する位置に配置される。
【0087】
これにより、投光部72が投光して反射部74で反射された光は、トラバースされる糸21によって遮られることで、光量が低下する。この結果、糸の色に関係なくトラバースされる糸21を検出することができる。また、トラバース検出センサ70がトラバース領域の端部領域に配置されているので、トラバース領域が小さくなる状態、糸21がトラバースされずにパッケージの一部に巻き取られる棒巻き、又は、糸21がドラムに巻かれるドラム巻き付きなどの不具合を的確に検出することができる。
【0088】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0089】
上では、下側(上流側)に投光部72が配置され、上側(下流側)に受光部73が配置されたが逆であっても良い。また、上記では、投光部72及び受光部73が一体的に構成されているが、別対としても良い。この場合、レイアウトの自由度が向上するが、投光部72及び受光部73の位置調整が困難となる。
【0090】
また、トラバース検出センサ70は、反対側(ユニット制御部30側)の端部の領域に配置されていても良い。また、正面プレート81に投光部72及び受光部73を配置し、背面プレート82に反射部74を配置しても良い。この場合、投光部72及び受光部73のメンテナンスは容易になるが、投光部72等の清掃が手間となる。
【0091】
上記では、綾振溝が形成された巻取ドラム28で綾振りを行うが、アーム式、ベルト式、ロータリ式の綾振り装置を用いても良い。この場合、補助ローラとして綾振り溝が形成されていないローラを用いることができる。特に、アーム式の綾振り装置を用いる場合には、トラバースガイドのトラバース幅の中央部にトラバース検出部を設けることにより、糸がトラバースガイドに係合していないことによるトラバース不良が発生した場合にもトラバース検出部を複数設けることなくトラバース不良を検出できる。さらに、アーム式の綾振り装置においてトラバース幅を変更する場合においてもトラバース検出部の位置調整を行う必要がない、という特有の作用が特許文献2に開示されている。このようなアーム式の綾振り装置の場合、本発明のトラバース検出部をトラバースガイドのトラバース幅の中央部に設けることにより本発明の作用に加え、特許文献2に記載の作用を得ることができる。
【0092】
上記では、トラバース検出センサ70の制御をセンサ制御部75が行うが、少なくとも一部の制御をユニット制御部30で行っても良い。
【0093】
本発明は、自動ワインダに限らず、巻返し機及び精紡機(例えば空気紡績機、オープンエンド紡績機)等の他の糸巻取装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 自動ワインダ(糸巻取装置)
21 糸
23 パッケージ
25 給糸部
26 巻取部
29 カバー部
30 ユニット制御部(制御部)
35 糸ガイド
70 トラバース検出センサ(トラバース検出部)
71 ケース
72 投光部
73 受光部
74 反射部
75 センサ制御部(制御部)
81 正面プレート(第2プレート)
82 背面プレート(第1プレート)