特開2015-157797(P2015-157797A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-157797(P2015-157797A)
(43)【公開日】2015年9月3日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/593 20060101AFI20150807BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20150807BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150807BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150807BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20150807BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150807BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150807BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150807BHJP
   A61P 19/10 20060101ALN20150807BHJP
【FI】
   A61K31/593
   A61K9/14
   A61K9/16
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61P19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-1616(P2015-1616)
(22)【出願日】2015年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-8190(P2014-8190)
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 直美
(72)【発明者】
【氏名】松島 歩
(72)【発明者】
【氏名】奥平 玄
(72)【発明者】
【氏名】本臼 美依里
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA54
4C076BB01
4C076CC09
4C076EE16
4C076EE32
4C076EE38
4C076EE45
4C076FF06
4C076FF63
4C086AA10
4C086DA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA97
(57)【要約】
【課題】
アルファカルシドールは活性型ビタミンD3の一種であり、骨粗鬆症の基礎薬として汎用される薬物である。アルファカルシドールは安定性に課題があり、経時的に成分含量の低下を引き起こす問題があった。本発明の目的は、アルファカルシドールの含量低下が抑制された固形製剤を提供することにある。
【解決手段】
クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を含有することを特徴とする、アルファカルシドール含有固形製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を含有することを特徴とする、アルファカルシドール含有固形製剤。
【請求項2】
剤形が、錠剤、散剤、顆粒剤、硬カプセル剤である請求項1に記載のアルファカルシドール含有固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファカルシドールを含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルファカルシドールは活性型ビタミンD3の一種であり、骨粗鬆症の基礎薬として汎用される薬物である。
【0003】
アルファカルシドールは少量で効果的に作用するため、用量が微量であり、ゆえに含量の均一性確保が課題となる。また、アルファカルシドールは光や酸素の影響を受けやすく、更に脂肪酸トリグリセリドなどの油に溶けやすいという性質を有することから、現在市販の製剤における提供形態としては、アルファカルシドールを油状物質に溶解させた状態でカプセルに封入した軟カプセル剤が多く存在する。
【0004】
一方で、生活者嗜好または製造コスト等の観点からより好ましいと考えられる剤形として錠剤や散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤が挙げられる。
【0005】
従来、活性型ビタミンD3類を固形製剤中で安定化する方法として、サイクロデキストリンや胆汁酸類と包接化合物を形成させる方法(特許文献1〜2)、ポリビニルピロリドンに分散させる方法(特許文献3)、有機溶媒に対して難溶性の賦形剤からなる内層に活性型ビタミンD3類と有機溶媒に対して易溶性の賦形剤からなる外層を形成せしめる方法(特許文献4)、従来の活性型ビタミンD3類組成物に塩基性物質を添加する方法(特許文献5)などが知られている。しかしながら、作業工程の煩雑さや製造コスト等の課題があり、より簡便かつ安価な製法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−128417号公報
【特許文献2】特公昭61−41351号公報
【特許文献3】特公昭63−46728号公報
【特許文献4】特公昭63−60007号公報
【特許文献5】特許2525478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アルファカルシドールの含量低下が抑制された固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、アルファカルシドールとクロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有せしめることにより、アルファカルシドールの含量低下を抑制した安定な固形製剤を提供できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は
(1)クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を含有することを特徴とする、アルファカルシドール含有固形製剤、
(2)剤形が、散剤、顆粒剤、硬カプセル剤である(1)に記載のアルファカルシドール含有固形製剤、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアルファカルシドール含有固形製剤は、アルファカルシドールの含量低下が抑えられ、保存安定性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の固形製剤中、アルファカルシドールの含有量は好ましくは製剤全体の0.00005〜1質量%である。
【0012】
また、本発明のクロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは崩壊剤として公知のものである。これら崩壊剤は単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、アルファカルシドール1質量部に対して1×10〜5×10質量部が好ましいが、アルファカルシドールの安定性の観点から下限値は1×10以上が特に好ましい。
【0013】
本発明の固形製剤は本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の薬効成分、賦形剤などを配合することができる。
【0014】
本発明の固形製剤は、例えば次の方法によって得ることができる。
アルファカルシドールを有機溶媒に溶解し、次にクロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加して混合した後、有機溶媒を留去することによって得られる。有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、通常、アルファカルシドール1質量部に対し、10〜1×10質量部である。有機溶媒を留去する方法としては、減圧乾燥、通風乾燥など一般的な乾燥方法が挙げられるが、これらに限定されない。また、製造の際、有機溶媒を留去する前に、必要に応じて他の賦形剤などを混合することができる。
【0015】
有機溶媒を留去した後、必要に応じて他の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などを配合し、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の剤形に加工することもできる。
【0016】
以下に、実施例、比較例及び試験例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
(試験例)
実施例1〜9及び比較例1〜4の製剤につき、65℃2週間保存後のアルファカルシドールの含量をHPLCで測定し、保存開始時に含量に対する百分率(%)を残存率とした。実施例1〜3と比較例1〜4の処方、及び残存率を表1に、実施例4〜9の処方及び残存率を表2に示す。
【0018】
(実施例1)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLをクロスポビドン500mgと混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0019】
(実施例2)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLをデンプングリコール酸ナトリウム500mgと混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0020】
(実施例3)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース500mgと混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0021】
(比較例1)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLを減圧乾燥した。
【0022】
(比較例2)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLをカルメロースカルシウム500mgと混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0023】
(比較例3)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLをバレイショデンプン500mgと混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0024】
(比較例4)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLをトウモロコシデンプン500mgと混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0025】
【表1】
【0026】
(実施例4〜6)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLをクロスポビドン、結晶セルロース及び乳糖の混合物と混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0027】
(実施例7〜9)
アルファカルシドール1mgをエタノール2mLに溶解し、このアルファカルシドール溶液10μLを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース及び乳糖の混合物と混合した後、減圧乾燥して固形製剤を得た。
【0028】
【表2】
【0029】
表1から明らかなとおり、本発明の固形製剤はアルファカルシドールの良好な残存率を示した。比較例1の結果より、アルファカルシドールは経時的に成分含量の低下を引き起こすことが確認された。崩壊剤として公知のカルメロースカルシウム、バレイショデンプン、トウモロコシデンプンを含有させても、アルファカルシドールの残存率は低いままであった(比較例2〜4)。実施例1〜3の結果から、アルファカルシドールとクロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する製剤は、アルファカルシドールの残存率が飛躍的に高くなることが確認された。
また、表2の実施例4〜9の結果より、クロスポビドン又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを賦形剤と混合した処方においても、アルファカルシドールの安定化が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、アルファカルシドールを安定に配合することが可能になったので、長期に保存してもアルファカルシドールの含量が維持される安定な固形製剤を提供することができる。