(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-157819(P2015-157819A)
(43)【公開日】2015年9月3日
(54)【発明の名称】RU(II)触媒の存在下でケトンを水素化する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/145 20060101AFI20150807BHJP
C07C 33/20 20060101ALI20150807BHJP
C07C 303/40 20060101ALI20150807BHJP
C07C 311/18 20060101ALI20150807BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20150807BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150807BHJP
【FI】
C07C29/145
C07C33/20
C07C303/40
C07C311/18
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2015-61022(P2015-61022)
(22)【出願日】2015年3月24日
(62)【分割の表示】特願2012-500318(P2012-500318)の分割
【原出願日】2010年3月17日
(31)【優先権主張番号】0904553.5
(32)【優先日】2009年3月17日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/221,690
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】0913166.5
(32)【優先日】2009年7月29日
(33)【優先権主張国】GB
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】アラン、ダイク
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン、マーク、グレンジャー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン、アラン、メドロック
(72)【発明者】
【氏名】ハンス、ギュンター、ネデン
(72)【発明者】
【氏名】ジャック、ジャン、マリー、ル、ペ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン、ジェームズ、ローズブレード
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、シーガー
(72)【発明者】
【氏名】ビルバナタン、シバクマール
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、ザノッティ‐ジェロサ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA08
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BE15A
4G169BE15B
4G169BE21A
4G169BE21B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE46A
4G169BE46B
4G169CB02
4G169CB62
4G169DA02
4G169FA01
4G169FB05
4G169FB77
4G169FB78
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC61
4H006BA05
4H006BA23
4H006BA46
4H006BE20
4H006FC52
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炭素−ヘテロ原子の二重結合を含んでなる基質を水素化する方法の提供。
【解決手段】例えばアセトフェノンのような基質を式(I)で表されるη
6アレーンルテニウムモノスルフォネートジアミン錯体化合物を触媒として、水素ガスと反応させることにより水素化する方法。(R
1〜R
5はH、置換/非置換のアルキルアルコキシ、アリル、カルボキシル、アミド等を、R
6〜R
10はH、置換/未置換のアルキル、アリル、アリルコキシ等を、Aはアルキレン基等)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素−ヘテロ原子の二重結合を含んでなる基質を水素化する方法であって、
水素化触媒の存在下で、前記基質を水素ガスと反応させる工程を含んでなるものであり、
前記水素化触媒が、化学式(I)で表される錯体である、方法。
【化1】
〔前記式(I)において、
R
1、R
2,R
3,R
4およびR
5は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOH、COOR
20、−CONH
2、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基が、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
30R
31、−COOR
30、−CONR
30R
31、および−CF
3からなる群から選択されてなり、
R
1およびR
2、R
2およびR
3、R
3およびR
4、またはR
4およびR
5は共に、6〜10の炭素原子から構成された芳香環を形成し、前記芳香環が、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3と随意に置換されてなるものであり、
R
6、R
7、R
8およびR
9は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリルおよび随意に置換されたC
6−20アリロキシからなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基が、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、または
前記炭素原子と共に結合されるR
6およびR
7および/または前記炭素原子と共に結合されるR
8およびR
9は、随意に置換されたC
3−20シクロアルキル、または随意に置換されたC
2−20シクロアルコキシを形成する、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択される、または
R
6およびR
7の1つおよびR
8およびR
9の1つは共に、随意に置換されたC
5−10シクロアルキルまたは随意に置換されたC
5−10シクロアルコキシを形成する、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、または
R
10は、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、随意に置換されたC
6−10アリルまたは−NR
11R
12であり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、
R
11およびR
12は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキルおよび随意に置換されたC
6−10アリルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル基、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21、および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、または
窒素原子と共に結合されるR
11およびR
12は、随意に置換されたC
2−10シクロアルキル−アミノ基を形成してなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、
R
20およびR
21は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
30R
31、−COOR
30、−CONR
30R
31およびCF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群から選択されるものであり、
R
30およびR
31は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、
Aは、随意に置換された直鎖または分枝鎖C
2−5アルキルであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリルおよびC
6−10アリロキシからなる群から選択されるものであり、または
Aは、下記化学式(II)の基であり、
【化2】
前記式(II)において、
pは1、2、3または4から選択された整数である、
R
40は、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNまたは−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、
qおよびrは、0、1、2または3から選択された別々の整数であり、q+r=1、2または3であり、
R
41は、水素、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されるものであり、およびHalは、ハロゲンである。〕
【請求項2】
前記式(I)において、R1、R2、R3、R4およびR5が、水素、直鎖C1−10アルキルおよび分枝鎖C1−10アルキルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記式(I)において、R1、R2、R3、R4およびR5が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項1または請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記式(I)において、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素である、請求項1〜3の何れか一項に記載された方法。
【請求項5】
前記式(I)において、R6、R7、R8およびR9が、水素および随意に置換されたC6−20アリルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項1〜4の何れか一項に記載された方法。
【請求項6】
前記式(I)において、R6、R7、R8およびR9が、水素およびフェニルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項1〜5の何れか一項に記載された方法。
【請求項7】
前記式(I)において、R6およびR7の一方はフェニルであり、およびR6およびR7の他方は水素である、請求項1〜6の何れか一項に記載された方法。
【請求項8】
前記式(I)において、R8およびR9の一方はフェニルであり、およびR8およびR9の他方が水素である、請求項1〜6の何れか一項に記載された方法。
【請求項9】
前記式(I)において、R6、R7、R8およびR9が、水素である、請求項1〜6の何れか一項に記載された方法。
【請求項10】
前記式(I)において、R10が、メチルまたはトリル基である、請求項1〜9の何れか一項に記載された方法。
【請求項11】
前記式(I)において、Aが、−(CH2)2−、−(CH2)3−、−(CH2)4−または−(CH2)5−であって、望ましくは−(CH2)3−または(CH2)4−である、請求項1〜10の何れか一項に記載された方法。
【請求項12】
前記式(I)において、Halが、塩素、臭素またはヨウ素である、請求項1〜11の何れか一項に記載された方法。
【請求項13】
水素化される前記基質が、カルボニルまたはイミニルであってなる、請求項1〜12の何れか一項に記載された方法。
【請求項14】
更に溶媒を含んでなる、請求項1〜13の何れか一項に記載された方法。
【請求項15】
前記溶媒が、アルコールを含んでなる、請求項14に記載された方法。
【請求項16】
更に銀塩を含んでなる、請求項1〜15の何れか一項に記載された方法。
【請求項17】
フッ素化スルホン酸、望ましくはトリフルオロメタンスルホン酸を更に含んでなる、請求項1〜15の何れか一項に記載された方法。
【請求項18】
下記化学式(VIII)の化合物の製造方法であって、
【化3】
a)下記化学式(IX)の化合物を下記化学式(X)の化合物に転化し、
【化4】
b)上記化学式(X)の前記化合物を下記化学式(XI)の化合物と溶媒中で反応させ、化学式(VIII)の前記化合物を形成する工程を含んでなる方法。
【化5】
〔上記式中、
R
1、R
2,R
3,R
4,R
5,R
6,R
7,R
8,R
9,R
10およびAは、請求項1〜11の何れか一項において定義した通りであり、および
Xは求電子基である。〕
【請求項19】
工程(a)が、化学式(IX)の前記化合物を塩基および下記化学式(XII)の化合物と反応させることを含んでなる、請求項18に記載された方法。
X−LG(XII)
〔前記式(XII)において、LGは離脱基である。〕
【請求項20】
前記塩基がアミンであってなる、請求項19に記載された方法。
【請求項21】
前記塩基が、ルチジンとトリエチルアミンとからなる群から選択されてなる、請求項19または請求項20に記載された方法。
【請求項22】
化学式(XII)の前記化合物が、トリフルオロメタンスルホン酸無水物と、トリフルオロメタンスルホン酸と、塩化メタンスルホニルと、およびp−塩化トルエンスルホニルとからなる群から選択されてなる、請求項19に記載された方法。
【請求項23】
工程(b)が更に塩基を含んでなる、請求項18に記載された方法。
【請求項24】
前記塩基がアミンであってなる、請求項23に記載された方法。
【請求項25】
前記塩基がトリエチルアミンであってなる、請求項23または請求項24に記載された方法。
【請求項26】
請求項18〜25の何れか一項に記載された方法であって、
c)化学式(VIII)の前記化合物を酸HZ(Zはアニオンである)と反応させ、および
d)化学式(VIII)の前記化合物の前記酸付加塩をRu(Hal)
n錯体と反応させ(Halはハロゲンであり、およびnはRuの配位数と同じまたはそれ以下の数である)、化学式(XIII)の錯体を形成する工程を更に含んでなる方法。
【化6】
【請求項27】
化学式(XIII)の前記錯体を塩基で処理し、化学式(I)の前記錯体を形成する工程を更に含んでなる、請求項26に記載された方法。
【請求項28】
化学式(VIII)の前記化合物の前記酸付加塩が、前記Ru(Hal)n錯体と反応する前に、分離されてなる、請求項26に記載された方法。
【請求項29】
化学式(VIII)の前記化合物の前記酸付加塩が、前記Ru(Hal)n錯体と反応する前に、その場で製造されてなる、請求項26に記載された方法。
【請求項30】
化学式(XIII)の前記錯体が分離されてなる、請求項26に記載された方法。
【請求項31】
化学式(XIII)の前記錯体が、その場で製造されてなる、請求項26に記載された方法。
【請求項32】
化学式(I)の錯体の製造のワンポット方法であって、
【化7】
i)化学式(VIII)の化合物を酸HZと反応させ(Zはアニオンである)、
【化8】
ii)化学式(VIII)の前記化合物の前記酸付加塩をRu(Hal)
n錯体と反応させ(Halはハロゲンであり、およびnはRuの配位数と同じまたはそれ以下の数である)、化学式(XIII)の錯体を形成し、
【化9】
iii)化学式(XIII)の前記錯体を塩基で処理し、化学式(I)の前記錯体を形成する工程を含んでなる方法。
【化10】
〔上記式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、A、HalおよびZは、請求項1〜12の何れか一項において定義された通りであり、および化学式(VIII)の前記化合物の前記酸付加塩および化学式(XIII)の前記錯体は、その場で製造される。〕
【請求項33】
【請求項34】
以下からなる群から選択された化合物またはそれらの酸付加塩。
【化12】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、炭素−ヘテロ原子の二重結合を含んでなる基質を触媒的に水素化する方法に関する。とりわけ、本発明は、η
6アレーンルテニウムモノスルホネートジアミン錯体を使用し、カルボニル化合物またはイミニル化合物を触媒的に水素化することに関する。
【0002】
テザー触媒は、非対称の移動水素化反応において使用される。(例えば、Hayes et al,J.Am.Chem.Soc.,2005,127,7318,Cheung et al,Organic Letters,2007,9(22),4659,Morris et al,J.Org.Chem.,2006,71,7035 および Martins et al, J.Organomet.Chem.,2008,693,3527を参照)移動水素化の条件は、ギ酸およびトリエチルアミンを使用する。水素ガスが使用され、およびギ酸およびトリエチルアミン等の試薬が使用されない点で、水素化反応は、移動水素化反応とは異なる。
【0003】
(分子の)一部または置換基の接続部は、「−」で表される。例えば、−OHは、酸素原子を介して接続される。
【0004】
「アルキル」は、直鎖、分枝状または環状飽和炭化水素基に関する。ある実施態様において、アルキル基は、1〜20の炭素原子を、ある実施態様においては、1〜15の炭素原子を、ある実施態様においては、1〜10の炭素原子を有しても良い。炭素原子の数は、その基に適合しており、例えば、シクロアルキル基は、連鎖を形成するため、少なくとも3つの炭素原子を有さなければならない。アルキル基は、非置換される、または置換されてもよい。特定の定めがない限り、アルキル基は、いかなる適切な炭素原子に接続されてもよく、および置換される場合、いかなる適切な原子に置換されてもよい。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0005】
「アルコキシ」は、O−アルキル基に関する、アルキル基は、上述の通りである。
【0006】
「アルケニル」は、少なくとも1つ炭素−炭素の二重結合を有する直鎖、分枝状または環状不飽和炭化水素基に関する。この基は、各二重結合の周囲でシス型またはトランス型のいずれかの立体配置であってもよい。ある実施態様において、アルケニル基は、2〜20の炭素原子を、ある実施態様において、2〜15の炭素原子を、ある実施態様においては、2〜10の炭素原子を有することができる。アルケニル基は、非置換される、または置換されてもよい。特定の定めがない限り、アルケニル基は、いかなる適切な炭素原子に接続されてもよく、および置換される場合、いかなる適切な原子に置換されてもよい。アルケニル基の例は、エテニル(ビニル)、2−プロペニル(アリル)、1−メチルエテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、シクロブタ−1,3-ジエニル等を含むが、これらに限定されない。
【0007】
「アルキニル」は、少なくとも1つ炭素−炭素の三重結合を有する直鎖、分枝状または環状不飽和炭化水素基に関する。ある実施態様において、アルキニル基は、2〜20の炭素原子を、ある実施態様において、2〜15の炭素原子を、ある実施態様においては、2〜8の炭素原子を有することができる。炭素原子の数は、その基に適合しており、例えば、少なくとも1つ炭素−炭素の三重結合を有する環状基は、この環状基を形成するために、十分な数の炭素原子を有さなければならない。アルキニル基は、非置換される、または置換されてもよい。特定の定めがない限り、アルキニル基は、いかなる適切な炭素原子に接続されてもよく、および置換される場合、いかなる適切な原子に置換されてもよい。アルキニル基の例は、エチニル、プロプ−1−イニル、プロプ−2−イニル、1−メチルプロプ−2−イニル、ブト−1−イニル、ブト−2−イニル、ブト−3−イニル等を含むが、これらに限定されない。
【0008】
「アリル」は、芳香族炭素環状基に関する。アリル基は、単環または多重縮合環を有しても良い。ある実施態様において、アリル基は、6〜20の炭素原子を、ある実施態様において、6〜15の炭素原子を、ある実施態様においては、6〜10の炭素原子を有することができる。アリル基は、非置換される、または置換されてもよい。特定の定めがない限り、アリル基は、いかなる適切な炭素原子に接続されてもよく、および置換される場合、いかなる適切な原子に置換されてもよい。アリル基の例は、フェニル、ナフチル、アンスラセニル等を含むが、これらに限定されない。
【0009】
「アリルロキシ」は、−O−アリル基に関する、このアリル基は、上述の通りである。
【0010】
「ハル」は、ハロゲンに関し、およびフッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択されてもよい。
【0011】
「ヘテロアルキル」は、直鎖、分枝状または環状飽和炭化水素基に関する、1以上の炭素原子が、1以上のヘテロ原子(窒素、酸素、リンおよび/または硫黄原子等)とそれぞれ別々に置換される。ある実施態様において、ヘテロアルキル基は、1〜20の炭素原子を、ある実施態様において、1〜15の炭素原子を、ある実施態様においては、1〜10の炭素原子を有しても良い。炭素原子の数は、その基に適合しており、例えば、ヘテロシクロアルキル基は、連鎖を形成するため、ヘテロ原子と共に十分な数の炭素原子を有さなければならない。ヘテロアルキル基は、非置換される、または置換されてもよい。特定の定めがない限り、アルキル基は、いかなる適切な原子に接続されてもよく、および置換される場合、いかなる適切な原子に置換されてもよい。ヘテロアルキル基の例は、エーテル、アミン、チオエーテル、エポキシド、モルホリニル、ピペラジニル、シラニル等を含むが、これらに限定されない。
【0012】
「ヘテロアリル」は、芳香族炭素環状基に関する、1以上の炭素原子が、1以上のヘテロ原子(例えば窒素、酸素、リンおよび/または硫黄原子)とそれぞれ別々に置換される。ある実施態様において、ヘテロアリル基は、3〜20の炭素原子を、ある実施態様において、3〜15の炭素原子を、ある実施態様においては、3〜10の炭素原子を有してもよい。ヘテロアリル基は、非置換される、または置換されてもよい。特定の定めがない限り、ヘテロアリル基は、いかなる適切な炭素原子に接続されてもよく、および置換される場合、いかなる適切な原子に置換されてもよい。ヘテロアリル基の例は、フラニル、インドリル、オクサゾリル、ピロリル、N−メチル−ピロリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、シアゾリル、シオフェニル等を含むが、これらに限定されない。
【0013】
炭素−ヘテロ原子の二重結合を含んでなる基質が、水素ガスおよびテザーη
6 アレーンルテニウムモノスルホネートジアミン錯体の存在下で、還元されることが知見された。
ある実施態様において、水素化は非対称であり、および還元された基質は、高い鏡像体過剰率で得られてもよい。別の実施態様において、水素化された基質が多官能基化する際、テザー触媒は、多官能性基の存在に対して弾力性があり、且つ不活性化しないことが知見された。
【0014】
従って、一の実施態様において、本発明は、炭素−ヘテロ原子の二重結合を含んでなる基質を水素化する方法を提供し、この方法は、水素化触媒の存在下で、この基質を水素ガスと反応させる工程を含んでなる、この水素化触媒は、化学式(I)の錯体である。
【化1】
式中R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOH、COOR
20、−CONH
2、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択され、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
30R
31、−COOR
30、−CONR
30R
31および−CF
3からなる群から選択される、R
1およびR
2、R
2およびR
3、R
3およびR
4、またはR
4およびR
5は、6〜10の炭素原子から構成された芳香環を共に形成し、この芳香環は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3と随意に置換される、
R
6、R
7、R
8およびR
9は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリルおよび随意に置換されたC
6−20アリロキシからなる群からそれぞれ別々に選択され、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択され、または
炭素原子と共に結合されるR
6およびR
7および/または炭素原子と共に結合されるR
8およびR
9は、随意に置換されたC
3−20シクロアルキル、または随意に置換されたC
2−20シクロアルコキシを形成し、この置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択される、または
R
6およびR
7の1つおよびR
8およびR
9の1つは共に、随意に置換されたC
5−10シクロアルキルまたは随意に置換されたC
5−10シクロアルコキシを形成し、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択される、または
R
10は、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、随意に置換されたC
6−10アリルまたは−NR
11R
12であり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択される、R
11およびR
12は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキルおよび随意に置換されたC
6−10アリルからなる群からそれぞれ別々に選択され、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル基、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択される、または
窒素原子と共に結合されるR
11およびR
12は、随意に置換されたC
2−10シクロアルキル−アミノ基を形成し、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択される、
R
20およびR
21は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
30R
31、−COOR
30、−CONR
30R
31およびCF
3からなる群からそれぞれ別々に選択され、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群から選択される、
R
30およびR
31は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択され、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群から選択される、
Aは、随意に置換された直鎖または分枝鎖C
2−5アルキルであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリルおよびC
6−10アリロキシからなる群から選択され、または
Aは化学式(II)の基であり、
【化2】
式中のpは1、2、3または4から選択された整数である、
R
40は、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNまたは−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択され、
qおよびrは、0、1、2または3から選択された別々の整数である、q+r=1、2または3である、
R
41は、水素、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択され、及び
Halは、ハロゲンである。
【0015】
R
6、R
7、R
8およびR
9が結合される炭素原子は、非対称であってもよい。従って、化学式(I)の錯体はキラルであってもよく、および本発明の水素化方法は非対称水素化方法であってもよい。キラル触媒および非対称水素化方法は、本発明の範囲内であることが予測される。
【0016】
一の実施態様において、この方法は、カルボニル基を選択的に水素化し、対応するアルコールを提供することに適している。
【0017】
水素化される適切な基質は、化学式(III)のカルボニルを含むが、これに限定はされない。
【化3】
式中のR
50およびR
51は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
2−20アルケニル、随意に置換されたC
2−20アルキニル、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20ヘテロアルキル、随意に置換されたC
3−20ヘテロアリル、−NR
60R
61、−COR
60、−COOR
60、−CONR
60R
61、随意に置換された−C
1−20−アルキル−COOR
60、随意に置換された−C
1−20−アルキル−COR
60、随意に置換された−C
1−20−アルキル−CONR
60R
61、随意に置換された−C
2−20−アルキニル−C
6−20−アリルおよび随意に置換された−C
2−20−アルキニル−C
1−20−アルキルからなる群からそれぞれ別々に選択され、または
R
50およびR
51は、随意に置換されたC
1−20アルキル、随意に置換されたC
1−20アルコキシまたは随意に置換されたC
2−20アルケニルにより結合され、またはR
50およびR
51は結合され、随意に置換された−(CH
2)
t−(ortho−C
5−6−アリル)−(CH
2)
u−鎖、随意に置換された−(CH
2)
t−(ortho−C
5−6−アリル)−Q−(CH
2)
u−鎖または随意に置換された−(CH
2)
t−(ortho−C
5−6−ヘテロアリル)−(CH
2)
u−鎖により5、6または7の員環を形成する、
tは0または1から選択された整数であり、
uは2、3または4から選択された整数であり、
Qは、−O−、−N−および−SO
2−からなる群から選択され、
前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、直鎖、分枝状または環状C
1−20ヘテロアルキル、C
6−20ヘテロアリル、直鎖または分枝状C
1−20−アルキルシリル−、−Hal、−OH、−CN、−NR
60R
61、−COR
60、−COOR
60、−CONR
60R
61および−CF
3からなる群から選択される、またR
60およびR
61は、水素、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシおよび−OHからなる群からそれぞれ別々に選択される。
【0018】
一の実施態様において、R
50およびR
51が、5、6または7の員環を形成するために結合される際、Qは、望ましくは−O−または−SO
2−である。別の実施態様において、水素化される基質は、随意に置換された1−インダノン、随意に置換された2−インダノン、随意に置換されたα−テトラノン、随意に置換されたβ−テトラノン、随意に置換された6,7,8,9−テトラヒドロ−5−ベンゾシクロヘプテノン、随意に置換された5,7,8,9−テトラヒドロ−6H−ベンゾ〔A〕シクロヘプテン−6−オン、随意に置換されたベンゾフラン−3(2H)−オン、随意に置換された4−クロマノンおよび随意に置換された3,4−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5(2H)−オンから選択されてもよい。一の実施態様において、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキルおよび−Halからなる群から選択される。別の実施態様において、前記置換基は、メチル、エチル、n−プロピル、is−プロピル、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される。
【0019】
さらに別の実施態様において、この方法は、イミニル基を選択的に水素化し、対応するアミンを提供することに適している。
【0020】
水素化される適切な基質は、化学式(IV)または(V)の化合物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【化4】
式中のR
50およびR
51は、化学式(III)のカルボニルに関して上述の通りである。
R
52は、水素、ヒドロキシ、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
2−20アルケニル、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、随意に置換された−C
1−20−アルキル−C
6−20−アリル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20ヘテロアルキル、随意に置換されたC
3−20ヘテロアリル、−NR
70R
71、−COR
70、−COOR
70、−CONR
70R
71、随意に置換された−C
1−20−アルキル−COOR
70、随意に置換された−C
1−20−アルキル−COR
70、随意に置換された−C
1−20アルキル−CONR
70R
71、−SOR
70、−SO
2R
70、−P(O)(R
70)
2からなる群から選択される、または
R
52およびR
50とR
51の1つが、随意に置換されたC
1−20−ヘテロアルキル基を形成するために結合され、
前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、直鎖、分枝状または環状C
1−20ヘテロアルキル、C
6−20ヘテロアリル、−Hal、−OH、−CN、−NR
70R
71、−COOR
70、−CONR
70R
71または−CF
3からなる群から選択される、および
R
70およびR
71は、水素、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−C(O)−(C
1−20−アルキル)および−C(O)O−(C
1−20−アルキル)からなる群からそれぞれ別々に選択される。
【0021】
水素化される基質が化学式(V)の化合物である場合、いかなる適切なアニオンが存在してもよい。
【0022】
R
50、R
51および/またはR
52が異なる場合、化学式(III)、(IV)または(V)の化合物はプロキラルであり、および化学式(I)の金属錯体により触媒化される水素化はエナンチオ選択的である。鏡像体過剰率は、望ましくは80%ee以上である。ある実施態様において、この鏡像体過剰率は、85%ee以上で、ある実施態様において、90%ee以上であり、ある実施態様においては、93%ee以上である。
【0023】
本発明による方法は、溶媒が無い場合または溶媒の存在下のいずれかで実施されてもよい。従って、一の実施態様において、この方法は更に溶媒を含んでなる。望ましくは、この溶媒は、水、アルコール、芳香族溶剤(ベンゼンまたはトルエン等)、エーテル(テトラヒドロフラン(THF)またはメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)等の環状鎖または開鎖)、エステル(エチルアセテート等)またはこれらの組合せを含んでなる。
この溶剤がアルコールを含んでなる場合、望ましいアルコールは、大気圧(即ち1.0135x10
5Pa)で、160℃以下の沸点を有し、より望ましくは120℃以下であり、更に望ましくは100℃以下である。望ましい例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはこれらの組合せである。より望ましくは、このアルコールは、メタノール、イソプロパノール、またはこれらの組合せである。とりわけ望ましいのはメタノールである。
【0024】
化学式(I)の錯体の濃度範囲は、ばらつきが大きくてもよい。一般に、基質/錯体比は、約50、000:1〜約25:1で、望ましくは約2000:1〜約50:1で、より望ましくは約1000:1〜約100:1が達成される。
【0025】
この水素化方法は、約1バール〜約100バールの標準的な圧力で実施されてもよい。
より望ましくは、約20バール〜約85バール、およびとりわけ約15バール〜約35バールが使用される。
【0026】
この水素化方法は、約0℃〜約120℃の間の温度で実施されてもよい。適切には、この方法は、約20℃〜約80℃で実施され、および最も適切には約30℃〜約60℃で実施される。
【0027】
本発明の方法は、更に銀塩を含んでなる。理論に縛られることなく、この銀塩が、化学式(I)の錯体からハロゲン(Hal)を除去し、化学式(VI)および/または化学式(VII)のルテニウム錯体を形成することが考えられる。適切な銀塩は、形成されたAgHalより溶解性の高いものであることが、更に
【化5】
考えられる。
【0028】
Yは、銀塩からのアニオンである。望ましくは、このアニオンYの共役酸は、約4以下の水中での酸解離定数を有し、より望ましくは約2以下および最も望ましいのは約0以下である。
【0029】
適切な銀塩は、ペルフルオロアルカンスルホン酸銀(銀トリフラート等)または銀(ペルフルオロアルカンスルホン酸)アミドを含む。別の方法として、ヘキサフルオロリン酸銀、テトラフルオロホウ酸銀または過塩素酸銀が使用される。この銀塩は、いかなる適切なmol%で存在してもよく、例えば、使用されるルテニウム錯体の量に対して約0.2mol%〜500mol%である。
【0030】
別の実施態様において、本発明の方法は、フッ化スルホン酸、望ましくはトリフルオロメタンスルホン酸を更に含んでもよい。このフッ化スルホン酸は、いかなる適切なmol%で使用されてもよく、例えば2mol%である。
【0031】
従って、アニオンYの例は、トリフルオロメタンスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩および過塩素酸塩を含んでも良いが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
ルテニウム触媒および基質、および溶媒および/または添加剤(存在する場合)は、水素ガスが反応混合物に適用される前に、いかなる適切な順序で混合される。
【0033】
この水素化方法はいかなる適切な時間実施されてもよく、およびこの時間は、この水素化が行われる反応条件(例えば基質濃度、触媒濃度、圧力、温度等)に依存する。いったんこの水素化方法が完了したことが決定された場合、この生成物は分離され、および従来の技術を使用して精製されてもよい。
【0034】
一の実施態様において、水素化触媒は化学式(I)の金属錯体である。
【化6】
式中のR
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、水素、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH,−CN,−NR
20R
21、−COOH、COOR
20、−CONH
2、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択される。別の実施態様において、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、水素、直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル、直鎖または分枝鎖C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシおよび−OHからなる群からそれぞれ別々に選択される。望ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、水素、直鎖C
1−10アルキルおよび分枝鎖C
1−10アルキルからなる群からそれぞれ別々に選択される。より望ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチルおよびt−ブチルからなる群からそれぞれ別々に選択される。とりわけR
1、R
2、R
3、R
4およびR
5が優先され、それぞれ水素である。
【0035】
更に別の実施態様において、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、水素、随意に置換された直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル、随意に置換された直鎖または分枝鎖C
1−10アルコキシ、随意に置換されたC
6−10アリル、および随意に置換されたC
6−10アリロキシからなる群からそれぞれ別々に選択され、前記置換基は、直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル、直鎖または分枝鎖C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシおよび−OHからなる群から選択される。R
6、R
7、R
8およびR
9は、望ましくは、水素および随意に置換されたC
6−10アリルからなる群からそれぞれ別々に選択される。R
6、R
7、R
8およびR
9は、望ましくは、水素および随意に置換されたC
6−10アリルからなる群からそれぞれ別々に選択される。望ましくは、R
6、R
7、R
8およびR
9は、水素またはフェニルからなる群からそれぞれ別々に選択される。望ましくは、R
6およびR
7の一方はフェニルであり、R
6およびR
7の他方は水素である。望ましくは、R
8およびR
9の一方はフェニルであり、R
8およびR
9の他方は水素である。
【0036】
一の実施態様において、R
6、R
7、R
8およびR
9は、それぞれ水素である。
【0037】
別の実施態様において、炭素原子と結合されるR
6およびR
7および/または炭素原子と結合されるR
8およびR
9は、随意に置換されたC
5−10シクロアルキルまたは随意に置換されたC
5−10シクロアルコキシを形成し、前記置換基は、直鎖または分枝鎖C
1−10、直鎖または分枝鎖C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシおよび−OHからなる群から選択される。
【0038】
さらに別の実施態様において、R
6およびR
7の1つおよびR
8およびR
9の1つが、随意に置換されたC
5−10シクロアルキルまたは随意に置換されたC
5−10シクロアルコキシを共に形成し、前記置換基は、直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル、直鎖または分枝鎖C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシおよび−OHからなる群から選択される。
【0039】
さらに別の実施態様において、R
10は、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、随意に置換されたC
6−10アリルであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択される。別の実施態様において、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−Halまたは−CF
3からなる群から選択される。別の実施態様において、R
10は、直鎖または分枝鎖C
1−10アルキルまたは1以上の直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル基と随意に置換されたC
6−10アリルである。R
10の例は、p−トリル、メチル、p−メトキシフェニル、p−クロロフェニル、トリフルオロメチル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、ペンタメチルフェニルおよび2−ナフチルを含むが、これらに限定されるわけではない。望ましくは、R
10はメチルまたはトリル基である。
【0040】
別の実施態様において、R
10は−NR
11R
12であって、R
11およびR
12は、直鎖または分枝鎖C
1−10アルキルおよび1以上の直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル基と随意に置換されたC
6−10アリルからなる群からそれぞれ別々に選択される。
【0041】
さらに別の実施態様において、窒素原子と結合されるR
11およびR
12は、随意に置換されたC
5−10シクロアルキルーアミノ基を形成し、前記置換基は、直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル、直鎖または分枝鎖C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシおよび−OHからなる群から選択される。
【0042】
一の実施態様において、Aは、随意に置換された直鎖または分枝鎖C
2−5アルキル、望ましくは随意に置換された直鎖または分枝鎖C
3−5アルキルであって、前記置換基は、直鎖または分枝鎖C
1−10アルキル、直鎖または分枝鎖C
1−10アルコキシ、C
6−10アリルおよびC
6−10アリロキシからなる群から選択される。望ましくは、Aは、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
4−または−(CH
2)
5−である。とりわけ望ましいのは、−(CH
2)
3−または−(CH
2)
4−である。
【0043】
別の方法として、Aは、化学式(II)の基であり、即ち−[C(R
41)
2]
q−および−[C(R
41)
2]
r−基は互いにオルト基である。
【化7】
式中のpは、1、2、3または4から選択された整数である、
R
40は、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNまたは−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択される、
qおよびrは、0、1、2または3から選択された別々の整数である、q+r=1、2または3である、および
R
41は、水素、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNまたは−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択される。
【0044】
一の実施態様において、pは0である。従って、フェニル環は、いかなるR
40基に置換されない。
【0045】
別の実施態様において、R
41は、水素、直鎖C
1−10アルキルおよび分枝鎖C
1−10アルキルからなる群からそれぞれ別々に選択される。より望ましくは、R
41は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチルおよびt−ブチルからなる群からそれぞれ別々に選択される。とりわけR
41が優先され、水素である。
【0046】
Aの例は、以下を含むが、これらに限定されるわけではない。
【化8】
【0047】
一の実施態様において、Halは、塩素、臭素またはヨウ素であって、望ましくは塩素である。
【0048】
化学式(I)の望ましい金属錯体は以下に示される。
【化9】
【0049】
錯体(B)は、Wills et al,J.Am.Chem.Soc.,2005,127(20)7318によって製造されてもよい。このWills方法は5つの工程を含む。
【化10】
(反応式中、Birch reduction:ブリッチ還元、Swern oxidation: スウェーン酸化、Reductive amination:還元アミノ化)
工程1は、3−フェニル−プロパノールを3−シクロヘキサ−1,4−ジエニル−プロパン−1−olへのBirch還元である。工程2は、3−シクロヘキサ−1,4−ジエニル−プロパン−1−olのSwern酸化を含み、3−シクロヘキサ−1,4−ジエニル−プロピオンアルデヒドを製造する。酸化状態で変化が発生するのでこの段階は不都合であり、およびそれに続く還元のための試薬水素化リチウムアルミニウムが使用され、これは大規模な反応に不適切である。工程3は、望ましい(R,R)−TsDPENを形成するための還元的アミノ化反応である。しかし、副産物がまたこの還元的アミノ化の過程において形成され、これがこの後の(R,R)−TsDPENの精製を複雑にさせる。工程4および5は、ルテニウム二量体およびモノマー(単量体)それぞれの合成に関する。
【0050】
本発明の発明者らは、上記の不都合を克服し、化学式(I)の錯体の製造の改善された方法を提供する。
【0051】
従って、本発明は、化学式(VIII)の化合物の製造の方法を提供し、
【化11】
(a)化学式(IX)の化合物を化学式(X)の化合物に転化し、
【化12】
(b)化学式(X)の化合物を、化学式(XI)の化合物と溶媒中で反応させ、化学式(VIII)の化合物を形成する工程を含む方法であり、
【化13】
式中のR
1、R
2,R
3,R
4,R
5,R
6,R
7,R
8,R
9,R
10およびAは、上記で定義された通りであり、およびXは求電子基である。
【0052】
本発明の方法は、化学式(VIII)の化合物の製造方法を提供し、これは酸化状態での変化を伴わない。更に、還元的アミノ化工程は必要なく、そのため、水素化リチウムアルミニウムの使用が避けられる。これは、本発明の方法が大規模な製造手順に適していることを意味する。
【0053】
工程(a)は、望ましくは化学式(IX)の化合物を塩基および化学式(XII)の化合物と反応させることを含み、
X−LG(XII)
式中のLGは離脱基である。
【0054】
塩基は望ましくはアミンである(ルチジンまたはトリエチルアミン等)。望ましくは、この反応は不活性雰囲気下(窒素またはアルゴン等)で実施される。適切には、溶媒は、いかなる適切な非プロトン性極性溶媒(ジクロロメタン等)を使用されてもよい。本質的に違いはないが、溶媒は無水でもよい。
【0055】
化学式(IX)の化合物、塩基、溶媒および化学式(XII)の化合物は、いかなる適切な順序で添加されてもよい。しかし、本発明の望ましい方法において、化学式(IX)の化合物および塩基は、溶媒と共に反応槽に配置され、次に、化学式(XII)の化合物が添加される。
【0056】
化学式(XII)の化合物は、また溶媒中で溶液として存在してもよい。この場合、溶媒は、いかなる適切な極性非プロトン性溶媒(ジクロロメタン等)であってもよい。溶媒は、化学式(XII)の化合物および塩基の反応混合物を製造するために使用される溶媒と同じまたは異なってもよいが、本発明の望ましい実施態様において、溶媒は同じである。
【0057】
化学式(XII)の化合物は、望ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化メタンスルホニルおよびp−塩化トルエンスルホニルからなる群から選択される。従って、Xは、−SO
2CF
3(トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびトリフルオロメタンスルホン酸に対して)、−SO
2Me(塩化メタンスルホニルに対して)または−SO
2−C
6H
4−p−CH
3(p−塩化トルエンスルホニルに対して)でもよい。これらの例において、LGは、−O−SO
2CF
3(トリフルオロメタンスルホン酸無水物に対して)、−OH(トリフルオロメタンスルホン酸に対して)または−Cl(塩化メタンスルホニルまたはp−塩化トルエンスルホニルに対して)でもよい。
【0058】
化学式(XII)の化合物が反応混合物に添加される間、反応の温度範囲は、約−10℃〜約35℃の間で1以上の温度(複数の温度)で保持されることが望ましい。望ましい実施態様において、反応混合物は、約5℃以下の温度で保持さる。反応混合物の温度をこれらの範囲内で保持するために、化学式(XII)の化合物は溶媒(使用される際)と共に、一定時間ゆっくり添加されてもよい。
【0059】
反応は、約30分〜約72時間の一定時間継続されてもよく、望ましくは30分〜約24時間である。この時間、反応温度は、約−10℃と約25℃の間で、1回以上、変化されてもよい。望ましくは、反応の完了時に、化学式(X)の化合物は、いかなる適切な方法により、反応混合物から分離されてもよい。別の方法として、化学式(X)の化合物を含んでなる反応混合物は、本発明の方法の工程(b)において分離無しで直接使用されてもよい。
【0060】
工程(b)において、化学式(X)の化合物は、化学式(XI)の化合物と溶媒中で反応され、化学式(VIII)の化合物を形成する。
【0061】
一の実施態様において、化学式(VIII)の化合物は、化学式(G)の化合物である。
【化14】
【0062】
別の実施態様において、化学式(VIII)の化合物は、以下からなる群から選択される。
【化15】
【0063】
化学式(G)、(H)、(L)および(M)の化合物は、鏡像体またはジアステレオ異性体として存在してもよい。鏡像体およびジアステレオ異性体は、本発明の範囲内であることが予測される。
【0064】
望ましくは、この反応は、不活性雰囲気下(窒素またはアルゴン等)で実施される。望ましくは、適切な溶媒が、例えば、非プロトン性極性溶媒(ジクロロメタンまたは1,2−ジメトキシエタン等)を使用される。本質的に違いはないが、溶媒は無水でもよい。この反応は、約−10℃〜約65℃の間の範囲で1以上の温度(複数の温度)で望ましくは実施される。
【0065】
工程(b)は望ましくは塩基をさらに含んでなる。より望ましくは、この塩基はトリエチルアミン等のアミンである。
【0066】
化学式(X)の化合物、化学式(XI)の化合物、塩基(使用される場合)および溶媒は、いかなる適切な順序で添加されてもよい。一の実施態様において、化学式(XI)の化合物は、溶媒と塩基(使用される場合)と共に、反応槽に配置され、必要ならば加熱され、および化学式(X)の化合物が、単独でまたは溶媒中の溶液としてのいずれかで添加される。別の方法として、化学式(X)の化合物および溶媒は反応槽中に存在し、必要ならば冷却または加熱されてもよく、次に化学式(XI)の化合物、塩基(使用される場合)および溶媒が添加されてもよい。
【0067】
反応は、約30分〜約24時間の一定時間継続されてもよい。この時間、反応温度は、約−10℃と約100℃の間で、望ましくは約0℃と約85℃の間で、1回以上変化されてもよい。反応の完了時に、化学式(VIII)の化合物は、いかなる適切な方法により、反応混合物から分離されてもよく、必要ならば、精製されてもよい。
【0068】
望ましくは、本発明の方法は更に、
c)化学式(VIII)の化合物を酸HZ(Zはアニオンである)で処理する、
d)化学式(VIII)の化合物の酸付加塩をRu(Hal)
n錯体と反応させ(Halはハロゲンであって、nはRuの配位数と同数またはそれ以下である)化学式(XIII)の錯体を形成する工程を含み、
【化16】
工程c)は、望ましくは溶媒の存在下で実施される。溶媒は、いかなる適切な溶媒であってもよく、例えば、極性プロトン性溶媒(水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、またはイソプロパノール等)、極性非プロトン性溶媒(ジクロロメタンまたはジクロロエタン等)または芳香族炭化水素(トルエン等)である。望ましくは、溶媒は、水、エタノール、イソプロパノール、ジクロロエタンおよびトルエンの少なくとも一つからなる群から選択される。
【0069】
望ましくは、酸HZは、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸からなる群から選択される。より望ましくは、この酸は塩酸である。従って、Zは、塩素アニオン、臭素アニオンまたはヨウ素アニオンであってもよく、望ましくは塩素アニオンである。望ましい実施態様において、酸HZは、濃縮酸性水溶液である。
【0070】
ハロゲンHalは、望ましくは、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択される。望ましい実施態様において、Ru(Hal)
nは、RuCl
3であり、例えば、RuCl
3.H
2OまたはRuCl
3の水溶液で、[RuCl
3.(H
2O)
3]、[RuCl
2.(H
2O)
4]Cl等RuCl
3の配位錯体を含む。従って、nは3である。RuCl
3の水溶液は、遊離錯体RuCl
3よりはるかに安価である点で、RuCl
3の水溶液を使用する商業上の利点がある。
【0071】
一の実施態様において、化学式(VIII)の化合物の酸付加塩は、Ru(Hal)
n錯体と反応する前に分離される。
【0072】
別の実施態様において、化学式(VIII)の化合物の酸付加塩は、Ru(Hal)
n錯体と反応する前にその場で製造される。この場合、化学式(VIII)の化合物の酸付加塩の溶液は、約50℃〜約80℃で、より望ましくは、Ru(Hal)
n錯体の添加前に約50℃〜約75℃の範囲で1以上の温度(複数の温度)で温められることが望ましい。
【0073】
Ru(Hal)
n錯体は、溶媒中で溶液または懸濁液として添加されてもよい。溶媒は、いかなる適切な溶媒であってもよく、例えば、極性プロトン性溶媒(水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、またはイソプロパノール等)、極性非プロトン性溶媒(ジクロロメタンまたはジクロロエタン等)または芳香族炭化水素(トルエン等)である。
望ましくは、溶媒は、水、エタノール、イソプロパノール、ジクロロエタンおよびトルエンの少なくとも1つからなる群から選択される。溶媒または溶媒混合液は、工程c)で使用される溶媒と同じまたは異なっていてもよい。
【0074】
反応は、約50℃〜約100℃、より望ましくは約50℃〜約85℃の範囲の温度で望ましくは実施される。反応温度は、RuL
nおよび化学式(XIII)の錯体の分解温度以下に保持されることが望ましい。そのため、RuL
nまたは化学式(XIII)の錯体が、上述された温度範囲内で分解することが明らかな場合、反応温度は、分解温度以下で保持されるべきである。
【0075】
望ましくは、化学式(VIII)の化合物は、化学量論過剰において反応混合物中に存在する。望ましくは、反応混合物中の化学式(VIII)の化合物量は、化学量論反応にとって必要な量より少なくとも5%のモル過剰、より望ましくは少なくとも9%の過剰を示すために算出される。
【0076】
反応物は、いかなる適切な順序で添加されてもよいが、本発明の望ましい方法において、Ru(Hal)
n錯体の希釈水溶液が、化学式(VIII)の化合物の酸付加塩の溶液に添加される。Ru(Hal)
n錯体の希釈水溶液は、化学式(VIII)の化合物の酸付加塩の溶液にゆっくり添加され、制御できない発熱を避けることが望ましい。
【0077】
反応は、約30分〜約24時間の一定時間実施されてもよい。完了時に、化学式(XIII)の錯体は、反応混合物から分離されてもよい。この場合、この錯体は、いかなる適切な方法により分離され、この方法は生成物の物理的形状に依存する。化学式(XIII)の錯体の精製は通常必要ではないが、必要なら、従来の方法を使用してこの錯体を精製することが可能である。
【0078】
別の方法として、その場で化学式(XIII)の錯体を製造することが望ましい。
【0079】
望ましくは、本発明は、化学式(XIII)の錯体を塩基で処理する工程をさらに含み、化学式(I)の錯体を形成する。
【化17】
【0080】
化学式(XIII)の錯体は、望ましくは溶媒中に存在する。溶媒は、いかなる適切な溶媒であってもよく、例えば、極性プロトン性溶媒(メタノール、エタノール、n−プロパノールまたはイソプロパノール等)、極性非プロトン性溶媒(ジクロロメタンまたはジクロロエタン等)または芳香族炭化水素(トルエン等)である。望ましくは、溶媒は、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびトルエンの少なくとも1つからなる群から選択される。溶媒または溶媒混合液は、工程c)および/または工程d)で使用される溶媒と同じまたは異なってもよい。
【0081】
塩基は、望ましくはアミン、例えばトリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルアミン等である。望ましい実施態様において、塩基はN,N−ジイソプロピルアミンである。
【0082】
反応は、約20分〜約24時間の一定時間継続されてもよい。この時間、反応温度は、約10℃〜約100℃、望ましくは約0℃〜約85℃の間で1回以上変化されてもよい。
反応温度は、化学式(I)の錯体の分解温度以下に保持されることが望ましい。そのため、化学式(I)の錯体が、上述される温度範囲内で分解することが明らかな場合、反応温度は、分解温度以下で保持されるべきである。
【0083】
反応の完了時に、化学式(VIII)の化合物は、いかなる適切な方法により反応混合物から分離されてもよく、この方法は生成物の物理的形状に依存する。とりわけ、固体錯体は、ろ過、傾斜または遠心により回収されてもよい。精製が必要ならば、この錯体は、従来の方法により高純度で得られてもよい。
【0084】
別の態様において、本発明は、化学式(I)の錯体の製造のワンポット方法を提供し、
【化18】
i)化学式(VIII)の化合物を酸HZで処理する(式中のZはアニオンである)、
【化19】
ii)化学式(VIII)の化合物の酸付加塩をRu(Hal)
n錯体と反応させ(式中のHalはハロゲンであり、およびnはRuの配位数と同数またはそれ以下の数である)化学式(XIII)の錯体を形成する、
【化20】
iii)化学式(XIII)の錯体を塩基で処理し、化学式(I)の錯体を形成する工程を含んでなる方法であり、
【化21】
式中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10およびAは、上記で定義された通りである、化学式(VIII)の化合物の酸付加塩および化学式(XIII)の錯体は、その場で製造される。
【0085】
さらに別の態様において、本発明は、化学式(I)または化学式(XIII)の錯体を提供し、
【化22】
式中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10およびA、HalおよびZは、上記で定義された通りである、化学式(I)の錯体が以下ではなく、
【化23】
および化学式(XIII)の錯体が以下ではない場合である。
【化24】
【0086】
望ましくは、以下からなる群から選択される化学式(I)の錯体
【化25】
【0087】
別の態様において、本発明は、化学式(VIII)の化合物、またはその酸付加塩を提供し、
【化26】
式中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10およびAは、上記で定義された通りである、化学式(VIII)の化合物が以下、またはその塩化水素塩ではない場合。
【化27】
【0088】
望ましくは、化学式(VIII)の化合物、またはその酸付加塩が、以下からなる群から選択される。
【化28】
【0089】
本発明は、以下の非限定的実施例を参考に、更に説明される。
【実施例1】
【0090】
3−フェニル−プロパノールのBirch還元
【0091】
アンモニアを、四首付き(温度計、アンモニアレクチャーボトルに接続されたコールドフィンガー、シリコンオイルバブラー付きアルゴン注入口、栓で閉じられた注入口)丸底フラスコ中で濃縮する。コールドフィンガーをドライアイスで冷却し、およびフラスコをドライアイス−EtOHの溶液槽中で冷却する。50mL〜100mLのアンモニアを回収した際(反応の間、アルゴンの遅い流れを保持する)、EtOH(20mL)中の3−フェニル−プロパノール(5.0g、MW136.2、36.7mmol)を添加する。
リチウムワイヤーの部分を添加し(〜1.0g)、それにより反応を暗緑色に保持する。
−78℃で2時間後、反応を室温に温め、アンモニアを蒸発させる。次に反応を塩化アンモニウムの飽和溶液(200mL)でクエンチし、ジクロロメタン(2×200mL)で抽出する。結合したジクロロメタン部分を200mLのHCl 2Nで洗浄し、次にNa
2SO
4上で乾燥する。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、無色透明のオイル(4.77g、95%収率)を得る。純度を
1HNMRにより決定する。
【実施例2】
【0092】
テザー(R,R)−TsDPENの合成
【化29】
【0093】
3−(1,4−シクロヘキサジエン−1−yl)−1−プロパノール(MW:138.21;22.1g,0.16mol,1.6eq.)および2,6−ルチジン(MW:107.16、d:0.92g/mL;24.5mL、0.21mol,2.10eq.)の溶液を無水CH
2Cl
2中で、N
2下、0℃まで冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(MW:281.14、d:1.677;29.1mL、0.17mol、1.7eq.)の溶液を無水CH
2Cl
2(100mL)中でゆっくり添加し、5℃以下に内部温度を保持した。得られた琥珀色の溶液を0℃で30分間、室温で60分攪拌し、および0℃まで冷却した。(R,R)−TsDPEN(MW:366.48;36.6g、0.10mol)およびトリエチルアミン(MW:101.19、d:0.726;33.5mL、0.24mol,2.4eq.)の溶液を無水CH
2Cl
2中(100mL)中で、ゆっくり添加し、5℃以下に内部温度を保持した。添加の終わりに、攪拌を0℃で30分間、次に室温で一晩(17.5時間)継続した。反応混合液をCH
2Cl
2(500mL)で希釈し、sat.aq.NaHCO
3(2×500mL、1×250mL)、水(2×300mL)、塩水(250mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥し、および減圧下で濃縮し、高粘性琥珀油を得た。エタノール(250mL)を添加し、および混合液を固体が形成するまで攪拌した。追加のエタノール(450mL)を添加し、および混合液を澄明な溶液を得るまで70℃に加熱し、この混合液を一晩室温まで冷却した。濃厚懸濁液(不可視な溶媒、多量の生成物)をろ過し、およびオフホワイト色の沈殿物をエタノール、ヘキサンで洗浄し、および高真空下で乾燥した。収率:34.10g(70%)、NMR純度>98%(
1HNMR))
【実施例3】
【0094】
テザー(S,S)−MsDPENの合成
【化30】
【0095】
3−(1,4−シクロヘキサジエン−1−yl)−1−プロパノール(MW:138.21;8.3g,60.0mmol,1.20eq.)および2,6−ルチジン(MW:107.16、d:0.92g/mL;8.3mL、70.0mmol,1.40eq.)の溶液を無水CH
2Cl
2中で、N
2下、0℃まで冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(MW:281.14、d:1.677;10.7mL、62.5mmol、1.25eq.)の溶液を無水CH
2Cl
2(40mL)中でゆっくり添加し、5℃以下に内部温度を保持した。得られた琥珀色の溶液を0℃で30分間、室温で90分攪拌し、および0℃まで冷却した。(S,S)−MsDPEN(MW:290.39;14.52g、50mmol)およびトリエチルアミン(MW:101.19、d:0.726;11.2mL、80.0mmol,1.6eq.)の溶液を無水CH
2Cl
2(90mL)中でゆっくり添加し、5℃以下に内部温度を保持した。添加の終わりに、攪拌を0℃で30分、次に室温で一晩(20.5時間)継続した。反応混合液をCH
2Cl
2(全量:ca.500mL)で希釈し、sat.aq.NaHCO
3(2×250mL、1×150mL)、水(2×200mL)、塩水(200mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥し、および減圧下で濃縮し、高粘性琥珀油(26.5g)を得た。粗生成物を、溶離剤としてEtOAc/ヘキサン2/1を使用し、シリカゲルの層(厚さ7cm、直径9cm)を介してろ過した。生成物を最初に二つの分画(第一の二つの少量)(各200mL)で得たが、まだ不純物を含有していたので、まず溶離した。(EtOAc中のTLC、R
f(不純物):0.76、R
f(テザーMsDPEN):0.66;UV@254nmまたは塩基性のKMnO
4で視覚化された)。減圧下で溶媒の蒸発により、黄色からオレンジ色のオイルの粗生成物を得て、ゆっくり凝固した(20.2g)。
【0096】
この固形物をMTBE(500mL)に溶解し、およびこの溶液をca.0℃まで冷却した。HClの1.25M溶液を、MeOH(120mL、150mmol)中で、激しく攪拌しながら添加した。0℃で45分後、濃厚懸濁液をろ過し、固形物をMTBEで洗浄し、および高真空下で乾燥した。収率:17.13g(77%)、NMR純度>98%(
1HNMR)
【0097】
生成物の第二バッチを、母液を処理することにより得た。結合したろ液および洗浄液を、固形物を得るまで、減圧下で乾燥し、70℃で1時間、エチルアセテート(40mL)を使用し粉末にした。室温まで冷却後、この混合液をろ過し、およびろ過ケーキをEtOAcで洗浄した。次にオフホワイト色の固形物を高真空下で乾燥した。収率:1.66g(7%)、NMR純度>98%(
1HNMR)
【実施例4】
【0098】
Ts−DPEN Ru二量体の合成
【化31】
【0099】
手順1.EtOH(500mL)中で(R,R)−テザー−ジアミン(11.68g、24mmol)の攪拌懸濁液に、60℃で濃縮HCl(3mL、37%、36mmol)を添加し、溶液を30分間攪拌した。次にこの溶液を75℃まで加熱し、これにEtOH(50mL)中でH
2O中のRuCl
3(Ru中の含有量19.23%,6.46mL、20mmol)を1時間滴下した。次にこの溶液を75℃で一晩攪拌した。次に、この溶液を冷却し、ヘキサン(600mL)を激しく攪拌しながら添加し、溶液をろ過した。次に、得られた固形物をヘキサンで洗浄、回収および高真空下で乾燥し、薄茶色の固形物(〜15g、繰越される)を得た。分離された生成物は、
1HNMR(CDCl
3)により>95%純であることを示した。これ以上の精製を行わず、この物質を次の工程に繰り越した。
【0100】
手順2.DCE(20mL)中で(R,R)−ジアミン(2.9g、6mmol)の攪拌懸濁液に、50℃でHCl(3mL、37%、36mmol)を添加し、溶液を30分間攪拌した。次に得られた懸濁液を75℃まで加熱し、これにIPA(20mL)中でH
2O中のRuCl
3(Ru中の含有量19.23%,1.62mL、5mmol)を1時間滴下した。次にこの溶液を75℃で一晩攪拌した。次に、この溶液を冷却し、激しく攪拌しながらヘキサン(100mL)を添加し、溶液をろ過した。次に、得られた固形物をヘキサンで洗浄、回収および高真空下で乾燥し、薄茶色の固形物(〜6g、繰越される)を得た。この二量体を粗生成物として分離し、
1HNMR(CDCl
3)により>90%純であることを示した。
【0101】
手順3.トルエン(20mL)中で(R,R)−ジアミン(2.9g、6mmol)の攪拌懸濁液に、50℃でHCl(3mL、37%、36mmol)を添加し、溶液を30分間攪拌した。次に得られた懸濁液を75℃まで加熱し、これにIPA(20mL)中でH
2O中のRuCl
3(Ru中の含有量19.23%Ru,1.62mL、5mmol)を1時間滴下した。次にこの溶液を75℃で一晩攪拌した。次に、この溶液を冷却し、激しく攪拌しながらヘキサン(100mL)を添加し、溶液をろ過した。次に、得られた固形物をヘキサンで洗浄、回収および高真空下で乾燥し、薄茶色の固形物(〜6g、繰越された)を得た。この二量体を粗生成物として分離し、
1HNMR(CDCl
3)により>90%純であることを示した。
【実施例5】
【0102】
[Ts−teth−DPEN Ru Cl](モノマー)の合成
【化32】
【0103】
手順1.DCM(300mL)中で(R,R)−二量体(繰越された、〜20mmol)の攪拌溶液に、0℃で、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(20.9mL、120mmol)を添加し、溶液を室温で1時間攪拌した。次にこの溶液をセライト上でろ過し、IPA(300mL)を添加し、回転蒸発によりDCMを除去した。次に、得られた懸濁液をろ過し、濃いオレンジ色の固形物を回収した。次に、この固形物を高真空下で一晩さらに乾燥し、細かいオレンジ色の粉末(10.6g、83%)を得た。分離された生成物は、
1HNMR(CDCl
3)により>95%純であることを示した。
【0104】
手順2.IPA(1L)中に(R,R)−二量体(14g、〜20mmol)の攪拌溶液に、50℃で、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(20.9mL、120mmol)を添加し、溶液を85℃で2時間攪拌した。次にこの溶液を冷却し、最初の量の3分の1まで蒸発し、次にろ過し、濃いオレンジ色の固形物を得た。次に、この固形物を高真空下で一晩さらに乾燥し、細かいオレンジ色の粉末(8.5g、67%)を得た。分離された生成物は、
1HNMR(CDCl
3)により>95%純であることを示した。
【実施例6】
【0105】
[Ts−teth−DPEN Ru Cl]ワンポットの合成
【化33】
【0106】
手順1.トルエン(20mL)中で(R,R)−ジアミン(2.9g、6mmol)の攪拌懸濁液に50℃でHCl(0.75mL、37%、9mmol)を添加し、溶液を30分間攪拌した。次に得られた懸濁液を75℃まで加熱し、これにIPA(10mL)中でH
2O中のRuCl
3(Ru中の含有量19.23%,1.62mL、5mmol)を1時間滴下した。次にこの溶液を75℃で一晩(16時間)攪拌した。次に、この溶液を0℃まで冷却し、トルエン(30mL)を添加し、かつN,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.35mL、25mmol)を攪拌しながら滴下した。次に、この溶液を室温まで温め、次に30分間、80℃まで加熱した。次にこの溶液を冷却し、DCM(50mL)で希釈し、中性アルミナ(1g/mmol)上でろ過し、および更なる量のDCM(2×20mL)でパッドを洗浄した。ろ液を蒸発してDCM/トルエンを除去し、IPA(50mL)を添加し、溶液を室温で1時間攪拌した。次に得られた懸濁液をろ過し、オレンジ色の固形物を得て、2時間、高真空下で乾燥した(2g、63%)。この規模では発熱は発生しなかったが、大規模な場合、発熱する可能性があるので注意をするべきである。初期加熱段階後、粘度が高い沈殿物を形成し、そのため溶液の攪拌を行った。しかしトルエンおよびヒューニッヒ塩基の添加により、モノマー構造が進むにつれ、固体の再溶解をもたらした。分離した生成物は、
1HNMR(CDCl
3)により>95%純であることを示した。
【化34】
【0107】
手順2.トルエン(100mL)中で(S,S)−ジアミン(14.5g、30mmol)の攪拌懸濁液に、窒素下、50℃で、HCl(3.75mL、37%、45mmol)を添加し、溶液を30分間攪拌した。次に得られた懸濁液を75℃まで加熱し、これにIPA(50mL)中でH
2O中のRuCl
3(Ru中の含有量19.23%,8.1mL、25mmol)を1時間滴下した。次にこの溶液を75℃で一晩(16時間)攪拌した。次に、この溶液を0℃まで冷却し、DCM(100mL)を添加し、およびN、N−ジイソプロピルエチルアミン(21.75mL、125mmol)を攪拌しながら滴下した。次に、この溶液を室温まで温め、次に2時間攪拌した。次にこの溶液を中性アルミナ(1g/mmol)上でろ過し、および更なる量の10%IPA/DCM(2×50mL)でパッドを洗浄した。ろ液を蒸発してDCM/トルエンを除去し、IPA(200mL)を添加し、溶液を室温で2時間攪拌した。次に得られた懸濁液をろ過し、オレンジ色の固形物を得て、冷IPA(30mL)で洗浄し、高真空下で2時間乾燥した(12.3g、77%)。初期加熱段階後、粘度が高い沈殿物を形成し、そのため溶液の攪拌を行った。しかしDCMおよびヒューニッヒ塩基の添加により、モノマー構造が進むにつれ、固体の再溶解をもたらした。粗分離生成物は、
1HNMR(CDCl
3)により>95%純であることを示した。更なる精製をDCM(100mL)およびIPA(100mL)で溶解することにより行うことができ、続いて回転蒸発によりDCMの除去を行うことができる。次に得られた懸濁液を前述同様ろ過し、固形物を乾燥し、純物質を得る。
【実施例7】
【0108】
[Ms−teth−DPEN Ru Cl]ワンポットの合成
【化35】
【0109】
手順1.75℃、窒素下において、トルエン(20mL)中で(S,S)−ジアミン.HCL(2.67g、6mmol)の攪拌懸濁液に、IPA(10mL)中でH
2O中のRuCl
3(Ru中の含有率19.23%,1.62mL、5mmol)を1時間滴下した。次にこの溶液を75℃で一晩(16時間)攪拌した。次に、この溶液を0℃まで冷却し、DCM(30mL)を添加し、およびN、N−ジイソプロピルエチルアミン(4.35mL、25mmol)を攪拌しながら滴下した。次に、この溶液を室温まで温め、2時間攪拌した。次にこの溶液をDCM(50mL)で希釈し、中性アルミナ(1g/mmol)上でろ過し、および更なる量のDCM(2×20mL)でパッドを洗浄した。ろ液を蒸発し、DCM/トルエンを除去し、IPA(50mL)を添加し、溶液を室温で1時間攪拌した。次に得られた懸濁液をろ過し、オレンジ色の固形物を得て、2時間、高真空下で乾燥した(1.8g、64%)。初期加熱段階後、Tsの例と比較して、粘度が高い沈殿物は認められなかった。分離した生成物は、
1HNMR(CDCl
3)により>95%純であることを示した。
【化36】
【0110】
手順2.75℃、窒素下において、トルエン(60mL)中で(R,R)−ジアミン.HCL(8.03g、18mmol)の攪拌懸濁液に、IPA(30mL)中でH
2O中のRuCl
3(Ru中の含有率19.23%,4.86mL、15mmol)を1時間滴下した。次にこの溶液を75℃で一晩(16時間)攪拌した。次に、この溶液を0℃まで冷却し、DCM(100mL)を添加し、およびN、N−ジイソプロピルエチルアミン(15.66mL、90mmol)を攪拌しながら滴下した。次に、この溶液を室温まで温め、2時間攪拌した。次にこの溶液を中性アルミナ(1g/mmol)上でろ過し、および更なる量の10%IPA/DCM(2×50mL)でパッドを洗浄した。ろ液を蒸発し、DCM/トルエンを除去し、IPA(200mL)を添加し、溶液を室温で2時間攪拌した。次に得られた懸濁液をろ過し、オレンジ色の固形物を得て、冷IPA(30mL)で洗浄し、高真空下で2時間乾燥した(5.0g、60%)。初期加熱段階後、Tsの例と比較して、粘度が高い沈殿物が認められなかった。粗分離生成物は、
1HNMR(CDCl
3)により>95%純であることを示した。更なる精製をDCM(100mL)およびIPA(100mL)で溶解することにより行い、続いて回転蒸発によりDCMの除去を行った。次に得られた懸濁液を前述同様ろ過し、固形物を乾燥し、純物質を得た。
【実施例8】
【0111】
光化学不活性なテザー触媒の合成
【化37】
リガンドの合成(工程1および工程2)
【0112】
25mLのDCM中で、3−(1,4−シクロヘキサジエン−1−yl)−1−プロパノール(MW:138.21;1.21g,9.18mmol)の攪拌溶液に、2.7mLのNEt
3(19.28mmol)を添加し、0℃に冷却した。メタンスルホニルクロリドの溶液(1.1mL,13.8mmol)を、内部温度を5℃に保持することにより、20分間添加した。30分後、反応混合液を室温まで温め、一晩攪拌した。この反応を、飽和NaHCO
3溶液でクエンチした。この反応を水、塩水で処理し、Na
2SO
4上で乾燥した。メシラート誘導体(96%収率)を分離し、次の工程に繰り越した。20mLの1、2−ジメトキシエタンおよびNEt
3(2.7mL,19.43mmol)中でモノトシレートエチレンジアミン(1.98g,9.25mmol)の攪拌懸濁液に、60℃で、10mLのDME中のメシラート誘導体の溶液を5分間ゆっくり添加した。次にこの溶液を80℃に加熱し、一晩攪拌した。この反応を飽和NaHCO
3溶液でクエンチした。この反応を水、塩水で処理し、Na
2SO
4上で乾燥した。望ましいリガンドを溶離剤(EtOAc中のR
f値0.1;UV@254nmまたは塩基性KMnO
4で視覚化される)としてEtOAcを用いて、カラムクロマトグラフィーにより分離した。リガンドの分離収率が1.0g(出発アルコールに基づき33%)であった。
1HNMR:(300MHz、CDCl
3)7.77−7.73(2H,m,ArH)、7.32−7.27(2H,m,ArH)、5.71(2H、br s、CH=CH)、5.34(2H、br s、=CH)、3.04−3.00(2H,m,CH
2NH)、2.82−2.73(2H,m,CH
2NH)、2.72−2.68(2H,m,−CH
2−C=または=CH−CH
2−CH=)、2.56−2.51(4H,m,−CH
2−C=または=CH−CH
2−CH=)、2.42(3H,s,CH
3)、1.95−1.90(2H,m,−NH−CH
2−)、1.53−1.48(2H,m,−CH
2−CH
2−CH
2) 二量体の合成(工程3)
【0113】
EtOH(15mL)中でテザーエチレンジアミンリガンド(MW:334.17、0.270g,0.808mmol)の攪拌溶液に、0℃で濃縮HCl(0.12mL、35%、1.212mmol)を添加した。この溶液を30分間、60℃で加熱した。この後、この溶液を75℃まで加熱し、EtOH(15mL)および水(0.5mL)中でRuCl
3の溶液(0.110g、0.533mmol)を20分間滴下した。次に、この溶液を75℃で一晩攪拌した。次に、この溶液を冷却し、ヘキサン(60mL)を激しく攪拌しながら添加し、ろ過した。次に得られた固形物をヘキサンで洗浄し、回収し、高真空下で乾燥し、暗褐色の固形物(0.006g)を得た。ろ液を濃縮し、オレンジ色の粉末(0.040g)を得た。これら両方の固形物を次の反応のために混合した。この分離生成物は、
1HNMRにより>95%純を示した。
1HNMR:(300MHz,DMSO−d6)8.50(2H,br s,NH
2)、7.82(2H,br s,NH)、7.71―7.68(2H,m,ArH)、7.44−7.42(2H,m,ArH)、6.02(2H,br s,Ru−ArH)、5.79(3H,br s,Ru−ArH)、2.98(5または6H,br s,CH
2)、2.30(3H,s,CH
3)、1.92(2H,br s,−CH
2−)
モノマー(単体)の合成(工程4)
【0114】
0℃で、DCM(50mL)中の二量体(MW:1081.80、0.238g,0.220mmol)の攪拌溶液に、N、N−ジイソプロピルエチルアミン(3.0mL、1.696mmol)を添加し、この溶液を室温で2時間攪拌した。次に、この溶液をセライト上でろ過し、DCMを回転蒸発により除去した。EtOHを得られたペーストに添加し、3時間冷凍室で保存し、冷溶液をろ過し、オレンジ色の沈殿物を回収した。暗沈殿物を更なる量の冷EtOHで洗浄した。望ましいルテニウム錯体をEtOAc(EtOAc中のR
f値0.2;UV@254nmまたはリンモリブデン酸で視覚化された)を用いて、カラムクロマトグラフィーにより分離した。
1HNMR(300MHz、DMSO−d6)7.68(1H,br s,NH)、7.82 7.59(2H,d,ArH)、7.13(2H,d,ArH)、5.91(1H,m,Ru−ArH)、5.79−5.71(2H,m,Ru−ArH)、5.26−5.20(2H,m,Ru−ArH),2.29(3H,s,CH
3)
【実施例9】
【0115】
テザー−Ts/MsDPENRuCl触媒および任意の添加剤を使用するアセトフェノンの水素化
【化38】
【0116】
実験手順:Ru触媒(1.2mg,1.9×10
−6mol)および銀塩(3.8×10
−6mol)(現存するなら)を、ガラス反応管の中で秤量した。MeOH(3mL)を添加し、続いてアセテフェノンを添加した。管をBiotage Endeavourの中に配置し、窒素、次に水素ガスで置換した。この反応を16時間、30バール(450PSI)H
2下で50℃まで加熱し、TLCおよびGCにより分析した。
水素化実験の結果に関して表1を参照。
【実施例10】
【0117】
[(R、R)−Ts−teth−DPEN Ru Cl]および[(S,S)−Ts−teth−DPEN Ru Cl]の使用によるアセトフェノンの水素化
【0118】
実験手順:Ru触媒(0.005mol)をガラス反応管の中で秤量した。バイアルをBiotage Endeavourの中に配置し、窒素で置換した。アセトフェノンを添加し、続いてMeOHを添加した。この反応を水素ガスでパージし、加熱し、および加圧した。この反応を加熱し、16時間、H
2で加圧し、およびGCにより分析した。
[表2]
[(R,R)−Ts−teth−DPEN Ru Cl]の使用によるアセトフェノンの水素化の結果に関して表2を参照。
[表3]
[(S,S)−Ts−teth−DPEN Ru Cl]の使用によるアセトフェノンの水素化の結果に関して表3を参照。
【実施例11】
【0119】
アセトフェノンの水素化:MeOH中での比較実験
【0120】
実験手順:Ru触媒をガラス反応管の中で秤量した。バイアルをBiotage Endeavour中に配置し、窒素で置換した。アセトフェノンを添加し、続いてMeOHを添加した(全反応量:4mL)。この反応を水素ガスでパージし、加熱し、および加圧した。この反応を加熱し、16時間、30バール(435psi)H
2下で加熱し、GCにより分析した。
[表4]
比較実験の結果に関して表4を参照。
【0121】
表に示されるように、触媒充填がS/C1000/1まで減少した際、非テザー触媒は、テザー触媒より活性が低い。
【実施例12】
【0122】
テザーTsEn−Ru触媒の使用によるアセトフェノンの水素化
【化39】
テザーTsEn−Ru触媒の使用によるアセトフェノンの水素化の結果に関して表5を参照。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【手続補正書】
【提出日】2015年4月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素−ヘテロ原子の二重結合を含んでなる基質を水素化する方法であって、
水素化触媒の存在下で、前記基質を水素ガスと反応させる工程を含んでなるものであり、
前記水素化触媒が、化学式(I)で表される錯体である、方法。
【化1】
〔前記式(I)において、
R
1、R
2,R
3,R
4およびR
5は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOH、COOR
20、−CONH
2、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基が、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
30R
31、−COOR
30、−CONR
30R
31、および−CF
3からなる群から選択されてなり、
R
1およびR
2、R
2およびR
3、R
3およびR
4、またはR
4およびR
5は共に、6〜10の炭素原子から構成された芳香環を形成し、前記芳香環が、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3と随意に置換されてなるものであり、
R
6、R
7、R
8およびR
9は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリルおよび随意に置換されたC
6−20アリロキシからなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基が、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、または
前記炭素原子と共に結合されるR
6およびR
7および/または前記炭素原子と共に結合されるR
8およびR
9は、随意に置換されたC
3−20シクロアルキル、または随意に置換されたC
2−20シクロアルコキシを形成する、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択される、または
R
6およびR
7の1つおよびR
8およびR
9の1つは共に、随意に置換されたC
5−10シクロアルキルまたは随意に置換されたC
5−10シクロアルコキシを形成する、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、または
R
10は、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、随意に置換されたC
6−10アリルまたは−NR
11R
12であり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、ただし、R
10はトリル基ではなく、
R
11およびR
12は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキルおよび随意に置換されたC
6−10アリルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル基、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21、および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、または
窒素原子と共に結合されるR
11およびR
12は、随意に置換されたC
2−10シクロアルキル−アミノ基を形成してなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリル、C
6−10アリロキシ、−OH、−CN、−NR
20R
21、−COOR
20、−CONR
20R
21および−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、
R
20およびR
21は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CN、−NR
30R
31、−COOR
30、−CONR
30R
31およびCF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群から選択されるものであり、
R
30およびR
31は、水素、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、随意に置換されたC
6−20アリル、随意に置換されたC
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNおよび−CF
3からなる群から選択されてなるものであり、
Aは、随意に置換された直鎖または分枝鎖C
2−5アルキルであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C
1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−10アルコキシ、C
6−10アリルおよびC
6−10アリロキシからなる群から選択されるものであり、または
Aは、下記化学式(II)の基であり、
【化2】
前記式(II)において、
pは1、2、3または4から選択された整数である、
R
40は、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CNまたは−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されてなるものであり、
qおよびrは、0、1、2または3から選択された別々の整数であり、q+r=1、2または3であり、
R
41は、水素、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルキル、直鎖、分枝状または環状C
1−20アルコキシ、C
6−20アリル、C
6−20アリロキシ、−OH、−CN、および−CF
3からなる群からそれぞれ別々に選択されるものであり、およびHalは、ハロゲンである。〕
【請求項2】
前記式(I)において、R1、R2、R3、R4およびR5が、水素、直鎖C1−10アルキルおよび分枝鎖C1−10アルキルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記式(I)において、R1、R2、R3、R4およびR5が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記式(I)において、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素である、請求項3に記載された方法。
【請求項5】
前記式(I)において、R6、R7、R8およびR9が、水素および随意に置換されたC6−10アリルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項1に記載された方法。
【請求項6】
前記式(I)において、R6、R7、R8およびR9が、水素およびフェニルからなる群からそれぞれ別々に選択されてなる、請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記式(I)において、R6およびR7の一方はフェニルであり、およびR6およびR7の他方は水素である、請求項1に記載された方法。
【請求項8】
前記式(I)において、R8およびR9の一方はフェニルであり、およびR8およびR9の他方が水素である、請求項1に記載された方法。
【請求項9】
前記式(I)において、R6、R7、R8およびR9が、水素である、請求項1に記載された方法。
【請求項10】
前記式(I)において、R10が、随意に置換された直鎖、分枝状または環状C1−10アルキル、随意に置換されたC6−10アリルであり、前記置換基は、1以上の直鎖、分枝状または環状C1−10アルキル、直鎖、分枝状または環状C1−10アルコキシ、C6−10アリル、C6−10アリロキシ、−Halおよび−CF3からなる群から選択される、請求項1に記載された方法。
【請求項11】
前記式(I)において、R10が、直鎖または分枝鎖C1−10アルキルまたは1以上の直鎖または分枝鎖C1−10アルキル基と随意に置換されたC6−10アリルである、請求項1に記載された方法。
【請求項12】
前記式(I)において、R10が、メチル、p−メトキシフェニル、p−クロロフェニル、トリフルオロメチル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、ペンタメチルフェニルまたは2−ナフチル基である、請求項1に記載された方法。
【請求項13】
前記式(I)において、Aが、−(CH2)2−、−(CH2)3−、−(CH2)4−または−(CH2)5−である、請求項1に記載された方法。
【請求項14】
前記式(I)において、Halが、塩素、臭素またはヨウ素である、請求項1に記載された方法。
【請求項15】
水素化される前記基質が、カルボニルまたはイミニルであってなる、請求項1〜14の何れか一項に記載された方法。
【請求項16】
更に溶媒を含んでなる、請求項1〜15の何れか一項に記載された方法。
【請求項17】
前記溶媒が、アルコールを含んでなる、請求項16に記載された方法。
【請求項18】
更に銀塩を含んでなる、請求項1〜17の何れか一項に記載された方法。
【請求項19】
フッ素化スルホン酸、望ましくはトリフルオロメタンスルホン酸を更に含んでなる、請求項1〜17の何れか一項に記載された方法。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか一項によって規定される、化学式(I)で表される錯体。
【外国語明細書】