本発明は、神経変性または神経筋の障害を有する患者をCD40とCD40Lとの相互作用を遮断する化合物を治療的有効量投与することによって治療する方法を提供する。本発明はまた、抗CD40L抗体または抗CD40L抗体の抗体フラグメントを含む医薬組成物を提供する。
神経変性障害または神経筋障害を有する患者を治療する方法であって、前記患者へ治療上有効量のCD40およびCD40Lの相互作用を遮断する化合物を投与することを含む、方法。
障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチー、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、ケネディ病、または脊髄小脳失調症である、請求項1に記載の方法。
抗CD40L抗体が、MR1、5c8、IDEC、131/E6040、クローン24−31、ABI793、ImxM90、ImxM91、ImxM92またはSgn−40である、請求項5に記載の方法。
CD40L抗体が、MR1、5c8、IDEC、131/E6040、クローン24−31、ABI793、ImxM90、ImxM91、ImxM92またはSgn−40である、請求項10に記載の方法。
神経変性障害または神経筋障害を有する患者を治療する方法であって、前記患者へ治療上有効量のCD40およびCD40Lの相互作用を遮断する化合物を、CD28およびCD68の間またはCD28およびCD80の間の相互作用を遮断する化合物と組み合わせて投与することを含む、方法。
障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチー、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、ケネディ病または脊髄小脳失調症である、請求項16に記載の方法。
CD28およびCD86の間またはCD28およびCD80の間の相互作用を遮断する化合物が、アバタセプト、ベラタセプトまたはグリキシマブである、請求項18に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.序章
本開示は、CD40およびCD40Lの相互作用を遮断する化合物を治療的有効量投与することによって神経変性または神経筋の障害を有する患者を治療する方法を記載する。本開示は、CD40およびCD40Lの相互作用を遮断する化合物を、CD28とCD86との相互作用またはCD28とCD80との相互作用を遮断する化合物と共に、患者に共投与することによって治療する方法を記載する。
【0012】
II.略号と定義
以下の略語がここで使われる:筋萎縮性側索硬化症(ALS);スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、T細胞受容体(TCR)、主要組織適合抗原(MHC)、抗原表示細胞(APC)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、相補性決定領域(CDR)。「IP」は腹腔内投与を意味し、「IV」は静脈内投与を意味する。
【0013】
MR1は、マウスCD40リガンドと結合するハムスターモノクローナル抗体である。本明細書で用いる「野生型」とは、非遺伝子組換えのマウスを意味する。本明細書で用いる「小分子」とは、2000ダルトン以下の分子量を有する化合物を意味する。本明細書で用いる「治療」または「処置」とは、予防的治療と治療処置を含む。「治療的有効量」とは、特定の患者または対象集団において単独投与または他の医薬品または治療と併用投与して治療される障害または疾患が、十分に抑制または改善がみられる化合物またはその薬物学的に許容し得る塩の量を意味する。「ALS−TDI」とは、ALS治療開発研究所についての略語である。「hSOD1G93A臨床前マウスモデル」、「hSOD1G93Aマウスモデル」、「G93A臨床前マウスモデル」、および「G93Aマウスモデル」は、いずれも本明細書において使用される場合には同じ意味である。「hSOD1G93Aマウス」および「G93Aマウス」は、本明細書において使用される場合には同じ意味である。
【0014】
III.化合物の生体内評価
本開示の方法で使われる化合物を、G93Aマウスモデルを用いてその有効性を評価することができる(Tu PH etal.Proc Natl Acad Sci USA 1996;93:3155−60 and Gurney ME.et al.J Neurol Sci 1997;152(Suppl1):S67−73を参照)。このモデルは、グリシンからアラニンへの変異を位置93に含むヒトSOD1遺伝子の23コピーをマウスゲノムに挿入することによって作成された。これらのマウスは、このモデルを疾病の改変的介入をテストするための選択肢で現在利用出来る最良のものであり、ヒト孤発性型と家族性型の疾病の病理学的に最も主要な点を正確に要約している。
【0015】
G93Aマウスの出生時における識別可能な奇形の表現型発現はない。疾病の可視的徴候は90日齢まで発現しない。その年齢になると、後肢機能の進行性損失を経験し、134日齢に完全に麻痺し、死に至る。筋肉疲労は、運動ニューロンの死または機能障害によって引き起こされるが、これらの細胞死は、ミクログリアとアストロサイトを含む周囲の細胞との相互作用と関連しており、かかる相互作用により部分的に引き起こされる。明白なアストロサイト増加は約80日齢に初め現れ、一方、主にミクログリアよって媒介される神経の炎症は、約100日齢に現れ、死に至るまで拡大する。
【0016】
ヒトの疾患は運動領のどの場所にも起こりうるが、マウスの疾患は頚部と腰部に確実に最初の影響を及ぼす。G93Aマウスにおいて、約85日目の最初の可視的兆候が発症した時点までに、運動ニューロンの数は有意に減退し、死亡時に損失は50%以上に達する。疾病が継続している間のニューロン内で、細胞骨格、神経フィラメント、軸索輸送、ゴルジ、小胞体、ミトコンドリア、アポトーシス機構、プロテアソーム、および細胞質タンパク質の搬送における異常が観察されている。ヒト疾患は運動領のどの場所にも起こりうるが、マウス疾患は最初に腰部と仙骨部に確実に影響を及ぼす。G93Aマウスにおいて、約85日目の最初の可視的兆候が発症した時点までに、運動ニューロン数は有意に減退し、死亡時に損失は50%以上に達する。疾病が継続している間のニューロン内で、細胞骨格、神経フィラメント、軸索輸送、ゴルジ、小胞体、ミトコンドリア、アポトーシス機構、プロテアソーム、および細胞質タンパク質の搬送における異常が観察されている。
【0017】
これまでに、このマウスの寿命を引き延ばす治療薬を記載する少なくとも50もの出版物があった。しかしながら、リルゾールを除くどのような治療薬も相当する臨床的有効性を示さなかった。ALS治療開発研究所が、ノイズ変数の変化を制御するG93Aマウスモデルにおける最適化した治療薬スクリーニングについて記述している(Scott Sら, Amyotrophic Lateral Sclerosis 2008;9:4−15、これを引用により本明細書中に包含させる)。Scottらは、固有の交絡生物学的変数によって引き起こされるノイズに対処・対応するG93Aマウスモデルに対する最小研究デザインについて記述している。研究デザインを検証するために、前臨床モデルにおいて以前に効果的であると報告された後にヒトの臨床治験においては効果がなかった9つの化合物について大部分異なる用量で評価した。これらの分子のいくつかは、腫瘍壊死因子シグナル(TNF)およびミクログリアの活性を抑制する抗炎症性分子であって、Celebrex
(登録商標)、ミノサイクリン、サリドマイド、およびクレアチンが挙げられる。Celebrex
(登録商標)は、G93Aモデルにおいて寿命を19%(24日間)改善することが報告されたが、精細な研究によると生存率に関するいずれの変化も検出できなかった(1.8日間、0.52%)(Scottら)。同様の結果が、ミノサイクリン(前回のレポート15.8%改善;精細な研究、−0.60%)、クレアチン(前回のレポート17.8%;精細な研究0.67%)、およびサリドマイド(前回のレポート生存率16%改善;精細な研究1.9%)に対して得られた。
【0018】
IV.候補化合物の同定
実施例1に詳細に記載するように、病状進行中の様々な時点における野生型マウスとG93Aマウスについてゲノム全域にわたる発現プロファイル解析を遂行した。2つの群間で異なった形で発現したと同定された遺伝子を解析し、また得られたデータを用いて、スクリーンされる薬剤を選択する事に焦点をあてた。異なった形で発現した遺伝子は、CD86、CD44、ICAM、ITGAM、ITGAITGAX、ITGB2、H2−K1(MHCII)、H2AB1(MHCII)、H2−D1(MHCII)、およびH2−Eb1(MHCII)などの免疫応答および細胞接着に関与する遺伝子を含む。これらのデータは、病状進行中に炎症性サインが増加し、共刺激経路の関与と一致していることを示す。共刺激経路は、CD28/CD80、CD28/CD86、もしくはCD40/CD40Lの相互作用を経由した細胞型間での相互作用に関わり、そのうちのいくつかを遺伝子発現解析中に同定した。
【0019】
共刺激経路は、その他の相互作用とともに、B細胞上のCD40をT細胞上のCD40L(CD154、gp39、T−BAM、5c8抗原、CD40CRおよびTRAPとしても知られる)に結合することに関わる。ヒトCD40は、成熟B細胞上で発現し、同様にマクロファージ、樹状細胞、線維芽細胞、および活性化した血管内皮細胞上でも発現する。CD40:CD40L結合を遮断することは、I型ヘルパーT細胞の応答発生を促進すると考えられている。
【0020】
これらの相互作用を遮断し、かつ共刺激シグナルを抑制する化合物を使用すると、移植と自己免疫の前臨床モデルにおいて、重要な一連の働きから、1以上のCD40L、CD80、もしくはCD86を遮断する免疫調節効果が実証された。阻止抗体またはアデノウイルスのCD40L−Ig発現によりCD40L機能を遮断することにより、同種移植が30から90日間改善された。CTLA4−IgまたはCTLA4−Igのアデノウイルス発現でもってAPC上のCD80/CD86を遮断する同様の研究により、同種移植の生存率が一時的に改善される。これらのモデルにおける移植片拒絶反応は一時的であり、また移植片拒絶反応は後に続く。移植片拒絶反応の長期間抑制は、CTLA4−Igで共刺激経路を遮断することと、抗CD40L抗体でAPCのCD40L活性化を遮断することの両方により達成することができる。
【0021】
マウスにおいてCD40Lへの抗体を遮断することあるいはCD40Lを遺伝的欠失させることによって、CD40Lが、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、多発性硬化症のモデル、コラーゲン誘発関節炎、および全身性エリテマトーデスの前臨床モデルにおいて、病状の進行、生存率、および疾病の代用マーカーを改善することを実証した。CD40:CD40L結合を遮断すると、マクロファージが、多くのマクロファージの炎症促進活性を媒介する、一酸化窒素を産生する能力を減少させるようである。
【0022】
そのような研究から、CD40:CD40Lの相互作用を遮断する、および/またはCD28:CD80もしくはCD28:CD86の相互作用を遮断すると、免疫応答を調節することができると思われる。
【0023】
免疫組織化学的データ(実施例2)は、遺伝子発現データと十分に相関することが示され、またこれらのデータは、マクロファージをG93Aマウスにおいて疾病進行中に骨格筋に浸潤する抗原提示細胞として同定する。
【0024】
遺伝的発現データによって共刺激分子の経路の関与が示されたので、MRIの有効性をG93Aモデルにおいて評価した。MR1はCD40Lと結合し、それによって免疫応答に関与する共刺激経路に参画するCD40の相互作用を遮断する。MR1は、共に強い免疫学的成分を持つ関節リウマチと移植片対宿主病の治療に対して効果的であることが文献に報告されている。関節リウマチは自己免疫疾患であり、移植片対宿主病は、宿主体が移植片組織に対して活発な免疫応答を示す時に起こる。
【0025】
ALSは、ミクログリアとアストロサイトの活性化によって媒介される免疫成分を持つが、自己免疫障害とは見なされていない。いくつかの抗炎症薬は、TNFα−阻害剤、Celebrex(登録商標)、ミノサイクリン、およびサリドマイドを含む前臨床または臨床試験において効力を示さなかった。従って、G93A ALSモデルにおいて、MR1が効力を示したことは予想外であった。
【0026】
本開示による方法には、神経変性および/または神経筋の障害を有する患者に、CD40LとCD40との相互作用を遮断する化合物、および/またはCD28とCD80との相互作用を遮断する化合物、および/またはCD28とCD86との相互作用を遮断する化合物を投与することによって該患者を治療する方法が含まれる。1つの実施形態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチー、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、ケネディ病、脊髄小脳失調を患う患者にCD40LとCD40との相互作用を遮断する化合物を投与することによって患者を治療する方法である。別の実施形態では、患者を治療する方法は、抗CD40L抗体を投与することによる。
【0027】
本発明の方法に有用な治療上の化合物は、CD40LとCD40との相互作用を遮断する全ての化合物を含む。例えば、多くの動物試験は、CD40:CD40L結合を中断しうる薬剤を記述している(例えば米国特許第2005158314号と米国特許US7173046号を参照、これらを参照により取り込む)。また、例えば、多数の抗CD40L抗体が産生され特徴づけられてきた。(例えば、米国特許第5,876,950号(Bristol−Myers Squibb社)を参照、これを参照により取り込む)。本開示の方法において有用な抗CD40L抗体は、以下に制限されるものでないが、MR1 Taconic(Hudson,NY)とBDバイオサイエンス(San Jose,CA)から入手可能なハムスターモノクローナル抗体;5c8、米国特許第5,474,771号(参照により取り込む)に技術されたヒト化抗体;ハムスター・ヒト・キメラ抗体、IDEC 131/E6040は、マウスのモノクローナル抗体クローン24−31のCDRを持つ、ヒトγ−1重鎖とヒトκ−軽鎖を含むヒト化モノクローナル抗体、Ancellから商業的に入手可能(catalog X353−020,Bayport,Minn.);ABI793;Sgn−40;ImxM90(Immunex);ImxM91(Immunex);ImxM92(Immunex);および抗CD40LmAb、ジェンザイム社から商業的に入手可能(Cambridge,Mass.,catalogNo.80−3703−01)、を含む。さらに、抗CD40LmAbは、PharMingen(SanDiego,Catalog#33580D)から商業的に入手可能である。本開示による実施形態は、神経変性もしくは神経筋の障害を有する患者を治療する方法であり、抗CD40L抗体の治療上有効な量を投与することを含む。1つの実施形態は、神経変性もしくは神経筋の障害を有する患者を治療する方法であり、MR1、5c8、IDEC131/E6040、クローン24−31、ABI793、ImxM90、ImxM91、ImxM92、もしくはSgn−40から選択された治療上有効量の抗CD40L抗体を投与することを含む。1つの実施形態において、抗体が5c8であり、もう1つの実施形態では、抗体がMR1である。
【0028】
いくつかの実施形態では、神経変性もしくは神経筋の障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチー、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調である。1つの実施形態は、筋萎縮性外側硬化症患者を治療する方法であって、治療上有効量の抗CD40L抗体を投与することを含む。1つの実施形態では、抗CD40L抗体がMR1であり、もう1つの実施形態は、抗CD40L抗体が5c8である。
【0029】
別の実施形態では、治療方法は、抗CD40抗体を治療上有効量投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗CD40L化合物は、Fabフラグメント、F(ab’)
2、F(ab’)、単鎖抗体、ポリペプチド、ポリペプチドの融合構造体とそれに類するものである。いくつかの実施形態では、化合物とは、CD40:CD40L相互作用を遮断する能力のある小分子化合物である。その他の実施形態では、これらの化合物は、CD40:CD40L相互作用を遮断する能力を持つ、BIO3417または、米国特許第7,173,046号に開示されているすべての化合物を含む。
【0030】
CD40:CD40Lの相互作用を遮断する化合物を、他の化合物を組み合わせて投与しても良い。従って、別の実施形態は、神経変性もしくは神経筋の障害を有する患者を治療する方法であって、CD40:CD40Lの相互作用を遮断する化合物をCD80:CD28の相互作用を遮断する化合物と組み合わせて投与することを含む方法である。別の実施形態は、CD40LとCD40との相互作用を遮断する化合物を、CD86とCD28との相互作用を遮断する化合物と組み合わせて投与することによって患者を治療する方法である。1つの実施形態では、CD80とCD28との相互作用を遮断する化合物は、ガリキシマブ(galiximab)、H1f1&h3d1、16C10、または7C10である。1つの実施形態では、CD86とCD28との相互作用を遮断する化合物は、アバタセプト(abetacept)もしくはベラタセプト(belatasept)などのCTLA4−Igタンパク複合体である。本開示による実施形態はまた、神経変性もしくは神経筋の障害を有する患者を治療する方法であって、CD40とCD40Lとの相互作用を遮断する化合物を、CD80とCD28との相互作用を遮断する化合物と組み合わせて投与するか、またはCD40LとCD40との相互作用を遮断する化合物を、CD86とCD28との相互作用を遮断する化合物と組み合わせて治療上有効量の投与する方法であって、ここで該神経変性もしくは神経筋の障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチー、原発性側索硬症、脊髄性筋萎縮症、ケネディ病、脊髄小脳失調である、方法を含む。特定の実施形態では、CD40LとCD40との相互作用を遮断する化合物がMR1であり、CD28とCD86またはCD28とCD80との相互作用を遮断する化合物が、アバタセプト、ガリキシマブまたはベラタセプトである。その他の実施形態では、CD40LとCD40との相互作用を遮断する化合物が5c8である。その他の実施形態では、筋萎縮性側索硬化症を患う患者を治療する方法であって、治療上有効量のMR1をアバタセプトもしくはベラタセプトと組み合わせて投与する方法である。その他の実施形態では、筋萎縮性側索硬化症を患う患者を治療する方法であって、治療上有効量の5c8をアバタセプトもしくはベラタセプトと組み合わせて投与する方法である。
【0031】
V.薬理学的組成と投与方法
前述の障害を治療するために、本開示の方法に従って使用する医薬組成物は、1以上の生理学的に許容できるキャリアを用いる通常の様式で処方して良い。薬学的に許容し得るキャリアは、投与される特定の組成物ならびに該組成物を投与するために用いた特定の方法によって部分的に決定される。従って、本開示の方法に有用な化合物の非常に様々な好適な処方がある。(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Gennaro et al.Eds.,Lippincott Williams and Wilkins,2000を参照)
【0032】
経口投与に適した処方は、例えば、錠剤などの固形錠、半固形錠および流体系;マルチまたはナノ微粒子液体粉末、液体または粉末を含有する柔または硬カプセル;トローチ剤(液体充填を含む);咀嚼形(chews);ゲル;急速分散剤形;フィルム類;卵(ovules);噴霧;および、口腔/粘膜付着性パッチを含む。
【0033】
経腸投与に適した処方は、水溶性と非水溶性、等張性無菌注射の溶液を含む。これらの溶液は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、対象受容者の血液と等張の製剤を提供する溶質、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含む水溶性および非水溶性の無菌懸濁液を含んで良い。
【0034】
本開示によると、化合物は、どのような好適な手段でも投与可能であって、治療される障害のタイプおよび化合物そのものの性質に拠り変更できる。例えば、化合物は、経口的に、経腸的に、または局所的に投与して良い。抗体などのタンパク質ついては、好ましい投与経路は、例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、もしくは皮下などの経腸的経路を含む。好ましくは、経腸的投薬は注射により投与されるが、最も好ましくは、静脈内、筋肉内、もしくは皮下注射によって投与する。投与量は、種々の臨床症状、個体の体重、その他の薬剤が投与されたかどうかなどの様々な因子に依存する。適切な剤形、投与量、投与経路の決定は、薬理学および医学の当業者のレベルの範囲内にあり、以下に記述されることを理解されたい。
【0035】
VI.実施例
実施例1
ALSのG93Aマウスモデルの神経変性の分子機構の特性評価
治療法の開発に適した分子経路を識別するために、G93Aマウスモデルでの疾患の進行中において、遺伝子発現パターンの変化を特徴づけた。全ゲノム転写プロファイリングを、アフィメトリックジーンチップ(登録商標)マウス発現セット430vll(Affymetrix GeneChip(登録商標)Mouse Expression set 430vll)MOE430vllのジーンチップを使用して検討した。長期的な研究設計は、非トランスジェニックの同腹子のG93A骨格筋と脊髄を比較して採用した。G93Aマウスモデルにおいて、症状の発現は、開始して75日目で最初に後肢、次に前肢、最後に横隔膜の進行性麻痺とともに尾の麻痺として確認する。G93A動物群体の平均生存期間は134日間である。継続的な研究設計は、生後30、50、60、80、90、100、110および120日(0日は生まれた日)のG93A動物および野生型の複数の同腹子からふくらはぎの筋肉(腓腹筋)や脊髄を収集した。それぞれの時点において、組織を5種の野生型および5種のG93A動物から収集し、合計160の組織について独立して処理した。
【0036】
動物を、上記の適切な時点で、IACUC実験計画書に従って安楽死させた。組織をすぐに採取し、液体窒素中で急速凍結した。凍結した組織を、−80℃で保存した。総RNAは、製造者により説明されている通りのキアゲン社製RNA簡易キット(Qiagen RNaEasy kit)を用いて該組織から同時に単離した。単離された総RNAを、アンビオンメッセージAMPll T7生体内転写キット(Ambion Message AMPllT7 in vitro transcription kit)を用いて、ビオチン化ヌクレオチドを組み込んだ標準的なT7の線形増幅を用いて増幅した。標識プローブを断片化し、製造者の実験計画書に従ってアフィメトリックジーンチップ(登録商標)マウス発現セット430vll(Affymetrix GeneChip(登録商標)Mouse Expression set 430vll)のジーンチップとハイブリダイズした。ジーンチップを、ハイブリダイズしていないプローブを取り除くために、アフィメトリックジーンチップ液ステーション450(Affymetrix GeneChip(登録商標)Station 450)で洗浄した。ジーンチップを、アフィメトリックス ジーンチップ 3000 7Gスキャナーで走査した。
【0037】
全ての計算処理とモデル化を、バイオコンダクタ(Bioconductor)からのR開発言語のバージョン2.6を用いて行った。脊髄および腓腹筋のデータセットを、独立して分析した。アフィメトリックスCEL(Affymetrix CEL)のファイルを、すべてのデータの前処理のために使用した。各データセット内の全てのセルファイルを、バイオコンダクタヴィネットSIMPLE AFFY、AFFYおよびAFFY PLMを用いて品質管理した。G93Aおよび野生型組織間の所定の時点における遺伝子発現の統計的変化を、LIMMAパッケージを用いて評価した。ベイズモデルを、群間の発現変化の有意性を決定するために使用した。
【0038】
野生型およびG93Aの間において示差的に発現していることが発見された遺伝子は、免疫応答および細胞接着に関与する遺伝子、例えばCD86、CD44、ICAM、ITGAM、ITGAITGAX、ITGB2、H2−K1(MHCII)、H2−AB1(MHCII)、H2−D1(MHCII)およびH2−Eb1(MHCII)に関与する遺伝子を含む。生後30、50、60、80、90、100、110および120日における野生型およびG93Aマウス脊髄および腓腹筋からの、これらの遺伝子のlog2正規化された発現プロファイルを
図1に示す。
図1Aおよび
図1Bは、脊髄および腓腹筋のCD89の示差発現をそれぞれ示している。
図1Cおよび
図1Dは、脊髄および腓腹筋のCD44の示差発現をそれぞれ示している。
図1Eおよび
図1Fは、脊髄および腓腹筋のICAMの示差発現をそれぞれ示している。
図1Gおよび
図1Hは、脊髄および腓腹筋のITGAM(CD11b)の示差発現をそれぞれ示している。
図1Iおよび
図1Jは、脊髄および腓腹筋のITGAXの示差発現をそれぞれ示している。
図1Kおよび
図1Lは、脊髄および腓腹筋のITGB2の示差発現をそれぞれ示している。
図1Mは、脊髄のH2−K1(MHCII)の示差発現を示している。
図1Nは、腓腹筋におけるH2−AB1(MHCII)の示差発現を示している。
図1Oは、脊髄のH2−D1(MHCII)の示差発現を示している。
図1Pは、腓腹筋におけるH2−Eb1(MHCII)の示差発現を示している。
【0039】
これらのデータは疾患の進行中に、炎症性痕跡が増加することを示している。これらの遺伝子の発現の変化は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞などの抗原提示細胞の活性化を反映している。相互作用の遮断は、ALSの疾患の進行を悪化させる免疫反応を改善することができる。共刺激経路を、CD−28/CD80、CD−28/CD86またはCD40/CD40Lの相互作用を遮断することによって抑制することができる。
【0040】
実施例2
骨格筋および末梢神経系の抗原提示細胞の特性評価
G93Aおよび野生型動物の腓腹筋における抗原提示細胞の存在および局在性を判断するために、免疫組織化学的検査を、生後110日にてG93Aおよび野生型マウスから採取した腓腹筋の組織に実施した。採取後すぐに、組織をOCT内に埋め込んだ。凍結切片を、H&E染色して、ミエリンに対する抗体(抗S100b抗体)、またはT細胞(抗CD3抗体)、B細胞(CD45RパンB細胞抗体)およびマクロファージ(抗CD11b抗体)を含む造血細胞系統に対する抗体を用いてハイブリダイズした。生後110日において、骨格筋を支配する神経の軸索に局在するCD11b陽性マクロファージおよびマクロファージ出現の浸潤があった。マクロファージの局在は、全体の筋肉に分散されておらず、炎症が筋萎縮や筋線維の再構築によるものではないことを示唆している。
【0041】
生後110日での骨格筋における単球系細胞の特性を確認し、非トランスジェニック動物と比較してこれらの細胞の関連性を明確にするために、追加の免疫組織化学的検査を、マクロファージ系に特異的な抗体パネルを用いて実行した。抗S100b抗体を、骨格筋を支配する軸索を関連付けられるミエリンにラベルを付けるために利用した。すべてのマクロファージの特異的な抗体(抗CD11b抗体、抗CD86抗体、および抗−MAC1抗体)は、野生型の動物の軸索上にはマクロファージが全く存在しない状態で、マクロファージをG93Aマウスの骨格筋を支配する神経の軸索に局在化した。マクロファージの局在化は、マクロファージが筋繊維上に存在しない状態において、筋肉を支配する神経に特異的であった。
【0042】
遺伝子発現データは、共刺激経路に関連する遺伝子が、疾患の進行中に脊髄と骨格筋の両方において一時的に増加しているということを示唆している(
図1)。骨格筋へのマクロファージ浸潤の時期を特徴づけるために、免疫組織化学的検査を、生後60日、80日および100日のG93Aマウスの腓腹筋の部位にて実施した。生後60日の時点では、マクロファージの浸潤と軸索への局在化の形跡は全くなかった。マクロファージは、生後80日で表れ、生後110日の時点での骨格筋について前述したように筋肉を神経支配する軸索に局在化した。マクロファージの数は生後80日と生後100日の間に増加し、マクロファージの蓄積は、骨格筋を神経支配する軸索に対して特異的であった。
【0043】
マクロファージの浸潤の増加を定量するために、5匹のG93Aおよび5匹の野生型動物から代表的な部位を、抗CD86抗体とハイブリダイズさせ、10,000平方ミクロン当たりのマクロファージの数を計測した。野生型動物のマクロファージの数は、生後60日、80日および110日の時点で同じであった。
図2に見られるように、マクロファージは、生後80日から100日の間に骨格筋に一時的に蓄積されており、そして野生型の骨格筋の中には、マクロファージはほとんど存在していない。
【0044】
要約すると、免疫組織化学的データは、遺伝子発現データと非常によく関連し、G93Aマウスモデルの疾患の進行中に骨格筋を浸潤させる抗原提示細胞としてマクロファージを識別する。マクロファージの浸潤が、ミエリンおよびマクロファージに対する抗体により標識化することにより局在された骨格筋を神経支配する軸索を特異的に標的とすることは、予想外の発見である。
【0045】
実施例3
G93A組織におけるMR1の薬物動態分析
マウスのCD40Lに対するMR1の組織レベルを、サンドイッチ法の非競合的な酵素結合免疫吸着法(ELISA)である、一致する行列(matrix matched)を用いて決定した。各プレート上に、7点標準曲線を含んでいた。標準液を、精製されたMR1をPBS希釈溶液に添加したものを使用して調製した。PBS希釈溶液を、未知の試料の等量希釈にて正常マウス組織とマトリクス整合させ、組織溶解物に起因する任意の特異的でない影響を補正した。
【0046】
84の血漿試料を、雌雄G93Aマウスの双方において投与後二週間以内の期間(10mg/kg、IP)にわたって薬物動態学的分析のために採取した。
【0047】
消失半減期は、雌(23日)と雄(22日)で類似しており、またマウスの典型的なマウスのIgG−2に基づく抗体の半減期に類似していた。抗ハムスター抗体反応の兆候は全く見られなかった。
【0048】
雌は、雄よりもMR1の分布はやや小さめの容量を示し、したがって同じ投与量10mg/kgを与えられた場合に高い血漿中濃度を示す。雄は、より早い排除と高い分布容量を示す。したがって、同様の血漿値を達成するためには、雄はより高い容量を必要とする。
図3Aは、直線的な濃度軸(Y)を用いて、継時的なMR1の濃度を示す。
図3Bは、対数的な濃度軸(Y)を用いて、継時的なMR1の濃度を示す。
【0049】
実施例4
MR1が疾患の発症を遅らせ、疾患の進行を遅くし、ALSのG93Aマウスモデルの生存期間を長くする。
36匹の同腹子の雌のG93Aマウスを2群に無作為に分けた。18匹のG93AマウスをMRI−処理群に配置し、他の18匹のG93Aマウスを対照群に配置した。研究日は、誕生からの日数に基づく。
【0050】
生後50日においてMR1(56ug)を一回腹腔内(IP)へ投与した。ボーラス投与に続いて、毎週の定期的な18ugのMR1の注入を、IP注射によって投与した。投与量は、全量が200μlになるように、ビヒクル[生理食塩水リン酸緩衝液(PBS、pH7.3)]で調製した。対照動物は、200μlのPBSを投与された。開始から54日において、動物を研究の過程で毎日観察して、神経学的スコアだけではなく、毎日の体重を測定した。
【0051】
両後肢の神経学的スコアを、それぞれのマウスについて生後50日から毎日評価した。神経学的スコアは、0から4の尺度を採用した。(Scottら、ALS Journal2008年1月)。簡潔に言うと、マウスが尻尾で吊り下げられ、かつマウスが2秒にわたってこれを保持することができ、2〜3回吊り下げられた場合、スコアが0の動物は側正中線から離れた後肢の完全な伸展機能を有していた。スコア1の動物は、側正中線に向かっての足の伸展の衰弱もしくは部分的な衰弱(弱り)を示すか、もしくは尾によって吊り下げられた場合の後肢の震えを示した。スコア2の動物は、12インチの歩行中に少なくとも2回つま先が丸まるか、もしくは脚の任意の一部をケージ底部/テーブルにそって引きずった。スコア3の動物は、硬質麻痺もしくは最小限の関節の動きのみ有するか、もしくは脚を前進するのに使用できない。スコア4の動物は、どちらの側からでも自分自身では30秒以内にまっすぐ立てない。もし一方の後肢がスコア2であれば、餌は床の上に置いておく。もし両方の後肢がスコア2であれば、ニュートラ・ゲル(Nutra−Gel)(登録商標)(バイオサーブ#S4798)を床上に食餌ペレットに加えて食物として供給し、長い給水管を水瓶上に設置する。
【0052】
死亡した日と原因を、それぞれのマウスについて記録した。人道的な理由から、動物を接近して観察し、厳密な瀕死の基準を用いて実際の死より前に瀕死として屠殺した。確実かつ人道的に生存期間を決定するために、瀕死状態、すなわち片側に置かれた後に30秒間マウスが自分でまっすぐ立つ事が出来ない(神経学的スコア4)として規定された瀕死状態を用いた。瀕死のマウスを「死亡」としてスコアし、二酸化炭素を用いて安楽死させた。
【0053】
標準的な手順は、薬投与群と対照群の両方において統計分析の前に、ALSとは関係ない死を排除することである。この場合、薬投与群もしくは対照群の全ての動物の死は、ALSに起因していた。したがって、ALSに関係しない死が原因で排除された動物はいなかった。
【0054】
変異型SOD1遺伝子導入動物は、新生児としての正常体重(BW)の特徴を示し、そして大人になって非遺伝子導入動物と比較して、通常通り体重を増す。導入遺伝子の遺伝的変異の性質および変異遺伝子のコピー数に応じて、体重の減少は成体動物になって表れ、死ぬまで続く。薬投与群および対照群における体重の減少の分析は、疾患の発症や進行速度への推定される治療効果の洞察を提供することができる。MR1の治療による体重への影響を評価するために、二つの集約パラメータを考察した;(1)研究開始からピーク体重を迎えるまでの体重の変化。これは疾患発症への影響を反映し得る。(2)ピーク体重から死亡までの体重の変化。これは疾患の進行への影響を反映し得る。
【0055】
生後40日からピーク体重に達するまでの期間についての、MR1治療群および対照群の時間−事象曲線の比較を
図4に示す。対照群についてのピーク体重に達するまでの時間の平均値は生後50日であり、一方MR1治療群と比較するとMR1治療群のそれは生後51日であった。その差は、ログランクとWilcoxon統計モデルを使用するカプラン・メイヤー法、Cox比例ハザード、またはパラメトリック統計的検定により分析したところ、有意ではなかった。
【0056】
ピーク体重に達してから死亡するまでの期間についての、MR1治療群および対照群の時間−事象曲線の比較を
図5に示す。ピーク体重から死亡するまでの時間は、MR1治療動物において統計学的に有意に15日遅い。対照動物は、ピーク体重に達してからMR1治療動物よりも早く死ぬという、2.4から4.7倍の大きな危険性を有する。対照群のピーク体重から死亡するまでの平均時間は26日であるが、一方でMR1治療群においては41日であった。この実施例においてそれぞれの分析の有意性は、より良く有意性を評価するために、幾つかの方法で計算された。遅延は、幾つかの方法を用いて分析を行ったところ、統計的に有意である(カプラン・メイヤー、ログランク p=0.0110およびWilcoxon、p=0.0069;Cox比例ハザードモデル、p=0.05151;パラメトリック統計モデル、p=0.0122)。体重データに基づいて、MR1はG93Aマウスモデルにおいて疾患の発症への影響はそれ程ではないが、ピーク体重から死に至るまでの体重の減少率を遅くする劇的な効果を有するようである。
【0057】
また、疾患の発症時期を、食塩水投与群およびMR1治療群の毎日の神経学的スコアの分析によっても特徴付けた。調査開始時(50日)では、全ての動物は、神経学的スコアは0であり、いかなる症状も麻痺も観察されなかった。疾患の発症は、動物が明らかに後肢をひきずっている場合、神経学的スコア0から神経学的スコア2への神経学的スコアの進行を試験することにより特徴付けられる。MR1投与および対照群の動物が神経学的スコア2に進行した際の年齢および神経学的スコアが2である日数の時間−事象グラフを、
図6に示す。各群の神経学的スコアが2である平均時間を、
図7にプロットした。対照群のスコア2に至る時間は115日であり、MR1治療群は122日であった。神経学的スコアデータに基づいて、MR1はG93Aマウスにおける疾患の発症を約7日間遅らせており、幾つかの方法(カプラン・メイヤー、ログランク(p=0.0378)およびWilcoxon(p=0.0591);Cox比例ハザードモデル(p=0.0521)およびパラメトリック分析(p=0.0582)を用いて分析したところ、この遅延は充分に有意である。各スコアレベルにおける経過日数を、
図7において、そのスコアレベルでの平均年齢に対してプロットする。
【0058】
治療された動物の生存時間は、対照動物よりも13日長かった。MR1治療群および対照群を比較して、ピーク体重から死に至るまでの時間についての時間−事象曲線を
図8に示した。対照群の平均生存時間は128日で、MR1治療群の平均生存時間は141日であった。対照動物は、MR1治療動物よりも2.8から3.2倍の早く死ぬ危険性を有していた。その遅延は、幾つかの方法で分析したところ、統計的に有意であった[カプラン・メイヤー、ログランク(p=0.0040)およびWilcoxonテスト(p=0.0109);Cox比例ハザードモデル(p=0.0060);パラメトリック分析(p=0.0049)]。
【0059】
実施例5
最適化された投与およびメタ分析は、MR1処置が疾患の発症を遅らせて、SOD1G93マウスの生存率を改善するということを証明する。
同腹子の60匹の雌および36匹の雄のG93Aマウスを無作為的に治療群および対照群に分けた。雌のうちの30匹および雄のうちの18匹のマウスを生後50日からMR1を用いて治療した。試験日は、出生した日に基づく。
【0060】
生後50日において、雌または雄のそれぞれに、5.22mg/kgもしくは6.75mg/kgのMR1を、単回のボーラス投与を腹腔内で行った。ボーラス投与に引き続いて、雌には毎週1mg/kgのMR1の注射をIP注射にて、雄には毎週1.34mg/kgの注射をIP注射にて投与した。投与量は、全量が200μlとなるように、ビヒクル内[生理食塩水リン酸緩衝(PBS、pH7.3)]で調製した。対照群には200μlのPBSを投与した。体重、神経学的スコア、ALSに起因しない死、および前述のように安楽死についての基準について、動物を観察した。
【0061】
MR1治療群および対照群の生後40日からピーク体重に至るまでの、時間−事象曲線の比較を、
図9Aに示した。対照群のピーク体重に至るまでの平均時間は49日であり、それに対して、MR1治療群のピーク体重へ至るまでの時間は53日であった。この差は、ログランク、Wilcoxon統計モデルを用いるカプラン・メイヤー法、Cox比例ハザード、またはパラメトリック統計テストにより分析したところ、有意ではなかった。
【0062】
MR1治療群および対照群のピーク体重から死に至るまでの、時間−事象曲線の比較を、
図9Bに示した。ピーク体重から死に至るまでの時間は、MR1投与の動物において統計的に有意に6日遅かった。対照群におけるピーク体重から死にいたるまでの平均時間は29日であり、一方MR1治療群のそれは35日であった。この実施例における各々の分析の有意性を、有意性をよりよく評価するために、幾つかの手法を用いて計算した。その遅延は、幾つかの統計学的モデルを用いて分析したところ、統計学的に有意であった;カプラン・メイヤー、ログランク(p=0.0413)およびWilcoxon(p=0.0732);およびCox比例ハザードモデル(p=0.0460)。体重のデータに基づいて、MR1は、G93Aマウスモデルの疾患の発症への影響はほとんど無いように考えられるが、ピーク体重から死に至るまでの体重の減少の遅延率に劇的な影響があった。
【0063】
MR1および対照群の動物の神経学的スコアが2に進行した時点の年齢および神経学スコアが2である日数の年齢についての時間−事象プロットを
図9Cに示した。対照群において、スコアが2に達するまでの時間は113日であり、MR1治療群は121日であった。神経学的スコアデータに基づくと、MR1はG93Aマウスにおける疾患の発症を約8日間遅らせており、この遅延は、幾つかの統計学的モデルを用いて分析してみると統計学的に有意である:カプラン・メイヤー、ログランク(p=0.0038)およびWilcoxon(p=0.0017);およびCox比例ハザードモデル(p=0.0010)。
【0064】
治療済動物の生存時間は、対照動物よりも9日間長かった。
図9Dに示したとおり、対照群の平均生存時間は124日であり、MR1治療群の平均生存時間は133であった。この遅延は、幾つかの統計学的モデルを使用して分析したところ、統計学的に有意であった:カプラン・メイヤー、ログランク(p=0.0043)およびWilcoxonテスト(p=0.0040);およびCox比例ハザードモデル(p=0.0030)。
【0065】
本出願に記載される実施例および実施形態は、単に例解の目的のためにのみ存在するものであって、それを考慮した範囲内の様々な改変もしくは変更が当業者に提案され、かつ本出願の趣旨と範囲および添付の請求項の範囲内に包含されるべきであることが理解されよう。
筋萎縮性側索硬化症の患者を治療するための、抗CD40L抗体または抗CD40L抗体の抗体フラグメントである、CD40とCD40Lとの相互作用を遮断する化合物を含む、医薬組成物。
組成物が、CD28およびCD86の間またはCD28およびCD80の間の相互作用を遮断する化合物であるCTLA4−Ig融合タンパク質と組み合わせて投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
組成物が、CD28およびCD86の間またはCD28およびCD80の間の相互作用を遮断する化合物であるアバタセプト、ベラタセプトまたはグリキシマブと組み合わせて投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。