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特開2015-158102合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-158102(P2015-158102A)
(43)【公開日】2015年9月3日
(54)【発明の名称】合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/10 20060101AFI20150807BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20150807BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20150807BHJP
   E04F 11/17 20060101ALI20150807BHJP
   E04F 15/08 20060101ALI20150807BHJP
【FI】
   E04F15/10 104B
   E04F15/16 C
   E04F15/18 A
   E04F11/16 501A
   E04F15/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-33740(P2014-33740)
(22)【出願日】2014年2月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)試験日 平成26年2月20日〜24日、試験場所 東京都世田谷区三宿2丁目13−21 三宿サンハイツ
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 伸武
(72)【発明者】
【氏名】松本 覚
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA07
2E220AA08
2E220AA09
2E220AA26
2E220BA01
2E220BA19
2E220DA02
2E220EA04
2E220GA04Z
2E220GA28Z
2E220GB32X
(57)【要約】
【課題】コンクリート製もしくはモルタル製の床と該床を被覆する合成樹脂製被覆材との間に、該床から放出される水蒸気や水が溜まらないように外部に排出して、合成樹脂製被覆材に膨れが生じないようにした床被覆構造を提供する。
【解決手段】コンクリート製もしくはモルタル製の床2aを合成樹脂製被覆材30で被覆した床被覆構造であって、床2aと合成樹脂製被覆材30との間に通気通水層4が設けられており、合成樹脂製被覆材30の周囲はシーリング材9で封止されており、この周囲の一部が非封止とされて、通気通水層4と連通する下向きの排出口10が形成されている床被覆構造とする。床2aから放出される水蒸気や水が通気通水層4に侵入してその内部を移動し、下向きの排出口10から確実に外部に排出されるので、合成樹脂被覆材30に膨れが生じない。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製もしくはモルタル製の床を合成樹脂製被覆材で被覆した床被覆構造であって、
上記床と上記合成樹脂製被覆材との間に通気通水層が設けられており、上記合成樹脂製被覆材の周囲は封止されており、この周囲の一部に上記通気通水層と連通する下向きの排出口が形成されていることを特徴とする、合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造。
【請求項2】
前記下向きの排出口が、前記合成樹脂製被覆材の周囲の一部を未封止とすることによって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造。
【請求項3】
前記下向きの排出口と前記通気通水層を連通する連通路が、前記床の段差部に沿って略鉛直下向きに形成されており、この連通路下端の前記排出口が前記床の段差部の下段側に臨んでいることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造。
【請求項4】
前記床が複数の段差部を有する階段部分の床であって、この階段部分の床の段鼻部に沿って前記連通路が略鉛直下向きに形成されており、その下端の前記排出口が下段側の踏み面部に臨んでいることを特徴とする、請求項3に記載の合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅、ビルなどにおけるコンクリート製の床や、モルタル充填式の階段、踊り場などの床を、合成樹脂製被覆材で被覆した床被覆構造に関し、更に詳しくは、合成樹脂製被覆材に膨れが生じないように改良した床被覆構造に関する。
ここで、モルタル充填式の床とは、上面が開放された金属製の筐体にモルタルを充填してなる床部材を組んで形成した床(以下、モルタル製の床と記す)をいう。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の床やモルタル製の床には雨水や地下水などが浸透しやすく、浸透した水は床面から水蒸気として放出されるため、非通気性の合成樹脂製被覆材で床を被覆すると、合成樹脂製被覆材と床面との間に水蒸気が溜まって、合成樹脂製被覆材に膨れが生じるという問題がある。
【0003】
このような合成樹脂製被覆材の膨れを防止する技術として、例えば、シート防水工法において、コンクリート下地に接着剤を介さずに合成樹脂製の防水シートを張設し、コンクリート下地の立上り部に沿って立ち上がる防水シートの立上り部に脱気口を開口して、この脱気口を微細な通気孔が多数設けられた脱気用シート片で覆うと共に、複数の通気穴部を有する押え板で脱気用シート片を固定し、その上から脱気シートで被覆することによって、コンクリート下地から放出される水蒸気その他の揮発成分を脱気して防水シートに膨れが生じるのを防止する工法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−212750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の工法は、コンクリート下地から揮発する水蒸気その他の揮発成分が、防水シートの立上りの脱気口から外部へ放出されるので、揮発成分がコンクリート下地と防水シートの間に溜まって防水シートに膨れが生じるのを防止することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の工法のように、防水シートの立上り部に脱気口が形成されていると、例えばコンクリート下地の表面から滲出する水や、温度低下により水蒸気から液化した水が、脱気口から排出されないでコンクリート下地と防水シートの間に溜まるため、それによって防水シートに膨れが生じるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1の工法のように、防水シートの立上り部に脱気口が形成されていると、脱気口から雨水などが侵入する虞れがあるため、脱気口を微細な通気孔が多数設けられた脱気用シート片で覆うと共に、複数の通気穴部を有する押え板で脱気用シート片を固定し、その上から脱気シートで被覆して、水の侵入を防止することが必要になり、この脱気口の防水用の被覆処理が面倒で種々の被覆部品を使用しなければならないという問題もあった。
【0008】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、その解決しようとする課題は、コンクリート製もしくはモルタル製の床を合成樹脂製被覆材で被覆した床被覆構造であって、床面から放出される水蒸気や水が合成樹脂製被覆材と床面との間に溜まらないように外部に排出して合成樹脂製被覆材に膨れが生じるのを防止することができ、しかも、排出口に面倒な防水用の被覆処理を施す必要が全くない施工性に優れた床被覆構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る床被覆構造は、コンクリート製もしくはモルタル製の床を合成樹脂製被覆材で被覆した床被覆構造であって、上記床と上記合成樹脂製被覆材との間に通気通水層が設けられており、上記合成樹脂製被覆材の周囲は封止されており、この周囲の一部に上記通気通水層と連通する下向きの排出口が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の床被覆構造にあっては、前記下向きの排出口が、前記合成樹脂製被覆材の周囲の一部を未封止とすることによって形成されていることが望ましい。
そして、前記下向きの排出口と前記通気通水層を連通する連通路が、前記床の段差部に沿って略鉛直下向きに形成されており、この連通路下端の前記排出口が前記床の段差部の下段側に臨んでいることが望ましい。
また、前記床が複数の段差部を有する階段部分の床であって、この階段部分の床の段鼻部に沿って前記連通路が略鉛直下向きに形成されており、その下端の前記排出口が下段側の踏み面部に臨んでいることも望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の床被覆構造によれば、コンクリート製もしくはモルタル製の床の表面から放出される水蒸気や水が通気通水層に侵入して通気通水層の内部を移動し、この通気通水層と連通する下向きの排出口から排出される。排出口が上向きであれば水が排出されない可能性があるが、本発明の床被覆構造における排出口は下向きであるため、水蒸気は勿論、水であっても確実に排出することができる。従って、床と合成樹脂製被覆材との間に水蒸気や水が溜まらないので、水蒸気や水の圧力で合成樹脂製被覆材に膨れが生じるのを防止することができる。なお、合成樹脂製被覆材の周囲は、排出口が形成された部分を除いて封止されているので、水蒸気や水が合成樹脂製被覆材の周囲から漏れ出すことはない。
また、本発明の床被覆構造のように下向きの排出口が形成されていると、この下向きの排出口から雨水などが床と合成樹脂製被覆材との間に侵入するのを確実に防止できるので、排出口に防水用の面倒な被覆処理を施すことが不要となり、施工性が向上する。
【0012】
特に、下向きの排出口が合成樹脂製被覆材の周囲の一部を未封止とすることによって形成されたものであると、排出口の形成作業が極めて簡単であり、特別な排出口形成用の部材を取付ける必要もないので、施工性が向上し、経済的にも有利である。
【0013】
また、本発明の床被覆構造において、下向きの排出口と通気通水層を連通する連通路が床の段差部に沿って略鉛直下向きに形成され、この連通路下端の排出口が床の段差部の下段側に臨んでいるものは、略鉛直下向きの連通路及び下向きの排出口を、床の段差部を利用して容易に形成できるので、施工性に優れる。
【0014】
同様に、床が複数の段差部を有する階段部分の床であって、この階段部分の床の段鼻部に沿って連通路が略鉛直下向きに形成され、その下端の排出口が下段側の踏み面部に臨んでいるものも、略鉛直下向きの連通路及び下向きの排出口を、階段部分の床の段鼻部を利用して容易に形成できるので、施工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造を示す平面図である。
図2】同床被覆構造の正面図である。
図3図1のA−A線に沿った切断端面図である。
図4図2のB−B線に沿った部分拡大断面図である。
図5図2のC−C線に沿った部分拡大断面図である。
図6】床の段差部に沿って略鉛直下向きの連通路と下向きの排出口が形成された部分を拡大して示す部分斜視図である。
図7】同床被覆構造に用いる略L形に屈曲した第二の合成樹脂製被覆材を裏返して示す斜視図であって、(a)は前垂れ部の裏面の粘着テープの両端部を切除する前の状態を、(b)は粘着テープの両端部を切除した後の状態を、(c)は屈曲部の裏側に充填剤を粘着テープと略同じ長さに付着した状態を、それぞれ示している。
図8】本発明の他の実施形態に係る合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造を示す平面図である。
図9図8のD−D線に沿った部分拡大断面図である。
図10図8のE−E線に沿った部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造を示す平面図、図2は同床被覆構造の正面図、図3図1のA−A線に沿った切断端面図、図4図2のB−B線に沿った部分拡大断面図、図5図2のC−C線に沿った部分拡大断面図、図6は床の段差部に沿って略鉛直下向きの連通路と下向きの排出口が形成された部分を拡大して示す部分斜視図、図7(a)(b)(c)は同床被覆構造に用いる略L形に屈曲した第二の合成樹脂製被覆材を裏返して示す斜視図であって、この図1図7に示す実施形態の床被覆構造は、集合住宅やビルなどの階段2の途中に設けられる踊り場1のコンクリート製の床1aを、接合一体化した第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30で被覆したものである。
【0018】
図3図5に示すように、この踊り場1のコンクリート製の床1aの表面(上面)には、床1aの周縁部を除いて、通気通水層4が床用接着剤5(図4図5を参照)で接着されており、この通気通水層4の上面には、接合一体化された第一及び第二の合成樹脂被覆材3,30が床用接着剤5で接着されている。この床用接着剤5は、櫛目ゴテを用いて、図4図5に示すような多数の接着剤の凸条5aが相互間隔をあけて形成されるように塗布し、床1aの表面から放出される水蒸気や水が接着剤の凸条5aの相互間から通気通水層4に浸透し易くすることが望ましい。
【0019】
図1に示すように、踊り場1の床1aの大部分は平坦な第一の合成樹脂製被覆材3で被覆されており、この被覆材3の下側の階段2に臨む角部は横長の長方形に切除されている。そして、この切除された角部には第二の合成樹脂製被覆材30が補填され、樹脂溶接部6で第一の合成樹脂製被覆材3と気密的ないし水密的に接合されて一体化されている。
【0020】
この第二の合成樹脂製被覆材30は、図3に示すように、前端部を下方に略90°屈曲させて前垂れ部30aを形成した略L形の断面形状を有する階段被覆シートであって、図7(a)に裏返して示すように、前垂れ部30aの裏面には両面粘着テープ7が貼着されている。この両面粘着テープ7の両端部は、第二の合成樹脂製被覆材30を用いて床1aの一部を被覆する前の段階で、図7(b)に示すように両端から5cm程度切除され、更に、図7(c)に示すように、充填材8がこの被覆材30の屈曲部の裏側に両端から5cm程度控えて付着、充填される。
【0021】
図1図4に示すように、踊り場1の床1aの上面の一部(下側の階段2に臨む部分)は通気通水層4を介して第二の合成樹脂製被覆材30の水平部30bで被覆されており、この水平部30bは床用接着剤5で通気通水層4に接着されている。そして、この床1aの下側の階段2に連なる段差部1bの上部(段鼻部)は、第二の合成樹脂製被覆材30の前垂れ部30aで被覆され、この前垂れ部30aは両面粘着テープ7を切除した両端部を除いて両面粘着テープ7で段差部1bの上部に貼着されている。また、第二の合成樹脂製被覆材30の屈曲部(屈曲部の両端部を除く)と床1bのコーナー部との間隙部には前記の充填材8が充填され、該被覆材30の屈曲部が階段昇降時の踏圧によって変形、破損しないように裏側から支持、補強されている。
【0022】
樹脂溶接部6で接合一体化された第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30の周囲は、図1図3に示すように、第二の合成樹脂製被覆材30の前垂れ部30aの下端面の両端部(両端から約5cm程度の部分)を除いて、シーリング材9で封止されており、これによって図2図5図6に示すように、前垂れ部30aの下端面の未封止の両端部に約5cm幅の下向きの隙間状の排出口10,10が形成されている。そして、この前垂れ部30aの両端部の裏面は、前記のように両面粘着テープ7が両端から約5cm程度切除され、かつ、該被覆材30の屈曲部の両端部の裏側も、前記のように充填材8が両端から約5cm程度充填されていないため、この前垂れ部30aの両端部の裏側には、図2図5図6に示すように、排出口10と通気通水層4とを連通する約5cm幅の連通路11,11が床1aの段差部1bに沿って略鉛直下向きに形成されている。
【0023】
上記のような床被覆構造では、コンクリート製の踊り場1の床1aを浸透して該床1aの表面から放出される水蒸気や水が、通気通水層4に侵入してその内部を移動し、略鉛直下向きの連通路11,11を通って下向きの排出口10,10から排出される。その場合、排出口10,10や連通路11,11が上向きであれば、水が排出されない虞れもあるが、上記の床被覆構造における排出口10,10は下向きであり、連通路11,11も略鉛直下向きであるため、水蒸気は勿論、水であっても確実に流下して排出することができる。従って、接合一体化された第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30と床1aとの間に水蒸気や水が溜まらないので、水蒸気や水の圧力で合成樹脂製被覆材3,30に膨れが生じるのを防止することができる。尚、接合一体化された第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30の周囲は、排出口10,10が形成された部分を除いてシーリング材9で封止されているので、水蒸気や水が合成樹脂製被覆材3,30の周囲から漏れ出すことはない。
【0024】
また、上記の床被覆構造のように、第二の合成樹脂製被覆材30の前垂れ部30aの両端部の下端面を未封止とすることによって下向きの排出口10,10を形成すると共に、両面粘着テープ7の両端部と充填材8の両端部を除去することによって、前垂れ部30aの両端部の裏側に略鉛直下向きの連通路11,11を床1aの段差部1bに沿って形成したものは、排出口10,10の形成作業や連通路11,11の形成作業が極めて簡単であり、特別な排出口形成用の部材や連通路形成用の部材を取り付けなくてもよいので、施工性が良く、経済的にも有利である。しかも、雨水などが下向きの排出口10,10から連通路11,11を上昇して床1aと合成樹脂製被覆材3,30との間の通気通水層4に逆流する虞れがないため、排出口10,10に防水用の面倒な被覆処理などを施すことも不要になる。
【0025】
前記の床被覆構造において、床1aと第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30との間に設けられる通気通水層4としては、その厚み内部で水蒸気や水を平面的に移動させることができる合成樹脂繊維の不織布、連続発泡樹脂シート、合成樹脂ネットなどがいずれも使用可能であるが、その中でも、比較的安価で取扱性に優れた合成樹脂繊維の不織布が好ましく使用される。特に、実測厚みが0.5〜3mmで、実測目付け量が200〜300g/mであるポリエステル樹脂繊維の不織布やポリプロピレン樹脂繊維の不織布は、通気通水性に優れ、ウレタン樹脂系一成分型あるいはエポキシ樹脂系二成分型の床用接着剤による接着性が良好であり、貼着可能な時間が長く取扱性(施工性)が良いので、極めて好ましく使用される。
【0026】
この通気通水層4は、上記の床被覆構造のように、床用接着剤5で床1bの上面に貼着することが望ましいが、必ずしも床用接着剤5で貼着する必要はない。床用接着剤5で床1aに貼着する場合は、上記の床被覆構造のように、櫛目ゴテを用いて多数の接着剤の凸条5aが相互間隔をあけて形成されるように床用接着剤を塗布するか、或いは、接着剤の未塗布領域が分散して形成されるように床用接着剤を部分的に塗布することによって、床1bから放出される水蒸気や水が凸条5aの相互間や未塗布領域を通って通気通水層4に侵入できるようにする必要がある。
なお、床用接着剤5としては、上記のウレタン樹脂系一成分型やエポキシ樹脂系二成分型の耐水性床用接着剤が好ましく使用され、その他、アクリル系、変性シリコーン系、ゴム系などの床用接着剤も使用される。
【0027】
前記の床被覆構造において踊り場1の床1aを被覆する第一及び第二の合成樹脂製被覆材3は、いずれも軟質もしくは半硬質の塩化ビニル樹脂やオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる単層又は複層構造の被覆材であって、第一の合成樹脂製被覆材3は、長尺の平坦な床被覆シートが使用されており、第二の合成樹脂製被覆材30は、前述のように前端部を下方に略90°屈曲させて前垂れ部30aを形成した略L形の断面形状を有する階段被覆シートが使用されている。これらの合成樹脂製被覆材3,30は、一体に接合した樹脂溶接部6で段差が生じないように略同じ厚さのものを使用することが好ましく、また、歩行者が転倒する危険性を少なくするために上面に防滑用の突起(不図示)を多数形成したものを使用することが好ましい。特に、第二の合成樹脂製被覆材30は、その水平部30bの前端寄りの上面及び/又は前垂れ部30aの前面に帯状の蓄光領域(不図示)を該被覆材30の屈曲部と平行に設けることによって、暗闇のなかでも該被覆材30の屈曲部を認識して足を踏み外したり躓いたりすることなく安全に踊り場1を昇降できるようにしたものや、屈曲部が早期に磨滅、破損することのないように屈曲部の肉厚を厚くしたものなどを使用することが好ましい。
【0028】
前記の床被覆構造では、樹脂溶接部6で接合一体化した第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30で踊り場1の床1aを被覆しているが、第一及び第二の合成樹脂被覆材3,30を気密的に溶剤溶接して接合一体化したもので床1aを被覆してもよい。
また、第二の合成樹脂製被覆材30を使用しないで、第一の合成樹脂製被覆材3(平坦な長尺の床被覆シート)のみを使用し、この第一の合成樹脂製被覆材3に突出部分(下側の階段2の方に突出する部分)を形成して、該突出部分を下方に折り曲げることにより、床1aの下側の階段2に連なる段差部1bの上部(段鼻部)を被覆するようにしてもよい。
【0029】
第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30は、必ずしも床用接着剤5で通気通水層4に接着する必要はないが、前記の床被覆構造のように、剥離防止のために床用接着剤5で通気通水層4に接着することが好ましい。合成樹脂製被覆材3,30を通気通水層4に接着する床用接着剤5は、通気通水層4を床1aに接着する前記の床用接着剤5と同じものが使用されるが、合成樹脂製被覆材3,30を接着する床用接着剤5は、必ずしも櫛目ゴテを用いて接着剤の凸条5aが間隔をあけて形成されるように通気通水層4の上面に塗布する必要がなく、所謂、ベタ塗りにしてもよい。
【0030】
第二の合成樹脂製被覆材30の前垂れ部30aの裏面に貼着される両面粘着テープ7としては、例えばポリエチレンフォームなどの合成樹脂製帯状発泡体(厚み1.0〜5.5mm程度、幅寸法10〜25mm程度のもの)を基材として、その両面にアクリル系粘着剤などの粘着剤を塗布したものが好ましく使用され、また、第二の合成樹脂製被覆材30の屈曲部の裏側に充填される充填材としては、例えばウレタン樹脂系の充填用接着剤などが好ましく使用される。
【0031】
更に、接合一体化された第一及び第二の合成樹脂製被覆材3,30の周囲を封止するシーリング材9としては、ウレタン系、エポキシ系、変性シリコーン系、シリコン系、ポリサルファイド系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系などのシーリング材が使用され、これらの中でも、ウレタン系のシーリング材は、第二の合成樹脂製被覆材30の前垂れ部30aの下端面に打設した直後に垂れ難く、汎用的であり、扱い易いという観点から、特に好ましく使用される。このシーリング材9は、図3図6に示すような三角シール、即ち、断面形状が直角三角形となるようにシーリング材を打設する三角シールによって、合成樹脂製飛躍材3,30の周囲を封止することが好ましい。
【0032】
前記の床被覆構造では、第二の合成樹脂製被覆材30の前垂れ部30aの両端部の裏側下端に下向きの排出口10,10を形成すると共に、前垂れ部30aの両端部の裏側に、排出口10,10と通気通水層4を連通する略鉛直下向きの連通路11,11を床1aの段差部1bの上部(段鼻部)に沿って形成しているが、このような排出口10や連通路11は、前垂れ部30aの両端部を除く中間部分の裏側に形成してもよい。しかしながら、前記のように前垂れ部30aの下端面の一部をシーリング材9で封止しないで排出口10を形成し、且つ、前垂れ部30aの裏面の両面粘着テープ7や屈曲部の裏側の充填材8を一部除去して連通路11を形成する場合は、前垂れ部30a乃至屈曲部における排出口及び連通路の形成部分が強度低下をきたすので、排出口10と連通路11を前垂れ部30aの歩行頻度が高い中間部分の下端と裏側に形成するとすれば、前垂れ部30aの中間部分が破壊される虞れが大きくなる。これに対し、前記の床被覆構造のように、前垂れ部30aの歩行頻度が極端に少ない両端部の下端と裏側に排出口10,10と連通路11,11を形成すると、前垂れ部30aの両端部が破壊される虞れが激減するので、極めて好ましい。
【0033】
また、前記の床被覆構造では、約5cmの横幅を有する排出口10と連通路11を形成しているが、排出口10と連通路11の横幅はこれより狭くても広くてもよい。適当な横幅の範囲は2.5〜7.5cmであり、この範囲の横幅を有する排出口10と連通路11を形成すれば、排出口及び連通路の形成部分の強度低下を少なく抑えて、水蒸気や水分を外部へ確実に放出することができる。
なお、連通路11は、前垂れ部30aの裏面の両面粘着テープ7の両端部を切除しないで、両面粘着テープ7の両端部の剥離紙を残し、両面粘着テープ7の両端部が床1aの段差部1bの上部に粘着しないようにして、両端部の剥離紙と床1aの段差部1bとの間に間隙を生じさせることによって形成してもよい。
【0034】
前記の床被覆構造は、コンクリート製の踊り場の床1aを通気通水層4を介して合成樹脂製被覆材3,30で被覆したものであるが、モルタル製の床1aを被覆する場合も、前記と同様の床被覆構造とすればよい。
【0035】
図8は本発明の他の実施形態に係る合成樹脂製被覆材を用いた床被覆構造を示す平面図、図9図8のD−D線に沿った部分拡大断面図、図10図8のE−E線に沿った部分拡大断面図であって、この図8図10に示す実施形態の床被覆構造は、複数の段差部を有する階段2の床2aを前述した第二の合成樹脂製被覆材30(階段被覆シート)で被覆したものである。
【0036】
図9図10に示すように、この階段2のコンクリート製の床2aの各段の上面(踏み面)には、その周縁部を除いて通気通水層4が床用接着剤(不図示)で接着されており、この通気通水層4の上面には、前述した第二の合成樹脂被覆材30が床用接着剤(不図示)で接着されている。
この通気通水層4と床用接着剤は、前記の床被覆構造に用いたものと同じものであり、床用接着剤の塗布形態も前記と同様の塗布形態であるので、これらの説明は省略する。
【0037】
また、第二の合成樹脂製被覆材30も、前記の床被覆構造に用いたものと同じ前垂れ部30aを有する略L形の断面形状を備えた階段被覆シートであって、前垂れ部30aの両端部の裏側に約5cm幅の連通路11,11が形成されるように、図7(c)に示すごとく、前垂れ部30aの裏面に貼着された両面粘着テープ7の両端部が5cm程度切除され、屈曲部の裏側の充填材8も両端から5cm程度控えて付着、充填されている。
この両面粘着テープ7や充填材8も、前記の床被覆構造に用いたものと同じものであるから、説明を省略する。
【0038】
図8図10に示すように、階段2の床2aの各段の上面(踏み面)は、通気通水層4を介して第二の合成樹脂製被覆材30の水平部30bで被覆され、各段の下段側の段差部2bの上部(段鼻部)は、第二の合成樹脂製被覆材30の前垂れ部30aで被覆されている。そして、この前垂れ部30aは両面粘着テープ7を切除した両端部を除いて両面粘着テープ7で段差部2bの上部に貼着されている。また、第二の合成樹脂製被覆材30の屈曲部(屈曲部の両端部を除く)と床2bの各段のコーナー部との間隙部には前記の充填材8が充填され、該被覆材30の屈曲部が階段昇降時の踏圧によって変形、破損しないように裏側から支持、補強されている。
【0039】
この第二の合成樹脂製被覆材30の周囲は、図8図10に示すように、前垂れ部30aの下端面の両端部(両端から約5cm程度の部分)を除いて、シーリング材9で三角シールされて封止されており、これによって前垂れ部30aの下端面の未封止の両端部に約5cm幅の下向きの隙間状の排出口10,10が形成されている。そして、この前垂れ部30aの両端部の裏側には、排出口10と通気通水層4とを連通する約5cm幅の連通路11,11が床2aの各段の段差部1bの上部に沿って略鉛直下向きに形成されている。
なお、シーリング材9は前記の床被覆構造に用いたものと同じものであるので説明を省略する。
【0040】
この実施形態の床被覆構造も、コンクリート製の階段2の床2aの表面から放出される水蒸気や水が、通気通水層4に侵入してその内部を移動し、略鉛直下向きの連通路11,11を通って下向きの排出口10,10から確実に排出され、第二の合成樹脂製被覆材30と床2aとの間に溜まらないので、水蒸気や水の圧力で合成樹脂製被覆材30に膨れが生じるのを防止することができる。また、排出口10,10の形成作業や連通路11,11の形成作業が極めて簡単であり、特別な排出口形成用の部材や連通路形成用の部材を取り付けなくてもよいので、施工性が良く、経済的にも有利である。しかも、雨水などが下向きの排出口10,10から連通路11,11を上昇して床2aと合成樹脂製被覆材30との間の通気通水層4に逆流する虞れがないので、排出口10,10に防水用の面倒な被覆処理などを施すことも不要になる。
【0041】
この実施形態の床被覆構造は、階段2のコンクリート製の床2aを通気通水層4を介して合成樹脂製被覆材30で被覆したものであるが、モルタル製の床2aを被覆する場合も、上記と同様の床被覆構造とすればよい。
また、この実施形態の床被覆構造においても、前記実施形態の床被覆構造と同様の変更態様を採用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 踊り場
1a 踊り場の床
1b 踊り場の床の下側の階段に連なる段差部
2 階段
2a 階段の床
2b 階段の床の各段の下段側の段差部
3 第一の合成樹脂製被覆材
30 第二の合成樹脂製被覆材
30a 第二の合成樹脂製被覆材前垂れ部
30b 第二の合成樹脂製被覆材水平部
4 通気通水層
5 床用接着剤
5a 接着剤の凸条
6 樹脂溶接部
7 両面粘着テープ
8 充填材
9 シーリング材
10 下向きの排出口
11 略鉛直下向きの連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10