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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-158151(P2015-158151A)
(43)【公開日】2015年9月3日
(54)【発明の名称】往復駆動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/08 20060101AFI20150807BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20150807BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20150807BHJP
   F04B 53/02 20060101ALI20150807BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20150807BHJP
【FI】
   F04B21/00 E
   F16J15/18 B
   F16J15/16 A
   F04B21/00 T
   F04B21/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-32441(P2014-32441)
(22)【出願日】2014年2月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133868
【弁理士】
【氏名又は名称】岡林 義弘
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光一
【テーマコード(参考)】
3H071
3J043
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC01
3H071CC32
3H071CC35
3H071DD01
3H071DD06
3H071DD15
3H071DD32
3H071DD52
3H071DD72
3H071DD82
3J043AA12
3J043BA03
3J043CA01
3J043CA12
3J043CB13
3J043DA01
(57)【要約】
【課題】冷却液送液路を簡略化し組み付け性およびメンテナンス性を向上する。
【解決手段】シリンダ本体部30とバルブボックス60を有するシリンダと、往復移動体20と、吸入口61および吐出口62と、吸入口61からシリンダ室30aに連通する吸入流路61aと、吸入流路61aを通ってシリンダ室30aに液体を供給する液体供給手段3と、を有する往復駆動ポンプ1であって、シリンダ本体部30と往復移動体20とのすき間を封止するグランドパッキン32と、グランドパッキン32を冷却する冷却装置50と、を備え、冷却装置50は、吸入流路61aの分岐点51から分岐してグランドパッキン32に連通する冷却液送液路54を備え、液体供給手段3によって、吸入口61に供給された液体を冷却液として冷却液送液路54からグランドパッキン32に送液する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状からなるシリンダ本体部と、このシリンダ本体部の先端部に固定されたバルブボックスと、を有するシリンダと、
前記シリンダ本体部内に配設された往復移動体と、
前記シリンダに配設された吸入口および吐出口と、
前記吸入口からシリンダ室に連通する吸入流路と、
この吸入流路を通って前記吸入口から前記シリンダ室に液体を供給する液体供給手段と、
前記シリンダ本体部と前記往復移動体とのすき間を封止するグランドパッキンと、
このグランドパッキンを冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、前記吸入流路の分岐点から分岐して前記グランドパッキンに連通する冷却液送液路を備え、
前記液体供給手段によって、前記吸入口に供給された液体を冷却液として前記冷却液送液路から前記グランドパッキンに送液する往復駆動ポンプ。
【請求項2】
前記バルブボックスは、前記吸入口と、前記吐出口と、前記分岐点と、を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載の往復駆動ポンプ。
【請求項3】
前記冷却液送液路は、前記シリンダの外周部に開口する送液路の開口部を有し、
前記送液路の開口部に流量調整手段を配設したこと、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の往復駆動ポンプ。
【請求項4】
前記冷却液送液路は、
前記シリンダ本体部の外周部から内周部に向かって延びる貫通穴と、
前記分岐点に連通し前記シリンダ本体部内を軸方向に前記貫通穴まで伸びた連通路と、を有し、
前記貫通穴に前記流量調整手段を配設したこと、
を特徴とする請求項3に記載の往復駆動ポンプ。
【請求項5】
前記流量調整手段は、絞りまたはニードル弁であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の往復駆動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は往復駆動ポンプに係り、特にグランドパッキンを冷却する冷却装置を備えた往復駆動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
往復駆動ポンプ(ピストンポンプ)は、高圧の液体(例えば、水)を得るために適している。このため、ピストンポンプは、はつり、機械部品の洗浄装置又はバリ取り装置、化学装置の洗浄装置等に広く利用されている。高圧の液体を利用する装置類は、多くの配管や弁が外装されている場合が多い。このため、配管及び弁が複雑に配置されている場合がある。特に高圧配管の接続部分においては、配管及び配管接続部の劣化により高圧水が噴出する可能性がある。この高圧水は人体に当たると甚大な被害を及ぼす。このため、高圧水の配管には安全カバーやチェーン固定その他の安全対策が施される。
【0003】
従来、ピストンポンプには、往復移動体(プランジャ又はピストン)とシリンダとの間にグランドパッキンが設けられる。グランドパッキンは、往復移動体の往復動作に伴い、発熱し、摩耗する。このグランドパッキンの摩耗が進むと、往復移動体の往復動作によって圧縮された液体が漏出し、所定の圧力まで到達しなくなる。このため、グランドパッキンは、定期的に交換される。グランドパッキンの寿命を延長するために、グランドパッキンへ冷却液を流通させ、この冷却液によりグランドパッキンを冷却し、グランドパッキンと往復移動体との摺動部を潤滑させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のピストンポンプにおいては、液体をシリンダに供給する圧送ポンプによって、往復移動体とシリンダとの間に配設された高圧シール(グランドパッキンに相当。)に冷却液として液体を圧送する冷却装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−43277号公報(請求項1、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のピストンポンプにおいては、ピストンポンプに液体を供給する圧送ポンプから分配器を介して、ピストンポンプへの吸入路と冷却液の配管とを分岐して配管されている。このため、シリンダやグランドパッキン等のメンテナンスを行う場合には、圧送ポンプからピストンポンプへの吸入路と冷却液配管とを分離し、冷却装置を取り外した後に、ピストンポンプを分解して行う必要があった。また、洗浄装置等に組込まれるピストンポンプでは、複雑な配管がされているため、配管の分解、接続には、施工する配管の確認、配管接続時のトルク管理、安全対策の取外しや再施工が必要であった。このため、配管の分解や再組み立てはピストンポンプのメンテナンスに直接関係しない作業でありながら、非常に手間のかかる作業であった。
また、ピストンポンプ外部に冷却液分配機構や流量調整機構を設けると、ピストンポンプ周辺の配管本数が増加し、配管の設計及び施工が煩雑であり、ピストンポンプのレイアウトの自由度が制限されるという問題があった。
【0007】
以上の問題に鑑みて、本発明の目的は、液体の配管および冷却液送液路を簡略化し、組み付け性を向上させメンテナンスしやすい往復駆動ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筒形状からなるシリンダ本体部と、このシリンダ本体部の先端部に固定されたバルブボックスと、を有するシリンダと、前記シリンダ本体部内に配設された往復移動体と、前記シリンダに配設された吸入口および吐出口と、前記吸入口からシリンダ室に連通する吸入流路と、この吸入流路を通って前記吸入口から前記シリンダ室に液体を供給する液体供給手段と、前記シリンダ本体部と前記往復移動体とのすき間を封止するグランドパッキンと、このグランドパッキンを冷却する冷却装置と、を備え、前記冷却装置は、前記吸入流路の分岐点から分岐して前記グランドパッキンに連通する冷却液送液路を備え、前記液体供給手段によって、前記吸入口に供給された液体を冷却液として前記冷却液送液路から前記グランドパッキンに送液すること、を特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記吸入流路の分岐点から分岐して前記グランドパッキンに連通する冷却液送液路を備えたことで、グランドパッキンを冷却するための送液路の始点と終点をシリンダに設けることができるため、シリンダと冷却液送液路とを一まとめにしてシリンダを着脱することができる。このため、シリンダやグランドパッキン等のメンテナンス性を向上させることができる。
【0010】
また、グランドパッキンの冷却液送液路を吸入流路の分岐点から分岐することで、液体を供給する圧送ポンプ等の外部機器から配管して接続する必要がないため、外部から往復駆動ポンプに接続される配管は、液体を吸入する吸入配管と吐出する吐出配管のみとすることができる。このため、本発明に係る往復駆動ポンプは、液体の配管を簡略化して部品点数を削減し、組み付け性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0011】
本発明において、前記バルブボックスは、前記吸入口と、前記吐出口と、前記吸入流路の分岐点と、を備えていること、が望ましい。
【0012】
本発明によれば、バルブボックスに前記吸入口と、前記吐出口と、前記分岐点と、を備えたことで、バルブボックスに配管を集約できるため、液体の配管を簡略化して部品点数を削減し、組み付け性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0013】
本発明において、前記冷却液送液路は、前記シリンダの外周部に開口する送液路の開口部を有し、前記送液路の開口部に流量調整手段を配設することが望ましい。
【0014】
本発明によれば、前記シリンダの外周部に開口する送液路の開口部に前記流量調整手段を配設することで、流量調整手段をシリンダに強固に固定するとともに、流量調整手段の着脱や操作等を外部から容易に行うことができるため、組み付け性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
本発明において、前記冷却液送液路は、前記シリンダ本体部の外周部から内周部に向かって延びる貫通穴と、前記分岐点に連通し前記シリンダ本体部内を軸方向に前記貫通穴まで伸びた連通路と、を有し、前記貫通穴に前記流量調整手段を配設することが望ましい。
【0016】
本発明によれば、前記分岐点に連通し前記シリンダ本体部内を軸方向に前記貫通穴まで伸びた連通路を有することで、前記分岐路から前記シリンダ本体部内を通してグランドパッキンの冷却液を送液することができるため、メンテナンス性を向上させるとともに、送液路の露出を回避して信頼性および耐久性を向上させることができる。また、シリンダの組み付け作業によって送液路も一緒に接続できるため、作業性および取り扱い性を向上させることができる。
【0017】
本発明において、前記流量調整手段は、絞りまたはニードル弁であることが望ましい。
本発明によれば、流量調整手段を絞りとすることで構成を簡素化して、部品点数を削減し耐久性およびメンテナンス性を向上させることができる。また、流量調整手段をニードル弁とすることで、グランドパッキンに送液する液体の流量調整を自在に調整して、操作性、およびグランドパッキンのメンテナンス性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、液体の配管および冷却液送液路を簡略化し、組み付け性を向上させメンテナンスしやすい往復駆動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態におけるピストンポンプの縦断面図。
図2図1のII−II断面図。
図3図1の左側面図。
図4】本発明の実施形態における流量調整手段の拡大断面図。
図5】本発明の実施形態の動作を示す縦断面図であり、(a)はプランジャが後退する状態、(b)はプランジャが前進する状態である。
図6】本発明の実施形態に係る第1変形例における流量調整手段の拡大断面図。
図7】本発明の実施形態に係る第2変形例におけるピストンポンプの縦断面図。
図8図7のVIII−VIII断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る往復駆動ポンプである多連式(3連式)のピストンポンプ1は、図1に示すように、送液ポンプ3によって吸入口61から吸入流路61aを通って液体をシリンダ本体部30のシリンダ室30aに取り込み、シリンダ本体部30内で往復する往復移動体であるプランジャ20によりこの液体を加圧し、吐出口62から吐出する。
【0021】
ピストンポンプ1は、シリンダ本体部30と、シリンダ本体部30の先端部に固定されたバルブボックス60と、を有するシリンダと、シリンダ本体部30とプランジャ20とのすき間を封止するグランドパッキン32と、グランドパッキン32を冷却する冷却装置50と、を備える。そして、冷却装置50は、吸入口61から供給された液体の一部を冷却液として分岐する分岐点である分岐口51と、分岐口51から分岐された冷却液をグランドパッキン32へ送液する冷却液送液路54と、冷却液送液路54中に配設され、冷却液の流量を調節する流量調整手段である絞り55と、からなる。
なお、以下の説明においては、図中に示した前後上下の方向に従って説明する。
【0022】
ピストンポンプ1には、液体供給手段である送液ポンプ3が使用される。送液ポンプ3は、液タンク5に貯留された液体を揚水し、吸入口61へ送水する。この送水圧によりピストンポンプ1内部に吸入した液体の一部が冷却液として流れる。ピストンポンプ1内部を流れた冷却液は、排出口57から排出される。排出口57から排出された冷却液は、液タンク5へ循環され利用される。しかしながら冷却液はグランドパッキン32が摩耗して生じた微粉を含むため、液タンク5にろ過機能が無い場合には、排出口57から排出された冷却液は、廃棄されても良い。
【0023】
なお、液タンク5の液位がピストンポンプ1よりも十分に高い位置にあれば、液タンク5内に貯留された液体の液圧により冷却水を送液することが可能である(重力式の液体供給手段)。この場合においては、重力による位置エネルギーを利用して液体を供給するので送液ポンプ3は不要である。
【0024】
バルブボックス60には、液体を吸入する吸入口61と、吐出口62と、吸入口61からシリンダ本体部30の内部へ液体を分配する弁機構からなる吸入側分配手段41と、シリンダ本体部30の内部から吐出口62へ加圧された液体を分配する弁機構からなる吐出側分配手段45と、が設けられる。
【0025】
なお、本実施形態においては、往復駆動ポンプとして多連式(3連式)のピストンポンプ1を例として説明するが(図2参照)、これに限定されるものではなく、プランジャ20が3つ連結された3連式でなくてもよいし、プランジャ20が1つである単筒式往復駆動ポンプであっても同様に適用することができる。
【0026】
3連式のピストンポンプ1は、シリンダ本体部30が紙面厚み方向に並列に3体配設されているが(図2及び図3参照)、各シリンダ(シリンダ本体部30)に係る構成において、プランジャ20、吸入側分配手段41、吐出側分配手段45、および基体部10の構成は同様である。
シリンダ本体部30は、略中空円筒部材であり、ピストンポンプ1の基体部10にバルブボックス60と共に固定される。シリンダ本体部30はプランジャ20により加圧された液体の圧力に屈しない強度を有する。
【0027】
プランジャ20は、略円筒状部材であり、クランク・ピストン機構によりシリンダ本体部30内を往復運動する。コンロッド12は、基体部10内で回転するクランク軸11のピン11aとプランジャ20とを連結する。クロスヘッド14は、基体部10内部に設けられたコラム13内を摺動し、プランジャ20とコンロッド12を分離する。クロスヘッド14を設けることにより、プランジャ20がグランドパッキン32との摺動により摩耗した際に、容易に交換することが可能となる。
【0028】
シリンダ本体部30内部にはグランドパッキン32とその前方にグランドパッキン32を後方へ付勢する弾性体33が配設される。弾性体33は、バルブボックス60とシリンダ本体部30との間に挟められて固定される吸入側分配手段41によって固定される。本実施形態において、弾性体33は、コイルばねである。弾性体33は、その弾性力により、グランドパッキン32をシリンダ本体部30の内周部に縮径して形成されたリング状のボス部54cに付勢する。この付勢力により、グランドパッキン32は前後方向に圧縮され、半径方向外側及び内側へ膨張しようとする。このグランドパッキン32の膨張はシリンダ本体部30及びプランジャ20により抑えられ、圧縮されるため、シリンダ本体部30及びプランジャ20との間を封止する。
【0029】
バルブボックス60は、後端部側に開口する断面円形の窪み63を備えている。窪み63は、断面形状が大径の窪み63aと、大径の窪み63aに連続して前方に形成された小径の窪み63bと、からなる段部を備えている。
窪み63の内部には、小径の窪み63bと大径の窪み63aとを区画するように弁座40が配設されている。弁座40は、吸入側分配手段41と吐出側分配手段45との共通の弁座であり、弁座40の後方に吸入側分配手段41が配設され、弁座40の前方に吐出側分配手段45が配設されている。
大径の窪み63aの後方は開口され、この開口部にシリンダ本体部30の先端部が挿入され、内部にはシリンダ室30aが形成されている。バルブボックス60には液体の吸入口61が設けられ、吸入口61は、大径の窪み63aに連通されている。
【0030】
多連式のピストンポンプ1においては、シリンダ本体部30に対応してバルブボックス60内に円筒状の窪み63も複数配置されている(図2参照)。それぞれの大径の窪み63aと大径の窪み63aの間は、貫通穴64(図2参照)を設けて相互に連通され吸入口61に通じている(図2参照)。また、それぞれの小径の窪み63bと小径の窪み63bの間は、貫通穴65(図1参照)を設けて相互に連通され吐出口62に通じている。
【0031】
かかる構成により、ピストンポンプ1の吸入側では、貫通穴64(図2参照)によって、吸入口61と吸入側分配手段41とを連通し、吸入口61から取り込んだ液体を各シリンダ本体部30に対応する吸入側分配手段41に分配する。
一方、ピストンポンプ1の吐出側では、貫通穴65(図1参照)によって、吐出側分配手段45と吐出口62とを連通し、各シリンダ室30aに対応する吐出側分配手段45から供給された液体を収集して吐出口62から吐出する。
【0032】
吸入側分配手段41は、吐出側分配手段45と共通の弁座40と、逆止弁の機能を有する弁体42と、コイルばね43と、ガイド44とを備えている。吐出側分配手段45は、吸入側分配手段41と共通の弁座40と、逆止弁の機能を有する弁体47と、コイルばね48と、ガイド49とを備えている。
【0033】
吸入側分配手段41は、共通化された弁座40の後方に配設され、吐出側分配手段45は、共通化された弁座40の前方に配設されている。吸入側分配手段41と吐出側分配手段45は、弁座40を共通化することにより省スペース化を図っている。
【0034】
弁座40は、外周部の中央部が胴部よりも大径の鍔部を有する略円柱形状をなし、中央部の鍔部がバルブボックス60とシリンダ本体部30との間に挟み込まれて固定される。
【0035】
弁座40は、鍔部から大径の窪み63aに開口され、大径の窪み63aからシリンダ室30aに連通する吸入流路61a,61aを備えている。吸入流路61a,61aは、対角位置に2箇所配設されている(図2参照)。
吸入側の弁体42は、中央に貫通穴42aを備え、周辺部の円盤部分が吸入流路61a、61aを塞ぐようにガイド44内に前後方向に摺動可能に設けられる。コイルばね43は、ガイド44の内周面に沿って収められ、弁体42を弁座40に向かって付勢する。
【0036】
弁座40は、中心軸線に沿って貫通穴46aを備えている。吸入側の弁体42が弁座40の後端面に密着して吸入流路61aが閉じられた状態において、弁体42の貫通穴42aと弁座40の貫通穴46aは連通する。吐出側の弁体47は、棒状のガイド部と、円盤状の弁部を有し、弁部が弁座40の貫通穴46aを塞ぐように配設されている。ガイド49は、バルブボックス60内の小径の窪み63bの内部に設けられ、弁体47を摺動可能に支持する。コイルばね48は、ガイド49の外筒面に沿って配置され、弁体47を弁座40に向かって付勢する。
【0037】
冷却装置50は、吸入口61から供給された液体を吸入流路61aの分岐点である分岐口51から分岐された冷却液をグランドパッキン32へ送液する冷却液送液路54と、この冷却液送液路54中に配設され、冷却液の流量を調整する流量調整手段である絞り55と、絞り55を外部から脱着可能にピストンポンプに連結する連結手段56と、を備えている。
【0038】
冷却液送液路54は、シリンダ本体部30の外周部から内周部に向かって設けられる送液路である貫通穴54bと、シリンダ本体部30内を軸方向に伸びる連通路54aと、リング状のボス部54cを通る貫通穴54dと、を備え、絞り55が貫通穴54bの開口部に埋設される。
【0039】
連通路54aは、大径の窪み63a内に開口するように設けられ、この大径の窪み63aに開口する連通路54aの開口部が吸入流路61aの分岐点である分岐口51を形成する。吸入口61、吐出口62、および分岐口51は、シリンダ本体部30の先端部に配設されたバルブボックス60に配設されている。
【0040】
貫通穴54bは、シリンダ本体部30の後部に設けられ、その下方の径がやや小さい段付き穴であり、その下方の小径部上端には雌ねじ56aが設けられる(図4参照)。
貫通穴54bは、図4に示すように、シリンダ本体部30の後部上方の外周部からシリンダ本体部30の内周部に形成されたリング状のボス部54cへ開口するように設けられる。
【0041】
そして、リング状のボス部54cは、プランジャ20とシリンダ本体部30との間に隙間、つまり円筒状空間54eを形成している。円筒状空間54eは、冷却液を溜めるための隙間であり、図1に示すように、円筒状空間54eの前方はグランドパッキン32と連通し、円筒状空間54eの後方は冷却液パッキン31により封止される。
【0042】
絞り55は、絞り部材58の内部に形成されている。絞り部材58は、送液路を構成する貫通穴54bの開口部に配設される。絞り部材58は、先端がやや細い段付きの略円筒状である(図4参照)。絞り部材58の内部には、逆L字状の流路58aが形成され、その一部の断面積が小さくなっている。この断面積の縮小部が絞り55を形成する。絞り部材58の先端部の外径には、雌ねじ56aと螺合する雄ねじ56bが設けられている。絞り部材58の上方には六角頭が設けられ、この六角頭にスパナを掛けて絞り部材58の取付け若しくは取外しが行われる。絞り55は、チョーク絞り又はオリフィス絞りを利用することができる。絞りの有効断面積を適宜変更することで冷却液の流量が調整される。
【0043】
なお、貫通穴54d、冷却液パッキン31及び排出口57を設けず、冷却液がシリンダ本体部30とプランジャ20とのすき間からシリンダ本体部30の後方へ排出するように構成することができる。この場合においては、基体部10のクロスヘッドシュー15の前方寄り下部に、冷却液の排出口を設ける。このように構成した場合、冷却液は、シリンダ本体部30とプランジャ20とのすき間を通って、シリンダ本体部30の後方から基体部10へ流れ、基体部10の下部の排出口から排出される。
【0044】
次に、ピストンポンプ1の動作について主として図5を参照しながら説明する。プランジャ20は、クランク軸11の回転に従って、シリンダ本体部30内を往復する。図5(a)に示すように、プランジャ20が後方に向かって移動すると、シリンダ室30aは負圧となり、送液ポンプ3によって吸入側から圧送された液体が吸入側分配手段41の弁体42をコイルばね43の付勢力に抗して押し開き、シリンダ室30aに流入する。このとき、吐出側分配手段45の弁体47は、コイルばね48の付勢力により弁座40に押し当てられて閉じられている。
【0045】
このとき、吸入口61から圧送された液体の一部は、大径の窪み63aを通って、分岐口51から分岐して、冷却液として冷却液送液路54へ流通する。冷却液は、絞り55によってその流量が適度に調整され、リング状のボス部54cに形成された円筒状空間(隙間)54eを通りグランドパッキン32へ供給され、グランドパッキン32およびプランジャ20を冷却し、かつ、グランドパッキン32とプランジャ20との摺動面を潤滑する。冷却液は貫通穴54dを通り、排出口57から排出される。
【0046】
図5(b)に示すように、プランジャ20が前方に向かって移動すると、シリンダ室30aに流入した液体は、加圧される。加圧された液体により、吸入側分配手段41の弁体42は、弁座40に押し当てられて閉じられている。他方、吐出側分配手段45においては、加圧された液体は、吸入側分配手段41の弁体42の貫通穴42aと弁座40内の貫通穴46aとを通って、弁体47をコイルばね48の付勢力に抗して前方へ押し上げる。そして吐出側分配手段45の弁体47が開き、加圧された液体は、小径の窪み63bを通って、吐出口62から吐出される。
【0047】
このとき、吸入口61から圧送された液体の一部は、大径の窪み63aを通って、分岐口51から分岐して、冷却液となる。つまり、プランジャ20が前方に向かって移動する場合(図3(b))においても、プランジャ20が後方に向かって移動する場合(図3(a))と同様に冷却液がグランドパッキン32に供給されるようになっているので、重複する説明は省略する。
【0048】
(作用効果)
本実施形態におけるピストンポンプ1においては、その冷却装置50は完全にピストンポンプ1内に内装される。このため、冷却装置50のために外部より配管をピストンポンプ1に接続することが不要であることはもちろん、ピストンポンプ1の外部に冷却装置50の配管が露出しない。そして、ピストンポンプ1を装置内に組込んだ際に、ピストンポンプ1周辺の配管がシンプルとなる。このため、配管の取り回しやメンテナンス性が向上することに加えて、ピストンポンプ1のレイアウトの自由度が増加する。
【0049】
さらに、冷却液送液路54はピストンポンプ1の分解と共に分解され、ピストンポンプ1の組立と共に完成する。従って、ピストンポンプ1のグランドパッキン32又はプランジャ20の点検又は交換に関するメンテナンスが非常に行いやすい。
さらに、絞り55は、シリンダ本体部30の外周部に開口する冷却液送液路54の開口部に配設されるため、冷却液流量の変更が容易であり、冷却液がグランドパッキン32へ分配されていることが容易に確認できる。
【0050】
(第1変形例)
次に、図6に従って、第1変形例として、流量調整手段をニードル弁80とした場合を説明する。なお、上述の実施形態と同一の部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
貫通穴84は、下部に小径部分のある段付き穴であって、その大径部開口部付近に雌ねじ86aが設けられる。貫通穴84内の段部が弁座82となる。
貫通穴84内には、先端部が小径となり、先端に円錐面を有する略円筒状の弁体81が納められる。弁体81の上部にはハンドル83である六角頭と、雌ねじ86aと螺合する雄ねじ86bが設けられる。この雌ねじ86aと雄ねじ86bとが連結手段86を成す。
【0052】
なお、ハンドル83は回転できる手段であれば良く、六角頭に替えて、例えばローレット目を備えるつまみ、四角頭、六角穴、スリ割溝、十字穴、2面取り、四角頭、円筒方向に備えられた溝(丸ナットの溝に相当)が利用できる。
【0053】
弁体81は貫通穴84内をねじ機構によって上下に移動する。弁体81の先端の円錐面が弁座82に接触したときに流路は締め切られる。弁体を回転させて上下させることで有効断面積が変化し、適切な開口に調整される。
【0054】
この第1変形例においては、流量調整手段がニードル弁80であるため、シリンダ毎に冷却液の流量調整が自在に変化できる利点がある。
【0055】
(第2変形例)
図7に示すように、シリンダ本体部30の外部に冷却装置を配設する第2変形例に係るピストンポンプ100を以下に説明する。なお、実施形態におけるピストンポンプ1と同一の部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0056】
冷却装置150は、吸入口61から供給された液体を吸入流路61a、61aの分岐点である分岐口151から分岐してグランドパッキン32まで連通する冷却液送液路154を備えている。冷却装置150は、送液ポンプ3によって、吸入口61から供給された液体を冷却液として冷却液送液路154からグランドパッキン32に送液する。
冷却液送液路154は、多連式のピストンポンプ100においては、シリンダ本体部30に内装されたグランドパッキン32毎に設置される。
【0057】
各冷却液送液路154の分岐口151は、それぞれ大径の窪み63aと貫通穴64を通って吸入口61と接続されている(図8参照)。そして、冷却液は、それぞれの分岐口151からそれぞれの流量調整手段である絞り155を通り、それぞれのプランジャ20とグランドパッキン32を冷却する。
【0058】
冷却液送液路154は、バルブボックス60に設けられた送液路である貫通穴154aと、シリンダ本体部30の外部に設けられる配管154bと、シリンダ本体部30の後部に設けられた貫通穴154cと、シリンダ本体部30の内周部に張り出して設けられるリング状のボス部54cに形成された円筒状空間54eに開口するように下方の延びて設けられる貫通穴54dと、を備えている。
【0059】
貫通穴154aは、バルブボックス60の上面から円筒状の大径の窪み63aまで貫通する。貫通穴154aの下部開口部は大径の窪み63aに臨むように開口され、この開口部が分岐点である分岐口151を形成している。貫通穴154aは、窪み63aを介して吸入流路61aを通ってシリンダ室30aに連通している。
【0060】
流量調整手段である絞り155は、ブロック形状の絞り部材158の内部に形成されている。絞り部材158は、バルブボックス60の上部に配設され、絞り155が貫通穴154aに連通するように設けられる。絞り155は、ピストンポンプ100の外部に設けられ、着脱がしやすいボルト156によって外部から取外し可能に連結されている。絞り155は、チョーク絞り又はオリフィス絞りを利用することができる。ピストンポンプ100は、絞り155の有効断面積を適宜変更することで冷却液の流量を調整できるようになっている。
【0061】
絞り部材158は、プラスチックス、ガラス、強度及び耐候性の高い鉄鋼、ステンレス鋼、銅合金により製作できる。また、絞り部材158の上方にガラス又は透明プラスチックス材料によりのぞき窓を設けること、又は絞り部材158を透明材料で製作することもできる。この場合には、絞り部材158を通して、絞り155内に冷却液が流れていることが容易に確認できる。
【0062】
なお、絞り部材158の設置位置はピストンポンプ100の外部であればよいが、ピストンポンプ100の外周部に連結するとより好適である。また、ピストンポンプ100の利用形態により、取付ブラケット(不図示)等を介して取り外しが容易な位置に適宜変更できる。この場合、貫通穴154aは一部外部配管へ変更しても良い。
【0063】
配管154bは、管継手157,157によって絞り部材158と貫通穴154cとに固定される。絞り部材158に設けた管継手157は絞り155と一体化して設けても良い。その場合は、管継手とバルブボックス60とを連結するねじ又はフランジが連結手段となる。
【0064】
配管154bは、プラスチックス、鉄鋼、ステンレス鋼、銅、銅合金のホース又はチューブで製造される。配管154bが透明材料(例えば透明なプラスチックス材料)で製作された場合には、配管154bの外部から目視により、冷却液がグランドパッキン32に供給されていることを確認できる。また、配管154bが不透明材料で設けられている場合、配管154bを固定している管継手を緩めて冷却液が漏れるか確認する事で冷却液が流れていることを確認できる。
【0065】
貫通穴154cはリング状のボス部54cに開口されている。このリング状のボス部54cとプランジャ20との間には冷却液が供給される円筒状空間(間隙)54eが形成され、この円筒状空間(間隙)は、プランジャ20の円筒面に沿ってグランドパッキン32へ連通している。
配管154bが不透明材料である場合にあっては、排出口57から排出される冷却液によって、冷却液がグランドパッキン32に供給されていることを確認できる。
【0066】
なお、本変形例においては、絞り部材158は、連結手段であるボルト156によりバルブボックス60に固定されたが、固定箇所はバルブボックス60に代えて、シリンダ本体部30、基体部10、又は貫通穴154cとしても良い。絞り部材を貫通穴154cに固定する際は、貫通穴154c内に埋設するほか、管継手と一体化して設けることができる。また、連結手段は、ボルト156に代えて、バルブボックス60に設けた雌ねじと、絞り部材158に設けた雄ねじでも良い。この場合、絞り155を配管継手157と一体化し、この配管継手に配管154bを固定することができる。
【0067】
なお、流量調整手段である絞り155に代えてニードル弁を用いても良い。ニードル弁を用いた場合、ニードル弁の開度により容易に冷却液の流量を調整することができる。ニードル弁は、配管継手と一体化したものを使用できる。
【0068】
(効果)
本変形例においては、流量調整手段である絞り155は、外部に露出しており、連結手段156により取り外しが容易であるため、流量の変更、内部の洗浄、又は交換が容易である。流量調整手段が絞り155であるため、冷却液が締め切られることなく、所定の流量の冷却液が流通する効果を奏する。
さらに、流量調整手段である絞り155及び冷却液送液路154が外部に露出しているため、冷却液がグランドパッキン32に供給されていることが容易に確認できる。
【0069】
[代替手段]
なお、以上の実施形態においては、プランジャがシリンダ内で往復するピストンポンプのうち、クランク機構を利用したピストンポンプを例として説明したが、シリンダの配列は直列、V字状、星形等形状を問わない。また、クランク機構によるピストンポンプに替えて、回転斜板によりプランジャが往復する斜板型プランジャポンプ、又は、ボールねじ機構によりプランジャをモータにより直接駆動するプランジャポンプを適用できる。また、上記の形式のピストンポンプにおいて、プランジャに替えてピストンを利用するピストンポンプにも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1,100 ピストンポンプ(往復駆動ポンプ)
3 送液ポンプ(液体供給手段)
10 基体部
20 プランジャ(往復移動体)
30 シリンダ本体部(シリンダ)
32 グランドパッキン
41 吸入側分配手段
45 吐出側分配手段
50,150 冷却装置
51,151 分岐口(分岐点)
54a 連通路(冷却液送液路)
54b,84,154c 貫通穴(送液路)
55,155 絞り(流量調整手段)
56,86,156 連結手段
54、154 冷却液送液路
60 バルブボックス(シリンダ)
61 吸入口
61a 吸入流路
62 吐出口
80 ニードル弁(流量調整手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8