【解決手段】液晶表示装置1は、プラスチック基板6を有する下基板2と、下基板2に対向して配置され、プラスチック基板8を有する上基板3と、下基板2及び上基板3の間に設けられた液晶層4と、下基板2と上基板3との間に狭持され、下基板2及び上基板3を互いに接着するとともに液晶層4を封入するシール材5とを備えている。シール材5は、1〜100nmの平均粒子径を有するカーボン粒子20を含有する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基板(フィルム基板)を備えた液晶表示装置に関する。
【0002】
近年、ディスプレイ分野では、フレキシブル性、耐衝撃性や軽量性の点でガラス基板に比べて大きなメリットのあるプラスチック基板を用いた表示装置が非常に注目を浴びており、ガラス基板のディスプレイでは不可能であった新たな表示装置が創出される可能性を秘めている。
【0003】
このような表示装置としては、例えば、互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板の間に設けられた液晶層とを有する液晶表示装置が提案されている。
【0004】
この液晶表示装置では、一対の基板のうち、上基板は、ポリカーボネート樹脂等により形成された可撓性を有するプラスチック基板と、プラスチック基板上に設けられ、インジウム錫酸化物(ITO)により形成された画素電極とを備えている。また、下基板は、上述のプラスチック基板と、プラスチック基板上に設けられ、インジウム錫酸化物(ITO)により形成された共通電極とを備えている。
【0005】
また、この液晶表示装置は、一対の基板の間に設けられた液晶層と、一対の基板を互いに接着するとともに、両基板の間に液晶を封入するために枠状に設けられたシール材とを備えている。
【0006】
ここで、このシール材は、例えば、熱硬化型樹脂(または、紫外線硬化型樹脂)等により構成されており、ディスペンサ塗布法やスクリーン印刷法等により、基板上に描画(印刷)された後、シール材を介して、上基板と下基板とを貼り合わせる。そして、シール材を焼成(紫外線硬化型樹脂の場合は、シール材にUV光を照射)することによりシール材を硬化させ、上基板と下基板とが貼り合わされた貼合体を作製する(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態においては、プラスチック基板を備え、例えば、光の透過量を調節する調光部を備える3D眼鏡やスマートカードに使用される液晶表示装置を例示する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、液晶表示装置1は、表示装置用基板である下基板2と、下基板2に対向して配置された他の表示装置用基板である上基板3と、下基板2及び上基板3の間に挟持して設けられた表示媒体層である液晶層4と、下基板2と上基板3との間に狭持され、下基板2及び上基板3を互いに接着するとともに液晶層4を封入するために枠状に設けられたシール材5とを備えている。
【0017】
このシール材5は、液晶層4を周回するように形成されており、下基板2と上基板3は、このシール材5を介して相互に貼り合わされている。また、シール材5を形成する材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂が使用される。
【0018】
このうち、本発明においては、密着性、耐湿性、電気絶縁特性、耐薬品性、耐熱性等が優れているとの観点から、シール材を形成する材料として、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。より具体的には、熱硬化型の2液性(または1液性)エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0019】
なお、下基板2及び上基板3は、それぞれ矩形板状に形成されている。また、液晶表示装置1は、液晶層4の厚み(即ち、セルギャップ)を規制するための複数のフォトスペーサ(不図示)を備えている。
【0020】
また、液晶表示装置1では、
図1に示すように、シール材5の内側であって、下基板2及び上基板3が重なる領域に、画像表示を行う表示領域Dが規定されている。ここで、表示領域Dは、画像の最小単位である画素がマトリクス状に複数配列して構成されている。
【0021】
下基板2は、樹脂材料により形成されたフィルム状の可撓性(フレキシビリティー)を有するプラスチック基板6を備える。このプラスチック基板6を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、セルローストリアセテート樹脂(CTA、TAC),環状オレフィン樹脂(COP,COC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等の有機材料を用いることができる。
【0022】
このうち、本発明においては、軽量性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性等が優れているとの観点から、プラスチック基板6を形成する材料として、ポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
なお、上述の有機材料は、1×10
14〜1×10
15Ω・cmの絶縁抵抗を有しており、本実施形態においては、上記範囲の絶縁抵抗を有する材料であれば、無機材料(例えば、約1×10
14Ω・cmの絶縁抵抗を有する石英)も使用することができる。
【0024】
また、下基板2のプラスチック基板6上には、インジウム錫酸化物(ITO)により形成された画素電極7と、画素電極7上に設けられるとともに、ポリイミド樹脂により形成され、ラビング処理がなされた配向膜(不図示)が設けられている。
【0025】
また、上基板3は、下基板2と同様に、樹脂材料により形成されたフィルム状の可撓性(フレキシビリティー)を有するプラスチック基板8を備える。このプラスチック基板8を形成する樹脂材料としては、上述のプラスチック基板6を形成する有機材料と同様の材料を使用することができる。
【0026】
また、上基板3のプラスチック基板8上には、インジウム錫酸化物(ITO)により形成された共通電極9と、共通電極9上に設けられるとともに、ポリイミド樹脂により形成され、ラビング処理がなされた配向膜(不図示)が設けられている。
【0027】
なお、プラスチック基板6,8の厚みとしては、30〜250μmが好ましい。これは、厚みが30μm未満の場合は、十分な機械的強度が得られない場合があり、また、250μmよりも大きい場合は、画素電極7や共通電極9を形成する際に、プラスチック基板6,8の反りが大きくなり、プロセス上、問題が生じる場合があるからである。
【0028】
液晶層4は、例えば、電気光学特性を有するネマチック液晶を含んでいる。
【0029】
なお、下基板2のプラスチック基板6の外側には、偏光板(不図示)が設けられるとともに、当該偏光板の外側にはバックライトユニット(不図示)が設けられている。また、上基板3のプラスチック基板8の外側には、位相差フィルム(不図示)、及び偏光板(不図示)が設けられている。
【0030】
ここで、本実施形態の液晶表示装置1においては、
図1に示すように、シール材5が、1〜100nmの平均粒子径を有するカーボン粒子20を含有する点に特徴がある。
【0031】
なお、ここで言う「平均粒子径」とは、50%粒径(D50)を指し、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置(日機装(株)製、ナノトラック(登録商標)粒度分布測定装置UPA−EX150)等により測定できる。
【0032】
そして、このような導電性を有するカーボン粒子20をシール材5中に含有させることにより、シール材5を形成する際(即ち、印刷時、焼成時、またはUV硬化時)に、シール材5中に電荷が溜まりにくくなるため、シール材5を形成する際の静電気の発生を抑制することが可能になる。従って、シール材5の飛散を抑制して、シール材の変形を抑制することが可能になるため、結果として、シール材5により確実に液晶層4を封入することが可能となる。
【0033】
特に、プラスチック基板6,8を用いた液晶表示装置1においては、ガラス基板を使用した液晶表示装置に比し、静電気を発生しやすく、また、発生した静電気を保持しやすいが、このようなプラスチック基板6,8を用いた液晶表示装置1においても、シール材5の飛散を抑制して、シール材5の変形を抑制することが可能になる。
【0034】
また、シール材5の飛散を抑制することができるため、表示領域Dへのシール材5の飛散に起因する黒点不良の発生を抑制することが可能になる。
【0035】
なお、カーボン粒子20の平均粒子径は、流動性を向上させるとともに、シール材5において均一に分散させるとの観点から、10〜100nmが好ましく、15〜30nmがより好ましい。これは、平均粒子径が10nm未満の場合は、撹拌時に、カーボン粒子20が飛散して、空中での滞留時間が長くなるため、撹拌時の作業効率が極端に悪くなる場合があるためであり、また、100nmよりも大きい場合は、カーボン粒子20の凝集が生じて、上基板3と下基板2とが電気的に短絡する場合があるためである。
【0036】
また、使用するカーボン粒子20のDBP吸収量は、シール材5の印刷適性粘度を維持するとの観点から、20〜200cm
3/100gが好ましく、40〜180cm
3/100gがより好ましい
なお、「DBP吸収量」は、JIS K6217−4に準拠して測定される。
【0037】
また、シール材5の印刷性能の低下を防止して、シール材5の飛散を効果的に抑制するとの観点から、カーボン粒子20の含有量は、シール材100質量部に対して0.5質量部〜10質量部が好ましい。また、シール材5の飛散を効果的に抑制して、シール材5による下基板2と上基板3の接着性を向上させるとの観点から、カーボン粒子20の含有量は、シール材100質量部に対して2質量部〜5質量部が好ましい。
【0038】
次に、本発明の実施形態に係る液晶表示装置1の製造方法について説明する。
図2〜
図5は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を説明するための断面図である。尚、以下に示す製造方法は単なる例示であり、本発明に係る液晶表示装置1は、以下に示す方法により製造されたものに限定されるものではない。
【0039】
<下基板作製工程>
まず、
図2に示すように、例えば、ポリカーボネート樹脂により形成されたフィルム状の可撓性を有するプラスチック基板6(厚さ0.1mm程度)を準備する。
【0040】
次いで、プラスチック基板6上に、インジウム錫酸化物をパターニングして、
図2に示すように、画素電極7を形成する。次いで、基板全体に、印刷法によりポリイミド樹脂を塗布し、その後、ラビング処理を行って、配向膜を形成する。
【0041】
以上のようにして、表示領域Dを構成する下基板2を作製することができる。
【0042】
<上基板作製工程>
まず、
図3に示すように、例えば、ポリカーボネート樹脂により形成されたフィルム状の可撓性を有するプラスチック基板8(厚さ0.1mm程度)を準備する。
【0043】
次いで、プラスチック基板8上に、インジウム錫酸化物をパターニングして、
図3に示すように、共通電極9を形成する。次いで、基板全体に、印刷法によりポリイミド樹脂を塗布し、その後、ラビング処理を行って、配向膜を形成する。
【0044】
以上のようにして、表示領域Dを構成する上基板3を作製する。
【0045】
<シール材形成工程>
次いで、シール材を形成する熱硬化型の2液性エポキシ樹脂に、1〜100nmの平均粒子径を有するカーボン粒子を添加するとともに、硬化剤を混合した後、このエポキシ樹脂を十分に攪拌する。そして、
図4に示すように、例えば、スクリーン印刷法により、上基板3に、カーボン粒子20を含有する2液性エポキシ樹脂を印刷して、シール材5を枠状に描画する。
【0046】
<下基板・上基板貼り合わせ工程>
次いで、下基板2の全体に、例えば、球状のシリカやプラスチック粒子を散布して、スペーサを形成する。
【0047】
次いで、画素電極7が形成された下基板2と、共通電極9が形成された上基板3とをシール材5を介して貼り合わせた後に、加熱加圧処理(例えば、エアープレスで加圧処理を行いながら、120℃の温度で加熱処理)することにより、シール材5を硬化させ、
図5に示す、下基板2と上基板3が貼り合わされた貼合体10を作製する。
【0048】
<液晶層形成工程>
次いで、真空雰囲気で、シール材5に形成された液晶材料注入口を液晶材料に接触させ、大気雰囲気に戻して、液晶材料注入口から液晶材料をシール材5の内側に注入することにより、シール材5の内側に液晶層4を形成する。そして、液晶材料を注入後、液晶材料注入口を熱硬化型樹脂等の封止材により封止する。
【0049】
そして、上述の偏光板、バックライトユニット、及び位相差フィルムを設けることにより、
図2に示す液晶表示装置1が完成する。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
【0051】
上記本実施形態、表示装置としてLCD(liquid crystal display;液晶表示ディスプレイ)に係るものについて示したが、表示装置は、有機EL(organic electroluminescence)、電気泳動(electrophoretic)、PD(plasma display;プラズマディスプレイ)、PALC(plasma addressed liquid crystal display;プラズマアドレス液晶ディスプレイ)、無機EL(inorganic electroluminescence)、FED(field emission display;電界放出ディスプレイ)、又はSED(surface-conduction electron-emitter display;表面電界ディスプレイ)等に係る表示装置であってもよい。
【0052】
また、本発明は、互いに対向して配置されたTFT(Thin Film Transistor)基板及びCF(Color Filter)基板と、これらTFT基板とCF基板との間に設けられた液晶層とを有する液晶表示装置にも適用することができる。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0054】
(実施例1)
まず、ポリカーボネート樹脂により形成されたフィルム状の可撓性を有するプラスチック基板(厚さ0.1mm)上に、インジウム錫酸化物がパターニングされた画素電極が形成されるとともに、ラビング処理が行われた配向膜を備える下基板を準備した。
【0055】
また、同様に、ポリカーボネート樹脂により形成されたフィルム状の可撓性を有するプラスチック基板8(厚さ0.1mm)上に、インジウム錫酸化物がパターニングされた共通電極が形成されるとともに、ラビング処理が行われた配向膜を備える上基板を準備した。
【0056】
次いで、熱硬化型の2液性エポキシ樹脂(日油(株)製、商品名:ノフタックLC04)100質量部に、24nmの平均粒子径を有し、DBP吸収量が65〜66cm
3/100gであるカーボン粒子(三菱化学(株)製、商品名:三菱カーボンブラックMA7)を5質量部添加するとともに、硬化剤を混合した後、このエポキシ樹脂を十分に攪拌した。
【0057】
次いで、スクリーン印刷法により、上基板に、カーボン粒子を含有する2液性エポキシ樹脂を印刷して、シール材を枠状に描画した。
【0058】
次いで、下基板の全体に、球状のシリカを散布して、スペーサを形成した後、下基板と上基板とをシール材を介して貼り合わせた。そして、エアープレスで加圧処理を行いながら、120℃の温度で加熱処理することにより、シール材を硬化させ、下基板と上基板が貼り合わされた貼合体を作製した。
【0059】
そして、真空雰囲気で、シール材に形成された液晶材料注入口から液晶材料をシール材の内側に注入することにより、シール材の内側に液晶層を形成し、液晶材料を注入後、液晶材料注入口をUV硬化型樹脂(スリーボンド社製、商品名:TB3051)により形成された封止材により封止し、UV−LED(365nm)光を照射して、液晶表示装置を作製した。
【0060】
次いで、本実施例で形成されたシール材を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。得られた電子顕微鏡写真(SEM写真)を
図6に示す。
【0061】
図6に示すように、実施例1においては、シール材に24nmの平均粒子径を有するカーボン粒子が含有されているため、シール材の飛散が抑制されて、一定の幅を有するシール材が形成されており、シール材の変形を抑制できることが判る。その結果、シール材により確実に液晶層を封入することができることが判る。
【0062】
(比較例1)
シール材を形成する2液性エポキシ樹脂にカーボン粒子を混合しなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、液晶表示装置を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、本比較例で形成されたシール材を透過型顕微鏡(TEM)により観察した。得られた顕微鏡写真を
図7に示す。
【0063】
図7に示すように、比較例1においては、シール材にカーボン粒子が含有されていないため、シール材の飛散に起因してシール材が変形していることが判る。その結果、シール材により液晶を適切に封入することが困難になり、また、表示領域Dの狭小化を招き、著しく表示品位を落とすことになることが判る。
シール材を形成する2液性エポキシ樹脂にカーボン粒子を混合しなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、液晶表示装置を作製した。その後、上述の実施例1と同様にして、本比較例で形成されたシール材を透過型顕微
段落[0013]、[0060]、[0062]において誤記の訂正を行いました。これらは、いずれも出願当初の明細書の記載及び図面の記載から誤記であることが明白です。従って、本補正は出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものです。