特開2015-15926(P2015-15926A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-15926(P2015-15926A)
(43)【公開日】2015年1月29日
(54)【発明の名称】調理用ワインの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20060101AFI20141226BHJP
   A23L 1/318 20060101ALI20141226BHJP
   A23L 1/325 20060101ALI20141226BHJP
   A23L 1/22 20060101ALN20141226BHJP
【FI】
   C12G3/04
   A23L1/318
   A23L1/325 A
   A23L1/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-145479(P2013-145479)
(22)【出願日】2013年7月11日
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】大倉 龍起
(72)【発明者】
【氏名】石崎 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】近藤 平人
【テーマコード(参考)】
4B015
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B015LG03
4B015LH11
4B015LP02
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD08
4B042AG02
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK03
4B042AK04
4B042AP04
4B042AP07
4B047LB07
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF04
4B047LG09
4B047LG63
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】高い調理効果を有しながらも、飲用してもおいしいワインの製造方法を提供する。
【解決手段】ワイン中の乳酸量が1300ppm〜7000ppmとなるように、ワインに乳酸を添加する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイン中の乳酸量が1300ppm〜7000ppmとなるようにワインに乳酸を添加することを含む、調理用ワインの製造方法。
【請求項2】
得られた調理用ワイン中の酒石酸量が、800ppm〜3500ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られた調理用ワイン中の酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、及び酢酸の合計量が、3500ppm〜10000ppmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られた調理用ワイン。
【請求項5】
請求項4に記載の調理用ワインに肉又は魚介を漬けこむことを含む、肉又は魚介の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用として適したワインの製造方法に関する。より詳しくは、優れた調理効果を有しながら、飲用してもおいしいワインの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肉類や魚介類などの食品素材を調理する際に、香り付け、風味付け、コク付け、臭み消し、照りの付与などの目的でワインを調味料のように使用することが一般に行われている。また、肉を軟らかくする目的で、加熱調理前にワインに肉を漬けておくことも行われている。このようなワインの特性に鑑みて、ワインの調理効果を高めた調理に適した又は調理専用のワインが製造されている。
【0003】
特許文献1には、ワインにアルカリを添加するか、又はワインをイオン交換樹脂で処理してワイン中の有機酸を除去することにより、ワインのpHを4.5〜7.0に調整した調理に好適なワインが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、白ワインの配合量が40v/v%以上であり、これにクエン酸及び酢酸が特定の濃度となるようにレモン果汁、果実酢等を添加した白ワイン加工調味料が記載されており、特許文献3には赤ワインの配合量が40v/v%以上であり、これにリンゴ酸、酒石酸、及び乳酸を特定の配合比で添加した赤ワイン加工調味料が記載されている。
【0005】
また、ワインに食塩等を添加した調理専用のワイン(クッキングワイン)も市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−213273号公報
【特許文献2】特許第4111302号
【特許文献3】特許第4111303号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、調理用に成分を調整されたワインが製造されているが、こうして得られたワインは、元のワインの風味のバランスを失っており、ワインを直接に飲用するには適さないものとなっていた。
【0008】
本発明は、高い調理効果を有しながら、飲用してもワインとしての良好な風味のバランスが感じられる、調理に適したワインの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ワインの調理効果として、特に、肉を軟らかくする効果に着目し、ワイン中のポリフェノールやアルコール等の各種成分が肉の保水性に与える影響を調べた。その結果、ポリフェノールやアルコール、有機酸等のワイン中の成分のうち、特に有機酸を含む溶液に加熱調理前の肉を漬けこんでおくと、肉の保水性が高まり加熱調理後でも肉の軟らかさが維持されやすいことを見出した。さらに、検討を進めた結果、意外にも、(1)浸漬用の溶液のpHと、肉の保水性向上との間には、必ずしも関連がないこと、及び(2)各種有機酸の浸漬液の中でも、乳酸を含む浸漬液において、肉の保水性の向上効果が高いこと、を見出した。この知見に基づき、乳酸を既存のワインに添加したところ、ワインの調理効果(浸漬液として用いた際の肉の保水性向上効果)が高まることを見出した。また、特定濃度の乳酸の添加では、ワイン自体を飲用した際の風味のバランスも良好であった。したがって、本発明は、これらに限定されないが、次の通りである。
(1)ワイン中の乳酸量が1300ppm〜7000ppmとなるようにワインに乳酸を添加することを含む、調理用ワインの製造方法。
(2)得られた調理用ワイン中の酒石酸量が、800ppm〜3500ppmである、上記(1)に記載の方法。
(3)得られた調理用ワイン中の酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、及び酢酸の合計量が、3500ppm〜10000ppmである、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の方法により得られた調理用ワイン。
(5)上記(4)に記載の調理用ワインに肉又は魚介を漬けこむことを含む、肉又は魚介の調理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い調理効果を有しながら、飲用した場合にもワインとしての良好な風味のバランスが感じられる、調理に適したワインを製造することができる。また、本発明の製造方法は、低コストでもある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】参考例1の結果を示す。
図2】参考例2の結果を示す。
図3】実施例7の結果を示す。
図4】実施例8の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造方法は、ワイン中の乳酸量が1300ppm〜7000ppmとなるように、ワインに乳酸を添加することを含む。
【0013】
(ワイン)
本発明において乳酸を添加するワイン(以下、原料のワインということもある。)は特に限定されず、ワインの通常の製造方法に従って製造されるワインを用いることができる。ブドウの品種や産地は特に限定されない。また、ワインは色や製法により赤ワイン、白ワイン、ロゼワインといった分類がされるが、いずれでもよい。また、複数のワインをブレンドしたものであってもよい。
【0014】
なお、ワイン(特に赤ワイン)では、酵母による主発酵(アルコール発酵)後に、乳酸菌によるマロラクティック発酵を行わせることにより、ワイン中のリンゴ酸を乳酸に変換させて、ワインの酸味を抑え、まろやかな風味にすることがある。本発明では、そのようなマロラクティック発酵を行ったワインを原料のワインとして用いてもよい。しかし、マロラクティック発酵を人為的に行わせる場合、温度管理などの手間がかかり、また時間もかかるので、本発明では、マロラクティック発酵を行っていないワインを原料のワインとして用いてもよい。人為的なマロラクティック発酵を行わせていないワインを原料として用いることで、短期で低コストな製造ができる。なお、マロラクティック発酵は、ブドウ等に付着している乳酸菌によって自然と行われることもあるが、近年では、マロラクティック発酵を行わせるために人為的に乳酸菌を添加することも多く行われている。本発明において、こうした「人為的な乳酸菌の添加」を行わずに製造したワインを原料のワインとして用いることはコストの面から好ましい。本発明では、人為的なマロラクティック発酵を行わせていないものを原料に用いても、肉の保水性を向上させる効果が高く、また、良好に飲用できるワインを製造することができる。
【0015】
本発明では、原料のワインに乳酸を添加することにより、ワイン中の最終の乳酸量が1300ppm〜7000ppmとなるように調整する。したがって、原料のワインとしては、乳酸添加前の乳酸の量が、1300ppm未満のものを用いることとなる。好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下である。
【0016】
(乳酸の添加)
添加する乳酸は、発酵により得た乳酸であってもよいし、化学合成により得た乳酸であってもよい。本発明では、乳酸を原料のワインに添加することにより、最終的に得られるワイン中の乳酸量を1300ppm〜7000ppmの範囲内に調整する。好ましくは1300ppm〜6500ppm、さらに好ましくは1300ppm〜5500ppm、さらに好ましくは2000ppm〜4500ppm、さらに好ましくは2000〜3500ppmである。乳酸量は、高速液体クロマトグラフィー等の公知の手段を用いて測定することができる:
乳酸の添加は、上記のようにして得た原料のワインに対して行う。添加のタイミングや添加時の温度は特に限定しない。原料のワインが保持されている容器(ステンレスのタンク等)に、バット等にて量りとった乳酸を添加しても良いし、タンク内からワインの一部を抜き取り、その中に乳酸を溶解させてから再度元のタンクに加えるという方法で添加しても良い。原料のワインとして複数のワインのブレンドを用いる場合には、乳酸をあるワインに添加後、他のワインとブレンドしても良いし、ブレンド後に乳酸を添加しても良い。また、ワインのろ過後や殺菌後などに乳酸を添加しても良い。添加した後は撹拌機、窒素によるバブリング等でワインを撹拌することが好ましい。その際の温度は特に限定しない。
【0017】
(調理用ワイン)
上記のようにして乳酸が添加されたワインは、調理に好適なワインとして用いることができる。調理に好適なワインとは、調理に用いた際に、食品素材に好適な調理効果を与えることができるように調製されているワインをいう。本発明では、このワインを、「調理用ワイン」と呼ぶことがある。本発明の方法により製造される調理用ワインは、特に、肉類や魚介類をやわらかい食感に仕上げる効果があり、総合的に「食感がよい」、「おいしい」と感じられるような料理に仕上げる効果がある。
【0018】
また、本発明により得られる調理用ワインは、直接に飲用した際にも、ワインの良好な風味のバランスを有しており、通常の飲用のワインとしても、良好に飲むことができる。一般に、調理専用のワインとして市販されているものには、食塩が添加されているものもあるが、本発明の「調理用ワイン」は良好に飲用できるという特徴も有するものであるから、通常、食塩は添加されない。
【0019】
本発明の製造方法により得られる調理用ワインにおける酒石酸量は、好ましくは800〜3500ppm、さらに好ましくは800〜2000ppm、より好ましくは900〜2000ppmである。好ましくは、酒石酸と乳酸との量(ppm)の比が、(酒石酸の量):(乳酸の量)=1:1〜1:7、好ましくは1:1〜1:6、さらに好ましくは1:2〜1:5である。また、調理用ワイン中のリンゴ酸量は、好ましくは700〜2000ppm、さらに好ましくは700〜1500ppmである。また、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、及び酢酸の合計量は、好ましくは3500〜10000ppm、より好ましくは4000〜8000ppmである。これらのような範囲にあれば、ワインとしての風味のバランスがより一層高まる。酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、及び酢酸のそれぞれの量は、高速液体クロマトグラフィー等の公知の手段を用いて測定することができる:
(調理方法)
本発明により得られる調理用ワインは、調理にワインを用いる際の通常の方法で使用することができる。特に本発明の調理用ワインは、肉類や魚介類の保水性を高めてやわらかく仕上げる効果が高いから、それらの料理に好適に用いることができる。典型的には、肉類や魚介類を本発明で得られる調理用ワインと共に煮込んだり、又は肉類や魚介類を加熱調理する前に本発明の調理用ワインに一定時間漬けこむといった方法が考えられる。これらによって、やわらかく仕上がり、総合的に「食感がよい」、「おいしい」と感じられるような料理を作ることができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
(参考例1)
ワイン中の各種成分について、肉の保水性に与える影響を調べた。具体的には、ワイン中のポリフェノールの1種であるエノシアニン(TPP)(1000ppm、3000ppm、5000ppm)、有機酸の一種であるリンゴ酸(酒石酸換算における滴定酸度で1.2g/100ml)、及びアルコール(5%、10%、15%)の各水溶液約50mlを調製し、ここに一定の大きさになるようにカットし、予め重量を測定した牛もも肉(約12g)を、肉が溶液中に完全に漬かるように浸漬した(20℃、30分)。浸漬後の肉を電子レンジで1枚ずつ加熱調理し(500W、30秒)、加熱後の重量を測定した。各肉に関して、保水率を、(加熱後の重量/加熱前の重量)×100で計算して求めた。加熱によって肉中の水分が失われると考えられるから、加熱前の重量に対する加熱後の重量の比(保水率)が高いことは、加熱によって肉中の水分が失われにくいこと(すなわち、肉の保水性が高いこと)を示す。また、一般に保水性が高い肉は、やわらかい食感となることが知られている。
【0022】
結果を図1に示す。図1の最左欄は、浸漬液として水を用いた結果を示す(対照)。図1より、ポリフェノール(エノシアニン)やアルコールは、加熱調理後の肉の保水性を高める効果があまりない(対照と同等)ことがわかる。一方、有機酸であるリンゴ酸の水溶液を用いた場合には、肉の保水性は顕著に向上することがわかる。
【0023】
(参考例2)
ワイン中の各種有機酸について、肉の保水性に与える影響を調べた。具体的には、酒石酸換算における滴定酸度が1.2g/100mlとなる量の酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、及び乳酸の各水溶液を調製し、約10gにカットした牛もも肉を用いて、参考例1と同じ方法で保水率を求めた。結果を図2に示す。図2の最左欄は、水を用いた際の結果を示す(対照)。最右欄は、同じ滴定酸度(酒石酸換算)となるリン酸を用いた結果を示す(比較)。図2のグラフ中の黒塗りの棒は保水率を、白抜きの棒は各水溶液のpHを表す。この結果から、各種有機酸の中でも、乳酸が最も肉の保水性向上効果が高いこと、また、水溶液のpHと肉の保水率との間には関連がみられないことがわかる。
【0024】
(実施例1)
既存のワイン(白ワイン)に酒石酸及び乳酸を添加することにより、酒石酸の濃度を約1000ppmに調整し、また、乳酸の濃度を約1400ppm、2300ppm、3200ppmに調整したワインを作成した。このワインについて、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸の量を測定した。また、このワインを用いて参考例1と同様の方法(ただし、肉の重さは15g程度とし、1時間の浸漬とした。)で、肉の保水率を求めた。また、市販の調理用白ワイン(比較品1)についても同様に試験した。
【0025】
なお、ワイン中の各種有機酸の量は、高速液体クロマトグラフ(島津社製LC−10シリーズ)を用いて以下の方法で測定した:
使用機器:コントローラー(SCL−10A)、送液ポンプ(LC−10AD)、デガッサー(DGU−14A)、カラム槽(CTO−10AC)、オートサンプラー(SIL−10AD)、電気伝導度検出器(CDD−6A)、クロマトパック(C−R7Aplus)、カラム(Shim−pack SCR−102H(8mmI.D×300mmL)を2本直列)、ガードカラム(SCR−102H(6mmI.D×50mmL))
移動液:p−トルエンスルホン酸4.8gを1Lのメスフラスコに量り採り蒸留水にて定容し、それを使用時に5倍希釈し、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過したものを移動液とした。また、カラムを通した後に反応させる液としてp−トルエンスルホン酸4.8gおよびEDTA150mgとBis−Tris20.9gを1Lのメスフラスコに量り採り蒸留水にて定容し、それを使用時に5倍希釈し、0.45μmのメンブレンフィルターを用いて濾過したものを用いた。
流量:1.6ml/分
検出:電気伝導度(Polarityは+に設定)
サンプル注入量:10μl
分析時間:30分
サンプル調製:各試料(ワイン)を10倍希釈したものを試験に供した。
【0026】
結果を表1に示す。表1の有機酸測定値の「合計」は、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸の量の合計値である。表1の結果から、乳酸の量が増加するにつれて、肉の保水率が向上することがわかる。
【0027】
【表1】
【0028】
(実施例2)
既存のワイン(白ワイン)に酒石酸及び乳酸を添加することにより、酒石酸の濃度を約1900ppmに調整し、また、乳酸の濃度を約500ppm、1400ppm、2300ppm、3200ppmに調整したワインを作成した。このワインについて、実施例1と同様の方法で、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸の量を測定した。また、このワインを用いて参考例1と同様の方法(ただし、肉の重さは15g程度とし、1時間の浸漬とした。)で、肉の保水率を求めた。結果を表2に示す。表2の結果から、乳酸の量が増加するにつれて、肉の保水率が向上することがわかる。
【0029】
【表2】
【0030】
(実施例3)
既存のワイン(白ワイン)に酒石酸及び乳酸を添加することにより、酒石酸の濃度を約3000ppmに調整し、また、乳酸の濃度を約500ppm、1400ppm、2400ppm、3400ppmに調整したワインを作成した。このワインについて、実施例1と同様の方法で、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸の量を測定した。また、このワインを用いて参考例1と同様の方法(ただし、肉の重さは15g程度とし、1時間の浸漬とした。)で、肉の保水率を求めた。結果を表3に示す。表3の結果から、乳酸の量が増加するにつれて、肉の保水率が向上することがわかる。
【0031】
【表3】
【0032】
(実施例4)
既存のワイン(赤ワイン)に乳酸及び酒石酸を添加することにより、酒石酸の濃度を約1000ppmに調整し、また、乳酸の濃度を約1400ppm、2300ppm、3200ppmに調整したワインを作成した。このワインについて、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸の量を実施例1に記載の方法で測定した。また、このワインを用いて、実施例1と同様の方法で肉(牛もも肉、厚さ約2mm、重量約2g)の保水率を求めた。また、市販の調理用赤ワイン(比較品4)についても同様に試験した。結果を表4に示す。表4の結果から、乳酸の量が増加するにつれて、肉の保水率が向上することがわかる。
【0033】
【表4】
【0034】
(実施例5)
既存のワイン(赤ワイン)に乳酸及び酒石酸を添加することにより、酒石酸の濃度を約2800ppmに調整し、また、乳酸の濃度を約500ppm、1400ppm、2200ppm、3200ppmに調整したワインを作成した。このワインについて、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸の量を実施例1に記載の方法で測定した。また、このワインを用いて、実施例1と同様の方法で肉(牛もも肉、厚さ約2mm、重量約2g)の保水率を求めた。結果を表5に示す。表5の結果から、乳酸の量が増加するにつれて、肉の保水率が向上することがわかる。
【0035】
【表5】
【0036】
(実施例6)
酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸の量をそれぞれ約1000ppm、約240ppm、約800ppm、約320ppm、約210ppmに調整した白ワインに、乳酸を添加することにより、乳酸量の異なるワインを作成した。このワインを飲用した際のワインとしての味わいのバランスを、5名のパネルにより以下の基準で評価した:
5:ワインとして良いバランス
4:ワインとしてやや良いバランス
3:ワインとしての許容限界
2:ワインとしてややバランスが取れていない
1:ワインとしてバランスが取れていない。
【0037】
結果を表6に示す。官能評価において、3点以上がワインの味わいとして合格のラインである。表6の結果より、本発明の方法で得られたワインは、飲用した際にもワインとしての味わいを有することがわかる。
【0038】
【表6】
【0039】
(実施例7)
比較品1(市販の調理用白ワイン)と発明品2(白ワイン)のそれぞれを用いて、以下の手順で鶏もも肉を調理した:
各白ワイン100ml、サラダ油30ml、玉ねぎ1個をすりおろしたものをよく混ぜて調味液とした。鶏もも肉5枚分を一口大に切ったものを調味液に約24時間浸漬した。その後、ホットプレートでよく焼き、試験に供した。
【0040】
完成した料理について、「肉がやわらかい」、「食感が良い」、「肉がおいしい」と感じるかどうか、22名のパネルで以下の基準(1〜7点)で評価した:
1:そう思わない
4:どちらとも言えない
7:そう思う。
結果を図3に示す。図3の結果から、本発明で得られた調理用ワインは、比較のものに比べて、肉をやわらかくし、食感を良くして、肉をおいしく仕上げることがわかる。
【0041】
(実施例8)
比較品4(市販の調理用赤ワイン)と、発明品11(赤ワイン)のそれぞれを用いて、以下の手順で、牛もも肉を調理した:
各赤ワイン100mlを火にかけ、沸騰してから約1分間加熱を続け、アルコール分を飛ばした。その後、はちみつ大さじ2杯、砂糖30g、ざらめ糖40g、しょうゆ200ml、みそ小さじ1杯を加えて混ぜ、再び沸騰させ、ざらめ糖が溶けたら加熱をやめた。しばらく冷やした後、りんごのすりおろしを50ml、玉ねぎのすりおろしを50ml、にんにくのすりおろしを大さじ2杯、しょうがのすりおろしを大さじ1杯、ごま油大さじ2杯、すりごま大さじ3杯を加えてよく混ぜて調味液とした。この調味液100mlに牛もも肉を300gからませて約24時間5℃冷蔵庫で保管した。その後、ホットプレートで両面をよく焼き試験に供した。
【0042】
完成した料理について、「肉がやわらかい」、「食感が良い」、「肉がおいしい」、「まろやかである」と感じるかどうか、19名のパネルで実施例4と同様の基準(1〜7点)で評価した。結果を図4に示す。図4の結果から、本発明で得られた調理用ワインは、比較のものに比べて、肉をやわらかくし、食感を良くして、肉をおいしく、まろやかに仕上げることがわかる。
図1
図2
図3
図4