【実施例1】
【0012】
[システム構成]
図1は、実施例1に係る捕獲通知システムの構成を示す図である。
図1に示す捕獲通知システム1は、動物の生息域に設置された捕獲器3A〜3Cによる動物の捕獲をクライアント端末50へ通知する捕獲通知サービスを提供するものである。
【0013】
図1に示すように、捕獲通知システム1は、捕獲器3A〜3Cと、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ30A〜30Cと、中継装置20と、サーバ装置10と、クライアント端末50とが収容される。なお、以下では、捕獲器3A〜3C、RFIDタグ30A〜30Cを区別なく総称する場合には、「捕獲器3」、「RFIDタグ30」と記載する場合がある。また、RFIDタグ30A〜30Cに搭載される加速度センサ31A〜31Cを区別なく総称する場合にも、「加速度センサ31」と記載する場合がある。
【0014】
このうち、中継装置20及びRFIDタグ30の間は、無線LAN(Local Area Network)などの通信網を介して相互に通信可能に接続される。ここでは、一例として、無線LANを介して接続される場合を例示するが、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等の近距離無線通信によって通信接続されることとしてもかまわない。また、サーバ装置10、中継装置20及びクライアント端末50の間は、ネットワーク7を介して相互に通信可能に接続される。かかるネットワーク7には、有線または無線を問わず、インターネット(Internet)を始め、LANやVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を採用できる。
【0015】
捕獲器3は、動物を捕獲する罠の機構である。かかる捕獲器3は、一例として、農業等の産業に被害を与える害獣、例えばイノシシ、鹿や熊の生息域に集落の自治体もしくは住民などの関係者によって設置される。
【0016】
RFIDタグ30は、加速度センサ31を搭載するアクティブ型IC(Integrated Circuit)タグである。かかるRFIDタグ30は、捕獲器3の個体識別に用いられるとともに、加速度センサ31によって捕獲器3の振動情報、すなわち加速度データの採取に用いられる。このRIFDタグ30に搭載される加速度センサ31には、一例として、XYZ軸の3方向の加速度を測定できる3軸加速度センサを採用できる。
【0017】
一実施形態として、捕獲器3には、箱状の罠である「箱罠」を採用できる。
図2は、箱罠の一例を示す図である。
図2に示すように、捕獲器3は、箱状に形成された檻であり、侵入口から動物が入り込むと、作動装置の働きにより侵入口が閉じて動物を閉じ込める。ここで、捕獲器3の内部に動物を誘い込むために、捕獲対象とする動物の種類に応じてその餌を捕獲器3の内部に用意しておくこともできる。また、捕獲器3は、動物が暴れることによって一定範囲以上にわたって移動するのを抑制する観点から、ロープ等を介して副え木4に固定される。このように捕獲器3が箱罠である場合、捕獲対象とする動物が触れにくい箱罠の天井にRFIDタグ30が設置される。かかる配置によって、RFIDタグ30は、動物が箱罠に掛かった場合にその内部で動物が動くことによって生じる箱罠の振動を加速度センサ31によって採取できるとともに、動物が箱罠の外部からRFIDタグ30を傷つけるのを抑制できる。なお、
図2には、箱罠の天井にRFIDタグ30を設置する場合を例示したが、箱罠の振動が採取できる箇所であれば他の任意の箇所、例えば箱罠の側面等に設置できる。
【0018】
他の実施形態として、捕獲器3には、輪状の罠である「くくり罠」を採用することもできる。
図3は、くくり罠の一例を示す図である。
図3に示すように、捕獲器3は、輪301、踏み板302、トリガー303、バネ304、ワイヤー305及び固定部306を有する。このうち、踏み板302が動物の足によって踏まれると、トリガー303が作動する。これによって、緊張状態にあるバネ304の留め具が外れてバネ304が縮む。この結果、輪301の径が縮み、動物の足が輪301によって拘束される。一方、輪301の他端は固定部306によって木4に根付けされており、ワイヤー305上の固定部306の近辺にRFIDタグ30が設置される。このため、動物が輪301によって捕獲された状態で動くとバネ304が伸縮し、これに伴ってワイヤー305も連動する。このワイヤー305の動きが加速度センサ31によって採取される。
【0019】
ここで、上記の加速度センサ31は、所定のサンプリング周期でXYZの3軸の加速度を計測する。以下では、一例として、加速度センサ31は、100ms周期で加速度を計測し、RFIDタグ30が10秒周期で加速度データを中継装置20を介してサーバ装置10へアップロードする場合を想定して説明を行うこととする。この場合、1軸につき100サンプルの加速度の時系列データ、すなわち3軸で300サンプルの加速度の時系列データが10秒ごとにサーバ装置10へアップロードされることになる。なお、以下では、加速度の時系列データのことを「加速度データ」と記載する場合がある。
【0020】
中継装置20は、RFIDタグ30とサーバ装置10の間を中継する装置である。かかる中継装置20は、AP(Access Point)としての機能を有し、RFIDタグ30のRFIDリーダとして動作する。一例としては、中継装置20は、RFIDタグ30から加速度データが受信する度に、当該加速度データをサーバ装置10に転送する。なお、
図1には、1つの中継装置20に対し、3つのRFIDタグ30が収容される場合を例示したが、中継装置20が収容するRFIDタグ30の数は2つであってもよいし、4つ以上であってもかまわない。また、複数の中継装置20をシステムに収容することによってより広域により多数のRFIDタグ30を収容できるようにしてもよい。
【0021】
サーバ装置10は、上記の捕獲通知サービスをクライアント端末50に提供するコンピュータである。一実施形態としては、サーバ装置10は、捕獲通知サービスを実現するWebサーバとして実装することとしてもよいし、また、捕獲通知サービスをアウトソーシングにより提供するクラウドとして実装することもできる。他の実施形態としては、パッケージソフトウェアやオンラインソフトウェアとして提供される捕獲通知プログラムを所望のコンピュータにプリインストール又はインストールさせることによっても実装できる。
【0022】
クライアント端末50は、上記の捕獲通知サービスの提供を受けるコンピュータである。一実施形態として、クライアント端末50には、スマートフォンを始め、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)やPDA(Personal Digital Assistants)などの移動体通信端末、さらには、スレート端末やタブレット端末などを採用することができる。かかる携帯端末装置以外にも、クライアント端末50には、パーソナルコンピュータを採用することもできる。
【0023】
例えば、上記のクライアント端末50は、上記の捕獲通知サービスに加入する自治体または住民等の関係者によって使用される。このクライアント端末50は、関係者が保有する携帯端末装置や情報処理装置などを流用することとしてもよいし、上記の捕獲通知サービスの提供者が関係者に販売またはリースによって提供することとしてもよい。
【0024】
ここで、上記のクライアント端末50は、サーバ装置10からの動物の捕獲通知を受ける情報出力手段として利用される一面で、捕獲器3に関する各種の情報を登録する場合にも用いることができる。この際、クライアント端末50がスマートフォン等の移動体通信端末である場合には、移動体通信端末に標準装備されるGPS(Global Positioning System)やカメラを用いて、捕獲器3の位置情報や画像を採取することができる。
【0025】
例えば、クライアント端末50には、上記の捕獲通知サービスの提供を受けるクライアント用のアプリケーションプログラムをインストールさせておく。このアプリケーションの動作中にカメラを起動させて捕獲器3の画像が撮像されると、当該画像が撮像された位置がGPS受信機によって測定される。そして、クライアント端末50は、所定の入力画面をタッチパネル等のディスプレイに表示させた上で、RFIDタグ30の識別情報、例えばタグ番号の入力を受け付ける。その後、クライアント端末50は、入力を受け付けたタグ番号に捕獲器3の画像および位置情報を対応付けてサーバ装置10にアップロードする。これによって、サーバ装置10は、RFIDタグ30ごとに当該RFIDタグ30の位置情報を始めとする属性情報を収集の上で登録できる。この結果、サーバ装置10は、RFIDタグ30にGPS受信機が搭載されておらずとも、捕獲通知の実行時に動物が捕獲された捕獲器3の位置情報等の属性情報も含めて捕獲通知を実行することが可能になる。
【0026】
[サーバ装置10の構成]
続いて、本実施例に係るサーバ装置10の機能的構成について説明する。
図4は、実施例1に係るサーバ装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図4に示すように、サーバ装置10は、通信I/F(InterFace)部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、サーバ装置10は、
図4に示した機能部以外にも既知のサーバ装置が有する各種の機能部、例えば各種の入力デバイスや音声出力デバイスなどの機能部を有することとしてもかまわない。
【0027】
通信I/F部11は、他の装置、例えばRFIDタグ30やクライアント端末50との間で通信制御を行うインタフェースである。かかる通信I/F部11の一態様としては、LANカードなどのネットワークインタフェースカードを採用できる。例えば、通信I/F部11は、RFIDタグ30から加速度データのアップロードを受け付けたり、アップロードに関する設定ファイルや電池残量の問合せ等をRFIDタグ30へ送信したりする。また、通信I/F部11は、クライアント端末50から動物の生息域や生息数の閲覧要求を受け付けたり、動物の捕獲通知をクライアント端末50へ送信したりする。
【0028】
記憶部13は、制御部15で実行されるOS(Operating System)や捕獲通知プログラムなどの各種プログラムを記憶する記憶デバイスである。記憶部13の一態様としては、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置が挙げられる。なお、記憶部13は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
【0029】
記憶部13は、制御部15で実行されるプログラムに用いられるデータの一例として、捕獲器データ13aと、加速度データ13bとを記憶する。これら捕獲器データ13a及び加速度データ13b以外にも、他の電子データ、例えば動物の生息域の地図情報、動物の生息数、過去の動物の捕獲数や関係者のアドレス情報などの電子データなども併せて記憶することもできる。
【0030】
捕獲器データ13aは、捕獲器3に関するデータである。かかる捕獲器データ13aの一例としては、タグ番号、設置場所、X軸計測ファイル、Y軸計測ファイル、Z軸計測ファイル及び写真ファイルなどの項目が対応付けられた情報を採用できる。ここで言う「タグ番号」とは、捕獲器3に付されたRFIDタグ30の識別情報の一例である。また、「設置場所」とは、捕獲器3の設置場所を指す。また、「X軸計測ファイル名」とは、加速度センサ31によって計測されたX軸の加速度の時系列データのファイル名を指す。同様に、「Y軸計測ファイル名」及び「Z軸計測ファイル名」は、Y軸またはZ軸の加速度の時系列データのファイル名を指す。また、「写真ファイル」とは、捕獲器3の画像のファイル名を指す。
【0031】
図5は、捕獲器データ13aの一例を示す図である。
図5に示す1番目のレコードの例では、タグ番号「W001」のRFIDタグ30が付された捕獲器3が緯度「J1」及び経度「K1」の位置に設置されており、XYZ軸の加速度データのファイル名の各々が「W001Xd」、「W001Yd」、「W001Zd」であることを意味する。また、
図5に示す2番目以降のレコードについても、同様の意味合いを持つ。なお、
図5には、捕獲器データ13aのデータ形式がテーブルである場合を例示したが、テーブル以外のデータ形式を採用することもできる。
【0032】
加速度データ13bは、加速度の時系列データである。かかる加速度データ13bの一例としては、時刻及び加速度のセンサ値が対応付けられたデータを採用できる。
図6は、加速度データ13bの一例を示す図である。
図6には、X軸計測ファイル名「W001Xd」の加速度データが例示されている。
図6に示すように、時刻t1に加速度ac1が計測された後に、時刻t2に加速度ac2が計測され、時刻t3に加速度ac3が計測されていることを意味する。上述したように、加速度センサ31のサンプリング周期が100msecである場合には、各時刻t1、t2、t3の間隔はそれぞれ100msecとなる。なお、
図6には、X軸の加速度データを例示したが、Y軸及びZ軸の加速度データについても同様のスキームを採用できる。また、
図6には、加速度データ13bのデータ形式がテーブルである場合を例示したが、テーブル以外のデータ形式を採用することもできる。さらに、
図6には、XYZ方向の3軸ごとに加速度データのファイルが別ファイルである場合を例示したが、3軸の加速度データは1つのファイルに統合されることとしてもかまわない。
【0033】
制御部15は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部15は、
図4に示すように、登録部15aと、受信部15bと、開始判定部15cと、捕獲判定部15dと、出力部15eとを有する。
【0034】
登録部15aは、捕獲器データ13aを登録する処理部である。一実施形態として、登録部15aは、クライアント端末50から捕獲器3の登録要求を受け付けた場合に、当該登録要求に含まれる捕獲器3のタグ番号、画像および位置情報を記憶部13内の捕獲器データ13aに追加登録する。なお、ここでは、一例として、クライアント端末50を介して捕獲器データ13aの登録を実行させる場合を例示したが、これ以外の登録形態を採用することもできる。例えば、上記の捕獲通知サービスが提供される関係者のうち管理者権限を有する者が使用する端末に絞って捕獲器データ13aの登録を受け付けるようにしてもよい。
【0035】
受信部15bは、RFIDタグ30から加速度データを受信する処理部である。一実施形態として、受信部15bは、RFIDタグ30から加速度データを受信する度に、記憶部13に記憶された加速度データ13bのうち当該加速度データの送信を行ったRFIDタグ30のタグ番号に対応する加速度データに今回受信した加速度データを追加更新する。かかる追加登録は、必ずしも無制限に実行されずともよい。例えば、1つのRFIDタグ30の加速度データが所定のデータサイズを超える場合には、最古のデータから順に上書き更新することとしてもかまわない。また、受信部15bは、加速度のサンプリング周期やアップロード周期の設定を変更する設定変更ファイルをRFIDタグ30へ送信することによってサンプリング周期やアップロード周期を任意の周期に設定変更することとしてもかまわない。
【0036】
開始判定部15cは、後述の捕獲判定部15dによる捕獲判定の実行を開始するか否かを判定する処理部である。このような開始判定を前処理として実行するのは、捕獲器3による捕獲がなされていない公算が高い状況で詳細な振動の解析を実行した場合にはサーバ装置10のリソースが無駄に消費されることになり得るからである。
【0037】
一実施形態として、開始判定部15cは、前回に開始判定を行ってから所定の期間、例えば10分が経過したか否かを判定する。そして、開始判定部15cは、所定の期間が経過すると、記憶部13に記憶された加速度データ13bのうち前回に開始判定を行ってから蓄積された加速度データ、すなわち10分間の加速度データを読み出す。その上で、開始判定部15cは、先に読み出された加速度データのうち古い時刻の加速度のセンサ値から順に当該加速度が所定の閾値を超えるか否かを判定する。このとき、開始判定部15cは、加速度の絶対値が閾値を超えるかを判定する。そして、開始判定部15cは、加速度のセンサ値が閾値を超える場合には、加速度が閾値を超えた時刻から一定期間βの加速度データを対象に、詳細な振動情報の解析、すなわち動物の捕獲判定を開始するように捕獲判定部15dへ指示する。一方、開始判定部15cは、先に読み出された加速度データから閾値を超える加速度が検出されなかった場合には、捕獲器3による捕獲がなされていない公算が高いので、捕獲判定部15dによる捕獲判定は実行させない。なお、上記の開始判定は、3軸のXYZの加速度データごとに実行されるが、これらは直列に実行されることとしてもよいし、並行して実行されることとしてもかまわない。
【0038】
捕獲判定部15dは、加速度データを用いて、捕獲器3によって動物の捕獲がなされたか否かを判定する処理部である。
【0039】
一実施形態として、捕獲判定部15dは、開始判定部15cによって加速度のセンサ値が閾値を超過すると判定された場合に、加速度が閾値を超えた時刻から一定期間βの加速度データを取得する。そして、捕獲判定部15dは、先に取得された一定期間βの加速データのうち古い時刻の加速度のセンサ値から順に所定の窓幅αの加速度データを抽出する。その上で、捕獲判定部15dは、上記の窓幅αの間で加速度が閾値を超える回数を算出する。ここで言う「閾値」は、上記の開始判定部15cが用いる閾値と同一の値であってもよいし、異なる値であってもかまわない。その後、捕獲判定部15dは、加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q以上であるか否かを判定する。
【0040】
このとき、加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q以上である場合には、動物が捕獲器3によって捕獲されたか、あるいは捕獲器3によって捕獲された動物が動いている可能性がある。この場合には、捕獲判定部15dは、一定期間βの加速度データのうち先に抽出が実行された窓幅の続きの時刻を起点として窓幅αの加速度データをさらに抽出する。一方、加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q未満である場合には、以前に閾値を超える加速度が計測されていたとしてもその振動が一時的な現象、例えば強風、地震あるいは動物や人間による捕獲器3の外からの接触等が原因である公算が高いと推定できる。なぜなら、動物が捕獲器3によって捕獲された場合には、動物は意識がある以上、捕獲器3からの脱出を目指して動き続ける可能性の方が高いからである。この場合には、捕獲判定部15dが捕獲判定を終了した次の時刻から開始判定部15cによる開始判定が継続される。
【0041】
ここで、一定期間βを占める全ての窓幅αで加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q以上である場合には、一時的な現象ではなく、捕獲器3によって捕獲された動物が捕獲器3からの脱出を目指して動き続けているとみなすことができる。この場合には、後述の出力部15eによって捕獲通知が実行される。
【0042】
出力部15eは、動物の捕獲通知を出力する処理部である。
【0043】
一実施形態として、出力部15eは、一定期間βを占める全ての窓幅αで加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q以上である場合に、加速度センサ31が振動を検出する捕獲器3を特定可能な情報、例えばタグ番号をクライアント端末50へ出力する。これに加えて、出力部15eは、記憶部13に記憶された捕獲器データ13aを参照して、当該動物が捕獲されていると判定された捕獲器3のタグ番号に対応付けられた設置場所の緯度及び経度を読み出す。その上で、出力部15eは、自治体の管轄区域の地図情報とともに動物が捕獲されていると判定された捕獲器3の設置位置をクライアント端末50に出力することもできる。この場合、自治体の管轄区域の地図上に捕獲器3の設置位置のマーカー等が示された表示データをクライアント端末50へ出力することもできる。
図7は、捕獲通知画面の一例を示す図である。
図7には、
図5に示した捕獲器データ13aのうちタグ番号「W001」を持つRFIDタグ30が設置された捕獲器3の位置情報が通知される場合を例示している。
図7に示すように、クライアント端末50には、自治体の管轄区域の地図上に動物が捕獲された捕獲器3の設置位置が表示される。かかる表示によって、関係者は、捕獲器3によって動物が捕獲された事実だけでなく、集落の点検で確認する罠の位置も把握できるので、フィールドワークをより効果的に支援できる。また、出力部15eは、自治体の管轄区域の地図上に各捕獲器3の設置位置をクライアント端末50に表示させる場合には、動物が捕獲された捕獲器3とそうでない捕獲器3との間で表示態様を区別することもできる。
図8は、捕獲通知画面の一例を示す図である。
図8にも、
図5に示した捕獲器データ13aのうちタグ番号「W001」を持つRFIDタグ30が設置された捕獲器3の位置情報が通知される場合を例示している。
図8に示すように、クライアント端末50には、自治体の管轄区域に設置された捕獲器3が表示されているが、動物が捕獲された捕獲器3の設置位置を示すマーカは反転表示されることによって動物が捕獲されていない捕獲器3と区別して表示されている。かかる表示によれば、関係者は、設置を行った捕獲器3の中でもいずれの捕獲器3で動物が捕獲されたのかも把握できる。このため、フィールドワークをより効果的に支援できる。
【0044】
なお、制御部15には、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などに捕獲通知プログラムを実行させることによって実現できる。また、上記の制御部15は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
【0045】
[処理の流れ]
図9は、実施例1に係る捕獲通知処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、開始判定部15cによって加速度のセンサ値が閾値を超えると判定された場合に、捕獲判定部15dによって処理が起動される。
【0046】
図9に示すように、捕獲判定部15dは、開始判定部15cによって加速度が閾値を超えると判定された時刻から一定期間βの加速度データを取得する(ステップS101)。そして、捕獲判定部15dは、ステップS101で取得された一定期間βの加速データのうち古い時刻の加速度のセンサ値から順に所定の窓幅αの加速度データを抽出する(ステップS102)。
【0047】
その上で、捕獲判定部15dは、ステップS102で抽出された窓幅αの間で加速度が閾値を超える回数を算出する(ステップS103)。
【0048】
このとき、加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q以上である場合(ステップS104Yes)には、動物が捕獲器3によって捕獲されたか、あるいは捕獲器3によって捕獲された動物が動いている可能性がある。この場合、一定期間βの全期間にわたって窓幅αの抽出が終了するまで(ステップS105No)、捕獲判定部15dは、一定期間βの加速度データのうち先に抽出が実行された窓幅の続きの時刻を起点として窓幅αの加速度データをさらに抽出し(ステップS102)、ステップS103以降の処理を繰り返し実行する。
【0049】
一方、加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q未満である場合(ステップS104No)には、以前に閾値を超える加速度が計測されていたとしてもその振動が一時的な現象、例えば強風、地震あるいは動物や人間による捕獲器3の外からの接触等が原因である公算が高いと推定できる。なぜなら、動物が捕獲器3によって捕獲された場合には、動物は意識がある以上、捕獲器3からの脱出を目指して動き続ける可能性の方が高いからである。この場合には、そのまま処理を終了する。
【0050】
ここで、一定期間βを占める全ての窓幅αで加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q以上である場合(ステップS104YesかつステップS105Yes)には、一時的な現象ではなく、捕獲器3によって捕獲された動物が捕獲器3からの脱出を目指して動き続けているとみなすことができる。この場合には、出力部15eは、捕獲通知をクライアント端末50へ出力し(ステップS106)、処理を終了する。
【0051】
[実施例1の効果]
上述してきたように、本実施例に係るサーバ装置10は、捕獲器3の振動を検出するセンサ装置から定期的に送信される捕獲器3の振動情報において所定値よりも大きい振動を、それぞれ所定の幅を有し、連続する複数の期間内の各々で所定回数以上検出すると、捕獲通知を実行する。このため、本実施例に係るサーバ装置10では、捕獲器3の振動が一時的な現象、例えば強風、地震あるいは動物や人間による捕獲器3の外からの接触等である場合に通知を行うのを抑制できる。したがって、本実施例に係るサーバ装置10によれば、捕獲通知を精度よく実行できる。
【0052】
また、本実施例に係るサーバ装置10は、各捕獲器3の位置情報を記憶する記憶部を参照して、捕獲器3の位置情報をクライアント端末50へ出力する。このため、本実施例に係るサーバ装置10によれば、GPS受信機等の高価なハードウェアをRFIDタグ30に搭載せずとも、動物が捕獲された捕獲器3の位置情報を出力できる。
【0053】
さらに、本実施例に係る捕獲通知システム1では、センシングに加速度センサ31搭載のRFIDタグ30を用いる。それ故、本実施例に係る捕獲通知システム1では、ポーリングによってRFIDタグ30の死活を監視できる。
【実施例2】
【0054】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0055】
[応用例]
上記の捕獲判定部15dは、捕獲器3によって動物が捕獲されたか否かだけでなく、どのような動物が捕獲されたのかをさらに推定することもできる。例えば、捕獲判定部15dは、加速度の絶対値が第1の閾値を超過し、かつ第1の閾値よりも大きい第2の閾値以下である場合には、小動物が捕獲器3によって捕獲されたものと推定する一方で、加速度の絶対値が第2の閾値を超過する場合には、大動物が捕獲器3によって捕獲されたものと推定することもできる。この他、捕獲判定部15dは、加速度の絶対値が閾値を超える頻度が第1の閾値を超過し、かつ第1の閾値よりも大きい第2の閾値以下である場合には、小回りのきかない大動物が捕獲器3によって捕獲されたものと推定する一方で、加速度の絶対値が第2の閾値を超過する場合には、小回りのきく小動物が捕獲器3によって捕獲されたものと推定することもできる。また、捕獲判定部15dは、上記の一定期間βにわたる捕獲判定をさらに繰り返し実行することもできる。例えば、捕獲判定部15dは、
図9に示したフローチャートでステップS105Yesと判定され続ける限りは動物の捕獲状態が継続していると判定する一方で、その連続が途切れた場合に動物が捕獲器3から脱出した可能性があると判定することもできる。この場合、脱出の可能性を通知することによって現場確認を急がせることもできる。なお、上記の実施例1では、一定期間βを占める全ての窓幅αで加速度が閾値を超える回数が所定の回数Q以上である場合に始めて動物が捕獲されたと推定する場合を例示したが、窓幅αで加速度が閾値をQ回以上超えると判定された場合に、動物が捕獲されたと推定し、捕獲通知を実行することとしてもかまわない。
【0056】
[加速度]
上記の実施例1では、加速度の絶対値が閾値を超えるか否かによって上記の開始判定や上記の捕獲判定を実行する場合を例示したがこれに限定されない。例えば、加速度が正の値を持つ閾値を超えるか否か、あるいは加速度が負の値を持つ閾値を下回るかによって上記の開始判定や上記の捕獲判定を実行することもできる。
【0057】
[適用範囲]
上記の実施例1では、捕獲器3として箱罠やくくり罠等の哺乳類を捕獲しやすい罠を例示したが、哺乳類のみならず、鳥獣の捕獲を得意とする捕獲器を設置することもできる。
【0058】
[分散および統合]
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、登録部15a、受信部15b、開始判定部15c、捕獲判定部15dまたは出力部15eをサーバ装置10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしてもよい。また、登録部15a、受信部15b、開始判定部15c、捕獲判定部15dまたは出力部15eを別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記のサーバ装置10の機能を実現するようにしてもよい。
【0059】
[捕獲通知プログラム]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、
図10を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する捕獲通知プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。
【0060】
図10は、実施例1及び実施例2に係る捕獲通知プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
図10に示すように、コンピュータ100は、操作部110aと、スピーカ110bと、カメラ110cと、ディスプレイ120と、通信部130とを有する。さらに、このコンピュータ100は、CPU150と、ROM160と、HDD170と、RAM180とを有する。これら110〜180の各部はバス140を介して接続される。
【0061】
HDD170には、
図10に示すように、上記の実施例1で示した受信部15b、開始判定部15c、捕獲判定部15d及び出力部15eと同様の機能を発揮する捕獲通知プログラム170aが予め記憶される。この捕獲通知プログラム170aについては、
図4に示した各々の受信部15b、開始判定部15c、捕獲判定部15d及び出力部15eの各構成要素と同様、適宜統合又は分離しても良い。すなわち、HDD170に格納される各データは、常に全てのデータがHDD170に格納される必要はなく、処理に必要なデータのみがHDD170に格納されれば良い。
【0062】
そして、CPU150が、捕獲通知プログラム170aをHDD170から読み出してRAM180に展開する。これによって、
図10に示すように、捕獲通知プログラム170aは、捕獲通知プロセス180aとして機能する。この捕獲通知プロセス180aは、HDD170から読み出した各種データを適宜RAM180上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開した各種データに基づいて各種処理を実行する。なお、捕獲通知プロセス180aは、
図4に示した受信部15b、開始判定部15c、捕獲判定部15d及び出力部15eにて実行される処理、例えば
図9に示す処理を含む。また、CPU150上で仮想的に実現される各処理部は、常に全ての処理部がCPU150上で動作する必要はなく、処理に必要な処理部のみが仮想的に実現されれば良い。
【0063】
なお、上記の捕獲通知プログラム170aについては、必ずしも最初からHDD170やROM160に記憶させておく必要はない。例えば、コンピュータ100に挿入されるフレキシブルディスク、いわゆるFD、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に各プログラムを記憶させる。そして、コンピュータ100がこれらの可搬用の物理媒体から各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ100に接続される他のコンピュータまたはサーバ装置などに各プログラムを記憶させておき、コンピュータ100がこれらから各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。