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特開2015-160183吸着された揮発性有機化合物の回収方法および回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-160183(P2015-160183A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】吸着された揮発性有機化合物の回収方法および回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20150811BHJP
   B01D 53/44 20060101ALI20150811BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20150811BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20150811BHJP
【FI】
   B01D53/04 FZAB
   B01D53/04 G
   B01D53/34 117A
   B01J20/34 D
   B01J20/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-37898(P2014-37898)
(22)【出願日】2014年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】399031883
【氏名又は名称】株式会社モリカワ
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】森川 健司
(72)【発明者】
【氏名】森川 潔
(72)【発明者】
【氏名】森川 毅
(72)【発明者】
【氏名】高野 善一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 将博
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D002AA21
4D002AA33
4D002AA40
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA41
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB11
4D012BA03
4D012CA12
4D012CB05
4D012CD01
4D012CD04
4D012CE03
4D012CF08
4D012CG01
4D012CH06
4G066AA04B
4G066BA12
4G066CA33
4G066CA51
4G066CA56
4G066DA02
4G066GA01
4G066GA06
4G066GA32
(57)【要約】
【課題】揮発性有機化合物が吸着された吸着材が充填されたカートリッジから揮発性有機化合物を回収する場合に、回収にかかるエネルギー、コストの低減を図る。
【解決手段】第一、第二熱交換器9、11によりカートリッジ4を加熱してカートリッジ4から揮発性有機化合物を蒸発させる蒸発工程の後に、キャリアガスによりカートリッジ4から揮発性有機化合物を脱着する脱着工程を行なうようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物が吸着された吸着材が充填されたカートリッジから揮発性有機化合物を回収するための回収方法であって、当該回収方法は、室内にカートリッジがセットされる回収室と、カートリッジから揮発性有機化合物を蒸発させるべくカートリッジを加熱する加熱手段と、カートリッジから揮発性有機化合物を脱着するべくカートリッジにキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記加熱手段による蒸発およびキャリアガスによる脱着で生成されたガス状又はミスト状の揮発性有機化合物を液化する液化手段とを備え、加熱手段によりカートリッジから揮発性有機化合物を蒸発させる蒸発工程の後に、キャリアガスによりカートリッジから揮発性有機化合物を脱着させる脱着工程を行なうことを特徴とする吸着された揮発性有機化合物の回収方法。
【請求項2】
加熱手段は、キャリアガスによる脱着工程においてもカートリッジを加熱することを特徴とする請求項1記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法。
【請求項3】
加熱手段として、カートリッジ内に配設され、カートリッジをカートリッジ内部から加熱する第一の加熱手段、または/および回収室内に配設され、カートリッジをカートリッジ外周面から加熱する第二の加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法。
【請求項4】
加熱手段は、蒸気を加熱媒体とする熱交換器であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法。
【請求項5】
加熱手段によるカートリッジの加熱温度は、吸着材に吸着された揮発性有機化合物の沸点より30℃〜60℃高い温度に設定されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法。
【請求項6】
揮発性有機化合物が吸着された吸着材は活性炭であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法。
【請求項7】
揮発性有機化合物が吸着された吸着材が充填されたカートリッジから揮発性有機化合物を回収するための回収装置であって、当該回収装置は、室内にカートリッジがセットされる回収室と、カートリッジから揮発性有機化合物を蒸発させるべくカートリッジを加熱する加熱手段と、揮発性有機化合物を蒸発させた後のカートリッジから揮発性有機化合物を脱着するべくカートリッジにキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記加熱手段による蒸発およびキャリアガスによる脱着で生成されたガス状又はミスト状の揮発性有機化合物を液化する液化手段とを備えて構成されることを特徴とする吸着された揮発性有機化合物の回収装置。
【請求項8】
加熱手段は、キャリアガスによる脱着時においてもカートリッジを加熱することを特徴とする請求項7記載の吸着された揮発性有機化合物の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭等の吸着材に吸着された揮発性有機化合物を回収するための吸着された揮発性有機化合物の回収方法および回収装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)は、化学工場、塗装工場、印刷工場、薬品工場、半導体製造工場、精密機械製造工場等の各種施設において、反応、抽出、コーティング、脱脂洗浄等の各種工程で溶剤として広く用いられている。この様な揮発性の高い有機化合物がガス化して大気中に排出されると、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の要因になり、そこで、ガス化した有機化合物を回収するための回収システムが必要とされる。
この様な揮発性有機化合物の回収システムとして、従来、揮発性有機化合物の使用施設において吸着材が充填されたカートリッジに揮発性有機化合物を吸着させると共に、該揮発性有機化合物を吸着した吸着材が充填されたカートリッジを専門の回収施設に集積し、該専門の回収施設において吸着材から揮発性有機化合物を回収する回収システムが構築されている(例えば、特許文献1参照。)。
ところで前記回収システムにおいて専門の回収施設で揮発性有機化合物を吸着材から回収しようとするとき、吸着材の脱着方法として従来から知られているキャリアガスを用いた脱着を行うことが提唱される。このようなキャリアガスを用いた脱着方法として、従来、空気や窒素ガス等のドライガスをキャリアガスとして吸着材に供給して脱着する方法や、ドライガスに換えて蒸気をキャリアガスとして吸着材に供給して脱着する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3773809号公報
【特許文献2】特開2011−125800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ドライガスをキャリアガスとして用いた脱着では、蒸気平衡濃度のために、脱着後のキャリアガスと有機化合物ガスとの混合ガス中に含まれる有機化合物ガスの濃度が低くなる。このため、脱着された有機化合物ガスを凝縮して液化回収する場合に、凝縮時間が長くなるうえ、凝縮装置を大型化させざるを得ず、省エネルギー化、コスト低減の妨げになるという問題がある。
一方、蒸気を用いた脱着では、脱着された有機化合物ガスと、キャリアとして用いた多量の蒸気とが混合ガスとなって排出される。このため、脱着された有機化合物ガスを凝縮して液化回収する場合に、有機化合物と凝縮水との分離工程が必要であり、さらに凝縮水中に混入している有機化合物を分離して除去する工程も必要であって、有機化合物の回収に必要なエネルギー、コストが前記ドライガスを用いた脱着よりもさらに高くなるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、揮発性有機化合物が吸着された吸着材が充填されたカートリッジから揮発性有機化合物を回収するための回収方法であって、当該回収方法は、室内にカートリッジがセットされる回収室と、カートリッジから揮発性有機化合物を蒸発させるべくカートリッジを加熱する加熱手段と、カートリッジから揮発性有機化合物を脱着するべくカートリッジにキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記加熱手段による蒸発およびキャリアガスによる脱着で生成されたガス状又はミスト状の揮発性有機化合物を液化する液化手段とを備え、加熱手段によりカートリッジから揮発性有機化合物を蒸発させる蒸発工程の後に、キャリアガスによりカートリッジから揮発性有機化合物を脱着させる脱着工程を行なうことを特徴とする吸着された揮発性有機化合物の回収方法である。
請求項2の発明は、加熱手段は、キャリアガスによる脱着工程においてもカートリッジを加熱することを特徴とする請求項1記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法である。
請求項3の発明は、加熱手段として、カートリッジ内に配設され、カートリッジをカートリッジ内部から加熱する第一の加熱手段、または/および回収室内に配設され、カートリッジをカートリッジ外周面から加熱する第二の加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法である。
請求項4の発明は、加熱手段は、蒸気を加熱媒体とする熱交換器であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法である。
請求項5の発明は、加熱手段によるカートリッジの加熱温度は、吸着材に吸着された揮発性有機化合物の沸点より30℃〜60℃高い温度に設定されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法である。
請求項6の発明は、揮発性有機化合物が吸着された吸着材は活性炭であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の吸着された揮発性有機化合物の回収方法である。
請求項7の発明は、揮発性有機化合物が吸着された吸着材が充填されたカートリッジから揮発性有機化合物を回収するための回収装置であって、当該回収装置は、室内にカートリッジがセットされる回収室と、カートリッジから揮発性有機化合物を蒸発させるべくカートリッジを加熱する加熱手段と、揮発性有機化合物を蒸発させた後のカートリッジから揮発性有機化合物を脱着するべくカートリッジにキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記加熱手段による蒸発およびキャリアガスによる脱着で生成されたガス状又はミスト状の揮発性有機化合物を液化する液化手段とを備えて構成されることを特徴とする吸着された揮発性有機化合物の回収装置である。
請求項8の発明は、加熱手段は、キャリアガスによる脱着時においてもカートリッジを加熱することを特徴とする請求項7記載の吸着された揮発性有機化合物の回収装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、7の発明とすることにより、カートリッジに充填される吸着材から揮発性有機化合物を回収する場合に、蒸発工程の後に脱着工程が行なわれることになって、省エネルギー化、コスト低減を達成できる。
請求項2、8の発明とすることにより、キャリアガスによる脱着を効率よく迅速に行うことができる。
請求項3の発明とすることにより、カートリッジを、第一の加熱手段によりカートリッジ内部から、または、第二の加熱手段によりカートリッジ外周面から効率的に加熱することができる。さらに、第一、第二の両方の加熱手段を設けることにより、カートリッジを内外から加熱できることになって、加熱時間および加熱エネルギーの低減に貢献できる。
請求項4の発明とすることにより、蒸気を用いてカートリッジの加熱を簡単に行うことができる。
請求項5の発明とすることにより、高い回収率を得られると共に、省エネルギー化を達成できる。
請求項6の発明とすることにより、安価で汎用的な活性炭を吸着材として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】揮発性有機化合物の吸着装置のブロック回路図である。
図2】揮発性有機化合物の回収装置のブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は工場等の揮発性有機化合物を使用する施設に設けられるガス発生室であって、該ガス発生室1の排気口2には排気ダクト3が接続されている。該排気ダクト3の中途部には、ガス発生室1から発生するガス中の有機化合物を吸着するためのカートリッジ4が配設されている。そして、ガス発生室1で発生したガスは、前記カートリッジ4を通過することで、有機化合物が除去された状態で屋外に排出されるようになっている。尚、ガス発性室1或いは排気ダクト3には、ガスを屋外に排出するためのブロア(図示せず)が必要に応じて設置される。
【0009】
前記カートリッジ4は、有機化合物を吸着するための吸着材7として活性炭が充填されたものであって、ガス発生室1の排気経路(本実施の形態では吸気ダクト3の中途部)に交換可能に配設されている。そして、有機化合物を吸着したカートリッジ4は、排気経路から取外されて有機化合物回収施設に運搬(移動)され、該有機化合物回収施設において後述する回収装置8により有機化合物が分離、回収された後、再び有機化合物使用施設に運搬(移動)されて再利用されるようになっている。
ここで、前記カートリッジ4は、運搬が容易であり、且つ、吸着材7に有機化合物を吸着させるときの圧力損失をできるだけ少なくするために、直径に比して高さが低い扁平形状に形成されている。例えば、直径1000mm×高さ500mm(比で1:0.5)のカートリッジ4が採用されるが、この場合に、25/分の風量を流したときの差圧(抵抗)は、約2.5Kpaとなる。そして、この様にカートリッジ4を扁平形状にすることによって、カートリッジ4の運送コストや、カートリッジ4を用いた有機化合物回収のプラントコストを低減することができる。尚、本実施の形態では、吸着材7として、安価で汎用的な活性炭が用いられているが、シリカゲルやゼオライト等の他の吸着材を用いることもできる。また、吸着材7に吸着する有機化合物ガス濃度は、10000ppm未満であることが望ましい。さらに、有機化合物ガスの吸着は通常常温で行なうが、ガス温度が高いと吸着率が常温と比べて低下するため、ガス温度が高い場合には冷却してからカートリッジ4を通過させるように構成することもできる。
【0010】
ここで、前記カートリッジ4は、該カートリッジ4を通過するガスの流入側、流出側の配管が着脱自在に接続される第一、第二配管接続口4a、4bを具備しており、前述した有機化合物使用施設において有機化合物を吸着する場合には、第一、第二配管接続口4a、4bはガス発生室1の排気経路である吸気ダクト3に接続されるようになっている。さらにカートリッジ4には、後述する蒸発工程および脱着工程においてカートリッジ4を内部から加熱するための第一熱交換器(本発明の第一の加熱手段に相当する)9が内蔵されている。
【0011】
一方、前記回収装置8は、前記吸着材7に有機化合物が吸着されたカートリッジ4から有機化合物を回収するための装置であって、該回収装置8は、図2に示す如く、室内にカートリッジ4がセットされる回収室10、後述する蒸発工程および脱着工程においてカートリッジ4を外面側から加熱するべく回収室10内に配設される第二熱交換器(本発明の第二の加熱手段に相当する)11、蒸発工程および脱着工程で生成されたガス状又はミスト状の有機化合物を液化する液化手段12、脱着工程においてカートリッジ4にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段13、前記第一、第二熱交換器9、11に加熱媒体として蒸気(水蒸気)を供給する蒸気供給手段14等を用いて構成されている。
【0012】
前記回収室10は、ガラスウール等の保温、断熱性に優れた素材を用いて形成される四角箱状のものであって、開閉自在なドア10aを備えている。この回収室10の下部には、カートリッジ4を外面側から加熱するべく回収室10内全体を加熱する第二熱交換器11が内蔵されていると共に、該第二熱交換器11の上方には、カートリッジ4が載置される載置台15が設けられているが、該載置台15には、カートリッジ4の回収室10内への搬入、排出が容易なようにローラー15aが敷設されている。
【0013】
さらに、前記回収室10には、該回収室10の空気を開閉自在な第一バルブ16を介して屋外に排出する通気管17、回収室10にセットされたカートリッジ4の第一配管接続口4aに着脱自在に接続され、回収室10外の液化手段12に至る液化用配管18、カートリッジ4の第二配管接続口4bに着脱自在に接続され、回収室10外のキャリアガス供給手段13に至るキャリアガス用配管19、カートリッジ4内の第一熱交換器9の蒸気流入側に着脱自在に接続され、回収室10外の蒸気供給手段14に至る第一蒸気流入側配管20、第一熱交換器9の蒸気流出側に着脱自在に接続され、回収室10外に至る第一蒸気流出側配管21、回収室10内の第二熱交換器11の蒸気流入側に接続され、回収室10外の蒸気供給手段14に至る第二蒸気流入側配管22、第二熱交換器11の蒸気流出側に接続され、回収室10外に至る第二蒸気流出側配管23等の各種配管が設けられている。尚、図中、24は回収室10内の温度を測定する温度計、24aはカートリッジ4内の吸着材7の温度を測定する温度計である。
【0014】
一方、前記液化手段12は、前記液化用配管18を経由してカートリッジ4の第一配管接続口4aに接続され、蒸発工程および脱着工程においてカートリッジ4から発生するガス状又はミスト状の有機化合物を液化するための凝縮器25、該凝縮器25の冷媒を冷却する冷却器26、凝縮器25により液化された有機化合物を貯溜する回収液タンク27、該回収液タンク27から開閉自在な第二バルブ28を介して排出された有機化合物を運搬するための回収容器29等を用いて構成されている。
【0015】
また、前記キャリアガス供給手段13は、前記キャリアガス用配管19を経由してカートリッジ4の第二配管接続口4bに接続されるブロア30、該ブロア30の下流側に配され、ブロア30から供給される空気を除湿するキャリアドライヤー31、該キャリアドライヤー31を経由してカートリッジ4に供給される除湿空気の流量を制御する開度量調整自在な第三バルブ32、回収室10内においてキャリアガス用配管19の中途部に設けられ、回収室10内の温度で除湿空気を加熱する第三熱交換器33等を用いて構成されている。そして、前記ブロア30から供給されてキャリアドライヤー31によって除湿された除湿空気が、脱着工程においてキャリアガスとしてカートリッジ4に供給されるようになっているが、この場合にキャリアガスは、第三バルブ32によって流量制御されると共に、第三熱交換器33によって加熱された状態でカートリッジ4に供給されるようになっている。尚、図中、34はキャリアガスの流量を測定する流量計である。また、本実施の形態では、キャリアガスを加熱するにあたり、回収室10内に配設された第三熱交換器33によって加熱する構成になっているが、これに限定されず、後述する蒸気供給手段14の排気熱を利用してキャリアガスを加熱したり、或いは、回収室10内の空気をポンプで吸引してキャリアガスとして用いたりする構成にすることもできる。また、本実施の形態では、キャリアガスとして空気が用いられているが、窒素等の不活性ガス、或いは空気と不活性ガスとの混合ガス等を用いることもできる。
【0016】
また、前記蒸気供給手段14は、前記第一蒸気流入側配管20、第二蒸気流入側配管22、および蒸気供給配管35を経由して第一、第二熱交換器9、11に接続されるボイラ36、第一蒸気流入側配管20、第二蒸気流入側配管22の中途部にそれぞれ配される開度量調整自在な第四、第五バルブ37、38、蒸気供給配管35に開閉自在な第六バルブ39を介して接続される温調トラップ40、第一蒸気流出側配管21、第二蒸気流出側配管23に接続される第一、第二温調トラップ41、42等を用いて構成されている。尚、図中、43は蒸気の流入側、流出側の圧力を測定する圧力計、44は蒸気の流入側、流出側の温度を測定する温度計、45は第一、第二温調トラップ41、42に接続されるドレン配管である。
【0017】
そして、この様に構成された回収装置8を用いてカートリッジ4の吸着材7に吸着された有機化合物を回収する場合には、まず、カートリッジ4から有機化合物を蒸発させると共に、該蒸発された有機化合物を液化回収する蒸発工程を行ない、続いて、キャリアガスを用いてカートリッジ4から有機化合物を脱着すると共に、該脱着された有機化合物を液化回収する脱着工程を行なう。
【0018】
前記蒸発工程を行なう場合には、まず、ボイラ36からの蒸気を第二熱交換器11に供給して、回収室10内を加熱する。そして、該回収室10内の温度が回収室目標温度T1に達してから、回収室10内にカートリッジ4をセットする。このとき、カートリッジ4の第一、第二配管接続口4a、4bに液化用配管18、キャリアガス用配管19をそれぞれ接続するが、第三バルブ32を閉じておくことによって、カートリッジ4とブロア30とを遮断しておく。また、カートリッジ4に内蔵される第一熱交換器9の蒸気流入側には第一蒸気流入側配管20を、蒸気流出側には第一蒸気流出側配管21をそれぞれ接続する。尚、回収室10の温度調整は、第五バルブ38によりボイラ36から第二熱交換器11に供給する蒸気の流量を調整して行なう。
【0019】
さらに、前記第二熱交換器11による加熱を継続して回収室10内の温度を回収室目標温度T1に保持したままの状態で、ボイラ36からの蒸気を第一熱交換器9にも供給し、これによりカートリッジ4を内外から加熱してカートリッジ4内の温度をカートリッジ加熱温度T2まで上昇させて、該カートリッジ加熱温度T2に保持する。この場合に、カートリッジ4内の温度調整は、第四バルブ37によりボイラ36から第一熱交換器9に供給する蒸気の流量を調整して行なう。
ここで、前記カートリッジ加熱温度T2は、吸着材7に吸着された揮発性有機化合物の種類に応じて設定される。この場合、カートリッジ加熱温度T2を高くすると、揮発性有機化合物の蒸発率が高くなる一方、カートリッジ4の加熱にエネルギー、コストがかかる。このため、高い回収率を得ることができ、且つ、省エネルギー化を達成できるカートリッジ加熱温度T2として、吸着材7に吸着された揮発性有機化合物の沸点より30℃〜60℃高い温度、好ましくは揮発性有機化合物の沸点よりも40℃〜50℃程度高い温度が設定される。また、回収室目標温度T1は、カートリッジ4内の温度をカートリッジ加熱温度T2にするために設定される回収室10内の目標温度である。例えば、吸着材7に吸着された揮発性有機化合物がトルエン(沸点110.63℃)の場合には、カートリッジ加熱温度T2として150℃が設定され、回収室目標温度T1として145℃が設定される。
【0020】
そして、前記第一、第二熱交換器9、11によりカートリッジ加熱温度T2までカートリッジ4が加熱されることにより、吸着材7に吸着された揮発性有機化合物が蒸発してガス状或いはミスト状となる。そして、該ガス状或いはミスト状の有機化合物は、液化用配管18を経由して凝縮器25に至り、該凝縮器25で液化されて回収液タンク27に回収されるようになっており、このようにして、カートリッジ4を加熱して揮発性有機化合物を蒸発させると共に液化回収する蒸発工程が行なわれるようになっている。尚、この蒸発工程を12時間〜24時間程度行なうことで、吸着材7から有機化合物を数十%(例えば、10%〜20%)程度分離、回収できることを実験により確認したが、蒸発工程の時間やカートリッジ加熱温度T2、回収室目標温度T1は、有機化合物の種類、カートリッジ4のサイズ等に応じて適宜最適な値に設定される。
【0021】
前記蒸発工程の後には、続けてキャリアガスを用いた脱着工程を行うが、該脱着工程を行なう場合にも、前記第一、第二熱交換器9、11によるカートリッジ4の加熱を継続して行なって、カートリッジ4内の温度をカートリッジ加熱温度T2に保持する。そして、該カートリッジ4の加熱が継続して行われている状態で、キャリアガス供給手段13によりキャリアガス(除湿空気)をカートリッジ4に供給し、該キャリアガスにより吸着材7から有機化合物を脱着する。そして、該キャリアガスによる脱着工程によって、前記蒸発工程で吸着材7から回収しきれなかった有機化合物を回収することができるようになっている。さらに、前記キャリアガスによる脱着でガス状或いはミスト状となった揮発性有機化合物は、蒸発工程のときと同様に、液化用配管18を経由して凝縮器25に至り、該凝縮器25で液化されて回収液タンク27に回収されるようになっており、このようにして、キャリアガスにより揮発有機化合物を脱着すると共に液化回収する脱着工程が行なわれるようになっている。尚、脱着工程の前に行なわれた蒸発工程によって吸着材7から多くの有機化合物が既に回収されているため、脱着工程で供給するキャリアガスは微量風量で良く、例えば、吸着材重量80gあたり0.05〜0.5L/minに設定される。
【0022】
叙述の如く構成された本実施の形態において、工場等の有機化合物使用施設において吸着材7に揮発性有機化合物が吸着されたカートリッジ4は、有機化合物回収施設において回収装置8により有機化合物が分離、回収されて再利用されることになるが、該回収装置8は、室内にカートリッジ4がセットされる回収室10と、カートリッジ4から揮発性有機化合物を蒸発させるべくカートリッジ4を加熱する第一、第二熱交換器9、11と、カートリッジ4から揮発性有機化合物を脱着するべくカートリッジ4にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段13と、前記第一、第二熱交換器9、11の加熱による蒸発およびキャリアガスによる脱着で生成されたガス状又はミスト状の揮発性有機化合物を液化する液化手段12とを備えており、そして、該回収装置8によりカートリッジ4から揮発性有機化合物を分離すると共に該揮発性有機化合物を回収する場合には、前記第一、第二熱交換器9、11による加熱でカートリッジ4から有機化合物を蒸発させて回収する蒸発工程の後に、キャリアガスによりカートリッジ4から揮発性有機化合物を脱着して回収する脱着工程が行なわれることになる。
【0023】
而して、吸着材7から揮発性有機化合物を回収する工程として、まず、カートリッジ4から有機化合物を蒸発させる蒸発工程が行なわれ、続けて、キャリアガスを用いて揮発性有機化合物を脱着する脱着工程が行なわれることになるが、前記蒸発工程は、カートリッジ4を加熱するだけの安価で簡単な工程であって、省エネルギー化、コストの低減に大きく貢献できる。さらに、蒸発工程で回収されずにカートリッジ4に残存している有機化合物は、続けて行なわれる脱着工程によって脱着されることになって、高い回収率を確保できることになるが、この脱着工程は、蒸発工程で残存している分を脱着すれば良いから、脱着工程の時間やキャリアガスの使用量を大幅に少なくすることができると共に、脱着工程においても少量のキャリア流量と、非凝縮の有機化合物を少なくすることで、省エネルギー化、コストの低減を達成できる。
【0024】
さらにこのものでは、キャリアガスによる脱着工程においても、第一、第二熱交換器9、11によりカートリッジ4を加熱する構成になっており、該カートリッジ4を加熱することで脱着工程の回収率を向上させることができるが、この場合に、カートリッジ4は脱着工程の前に行なう蒸発工程によって既に加熱されているから、加熱を伴う脱着を効率良く迅速に行うことができる。
【0025】
そのうえ、前記第一熱交換器9はカートリッジ4内に配設されるものであるから、吸着材7に吸着された揮発性有機化合物をカートリッジ4内で直接効率的に加熱することができ、また、第二熱交換器11は回収室11内に配設されるものであるから、カートリッジ4をカートリッジ4外周面から効率的に加熱することができる。しかも、本実施の形態では、カートリッジ4を加熱する加熱手段として第一および第二熱交換器9、11が用いられているから、カートリッジ4を内外両側から効率的に加熱することができることになって、カートリッジ4を所望の温度に上昇させるまでの加熱時間の短縮や加熱エネルギーの低減に貢献できる。
【0026】
しかも、前記第一、第二熱交換器9、11は、蒸気を加熱媒体とする熱交換器であるから、加熱媒体の供給が簡単で、効率の良い加熱を行うことができる。
【0027】
そして、前記第一、第二熱交換器9、11によるカートリッジの加熱温度を、吸着材7に吸着された揮発性有機化合物の沸点より30℃〜60℃高い温度、好ましくは40℃〜50℃程度高い温度に設定することにより、高い回収率を得られると共に、省エネルギー化を達成できる。
【0028】
そのうえこのものでは、吸着材7として活性炭を用いており、而して、安価で汎用的な活性炭を利用して揮発性有機化合物の回収を行うことができる。
尚、本発明は、種々の揮発性有機化合物の回収に利用することができるが、沸点120℃位以下、特に沸点110℃位以下の揮発性有機化合物(例えば、トルエン)の回収に利用すると、蒸発工程での回収率を高くすることができて特に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、移動自在なカートリッジに充填された吸着材から揮発性有機化合物を回収するための回収方法、回収装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
4 カートリッジ
7 吸着材
8 回収装置
9 第一熱交換器
10 回収室
11 第二熱交換器
12 液化手段
13 キャリアガス供給手段
14 蒸気供給手段
図1
図2