特開2015-160214(P2015-160214A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-160214(P2015-160214A)
(43)【公開日】2015年9月7日
(54)【発明の名称】鋳物素材の吊り出し方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/04 20060101AFI20150811BHJP
【FI】
   B22D29/04 B
   B22D29/04 C
   B22D29/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-35486(P2014-35486)
(22)【出願日】2014年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小柳津 康博
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
(57)【要約】
【課題】多品種の鋳物素材をも滑り落とすことなく確実に吊り出すことができる鋳物素材の吊り出し方法及び装置を提供する。
【解決手段】搬送されてきた注湯済みの鋳型10の上方から、鋳型に対する長手方向と短手方向の両方向から出し入れ可能なピン7、8を備えたクランプ装置9を下降させ、事前に設定した鋳物素材の生産情報に基づいて、出し入れするピンの作動側及びピンの差し込み高さを選択して各鋳物素材毎に異なる差し込み位置にピンを差し込む。その後、クランプ装置9を上昇させて鋳型10から鋳物素材2を吊り出し、次工程の冷却パレット16に載せる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊出し位置まで搬送されてきた注湯済み鋳型の上方から、鋳型に対する長手方向と短手方向の両方向から出し入れ可能なピンを備えたクランプ装置を下降させ、事前に設定した鋳物素材の生産情報に基づいて、出し入れするピンの作動側及びピンの差し込み高さを選択して各鋳物素材毎に異なる差し込み位置にピンを差し込み、クランプ装置を上昇させて鋳型から鋳物素材を吊り出し、次工程の冷却パレットに載せることを特徴とする鋳物素材の吊り出し方法。
【請求項2】
ピンを差し込むことができる鋳物素材については、クランプ装置と共に鋳物素材を天地逆に反転して、鋳物素材上面に載った鋳物砂を落とした上で、再反転して、湯口を上に戻した状態で次工程の冷却パレットに載せることを特徴とする請求項1に記載の鋳物素材の吊り出し方法。
【請求項3】
吊り出し不能と判定された注湯済み鋳型については、押し出し装置にて次工程のシェイクアウトマシンに払い出し、鋳型は破砕した後に砂処理設備に回収すると共に、シェイクアウトマシンの篩上に残った不良鋳物素材は、別工程に回収することを特徴とする請求項1に記載の鋳物素材の吊り出し方法。
【請求項4】
吊り出し不能との判定を、造型した鋳型の造型情報、溶湯の注湯情報、湯口高さ検出情報、および、前記ピンの差し込みを複数回行ってもピンを所定深さまで差し込めない場合の不良鋳物素材判断情報の、何れかに基づいて行うことを特徴とする請求項3に記載の鋳物素材の吊り出し方法。
【請求項5】
注湯済み鋳型の吊り出し位置と次工程の冷却パレットとの間を走行可能な走行台車の下側に、枠状のクランプ装置を昇降可能に搭載し、このクランプ装置の鋳型に対する長手方向と短手方向の両方向に、出し入れ可能なピンを設け、出し入れするピンの作動側及びピンの差し込み高さを選択して各鋳物素材毎に異なる差し込み位置にピンを差し込み、鋳型から鋳物素材を吊り出すことを特徴とする鋳物素材の吊り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックをはじめ、その他、多品種の鋳物素材を鋳型の中から吊り出すことができる鋳物素材の吊り出し方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造された鋳物素材を鋳型の中から吊り出すために、従来から様々な鋳物素材の吊り出し装置が用いられているが、鋳物素材がシリンダブロック、シリンダヘッド、クランクシャフト等の場合には、それぞれ専用の装置が用いられていた。そこで特許文献1、特許文献2に示すように、多品種の鋳物素材の吊り出しができる吊り出し装置が提案されている。
【0003】
特許文献1の装置は、鋳物素材の品種を限定しない多品種の鋳物素材を吊り出す事を目的とした装置である。しかし湯口棒を点当たりで把持する構造のため、把持後の鋳物素材が振れたり、回転したりして、姿勢が安定しないという問題があった。また、湯口をクランプする点、かつ、湯口カップと方案、製品の隙間にクランプ爪を差し込む必要があるため、湯口位置、製品形状、配置、方案形状に制限を受けるという問題があった。
【0004】
特許文献2の装置も、鋳物素材の品種を限定しない多品種の鋳物素材を吊り出す事を目的とした装置である。しかし、鋳物素材形状に追従できる様、首振り機能を有し、蒲鉾状に円弧を有した爪で鋳物素材の外側側面を把持する構造のため、把持した鋳物素材が滑り落ちやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−136907号公報
【特許文献2】特開2006−212643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、シリンダブロックを主としながら、その他、多品種の鋳物素材をも滑り落とすことなく確実に吊り出すことができる鋳物素材の吊り出し方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の鋳物素材の吊り出し方法は、吊出し位置まで搬送されてきた注湯済み鋳型の上方から、鋳型に対する長手方向と短手方向の両方向から出し入れ可能なピンを備えたクランプ装置を下降させ、事前に設定した鋳物素材の生産情報に基づいて、出し入れするピンの作動側及びピンの差し込み高さを選択して各鋳物素材毎に異なる差し込み位置にピンを差し込み、クランプ装置を上昇させて鋳型から鋳物素材を吊り出し、次工程の冷却パレットに載せることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のように、ピンを差し込むことができる鋳物素材については、クランプ装置と共に鋳物素材を天地逆に反転して、鋳物素材上面に載った鋳物砂を落とした上で、再反転して、湯口を上に戻した状態で次工程の冷却パレットに載せることができる。
【0009】
請求項3のように、吊り出し不能と判定された注湯済み鋳型については、押し出し装置にて次工程のシェイクアウトマシンに払い出し、鋳型は破砕した後に砂処理設備に回収すると共に、シェイクアウトマシンの篩上に残った不良鋳物素材は、別工程に回収することができる。
【0010】
請求項4のように、吊り出し不能との判定を、造型した鋳型の造型情報、溶湯の注湯情報、湯口高さ検出情報、および、前記ピンの差し込みを複数回行ってもピンを所定深さまで差し込めない場合の不良鋳物素材判断情報の、何れかに基づいて行うことができる。
【0011】
また本発明の鋳物素材の吊り出し装置は、注湯済み鋳型の吊り出し位置と次工程の冷却パレットとの間を走行可能な走行台車の下側に、枠状のクランプ装置を昇降可能に搭載し、このクランプ装置の鋳型に対する長手方向と短手方向の両方向に、出し入れ可能なピンを設け、出し入れするピンの作動側及びピンの差し込み高さを選択して各鋳物素材毎に異なる差し込み位置にピンを差し込み、鋳型から鋳物素材を吊り出すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鋳物素材の吊り出し方法及び装置によれば、鋳物素材毎に異なる差し込み位置にピンを差し込むことにより、シリンダブロックはもちろんその他の多品種の鋳物素材を、鋳型から確実に吊り上げて取り出すことができる。
【0013】
またピンを差し込むことができる鋳物素材については、クランプ装置と共に鋳物素材を天地逆に反転して、鋳物素材上面に載った鋳物砂の除去も可能である。さらに、注湯不良等で吊り出しできなかったり、鋳物方案の破損等で吊り出しに失敗した場合は、吊り出しを行わず、鋳型破砕用のシェイクアウトマシン上に鋳型を落とし、ライン停止を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の鋳物素材吊り出し装置の部分断面正面図である。
図2a】鋳物素材吊り出し装置のクランプ部の回転機構を示す部分断面正面図である。(図3のA−A断面)
図2b】鋳物素材吊り出し装置のクランプ部を示す部分断面正面図である。(図3のB−B断面)
図3】鋳物素材吊り出し装置のクランプ部を示す部分断面側面図である。(図2a、図2bのC-C断面)
図4a】鋳物素材吊り出し装置のクランプ部の鋳型長手側ピンが出た状態を示す部分断面平面図である。
図4b】鋳物素材吊り出し装置のクランプ部の鋳型短手側ピンが出た状態を示す部分断面平面図である。
図5】鋳物素材吊り出し装置の金枠搬送時の状態を示す作動工程説明図である。
図6】鋳物素材吊り出し装置のパンチアップ時の状態を示す作動工程説明図である。
図7】鋳物素材吊り出し装置の鋳物素材クランプ時の状態を示す作動工程説明図である。
図8】鋳物素材吊り出し装置の鋳物素材吊り出し時の状態を示す作動工程説明図である。
図9】鋳物素材吊り出し装置の鋳物素材反転と鋳型押し出し時の状態を示す作動工程説明図である。
図10】鋳物素材吊り出し装置の鋳物素材移し替えと金枠返却時の状態を示す作動工程説明図である。
図11】鋳物素材吊り出し装置の不良鋳物素材の場合の鋳型押し出し時の状態を示す作動工程説明図である。
図12a】金枠内鋳物素材配置例を示す金枠平面図である。
図12b】金枠内鋳物素材配置例を示す金枠平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1において、1は金枠、10は金枠1の内部の注湯済みの鋳型である。これらは定盤台車33に載せられ、図1の左下のレール34上を金枠分離位置まで搬送されてくる。
【0016】
金枠分離位置には金枠クランプ35が設けられており、金枠1を定盤台車33から持ち上げ、台車36にてパンチアップヘッド37の真上まで持ってきた後、パンチアップシリンダ38にて鋳型10を金枠1から抜き上げる。鋳型10はパンチアップシリンダ38の上昇端にて、パンチアップヘッド37上に載せられている。この位置が吊り出し位置である。
【0017】
吊り出し位置の上方には、レール41上を水平方向に走行する走行台車17が設けられている。この走行台車17はローラチェイン19を介し、減速モータ20で走行する。ローラチェイン19の弛みは、テイクアップユニット32にて調整する。走行台車17の走行手段は、本実施形態に限定されるものではなく、減速モータを積んだ自走式台車でも、シリンダを使用した横行方式でも良い。
【0018】
走行台車17の下側の昇降テーブル18には、枠状のクランプ装置9が支持されている。昇降テーブル18はクランプ装置9とともに、昇降シリンダ40によって昇降される。クランプ装置9は図4a、図4bに示すように、長方形の枠体9aに、ピン7、8を設けたものである。これらのピン7、8は、鋳型10に対して鋳物素材2が長手方向、短手方向のどちらに配置されても吊り出しできる様に、枠体9aの4つの各辺に対向配置されている。
【0019】
幅方向の寸法に制限があるため、短手側のピン7の出し入れは図4aに示すように、短手側のピン7に対して折り返し、ロッドを外向きに配置したシリンダ11にて行う。リンク機構を使用しても良い。一方、長手側のピン8の出し入れは干渉無き回転半径内に収まるため、長手側のピン8に直列に配置したシリンダ12にて行う。
【0020】
図12a、bに金枠1内の鋳物素材配置例を示す。図12aは、鋳型長手側に鋳物素材2であるシリンダブロックのボア6が正面に来る配置、図12bは、鋳型短手側にシリンダブロックのボア6が正面に来る配置である。このような鋳物素材配置に対し、図4a、bに示す様に、ボア6の配置に適合した側のピン7、8を差し込む。図12aの鋳型長手側にシリンダブロックのボア6が正面に来る配置に対しては、図4aに示す様に、長手側のピン8の出し入れを行い、短手側のピン7の出し入れを行わない。図12bの鋳型短手側にシリンダブロックのボア6が正面に来る配置に対しては、図4bに示す様に、短手側のピン7の出し入れを行い、長手側のピン8の出し入れを行わない。
【0021】
図2aに示すように、クランプ装置9は水平な回転軸29によって、昇降テーブル18に支持されている。昇降テーブル18の下端にはシリンダ27が取付けられており、このシリンダ27によって、回転軸29に固定されたピニオンギヤ30と噛み合うラック28を進退させる。これによってクランプ装置9を反転させることができる。クランプ装置9の反転手段は、ラック28&ピニオンギヤ30に限らず、回転アームとリンク機構等を用いても良く、回転軸29に直接、減速モータ、油圧モータ等を取り付けても良い。
【0022】
なお、図1に示される22は吊り出し位置の側方に配置されたシェイクアウトマシン、16は次工程の冷却パレットである。走行台車17は吊り出し位置と冷却パレット16との間を走行可能となっている。
【0023】
次に図5図11を用いて、本発明の装置の作動を説明する。
図5は注湯済みの鋳型10を内蔵する金枠1が、金枠クランプ35と台車36によりパンチアップヘッド37の上まで移動された状態を示している。次に図6のように、パンチアップシリンダ38にて鋳型10を金枠1から抜き上げる。鋳型10はパンチアップシリンダ38の上昇端にて、パンチアップヘッド37上に載せられる。
【0024】
次に図7のように、鋳型10の上方から昇降シリンダ40によって枠状のクランプ装置9を下降させる。事前に設定した鋳物素材2の生産情報にて、鋳型10に対する長手側か、短手側か、出し入れするピン7、8の作動側を選択し、かつ、鋳型10に対するピン7、8の差し込み高さを選択し、注湯済みの鋳型10に対し、各鋳物素材2毎に異なる差し込み位置にピン7、8を差し込む。このようにして、様々な鋳物素材を吊り上げることが可能となる。各鋳物素材毎に異なる差し込み高さの変更は、図示しないリニアスケール等を用いて制御する。そして図8のように、クランプ装置9を上昇させて鋳型10から鋳物素材2を吊り出す。
【0025】
図9、10に示す様に、シリンダブロックのボア6等のように鋳物素材2の穴や凹部にピン7、8を差し込む事が出来る鋳物素材の場合は、クランプ装置9とともに鋳物素材2を天地逆に反転して、鋳物素材上面に載った鋳物砂を落とした上で、再反転して、湯口15を上に戻した状態で、次工程の冷却パレット16に載せる。しかし、穴や凹部を有しない鋳物素材の場合は、反転せずに、次工程の冷却パレット16に鋳物素材を載せる。
【0026】
鋳物素材2を吊り出した後の鋳型10は、図9に示されるように押し出し装置21にて次工程のシェイクアウトマシン22に落とし込み、破砕した後に、図示しない砂処理設備に回収する。
【0027】
また、吊り出し不能との判定がなされた場合には、吊り出しを行なわない。この吊り出し不能との判定は、造型した鋳型10の造型情報、溶湯の注湯情報、湯口15の高さ検出情報、および、前記ピン7、8の差し込みを複数回行ってもピン7、8を所定深さまで差し込めない場合の不良鋳物素材判断情報に基づいて行うことができる。これらの情報の何れかに基づいて吊り出し不能との判定がなされた場合には、図11に示す様に、不良鋳物素材23と判断して吊り出しを行わず、押し出し装置21にて、次工程のシェイクアウトマシン22に払い出し、鋳型10は破砕した後に図示しない砂処理設備に回収すると共に、シェイクアウトマシン22の篩24上に残った不良鋳物素材23は、図示しない別工程に回収する。なお、湯口15の高さ検出は、鋳型10を金枠1から抜き出す走行台車36の上流に設置した図示しないレーザ式変位測定センサ等にて行う。
【0028】
以上に説明したように、本発明の鋳物素材の吊り出し方法及び装置によれば、鋳物素材毎に異なる差し込み位置にピン7、8を差し込むことにより、シリンダブロックはもちろんその他の多品種の鋳物素材2を、鋳型10から確実に吊り上げて取り出すことができる利点がある。
【0029】
なお本発明において、鋳物素材の生産情報とは、鋳物素材に関する情報であり、例えば、鋳物素材の種類(製品番号)、金枠内(鋳型内)における鋳物素材の配置などが挙げられる。
【符号の説明】
【0030】
1 金枠
2 鋳物素材
6 ボア
7 ピン
8 ピン
9 クランプ装置
9a 枠体
10 鋳型
11 シリンダ
12 シリンダ
15 湯口
16 冷却パレット
17 走行台車
18 昇降テーブル
19 ローラチェイン
20 減速モータ
21 押し出し装置
22 シェイクアウトマシン
23 不良鋳物素材
24 篩
27 シリンダ
28 ラック
29 回転軸
30 ピニオンギヤ
32 テイクアップユニット
33 定盤台車
34 レール
35 金枠クランプ
36 台車
37 パンチアップヘッド
38 パンチアップシリンダ
40 昇降シリンダ
41 レール
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b